JP4756825B2 - 高比表面積のタンタルおよび/またはニオブの粉体を製造するための方法 - Google Patents

高比表面積のタンタルおよび/またはニオブの粉体を製造するための方法 Download PDF

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Description

本発明は、高比表面積のタンタルおよび/またはニオブの粉体を製造するための方法に関する。
タンタルおよびニオブ粉体の重要な用途は、電解コンデンサーの製造での使用である。タンタルまたはニオブ固体電解コンデンサーの製造では、典型的には次の工程を含む、すなわち、包埋したタンタルまたはニオブのリード線と共にタンタルまたはニオブ粉体を圧縮してペレットを形成する工程、そのペレットを焼結して多孔質物体とする工程、それに続けて、陽極酸化することによって多孔質ペレットの表面に連続した誘電体酸化物薄膜を形成させる工程、カソード物質を用いて酸化物膜をコーティングする工程、そして最後に密封作業である。コンデンサーの静電容量は、タンタルおよび/またはニオブの粉体の表面積によって決まってくる。使用する粉体の表面積が大きいほど、得られるコンデンサーの静電容量が大きくなる。コンデンサーの漏れ電流もまた、コンデンサーの容量を評価する際の大きなパラメーターである。不純物が存在すると酸化物膜の誘電性が低下するので、高純度のタンタルおよび/またはニオブの粉体を使用することによって、漏れ電流の低いコンデンサーを得ることができる。
従来技術においては、タンタルおよびニオブ粉体を製造するには2種類の方法がある。1つの方法は電子ビーム法であって、その場合、電子ビームで溶融させたタンタルまたはニオブのインゴットを水素化してから粉末化するが、そこで得られる粉体は純度は高いものの、表面積が小さく、そのためにそれらの粉体を使用して作ったコンデンサーの静電容量は小さいものになってしまう。もう1つの方法は、化学還元法で、この場合は、タンタルまたはニオブを含む化合物を還元剤を用いて還元し、得られた粉体を酸および水を用いて浸出する。
タンタル粉体を製造するための典型的なプロセスは、フルオロタンタル酸カリウム(KTaF)をナトリウムを用いて還元する方法で、これは米国特許第3,012,877号明細書に記載されている。国際公開第91/18,121号パンフレットにまとめられているように、化学還元法によって高比表面積のタンタル粉体を得るためには、ある程度の量の、NaCl、KCl、KFおよびNaFから選択されるアルカリ金属ハライドのような希釈剤を、還元させる原料物質の中に添加していた。しかしながら、粉体の表面積を高くしようとすると、タンタル粉体を製造する前記の方法において、より多くの希釈剤を使用しなければならない。残念ながら希釈剤を大量に使用すると、タンタル粉体がより多くの不純物で汚染され、また、収率も低下する。その上、粉体の表面積がある程度に達すると、還元反応に使用する希釈剤をそれ以上使用したとしても、表面積はほとんど増やすことができなくなる。その結果、ナトリウムを用いてKTaFを還元して工業的に得られるタンタル粉体は通常、その表面積が0.2〜2.0m/gの間となるので、化学還元法によってより高い表面積のタンタル粉体を製造することは、ほとんど不可能である。
米国特許第6,136,062号明細書には、対応するニオブおよび/またはタンタルの酸化物を金属マグネシウムを用いて還元することにより、ニオブおよび/またはタンタル粉体を製造する方法が開示されているが、そこでは、平均組成が(Nb,Ta)O(x=0.5〜1.5)に相当するところまで、第1の還元ステージを実施し、第2の還元ステージの前に、この第1ステージで得られた還元生成物から過剰の還元用金属および還元により生成したアルカリ土類金属酸化物を、鉱酸を用いて洗浄することにより除去する。このプロセスでは高い比表面積のニオブおよび/またはタンタル粉体を製造することが可能ではあるが、使用する還元剤の量があまりにも多く、そのため必要となる酸の量もあまりにも多くなるという欠点がある。その上、このプロセスでは2ステージの還元が含まれ、しかも、第1ステージにおける還元の程度を厳密に調節しなければならない。したがって、このプロセスは複雑となるともに、効率が低い。
上記の問題を解決するために本願発明者らは、高い比表面積のタンタルおよび/またはニオブの粉体を製造するための経済的な方法を開発したが、その方法では、タンタルおよび/またはニオブの酸化物の還元を、アルカリ金属と、Mg、Ca、Sr、BaおよびCeのハライドからなる群より選択される少なくとも1種のハライドとを使用して実施する。
本発明の目的は、対応するタンタルおよび/またはニオブの酸化物を還元することによって、高い比表面積のタンタルおよび/またはニオブの粉体を製造するための経済的なプロセスを提供することであって、ここで、その還元は、タンタルおよび/またはニオブの粉体を形成するように、タンタルおよび/またはニオブの酸化物を、少なくとも1種の金属ハライドおよびアルカリ金属と400〜1200℃の範囲で反応させることにより実施し、そして、前記金属ハライドは、Mg、Ca、Sr、BaおよびCeのハライドからなる群より選択されるものである。
本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも1種のアルカリ金属ハライドを還元の際の希釈剤としてさらに使用するが、前記アルカリ金属ハライドは塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムから選択することができる。
本発明の1つの実施態様によれば、前記方法には、前記のMg、Ca、Sr、BaおよびCeのハライドからなる群より選択される少なくとも1種の金属ハライド、アルカリ金属、タンタルおよび/またはニオブの酸化物、および任意成分の少なくとも1種のアルカリ金属ハライドを反応器に仕込む工程と、前記タンタルおよび/またはニオブの酸化物がタンタルおよび/またはニオブの粉体に還元されるように反応器を加熱して昇温させ工程とが含まれる。
本発明のまた別の実施態様によれば、前記方法には、前記のMg、Ca、Sr、BaおよびCeのハライドからなる群より選択される少なくとも1種の金属ハライドと任意成分のアルカリ金属ハライドとを反応器に仕込む工程、反応器を加熱して昇温させ溶融浴(molten bath)を形成する工程、次いで、前記タンタルおよび/またはニオブの酸化物がタンタルおよび/またはニオブの粉体に還元されるように反応器の温度を調節して、タンタルおよび/またはニオブの酸化物およびアルカリ金属の所要量をその溶融浴に計量仕込みする工程、が含まれる。
本発明の方法によれば、この還元は通常、温度を400〜1200℃の範囲、好ましくは600〜1000℃の範囲とし、約20〜300分間で実施することで、還元を完了させることができる。
本発明によれば、前記アルカリ金属は還元剤として使用され、前記アルカリ金属はナトリウム、カリウムおよびリチウムから選択するのが好ましく、ナトリウムおよび/またはカリウムが特に好ましい。使用するアルカリ金属の量は、タンタルおよび/またはニオブの酸化物を還元させるための化学量論量の1.0〜1.3倍である。本発明によれば、Mg、Ca、Sr、BaおよびCeのハライドから選択されるハライドは、希釈剤および間接的な還元剤の両方の目的で使用されるが、ここでは、MgおよびCaのハライドが好ましい。使用する前記金属ハライドのモル量は、使用するアルカリ金属のモル量の0.5〜8.0倍である。
本発明において使用するタンタルおよび/またはニオブの酸化物は、タンタルおよび/またはニオブの金属に還元されることが可能なものならば、どのようなタンタルおよび/またはニオブの酸化物またはそれらの混合物であってもよく、たとえば、Ta(x≦5)、Nb(x≦5)などである。通常それらは、TaおよびNbとして入手可能である。
高い比表面積のタンタルおよび/またはニオブの粉体ならびにそれらから形成される焼結アノードを得るためには、本発明によれば、N、P、S、BまたはSiを含むドーパントをさらに、還元反応に使用する上記の原料物質に加えるか、および/または還元反応中に加えるか、および/または還元反応後に加えることも可能である。
本発明によれば、この還元は通常、耐熱合金で作った密閉式の反応器中で実施される。溶融塩中に均一に分散した反応物を得て、局所過熱を避けるためには、反応器には撹拌器を備えておくのが好ましい。さらに、反応器は、その温度を調節するために加熱装置および冷却装置を備えられるのが好ましい。前記反応器や、さらには撹拌器、加熱装置および冷却装置などは、当業者周知のどのような装置であってもよい。
本発明の方法によれば、還元は、たとえばアルゴンおよび/または窒素雰囲気下の、不活性雰囲気下で実施される。反応容器内の物質が室温にまで冷却されるまでは、反応器は不活性ガス下に保たれる。
還元が終わったら、還元生成物を冷却して反応器から取り出し、破砕してから、鉱酸溶液および脱イオン水で洗浄して、過剰のアルカリ金属、アルカリ金属ハライド、Mg、Ca、Sr、BaおよびCeのハライドおよび酸化物を除去し、タンタルおよび/またはニオブの粉体の塊状物を得る。生成物を洗浄するのに適した鉱酸溶液は、塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸および過酸化水素の少なくとも1種、またはそれらの混合物である。
上述のようにして得られたタンタルおよび/またはニオブの粉体は、慣用の方法を用いて乾燥させる。乾燥させたタンタルおよび/またはニオブの粉体を40〜100メッシュの篩を用いて篩い分けして、篩を通過する微細な粉体を化学分析および物理的性質の試験にかける。
特定の理論に捕らわれること無く言えば、本発明におけるタンタルおよび/またはニオブの酸化物の還元は、次式に従って進んでいると考えられる。
+2yMa+yMeR=xM+yMeO+2yMaR
ここで、MはTaおよび/またはNb;Maはアルカリ金属、好ましくはNa、KおよびLiの少なくとも1種から選択したもの;MeはMg、Ca、Sr、BaおよびCeの少なくとも1種から選択したもの;Rはハライドイオンである。Mは5価以下の原子価のタンタルおよび/またはニオブの酸化物を表す。したがって、アルカリ金属は還元剤として使用され、そしてMg、Ca、Sr、BaおよびCeのハライドは、間接的な還元剤および希釈剤としての両方に使用されている。
本発明の方法に従って製造されるタンタルおよび/またはニオブの粉体は、多くの一次粒子を含む多孔質塊状物からできている。タンタル粉体は1〜30m/gのBET表面積を有し、ニオブ粉体は1〜40m/gのBET表面積を有し、これらの粉体の一次粒子径は、10〜250nm、好ましくは20〜100nmの範囲である。本発明の方法により製造されたタンタルおよび/またはニオブの粉体の酸素含量は、4000〜80000ppmの範囲であり、そしてアルカリ金属含量は、20ppm未満、好ましくは5ppm未満である。
本発明のプロセスにより製造されたタンタルおよび/またはニオブの粉体は、ドーピング、加熱凝集および脱酸のようなさらなる精錬操作にかけることも可能である。
ドーピング、加熱凝集および脱酸に関する技術は当業者にはよく知られている。ドーピングは、本発明の方法により製造されたタンタルおよび/またはニオブの粉体を、N、P、S、BまたはSiを含むドーパントで処理することによって実施することができる。脱酸は、本発明の方法により製造されたタンタルおよび/またはニオブの粉体を、マグネシウムおよびカルシウムのような還元剤と任意成分のアルカリ金属ハライドのような希釈剤と共に加熱することによって実施することができる。加熱凝集は、真空炉中で、温度700〜1400℃、10〜120分間加熱することによって実施することができる。前記の凝集したタンタルおよび/またはニオブの粉体は通常、40〜300μm、好ましくは40〜200μmの中間粒子径(medium particle size)(D50)を有し、この凝集した粒子は、良好な流動性を有していて、コンデンサーを製造するのに好適である。
図面の簡単な説明
図1は、本明細書実施例2により調製したタンタル粉体のSEM写真(倍率50000)である。この粉体の一次粒子の大きさが約40〜80nmであることがわかる。
図2は、本発明の実施例5により調製したニオブ粉体のSEM写真(倍率50000)である。この粉体の一次粒子の大きさが約40〜80nmであることがわかる。
本発明について、以下の実施例を図面を参照しながらさらに詳しく説明する。これらの実施例は本発明の特徴と利点を説明することを意図したものであり、本発明の範囲を限定するためのものと受け取るべきではないことを理解されたい。
本明細書の中で開示されるデータは、以下の方法に従って測定する:粉体のスコットかさ密度(Scott bulk density、SBD)は、中国国家標準GB5060−85の方法に従って試験し、粉体のフィッシャーサブシーブ粒度(FSSS)は、中国国家標準GB3249−82の方法に従って試験し、粉体のBET表面積は、マイクロメリティーズ・コーポレーション(Micromerities Corporation)製の表面積測定器ASAP2021を用いてBET窒素吸着法により試験し、粉体の中間粒子径(medium particle size、D50)ならびに粉体の粒径分布は、70秒間超音波振動をあててから、ベックマン・コールター・コーポレーション(BECKMAN COULTER Corporation)製のLS−230レーザー粒径分布測定器によって試験した。さらにSEM写真は、JSM−6301F電界放出走査顕微鏡を用いて撮影した。
本明細書においては、粉体の流動性は、ASTM−B−213−90の方法に準じて試験し、また、凝集した粒子の粒子径分布は、ASTM−B−214−86の方法に準じて試験した。
本発明の方法により製造されたタンタルおよび/またはニオブの粉体の電気的性質を試験するためには、まず以下のようにしてタンタルおよび/またはニオブの粉体を用いてアノードを作製し、次いでそのアノードの電気的性質を測定する。
タンタル粉体の場合には、40mgの粉体を用いて直方体の形状(長さ2.62mm×幅2.22mm)のペレットを加圧してその密度を4.5〜5.6g/cmとし、次いで真空炉中で温度1200℃、20分間かけて焼結した。0.1(容積)%のHPO溶液中で、60℃、直流電圧16Vをかけてその焼結体を陽極酸化して、タンタルアノードを形成させた。本発明のタンタル粉体から作製したアノードの静電容量は50000〜200000μFV/gの範囲であり、アノードの漏れ電流は5nA/μFV未満である。
ニオブ粉体の場合には、100mgの粉体を用いて円筒状の形状(φ3.0mm)のペレットを加圧してその密度を2.5〜3.0g/cmとし、次いで温度1150℃、20分間かけて焼結した。0.1(容積)%のHPO溶液中で、80℃、直流電圧20Vをかけてその焼結体を陽極酸化して、ニオブアノードを形成させた。本発明のニオブ粉体から作製したアノードの静電容量は60000〜300000μFV/gの範囲であり、アノードの漏れ電流は5nA/μFV未満である。
実施例1
第1ステップ(酸化タンタルの還元):4キログラムのTa、6キログラムのMgCl、6キログラムのKClおよび3キログラムのNaClを均一に混合して混合物を形成した。前記の混合物と追加の1キログラムのナトリウムを仕込んだるつぼを、密閉式の反応容器の中に入れた。次いでその密閉式反応容器を真空に引いてから、アルゴンを充填し、次いで電気抵抗加熱ヒーター要素によって加熱して800℃とし、その温度で30分間保持し、次に反応容器の温度を900℃に昇温して、その温度で30分間保持した。
第2ステップ(タンタル粉体の回収):前記第1ステップで得られた反応生成物を放冷して室温まで戻したら、生成したタンタル粉体をるつぼから取り出し、破砕し、脱イオン水を用いて洗浄して可溶性の塩とアルカリ金属を除去し、塩酸溶液を用いて浸出し、次いで脱イオン水を用いてその水が中性のpH値を示すまで洗浄した。回収したタンタル粉体を乾燥し、100メッシュの篩を用いて篩い分けると、2953グラムのタンタル粉体(粗粉)が得られたが、タンタルの収率は90.15%であった。この粉体のスコットかさ密度、粒子径(FSSS)、BET表面積および中間粒子径を測定すると、以下のようになった:
スコットかさ密度 1.4g/cm
粒子径(FSSS) 0.3μm
BET表面積 7.2m/g
中間粒子径 2.1μm
このタンタル粉体を化学分析にかけると、O、C、Fe、Ni、Crの含量は以下のようになった:
O 19000ppm
C 120ppm
Fe 15ppm
Ni 5ppm
Cr 5ppm
第3ステップ(タンタル粉体の凝集化):第2ステップで得られた粗粉をリンを用いてドープし、常法により圧力5.0×10-1Pa未満の真空炉中で熱処理し、冷却した粉体を炉から取り出し、破砕し、40メッシュの篩を用いて篩い分けた。このようにして凝集化させたタンタル粉体が得られた。
第4ステップ(タンタル粉体の脱酸):第3ステップで得られたタンタル粉体にマグネシウム粉体を加え、850℃に加熱してその温度に1時間保持し、次いで室温にまで冷却し、取り出し、塩酸溶液を用いて浸出し、次いで脱イオン水によりその水が中性のpH値になるまで洗浄し、さらに乾燥させてから40メッシュの篩を用いて篩い分けた。
上記のようにして得られたタンタル粉体の物理的性質は以下のようになった:
スコットかさ密度 2.2g/cm
粒子径(FSSS) 1.95μm
BET表面積 2.8m/g
中間粒子径 140μm
この粉体の分粒試験の結果を表1に示す:
Figure 0004756825
このタンタル粉体を化学分析にかけると、O、C、N、Fe、Ni、Cr、Si、K、Na、Ca、Mgの含量は以下のようになった:
O 5400 ppm
C 100 ppm
N 1200 ppm
Fe 17 ppm
Ni 5 ppm
Cr 5 ppm
K 3 ppm
Na 3 ppm
Ca 5 ppm
Mg 20 ppm
この粉体から作製したアノードの、静電容量、漏れ電流などの電気的性質は表6に示す。
実施例2
第1ステップ(酸化タンタルの還元):10キログラムのTa、15キログラムのCaCl、22キログラムのKCl、10キログラムのNaClを、撹拌器を備えたレトルト器の中に仕込んだ。その密閉式反応レトルト器と内容物を真空に引いてから、アルゴンを充填し、次いで電気抵抗加熱ヒーター要素によって加熱して850℃として溶融浴を生成させた。5250グラムのナトリウムをその溶融浴の中に、約640グラムNa/分の速度で注入したが、その間レトルト器を冷却して、レトルト器の温度を約850℃に維持した。次いでレトルト器の温度を900℃まで上昇させ、その温度で60分間保持して、酸化タンタルを完全に還元させてタンタル粉体とした。
第2ステップ(タンタル粉体の回収):前記第1ステップで得られた反応生成物を放冷して室温まで戻したら、生成したタンタル金属粉体をレトルト器から取り出し、破砕し、脱イオン水を用いて洗浄し、塩酸溶液を用いて浸出し、次いで脱イオン水を用いてその水が中性のpH値になるまで洗浄を行った。このタンタル粉体を乾燥させてから、80メッシュの篩を用いて篩い分けた。7470グラムのタンタル粉体(粗粉)が得られ、タンタルの収率は91.2%であった。この粉体のスコットかさ密度、粒子径(FSSS)、BET表面積および中間粒子径を測定すると、以下のようになった:
スコットかさ密度 0.56 g/cm
粒子径(FSSS) 0.14 μm
BET表面積 9.72 m/g
中間粒子径 6.7 μm
このタンタル粉体を化学分析にかけると、O、C、Fe、Ni、Crの含量は以下のようになった:
O 37000 ppm
C 110 ppm
Fe 25 ppm
Ni 55 ppm
Cr 5 ppm
第3ステップ(タンタル粉体の凝集化):前記第2ステップで得られた粗粉をリンを用いてドープし、常法により圧力5.0×10−1Pa未満の真空炉中で熱処理し、冷却した粉体を取り出し、40メッシュの篩を用いて篩い分けた。このようにして凝集化したタンタル粉体が得られた。
第4ステップ(タンタル粉体の脱酸):第3ステップで得られたタンタル粉体にマグネシウム粉体を加え、800℃に加熱してその温度に1時間保持し、次いで室温にまで冷却し、塩酸溶液を用いて浸出し、次いで脱イオン水による洗浄を水が中性のpH値になるまで行い、さらに乾燥させてから40メッシュの篩を用いて篩い分けた。
上記のようにして得られたタンタル粉体の物理的性質は以下のようになった:
スコットかさ密度 1.7 g/cm
粒子径(FSSS) 0.5 μm
BET表面積 3.8 m/g
中間粒子径 100 μm
このタンタル粉体の分粒試験の結果を表2に示す:
Figure 0004756825
このタンタル粉体を化学分析にかけると、O、C、N、Fe、Ni、Cr、Si、K、Na、Ca、Mgの含量は以下のようになった:
O 10500 ppm
C 100 ppm
N 1200 ppm
Fe 24 ppm
Ni 60 ppm
Cr 5 ppm
K 3 ppm
Na 3 ppm
Ca 30 ppm
Mg 12 ppm
この粉体から作製したアノードの、静電容量、漏れ電流などの電気的性質は表6に示す。
実施例3
第1ステップ(酸化タンタルの還元):10キログラムのTa、15キログラムのCaCl、22キログラムのKCl、10キログラムのNaClを、撹拌器を備えたレトルト器の中に仕込んだ。その密閉式反応レトルト器と内容物を真空に引いてから、アルゴンを充填し、次いで電気抵抗加熱ヒーター要素によって加熱して1050℃として溶融浴を生成させ、その浴を攪拌してTaが浴の中に均一に分散されるようにした。5510グラムのナトリウムをその溶融浴の中に、約1020グラムNa/分の速度で注入したが、その間レトルトを冷却して、レトルト器の温度を約1050℃に維持した。レトルト器の温度を1050℃で20分間保持して、酸化タンタルを完全にタンタル粉体に還元した。
第2ステップ(タンタル粉体の回収):前記第1ステップで得られた反応生成物を放冷して室温まで戻したら、生成したタンタル金属粉体をレトルト器から取り出し、破砕し、脱イオン水を用いて洗浄し、塩酸溶液を用いて浸出し、次いで脱イオン水を用いた洗浄を水が中性のpH値を示すまで行った。このタンタル粉体を乾燥させてから、80メッシュの篩を用いて篩い分けた。7510グラムのタンタル粉体(粗粉)が得られ、タンタルの収率は91.8%であった。この粉体のスコットかさ密度、粒子径(FSSS)、BET表面積および中間粒子径を測定すると、以下のようになった:
スコットかさ密度 0.63 g/cm
粒子径(FSSS) 0.28 μm
BET表面積 7.68 m/g
中間粒子径 8.6 μm
このタンタル粉体を化学分析にかけると、O、C、Fe、Ni、Crの含量は以下のようになった:
O 21000 ppm
C 80 ppm
Fe 25 ppm
Ni 65 ppm
Cr 10 ppm
第3ステップ(タンタル粉体の凝集化):前記第2ステップで得られた粗粉をリンを用いてドープし、常法により圧力5.0×10−1Pa未満の真空炉中で熱処理し、冷却した粉体を取り出し、40メッシュの篩を用いて篩い分けた。このようにして凝集化させたタンタル粉体が得られた。
第4ステップ(タンタル粉体の脱酸):第3ステップで得られたタンタル粉体にマグネシウム粉体を加え、860℃に加熱してその温度に1時間保持し、次いで室温にまで冷却し、硝酸溶液を用いて浸出し、次いで脱イオン水による洗浄を水が中性のpH値になるまで行い、さらに80℃で乾燥させてから40メッシュの篩を用いて篩い分けた。
上記のようにして得られたタンタル粉体の物理的性質は以下のようになった:
スコットかさ密度 1.75 g/cm
粒子径(FSSS) 2.5 μm
BET表面積 2.1 m/g
中間粒子径 120 μm
このタンタル粉体の分粒試験の結果を表3に示す:
Figure 0004756825
このタンタル粉体を化学分析にかけると、O、C、N、Fe、Ni、Cr、Si、K、Na、Ca、Mgの含量は以下のようになった:
O 6600 ppm
C 80 ppm
N 1000 ppm
Fe 20 ppm
Ni 60 ppm
Cr 5 ppm
K 5 ppm
Na 3 ppm
Ca 20 ppm
Mg 10 ppm
この粉体から作製したアノードの、静電容量、漏れ電流などの電気的性質は表6に示す。
実施例4
第1ステップ(酸化ニオブの還元):30キログラムのCaCl、1キログラムのKCl、15キログラムのNaClを撹拌器を備えたレトルト器に仕込んだ。その密閉式反応レトルトと内容物を真空に引いてから、アルゴンを充填し、次いで電気抵抗加熱ヒーター要素によって加熱して500℃として、CaCl、KCl、NaClが溶融して浴を形成したら、浴を撹拌しながら9650グラムの液状金属ナトリウムをレトルトの中に注入した。10キログラムの酸化ニオブ(Nb)を溶融浴の中に850グラム/分の速度で計量注入したが、その間レトルトを冷却して、レトルトの温度を約480℃に維持した。次いで温度を上昇させて750℃とし、その温度で60分間保持して、酸化ニオブを完全に還元させてニオブ粉体とした。
第2ステップ(ニオブ粉体の回収):前記第1ステップで得られた反応生成物を放冷して室温まで戻したら、生成したニオブ金属粉体をレトルトから取り出し、破砕し、脱イオン水を用いて洗浄し、塩酸溶液を用いて浸出し、次いで脱イオン水を用いた洗浄を水が中性のpH値を示すまで行った。そのニオブ粉体をさらに乾燥させてから、80メッシュの篩を用いて篩い分けた。6300グラムのニオブ粉体(粗粉)が得られ、タンタルの収率は90.2%であった。この粉体のスコットかさ密度、粒子径(FSSS)、BET表面積および中間粒子径を測定すると、以下のようになった:
スコットかさ密度 0.54 g/cm
粒子径(FSSS) 0.13 μm
BET表面積 26.72 m/g
中間粒子径 5.7 μm
このニオブ粉体を化学分析にかけると、O、C、Fe、Ni、Crの含量は以下のようになった:
O 67000 ppm
C 90 ppm
Fe 25 ppm
Ni 60 ppm
Cr 5 ppm
実施例5
第1ステップ(酸化ニオブの還元):4キログラムのNb、10キログラムのCaCl、10キログラムのKCl、8キログラムのNaClを撹拌器を備えたレトルトの中に仕込んだ。その密閉式反応レトルトと内容物を真空に引いてから、アルゴンを充填し、次いで電気抵抗加熱ヒーター要素によって加熱して温度780℃とした。CaCl、KCl、NaClが溶融して溶融浴を形成してから、浴を撹拌してNbを溶融浴の中へ均一に分散させた。3.5キログラムのナトリウムをその溶融浴の中に、約520グラム/分の速度で注入したが、その間レトルトを冷却して、レトルトの温度を約780℃に維持した。次いで温度を上昇させて860℃とし、その温度で30分間保持して、酸化ニオブを完全に還元させてニオブ粉体とした。
第2ステップ(ニオブ粉体の回収):前記第1ステップで得られた反応生成物を放冷して室温まで戻したら、生成したニオブ金属粉体をレトルトから取り出し、破砕し、脱イオン水を用いて洗浄し、塩酸溶液を用いて浸出し、次いで脱イオン水を用いた洗浄を水が中性のpH値を示すまで行った。そのニオブ粉体をさらに乾燥させてから、80メッシュの篩を用いて篩い分けた。2718グラムのニオブ粉体(粗粉)が得られた。この粉体のスコットかさ密度、粒子径(FSSS)、BET表面積および中間粒子径を測定すると、以下のようになった:
スコットかさ密度 0.46 g/cm
粒子径(FSSS) 0.45 μm
BET表面積 24.5 m/g
中間粒子径 5.8 μm
このニオブ粉体を化学分析にかけると、O、C、Fe、Ni、Crの含量は以下のようになった:
O 6.5 %
C 90 ppm
Fe 50 ppm
Ni <50 ppm
Cr <50 ppm
第3ステップ(ニオブ粉体の脱酸):前記第2ステップで得られた2000グラムの粗粉をリンを用いてドープし、マグネシウムを添加し、3キログラムのKClと混合し、アルゴンおよび窒素ガスを含む不活性雰囲気中で840℃に加熱してその温度で1時間保持し、粉体を室温にまで冷却してから取り出して、塩酸を用いて浸出し、脱イオン水を用いた洗浄を水が中性のpH値を示すまで行ない、さらに乾燥させてから40メッシュの篩を用いて篩い分けた。脱酸をしたニオブ粉体が得られた。その物理的性質は以下のようになった:
スコットかさ密度 1.1 g/cm
粒子径(FSSS) 2.5 μm
BET表面積 5.6 m/g
中間粒子径 100 μm
この粉体の分粒試験の結果を表4に示す:
Figure 0004756825
このニオブ粉体を化学分析にかけると、O、C、N、Fe、Ni、Cr、Si、K、Na、Ca、Mgの含量は以下のようになった:
O 11000 ppm
C 130 ppm
N 7300 ppm
Fe 60 ppm
Ni <50 ppm
Cr <50 ppm
K 15 ppm
Na 18 ppm
Ca 80 ppm
Mg 14 ppm
この粉体から作製したアノードの、静電容量、漏れ電流などの電気的性質は表7に示す。
実施例6
第1ステップ(酸化ニオブの還元):3キログラムのNb、12キログラムのCaClを撹拌器を備えたレトルトに仕込んだ。その密閉式反応レトルトと内容物を真空に引いてから、アルゴンを充填し、次いで電気抵抗加熱ヒーター要素によって加熱して860℃とした。CaClが溶融してから、浴を攪拌してNbを溶融浴の中に均一に分散させた。2.9キログラムのナトリウムをその溶融浴の中に、約680グラム/分の速度で注入したが、その間レトルトを冷却して、レトルトの温度を約860℃に維持した。そのレトルトを860℃で30分間保持して、酸化ニオブを完全に還元してニオブ粉体とした。
第2ステップ(ニオブ粉体の回収):前記第1ステップで得られた反応生成物を放冷して室温まで戻したら、生成したニオブ金属粉体をレトルトから取り出し、破砕し、脱イオン水を用いて洗浄し、塩酸溶液を用いて浸出し、次いで脱イオン水を用いた洗浄を水が中性のpH値を示すまで行った。そのニオブ粉体をさらに乾燥させてから、80メッシュの篩を用いて篩い分けた。1901グラムのニオブ粉体(粗粉)が得られた。この粉体のスコットかさ密度、粒子径(FSSS)、BET表面積および中間粒子径を測定すると、以下のようになった:
スコットかさ密度 0.48 g/cm
粒子径(FSSS) 0.49 μm
BET表面積 21.5 m/g
中間粒子径 6.8 μm
このニオブ粉体を化学分析にかけると、O、C、Fe、Ni、Crの含量は以下のようになった:
O 9.0 %
C 100 ppm
Fe 50 ppm
Ni <50 ppm
Cr <50 ppm
第3ステップ(ニオブ粉体の脱酸):前記第2ステップで得られた2000グラムの粗粉をリンを用いてドープし、マグネシウムを添加し、2キログラムのKClと混合し、アルゴンおよび窒素ガスを含む雰囲気中で840℃に加熱してその温度で1時間保持した。室温にまで冷却してから、ニオブ粉体をレトルトから取り出し、塩酸溶液を用いて浸出し、脱イオン水を用いた洗浄を水が中性になるまで行ない、さらに乾燥させてから40メッシュの篩を用いて篩い分けた。脱酸したニオブ粉体が得られた。その物理的性質は以下のようになった:
スコットかさ密度 1.2 g/cm
粒子径(FSSS) 2.6 μm
BET表面積 4.9 m/g
中間粒子径 120 μm
この粉体の分粒試験の結果を表5に示す:
Figure 0004756825
このニオブ粉体を化学分析にかけると、O、C、N、Fe、Ni、Cr、Si、K、Na、Ca、Mgの含量は以下のようになった:
O 10000 ppm
C 130 ppm
N 900 ppm
Fe 60 ppm
Ni <50 ppm
Cr <50 ppm
K 11 ppm
Na 10 ppm
Ca 80 ppm
Mg 25 ppm
この粉体から作製したアノードの、静電容量、漏れ電流などの電気的性質は表7に示す。
Figure 0004756825
Figure 0004756825
ここまで記載してきたように、本発明の利点は以下のようなところにある:高い比表面積と高純度を併せ持つタンタルおよび/またはニオブの粉体を高収率で得ることが可能となり、その凝集化させた粉体は良好な流動性を有し、それらの粉体から作製したアノードは静電容量が大きく、直流漏れ電流が少ないという特徴を有する。
本発明のその他の実施態様は、本明細書の記述および本明細書に開示された本発明の実施態様を読めば、当業者には明かであろう。本明細書の記述および実施例は単に例示のためのものであり、本発明の真の範囲と精神は特許請求の範囲に示されていると受け取られるべきである。
本明細書実施例2により調製したタンタル粉体のSEM写真(倍率50000)である。 本発明の実施例5により調製したニオブ粉体のSEM写真(倍率50000)である。

Claims (10)

  1. 対応するタンタルおよび/またはニオブの酸化物を還元することによって、高い比表面積のタンタルおよび/またはニオブの粉体を製造するための方法であって、ここで、前記還元は、タンタルおよび/またはニオブの粉体を形成するように前記タンタルおよび/またはニオブの酸化物を、少なくとも1種の金属ハライドおよびアルカリ金属と400〜1200℃の範囲で反応させることにより実施し、前記少なくとも1種の金属ハライドが、Mg、Ca、Sr、BaおよびCeのハライドからなる群より選択される、方法。
  2. 少なくとも1種のアルカリ金属ハライドが、還元反応における希釈剤としてさらに使用される、請求項1に記載の方法。
  3. Mg、Ca、Sr、BaおよびCeのハライドからなる群より選択される前記少なくとも1種の金属ハライド、前記アルカリ金属、前記タンタルおよび/またはニオブの酸化物、および場合によってはさらに少なくとも1種のアルカリ金属ハライドを反応器に仕込む工程、および前記タンタルおよび/またはニオブの酸化物がタンタルおよび/またはニオブの粉体に還元されるように前記反応器を充分な高温に加熱する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. Mg、Ca、Sr、BaおよびCeのハライドからなる群より選択される前記少なくとも1種の金属ハライドと場合によっては少なくとも1種のさらなるアルカリ金属ハライドとを反応器に仕込む工程、反応器を高温に加熱して溶融浴を形成する工程、次いで、タンタルおよび/またはニオブの酸化物がタンタルおよび/またはニオブの粉体に還元されるようにタンタルおよび/またはニオブの酸化物およびアルカリ金属の所要量をその溶融浴に反応器の温度を調節しながら計量仕込みする工程、を含む、請求項1または2に記載の方法。
  5. 計量仕込みするアルカリ金属が、液状アルカリ金属である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記還元のための温度が600〜1000℃の範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記アルカリ金属がナトリウムまたはカリウムであり、使用するアルカリ金属の量が、タンタルおよび/またはニオブの酸化物を還元するための化学量論量の1.0〜1.3倍である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  8. Mg、Ca、Sr、BaおよびCeのハライドからなる群より選択される前記金属ハライドの使用モル量が、使用されるアルカリ金属のモル量の0.5〜8.0倍である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記タンタルおよび/またはニオブの酸化物が、5以下の原子価のタンタルの酸化物、5以下の原子価のニオブの酸化物、またはそれらの混合物から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  10. N、P、S、BまたはSiを含むドーパントを、前記還元反応に使用される上記原料物質に、および/または還元反応中に、および/または還元反応後に添加することをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
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