JP4746883B2 - ハイドロゲル基剤、パップ剤基剤、パップ剤及び水性ゲルシート - Google Patents

ハイドロゲル基剤、パップ剤基剤、パップ剤及び水性ゲルシート Download PDF

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Description

本発明は含水系粘着基剤に関し、より詳しくは、高含水率、高粘着性、高保形性を兼備し、パップ剤や水性ゲルシートに使用した場合に、貼付時における水分保持能が高く、冷却効果が向上したハイドロゲル基剤に関する。
従来、ハップ剤や水性ゲルシート、創傷被覆材などに使用する粘着基剤としては、含水系粘着基剤であるハイドロゲル基剤が用いられている。このハイドロゲル基剤は水分を含有するゲル状物であって、通常の粘着基剤の役割である薬物などの担持や皮膚への貼付のほか、含有する水分が患部冷却作用や角質層水和作用を示すことなどの優れた利点を有する粘着基剤である。
従来、ハイドロゲル基剤としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子化合物が知られている(特許文献1及び2参照)が、上記のような用途におけるハイドロゲル基剤の要求性能である、高含水性、高粘着性、高保形性においては満足し得るものではない。
而して、それらの要求性能を満たすための提案が数多く報告されている。
例えば、水溶性高分子物質に架橋剤としてアルミナマグネシウムを配合する(特許文献3参照)、水溶性高分子化合物としてのポリアクリル酸及び/又はポリアクリル酸塩にアルミナマグネシウムなどの難溶性多価金属化合物、エタノール及び/又はイソプロパノール、ヒドロキシ酸を配合する(特許文献4参照)、無水ケイ酸及びヒマシ油を配合する(特許文献5参照)等である。
しかしながら、いずれの発明も、ハイドロゲル基剤をイオン結合により架橋させることを前提とした上で、他の化合物を添加することでハイドロゲル基剤の物性を改善しようと試みたものであり、大幅な物性の改善を望むことは難しい。
なぜならハイドロゲル基剤の含水性、粘着性、保形性といった物性の多くは、高分子自体の組成や分子量といった性質と水溶液中での高分子の形状によって決定され、中でも高分子同士をつなぐ架橋構造による寄与はもっとも重要であると考えられる。
しかし、共有結合に比べ弱い結合であるイオン結合による架橋では、例えば十分な凝集力を得るために、架橋密度を増大させる必要があり、結果としてハイドロゲル基剤の含水性および粘着性などの低下を避けることができないなど背反する要求特性を十分に満たすことは難しいと考えられる。
特開昭55−122714号公報 特開平3−161436号公報 特公平4−50291号公報 特開平7−39748号公報 特開2002−154950号公報
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、高含水性、高粘着性及び高保形性という背反する要求特性を十分に兼ね備え、また比較的簡単な製造工程により調製することが可能な、ハイドロゲル基剤及び、それを使用したパップ剤基剤、パップ剤及び水性ゲルシートを提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく研究の結果、共有結合による架橋システムによって調製されたハイドロゲル基剤とすることにより、その目的を達成し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体の側鎖にエネルギー線により架橋されうる炭素−炭素二重結合を有するポリアクリル酸誘導体の水溶液にエネルギー線を照射することにより得られてなるパップ剤用ハイドロゲル基剤、
(2)ポリアクリル酸誘導体が、ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体のカルボキシル基の一部を2−ヒドロキシエチルメタクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリレートで修飾した化合物である上記(1)のパップ剤用ハイドロゲル基剤、
(3)2−ヒドロキシエチルメタクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリレートによる修飾率が0.1〜40モル%である上記(2)のパップ剤用ハイドロゲル基剤、
(4)ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体の質量平均分子量が5000〜3000000である上記(2)又は(3)のパップ剤用ハイドロゲル基剤、
(5)エネルギー線により架橋されうる官能基を有するポリアクリル酸誘導体の水溶液が該ポリアクリル酸誘導体100質量部に対し0.1〜2質量部の光開始剤を含有する上記(1)〜(4)のいずれかのパップ剤用ハイドロゲル基剤、
(6)エネルギー線により架橋されうる官能基を有するポリアクリル酸誘導体の水溶液中の該ポリアクリル酸誘導体の含有率が5〜30質量%である上記(1)〜(5)のいずれかのパップ剤用ハイドロゲル基剤、
(7)含水率が70〜95質量%である上記(1)〜(6)のいずれかのパップ剤用ハイドロゲル基剤、
(8)含水率が85〜95質量%である上記(1)〜(6)のいずれかのパップ剤用ハイドロゲル基剤、
(9)ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体の側鎖にエネルギー線により架橋されうる炭素−炭素二重結合を有するポリアクリル酸誘導体の水溶液にエネルギー線を照射することにより得られてなるパップ剤用ハイドロゲル基剤に薬剤が含有されてなるパップ剤基剤、
(10)ポリアクリル酸誘導体が、ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体のカルボキシル基の一部を2−ヒドロキシエチルメタクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリレートで修飾した化合物である上記(9)のパップ剤基剤、
(11)上記(9)又は(10)のパップ剤基剤が支持体上に展延されてなるパップ剤、
(12)ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体の側鎖にエネルギー線により架橋されうる炭素−炭素二重結合を有するポリアクリル酸誘導体の水溶液にエネルギー線を照射することにより得られてなるパップ剤用ハイドロゲル基剤が支持体上に展延されてなる水性ゲルシート、
(13)ポリアクリル酸誘導体が、ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体のカルボキシル基の一部を2−ヒドロキシエチルメタクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリレートで修飾した化合物である上記(12)の水性ゲルシート、
である。
本発明によれば、高含水性、高粘着性及び高保形性という背反する要求特性を十分に兼ね備えた、ハイドロゲル基剤及び、それを使用したパップ剤基剤、パップ剤及び水性ゲルシートを提供することができる。また、低粘度の水溶液で支持体に塗布した後に、エネルギー線を照射してゲルとするのであり、比較的簡単な製造工程により調製することができる。
本発明における、エネルギー線により架橋されうる官能基を有するポリアクリル酸誘導体(以下「架橋性ポリアクリル酸誘導体」と記載することがある。)は、ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体の側鎖に炭素−炭素二重結合を有するポリアクリル酸誘導体である。
ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体としては、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸部分中和塩を挙げることができる。ポリアクリル酸部分中和塩としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム等のポリアクリル酸の一価アルカリ金属塩、ポリアクリル酸モノエタノールアミン、ポリアクリル酸ジエタノールアミン、ポリアクリル酸トリエタノールアミン等のポリアクリル酸のアミン塩、ポリアクリル酸のアンモニウム塩等の部分中和塩が挙げられる。
ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体の質量平均分子量は、多量の水分中で架橋反応を充分に行う為には、5000以上が好ましい。但し、架橋性ポリアクリル酸誘導体の水溶液においては、同じ含有率(固形分濃度)とした場合は、架橋性ポリアクリル酸誘導体の質量平均分子量が大きくなるほど、水溶液の粘度も大きくなるが、粘度があまり高いと作業性が悪くなるので、3000000以下であるものが好ましい。ここで、塗工可能な水溶液の粘度としては、50000mPa・s以下であるものが好ましい。
ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体の側鎖にエネルギー線により架橋されうる官能基、即ち炭素−炭素二重結合を導入する方法は、例えば、ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体のカルボキシル基の一部を2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下「HEMA」と記載することがある。)又は2−ヒドロキシエチルアクリレート(以下「HEA」と記載することがある。)で修飾する方法を挙げることができる。具体的には、ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体とHEMA及び/又はHEAとを触媒の存在下に反応させ、ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体のカルボキシル基とHEMA及び/又はHEAの水酸基とでエステル化反応を行わせる方法である。
触媒としては、この種の目的に通常使用される触媒のいずれもが使用可能であり、例えば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等を例示することができる。
尚、HEMAで修飾されたポリアクリル酸を例にとって骨格を示すと、次の通りである。
Figure 0004746883
ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体をHEMA及び/又はHEAで修飾した化合物においては、修飾率は、ゲルを形成させるためには0.1モル%以上が好ましく、水溶性を担保しつつ多量の水分を保持させるためには40モル%以下が好ましい。即ち、修飾率は、0.1〜40モル%が好ましく、特に3〜35モル%が好ましい。
本発明のハイドロゲル基剤は、上記のような架橋性ポリアクリル酸誘導体の水溶液にエネルギー線を照射することにより、共有結合による架橋反応を行わせしめて得られたものである。
当該水溶液中の架橋性ポリアクリル酸誘導体の含有率(固形分濃度)は、ハイドロゲル基剤の含水率の設計値と関連し、一概には決められないが、十分な保形性、機械的強度を有し、基剤からの水の湿潤などが生じるのを防ぐためには5質量%以上が好ましく、十分な含水性を有し、柔軟性、粘着性を確保するためには30質量%以下とするのが好ましい。
即ち、水溶液中の架橋性ポリアクリル酸誘導体の含有率は、5〜30質量%が好ましく、特に、10〜20質量%が好ましい。
照射するエネルギー線が紫外線もしくは可視光線である場合には、所望により、架橋性ポリアクリル酸誘導体の水溶液に、エネルギー線の照射によってラジカルを発生させて、架橋反応を迅速且つ確実に行なわせしめる、光開始剤を含有させることが好ましい。
光開始剤としては、この種の目的に通常使用される光開始剤のいずれもが使用可能であり、紫外線励起型としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−((4−メチルチオ)−フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン等を、可視光線励起型としては、カンファーキノン等を例示することができ、照射するエネルギー線の種類に応じた励起波長を有するものを選択する。
水溶液中の光開始剤の添加量は、溶液全体に光開始剤が分散し、充分に架橋反応を進ませるためには、架橋性ポリアクリル酸誘導体100質量部に対する添加量として、0.1質量部以上が好ましく、適度な架橋密度を得るためには、2質量部以下が好ましい。即ち、光開始剤の添加量は、架橋性ポリアクリル酸誘導体100質量部に対する添加量として、0.1〜2質量部が好ましく、特に0.2〜1.8質量部が好ましい。
本発明のハイドロゲル基剤は、そのまま、又は薬剤を含むパップ剤基剤等の形で支持体上に展延されて、水性ゲルシート、パップ剤等とされる。具体的には、支持体上に架橋性ポリアクリル酸誘導体の水溶液を塗布し、エネルギー線を照射して、架橋反応を行なわせしめてハイドロゲル基剤層を形成し、必要により保護フィルム等を剥離可能にハイドロゲル基剤層上に設けた後、所定の大きさに裁断し、水性ゲルシート、パップ剤等の製品とされる。
エネルギー線としては、可視光線、紫外線、α線、β線、γ線、X線、電子線等の、この種の目的に通常使用されるもののいずれもが使用可能である。
本発明のハイドロゲル基剤には、必要に応じて、薬物や、保形性向上や粘着力付与などを目的として多価アルコールや水溶性高分子、吸水性樹脂、無機質充填材、防腐剤、緩衝剤などを含有させることができる。
薬物としては、特に制限はないが、例えば1−メントール、d−カンフル、ハッカ油、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、酢酸トコフェロール等の通常のハップ剤に用いられている成分、インドメタシン、フルルビプロフェン、フェルビナク、ピロキシカム、ケトプロフェン、アズレン、アラントイン等の抗炎症剤、シコン、セイヨウトチノミ等の生薬粉末およびエキス成分、トウガラシエキス、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル等の血行改善剤等が例示できる。
多価アルコールとしては、グリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどを用いることができる。
また、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、エチレン/プロピレングリコール共重合体、乳酸/酪酸共重合体(PLGA)、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、キサンタンガム、カゼイン、アラビアゴムなどを用いることができる。さらに、架橋性ポリアクリル酸誘導体以外のポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩などを併用することができる。このポリアクリル酸塩としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム等のポリアクリル酸の一価金属塩、ポリアクリル酸モノエタノールアミン、ポリアクリル酸ジエタノールアミン、ポリアクリル酸トリエタノールアミン等のポリアクリル酸のアミン塩、ポリアクリル酸のアンモニウム塩が挙げられるが、特に好ましいものはポリアクリル酸ナトリウムである。
これらの多価アルコールや水溶性高分子は1種類もしくは2種類以上を併用しても支障はない。
上記の成分の他に、従来一般的に用いられている成分を本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。その他の成分の例としては、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、シリカなどの無機質充填材や、ポリメチルメタクリレートなどの有機質充填材、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの界面活性剤、メチルパラベン等のパラベン類、ソルビン酸やその塩類、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ノルジヒドログアイアレチン酸、グアヤコールエステル類などの防腐乃至酸化(老化)防止剤、経皮吸収促進剤、着香料、着色料などが挙げられる。
また、ハイドロゲル基剤の製剤化に際しては、皮膚刺激性を避ける意味において、適用される皮膚に当接する部位において、弱酸性〜中性、好ましくは弱酸性となるように調整するのが好ましい。具体的には、緩衝剤によりpHを約4−7に液性を調整するのが好ましく、製薬学的に許容される緩衝剤としては、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸等の有機酸、これらの有機酸の塩、第一、第二または第三リン酸塩(例えば、第一リン酸カリウム、第二リン酸ナトリウムなど)、グリシンなどのアミノ酸もしくはそのアミノ酸の塩等、またはこれらの混合物が挙げられる。
これらの、必要に応じてハイドロゲル基剤に含有させる、薬物、多価アルコール、水溶性高分子、吸水性樹脂、無機質充填材、防腐剤、緩衝剤などの物質は、エネルギー線を照射する水溶液に架橋性ポリアクリル酸誘導体並びに所望により光開始剤と共に含有させ、架橋性ポリアクリル酸誘導体の架橋反応の結果としてハイドロゲル基剤に含有させることになる。而して、それらの物質の該水溶液中の含有率は、0〜25質量%とするのが好ましい。
本発明のハイドロゲル基剤に含有させる水分量は、上記の架橋性ポリアクリル酸誘導体、光開始剤その他の物質を含有する、エネルギー線を照射する水溶液中の水分量を調節することにより、任意に設定することが可能であるが、薬物の作用による効能のほかに、含有する水分が患部冷却作用や角質層水和作用などを期待する場合には、できるだけ多量に含有させることが望ましく、70〜95質量%、特に、85〜95質量%の範囲が好ましい。
本発明のハイドロゲル基剤は、そのまま、又は薬剤を含むパップ剤基剤等の形で布や不織布等の支持体に展延されて、水性ゲルシート、パップ剤等とされる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られたハイドロゲル基剤の性能評価は、下記の要領に従って行った。
(1)ゲル分率及び膨潤度
(a) 各例で得られたハイドロゲル基剤調製用水溶液に、紫外線を照射し、ハイドロゲル基剤を調製する。照射条件は、光源から被照射体までの距離:15cm、照射時間:5分、照射量:5mW/m2とする。
(b) 調製した約0.5gのハイドロゲル基剤を60mLの精製水中に浸し、24時間放置して膨潤させる。
(c) 上澄みを除去し、膨潤したハイドロゲル基剤の質量を測定する。
(d) 凍結乾燥により水分を完全に除去したのち、質量を測定する。
(e) 上記で得られた質量の測定値、及び試料としたハイドロゲル基剤を調製するために使用した架橋性ポリアクリル酸誘導体の質量から、次式により算出する。
Figure 0004746883
(2)濁度
(a) 各例で得られたハイドロゲル基剤調製用水溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー)に塗布し、上記(1)(a)の場合と同じ条件で、紫外線を照射し、厚さ1mmのハイドロゲル基剤層を調製する。
(b) 調製したハイドロゲル基剤層付きフィルムについて、マルチプレートリーダー(CORONA ELECTRIC社製、MTP−300)を使用し、波長505nmでの吸光度を測定した。
(3)プローブタック
(a) 各例で得られたハイドロゲル基剤調製用水溶液をウンリュウ(レーヨン)/ポリエチレン貼り合わせフィルム(国光製紙社製、商品名:ボブロンM#2020)に塗布し、上記(1)(a)の場合と同じ条件で、紫外線を照射し、厚さ1mmのハイドロゲル基剤層を調製する。
(b) 調製したハイドロゲル基剤層付きフィルムを、10mm角にカットし、PROBE TACK TESTER(RIGAKU KOGYO社製)を使用してゲルのプロ−ブタックを次の条件で測定した。
速度:10mm/秒
接触時間:1.0秒
接触面積:5mmφ
荷重:100g/cm2
環境:JIS標準環境(23℃、50%RH)
実施例1
〔架橋性ポリアクリル酸の合成〕
2gのポリアクリル酸(和光純薬工業株式会社製、質量平均分子量:約250,000)を38gの水に溶解させた後、7.224gのHEMA(シグマアルドリッチ社製、商品名:2−ヒドロキシエチルメタクリレート)を加えて攪拌し、均一な溶液にする。
つづいて、0.261gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC, シグマ アルドリッチ社製)を1gの水に溶解したものを加え、室温で4時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液を透析(2時間×4回)することで、未反応のHEMAを洗い流した。最後に凍結乾燥により反応液中の水分を除去し、修飾率5.00モル%の架橋性ポリアクリル酸を得た。
〔ハイドロゲル基剤調製用水溶液の調製〕
上記により調製した架橋性ポリアクリル酸をリン酸緩衝液(6.4mM第二リン酸ナトリウム、1.4mM第一リン酸カリウム、137mM塩化ナトリウム、2.6mM塩化カリウム、水溶液のpH7.4)に含有率が15質量%となるように溶解し、更に、光開始剤である2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMPA, 和光純薬工業株式会社製)を架橋性ポリアクリル酸100質量部当たり1.00質量部、エタノール溶液として加え、ハイドロゲル基剤調製用水溶液を調製した。ハイドロゲル基剤調製用水溶液の処方は、表1に示す。
〔物性の測定〕
調製したハイドロゲル基剤調製用水溶液を使用してハイドロゲル基剤を調製し、ゲル分率、膨潤度、濁度及びプローブタックの測定を行った。その結果は、表2に示す如くである。
実施例2
〔架橋性ポリアクリル酸の合成〕におけるEDACの使用量を0.261gから0.931gに変更することによって、修飾率を17.5モル%とした以外は、実施例1と同様にしてハイドロゲル基剤調製用水溶液を調製し、それよりハイドロゲル基剤を調製して物性を測定した。ハイドロゲル基剤調製用水溶液の処方を表1に、物性測定の結果を表2に示す。
実施例3
〔架橋性ポリアクリル酸の合成〕におけるEDACの使用量を0.261gから1.596gに変更することによって、修飾率を30.0モル%とした以外は、実施例1と同様にしてハイドロゲル基剤調製用水溶液を調製し、それよりハイドロゲル基剤を調製して物性を測定した。ハイドロゲル基剤調製用水溶液の処方を表1に、物性測定の結果を表2に示す。
実施例4
〔架橋性ポリアクリル酸の合成〕における7.224gのHEMAを6.446gのHEA(和光純薬工業社製、商品名:2−ヒドロキシエチルアクリレート)に変更(修飾率:5.0モル%)し、〔ハイドロゲル基剤調製用水溶液の調製〕における架橋性ポリアクリル酸の含有率を10質量%とした以外は、実施例1と同様にしてハイドロゲル基剤調製用水溶液を調製し、それよりハイドロゲル基剤を調製して物性を測定した。ハイドロゲル基剤調製用水溶液の処方を表1に、物性測定の結果を表2に示す。
実施例5
〔架橋性ポリアクリル酸の合成〕におけるEDACの使用量を0.261gから0.783gに変更することによって、修飾率を15.0モル%とした以外は、実施例4と同様にしてハイドロゲル基剤調製用水溶液を調製し、それよりハイドロゲル基剤を調製して物性を測定した。
ハイドロゲル基剤調製用水溶液の処方を表1に、物性測定の結果を表2に示す。
実施例6
〔ハイドロゲル基剤調製用水溶液の調製〕における架橋性ポリアクリル酸の含有率を15質量%とした以外は、実施例4と同様にしてハイドロゲル基剤調製用水溶液を調製し、それよりハイドロゲル基剤を調製して物性を測定した。
ハイドロゲル基剤調製用水溶液の処方を表1に、物性測定の結果を表2に示す。
比較例1
市販のパップ剤である、熱さまシート大人用(商品名、小林製薬社製)について、ゲル部分の含水率を測定し、その結果を表2に示す。
比較例2
市販のパップ剤である、冷えピタ大人用(商品名、ライオン社製)について、ゲル部分の含水率及びプローブタックを測定し、その結果を表2に示す。
比較例3
市販のパップ剤である、メンフラアイス(商品名、大正製薬社製)について、ゲル部分の含水率及びプローブタックを測定し、その結果を表2に示す。
Figure 0004746883
但し A:HEMA修飾ポリアクリル酸誘導体 B:HEA修飾ポリアクリル酸誘導体
添加量*:架橋性ポリアクリル酸誘導体100質量部当りの質量部


Figure 0004746883
実施例1〜6のハイドロゲル基剤は、使用したハイドロゲル基剤調製用水溶液中の水分を全て含有するものであり、表2のように、極めて高い含水率を示している。この高含水率は、比較例1〜3の従来のパップ剤では得られなかったものである。
一方、表2のように、実施例1〜6の全てにおいて、高いゲル分率でゲルが形成されている。
膨潤挙動はゲル強度を強く反映しており、膨潤しにくいほどゲル強度の高いハイドロゲル基剤であると言える。
これらの結果より、本発明のハイドロゲル基剤は、高含水率であるにもかかわらず、極めて高い保形性を有していることが分かる。
プローブタックは粘着力の指標であるが、実施例1〜6のいずれも、比較例(従来品)より高い値を示しており、パップ剤基剤として充分な粘着力を有していることが分かる。
本発明のハイドロゲル基剤は、高含水性、高粘着性及び高保形性という背反する要求特性を十分に兼ね備え、また比較的簡単な製造工程により調製することが可能なものであり、そのまま、又は薬剤を含ませた形で支持体に展延させた水性ゲルシート、パップ剤などとして使用した場合は、人体皮膚へのべとつきがなく、良好な付着性、冷却性を発揮し、極めて有用である。

Claims (13)

  1. ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体の側鎖にエネルギー線により架橋されうる炭素−炭素二重結合を有するポリアクリル酸誘導体の水溶液にエネルギー線を照射することにより得られてなるパップ剤用ハイドロゲル基剤。
  2. ポリアクリル酸誘導体が、ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体のカルボキシル基の一部を2−ヒドロキシエチルメタクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリレートで修飾した化合物である請求項1に記載のパップ剤用ハイドロゲル基剤。
  3. 2−ヒドロキシエチルメタクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリレートによる修飾率が0.1〜40モル%である請求項2に記載のパップ剤用ハイドロゲル基剤。
  4. ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体の質量平均分子量が5000〜3000000である請求項2又は3に記載のパップ剤用ハイドロゲル基剤。
  5. エネルギー線により架橋されうる官能基を有するポリアクリル酸誘導体の水溶液が該ポリアクリル酸誘導体100質量部に対し0.1〜2質量部の光開始剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のパップ剤用ハイドロゲル基剤。
  6. エネルギー線により架橋されうる官能基を有するポリアクリル酸誘導体の水溶液中の該ポリアクリル酸誘導体の含有率が5〜30質量%である請求項1〜5のいずれかに記載のパップ剤用ハイドロゲル基剤。
  7. 含水率が70〜95質量%である請求項1〜6のいずれかに記載のパップ剤用ハイドロゲル基剤。
  8. 含水率が85〜95質量%である請求項1〜6のいずれかに記載のパップ剤用ハイドロゲル基剤。
  9. ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体の側鎖にエネルギー線により架橋されうる炭素−炭素二重結合を有するポリアクリル酸誘導体の水溶液にエネルギー線を照射することにより得られてなるパップ剤用ハイドロゲル基剤に薬剤が含有されてなるパップ剤基剤。
  10. ポリアクリル酸誘導体が、ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体のカルボキシル基の一部を2−ヒドロキシエチルメタクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリレートで修飾した化合物である請求項9に記載のパップ剤基剤。
  11. 請求項9又は10に記載のパップ剤基剤が支持体上に展延されてなるパップ剤。
  12. ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体の側鎖にエネルギー線により架橋されうる炭素−炭素二重結合を有するポリアクリル酸誘導体の水溶液にエネルギー線を照射することにより得られてなるパップ剤用ハイドロゲル基剤が支持体上に展延されてなる水性ゲルシート。
  13. ポリアクリル酸誘導体が、ポリアクリル酸を基本骨格とする重合体のカルボキシル基の一部を2−ヒドロキシエチルメタクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリレートで修飾した化合物である請求項12に記載の水性ゲルシート。
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