JP4697834B2 - プレキャストコンクリート板およびその製造方法ならびにスラブの構築方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプレキャストコンクリート板およびその製造方法ならびにスラブの構築方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、軽量化を図るために軽量材を埋設したスラブが構築されている。この軽量材を埋設したスラブの一例が、図10に示すものであり、トラス筋33で連結された上下の鉄筋31で軽量材30を挟み込んで、コンクリートの打設時における浮き上がりを防いでいる。すなわち、この軽量材30は、上下の鉄筋31の格子部32に挿入されて固定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のようなスラブの構築方法は、コンクリートの打設時における軽量材の浮き上がりや位置ずれを防ぐため、上下の鉄筋を精度良く組む必要があった。そのためスラブ筋を事前に格子状に溶接しなければならず、この溶接作業に過大な手間とコストがかかっていた。
【0004】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量材を簡単かつ精度良く設置することができるスラブの構築方法、および軽量材を簡単かつ精度良く設置したプレキャストコンクリート板およびその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を達成するための手段は、請求項1の発明のプレキャストコンクリート板が、コンクリート板の上面に複数の軽量材が設置され、該軽量材の下面に設けた少なくとも一つの突起がコンクリート板内に埋設され、前記突起には軽量材の中空部に連通した連通孔が設けられたこと、を特徴とする。また、軽量材は中空の球体、または中空の多面体であることを特徴とする。
また、プレキャストコンクリート板の製造方法の要旨は、下部補強筋と、軽量材の中空部に連通した連通孔がある突起を下面に設けた軽量材とを組み合わせた鉄筋ユニットを形成し、該鉄筋ユニットをコンクリートが打設された型枠内に設置して、下部補強筋と突起とを前記のコンクリート中に埋設し、該コンクリートが硬化した後に脱型することである。
更に、スラブの構築方法の要旨は、下部補強筋と、軽量材の中空部に連通した連通孔がある突起を下面に設けた軽量材とをスラブ型枠に設置して前記軽量材を固定した後、該スラブ型枠内にコンクリートを打設することである。
また、スラブの構築方法の要旨は、スラブ型枠に配筋した下部補強筋に、軽量材の中空部に連通した連通孔がある突起を下面に設けた軽量材を設置し、前記スラブ型枠内に、前記下部補強筋と突起とが埋設されるようにコンクリートを打設し、該コンクリートが硬化した後に上部補強筋を配筋してトップコンクリートを打設することである。
【0006】
下面の突起によって軽量材がコンクリート板の上面に固定されている。コンクリート板上に打設されるトップコンクリートが軽量材間に回り込み易くなる。凹部により軽量材の隣接同士を連結することができる。軽量材が隣接同士で互いに連結されたので、軽量材の設置精度をより一層高めることができる。軽量材が隣接同士で互いに密接されたので、プレキャストコンクリート板の軽量化を図ることができる。火災時に中空部の空気が膨張した場合であっても、これが突起の連通孔から抜け出るので、軽量材の膨張を防ぐことができる。スラブを構築する際のコンクリートの打設によって、軽量材の浮き上がりを防ぐことができる。軽量なスラブを簡単に構築することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプレキャストコンクリート板およびその製造方法ならびにスラブの構築方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。はじめに、プレキャストコンクリート板(以下、PC板という)の実施の形態について説明し、その後にその製造方法およびスラブの構築方法の実施の形態について説明するが、各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
【0008】
図1および2は、第1の実施の形態のPC板1を示したものである。このPC板1は、コンクリート板2の上面にトラス筋3の上部が突設され、このトラス筋3間に複数の軽量材4が設置されて構成されている。トラス筋3は、一本の上端筋5と2本の下端筋6が波形のラチス筋7で接合されたものであり、前記下端筋6が下部補強筋8に接合されている。
【0009】
また軽量材4は合成樹脂製の中空の球体であり、図2に示すように、下面の突起9がコンクリート板2内に埋設されている。これらの軽量材4は凹部10に連結ピン11が挿入されて、隣接同士が互いに連結されている。すなわち、各軽量材4同士が連結ピン11で数珠繋ぎになって全体として一体になっている。また軽量材4の突起9は、同図の(3)に示すように、中空部12と連通した連通孔13が設けられ、これによって中空部12と外部が連通している。したがって、火災により中空部12の空気が膨張した場合であっても、これが連通孔13から外側に抜け出るようになっている。
【0010】
図3は、第2の実施の形態のPC板14を示したものである。このPC板14は、軽量材4同士を密接させてコンクリート板2に一部埋設させたものであり、これ以外は第1の実施の形態のPC板1と同じ構成である。このように軽量材4を密接させると、PC板14の軽量化を図ることができる。
【0011】
図4は、突起9を2本設けた軽量材4を示し、上記のように1本の突起9に限らず、複数本設けると軽量材4の安定化および固定の強化を図ることができる。この軽量材4は上記のPC板1、14にも適用することができる。
【0012】
また図5は、4つの軽量材4を連結ピン11で接続した軽量材ユニット15を示したものである。このように軽量材4をユニット化すると、容易に設置できるとともに、必要な数に切断して設置することもできる。したがって、軽量材4の連結数は4つに限らず、これ以上またはこれ以下であってもよい。また軽量材4は凹部10に挿入した連結ピン11で接続されているが、軽量材4に設けた突起、または突起と凹部との組み合わせにより接続することもできる。さらに、これらの軽量材4は製造段階で一体として製造されたものであってもよい。このような軽量材ユニット15は、上記のPC板1、14にも適用することができる。
【0013】
また、上記の軽量材4は球体であるが、これに限らず多面体、例えば直方体や正方体などであってもよく、これらが中空でなくてもよい。また軽量材4は、連結ピン11で連結されたものではなく、各自が独立したものであってもよい。さらに、突起には連通孔13が設けられていなくてもよい。
【0014】
次に、上記のPC板1の製造方法を、図6に基づいて説明する。はじめに、(1)および(2)に示すような、鉄筋ユニット16を組立形成する。この鉄筋ユニット16は、格子状の下部補強筋8に、連結ピン11で数珠繋ぎになった軽量材4が結束されて構成されている。また、この軽量材4の突起9は下部補強筋8から下側に突出した状態になっている。
【0015】
次に、(3)および(4)に示すように、型枠17内にコンクリート18を打設した後に、鉄筋ユニット16を型枠17内に設置し、下部補強筋8と突起9とをコンクリート18中に埋設する。このとき突起9がスペーサーとなって、軽量材4の垂直方向の位置精度を確保することができる。また突起9の連通孔13は前記コンクリート18が浸入しない程度の大きさになっている。
【0016】
次に、型枠17内のコンクリート18が硬化した後に脱型すると、(5)に示すようなPC板1が形成される。また前記のコンクリート18は鉄筋ユニット16を型枠17内に設置した後に打設することもできる。なお、第2の実施の形態のPC板14も、これと同じ方法で製造する。
【0017】
次に、図7〜9に基づいてスラブの構築方法(以下、構築方法という)を説明する。図7は第1の実施の形態の構築方法であり、前記のPC板1を利用したものである。はじめに、PC板1を梁19間に隣接状態で設置するとともに、各PC板1の接合部にジョイント筋20を配筋して下床21を形成する。次に、この下床21上にスラブの上部補強筋22を配筋して、トップコンクリート23を打設すると中空のスラブ24が構築される。このように突起9によって軽量材4がコンクリート板2に固定されるため、トップコンクリート23を打設する時にそれらが浮き上がるのを防ぐことができる。
【0018】
また図8は、第2の実施の形態のスラブの構築方法を示したものである。この構築方法は、現場打ちコンクリートによるものである。はじめに、(1)および(2)に示すように、下部補強筋8と軽量材4をスラブ型枠25内に設置し、トラス筋3を結束具26で下部補強筋8に固定する。次に、前記軽量材4の上に配筋したスラブの上部補強筋22を結束具26でトラス筋3に結束した後、スラブ型枠25内にコンクリート27を打設する。そして、このコンクリート27が硬化した後に脱型すると、前記と同じ中空のスラブ28が構築される。このように現場打ちコンクリートを打設する場合も、軽量材4の浮き上がりや位置ずれを防ぐことができる。
【0019】
また図9は、第3の実施の形態のスラブの構築方法を示したものである。この構築方法も、現場打ちコンクリートによるものである。はじめに、下部補強筋8と軽量材4とをスラブ型枠25内に設置する。次に、下部補強筋8と突起9とが埋設されるコンクリート、すなわち一度目のコンクリート27を前記スラブ型枠25内に打設する。次に、前記軽量材4の上にスラブの上部補強筋22を配筋する。次に、前記コンクリート27が硬化した後に、二度目のコンクリート、すなわちトップコンクリート23を打設すると、前記と同じ中空のスラブ29が構築される。このように一度目の現場打ちコンクリート27で軽量材4を固定すると、トップコンクリート23を打設する時にその浮き上がりを防ぐことができる。なお、軽量材4の上部へ上部補強筋22を配筋した後に、コンクリート27を二回に分けて打設することもできる。
【0020】
【発明の効果】
下面の突起で軽量材をコンクリート板の上面に固定することができる。
【0021】
軽量材を上部補強筋で拘束しないハーフプレキャストコンクリート板を製造することができる。
【0022】
コンクリート板上に打設されるトップコンクリートが軽量材間に回り込みやすくなる。
【0023】
連結用の凹部または連結用の突起で軽量材同士を連結することができる。
【0024】
軽量材同士が互いに連結されたことにより、軽量材の設置精度を高めることができる。
【0025】
軽量材同士が互いに密接されたことにより、プレキャストコンクリート板の軽量化を図ることができる。
【0026】
火災時に膨張した中空部の空気を突起の連通孔から抜くことができる。
【0027】
スラブを構築する際に打設するコンクリートで軽量材が浮き上がるのを防ぐことができる。
【0028】
突起がスペーサーとなるため、軽量材の垂直方向の位置精度を確保することができる。
【0029】
軽量なスラブを簡単に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態のPC板の平面図である。
【図2】(1)は図1の長辺方向の断面図、(2)は同短辺方向の断面図、(3)は軽量材の断面図である。
【図3】 第2の実施の形態のPC板の断面図である。
【図4】他の軽量材の側面図である。
【図5】軽量材ユニットの平面図である。
【図6】(1)〜(5)はPC板の製造方法の工程図である。
【図7】(1)〜(3)は第1の実施の形態のスラブの構築方法の工程図である。
【図8】(1)〜(3)は第2の実施の形態のスラブの構築方法の工程図である。
【図9】(1)〜(3)は第3の実施の形態のスラブの構築方法の工程図である。
【図10】(1)は従来のスラブの平面図、(2)および(3)は同断面図である。
【符号の説明】
1、14 PC板
2 コンクリート板
3、33 トラス筋
4、30 軽量材
5 上端筋
6 下端筋
7 ラチス筋
8 下部補強筋
9 突起
10 凹部
11 連結ピン
12 中空部
13 連通孔
15 軽量材ユニット
16 鉄筋ユニット
17 型枠
18、27 コンクリート
19 梁
20 ジョイント筋
21 下床
22 上部補強筋
23 トップコンクリート
24、28、29 スラブ
25 スラブ型枠
26 結束具
31 鉄筋
32 格子部

Claims (5)

  1. コンクリート板の上面に複数の軽量材が設置され、該軽量材の下面に設けた少なくとも一つの突起がコンクリート板内に埋設され、前記突起には軽量材の中空部に連通した連通孔が設けられたこと、
    を特徴とするプレキャストコンクリート板。
  2. 軽量材は中空の球体、または中空の多面体であること、
    を特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート板。
  3. 下部補強筋と、軽量材の中空部に連通した連通孔がある突起を下面に設けた軽量材とを組み合わせた鉄筋ユニットを形成し、該鉄筋ユニットをコンクリートが打設された型枠内に設置して、下部補強筋と突起とを前記のコンクリート中に埋設し、該コンクリートが硬化した後に脱型すること、
    を特徴とするプレキャストコンクリート板の製造方法
  4. 下部補強筋と、軽量材の中空部に連通した連通孔がある突起を下面に設けた軽量材とをスラブ型枠に設置して前記軽量材を固定した後、該スラブ型枠内にコンクリートを打設すること、
    を特徴とするスラブの構築方法。
  5. スラブ型枠に配筋した下部補強筋に、軽量材の中空部に連通した連通孔がある突起を下面に設けた軽量材を設置し、前記スラブ型枠内に、前記下部補強筋と突起とが埋設されるようにコンクリートを打設し、該コンクリートが硬化した後に上部補強筋を配筋してトップコンクリートを打設すること、
    を特徴とするスラブの構築方法。
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