JP4731651B2 - 免震住宅 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は建物内に土台により分断されない、外部地盤面と同等の高さの床面を形成し得る免震住宅に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
基礎と、建物躯体を構成する柱の脚部や土台等による免震架台との間に免震装置を設置した免震住宅は歴史が浅く、今後、様々な用途展開とそれらの最適化が図られる段階にあり、従来まではいずれも図8,図9に示すように免震架台として土台を連続格子状に構成し、土台により柱脚部を全て連結し合うことを前提とした設計が行われている。
【0003】
この場合、土台は不連続とならないよう、建物外周部を包囲するように閉じた形で構築されるため、建物内に車庫を組み込むとすれば、車庫は建物の土台上の1階の床面上に確保されることになる。このため、土台の天端面を外部地盤面より上方に位置させる場合には車庫は図8に示すように土台上に敷設される床板上に乗り上げる形で配置され、車庫の床面を外部地盤面に揃えようとすれば、図9に示すように基礎全体を地中に埋め込むように構築することが必要になる。
【0004】
前者の場合には車庫と外部地盤面間に出入庫のためのスロープを形成することが必要になり、敷地内にスロープのための場所を確保しなければならない等、敷地利用上の不利益がある。後者の場合は工事が大掛かりになることに加え、建物躯体の周囲と基礎の擁壁間から基礎の底版内に雨水が流入し易く、免震装置や土台等の保全上の問題がある。また1階の居室の床面のレベルは一般に図8の場合と同様に地盤面から上がるため、土台の上方に土台に平行に居室床を支持する梁を改めて架設することが必要になる他、車庫の床から天井までの高さが大きくなるため、車両上部の無駄な空間が一層拡大する不利益がある。
【0005】
この発明は上記従来形式の不利益を解消する形式の免震住宅を提案するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では建物躯体の外周部の一部の土台を欠如させると共に、欠如した土台に接続すべき柱の柱脚を受ける部分の基礎の天端のレベルを他の部分の天端のレベル以上にすることにより、建物内に土台により分断されない、外部地盤面と同等の高さで連続する床面を形成することを可能にし、スロープの形成を不要にしながら、請求項5に記載のように土台が欠如した部分の床面上に車庫を配置することを可能にし、敷地利用上の不利益を解消する。
【0007】
土台が欠如した部分の床面上の空間は車庫の他、倉庫、店舗、玄関その他の土間空間等として利用できるが、特に車庫を配置した場合には車両が進入、または通過する領域を跨ぐ土台が不在になることで、車庫の床面と外部地盤面が連続し、車両は土台の欠如部分を通じて車庫から出入りできる。
【0008】
また車両が通過する領域を跨ぐ土台を不在にすることによって車庫の床面と外部地盤面との間の段差をなくせる結果、基礎全体を地中に埋め込む必要がなくなり、その形式の、車両上部の空間が拡大する不利益も解消される。本発明をより多様な建物形態に応用するに当たっては、建物外周部の土台の一部が欠如することで、欠如した土台に接続すべき柱の柱脚の土台による拘束がなくなり、その柱が相対的に変形し易くなることが構造設計上の支障になる可能性もあることから、その欠如した土台に接続すべき柱の長さが他の柱の長さより大きくならないよう、欠如した土台に接続すべき柱の柱脚を受ける部分の基礎の天端のレベルは他の部分の天端のレベル以上に高く設定している。
【0009】
更に請求項2では欠如した土台に接続すべき柱の階高を他の階高より低くする、すなわち欠如した土台に接続すべき柱に、その土台の直上階に接続される梁の設置高さを他の梁の設置高さより低くし、欠如した土台に接続すべき柱の長さを他の柱の長さより短くすることを土台の欠如に伴う柱の剛性低下を相殺する手段とする。
【0010】
この場合、車庫上部に中2階として床面を形成すれば、車庫の天井が下がり、車両上部の無駄な空間が減少し、空間も有効に利用できる。
【0011】
請求項では欠如した土台に接続すべき柱の柱脚と基礎との間に設置される免震装置の水平変位時の抵抗力を他の免震装置の水平変位時の抵抗力より小さくすることにより、柱脚の基礎に対する水平変位に伴う、その柱への曲げ荷重を低減する。
【0012】
【発明の実施の形態】
図4は欠如した土台51に接続すべき、いずれかの柱61の柱脚を受ける部分の基礎1の天端を、他の部分の天端と2階の梁7との中間程度まで高くした請求項1の免震住宅の例を示す。免震住宅は基礎1と建物躯体4と、両者間に設置される免震装置8から構成される。ここでは柱脚部と土台5によるフレームが免震架台として機能しており、免震装置8は主として柱脚と基礎1の天端との間に設置されるが、土台5と基礎1天端との間に設置される場合もある。免震装置8には積層ゴム支承や滑り支承、または転がり支承等が使用される。
【0013】
図示する基礎1は底版3を持つベタ基礎となっているが、必ずしも底版3は必要なく、布基礎の他、独立基礎や杭基礎の場合もある。図4等に破線で示すように建物躯体4を構成する外周部の一部の土台51は欠如し、この欠如した土台51とそれに連続すべき土台5、及び欠如した土台51に対向する土台5とで囲まれた床面上に車庫9が配置される。欠如した土台51に接続すべき柱61の柱脚を受ける部分の基礎1の天端のレベルは他の部分の天端のレベルより高く設定される。
【0014】
図5は欠如した土台51に接続すべき柱61に接続される梁71の高さを他の梁7の高さより低くし、柱61の階高を他の階高より低くした請求項2の免震住宅の例を示す。この場合、中2階として床面11を形成すれば、車庫9の天井が下がり、車両上部の空間も有効に利用できる利点がある。
【0015】
図6は欠如した土台51に接続すべき、いずれかの柱61に柱補剛部材10を接続した免震住宅の例を示す。(a)では柱補剛部材10として柱61と梁7間に架設される方杖を使用しているが、柱補剛部材10は欠如した土台51に接続すべき柱61の剛性低下を相殺する目的で使用されるため、柱補剛部材10の種類は問われない。例えば柱61に添え柱や補剛カバー等を添わせる方法も有効であり、他に(b)に示すように柱61自体を太くして柱成を大きくする、または柱61を高強度材に変更する等の方法もある。
【0016】
図7は欠如した土台51に接続すべき、いずれかの柱61の柱脚と基礎1との間に設置される免震装置8の水平変位時の抵抗力を他の免震装置8の水平変位時の抵抗力より小さくした請求項の免震住宅の例を示す。欠如した土台51に接続すべき柱61の下に位置する免震装置8の水平抵抗力を他の免震装置8の水平抵抗力を小さくすることは、例えばその柱61下の免震装置8に他の免震装置8より弾性や減衰量の小さい積層ゴム支承を使用することにより、またはその柱61下の免震装置8に他の免震装置8より摩擦抵抗の小さい滑り支承や転がり支承を使用することにより、あるいはその柱61下の免震装置8に滑り支承や転がり支承を使用し、他の免震装置8に積層ゴム支承を使用することにより可能になる。
【0017】
【発明の効果】
請求項1では建物躯体の外周部の一部の土台を欠如させるため、建物内に土台により分断されない、外部地盤面と同等の高さで連続する床面を形成することが可能になり、スロープの形成を不要にしながら、土台が欠如した部分の床面上に車庫を配置することが可能になり、敷地利用上の不利益を解消できる。併せて基礎全体を地中に埋め込む必要がなくなるため、車両上部の空間が一層拡大する不利益も解消でき、空間の有効利用が可能になる。
【0018】
また欠如した土台に接続すべき柱の柱脚を受ける部分の基礎の天端のレベルを他の部分の天端のレベル以上にすることで、欠如した土台に接続すべき柱の長さが他の柱の長さより大きくならないようにするため、欠如した土台に接続すべき柱の剛性低下を必要に応じて抑制できる。
【0019】
請求項2では欠如した土台に接続すべき柱の階高を他の階高より低くするため、欠如した土台に接続すべき柱の長さが他の柱の長さより短くなり、土台の欠如に伴う柱の剛性低下を相殺でき、より多様な建物の形態において建物躯体の安定性を確保できる。
【0020】
また車庫の天井が下がるため、車両上部の無駄な空間が減少し、空間を有効に利用できる。
【0021】
請求項では欠如した土台に接続すべき柱の柱脚と基礎との間に設置される免震装置の水平変位時の抵抗力を他の免震装置の水平変位時の抵抗力より小さくするため、柱脚の基礎に対する水平変位に伴う、その柱への曲げ荷重を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 基本的な免震住宅の例を示した図2,図3のz−z線断面図である。
【図2】 図1のx−x線断面図である。
【図3】 図1のy−y線断面図である。
【図4】 欠如した土台に接続すべき柱の柱脚を受ける基礎の天端レベルを高くした請求項1の免震住宅の例を示した縦断面図である。
【図5】 請求項2の免震住宅の例を示した縦断面図である。
【図6】 (a),(b)共、欠如した土台に接続すべき、いずれかの柱に柱補剛部材を接続した免震住宅の例を示した縦断面図である。
【図7】 請求項の免震住宅の例を示した縦断面図である。
【図8】 従来の免震住宅の例を示した縦断面図である。
【図9】 従来の他の免震住宅の例を示した縦断面図である。
【符号の説明】
1……基礎、3……底版、4……建物躯体、5……土台、51……欠如した土台、6,61……柱、7,71……梁、8……免震装置、9……車庫、10……柱補剛部材、11……中2階の床面。

Claims (4)

  1. 基礎と建物躯体との間に免震装置が設置された免震住宅において、建物躯体の外周部の一部の土台が欠如し、欠如した土台に接続すべき柱の柱脚を受ける部分の基礎の天端のレベルが他の部分の天端のレベルより高いものである免震住宅。
  2. 1階から2階まで連続した複数の柱と隣接する該柱間に架設される複数の梁とからなる建物躯体を有し、基礎と建物躯体との間に免震装置が設置された免震住宅において、建物躯体の外周部の一部の土台が欠如し、欠如した土台に接続すべき柱の階高が、該柱に接続される梁の高さを他の梁の高さより低く設定することにより他の階高より低く設定されるようにした免震住宅。
  3. 基礎と建物躯体との間に免震装置が設置された免震住宅において、建物躯体の外周部の一部の土台が欠如し、欠如した土台に接続すべき柱の柱脚と基礎との間に設置される免震装置の水平変位時の抵抗力が他の免震装置の水平変位時の抵抗力より小さい免震住宅。
  4. 土台が欠如した部分の床面上に車庫が位置している請求項1乃至請求項のいずれかに記載の免震住宅。
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