JP4744676B2 - セメント補強用複合繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はセメント製品を補強するための繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、セメント製品などの繊維補強材としてポリプロピレン繊維、ポリメチルペンテンコポリマー繊維等のポリオレフィン系繊維が多用されている。ポリオレフィン系繊維は強力があり、加熱下における耐アルカリ性があるのでセメント製品にしたときの耐衝撃性に優れている。例えば特開昭61−86452号公報にそれらが開示されている。そしてこれら補強繊維を用いて湿式抄造法、押出成型法、流し込み成型法などの製法によりセメント成型物はその強度を向上させるためにさらに高圧プレスにて組織を密にし、各種条件で養生する方法が一般的におこなわれている。この方法には自然養生、蒸気養生又はオートクレーブ養生などがある。
【0003】
しかしポリオレフィン系繊維は、そのポリマーの骨格が炭素と水素で構成されているために、分子内分極しやすく、親水性に乏しく疎水性が大きいので、セメント補強用繊維として使用した場合、セメントスラリー液中での繊維の分散が悪く、繊維がスラリー表面に浮上する現象(浮き種現象)が発生し、添加した繊維の有効添加量が減少するために所定の補強効果が得られないばかりでなく、水を循環させて使用する場合には浮き種となった繊維を取り除かなくてはならない等の問題点を有していた。
【0004】
これらを改善するために、界面活性剤で繊維の表面処理を行い、繊維の親水性を高める方法が従来より採られている。
しかしながら、単に界面活性剤で繊維表面を処理しても、湿式抄造法などでセメントスラリー液中に繊維を投入すると、界面活性剤が容易に繊維表面から溶出して除去され、良好な繊維の分散が持続しない。この改善策として特開昭64−33036号公報、特開平5−170497号公報に記載されているように、カルシウムイオンで難溶化するアルキルホスフェート塩を繊維処理剤として使用し、セメントスラリー液に繊維を投入したとき、繊維処理剤を速やかに繊維表面で難溶化させて該繊維表面に固着させ、繊維のセメント親和性を持続させて浮き種現象を防止し繊維の分散を高めるような工夫がされている。しかしながら、このような工夫もセメントマトリックスとの機械的混合時に作用する物理的外力によって、難溶物が脱落してしまい、その結果セメントとの親和性が持続できないという問題があった。またセメントマトリックスと繊維表面の難溶化物が点接着的に存在しているために、過酷な環境下にセメント製品を晒すとセメント製品の寸法変化を繊維が吸収できずに微細なクラックがセメント製品に発生する場合があった。
また特開平6−219797号公報、特開平7−173722号公報には繊維に炭酸カルシウムや金属酸化物を混合する例が開示されているが、紡糸時のトラブルや紡糸紡糸ノズルの傷みがあり満足する結果ではない。さらに特開2000−34146号公報にはカルボキシル変性ポリオレフィン系低分子量物の表面処理剤で繊維表面を被覆することも知られている。
【0005】
ポリオレフィン系繊維より高比重で親水性のよい繊維としてポリアセタール繊維が知られている。しかしながら、ポリアセタール繊維は、耐酸性、耐アルカリ性、耐候性などに劣るといった欠点があり、そのままではセメント補強繊維に使用することはできない。本発明ではポリアセタール繊維と耐酸性、耐アルカリ性に優れているポリオレフィン系繊維を併せて使用することによってこの欠点を克服することができたのである。また親水性に劣り、セメントスラリー中での分散性がよくないポリオレフィン繊維もポリアセタール繊維と併用することによりこれらの欠点を克服し得たのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのようなセメントマトリックスとの混和時における親水性を向上させ、親和性を高めて浮き種の少ないポリオレフィン系繊維のセメント補強用繊維を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、ポリアセタール系成分とポリオレフィン系成分との2成分からなり、単繊維繊度が17dtex以下であり、単繊維強度が3.0cN/dtex 以上の複合繊維であることを特徴とするセメント補強用複合繊維である。
【0008】
本発明の好ましい態様の一つは、ポリオレフィン系成分に充填剤を0.5〜6.0質量%添加されている上記のセメント補強用複合繊維である。
【0009】
さらに本発明の別の好ましい態様の一つは、ポリアセタール系成分を鞘成分、ポリオレフィン系成分を芯成分とする芯鞘型複合繊維である上記のセメント補強用複合繊維である。
【0010】
さらに本発明の別の好ましい態様の一つは、ポリアセタール系成分とポリオレフィン系成分とがその繊維断面において、一方の成分が他方の成分によって2つ以上に分割されており、これら両成分の少なくとも一部が繊維表面を形成している分割型複合繊維である上記のセメント補強用複合繊維である。
【0011】
上記のような構成により本発明によるセメント補強用繊維は、芯鞘型複合繊維の場合は鞘成分のポリアセタール成分が親水性がよくセメントスラリーとよく馴染み分散する。加えてポリアセタール成分による比重の増加も分散を助ける効果がある。また分割型複合繊維の場合はセメントスラリー中でポリアセタール繊維とポリオレフィン繊維が分割により各々単独繊維になってもポリオレフィン繊維のみがかたまって集団を作るのではなくポリアセタール繊維を含む繊維集団になるから、ポリアセタール繊維の分散力によりポリオレフィン繊維もよく分散されるのである。
またポリアセタール繊維は耐酸性、耐アルカリ性、耐候性に劣る欠点がありそのままではセメント補強用繊維として不適当であるが、本発明のようにポリオレフィン繊維と組み合わせることにより、セメント補強用繊維の成分となり得たのである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるポリアセタールにはホモポリマーとコポリマーの2種類があり、ポリオキシメチレン主鎖中に[−C−C−]結合を有する共重合体であるコポリマーと、通常1000個以上のCH2O 基を含んでいるポリオキシメチレンの長い鎖状高分子であるホモポリマーの双方を使用することができる。そして、このCH2O 基を有しているために従来のポリオレフィン系繊維に比べて親水性が高く、繊維表面に付与された界面活性剤の流出も抑さえることができる。
【0013】
本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂としては特に限定はされないが、好ましくはメチルペンテンと他のα−オレフィンとの共重合体、もしくはポリプロピレンが好ましい。ここでα−オレフィンとは炭素数が2〜20のアルカン或いはアルケンなどを使用することができる。メチルペンテンは比較的熱に強く強度にも優れるので好んで使用される。また耐光性、耐候性などの特性を付与させることもできその場合には、耐候性の用途に使用される公知の顔料或いは添加剤などを繊維自体に練り込むことなどができる。
【0014】
ポリアセタール系樹脂とポリオレフィン系樹脂は複合状態で一本の繊維の中に取り込むことができる。その断面形状は、芯鞘型、分割型などの形状にすることができる。このとき例えば、芯鞘型繊維では、鞘成分にポリアセタール系コポリマー樹脂を、芯成分にポリオレフィン系樹脂を配する。芯成分と鞘成分は同心円状或いは偏心状でもかまわない。そして両成分の容積比は紡糸の工程性を考慮すると70/30〜30/70が好ましく、更に好ましくは60/40〜40/60である。
【0015】
一方分割型繊維とする場合には、機械的外力によって容易に割繊される様な繊維とすることが好ましい。ポリアセタール系樹脂成分とポリオレフィン系樹脂成分とは一方の成分が他方の成分によって2つ以上に分割されている形状であり、更に各成分が少なくともその一部が繊維の長さ方向に連続的にその繊維表面を形成している様に配することが必要である。例えば、その断面形状は菊花型、横縞型などの形状を取ることができる。分割型繊維の混入は、押し出し成型法の場合は所定長に切断後、未分割のままで押し出し機のスクリューに投入し二軸のスクリューで混合しつつ分割する。抄造法の場合は、切断した未分割繊維を水中に投入し撹拌して分割させ、これを水分散液のままセメントスラリーに投入し混合する。
【0016】
また本発明のセメント補強用複合繊維は単繊維強度3.0cN/dtex以上を有することが必要である。分割型複合繊維の場合は分割前の強力である。単繊維強度が3.0cN/dtex未満であると十分なセメントの補強をすることができない。
【0017】
本発明のセメント補強用複合繊維はその構成成分のうちポリオレフィン系成分に充填剤を添加することが好ましい。充填剤の添加はポリオレフィン系成分の比重を増して浮種を防止し、また親水性の充填剤を使用することにより分散性が一層向上する。使用される充填剤としては例えば、メタクリル酸カリウム塩、メタクリル酸ナトリウム塩などのアクリル酸系金属塩、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属塩、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物、アルミナなどを使用することができる。特にこれらの添加剤の中ではアクリル酸カリウム塩が好ましく使用される。セメントは主に珪酸カルシウム、アルミン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどのカルシウム塩が多く含まれる。カルシウムとカリウムとではカリウムの方がイオン化しやすいためにセメント成分中にアンカー効果が起こりセメントとの接着性が高まるからである。
【0018】
さらに、ポリオレフィン系成分には親水化剤を添加することもスラリー中の分散性を向上させるために好ましい。親水化剤としては公知のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル系化合物、脂肪酸グリセライド、アルコキシ化アルキルフェノールなどを使用することができる。
【0019】
上記の充填剤の添加量は繊維の紡糸性、加工性を考慮すると質量分率で0.5〜6.0質量%添加することが好ましい。ここで添加量が0.5質量%未満であると十分な親水性作用、セメントへのアンカー作用などが小さくなり、セメントスラリー生成時における繊維の浮き種やセメントに対する繊維の固着性が弱まるので好ましくない。また、添加量が6.0質量%を越えると繊維の紡糸性、加工性に悪影響を及ぼすために好ましくない。また親水化剤を添加する場合は充填剤との合計量が上記範囲を超えないようにする。
【0020】
また本発明のセメント補強用複合繊維は必要に応じて繊維処理剤を繊維表面に付与させてもよい。付与することができる繊維処理剤としては通常使用される公知の処理剤であり、例えば、炭素数10〜18のノルマルアルキルホスフェートカリウム塩あるいはノルマルアルキルホスフェートナトリウム塩などのノルマルアルキルホスフェート金属塩、燐酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カルシウム、などの燐酸金属塩或いはこれ等2種以上を混合しても良い。
【0021】
繊維に対する上記繊維処理剤の付着量は、繊維質量に対して0.2〜20質量%が好ましい。より好ましくは0.8〜2質量%である。且つ繊維質量に対して10〜40質量%の水分が付着していることが好ましい。繊維表面処理剤の付着量が0.2質量%未満であるとポリオレフィン系繊維に対し十分な親水性を付与することができず、浮き種やクラック発生に対し改善効果がない。また繊維表面処理剤の付着量が20質量%を越えると過剰処理となり、不経済である。また繊維表面処理剤に含まれている水分についても、水分付着量が10質量%未満であると、使用時に於いて水分が蒸発しやすく、水分が蒸発した場合、各繊維が繊維表面処理剤により接着し集束繊維の状態となり、特に湿式抄造法のようにセメント攪拌外力が微小の場合、集束繊維の分散が困難となる。また水分付着量が40質量%を越えると、搬送コストの点で不経済である。
【0022】
繊維集合体に繊維表面処理剤を付着させる方法としては、繊維製造工程の延伸後の段階で付与すればよく、付与方法としては、浸漬法、スプレー法、コーティング法の何れでも良い。
【0023】
一般にセメント補強用繊維の単繊維繊度は17dtex程度が限度である。17dtexより太い繊度ではセメント成型物の単位体積当たりの補強用繊維構成本数が少なくなり十分にセメントを補強できなくなり、繊維の単位質量当たりの表面積が小さくなるためにマトリックスの繊維とセメントとの接着力が低下するので好ましくない。
【0024】
また繊維長は2〜20mmが適当である。繊維長が2mm未満であれば、繊維の長さ方向のセメント補強ができなくなるので補強効果が失われ目的とする効果が得られない。逆に、繊維長が20mmを越えるとセメントスラリー調整時に繊維が十分に分散されず、ファイバーボールが形成されやすく分散不良を起こしかねないからである。
【0025】
本発明のセメント補強用複合繊維は、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、アルミナセメント、珪酸カルシウムなどの補強に適用することができ、また半水石膏、2水石膏とスラグ或いはこれらを上記セメントと混合して使用する際にも使用することができる。また、モルタル用、押し出し成型用はもちろんのこと、湿式抄造法、流入法で自然養生、蒸気養生、オートクレーブ養生など如何なるセメント製品の製造工程に使用することが可能である。セメントスラリー中ではよく分散し、浮き種の発生量は5%を越えることはない。
【0026】
【実施例】
以下本発明を実施例にて更に詳しく説明する。なお単繊維繊度、単繊維強度、セメント曲げ強度および各実施例の評価数値はは次のようにして測定した。
【0027】
[単繊維繊度] JIS L 1015に準じて測定を行った。
【0028】
[単繊維強度] JIS L 1015に準じて測定を行った。
【0029】
[セメント曲げ強度] JIS L 1408に準じて測定を行った。
【0030】
[浮き種発生量] 抄造法において同一配合でセメントスラリーに繊維を投入撹拌後、30分間静置し浮いている繊維を回収しセメント液を洗浄、乾燥して重量を測定し、下記の式により発生量を算出する。
浮き種発生量(質量%)=(浮き繊維質量/投入繊維質量)×100
【0031】
[繊維の残存性] 得られたセメントボードの破断面と養生前の破断面とを顕微鏡観察し繊維の量を比較する。
○・・・セメントボード破断面の繊維量が養生前の破断面の繊維量とほぼ同程度である。
△・・・セメントボード破断面の繊維量が養生前の破断面の繊維量と比べて減少している。
×・・・セメントボード破断面の繊維量が半分近くまで減少している。
【0032】
[繊維の分散性] 抄造法の場合は1枚の生板を9分割しふるいに入れて水洗後、1分割づつの繊維質量を規定した設計上の繊維質量と比較し、
A(%)=(1分割ずつの繊維質量/規定繊維質量)×100を各々計算する。
押し出しの場合は5cm長の生板を9枚採取し、ふるいに入れて水洗後1枚づつの繊維質量を規定した設計上の繊維質量と比較し、上記と同様にしてAの値を計算する。
A(%)=(1枚ずつの繊維質量/規定繊維質量)×100を各々計算する。
80≦A≦120の範囲にいくつあるかにより以下の等級を決定した。
○・・・7枚以上が80≦A≦120の範囲にある。
△・・・4〜6枚が80≦A≦120の範囲にある。
×・・・3枚以下が80≦A≦120の範囲にある。
【0033】
[実施例1]
第一成分をポリアセタールコポリマー樹脂(商品名:M90−44、ポリプラスチック株式会社製)、第二成分としてポリメチルペンテンコポリマー(商品名:DX820、三井化学株式会社製)を使用し、第二成分に充填剤としてメタクリル酸カリウム塩を繊維質量あたり3.0質量%添加し、上記、第一成分を鞘成分、第二成分を芯成分とした図1に示す繊維断面形状が芯鞘型複合繊維を紡糸温度270℃にて溶融紡糸し、繊度7.7dtexの未延伸糸を得た。
上記で得られた未延伸糸を延伸温度130℃、延伸倍率4倍で延伸して2.2dtexの延伸糸とした。次いで繊維処理剤を塗布して繊維長6mmに切断しセメント補強用複合繊維を得た。
【0034】
上記で得られたセメント補強用複合繊維を5g用意し、普通ポルトランドセメント400g、珪砂100g、水5000gをミキサーに入れ混合し、手すき抄造機にてセメントボードを作成した。この際繊維の浮き種は殆どなく繊維の分散状態は良好であった。
【0035】
上記で作成したセメントボードを28日間自然養生させた後、セメントボード中の繊維の状態を確認したところ、繊維の残存状態はセメントボードを作成する前の繊維とほぼ同程度であった。
【0036】
[実施例2]
上記実施例1において、鞘成分としてポリアセタールコポリマー樹脂を、芯成分としてポリメチルペンテンコポリマーとし、鞘成分に添加剤として重合度4、炭素数6のポリグリセリン脂肪酸エステルを繊維質量重量に対して1.0質量%添加させた以外は、実施例1と同様にしてセメント補強用複合繊維を得た。
【0037】
上記で得られたセメント補強用複合繊維を実施例1と同様にしてセメントボードを作成後、オートクレーブにて140℃、16時間養生した。繊維の浮き種は殆どなく分散性は良好であった。養生後セメントボード中の繊維の残存状態はセメントボード作成前の繊維とほぼ同程度であった。
【0038】
[実施例3]
第一成分をポリアセタールコポリマー、第二成分をポリメチルペンテンコポリマーとし、一方の成分が他方の成分によって2つ以上に分割され、双方の成分の少なくともその一部が繊維表面に露出している図2の様な繊維断面が8分割の菊花型の形状を有した分割型複合繊維を溶融紡糸し、この複合繊維を6mmに切断した未分割繊維を20g用意した。次ぎに普通ポルトランドセメント1200g、珪砂800g、水400gをミキサーに入れ混合し、押し出し成型機にてセメントボードを作成した。その際、押し出し機に上記未分割繊維を投入し、スクリューで撹拌しつつ繊維を分割した。その後140℃、16時間オートクレーブ養生を行った。成型後のボードの断面を顕微鏡で観察するとセメントボード中のセメント補強用複合繊維は分割しており、繊維の残存状況は養生前より約10%減少し、ポリアセタール成分と思われる繊維の表面が筋状に劣化しているのが認められたが繊維の形状は保たれていた。
【0039】
[比較例1]
実施例3の分割型複合繊維において、第一成分をポリプロピレン樹脂、第二成分としてポリメチルペンテン樹脂を使用し添加剤は使用せずに実施例3の分割型複合繊維と同じ型の繊維断面が8分割の菊花型の形状を有した分割型複合繊維を使用した以外は、実施例1と同様にして作成した。
【0040】
上記で得られたセメント補強用複合繊維を実施例1と同様にしてセメントボードを作成したが、繊維が十分に拡散せず浮き種が生じ目的とするセメントボードを得ることができなかった。
【0041】
[比較例2]
実施例1においてポリメチルペンテンコポリマー樹脂に添加剤としてメタクリル酸カリウム塩を繊維質量に対して0.5質量%添加し、セメント補強用単一繊維とした以外は実施例1と同様にしてセメント補強用繊維を作成した。
【0042】
上記で得られたセメント補強用繊維を実施例1と同様にしてセメントボードを作成したが、繊維の分散が悪く、少量の浮き種も発生した。養生は実施例2と同様にして140℃、16時間オートクレーブ養生をした。オートクレーブ養生後、セメントボードを取りだしセメントボード中の繊維の残存状況を調べたが養生前と繊維の量は変わらないが、浮き種が発生したためにセメントボード中の繊維の量は所定の量より低いものとなった。
【0043】
上記各実施例、比較例の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】
本発明により、ポリアセタールコポリマー樹脂とポリオレフィン系樹脂とを複合として繊維化することにより従来のポリオレフィン系繊維よりもセメントスラリーへの親和性が増し、浮き種が発生しない繊維を得ることができた。従って、セメント製品の成型時において工程性のトラブルが無く、セメント製品の補強性を強化することが出来る。
また、本発明によるセメント補強用繊維に充填剤を添加することにより、セメントとの親和性をより一層高め、セメントマトリックス中へのアンカー効果を高めることができ、生産性に問題がなく、衝撃に耐えうるセメント構造物を得ることができる。さらにまた上記繊維に親水化剤を添加すれば一層セメントスラリー中での親和性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセメント補強繊維の1例を示す繊維断面図である。
【図2】本発明のセメント補強繊維の1例を示す繊維断面図である。
【符号の説明】
1.第1成分
2.第2成分
Claims (4)
- ポリアセタール系成分とポリオレフィン系成分との2成分からなり、単繊維繊度が17dtex以下であり、単繊維強度が3.0cN/dtex 以上の複合繊維であることを特徴とするセメント補強用複合繊維。
- ポリオレフィン系成分に充填剤が0.5〜6.0質量%添加されていることを特徴とする請求項1記載のセメント補強用複合繊維。
- ポリアセタール系成分を鞘成分、ポリオレフィン系成分を芯成分とする芯鞘型複合繊維であることを特徴とする請求項1記載のセメント補強用複合繊維。
- ポリアセタール系成分とポリオレフィン系成分とがその繊維断面において、一方の成分が他方の成分によって2つ以上に分割されており、該両成分の少なくとも一部が繊維表面を形成している分割型複合繊維であることを特徴とする請求項1記載のセメント補強用複合繊維。
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2000
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