JP2016166422A - 窒素含有金属粉末の製造方法 - Google Patents

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幸男 小田
勇幸 堀尾
Yuko Horio
勇幸 堀尾
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Abstract

【課題】比表面積が大きく、かつ、金属内に適度な量の窒素を均一に含む窒素含有金属粉末を生産性良く得て、高容量で漏れ電流が少なく、長期の信頼性に優れた固体電解コンデンサを提供する。【解決手段】窒素を含有する金属の粉末であり、含有する窒素量W[ppm]と、BET法により測定された比表面積S[m2/g]との比W/Sが、500〜3000である。このような粉末は、前記金属を含む金属塩を、溶融した希釈塩14中で還元剤と反応させて還元し、前記金属を生成させる方法において、前記金属塩と前記還元剤と前記希釈塩14とを含む反応融液に接する空間に窒素含有ガスを導入して、前記金属を生成させるとともに前記金属に前記窒素を含有させる方法で製造できる。【選択図】図1

Description

本発明は、固体電解コンデンサのアノード電極原料に好適な、窒素含有金属粉末の製造方法に関する。
近年、電子集積回路は、より低電圧での駆動、高周波化、低ノイズ化が求められていて、固体電解コンデンサについても、低ESR化、低ESL化の要求が高まってきている。固体電解コンデンサのアノード電極に好適に用いられる金属粉末としては、例えば、ニオブ、タンタル、チタン、タングステン、モリブデン等が挙げられる。
これらのなかでタンタルが使用されたタンタルコンデンサは、小型で、低ESRかつ高容量であるため、携帯電話やパソコン等の部品として急速に普及してきた。そして最近では、より一層の高容量化(高CV値化)と低ESR化が求められていて、コンデンサの高容量化のために、比表面積が大きく微細なタンタル粉末が開発されている。例えば現在、フッ化タンタルカリウムをナトリウムで熱還元して得たプライマリーパウダーを、熱凝集した後に脱酸素する方法で、比容量が5万CVのコンデンサを製造しうる、BET比表面積が1m/g(比表面積換算一次粒子平均径d50=400nm)程度のタンタル粉末が量産されている。
一方、ニオブが使用されたニオブコンデンサは、酸化ニオブの誘電率が大きく、かつ、タンタルよりも安価であることから、固体電解コンデンサへの利用が長年研究されてきた。しかし、化成酸化膜の信頼性が低いことから実用化には至っていない。すなわち、ニオブは高電圧で化成酸化すると、アモルファスの酸化膜が結晶化するために漏れ電流が増加するとともに、コンデンサの故障頻度も増加するという問題があった。
ところが、最近では、電子回路の駆動電圧が低下する傾向にあるため、化成電圧を低くできるようになってきている。ニオブは、化成電圧が低い場合には信頼性を維持できるため、ニオブコンデンサの実用化に有利な環境が整ってきつつある。特に、アルミニウム電解コンデンサの代替品として、高容量で、かつ、アルミニウム電解コンデンサよりもESRやESLの小さいニオブコンデンサが開発のターゲットになっている。
高容量のニオブコンデンサを製造するためには、タンタルの場合と同様に、BET比表面積換算一次粒子平均径d50が少なくとも500nm以下、好ましくは400nm以下であることが求められる。現在までのところ、微細なニオブ粉末の製造方法としては、フッ化ニオブ酸カリウムのナトリウム還元(特許文献1参照)、五塩化ニオブの気相水素還元(特許文献2参照)、粉砕法で高比表面積のニオブ粉末を得る方法(特許文献3参照)等が知られている。
これらの方法のうち、従来の気相水素還元法では、単分散性の超微粒子が得られるため、多孔質焼結体を形成して化成酸化する工程で、ネック部分の絶緑化、すなわちネック切れが起こり、アノード電極に適した粉末が得られなかった。また、粉砕法は、簡便で生産効率が良いが、粒子の形状が不規則でブロードな粒度分布となるため、アノード電極とした場合に種々の問題があった。
よって、アノード電極に適した連鎖状粒子であり、かつ、その一次粒子の粒度分布がシャープなピークを示すニオブ粉末を製造するためには、フッ化カリウム塩をナトリウム等で溶融塩還元する方法、ニオブ塩化物を溶融金属で還元する方法等の液相法が好ましいと考えられる。
このように最近では、コンデンサをより高容量化するためにニオブ粉末やタンタル粉末の微細化、高表面積化が進行し、それにともなって、このように微細な金属粉末を製造する方法も種々検討されている。
しかしながら、このように粉末の比表面積が大きくなると、粉末中の酸素含有量が増加し、その結果、漏れ電流の増加要因となる結晶性酸化物が、熱処理工程や化成酸化工程において生成しやすくなるという問題があった。また、コンデンサの定格電圧の低下にともなって、誘電体酸化膜を形成する化成電圧も低下しているが、化成電圧が低下すると形成される誘電体酸化膜の膜厚が薄くなる傾向にあり、容量は高くなるものの長期の信頼性に劣るという問題もあった。
このような酸素による影響を抑えるとともに、薄い膜の信頼性を向上させる方法としては、焼結体や誘電体酸化膜を製造した後、これらに窒素をドープする方法が知られている。
例えば、特許文献4には、漏れ電流の低下、高温での化成酸化膜の安定性および信頼性の向上を目的として、窒素がドープされている。また、特許文献5には、高容量のタンタル粉末への窒素の均一なドーピング方法として、還元パウダーに塩化アンモニウムを添加し、加熱凝集と同時に窒素を導入する方法が開示されている。
さらに、ニオブのスパッタリングNb−O膜への窒素ドープによる漏れ電流の低減(非特許文献1参照)、窒化ニオブの焼結体アノードによる漏れ電流等の改良(特許文献6参照)等がある。
また、特許文献7には、還元して得られたタンタルまたはニオブ粉末を加熱凝集する工程、または、脱酸素の工程を窒素含有ガス雰囲気下で行う加熱窒化法が開示されている。
米国特許第4684399号明細書 特開平6−25701号公報 国際公開第98/19811号パンフレット 米国特許第A5448447号明細書 国際公開第98/37249号パンフレット 国際公開第98/38600号パンフレット 特開平8−239207号公報 国際公開第98/37248号パンフレット
K.Sasaki等、「Thin Solid Films」、第74号、1980年、p.83−88
しかしながら、これらの従来知られている方法では、いずれも粒子の表面または膜の表面から窒化が進行するため、窒化反応が窒素の拡散律速になり、その結果、窒化が不均一になりやすいという問題があった。窒化が不均一になると、得られる粒子も不均一となりアノード電極原料には適さなくなる。
さらに、含有する窒素量が3000ppmを超えると、例えば金属粉末がタンタルの場合には、TaNo.04、TaNo.、TaN等の結晶性の窒化物が生成しやすく、さらに含有する窒素量が増加すると、TaN、TaN等が主成分の結晶相が生成する。これらの結晶性窒化物が生成すると、得られるコンデンサの比容量を低下させるとともに誘電体酸化膜の信頼性を低下させるという問題があった。また、結晶性の窒化物は硬いため、これを含む金属粉末をアノード電極製造の過程でプレス成形すると、金型を傷めてしまう場合があった。
また、焼結体や誘電酸化膜を製造した後、これらに窒素をドープする方法では、窒素化工程が余分に必要となるため、生産性が低下するという問題もあった。
以上の状況に鑑みて本出願人は、微細なニオブまたはタンタルに必要十分な量の窒素が均一にドープされていて、かつ、窒素が結晶性の化合物を形成せずに金属結晶格子内に固溶状態で含有されている窒素含有金属粉末とその製造方法として、特願2000−31029を出願している。この方法は、ニオブまたはタンタルの原料であるこれらの化合物を希釈塩中で還元剤と反応させて還元する際に、希釈塩中に窒素含有ガスをバブリングして、金属に窒素を導入する方法である。ところが、この方法によれば、金属に過剰に窒素がドープされる場合があり、その傾向は金属粉末が微細化、高表面積化するにしたがって顕著であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、比表面積が大きく、かつ、金属内に適度な量の窒素を均一に含む窒素含有金属粉末を生産性良く得て、高容量で漏れ電流が少なく長期の信頼性に優れた固体電解コンデンサを提供することを課題とする。
本発明の窒素含有金属粉末は、窒素を含有する金属の粉末であり、含有する窒素量W[ppm]と、BET法により測定された比表面積S[m/g]との比W/Sが、500〜3000であることを特徴とする。
前記窒素は、前記金属に固溶していることが好ましい。
前記金属は、ニオブ、タンタル、ニオブ−タンタル合金からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の窒素含有金属粉末の製造方法は、前記金属を含む金属塩を、溶融した希釈塩中で還元剤と反応させて還元し、前記金属を生成させる方法において、前記金属塩と前記還元剤と前記希釈塩とを含む反応融液に接する空間に、窒素含有ガスを導入して、前記金属を生成させるとともに前記金属に前記窒素を含有させることを特徴とする。
前記金属塩は、ニオブまたはタンタルの少なくとも一方のフッ化カリウム塩であり、前記還元剤はナトリウムであることが好ましい。
また、前記還元剤と前記金属塩とを、それぞれ連続的または分割して希釈塩に加えることが好ましい。
本発明の多孔質焼結体は、前記いずれかに記載の窒素含有金属粉末を焼結させたことを特徴とする。
本発明の固体電解コンデンサは、前記多孔質焼結体からなるアノード電極を備えていることを特徴とする。
本発明の窒素含有金属粉末は、含有する窒素量W[ppm]と、BET法により測定された比表面積S[m/g]との比W/Sが、500〜3000であり、比表面積の大きさに関わらず窒素を適度に均一に含有する。
よって、これをアノード電極原料として使用することによって、得られるコンデンサは高容量で、漏れ電流が少なく長期の信頼性に優れたものとなる。
本発明の製造方法で使用する反応器の一例を示す概略断面図である。 本発明の製造方法で得られた窒素含有金属粉末と、従来の方法で得られた窒素含有金属粉末について、CV値と窒素量との関係を概略的に示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の窒素含有金属粉末は、窒素を含有する金属粉末であり、この窒素含有金属粉未中の窒素量W[ppm]と、BET法により測定された比表面積S[m/g]との比W/Sが、500〜3000の範囲のものである。
ここで金属としては特に制限はないが、ニオブ、タンタル、ニオブ−タンタル合金からなる群より選ばれる少なくとも一種であると、これを固体電解コンデンサのアノード電極原料として使用した場合、高容量のコンデンサが得られるため好ましい。
この窒素含有金属粉末に含まれる窒素は、この窒素含有金属粉末からアノード電極を製造した場合に、これを備えたコンデンサの漏れ電流を低く抑える効果を発現するものである。窒素が金属粉未中に上記W/Sの範囲内で含まれていると、窒素量Wが粉末の比表面積に関わらず適切な範囲であり、漏れ電流が少なく、長期の信頼性に優れたコンデンサが得られる。
W/Sが500未満では、窒素添加による効果が十分発現せず、一方、W/Sが3000を超えると窒素量が過剰となって、コンデンサの容量低下や誘電体酸化膜の信頼性低下の原因となる結晶性窒化物が生成しやすくなる。より好ましいW/Sの範囲は、500〜2000である。なお、窒素含有金属粉末中の窒素量Wは、市販の酸素/窒素分析計(堀場製作所EMGA520)を使用して、ヘリウムガス中、試料をインパルス融解加熱し、発生ガスをTCD(熱伝導度法)で定量する方法などで求められる。
窒素含有金属粉末中の窒素の形態としては、窒素が金属に固溶している状態であることが好ましい。
金属に窒素が固溶すると、金属結晶の格子定数が変化する。よって、金属への窒素の固溶は、X線回折ピークの位置のシフトによって確認することができる。
例えば、タンタルに3000ppmの窒素が固溶すると、金属タンタルの(110)面の面間隔d=0.23375nm(=2.3375Å)が、d=0.23400nm(=2.3400Å)へと、約0.1%増加する。
一方、窒素が金属との間に結晶性窒化物を形成すると、上述したようにコンデンサの容量や誘電体酸化膜の信頼性が低下する場合がある。
また、窒素含有金属粉末の比表面積Sは、1.0[m/g]以上であることが好ましく、具体的には、金属がタンタルの場合には、1.0〜4.0[m/g]で、金属がニオブの場合には、2.0〜8.0[m/g]であることが好ましい。このような比表面積Sであると、高容量のコンデンサが得られる。すなわち、W/Sが500〜3000であって、かつ比表面積Sがこのような範囲の窒素含有金属粉末を使用すると、高容量で、漏れ電流が少なく、長期の信頼性に優れたコンデンサが得られる。なお、この場合、窒素含有金属粉末のBET比表面積基準の平均粒子径dは、球形換算式d=6/(金属の密度×BET比表面積)で与えられ、例えば、金属がタンタル、ニオブ、タンタル−ニオブ合金であれば、90〜350nm程度である。
このような窒素含有金属粉末は、当該金属の金属塩を溶融した希釈塩中で還元剤と反応させて還元し金属を生成させる際に、金属塩と還元剤と希釈塩とを含む反応融液に接する空間に、窒素含有ガスを導入して、反応系内の気相部分を窒素含有ガス雰囲気とすることにより製造できる。
ここで使用する金属塩としては特に制限はないが、金属がニオブ、タンタル、ニオブ−タンタル合金からなる群より選ばれる少なくとも1種である場合には、フッ化カリウム塩を使用することが好ましい。フッ化カリウム塩を使用すると、アノード電極として使用する多孔質焼結体の製造に適した、連鎖状粒子を製造することができる。貝体的なフッ化カリウム塩としては、KTaF、KNbF、KNbF等が挙げられる。その他の金属塩としては、五塩化ニオブ、低級塩化ニオブ、五塩化タンタル、低級塩化タンタル等の塩化物や、ヨウ化物、臭化物などのハロゲン化物が挙げられる。また、特に金属がニオブの場合には、フッ化ニオブ酸カリウム等のフッ化ニオブ酸塩も使用可能である。
還元剤としては、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、これらの水素化物、すなわち水素化マグネシウム、水素化カルシウムが挙げられるが、これらのなかではナトリウムが好ましい。金属塩としてフッ化カリウム塩を使用した場合に、還元剤としてナトリウムを使用すると、フッ化カリウム塩中のフッ素とナトリウムとが反応して、ナトリウムのフッ化物が生成するが、このフッ化物は水溶性であるため、後の工程で容易に除去可能である。
窒素含有ガスとしては、窒素ガスを含有するガスや、加熱により窒素ガスを発生するアンモニア、尿素等の窒素発生ガスが挙げられ、還元反応系内を窒素含有ガス雰囲気にできるものであればよい。しかしながら、効率的に窒素を金属中に含有させるためには、窒素含有ガス雰囲気中の窒素ガスの濃度を50vol%以上に維持することが好ましく、窒素濃度が約100%の純窒素ガスやこれをアルゴンガスなどで適宜希釈したものを使用することが好ましい。窒素含有ガス雰囲気における窒素ガス濃度が10vol%未満では、金属中に窒素を十分に含有させることができない場合がある。
また、希釈塩としては、KCl、NaCl、KFやこれらの共晶塩などを使用する。
次に窒素含有金属粉末を製造する具体的な一例について、金属としてタンタルを例とし、図1を使用して説明する。
図1は、原料投入口11と窒素含有ガス導入管12と窒素含有ガス排出管13とを備えたニッケルとインコネルのクラッド材質からなる反応器10である。原料投入口11は金属塩投入口11aと還元剤投入口11bを有している。また、反応器10は攪拌翼15を備えている。
まず、この反応器10に希釈塩14を投入する。ついで、窒素含有ガスを、窒素含有ガス導入管12から導入し窒素含有ガス排出管13から排出させて、反応器10内に流通させる。こうして反応器10内を窒素含有ガス雰囲気に保ちながら希釈塩14を800〜900℃に加熱して溶融し、この中に、原料であるタンタルのフッ化カリウム塩の一部を金属塩投入口11aから加える。ついで、還元剤であるナトリウムを、先に投入したフッ化カリウム塩の還元に必要な量論の量だけ、還元剤投入口11bから投入する。このようにして、反応器10中で下記式(1)で表される反応を行う。また、この間、攪拌翼15を作動させて、反応融液を緩やかに攪拌する。
TaF+5Na→2KF+5NaF+Ta ・・・ (1)
ここで、図1の反応器10においては、窒素含有ガス導入管12が反応融液中に浸漬しないように配されている。よって、窒素含有ガスが反応融液中にバブリングによって導入されることなく、反応融液の上方のみに導入されるようになっている。
希釈塩14の量は、フッ化カリウム塩とナトリウムの合計質量に対して、2〜10倍程度の質量となるように設定することが好ましい。希釈塩14の質量が2倍未満では、原料のフッ化カリウム塩の濃度が高いために反応速度が速く、生成する金属粉末の粒径が大きくなりすぎる場合がある。一方、希釈塩14の質量が10倍を超えると反応速度が低下し、生産性が低下する。また、希釈塩14の量を多くすると、得られる窒素含有金属粉末の比表面積が大きくなる。すなわち、希釈塩14の量により粉末の比表面積を適宜制御することもできる。
ついで、投入したフッ化カリウム塩とナトリウムの反応がほぼ終了した時点で、窒素含有ガスの流通を続けながら、さらにフッ化カリウム塩の一部とナトリウムの一部を投入する。このように、原料のフッ化カリウム塩とナトリウムとを、少量ずつ分割して反応させることを繰り返し、タンタルのフッ化カリウム塩の還元反応を終了させる。
このように図1のような反応器10を使用して、金属塩と還元剤と希釈塩14とを含む反応融液に接する空間、ここでは反応融液の上方に、窒素含有ガスを導入して金属塩の還元反応を行うと、金属塩は、還元剤によって還元されるとともに反応融液と窒素含有ガスとの界面において窒素含有ガスと接触する。よって、金属塩の還元反応と、還元反応で得られた金属への窒素の導入とが連続的に進行する。そして、還元され窒素が添加された金属は、その比重が希釈塩よりも大きいために反応融液を沈降していく。なお、ここで、攪拌翼15の回転速度は、このような金属の沈降を妨げない程度に設定される。
このような方法によれば、反応融液と窒素含有ガスとはこれらの界面でしか接触しないため、例えば、反応融液中に窒素含有ガス導入管を浸漬して、窒素含有ガスをバブリングする方法などに比べて、金属と窒素との接触の程度を低く抑えることができる。また、還元され、すでに窒素が添加された金属は反応融液中を沈降してこの界面から離れていくため、金属が再度窒素と接触することもない。
すなわち、金属への窒素の導入が、還元された直後の金属にほぼ限定されるとともに、その程度も制御されるため、窒素が粉末中に過剰に取り込まれることなく、また、取り込まれる窒素量も粒子間で均一となる。
その結果、たとえ金属粉末の比表面積が大きな場合であっても、その金属粉末には必要最小量の窒素のみが添加され、窒素量W[ppm]と、BET法により測定された比表面積S[m/g]との比W/Sが、500〜3000の範囲である窒素含有金属粉末を安定に生成させることができる。
すなわち、従来の窒素含有ガスをバブリングして反応融液に導入する方法では、図2に概念的に示すように、CV値(横軸)が大きくなるにしたがって、粉末が含有する窒素量も大きく増加する。ここでCV値は、金属粉末(図2においてはタンタル粉末)の比表面積と正の相関がある値である。しかしながら、図1で示したような本実施形態の方法で窒素含有ガスを反応融液の上方に導入して接触させる方法では、CV値(横軸)が大きくなるにしたがって、粉末が含有する窒素量も若干は増加するものの、その程度は従来のものに比べ小さくなっている。
このように従来の方法では、金属にドープされる窒素量が過剰となる可能性があり、その傾向は金属粉末が高表面積化するにしたがって顕著であるのに対し、本実施形態の方法によれば、たとえ金属粉末の比表面積が大きな場合であっても、その金属粉末には必要最小量の窒素のみが添加される。
なお、金属塩と還元剤とを分割して希釈塩14に加える方法以外に、それぞれを任意の添加速度で連続的に添加してもよい。このように分割して、または連続的に金属塩と還元剤とを加えると、一括して加える方法に比べて、反応熱による急激な温度上昇が見られず、微細でかつ均一な粒度分布の窒素含有金属粉末が得られる。
還元反応終了後、反応融液を冷却し、得られた集塊を水、弱酸性水溶液等で繰り返し洗浄して、希釈塩を除去することにより、窒素含有金属粉末が得られる。
この場合、必要に応じて、遠心分離、濾過等の分離操作を組み合わせても、フッ酸と過酸化水素が溶解している溶液等で粒子を洗浄し、精製してもよい。
以上のようにして得られた窒素含有金属粉末に対して、熱凝集、脱酸素、徐酸化安定化処理等の前処理を行った後、この粉末を成形、焼結して多孔質焼結体を製造する。
熱凝集は、窒素含有金属粉末を真空中で加熱して凝集させて、粉末中に存在する極微細な粒子を比較的粒径の大きな2次粒子とするために行う。比較的大きな2次粒子を成形、焼結して得られた多孔質焼結体は、極微細な粒子から得られた多孔質焼結体よりも大きな空孔を有するため、アノード電極として使用する場合に、電解質溶液が多孔質焼結体の内部まで浸透し、高容量化をはかることができる。また、真空中で加熱することによって、窒素含有粉末中に含まれる、希釈塩由来のナトリウム、マグネシウム等の不純物を除去することができる。
熱凝集は、通常、窒素含有金属粉末を真空中で800〜1400℃で、0.5〜2時間加熱して行う。熱凝集の前には、窒素含有金属粉末に振動を与えながら、粉体全体が均一に濡れる量の水を添加する予備凝集を行うことが好ましい。この予備凝集を行うことによって、より強固な凝集体を得ることができる。また予備凝集で添加する水に、金属に対して10〜300ppm程度のリン、ホウ素等をあらかじめ添加しておくことによって、一次粒子の融合成長を抑え、高表面積を維持しながら熱凝集させることができる。なお、ここで加えるリンの形態としては、リン酸、六フッ化リンアンモニウム等が挙げられる。
ついで、熱凝集で得られたケーキ状の粉体を、大気中または不活性ガス中で解砕した後マグネシウム等の還元剤を加え、粒子中の酸素と還元剤を反応させ、脱酸素を行う。
脱酸素はアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で、還元剤の融点以上、沸点以下の温度で、1〜3時間行う。そして、その後の冷却中にアルゴンガスに空気を導入して窒素含有金属粉末の徐酸化安定化処理を行った後、粉末中に残留しているマグネシウム、酸化マグネシウム等の還元剤由来の物質を酸洗浄して除去する。
このようにして熱凝集、脱酸素、徐酸化安定化処理を行った窒素含有金属粉末に、バインダーとして3〜5質量%程度のショウノウ(C1016O)等を加えてプレス成形し、ついで、1000〜1400℃で0.3〜1時間程度加熱して焼結し、多孔質焼結体を製造する。なお、焼結温度は、金属の種類や粉末の比表面積に応じて適宜設定できる。
この多孔質焼結体をアノード電極として使用する場合には、窒素含有金属粉末をプレス成形する前に、この粉末中にリード線を埋め込んでプレス成形し、焼結して、リード線を一体化させる。そして、これを例えば温度30〜90℃、濃度0.1質量%程度のリン酸、硝酸等の電解溶液中で、40〜80mA/gの電流密度で20〜60Vまで昇圧して1〜3時間処理し、化成酸化を行って、固体電解コンデンサ用のアノード電極に使用する。
さらに、公知の方法で二酸化マンガン、酸化鉛や導電性高分子等の固体電解質層、グラファイト層、銀ペースト層を多孔質焼結体上に順次形成し、ついでその上に陰極端子をハンダ付けなどで接続した後、樹脂外被を形成することにより固体電解コンデンサが得られる。
このような窒素含有金属粉末は、窒素含有金属粉末中の窒素量W[ppm]と、窒素含有金属粉末のBET法により測定された比表面積S[m/g]との比W/Sが、500〜3000であるので、比表面積Sの大きさにかかわらず、適量の窒素を有し、粒子中に過剰の窒素を含有しない。よって、窒素量が過剰な場合に生成しやすい結晶性窒化物をほとんど有することなく、金属に固溶した状態で窒素を含有できる。よって、このような窒素含有金属粉末をアノード電極原料とすることによって、高容量で、漏れ電流が少なく、長期の信頼性に優れた固体電解コンデンサを得ることができる。また、このような結晶性窒化物をほとんど含有しない窒素含有金属粉末は、アノード電極を製造する際のプレス成形において、金型を傷めることもない。
また、このような窒素含有金属粉末は、金属を含む金属塩を、溶融した希釈塩14中で還元剤と反応させて還元し、金属を生成させる際に、金属塩と還元剤と希釈塩14とを含む反応融液に接する空間に窒素含有ガスを導入して、金属を生成させるとともに金属に窒素を含有させる方法により製造できる。このような方法によれば、窒素との接触が還元直後の金属に限定されるとともに、その接触の程度も適度に制御でき、少量の窒素を均一に有する窒素含有金属粉末を製造することができる。また、窒素を導入するための工程を別途必要としないため、生産性にも優れる。
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
図1のような構成の50Lの反応器10に、希釈塩14であるフッ化カリウムと塩化カリウムを各15kg入れた。ついで、窒素含有ガスとして純窒素ガス(純度99.999%)を、3L/分の流量で窒素含有ガス導入管12から導入し窒素含有ガス排出管13から排出させて反応器10内を窒素雰囲気に保ちながら希釈塩を850℃に加熱して溶融した。
ついで、金属塩投入口11aから反応器10内に、1回あたりフッ化タンタルカリウム200gを添加し、1分後、溶解したナトリウムを還元剤投入口11bから58g添加し、6分間反応させた。この操作を30回繰り返した。なお、この間、反応器10内を窒素雰囲気に維持するとともに、攪拌翼15で攪拌した。
攪拌翼15の回転数は150rpmとした。
還元反応終了後冷却し、得られた集塊を砕き、弱酸性水溶液で洗浄し、タンタル粒子を得た。さらに、フッ酸と過酸化水素を含む洗浄液で精製処理した。タンタルの還元粒子の収量は2.4kgであった。
次に、得られたタンタル粉末(乾燥品)100gに振動を与えながら全体が均一に濡れるまで水を添加して団塊とし、予備凝集を行った。この際、タンタルに対して約100ppmになるようにリン酸をあらかじめ添加しておいた。この場合、団塊になる水量はおおよそ25mlであった。ついで、この団塊を真空加熱炉で1200℃で1時間加熱し、熱凝集させた。
そして、熱凝集させた団塊を、まず、セラミック製のロールクラッシャーで粗砕し、さらに、アルゴン雰囲気中でピンミルで粒径250μm以下に粉砕した。
粉砕物100gに3gのマグネシウムチップを混合し、アルゴン雰囲気の加熱炉中で800℃で2時間保持し、タンタル中の酸素とマグネシウムを反応させ、脱酸素を行った。そして、その後の冷却過程でアルゴンガス中に空気を導入しタンタル粉末の徐酸化安定処理を行い、炉から取り出した。取り出した粉末を硝酸水で洗浄し、マグネシウムと酸化マグネシウムを洗浄し、除去した。
このようにして得られたタンタル粉末のBET法比表面積S、窒素量W、W/S、一次粒子の平均粒子径は表1に示す値であった。また、このタンタル粉末のX線回折の解析より、含まれる窒素の形態は金属に固溶した状態であることがわかった。また、窒素を含む化合物の結晶相は認められなかった。Ta(110)面の面間隔は0.23400nm(=2.3400Å)であった。
(多孔質焼結体の作成)
ついで、このタンタル粉末0.15mgに、バインダーとしてショウノウ2質量%を添加、混合し、プレス成形して直径3mm、密度4.5g/cmの成形体を作成した。そして、この成形体を真空焼結炉で1350℃、20分の条件で加熱して多孔質焼結体を製造した。
(化成酸化条件)
得られた多孔質焼結体を10質量%リン酸水溶液中で、化成電圧20V、温度90℃、保持時間120分で化成酸化(陽極酸化)し、誘電体酸化膜を形成した。
(ウェット法電気特性測定)
誘電体酸化膜が形成された多孔質焼結体について、30.5vol%硫酸水溶液にて、バイアス電圧1.5V、周波数120Hzで電気容量(CV値)を測定した。
また、直流漏れ電流(DLC)は、10質量%リン酸水溶液で電圧14V、3分後の電流値である。
結果を表1に示す。
[実施例2]
窒素含有ガスとして純窒素ガス(純度99.999%)の代わりに、窒素50vol%とアルゴン50vol%の混合ガスを窒素含有ガス導入管12から導入した以外は実施例1と同様にしてタンタル粉末を得た。
このようにして得られたタンタル粉末のBET法比表面積S、窒素量W、W/S、一次粒子の平均粒子径は表1に示す値であった。また、このタンタル粉末のX線回折の解析より、含まれる窒素の形態は金属に固溶した状態であることがわかった。また、窒素を含む化合物の結晶相は認められなかった。Ta(110)面の面間隔は0.23400nm(=2.3400Å)であった。
そして、実施例1と同様にして多孔質焼結体の製造、化成酸化、ウェット法による電気特性測定を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
フッ化タンタルカリウムおよびナトリウムの1回当たりの添加量をそれぞれ、125g、38gとした以外は実施例1と同様にしてタンタル粉末を得た。
このようにして得られたタンタル粉末のBET法比表面積S、窒素童W、W/S、一次粒子の平均粒子径は表1に示す値であった。また、このタンタル粉末のX線回折の解析より、含まれる窒素の形態は金属に囲溶した状態であることがわかった。また、窒素を含む化合物の結晶相は認められなかった。Ta(110)面の面間隔は0.23400nm(=2.3400Å)であった。
そして、焼結温度を1300℃とした以外は実施例1と同様にして、多孔質焼結体の製造、化成酸化、ウェット法による電気特性測定を行った。
[実施例4]
実施例1と同じ反応器10を使用して、金属塩原料としてフッ化タンタルカリウムの代わりにフッ化ニオブカリウムを使用してニオブ粉末を得た。
なお、反応器10内への1回あたりのフッ化ニオブカリウム添加量は300g、1回あたりのナトリウム添加量は115g。これらの添加の際には、反応融液の温度を測定し、温度上昇曲線を観察しながら反応完了時間(約12分)まで保持した。この操作を12回繰り返した。なお、その他の条件は実施例1と同じである。
その後、実施例1と同様にして、ニオブ粉末を得た。その収量は1.1kgであった。なお、この時点でのニオブ粉末のBET法比表面積Sは3.8m/g、窒素含有量は3100ppmであった。また、この粉末のX線回折解析結果において、ニオブ金属以外のピークの存在は認められず、窒素が化合物を形成せずにニオブに固溶していることが確認できた。
次に、得られたニオブ粉末(乾燥品)100gに振動を与えながら全体が均一に濡れるまで水を添加して団塊とし、予備凝集を行った。この際、タンタルに対して約100ppmになるようにリン酸をあらかじめ添加しておいた。この場合、団塊になる水量はおおよそ28mlであった。ついで、この団塊を真空加熱炉で1150℃で1時間加熱し、熱凝集させた。
その後は実施例1と同様の方法で、ニオブ粉末を得た。このニオブ粉末のBET法比表面積S、窒素量W、W/S、一次粒子の平均粒子径は表1に示す値であった。
また、この粉末のX線回折解析結果においても、ニオブ金属以外のピークは確認できず、窒素がニオブに固溶していることが裏付けられた。
そして、実施例1と同様にして多孔質焼結体の製造、化成酸化、ウェット法による電気特性測定を行った。結果を表1に示す。ただし、成形体を製造する際、使用するニオブ粉末の質量は0.1mgとし、これにショウノウを2質量%添加した。そして、直径3mm、密度2.8g/cmの成形体を製造した。また、焼結温度は1200℃とした。
[比較例1]
反応器10内に純窒素ガスを流通させるかわりに、反応融液中に窒素含有ガス供給ノズルを浸漬して、ここから純窒素ガスを反応融液内にバブリングした(流量:3L/分)以外は実施例1と同様にして、タンタル粉末を得た。
そして、実施例1と同様にして多孔質焼結体の製造、化成酸化、ウェット法による電気特性測定を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
反応器10内に純窒素ガスとアルゴンガスの混合ガスを流通させるかわりに、反応融液中に窒素含有ガス供給ノズルを浸漬して、ここから混合ガスを反応融液内にバブリングした(流量:3L/分)以外は実施例2と同様にして、タンタル粉末を得た。
そして、実施例1と同様にして多孔質焼結体の製造、化成酸化、ウェット法による電気特性測定を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
反応器10内に純窒素ガスを流通させるかわりに、反応融液中に窒素含有ガス供給ノズルを浸漬して、ここから純窒素ガスを反応融液内にバブリングした(流量:3L/分)以外は実施例3と同様にして、タンタル粉末を得た。
そして、実施例1と同様にして多孔質焼結体の製造、化成酸化、ウェット法による電気特性測定を行った。結果を表1に示す。
[比較例4]
反応器10内に純窒素ガスを流通させるかわりに、反応融液中に窒素含有ガス供給ノズルを浸漬して、ここから純窒素ガスを反応融液内にバブリングした(流量:3L/分)以外は実施例4と同様にして、ニオブ粉末を得た。
そして、実施例1と同様にして多孔質焼結体の製造、化成酸化、ウェット法による電気特性測定を行った。結果を表1に示す。
[比較例5]
反応器10内に純窒素ガスを流通させるかわりに、窒素を含有しないアルゴンガスを流通させた以外は実施例4と同じ条件でニオブ粉末を得た。得られたニオブ粉末には、表1に示すように、250ppmの窒素が含まれたが、これは、強制的に導入された窒素ではなく、空気中の窒素に由来するものである。
そして、実施例1と同様にして多孔質焼結体の製造、化成酸化、ウェット法による電気特性測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 2016166422
Figure 2016166422
表1に示したように実施例1〜4では、窒素量W[ppm]と比表面積S[m/g]との比W/Sが500〜3000である窒素含有タンタル粉末または窒素含有ニオブ粉末が得られたが、比較例1〜5で得られた粉末は、窒素量W[ppm]と比表面積S[m/g]との比W/Sがいずれも上記範囲外であった。
そして、実施例1〜4で得られたタンタル及びニオブ粉末は、電気特性評価において、直流漏れ電流(DLC)、比漏れ電流(DLC/CV)が対応する各比較例に比べて小さく、その性能が改良されていた。
14:希釈塩

Claims (3)

  1. BET法により測定された比表面積S[m/g]が少なくとも1.0であることを特
    徴とする窒素含有タンタル金属粉末であって、窒素含有量W[ppm]と比表面積S[m/g]
    との比W/Sが500〜2000であり、該窒素は該タンタル金属粉末を構成する粉末粒子の中に結晶性窒化物を形成することなく該タンタル金属粉末の全体に亘って均一に固溶しており、
    該タンタル金属粉末を真空焼成炉で1,350℃で20分間焼結して得られた多孔質焼結体の比漏れ電流が0.64未満である
    ことを特徴とする窒素含有タンタル金属粉末。
  2. 請求項1記載の窒素含有タンタル金属粉末を焼結して得られた多孔質焼結体。
  3. 請求項2に記載の多孔質焼結体からなるアノード電極を備えている
    ことを特徴とする固体電解コンデンサ。
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