JP2007297554A - セルロース体フィルム、光学補償シート、偏光板、液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記数式(1)により算出される分極率異方性の値Δαが異なる2つ以上の置換基を有するセルロース体であって、分極率異方性の値Δαが最小の置換基をA、分極率異方性の値Δαが最大の置換基をBとしたとき、置換基A及び置換基Bの置換度が下記関係式(A1)を満たすセルロース体フィルム。
(式中、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、αxは最大の成分であり、αyは二番目に大きい成分であり、αzは最小の成分である。)
(ここで、DSB2、DSB3、及びDSB6はそれぞれ、セルロースの構成単位であるβ−グルコース環の2位、3位、及び6位における前記置換基Bの置換度を表す。)
【選択図】なし
Description
近年、液晶表示装置の普及に伴い、表示性能や耐久性に対する要求がより高くなり、応答速度の向上や、表示画像に対して斜め方向から観察した場合のコントラストやカラーバランスといった視野角をより広範囲で補償することが課題となっている。これらの課題を解決すべく、各種液晶モードが開発されており、それに伴って各モードに対応して視野角を補償する目的で位相差フィルムを光学補償フィルムとして開発することが急務となっている。
更に上記に加えて、パネルの薄型化やコストの低減化が液晶表示装置に求められており、液晶表示装置に用いられる偏光板の保護フィルムに上記の位相差フィルムの機能を併せ持たせる方法が検討されるようになってきている。
前記の要求に対し、膜厚方向のレターデーションが負であるセルロースアシレートフィルムとして、アシル置換度が低いセルロースアシレートを冷却溶解する方法(特許文献2参照)が提案されている。しかし、これらの方法ではRthが十分に低減せず、更にRthを小さくすることができる方法が求められていた。また、この方法により作製されたセルロースアシレートフィルムでは、フィルムの透水性や含水率が大きく、偏光板用の保護フィルムとして使用した場合の偏光板の耐久性、特に高温高湿条件における偏光板性能の劣化が大きいことが問題であった。
すなわち本発明の課題は下記手段により解決できる。
<1>下記数式(1)により算出される分極率異方性の値Δαが異なる2つ以上の置換基を有するセルロース体を含有するセルロース体フィルムであって、前記セルロース体における分極率異方性の値Δαが最小の置換基をA、分極率異方性の値Δαが最大の置換基をBとしたとき、置換基A及び置換基Bの置換度が下記関係式(A1)を満たすことを特徴とするセルロース体フィルム。
<2>フィルムの膜厚方向のレターデーションRthが負であることを特徴とする<1>項に記載のセルロース体フィルム。
<3>前記置換基A及び前記置換基Bの合計置換度が下記関係式(A2)を満たすことを特徴とする<1>又は<2>項に記載のセルロース体フィルム。
<4>前記置換基A及び前記置換基Bの合計置換度が下記関係式(A3)を満たすことを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
<5>前記置換基Bの分極率異方性の値が2.5×10-24cm3以上であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
<6>前記の分極率異方性の値が2.5×10-24cm3以上である置換基Bが芳香族アシル基であることを特徴とする<5>項に記載のセルロース体フィルム。
<7>オクタノール−水分配係数(logP値)が1.0〜10.0であるレターデーション調節剤を含有することを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
<8>フィルムの25℃80%RHにおける平衡含水率が3.0%以下であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
<9>フィルムの搬送方向、及び/又はこれと垂直な方向に1%以上100%以下延伸されたことを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
<10>下記数式(11−1)を満たすレターデーション調節剤を少なくとも1種含むことを特徴とする<1>〜<9>のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
Rth(0):当該レターデーション調節剤を含有しないアセチル置換度2.86のセルロースアセテートのみからなる膜厚80μmのフィルムの波長589nmにおけるRth(nm)
a:セルロースアセテート100質量部に対する当該レターデーション調節剤の質量部
<11>前記レターデーション調節剤が、下記一般式(1)〜(19)のいずれかで表される化合物のうち少なくとも1種であることを特徴とする<10>項に記載のセルロース体フィルム。
(連結基群1)単結合、−O−、−CO−、−NR4−(R4は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。)、アルキレン基またはアリーレン基を表す。)
<1><1>〜<11>のいずれか1項に記載のセルロース体フィルムを含むことを特徴とする光学補償シート。
<13><1>〜<11>のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム上に光学異方性層を有することを特徴とする光学補償シート。
<14>偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜の少なくとも一方が、<12>または<13>項に記載の光学補償シートであることを特徴とする偏光板。
<15>液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板からなる液晶表示装置であって、少なくとも1枚の偏光板が<14>項に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
<16>表示モードがIPSモードであることを特徴とする<15>項に記載の液晶表示装置。
本発明のセルロース体フィルムは、光学補償シート、偏光板、及び液晶表示装置に好適に用いることができ、本発明によれば、コントラストが高く、視野角による色味変化の小さく、更に環境湿度による画質変化が小さく、耐久性に優れる液晶表示装置を提供することができる。
[セルロース体フィルム]
以下に本発明のセルロース体フィルムについて、セルロース体、添加剤、製膜方法の順に説明する。
本発明のセルロース体フィルムに使用するセルロース体は、セルロースの構成単位であるβ−グルコース環上の3つの水酸基の内の少なくとも1つに結合する置換基として、分極率異方性の値が異なる2種類以上の置換基を有し、該分極率異方性の値Δαは下記数式(1)により算出される。
上記の方法によって計算した場合における各置換基の分極率異方性の値Δαを以下に例示する:アセチル基=0.91、プロピオニル基=1.44、ブチリル基=2.20、ベンゾイル基=5.08、2,4,5−トリメトキシベンゾイル基=7.12。
式(A1)は、好ましくは、
式(A2)はさらに好ましくは、
式(A3)はさらに好ましくは、
以下に本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートについて説明する。
重合度を大きくすることにより、セルロースアシレートフィルム製膜時の結晶化を抑制することができる。
本発明に用いられるセルロースアシレートが2種類の分極率異方性の値が異なるアシル基が置換したものである場合、分極率異方性の値が小さい置換基Aとしてはアセチル基が好ましい。
また、分極率異方性の値が大きい置換基としては、炭素数3以上のアシル基であれば様々な置換基を用いることが可能であるが、脂肪族アシル基としてはプロピオニル基およびブチリル基が特に好ましい。
上記アルキル基は直鎖に限定されず、環状構造または分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基および2−エチルヘキシル基が含まれる。
上記アルコキシ基は直鎖に限定されず、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基は、さらに別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基およびオクチルオキシ基が含まれる。
上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシ基の例には、フェノキシ基およびナフトキシ基が含まれる。
上記アシル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アシル基の例には、ホルミル基、アセチル基およびベンゾイル基が含まれる。
上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。カルボンアミド基の例には、アセトアミド基およびベンズアミド基が含まれる。
上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基およびp−トルエンスルホンアミド基が含まれる。
上記ウレイド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。ウレイド基の例には、(無置換)ウレイドが含まれる。
上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基が含まれる。
上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8〜20であることが好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニル基が含まれる。
上記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。カルバモイル基の例には、(無置換)カルバモイル基およびN−メチルカルバモイル基が含まれる。
上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。スルファモイル基の例には、(無置換)スルファモイル基およびN−メチルスルファモイル基が含まれる。
上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基が含まれる。
上記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例には、チエニル基が含まれる。
上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基が含まれる。
上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホニル基の例には、p-トルエンスルホニル基が含まれる。
上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルオキシスルホニル基の例には、メチル硫酸基が含まれる。
上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシスルホニル基の例には、フェニル硫酸基が含まれる。
上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルスルホニルオキシ基の例には、メタンスルホニルオキシ基が含まれる。
上記アリールスルホニルオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホニルオキシ基の例には、p-トルエンスルホニルオキシ基が含まれる。
一般式(A)で表される芳香族アシル基の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。以下の具体例のうち好ましいものは、No.1、3、5、6、8、13、18及び28であり、より好ましいものはNo.1、3、6及び13である。
具体的には、本発明に用いられるセルロース体は、例えばアルドリッチ社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.45)、もしくはダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.41(商品名:L−70)、2.14(商品名:LM−80))を出発原料として、対応する酸クロリドとの反応により得ることができる。また、アセチル置換度の低いセルロースアセテートは、アルドリッチ製微結晶セルロースを出発原料とし、後述する合成例1に記載の方法にてアセチル置換度1.80の中間体を合成した後、対応する酸クロリドとの反応により得ることができる。
また、本発明に使用するセルロース体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜5.0であることが好ましく、1.5〜3.5であることがさらに好ましく、2.0〜3.0であることが最も好ましい。
(レターデーション調節剤)
本発明ではレターデーション調節剤をセルロース体フィルムに添加することが好ましい。ここで、レターデーション調節剤とは、フィルムにおける膜厚方向のレターデーションを低減させる化合物であり、以下の数式(11−1)を満たす化合物であることが好ましい。
Rth(0):当該レターデーション調節剤を含有しないアセチル置換度2.86のセルロースアセテートのみからなる膜厚80μmのフィルムの波長589nmにおけるRth(nm)
a:セルロースアセテート100質量部に対する当該レターデーション調節剤の質量部
本発明においては、分極率異方性の大きい(「分極率異方性の高い」とも言う)置換基を有するセルロース体と、Rthを低減させる上記数式(11−1)を満たす化合物をレターデーション調節剤とを組み合わせることで、Rthをより低減させることができる。
Rth(0):当該レターデーション調節剤を含有しないアセチル置換度2.86のセルロースアセテートのみからなる膜厚80μmのフィルムの波長589nmにおけるRth(nm)
a:セルロースアセテート100質量部に対する当該レターデーション調節剤の質量部
Re(0):当該レターデーション調節剤を含有しないアセチル置換度2.86のセルロースアセテートのみからなる膜厚80μmのフィルムの波長589nmにおけるRe(nm)
a:セルロースアセテート100質量部に対する当該レターデーション調節剤の質量部
(連結基群1)単結合、−O−、−CO−、−NR4−(R4は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。)、アルキレン基またはアリーレン基を表す。)
R11〜R13について詳しく説明する。R11〜R13は好ましくは炭素原子数1〜20、さらに好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12の脂肪族基である。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基又はアルキニル基である。例として、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどが挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどが挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギルなどが挙げられる。
また、Zを含んで構成される5または6員環は、ラクトン構造またはラクタム構造、すなわち、Zの隣接炭素にオキソ基を有する環状エステルまたは環状アミド構造を含む。このような環状エステルまたは環状アミド構造の例としては、2−ピロリドン、2−ピペリドン、5−ペンタノリド、6−ヘキサノリドを挙げることができる。
エステル基としては、好ましくは炭素原子数が1〜20、さらに好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどが例示できる。
Y21、Y22は互いに連結して環を形成してもよい。Y21、Y22はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11〜R13に置換していても良い基を挙げることができる。
エステル基としては、好ましくは炭素原子数が1〜20、さらに好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素原子数が1〜20、さらに好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニルなど、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどが挙げられる。
カルバモイル基としては、好ましくは炭素原子数が1〜20、さらに好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどが挙げられる。
Y31〜Y70はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11〜R13に置換していても良い基を挙げることができる。
一般式(13)または一般式(14)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
1つの化合物の中に含まれる2つ以上のR1およびR2は、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは同一である。
また、連結基は、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれる2以上からなる連結基がさらに好ましい。
一般式(15)、特に一般式(15a)又は一般式(15c)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Xは、単結合、−O−、−CO−、−NR4−(R4は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。)、アルキレン基(好ましくは炭素原子数1〜6、より好ましくは1〜3のもの、例えばメチレン、エチレン、プロピレン)またはアリーレン基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜12のもの。例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン)からなる群から選ばれる1つ以上の基から形成される2価の連結基であることが好ましく、−O−、アルキレン基またはアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが特に好ましい。
これら一般式(16)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。Q1、Q2およびQ3としてより好ましくは好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。またQ1、Q2およびQ3は置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが挙げられる。
一般式(17)で表される化合物としては、好ましくは下記一般式(17a)で表される化合物が挙げられる。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(18)として好ましくは下記一般式(18a)で表される化合物である。
前記(19)で表される化合物は、更に下記一般式(19a)〜(19d)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
上記一般式(19)において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。
X1、X2、X3およびX4は、それぞれ独立に、単結合、−CO−、−NR5−(R5は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。X1、X2、X3およびX4の組み合わせは特に限定されないが、−CO−、−NR5−から選ばれるのがより好ましい。
a、b、cおよびdは0以上の整数であり、a+b+c+dは2以上である。a+b+c+dは、2〜8であることが好ましく、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4である。Q1は(a+b+c+d)価の有機基(環状のものを除く)を表す。Q1の価数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が最も好ましい。ここで有機基とは、有機化合物からなる基をいう。
X11、X12、X13およびX14はそれぞれ独立に、単結合、−CO−、−NR15−(R15は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。それぞれX11、X12、X13およびX14の組み合わせは特に限定されないが、−CO−、−NR15−から選ばれるのがより好ましい。
k、l、mおよびnは0または1であり、k+l+m+n=2、3または4である。Q1は2〜4価の有機基(環状のものを除く)を表す。Q1の価数は2または3が好ましい。
Y1およびY2はそれぞれ独立に−CONR23−または−NR24CO−を表し、R23およびR24は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。L1は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR25−、アルキレン基およびアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の有機基(環状のものを除く)を表す。
L1の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR25−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
L2は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR35−(R35は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。L2の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR35−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
L4は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR55−(R55は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。L4の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR55−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
本発明のセルロース体フィルムを作製するにあたっては、上述のように分極率異方性の高い置換基とレターデーション調節剤の相溶性が高くなることで、フィルム中のセルロース体上の置換基が膜厚方向へ配向する割合をより高める目的で、オクタノール−水分配係数(logP値)が1〜10である化合物をレターデーション調節剤として使用することが好ましい。logP値が10以下であることにより、セルロース体上の置換基との相溶性が良好であり、Rthを充分に低減させる効果を有し、またフィルムの白濁や粉吹きを生じるといった問題が起こらず、好ましい。また、logP値が1以上であることにより、親水性が高くなり過ぎず、セルロース体フィルムの耐水性を悪化させるという問題が生じず、好ましい。logP値としてさらに好ましい範囲は1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989))、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.,19,71(1984))などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。
レターデーション調節剤は、前述のとおり、芳香族基を含有しても良いし、含有しなくても良い。またレターデーション調節剤は、分子量が3000以下であることが好ましく、分子量が150以上3000以下であることがより好ましく、170以上2000以下であることがさらに好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
レターデーション調節剤は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。またレターデーション調節剤は、セルロース体フィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
レターデーション調節剤の添加量は、セルロース体の0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることが特に好ましい。
レターデーション調節剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
レターデーション調節剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である、多価アルコールエステル化合物、カルボン酸エステル化合物、多環カルボン酸化合物、ビスフェノール誘導体をセルロース体に添加することによっても、光学異方性を低下させることができる。すなわち、これらの化合物も、セルロース体フィルムの光学異方性を低下させる化合物であり、本発明においては、これらの化合物を上記レターデーション調節剤に加えて更に添加することもできる。
本発明に好適に用いられる多価アルコールエステルは、2価以上の多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。多価アルコールエステル化合物としては以下のものが例としてあげられるが、本発明はこれらに限定されない。
好ましい多価アルコールの例としては、例えばアドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
好ましいモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いるとよりセルロース体フィルムの透湿度、含水率、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらは更に置換基を有しても良い。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステル化合物としては、以下の化合物を例としてあげることができるが、本発明はこれらに限定されない。
カルボン酸エステル化合物としては、以下の化合物を例としてあげることができるが、本発明はこれらに限定されない。具体的には、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることが出来る。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、トリメチロールプロパントリベンゾエート等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。またこれらアルキルフタリルアルキルグリコレート等を2種以上混合して使用してもよい。
カルボン酸エステル化合物としては、以下の化合物を例としてあげることができるが、本発明はこれらに限定されない。
本発明において用いられる多環カルボン酸化合物は分子量が3000以下の化合物であることが好ましく、特に250〜2000以下の化合物であることが好ましい。環状構造に関して、環の大きさについて特に制限はないが、3〜8個の原子から構成されていることが好ましく、特に6員環及び/又は5員環であることが好ましい。これらが炭素、酸素、窒素、ケイ素あるいは他の原子を含んでいてもよく、環の結合の一部が不飽和結合であってもよく、例えば6員環がベンゼン環、シクロヘキサン環でもよい。本発明に用いられる化合物は、このような環状構造が複数含まれているものであり、例えば、ベンゼン環とシクロヘキサン環をどちらも分子内に有していたり、2個のシクロヘキサン環を有していたり、ナフタレンの誘導体あるいはアントラセン等の誘導体であってもよい。より好ましくはこのような環状構造を分子内に3個以上含んでいる化合物であることが好ましい。また、少なくとも環状構造の1つの結合が不飽和結合を含まないものであることが好ましい。具体的には、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パラストリン酸などのアビエチン酸誘導体が代表的であり、以下にこれら化合物の化学式を示すが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明において用いられるビスフェノール誘導体は分子量が10000以下であることが好ましく、この範囲であれば単量体でも良いし、オリゴマー、ポリマーでも良い。また他のポリマーとの共重合体でも良いし、末端に反応性置換基が修飾されていても良い。
以下にこれら化合物の化学式を示すが、特にこれらに限定されるものではない。
上記logP値が0〜7である多価アルコールエステル化合物、カルボン酸エステル化合物、多環カルボン酸化合物、ビスフェノール誘導体の配合量は、上記セルロース体100質量部に対して0.1〜30質量部とするのが好ましく、1〜20質量部とするのが更に好ましい。
セルロースアシレートフィルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、紫外線吸収剤を含有することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムを、偏光板の保護フィルムとして用いる場合、紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は、セルロース体に対して0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.5〜5.0質量%であることがさらに好ましい。
セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、劣化防止剤添加による効果が発現し、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)を抑制する観点から、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。これらの微粒子の中ではケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子サイズが1nm〜20nmであり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径は1nm〜20nmであることが好ましく、5nm〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができて、より好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットルが好ましく、100〜200g/リットルがさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法により製造する。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記した好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
上記範囲で乾燥を行うことにより、フィルム中の微結晶の生成を低減することができる。
本発明の延伸セルロースアシレートフィルムはフィルム搬送方向(長手方向)、及び/あるいはこれと垂直な方向(幅方向)に延伸処理を行う。
Re発現性とRth発現性をともに向上させるためには、搬送方向及び幅方向の双方に延伸することが特に好ましい。
フィルムの延伸倍率は、1%〜100%が好ましく、5%〜90%がさらに好ましい。なお本発明においてフィルムの延伸倍率とは、下記数式(6)で求められる数値を指すものとする。
(フィルムの厚み)
本発明のセルロースアシレートフィルムの厚みは30μm以上120μm以下が好ましい。さらに好ましくは40μm以上100μm以下であり、最も好ましくは40μm以上70μm以下である。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(いずれも商品名、王子計測機器社製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長590nmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(13)及び式(14)によりRthを算出することもできる。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRにおいて算出される。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、「ポリマーハンドブック」(JOHN WILEY&SONS,INC)や、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRにおいてnx、ny、nzが算出される。この算出されたnx、ny、nzによりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
また、Re(590)は−200nm以上−5nm以下が好ましく、−150nm以上−10nm以下がさらに好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、例えば、ヘイズ計(1001DP型、商品名、日本電色工業社製)を用いて測定した値が0.1以上0.8以下であることが好ましい。さらに好ましくは、0.1以上0.7以下であり、最も好ましくは0.1以上0.60以下である。前記範囲にヘイズを制御することにより、光学補償フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に高コントラストの画像が得られる。
セルロースアシレートフィルムの吸水率は一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は一定温湿度に24時間放置した後、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
本発明のセルロースアシレートフィルムの25℃80%RHにおける平衡含水率が3.0質量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、2.5質量%以下であり、最も好ましくは2.0質量%以下である。
フィルムの平衡含水率を上記範囲にすることにより、フィルムのレターデーション変化小さくすることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは環境湿度による変化レターデーション変化が小さいことが好ましく、Re及びRthは下記式(7)及び(8)の関係を満たすことが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、例えば、セルロースエステルフィルムをサンプリングし、得られたフィルムの両端部30cm幅、長さ1m上に存在する30μm以上の異物あるいは凝集物の数を数えて求めた値が0〜50であることが好ましい。さらに好ましくは0〜40、特に好ましくは0〜30である。
セルロースアシレートフィルムの表面エネルギーを55〜75mN/mとするには、表面処理を施すことが好ましい。表面処理の例として、ケン化処理、プラズマ処理、火炎処理、および紫外線照射処理が挙げられる。ケン化処理には、酸ケン化処理およびアルカリケン化処理が含まれる。プラズマ処理にはコロナ放電処理およびグロー放電処理が含まれる。フィルムの平面性を保つために、これらの表面処理においては、セルロースアシレートフィルムの温度をガラス転移温度(Tg)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。これらの表面処理後のセルロースアセテートフィルムの表面エネルギーは55〜75mN/mであることが好ましい。
グロー放電処理は、10-3〜20Torr(0.133Pa〜2.67kPa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体は、上記のような条件においてプラズマ励起される気体であり、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000keV下で20〜500kGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500keV下で20〜300kGyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
〔光学補償シート〕
以上説明した少なくとも一種のレターデーション発現剤を含んで延伸され、上記レターデーション値Re、Rth、およびRe/Rth比を満たし、膜厚が40μm〜110μmのセルロースアシレートフィルムは、一枚だけで光学補償シートとして機能する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学補償シートとして用いることが好ましい。
偏光板は、偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。一方の保護膜として、上記のセルロースアシレートフィルムからなる光学補償シートを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
セルロースアシレートフィルムからなる光学補償シートの遅相軸と偏光膜の透過軸とは、実質的に平行になるように配置する。
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される透明保護膜には反射防止層を設けることが好ましい。特に本発明では、(1)透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層、または、(2)透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。以下にそれらの好ましい例を順に記載する。
本発明における光散乱層には、マット粒子が分散しており、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層の屈折率は1.35〜1.49の範囲にあることが好ましい。本発明において光散乱層は防眩性とハードコート性を兼ね備えており、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であり、好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は下記数式(9)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
本発明における低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含む。フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90〜120°、純水の滑落角が70°以下の熱または電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明の反射防止フィルムを画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難く、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
光散乱層は、表面散乱および/または内部散乱による光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、および必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。これらの光ラジカル開始剤等は公知のものを使用することができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。
マット粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒子サイズは前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al2O3、In2O3、ZnO、SnO2、Sb2O3、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理またはチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、光散乱層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒子サイズが光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。又、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例えば、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。又膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤併用(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6,210,858号明細書、特開2002−2776069号公報等)等が挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物およびその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、一般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。また、厚さは5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報段落[0018]〜[0026]、同11−38202号公報段落[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報段落[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例えば、サイラプレーン(商品名、チッソ社製)等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
さらに、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
ハードコート層は、反射防止層を設けた透明保護膜に物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。
硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等に記載のものが挙げられる。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
帯電防止層を設ける場合には体積抵抗率が10-8(Ωcm-3)以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10-8(Ωcm-3)の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。金属酸化物には着色しているものがあるが、これらの金属酸化物を導電性層素材として用いるとフィルム全体が着色してしまい好ましくない。着色のない金属酸化物を形成する金属としてZn、Ti、Al、In、Si、Mg、Ba、Mo、WまたはVをあげることができ、これらを主成分とした金属酸化物を用いることが好ましい。具体的な例としては、ZnO,TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V2O5等、あるいはこれらの複合酸化物がよく、特にZnO、TiO2およびSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加物、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等の添加、またTiO2に対してはNb、Ta等の添加が効果的である。更にまた、特公昭59−6235号公報に記載の如く、他の結晶性金属粒子あるいは繊維状物(例えば酸化チタン)に上記の金属酸化物を付着させた素材を使用しても良い。尚、体積抵抗値と表面抵抗値は別の物性値であり単純に比較することはできないが、体積抵抗値で10-8(Ωcm-3)以下の導電性を確保するためには、該導電層が概ね10-10(Ω/□)以下の表面抵抗値を有していればよく更に好ましくは10-8(Ω/□)である。導電層の表面抵抗値は帯電防止層を最表層としたときの値として測定されることが必要であり、本明細書に記載の積層フィルムを形成する途中の段階で測定することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。本発明の偏光板は、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、OCBモードまたはVAモードに好ましく用いることができる。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
OCBモードおよびVAモードの液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に二枚の偏光板を配置してもよいし、VAモードの場合、偏光板をセルのバックライト側に配置してもよい。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
<セルロース体>
表5に示すセルロース体をそれぞれ、下記の方法により合成した。本発明に用いられるセルロース体は、アルドリッチ社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.45)もしくはダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.41(商品名:L−70)、2.14(商品名:LM−80))を出発原料として、対応する酸クロリドとの反応により得た。また、アセチル置換度の低いセルロースアセテートは、アルドリッチ社製微結晶セルロースを出発原料とし、下記合成例1に記載の方法にてアセチル置換度1.80の中間体を合成した後、対応する酸クロリドとの反応により得た。
表5中、TAC1及びTAC2はそれぞれ、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の7頁〜12頁に記載された方法により作製した。
なお、各セルロース体の置換基の分極率異方性の値Δαを、Gaussian03(Revision B.03、米ガウシアン社製ソフトウェア、商品名)により計算した。具体的には、B3LYP/6−31G*レベルで最適化された構造を用いて、セルロースの構成単位であるβ−グルコース環上の水酸基に連結する置換基を水酸基の酸素原子を含む部分構造としてB3LYP/6−311+G**レベルで分極率テンソルを計算し、得られた分極率テンソルを対角化した後、対角成分を前記数式(1)に代入することにより算出した。表5中の置換度の( )内には置換されたアシル基の基名を示し、更に各基名に続けて( )内に上記方法により計算した各基の分極率異方性を示した。
また、セルロース体の2位、3位及び6位における高分極率置換基の置換度について、それぞれ13C−NMRにより測定した。結果を表5に示す。
セルロース(アルドリッチ社製微結晶セルロース、広葉樹パルプ)50質量部に酢酸50質量部を噴霧し、室温で3時間放置した。別途、アシル化剤として酢酸319質量部、無水酢酸331質量部、硫酸3.5質量部の混合物を作製し、−10℃に冷却した後に、前記の前処理を行ったセルロースを収容する反応容器に添加した。1時間経過後、内部温度を40℃まで上昇させて1時間攪拌した後に液温を30℃に調節し、30℃で測定した溶液粘度が1900cPになるまで攪拌を続けた。
反応容器を0℃の氷水浴にて冷却し、0℃に冷却した50%酢酸水溶液183質量部を添加した。内温を85℃に昇温し、さらに9時間攪拌した。
次いで反応容器に、酢酸マグネシウム4水和物12.2質量部、酢酸12.2質量部、水12.2質量部の混合溶液を添加し、60℃で2時間攪拌した。酢酸と水の混合物を徐々に水の比率を上昇させながら、合計で酢酸2500質量部、水6500質量部を加えてセルロースアセテートを沈殿させた。得られたセルロースアセテートの沈殿は75℃の温水にて、洗浄液を交換しながら4時間洗浄を行った。洗浄後、0.002質量%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌した後に脱液を行い、70℃で真空乾燥させた。
得られたセルロースアセテートは、アセチル化度1.80、数平均分子量63000、重量平均分子量178000、粘度平均重合度280であった。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにアルドリッチ社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.45)40g、ピリジン46.0ml、塩化メチレン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−001)を白色粉体として得た(45.8g、収率98%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにアルドリッチ社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.45)40g、ピリジン46.0ml、アセトン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて4時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−002)を白色粉体として得た(45.8g、収率99%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにアルドリッチ社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.45)40g、ピリジン46.0ml、アセトン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて4時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−003)を白色粉体として得た(44.2g、収率97%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにアサロン酸(2,4,5−トリメトキシ安息香酸)106.1g、トルエン400mlを量り取り、80℃で攪拌した。ここに塩化チオニル40.1mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに80℃にて2時間攪拌した。反応後、アスピレーターを用いて反応溶媒を溜去すると白色固体が得られた。得られた白色固体にヘキサン300mlを加えて激しく攪拌・分散し、吸引ろ過により白色固体をろ別し、さらに大量のヘキサンで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で4時間真空乾燥することにより目的のアサロン酸クロリドを白色粉体として得た(115.3g、収率99%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにアルドリッチ社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.45)40g、ピリジン46.0ml、アセトン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにアサロン酸クロリド84.0gを数回に分割して粉体添加し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白桃色固体が析出した。白桃色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白桃色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−004)を白色粉体として得た(47.0g、収率96%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.41)40g、ピリジン46.0ml、塩化メチレン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて4時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−005)を白色粉体として得た(43.8g、収率97%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにアルドリッチ社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.45)40g、ピリジン46.0ml、塩化メチレン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにアサロン酸クロリド84.0gを数回に分割して粉体添加し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白桃色固体が析出した。白桃色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白桃色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−006)を白桃色粉体として得た(45.0g、収率97%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.41)40g、ピリジン46.0ml、アセトン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて4時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−007)を白色粉体として得た(45.0g、収率99%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.41)40g、ピリジン46.0ml、アセトン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−008)を白色粉体として得た(42.0g、収率92%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.41)40g、ピリジン400mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−009)を白色粉体として得た(41.0g、収率91%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにアルドリッチ社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.45)40g、ピリジン400mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに50℃にて2時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−010)を白色粉体として得た(44.8g、収率97%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.41)40g、ピリジン46.0ml、アセトン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−011)を白色粉体として得た(42.0g、収率92%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.14)40g、ピリジン46.0ml、アセトン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−012)を白色粉体として得た(48.0g、収率97%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.14)40g、ピリジン46.0ml、塩化メチレン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−013)を白色粉体として得た(49.2g、収率98%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.14)40g、ピリジン46.0ml、アセトン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−014)を白色粉体として得た(48.1g、収率97%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.14)40g、ピリジン46.0ml、アセトン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて4時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−015)を白色粉体として得た(48.2g、収率99%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.14)40g、ピリジン400mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド62.4mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて2時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−016)を白色粉体として得た(49.0g、収率96%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコに合成例1に記載のセルロースアセテート(アセチル置換度1.80)36g、ピリジン400mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド93.0mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて4時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−017)を白色粉体として得た(46.0g、収率88%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコに合成例1に記載のセルロースアセテート(アセチル置換度1.80)36g、ピリジン400mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにアサロン酸クロリド84.0gを数回に分割して粉体添加し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、黄色固体が析出した。黄色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた黄白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−018)を黄白色粉体として得た(53.6g、収率85%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコに合成例1に記載のセルロースアセテート(アセチル置換度1.80)36g、ピリジン46.0ml、アセトン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにベンゾイルクロリド93.0mLをゆっくりと滴下し、添加後さらに50℃にて2時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−019)を白色粉体として得た(41.3g、収率85%)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコに合成例1に記載のセルロースアセテート(アセチル置換度1.80)36g、ピリジン46.0ml、アセトン500mlを量り取り、室温で攪拌した。ここにアサロン酸クロリド120.0gを数回に分割して粉体添加し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、黄色固体が析出した。黄色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた黄白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース体(M−020)を黄白色粉体として得た(50.9g、収率87%)。
表6に記載の組成物を耐圧性のミキシングタンクに投入し6時間攪拌して各成分を溶解し、セルロース体溶液(以下、ドープともいう)T−1〜T−30を調製した。
セルロース体溶液T−1〜T−30に用いられた添加剤(可塑剤及びレターデーション調節剤)に関し、前記数式(11−1)の左辺の数値を以下のようにして算出した。
まず、下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液をそれぞれ調製した。
セルロースアシレート(アセチル置換度2.86) 100質量部
表6記載の各添加剤 12質量部
メチレンクロライド 317質量部
メタノール 48質量部
一方、下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、レターデーション調節剤を含有しない比較用セルロースアシレート溶液を調製した。
セルロースアシレート(アセチル置換度2.86) 100質量部
メチレンクロライド 317質量部
メタノール 48質量部
調製したセルロースアシレート溶液を、後述するセルロースアシレートフィルム試料001と同様の方法により製膜し、それぞれ膜厚80μmのセルロースアシレートフィルムを作製した。
各セルロースアシレートフィルムのレターデーション(589nmにおけるRth)を、KOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器社製)を用いて本明細書に記載の方法と同様にして測定し、得られたRth値をそれぞれRth(a)、Rth(0)とした。a=12、および測定したRth(a)、Rth(0)より、数式(11−1)の左辺の数値を算出した。結果を表6に示す。
セルロース体溶液T−1〜T−30に用いられた添加剤(可塑剤及びレターデーション調節剤)に関し、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法により算出した。計算ソフトは、ChemDraw Ultra5.0を用いた。測定結果を表6に示す。
BDP:ビフェニルジフェニルフォスフェート
EPEG:エチルフタリルエチルグリコレート
UVB−3:2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UVB−7:2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ペンチルフェニル)−ベンゾトリアゾール
調製したセルロース体溶液T−1をバンド流延機にて金属支持体上に流延した後に乾燥を行い、自己支持性のあるドープ流延膜をバンドより剥離した。剥離したドープ膜をテンターでフィルム幅が維持されるように把持しながら乾燥した後、ロールに巻き取り、厚み80μmのセルロース体フィルム試料001を、幅方向が1.3mの長さとなるように作製した。
セルロース体フィルム試料001の作製方法において、セルロース体溶液をT−2〜T−18又はT−20〜T−26に変更したこと以外は同様の方法により、セルロース体フィルム試料002〜018及び020〜026を、フィルムの厚み及び幅方向の長さが表7に記載のとおりとなるように作製した。
セルロース体フィルム試料001の作製方法において、セルロース体溶液をT−19又はT−27〜T−30に変更し、またバンドより剥離した自己支持性のドープ膜の乾燥する工程にて、テンターで把持しながらTD方向(搬送方向と垂直な方向)に表7に記載の倍率で延伸する工程を追加したこと以外は同様の方法により、セルロース体フィルム試料019及び027〜030を、フィルムの厚み及び幅方向の長さが表7に記載のとおりとなるように作製した。
次に、作製したフィルム試料001に対し下記表面処理を行った。
作製したフィルム試料001を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロース体フィルムの表面をアルカリケン化した試料を作製した。
また、作製した他のフィルム試料002〜030についても同様に表面処理をした試料を作製した。
作製した各試料フィルムについて、KOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器社製)を用いて本明細書に記載の方法と同様にして、Re(589)及びRth(589)を測定した。その結果を表7に示す。
作製した各試料フィルムについて、本明細書に記載の方法にて、25℃80%RHにおけるフィルムの平衡含水率を測定した。その結果を表7に示す。
上記の表面処理済みフィルム試料001〜030を用い、下記の偏光板作製を行った。すなわち、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光膜を得た。作製した表面処理済みフィルム試料を2枚用意し、それぞれの片方の面(表面処理済の面)を偏光膜側にしながら偏光膜を間にして両側から挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせ、両面がセルロース体フィルム001によって保護された偏光板を得た。この際両側のセルロース体フィルム試料001の遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように貼り付けた。同様にして作製した表面処理済のフィルム試料002〜030についても偏光板を作製した。
作製した各偏光板試料について、クロスニコルでの透過率の400nm〜700nmの平均値について、60℃、95%RHの条件下に1300時間静置する前後の差を求めることで、偏光板耐久性を評価した。得られた結果を表7に示す。
これらに対し、分極率異方性が高い置換基が前記数式(A1)を満たすセルロース体からなる本発明のフィルム試料は、Rthがマイナスの値となることがわかった。また、更に平衡含水率を低くすることができ、偏光板用の保護フィルムとして使用した場合の高温高湿条件における耐久性試験後の偏向度の低下を抑制することができ、結果的に偏光板耐久性を向上できることがわかった。
また、同じセルロース体を用いた試料同士を比較すると、本明細書に記載された特定のレターデーション調節剤を用いた試料023〜030はそれぞれ、レターデーション調節剤を用いていない試料007、008、011、012、015、018、019、020よりもさらにRthを低減させることができることがわかった。
また、同じセルロース体M−005を用いた試料同士を比較すると、オクタノール−水分配係数(logP値)が1〜10である化合物をレターデーション調節剤として用いた試料023、031〜035は、logP値が10を超える化合物をレターデーション調節剤として用いた試料007よりもさらにRthを低減させることができることがわかった。
<偏光板一体型光学補償フィルム試料001の作製>
実施例1で作製したセルロース体フィルム試料001の表面を実施例1と同様の方法によりケン化処理した後、このフィルム上に下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーコータで20ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、形成した膜にフィルムの遅相軸方向と平行の方向にラビング処理を施して配向膜を形成した。
(配向膜塗布液の組成)
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
テトラメチルアンモニウムフルオライド 0.3質量部
セルロース体フィルム試料001の代わりに実施例1で作製したセルロース体フィルム試料023、025を用いる以外は偏光板一体型光学補償フィルム試料001の作製方法と同様の方法により偏光板一体型光学補償フィルム023、025を作製した。
図1は、IPSモード液晶セルを示す模式図である。一枚のガラス基板上に、図1に示す様に、液晶素子画素領域1において、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極(図1中、画素電極2及び表示電極3)を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。図1中に示すラビング方向4に、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769及び誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物(図1中、黒表示時の液晶化合物のダイレクター5a及び5b、並びに白表示時の液晶化合物のダイレクター6a及び6b)を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
次に上記で作製した偏光板一体型光学補償フィルムを用いて液晶表示装置を作製し、光漏れを評価した。なお、長尺状に作製した偏光板一体型光学補償フィルムについては、所定の大きさに裁断した後、液晶表示装置に組み込んだ。
接着剤を用いて、偏光板一体型光学補償フィルム001を、作製したIPSモード液晶セルの一方に、光学異方性層付きセルロース体フィルム試料001の遅相軸が液晶セルのラビング方向と直交になるように(即ち、光学補償層1の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と直交になるように)、且つディスコチック液晶位相差層面側が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、IPSモード液晶セル1のもう一方の側に、市販の偏光板(HLC2−5618、商品名、サンリッツ社製)をクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置001を作製した。
偏光板一体型光学補償フィルム023、025についても、同様の方法によりIPSモード液晶表示装置に組み込んだ液晶表示装置023、025を作製した。
作成した液晶表示装置の透過率の視野角依存性を測定した。抑角は正面から斜め方向へ10°毎に80°まで、方位角は水平右方向(0°)を基準として10°毎に360°まで測定した。黒表示時の輝度は正面方向から抑角が増すにつれ漏れ光による上昇が見られ、抑角70°近傍で最大値をとることがわかった。また黒表示時の輝度が増すことで、コントラストが悪化することもわかった。
そこで、黒表示時にて抑角60°、方位角が液晶セルのラビング方向から左方向に45°回転した方向から測定した輝度LAおよび白表示時にて抑角60°、方位角が液晶セルのラビング方向から左方向に45°回転した方向から測定した輝度LBを測定し、漏れ光(%)をLAのLBに対する割合として求めることで、コントラストを評価した。
(漏れ光)=LA/LB
その結果を表8に示す。
作成した液晶表示装置の画像中央部における正面の黒輝度と耐久性試験後の黒輝度を測定し、経時前の白輝度に対する黒輝度の経時前後の黒輝度の差の割合(%)を耐久性前後の黒輝度上昇率として、液晶表示装置の耐久性を評価した。
(耐久性評価)=((経時後の黒輝度)−(経時前の黒輝度))/(経時前の白輝度)
評価した結果を表8に示す。
2 画素電極
3 表示電極
4 ラビング方向
5a、5b 黒表示時の液晶化合物のダイレクター
6a、6b 白表示時の液晶化合物のダイレクター
Claims (16)
- 下記数式(1)により算出される分極率異方性の値Δαが異なる2つ以上の置換基を有するセルロース体を含有するセルロース体フィルムであって、前記セルロース体における分極率異方性の値Δαが最小の置換基をA、分極率異方性の値Δαが最大の置換基をBとしたとき、置換基A及び置換基Bの置換度が下記関係式(A1)を満たすことを特徴とするセルロース体フィルム。
- フィルムの膜厚方向のレターデーションRthが負であることを特徴とする請求項1記載のセルロース体フィルム。
- 前記置換基Bの分極率異方性の値が2.5×10-24cm3以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
- 前記の分極率異方性の値が2.5×10-24cm3以上である置換基Bが芳香族アシル基であることを特徴とする請求項5に記載のセルロース体フィルム。
- オクタノール−水分配係数(logP値)が1.0〜10.0であるレターデーション調節剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
- フィルムの25℃80%RHにおける平衡含水率が3.0%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
- フィルムの搬送方向、及び/又はこれと垂直な方向に1%以上100%以下延伸されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム。
- 前記レターデーション調節剤が、下記一般式(1)〜(19)のいずれかで表される化合物のうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項10記載のセルロース体フィルム。
(連結基群1)単結合、−O−、−CO−、−NR4−(R4は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。)、アルキレン基またはアリーレン基を表す。)
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載のセルロース体フィルムを含むことを特徴とする光学補償シート。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載のセルロース体フィルム上に光学異方性層を有することを特徴とする光学補償シート。
- 偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる偏光板であって、透明保護膜の少なくとも一方が、請求項12または13に記載の光学補償シートであることを特徴とする偏光板。
- 液晶セルおよびその両側に配置された2枚の偏光板からなる液晶表示装置であって、少なくとも1枚の偏光板が請求項14記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
- 表示モードがIPSモードであることを特徴とする請求項15記載の液晶表示装置。
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