JP4712347B2 - シリコン溶融用容器 - Google Patents

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本発明は、半導体や太陽電池製造用の多結晶シリコンインゴットを製造する際に使用するシリコン溶融用容器に関する。
太陽電池用シリコンは、従来光電変換効率が高い単結晶シリコンが使用されていた。単結晶シリコンインゴットの製造工程は、複雑な製造工程を経るものであり、高コストとなっている。太陽電池をより普及させるには、より低コストで簡単に製造することが必要となり、単結晶シリコンのように種結晶を必要とせず、製造が比較的容易な多結晶シリコンを太陽電池に使用することが試みられ、実用化されている。
多結晶シリコンの製造方法は、固体の多結晶シリコンを黒鉛容器に入れて溶融する方法、石英ガラス製容器にシリコンを入れて溶融し、容器を傾けて黒鉛容器に流し込む手法等が取られていたが、黒鉛容器が含有する不純物がシリコンに移行する汚染等の問題から現状では石英ガラス製容器の中で溶融させたシリコンを凝固させる方法が採られている。
多結晶シリコンの製造は、単結晶シリコンより容易ではあるが、光電変換効率は単結晶より低く、太陽電池を低コストで供給できるようにするには光電変換効率の向上が必要であるが、溶融しているシリコンが容器内で凝固すると、体積が膨張するので、図4に示すように、体積膨張が容器の壁面で拘束され、壁面からの反力によって凝固したシリコンに応力が発生し、この応力によって内部歪が残留することになる。
シリコンインゴット内部に歪が残留すると、多結晶シリコンの電気特性の悪化を招き、光電変換効率が低下し、更に、残留歪が大きくなると、シリコンインゴットに機械的な割れが発生するなどの問題が生ずる。
従来、この凝固時の体積膨張に基づく内部応力を緩和するため、容器の底部のみを冷却して多結晶シリコンを凝固していく手法が採られている。
特開昭57−188498号公報 特開昭63−117906号公報 特開平6−166564号公報
低コストで多結晶シリコンを製造するため、多結晶シリコンインゴットのサイズは200mm角から500mm角、さらには700mm角、800mm角へと大型化が進行している。シリコンインゴットが500mm角以上へと大型化すると、溶融した多結晶シリコン内部と外周部の冷却時の温度差が大きくなり、容器底部のみを均一に冷却して凝固させていくことが難しく、図3に示すように、壁面付近で凝固面が凸状となり多結晶シリコンの結晶性が悪くなり、シリコンインゴット内部の残留歪低減が困難となり、多結晶シリコンの電気特性が悪化して光電変換効率を上げることができない。
また、石英ガラス製容器の原料であるシリカ粉に含有している不純物が溶融シリコンに混入すると、これが同様に多結晶シリコンの電気特性を悪化させることとなり、このため不純物を減少させる必要があるが、高純度シリカ粉は高価であり、容器製造のコスト上昇の原因となって好ましくない。
本発明は、電気的特性が良好で光電変換効率の高い多結晶シリコンインゴットを製造することができるシリコン溶融用容器を提供するものである。
シリコンインゴットが凝固する際にインゴット中央部より外周部の冷却速度が速くなると、凝固面が凸状となり多結晶シリコンの結晶性が悪くなるため、容器底部の熱伝導を容器側壁部より高くしたものである。
このため、容器底部の厚さを側壁部の肉厚より薄い肉厚として、冷却速度をコントロールし易くしたものである。また、熱伝導を向上させて底部の冷却速度を向上させるため、熱伝導度の大きな球状シリカ粉を用いて容器を作成するか、炭化珪素粉、炭素粉を容器の底部にのみ混入させることにより熱伝導を高めて溶融シリコンを均一に冷却し、多結晶シリコンに残留歪が生成されないようするものである。
更に、容器内面を上広がりのテーパ状とし、かつ、表面粗さRaを10μm以下にすることで、凝固時のシリコンインゴットの体積膨張による変形を上部へ逃がし易くして、応力の残留による内部歪の発生を防止するものであり、また、容器の内面のうねりを3mm以下にすることによっても同様にシリコンの凝固時の体積膨張を上方に逃がし、凝固したシリコンに残留歪が生成されないようにするものである。
容器が500mm角以上の大型になると、底部外周部はさめ易く、中央部がさめにくいので、冷却速度に差がでてしまい、図3に示すように、壁面付近で盛り上がり、凝固したシリコンの表面が水平とならず、歩留まりを低下させる。これを防止するためには、容器底部の熱伝導を向上させることが有効である。
熱伝導を向上させるには、図1に示すように、容器底部の肉厚を容器外周部の側壁部の肉厚より薄くすることで対応することができるが、あまり薄くすると強度が不十分となるので、溶融シリコンの重量に耐える厚さとする必要がある。
図2に示すように、容器1の内面は、溶融したシリコンが凝固する際の体積膨張による応力を上方へ逃がすために、上方に向かって、内部の水平断面積が徐々に大きくなるテーパ形状とした。このような形状とすることによって膨張圧を壁面に沿って上方に逃がすことができ、体積膨張が拘束されず、シリコンインゴットに残留歪が生成されず、電気特性の良好な多結晶シリコンが得られる。
更に、側壁3の底部肉厚を厚く、側壁上方に行くにつれて、肉厚が薄くなるような構造のテーパ状の形状とした。側壁3のテーパを大きくとると、上部へ応力が逃げ易くなるが、得られるシリコンインゴットの垂直断面が台形となり、上部が底部に比較して大きくなるため、歩留まりが悪くなる。歩留まりに影響を与えないテーパとして壁底部31から上端部32にかけて垂直面に対してテーパ角度は2度以下とするのがよく、体積膨張での応力を上面に逃がすためにはテーパ角度は0.5度以上とするのがよい。従ってテーパ角度としては0.5〜2度が好ましく、さらには0.7〜1.5度とするのが望ましい。具体的には、内容積700mm×700mm×400mm(H)の石英ガラス製容器においては壁厚の差(d)が10mm〜5mmのテーパとするのが好ましい。
容器内表面の粗さ、うねりが大きいと溶融したシリコンが容器表面に食い込み、凝固時の容器とシリコンの逃げを阻害することになる。これを防ぐため、シリコンと反応しない剥離剤を容器表面に厚く塗ることである程度の対応はできるが、剥離剤として代表的な窒化珪素は高価であり、厚く塗ることは、塗りムラの発生や作業時間のアップにもつながり品質の低下やコスト高ともなる。
容器内面のうねりを3mm以下、表面粗さをRa10μm以下、更に好ましくは6μm以下の平滑な表面とすることによってシリコンの食い込みを低減し、発生応力を逃げ易くして内部歪の残留を軽減し、ひいては剥離剤塗布量の軽減も可能となる。
なお、容器の内表面の粗さは、容器製作時に球状シリカ粉を原料として用い、このシリカ粉末スラリーを鋳込む成形型を、石膏などの吸水性鋳型ではなく非吸水性鋳型とするなど、型枠の性状を選択することで平滑な表面を有する容器を製作することができる。また、容器製作後に内面を流体研磨等で所定の面粗さに仕上げても良い。
シリコンが凝固を始める1400℃近辺の温度では、石英ガラス製の容器1は、粘性領域であり、溶融シリコンの凝固時の膨張圧がそのまま作用すると曲がる。容器1の側壁3の肉厚が厚いと曲げに対抗する強さが大きくなり、シリコンが凝固する際の膨張が抑制され、結果的にシリコンに内部応力を与え易くなるので、容器1の側壁3の肉厚を薄くすることによって、内部残留応力の低減を図る。また、肉厚を薄くできれば熱伝導が向上し、温度制御がし易い容器となる。
容器1の側壁3の肉厚は、容器1の高さが変わると容積が変わり、容器に作用する圧力も変わるため、容器の高さを勘案し、強度シミユレーションによって容器の壁厚を決定する。
すなわち、容器の側壁底部において、溶融したシリコンの高さに応じた圧力に耐えると共に、溶融シリコンが凝固するときの膨張圧によって変形する厚さとし、凝固したシリコンに膨張圧による残留歪が生成されないように容器の壁厚を決定する。
容器の高さをHとしたとき、壁厚tは、側壁底部においてt=0.037H〜0.050Hであり、側壁上端において、t=0.025H〜0.037Hの容器内壁面をテーパ状とするのが好ましい。
具体例を示すと、内容積700mm×700mm×400mm(H)の石英ガラス製容器の場合、容器製作時の破損危険性を踏まえ、側壁底部の肉厚を15〜20mm、側壁上端の肉厚10〜15mmである。
シリコンが粒塊から溶融して液体となった際、全体の荷重が容器に対して流体圧として容器に作用する。この際の容器が受ける荷重を容器が剛体(熱変形しない)の場合を想定し、NASTRANでのコンピュータシミユレーションを実施したところ、最も荷重がかかるのは、容器内面の底から壁へ立ち上がる部分であることが判明した。
通常、シリコン溶融用容器は、底の肉厚が20mmを超える肉厚で製造されている。容器の強度を低下させることなく、底部の肉厚をどこまで薄くできるかについてシミユレーションを行ったところ、10mmまでは20mmの場合と同程度の強度が得られることを見出した。
また、容器の製造に使用するシリカ粉を球状シリカ粉とすると熱伝導が高くなり、より有効である。
下記にシリカ粉の種類と作製したシリコン溶融用容器の熱伝導度の測定結果を示す。
容器の種類 熱伝導度
球状シリカ粉容器 1.44 〔w/(m.k)〕 温度800℃
破砕シリカ粉容器 1.10
(透明石英ガラス) (1.77)
この結果より、球状シリカ粉を用いて作製した容器が、破砕シリカ粉を用いて作製した容器より熱伝導が高く有効であることがわかる。また、熱伝導の観点からは透明石英ガラス板を底部に貼ることも有効といえる。
このように、底部肉厚を10mmにし、球状シリカ粉を使用することで底部の熱伝導を向上させた容器を得ることができ、図1に示すように、表面が水平なシリコンインゴットを得ることができる。
底部2の肉厚が10mmであっても、容器が受ける最大圧力は約13kg/cm程度であり、底部2の肉厚20mmの場合と大差がなく、強度的に問題が無く、底部肉厚を薄くすることで熱伝導の向上が図れ、溶融シリコンを均一に冷却することができる。
シリコン溶融時の強度としては底部肉厚が10mmでも問題ないが、底部肉厚を薄くすることは、製作時の破損危険性が高くなるため、10mm以上とし、熱伝導向上のために15mm以下とするのが望ましい。
容器の原料であるシリカ粉は汚染物質を多く含んでいることが多いので、シリカ粉で容器を成形して乾燥させ、容器内面に高純度のシリカ粉末、例えばVAD法で生成されるスート粉末(粒径0.2μm、Fe含有量<0.01ppm)を純水に混合し、表面にはけ塗りをおこなった。
高純度シリカ粉は、容器の内壁表面より1mm程度になり、シリコン溶融時、この高純度のシリカ層が容器面とシリコンの接触を防ぎ、シリコンヘの不純物の溶出を防止する。
なお、高純度のシリカ粉末の容器への塗布は、エアーブラシでの塗布の他に、溶射等によって高純度シリカ層を形成するようにしても良い。
容器の底部の熱伝導を向上させた容器とすることにより、表面が水平なシリコンインゴットを得ることができ、シリコンインゴットの歩留まりを向上させるので、光電変換効率の高い多結晶シリコンを低コストで製造することができる。
更に、容器の内面の表面粗さRaを10μm以下とし、うねりを3mm以下にすることによって溶融したシリコンが容器表面に食い込むのを防止し、シリコンの残留歪の発生を防止できる。
また、容器内壁に高純度シリカ粉を塗布することによって不純物を含有するシリカ粉で製造する容器を簡単に純化することができるので、電気特性の良好な多結晶シリコンを低コストで製造することが可能である。
本発明のシリコン溶融用容器の断面図。 溶融シリコンの凝固時の説明図。 熱伝導の不均一によるシリコンの凝固面が凸状となる説明図。 シリコン凝固時の体積膨張による内部応力発生状態の説明図。
1 シリコン溶融用容器
2 底部
3 壁

Claims (5)

  1. 石英ガラス製容器の底部の厚さを側壁面の肉厚より薄い肉厚として石英ガラス製容器の底部の熱伝導を容器側壁より高くしたシリコン溶融用容器。
  2. 請求項1において、石英ガラス製容器が、球状シリカ粉で成形した容器であるシリコン溶融用容器。
  3. 請求項1〜2いずれかにおいて、容器内壁面が上広がりのテーパ状であり、かつ、容器内面の表面粗さRaが10μm以下であるシリコン溶融用容器。
  4. 請求項3において、容器内面のうねりが3mm以下であるシリコン溶融用容器。
  5. 請求項1〜4のいずれかにおいて、容器内壁に高純度シリカ粉を塗布して焼成したシリコン溶融用容器。
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