JP2009102479A - セルロースアシレートフィルム、ならびにその用途及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有するセルロースアシレートを含むとともに、DSC(示差走査熱量測定計)を用いて測定されるエンタルピー緩和に由来する吸熱エンタルピー変化ΔHが、下記式(1)を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルムである。
4.1J/g≦ΔH≦7.1J/g 式(1)
【選択図】なし
Description
本発明は、上記問題点に鑑み、レターデーション調整剤を用いなくとも、厚み方向の負レターデーション(Rth)の絶対値が大きいセルロースアシレートフィルム、及びその種々の用途、具体的には、光学補償フィルム、偏光板、及び液晶表示装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、Rthが負に大きいとともに、ヘイズ及び脆性の点でも良好な性質を示すセルロースアシレートフィルム、及びその新規な製造方法を提供することを課題とする。
[1] 芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有するセルロースアシレートを含むとともに、DSC(示差走査熱量測定計)を用いて測定されるエンタルピー緩和に由来する吸熱エンタルピー変化ΔHが、下記式(1)を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
4.1J/g≦ΔH≦7.1J/g 式(1)
[2] 可塑剤を含有することを特徴とする[1]のセルロースアシレートフィルム。
[3] 前記可塑剤が、トリフェニルホスフェートとビフェニルジフェニルホスフェートとの混合物であることを特徴とする[2]のセルロースアシレートフィルム。
[4] 前記置換基Aの置換度DSAと前記置換基Bの置換度DSBが、下記式(5)〜(7)を満たすことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかのセルロースアシレートフィルム。
2.1≦DSB≦2.8 式(5)
0.2≦DSA≦0.9 式(6)
2.8≦DSA+DSB≦3.0 式(7)
[5] 前記置換基Aがベンゾイル基であり、前記置換基Bがアセチル基であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかのセルロースアシレートフィルム。
[6] 波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)及び同波長における厚み方向のレターデーションRthの値が、下記式(8)及び(9)を満たすことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかのセルロースアシレートフィルム。
|Re(550)|≦10nm 式(8)
−200nm≦Rth(550)≦−85nm 式(9)
[7] 下記式(10)を満たすことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかのセルロースアシレートフィルム。
(Rth(550)[nm]/d[μm])≦−1.8 式(10)
(d[μm]はフィルムの膜厚を示す。)
[8] ヘイズの値が1以下であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかのセルロースアシレートフィルム。
[9] 溶液流延法により製膜されたフィルムであって、流延時の溶媒が、少なくともジクロロメタン及びメタノールを含有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかのセルロースアシレートフィルム。
[10] 前記溶媒が、さらにブタノールを含有し、溶媒組成が、下記式(2)〜(4)を満たすことを特徴とする[9]のセルロースアシレートフィルム。
77%≦xCl≦95% 式(2)
5%≦xMe≦20% 式(3)
0.5%≦xBu≦3% 式(4)
(xCl、xMe、xBuはそれぞれ流延時のドープの溶媒中の、ジクロロメタン、メタノール、ブタノールの重量比率を表す。)
[11] [1]〜[10]のいずれかのセルロースアシレートフィルムを含むことを特徴とする光学補償シート。
[12] 偏光膜と、[1]〜[10]のいずれかのセルロースアシレートフィルムとを有することを特徴とする偏光板。
[13] 液晶セル、及びその両側に配置される2枚の偏光板を有する液晶表示装置であって、少なくとも1枚の偏光板が[12]の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
[14] セルロースアシレートフィルムの製造方法であって、
セルロースアシレートを少なくとも含む溶液を調製する溶液調製工程と、
前記溶液を表面に流延する流延工程とを含み、
前記溶液調製工程において、少なくとも、芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有するセルロースアシレートと、該セルロースアシレートに対して1.5〜5質量%の可塑剤とが、ジクロロメタンとメタノールとの混合溶媒に溶解した溶液を調製することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
[15] セルロースアシレートフィルムの製造方法であって、
セルロースアシレートを少なくとも含む溶液を調製する溶液調製工程と、
該溶液を表面に流延する流延工程とを含み、
前記溶液調製工程において、少なくとも、芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有するセルロースアシレートが、ジクロロメタンと、メタノールと、ブタノールとの混合溶媒であって、下記の溶媒組成の混合溶媒に溶解した溶液を調製することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
77%≦xCl≦95% 式(2)
5%≦xMe≦20% 式(3)
0.5%≦xBu≦3% 式(4)
(xCl、xMe、xBuはそれぞれ流延時のドープの溶媒中の、ジクロロメタン、メタノール、ブタノールの重量比率を表す。)
また、本発明によれば、Rthが負に大きく、薄膜化が可能であるとともに、ヘイズ及び脆性の点でも良好な性質を示すセルロースアシレートフィルム、及びその新規な製造方法を提供することができる。
[セルロースアシレートフィルム]
本発明は、芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有するセルロースアシレートを含むとともに、DSC(示差走査熱量測定計)を用いて測定されるエンタルピー緩和に由来する吸熱エンタルピー変化ΔHが、下記式(1)を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルムに関する。
4.1J/g≦ΔH≦7.1J/g 式(1)
本発明では、分極率異方性が高い芳香族基を含むアシル基を有するセルロースアシレートを用い、且つエンタルピー緩和に由来する吸熱エンタルピー変化ΔHを前記範囲とすることで、Rthが負に大きいとともに、ヘイズ及び脆性の観点でも良好な性質のセルロースアシレートフィルムを提供している。本発明の効果が得られるメカニズムは、次の通り推定することができる。エンタルピー緩和が進むとポリマー鎖がより安定な構造を形成する。芳香族基を含むアシル基を有するセルロースアシレートを含有するフィルムの安定構造は、分極率異方性の高い芳香族基が規則性をもって配向した異方性の高い構造であるので、エンタルピー緩和を進めることで、負のRth発現性が高まると推定できる。一方、エンタルピー緩和がより進み、この置換基の配向がより高くなり、規則性が増すにつれ、ポリマー鎖が凝集し、その凝集構造は、可視光を散乱するサイズにまで達する。その結果、フィルムのヘイズは上昇し、脆性の悪化も生じる。エンタルピー緩和に由来する吸熱エンタルピー変化ΔHが前記範囲であると、Rthが負に充分に大きいとともに、ヘイズ及び脆性の点でも良好な性質のセルロースアシレートフィルムになる。
(セルロースアシレート)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有する。セルロースは、β−1,4結合しているグルコース単位当り、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有する。前記置換基A及び置換基Bは、2位、3位及び6位の水酸基の酸素原子に直接又は連結基を介して結合する置換基である。ここでいう連結基とはアルキレン基、アルケニレン基、あるいはアルキニレン基を表し、連結基は置換基を有していてもよい。連結基として好ましくは1〜10のアルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基、より好ましくは原子数が1〜6のアルキレン基及びアルケニレン基、より好ましくは原子数が1〜4のアルキレン及びアルケニレン基である。
前記置換基A及びBは、2位、3位及び6位の水酸基の酸素原子に直接結合しているのが好ましく、即ち、2位、3位及び6位の水酸基の水素原子を置換する置換基であるのが好ましい。
置換基Aは、芳香族基を含むアシル基である。アシル基と芳香族基との間には、連結基が存在していてもよく、連結基として好ましくは1〜10のアルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基、より好ましくは原子数が1〜6のアルキレン基及びアルケニレン基、より好ましくは原子数が1〜4のアルキレン及びアルケニレン基である。但し、アシル基と芳香族基は直接結合しているのが好ましく、即ち、置換基Aは、Ar−C(=O)−(但し、Arは、置換もしくは無置換のアリール基)で表される置換基であるのが好ましい。置換基Aは、芳香族基の存在により分極率異方性が高い置換基である。分極率異方性Δαは、下記式により定義される。
Δα=αx−(αy+αz)/2
(式中、αxは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最大の成分であり;αyは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、二番目に大きい成分であり;αzは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最小の成分である。)
本発明では、前記置換基Aの分極率は、2.5×10-24cm3以上であるのが好ましい。なお、置換基の分極率異方性は、具体的には、Gaussian03(Revision B.03、米ガウシアン社ソフトウェア)を用いて計算することで算出できる。具体的には、分極率異方性はB3LYP/6−31G*レベルで最適化された構造を用いて、B3LYP/6−311+G**レベルで分極率を計算し、得られた分極率テンソルを対角化した後、対角成分より算出することができる。
芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがより好ましく、6〜10のものがもっとも好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられ、より好ましくはフェニル基である。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が特に好ましい。芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。そのヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、トリアジニル基、キノリル基が特に好ましい。
前記置換基Bは、脂肪族アシル基であり、Ali−C(=O)−(但し、Aliは、置換もしくは無置換の脂肪族基であるが、置換基として芳香族基を有しない)で表される置換基である。前記置換基Bは、直鎖状、分岐状あるいは環状構造の脂肪族アシル基のいずれであってもよく、また不飽和結合を含む脂肪族基のアシル基であってもよい。好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜4の脂肪族アシル基である。置換基Bの好ましい例には、アセチル基、プロピオニル基、及びブチリル基が含まれ、中でもアセチル基が好ましい。アセチル基等の炭素数が少ない置換基Bを有することにより、Tgおよび弾性率などを低下させずに、フィルムとして適切な強度を得ることができる。
前記置換基A及び前記置換基Bの好ましい組み合わせ例は、前記置換基Aがベンゾイル基及び前記置換基Bがアセチル基の組み合わせである。
2.1≦DSB≦2.8 式(5)
0.2≦DSA≦0.9 式(6)
2.8≦DSA+DSB≦3.0 式(7)
セルロースアシレートの原料綿は、綿花リンタ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などの天然セルロースはもとより、微結晶セルロースなど木材パルプを酸加水分解して得られる重合度の低い(重合度100〜300)セルロースでも使用することができ、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)及び「セルロースの事典(523頁)」(セルロース学会編、朝倉書店、2000年発行)に記載のセルロースを用いることができ、特に限定されるものではない。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、可塑剤を含んでいるのが好ましい。可塑剤は、ポリマー鎖の凝集を抑制し、ヘイズや脆性の観点での性質を改善するのに寄与する。その種類及び/又は添加量を選択することで、Rthが負に充分に大きいとともに、ヘイズや脆性の点でも良好なバランスのとれたセルロースアシレートフィルムが得られる。前記可塑剤として、セルロースアシレート系フィルムに用いられている種々の可塑剤を用いることができる。中でも、トリフェニルホスフェートとビフェニルジフェニルホスフェートとの混合物であるのが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、一般的にセルロースアシレートに添加される種々の添加剤(例えば、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤等)を添加してもよい。これらの添加剤の添加時期は、後述するドープ調製工程のいずれのタイミングであってもよい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、Rth調整剤を添加することなしに、Rthが負に大きい光学特性を達成可能である。但し、用途によって、本発明のセルロースアシレートフィルムが示すRthでは不十分の場合は、種々のRth調整剤を添加しても勿論よい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、溶融製膜法及び溶液製膜法のいずれによって製造されたフィルムであってもよい。例えば、溶融製膜に関しては、特開2006−348123号公報を、溶液製膜に関しては、特開2006−241433号公報を参照し、製造することができる。溶液製膜法により製造すると、溶媒組成によって、製造されるフィルムのエンタルピー緩和の程度を調整できるので好ましい。
以下、溶液流製膜法を利用した本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法例について説明する。
・溶液製膜法
溶液製膜法では、セルロースアシレートの溶液を調製し、該溶液を支持体表面に流延し、製膜する。前記セルロースアシレート溶液の調製に用いる溶媒については、特に限定されない。好ましい溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレンなどの塩素系有機溶剤、ならびに非塩素系有機溶媒を挙げることができる。前記非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン及び、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、例えば、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例としては、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ペンチルが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例としては、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが挙げられる。
77%≦xCl≦95% 式(2)
5%≦xMe≦20% 式(3)
0.5%≦xBu≦3% 式(4)
下記式(2)’〜(4)’を満たしているのがより好ましい。
83%≦xCl≦91% 式(2)’
8%≦xMe≦15% 式(3)’
1%≦xBu≦2% 式(4)’
なお、式中、xCl、xMe、xBuはそれぞれ流延時のドープの溶媒中の、ジクロロメタン、メタノール、ブタノールの重量比率を表す。
セルロースアシレートを少なくとも含む溶液を調製する溶液調製工程と、
前記溶液を表面に流延する流延工程とを含み、
前記溶液調製工程において、少なくとも、置換基A及び置換基Bを有するセルロースアシレートと、該セルロースアシレートに対して1.5〜5質量%の可塑剤とが、ジクロロメタンとメタノールとの混合溶媒に溶解した溶液を調製することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法;及び
セルロースアシレートフィルムの製造方法であって、
セルロースアシレートを少なくとも含む溶液を調製する溶液調製工程と、
該溶液を表面に流延する流延工程とを含み、
前記溶液調製工程において、少なくとも、置換基A及び脂肪族アシル基置換基Bを有するセルロースアシレートが、ジクロロメタンと、メタノールと、ブタノールとの混合溶媒であって、下記の溶媒組成の混合溶媒に溶解した溶液を調製することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法:
77%≦xCl≦95% 式(2)
5%≦xMe≦20% 式(3)
0.5%≦xBu≦3% 式(4)
(xCl、xMe、xBuはそれぞれ流延時のドープの溶媒中の、ジクロロメタン、メタノール、ブタノールの重量比率を表す。);にも関する。
上記製造方法によれば、分極率異方性の高い置換基Aを有するセルロースアシレートを使用することによってエンタルピー緩和量が過度に高くなるのを抑制し、ヘイズ及び脆性を悪化させることなく、Rthが負に大きいセルロースアシレートフィルムを安定的に製造することができる。勿論、本発明のセルロースアシレートフィルムも、前記本発明の製造方法により製造することができる。
・ 延伸
溶融製膜法あるいは溶液製膜法等によって製造した本発明のセルロースアシレートフィルムに、さらに延伸処理を施してもよい。
延伸は製膜工程中、オン−ラインで実施してもよく、製膜完了後、一度巻き取った後オフ−ラインで実施してもよい。すなわち、溶融製膜の場合、延伸は製膜中の冷却が完了しない実施してもよく、冷却終了後に実施してもよい。
延伸はTg〜(Tg+50℃)で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+1℃)〜(Tg+30℃)、特に好ましくは(Tg+2℃)〜(Tg+20℃)である。好ましい延伸倍率は0.1%〜500%、さらに好ましくは10%〜300%、特に好ましくは30%〜200%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここでいう延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
縦延伸、横延伸の延伸速度は10%/分〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20%/分〜1000%/分、特に好ましくは30%/分〜800%/分である。多段延伸の場合、各段の延伸速度の平均値を指す。
このようにして延伸した後の膜厚は10〜300μmが好ましく、20μm〜200μmがより好ましく、30μm〜100μmが特に好ましい。
また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶媒を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶媒量が2〜30質量%で好ましく延伸することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムに、所望により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理などを行うことができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは単独で使用してもよく、これらと偏光板を組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用してもよい。
・ 光学的性質
本発明のセルロースアシレートフィルムは、面内レターデーションReが小さく、且つ厚み方向レターデーションRthが負に大きいという光学特性を示す。具体的には、本発明のセルロースアシレートフィルムは、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)及び同波長における厚み方向のレターデーションRthの値が、下記式(8)及び(9)を満たす光学特性を達成可能である。
|Re(550)|≦10nm 式(8)
−200nm≦Rth(550)≦−85nm 式(9)
前記光学特性を示すセルロースアシレートフィルムは、種々のモードの液晶表示装置の光学補償に有用であり、特に、IPSモード液晶表示装置の光学補償に有用である。IPSモード液晶表示装置の光学補償用とするためには、本発明のセルロースアシレートフィルムは、下記式(8)’及び(9)’を満足するのが好ましい。
|Re(550)|≦5nm 式(8)’
−170nm≦Rth(550)≦−90nm 式(9)’
(Rth(550)[nm]/d[μm])≦−1.8 式(10)
(d[μm]はフィルムの膜厚を示す。)
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHによりnx、ny、nzを算出することができる。
液晶表示装置の部材として用いられるフィルムには、高い透明性が要求される。具体的には、ヘイズが1以下のフィルムを用いることが好ましいが、本発明のセルロースアシレートフィルムは、ヘイズの値1以下を達成可能である。ヘイズは、好ましくは
0.8以下、及びより好ましくは0.5以下であり、本発明のセルロースアシレートフィルムは、これらの低ヘイズ値を示すことが可能である。フィルムのヘイズは、例えば、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いて測定することができる。
液晶表示装置の部材として用いられるフィルムには、脆性がないこと、即ち、ある程度の強度があることが要求される。具体的には、室温での破断伸度を測定することで脆性を評価することができる。破断伸度の測定は、フィルム試料10mm×150mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後、引張り試験機(ストログラフ―R2(東洋精機製))で、チャック間距離50mm、温度25℃、延伸速度5mm/分で行った。破断伸度は15%以上50%以下であるのが好ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムは、15%以上50%以下を達成可能であり、好ましくは、20%以上45%以下であり、より好ましくは25%以上42%以下である。
含水率の測定法は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(アクアカウンターAQ−200、LE−20S、共に平沼産業(株))にてカールフィッシャー法で測定する。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。
本発明のセルロースアシレートフィルムの平衡含水率は、25℃80%RHにおける平衡含水率が0〜3%であることが好ましい。0.1〜2%であることがより好ましく、0.3〜1.5%であることが特に好ましい。3%以上の平衡含水率であると、光学補償フィルムの支持体として用いる際にレターデーションの湿度変化による依存性が大きく、光学補償性能が低下するため好ましくない。
・ 光弾性係数
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板保護フィルム、又は位相差板として使用されることが好ましい。偏光板保護フィルム、又は位相差板として使用した場合には、吸湿による伸張、収縮による応力により複屈折(Re,Rth)が変化する場合がある。このような応力に伴う複屈折の変化は光弾性係数として測定できるが、その範囲は、5×10-7(cm2/kgf)〜30×10-7(cm2/kgf)が好ましく、6×10-7(cm2/kgf)〜25×10-7(cm2/kgf)がより好ましく、7×10-7(cm2/kgf)〜20×10-7(cm2/kgf)であることが特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは位相差フィルムとして用いることができる。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムに、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板の形成)、光学補償層の付与(光学補償フィルム)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、種々の液晶表示装置、特にIPSモード液晶表示装置、の光学補償フィルムとして有用であり、特に、黒表示における液晶セル中に発生する複屈折を補償するために利用される。本発明の光学補償フィルムは、本発明のセルロースアシレートフィルムのみからなる態様であっても、本発明のセルロースアシレートフィルムと、その上に、液晶組成物の硬化膜からなる光学異方性層を有する態様であってもよい。
前記光学異方性層の形成には、液晶化合物を含有する液晶組成物が用いられる。前記液晶化合物の例には、棒状液晶及び円盤状液晶が含まれる。棒状液晶及び円盤状液晶は、高分子液晶でも低分子液晶でもよい。また、低分子液晶が架橋されて硬化した後は、液晶組成物は、液晶性を示さなくてもよい。例えば、円盤状液晶分子に関しては、特開平8−50206号公報を、棒状液晶分子に関しては、特開2002−62427号公報を参照し、製造することができる。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは反射防止フィルムとして利用することができる。反射防止フィルムとして利用する場合は、セルロースアシレートフィルム上に反射防止層を形成するのが好ましい。反射防止フィルムは通常の製造方法に基づき製造することができ、例えば、特開2006−241433号公報を参照し、製造することができる。
本発明は、偏光膜と該偏光膜を挟持する2枚の保護フィルムとからなる偏光板であって、2枚の保護フィルムの少なくとも一方が、本発明のセルロースアシレートフィルムである偏光板にも関する。該セルロースアシレートフィルムは、光学異方性層を有する光学補償フィルムの一部として、また反射防止層を有する反射防止フィルムの一部として、偏光膜に貼り合せられていてもよい。他の層を有する場合も、本発明のセルロースアシレートフィルムの表面が、偏光膜の表面に貼り合せられているのが好ましい。例えば、特開2006−241433号公報を参照し、製造することができる。
本発明は、本発明のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1枚含む画像表示装置にも関する。本発明のセルロースアシレートフィルムは、位相差フィルムとして、又は偏光板、光学補償フィルム及び反射防止フィルム等の一部として、表示装置に用いられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは位相差フィルムとして、又はセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板、光学補償フィルムもしくは反射防止フィルムとして、液晶表示装置に好ましく組み込むことができる。液晶表示装置としては、TN型、IPS型、FLC型、AFLC型、OCB型、STN型、ECB型、VA型及びHAN型の表示装置が挙げられ、好ましくはIPS型である。また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても好ましく用いることができる。
《セルロースアシレートフィルムの作製》
下記に従い、セルロースアシレートフィルムを作製した。
下記表に記載のセルロースアシレート1を下記の方法により合成した。分極率異方性Δαは上述の方法にしたがって測定した。本発明のセルロースアシレートは、アルドリッチ社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.45)もしくはダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.41(商品名:L−70)、2.14(商品名:LM−80))を出発原料として、対応する酸クロリドとの反応により得ることができる。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.41)40g、ピリジン46.0mL、塩化メチレン300mLをはかり量り取り、室温で攪拌した。ここに62.4mLのベンゾイルクロリドをゆっくりと滴下し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的の化合物を白色粉体として得た。得られたサンプルについて、置換度の測定はC13−NMRにおけるアシル基中のカルボニル炭素のピーク強度から置換度を求めた。
合成例1のセルロースアシレート1を120℃で2時間乾燥させた後、下記に記載の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
=====================================
メチレンクロライド 375質量部
メタノール 33質量部
トリフェニルホスフェート 1.4質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 0.6質量部
セルロースアシレート1 100質量部
2酸化ケイ素微粒子 0.25質量部
=====================================
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
このようにして得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(FH025、ポール社製)にて濾過してセルロースアシレート溶液を得た。
流延部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、テンターでフィルム両端を把持した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、140℃の条件で、Re=0となるように必要に応じて幅方向に1〜4%の倍率で横一軸延伸を行なった後、テンターから離脱させた。フィルム両端のクリップ跡部分を切り取った後、複数のパスロールからなる135℃〜140℃の乾燥部にフィルムを通して残留溶媒量が0.2%以下になるように乾燥させた。このようにして長尺状で膜厚80μmのセルロースアシレートフィルム1を得た。
フィルム試料の評価については、上記で得られた各フィルム試料の一部(120mm×120mm)を準備し、レターデーション値については"KOBRA 21ADH"(王子計測機器(株)社製)により、25℃60%RHにおける波長590nmの光に対するRthを測定した。結果を下記表に示す。
また、各フィルムのエンタルピー緩和に由来する吸熱エンタルピー変化ΔHを、DSC2910、T.A.インスツルメントにより測定した。
また、各フィルムのヘイズを、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)により測定した。
また各フィルムの破断伸度をストログラフ−R2(東洋精機製)により測定した。
なお、液晶表示装置の光学補償フィルムや、偏光板の保護フィルムとして使用するためには、ヘイズは、1.0以下、及び破断伸度は15%以上であることが必要である。また、IPSモード液晶表示装置の光学補償に利用するためには、Rth(550)は、−85nm以下である必要がある。
(光学フィルム1の作製)
市販のノルボルネン系フィルム(商品名「ゼオノアZF−14」、日本ゼオン(株)製)を150℃の温度条件で長手方向に60%の一軸延伸を行い、長さ500mの光学フィルム1を得た。上記で得られたフィルム試料の一部(120mm×120mm)を準備し、レターデーション値については"KOBRA 21ADH"(王子計測機器(株)社製)により、25℃60%RHにおける波長590nmの光に対するRe、Rthを測定したところ、Re=116nm、Rth=59nmであった。
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタックTFY80UF、富士フイルム(株)製)を、もう一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタックT40UZ、富士フイルム(株)製、厚さ40μm、Re=1nm、Rth=35nm)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせた。さらに前述のセルロースアシレートフィルム1を接着剤を用いて、T40UZの上に連続して貼り合わせた。続いて、このセルロースアシレートフィルム1側に前述の光学フィルム1を接着剤を用いて連続して貼り合わせて長さ500mの長尺状の偏光板一体型光学補償フィルム1を作製した。偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であり、光学フィルム1の遅相軸はフィルム長手方向に対して平行であった。
このロール状の偏光板一体型光学補償フィルム1の任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板1を得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になる(光学フィルム1の遅相軸と直交する)ように行った。
上述と同様にして長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)を、もう一方の面に、ケン化処理した上記表中のセルロースアシレートフィルム6を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせた。さらに前述の光学フィルム1を接着剤を用いて、セルロースアシレートフィルム6の上に連続して貼り合わせて長さ500mの長尺状の偏光板一体型光学補償フィルム2を作製した。偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であり、光学フィルム1の遅相軸はフィルム長手方向に対して平行であった。
このロール状の偏光板一体型光学補償フィルム2の任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板2を得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタックTFY80UF、富士フイルム(株)製)を、もう一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタックT40UZ、富士フイルム(株)製、厚さ40μm、Re=1nm、Rth=35nm)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせた。さらに上記表中のセルロースアシレートフィルム2を接着剤を用いて、T40UZの上に連続して貼り合わせた。続いて、このセルロースアシレートフィルム2側に変性ポリカーボネートフィルム(ピュアエースWRF S−141、帝人(株)製、Re=141nm、Rth=70nm、膜厚50μm)を接着剤を用いて連続して貼り合わせて長さ500mの長尺状の偏光板一体型光学補償フィルム3を作製した。偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であり、変性ポリカーボネートフィルムの遅相軸はフィルム長手方向に対して平行であった。
このロール状の偏光板一体型光学補償フィルム3の任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板3を得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になる(光学フィルム1の遅相軸と直交する)ように行った。
上述と同様にして長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)を、もう一方の面に、ケン化処理した上記表中のセルロースアシレートフィルム7を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせた。さらに変性ポリカーボネートフィルム(ピュアエースWRF S−141、帝人(株)製、Re=141nm、Rth=70nm、膜厚50μm)を接着剤を用いて、セルロースアシレートフィルム7の上に連続して貼り合わせて長さ500mの長尺状の偏光板一体型光学補償フィルム4を作製した。偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であり、変性ポリカーボネートフィルムの遅相軸はフィルム長手方向に対して平行であった。
このロール状の偏光板一体型光学補償フィルム4の任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの積層偏光板4を得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。
セルロースアシレートフィルム1を、上記表中のセルロースアシレートフィルム3に代えた以外は、偏光板一体型光学補償フィルム1と同様にして、偏光板一体型光学補償フィルム5を作製し、その後同様に裁断して、20cm×20cmの大きさの積層偏光板5を得た。
<偏光板一体型光学補償フィルム6の作製>
セルロースアシレートフィルム6を、上記表中のセルロースアシレートフィルム8に代えた以外は、偏光板一体型光学補償フィルム2と同様にして、偏光板一体型光学補償フィルム6を作製し、その後同様に裁断して、20cm×20cmの大きさの積層偏光板6を得た。
<偏光板一体型光学補償フィルム7の作製>
セルロースアシレートフィルム2を、上記表中のセルロースアシレートフィルム4に代えた以外は、偏光板一体型光学補償フィルム3と同様にして、偏光板一体型光学補償フィルム7を作製し、その後同様に裁断して、20cm×20cmの大きさの積層偏光板7を得た。
<偏光板一体型光学補償フィルム8の作製>
セルロースアシレートフィルム7を、上記表中のセルロースアシレートフィルム9に代えた以外は、偏光板一体型光学補償フィルム4と同様にして、偏光板一体型光学補償フィルム8を作製し、その後同様に裁断して、20cm×20cmの大きさの積層偏光板8を得た。
セルロースアシレートフィルム1を、上記表中のセルロースアシレートフィルム5に代えた以外は、偏光板一体型光学補償フィルム1と同様にして、偏光板一体型光学補償フィルム9を作製し、その後同様に裁断して、20cm×20cmの大きさの積層偏光板9を得た。
<偏光板一体型光学補償フィルム10の作製>
セルロースアシレートフィルム6を、上記表中のセルロースアシレートフィルム10に代えた以外は、偏光板一体型光学補償フィルム2と同様にして、偏光板一体型光学補償フィルム10を作製し、その後同様に裁断して、20cm×20cmの大きさの積層偏光板10を得た。
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長さ500mの偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、ケン化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)を、もう一方の面にケン化処理したセルローストリアセテートフィルム(Z−タックZRF65、富士フイルム(株)製)とを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせ、長さ500mの偏光板Aを作製した。偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であった。
このロール状偏光板Aの任意の部分から裁断し、20cm×20cmの大きさの偏光板Aを得た。なお、裁断は一方の辺が偏光膜の吸収軸と平行になるように行った。
一枚のガラス基板上に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行った。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行って配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が反平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769及び誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマティック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
作製したIPSモード液晶セルの一方に、上記作製した積層偏光板1をその吸収軸を液晶セルのラビング方向(黒表示時の液晶分子の遅相軸方向)に直交に、即ち透過軸を黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行に、光学フィルム1が液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、液晶セルのもう一方の側に上記作製した偏光板AをZ−TACが液晶セル側になるようにクロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置1を作製した。
<液晶表示装置2〜10の作製>
積層偏光板1を積層偏光板2〜10のそれぞれに代えた以外は、液晶表示装置1と同様にして(光学フィルム1又は変性ポリカーボネートフィルムが液晶セル側になるようにして貼り付け)、液晶表示装置2〜10をそれぞれ作製した。
各液晶表示装置について、黒表示時の斜め方向に生じる光漏れ及び色味み付きを評価したところ、いずれも良好であった。
Claims (15)
- 芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有するセルロースアシレートを含むとともに、DSC(示差走査熱量測定計)を用いて測定されるエンタルピー緩和に由来する吸熱エンタルピー変化ΔHが、下記式(1)を満たすことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
4.1J/g≦ΔH≦7.1J/g 式(1) - 可塑剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記可塑剤が、トリフェニルホスフェートとビフェニルジフェニルホスフェートとの混合物であることを特徴とする請求項2に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記置換基Aの置換度DSAと前記置換基Bの置換度DSBが、下記式(5)〜(7)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
2.1≦DSB≦2.8 式(5)
0.2≦DSA≦0.9 式(6)
2.8≦DSA+DSB≦3.0 式(7) - 前記置換基Aがベンゾイル基であり、前記置換基Bがアセチル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)及び同波長における厚み方向のレターデーションRthの値が、下記式(8)及び(9)を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
|Re(550)|≦10nm 式(8)
−200nm≦Rth(550)≦−85nm 式(9) - 下記式(10)を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
(Rth(550)[nm]/d[μm])≦−1.8 式(10)
(d[μm]はフィルムの膜厚を示す。) - ヘイズの値が1以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 溶液流延法により製膜されたフィルムであって、流延時の溶媒が、少なくともジクロロメタン及びメタノールを含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記溶媒が、さらにブタノールを含有し、溶媒組成が、下記式(2)〜(4)を満たすことを特徴とする請求項9に記載のセルロースアシレートフィルム。
77%≦xCl≦95% 式(2)
5%≦xMe≦20% 式(3)
0.5%≦xBu≦3% 式(4)
(xCl、xMe、xBuはそれぞれ流延時のドープの溶媒中の、ジクロロメタン、メタノール、ブタノールの重量比率を表す。) - 請求項1〜10のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを含むことを特徴とする光学補償シート。
- 偏光膜と、請求項1〜10のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムとを有することを特徴とする偏光板。
- 液晶セル、及びその両側に配置される2枚の偏光板を有する液晶表示装置であって、少なくとも1枚の偏光板が請求項12に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
- セルロースアシレートフィルムの製造方法であって、
セルロースアシレートを少なくとも含む溶液を調製する溶液調製工程と、
前記溶液を表面に流延する流延工程とを含み、
前記溶液調製工程において、少なくとも、芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有するセルロースアシレートと、該セルロースアシレートに対して1.5〜5質量%の可塑剤とが、ジクロロメタンとメタノールとの混合溶媒に溶解した溶液を調製することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。 - セルロースアシレートフィルムの製造方法であって、
セルロースアシレートを少なくとも含む溶液を調製する溶液調製工程と、
該溶液を表面に流延する流延工程とを含み、
前記溶液調製工程において、少なくとも、芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有するセルロースアシレートが、ジクロロメタンと、メタノールと、ブタノールとの混合溶媒であって、下記の溶媒組成の混合溶媒に溶解した溶液を調製することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
77%≦xCl≦95% 式(2)
5%≦xMe≦20% 式(3)
0.5%≦xBu≦3% 式(4)
(xCl、xMe、xBuはそれぞれ流延時のドープの溶媒中の、ジクロロメタン、メタノール、ブタノールの重量比率を表す。)
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