JP4697697B2 - 2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸高含有物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、安定型L−アスコルビン酸である2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸(以下、特に断りがない限り、「αG−AA」と略記する。)高含有物の新規な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
αG−AAは、特開平3−183492号公報にも開示されているように、下記に示すような優れた理化学的性質を有していることが知られている。即ち、αG−AAは、
【0003】
(1)直接還元性を示さず、極めて安定で、L−アスコルビン酸と異なりメイラード反応を起こし難く、アミノ酸、ペプチド、蛋白質、脂質、糖質、生理活性物質などと共存させても、無用の反応を起こすことがないばかりか、これらの物質を安定化させる効果すら持っている。
(2)加水分解を受けてL−アスコルビン酸を生成し、L−アスコルビン酸と同様の還元作用、抗酸化作用を示す。
(3)体内の酵素により、L−アスコルビン酸とD−グルコースとに容易に加水分解され、L−アスコルビン酸本来の生理活性を示す。又、ビタミンE、ビタミンPなどとの併用により、その生理活性を増強することができる。
(4)L−アスコルビン酸とα−グルコシル糖化合物などとを経口摂取することにより、生体内でも自然に少量ながら生成し、代謝される物質であることから、その安全性は極めて高い。
(5)結晶形態のαG−AAは、実質的に非吸湿性又は難吸湿性であるにもかかわらず、水に対して大きな溶解速度、溶解度を有しており、粉末、顆粒、錠剤などのビタミン剤、サンドクリーム、チョコレート、チューインガム、即席ジュース、即席調味料などの飲食物のためのビタミンC強化剤、呈味改善剤、酸味剤、安定剤などとして有利に利用できる。
(6)結晶形態のαG−AAは、実質的に非吸湿性又は難吸湿性であり、保存中、固結することなく流動性を保持していることから、その取扱いは容易で非晶質の場合と比較して、その包装、輸送、貯蔵に要する物的、人的経費が大幅に削減できる。
【0004】
現在、αG−AAは、主として化粧品の分野に広く利用されている。更に、他の用途、例えば、食品、医薬品、飼料、餌料或いは工業用原料など、より広範な分野への用途開発が期待されている。
【0005】
αG−AAの代表的な工業的製造方法としては、例えば、特開平3−183492号公報に開示された製造方法を例示することができる。この製造方法は、図1に示すように、先ず、L−アスコルビン酸とα−グルコシル糖化合物とを含有する溶液に、糖転移酵素又は糖転移酵素とグルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3)とを反応させてαG−AAを生成させて、αG−AAと未反応のL−アスコルビン酸の他、α−グルコシル糖化合物やα−グルコシル糖化合物由来の糖類を含む溶液を得、次いで、この溶液を濾過し、H形陽イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにかけて脱ミネラルした後、陰イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにかけて、αG−AAとL−アスコルビン酸とを陰イオン交換樹脂に吸着させ、次いで、陰イオン交換樹脂を水洗して糖類をカラムから除去し、更に、溶離液を用いてαG−AAとL−アスコルビン酸とを陰イオン交換樹脂から共に溶出させた後、得られる溶出液を濃縮し、この濃縮液を強酸性陽イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにかけて、αG−AA高含有画分とL−アスコルビン酸高含有画分とに分画し、このαG−AA高含有画分を濃縮してαG−AA高含有物を得る方法である。
【0006】
前記した陰イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーに於いては、αG−AAとL−アスコルビン酸とが共に脱着し溶出してくることから、得られるαG−AAはL−アスコルビン酸との混合物である。そのため、αG−AA高含有物を得るためには、αG−AAとL−アスコルビン酸とを含む溶出液を一旦濃縮した後、更に強酸性陽イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにかけてαG−AA高含有画分とL−アスコルビン酸高含有画分とに分画することが必要不可欠であった。
【0007】
このように、従来のαG−AA高含有物の製造方法に於いては、陰イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーと強酸性陽イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーとによる2段階のカラムクロマトグラフィーが必要不可欠であり、しかも、陰イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーで得られる溶出液は、強酸性陽イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにかける前に一旦濃縮しなければならず、その分、操作が煩雑となり、αG−AA高含有物の収率低下や製造コストが上昇するなどの欠点があった。
【0008】
斯かる状況下、操作性、製造コスト、及び収率の優れた高品質のαG−AA高含有物の工業的製造方法が鶴首されていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、操作性、製造コスト、及び収率の優れた高品質のαG−AA高含有物の工業的製造方法を提供することにある。本発明で言うαG−AA高含有物とは、αG−AAを固形分当たり80%(w/w)(本願明細書に於いては、特に断りがない限り、「%(w/w)」を「%」と略記する。)以上、好ましくは、90%以上含有するαG−AA高含有物を意味し、その形態としては、溶液状、ペースト状、固体状又は粉末状の何れのものであってもよい。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記従来技術に鑑み、αG−AA、L−アスコルビン酸及び糖類を含有する溶液をカラムに充填したイオン交換樹脂と接触させて、より簡便にαG−AA高含有物を得る方法について鋭意研究を続けた。その結果、カラムに充填するイオン交換樹脂として、陰イオン交換樹脂を用い、この陰イオン交換樹脂にαG−AAとL−アスコルビン酸とを吸着させ、溶離液として0.5N未満の酸及び/又は塩類の水溶液をカラムに供給してαG−AA高含有画分とL−アスコルビン酸高含有画分とに分画し、このαG−AA高含有画分を採取することにより本発明の課題を達成できることを見出した。
【0011】
即ち、本発明のαG−AA高含有物の製造方法の特徴は、図2に示すように、L−アスコルビン酸とα−グルコシル糖化合物とを含有する溶液に、糖転移酵素又は糖転移酵素とグルコアミラーゼとを反応させてαG−AA、L−アスコルビン酸及び糖類を含有する溶液を得、この溶液を濾過し、脱ミネラルした後、得られる溶液を原料溶液として、カラムに充填した陰イオン交換樹脂と接触させてαG−AAとL−アスコルビン酸とを陰イオン交換樹脂に吸着せしめ、次いで陰イオン交換樹脂を水洗して糖類を除去した後、溶離液として0.5N未満の酸及び/又は塩類の水溶液をカラムに供給してαG−AA高含有画分とL−アスコルビン酸高含有画分とに分画し、このαG−AA高含有画分を濃縮してαG−AA高含有物を採取する方法である。このように、本発明によれば、αG−AAとL−アスコルビン酸との分離を陰イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーのみにより分離できることとなったことから、図1に示す従来の製造方法に於いては必要不可欠であった強酸性陽イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーが不要となった。その結果、操作性、経済性、収率の何れの点に於いても優れた高品質のαG−AA高含有物を工業的規模で製造できることとなった。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる原料溶液について述べる。当該原料溶液は、αG−AA、L−アスコルビン酸及び糖類を含有する水溶液を意味する。斯かる原料溶液の製造方法としては、酵素法であれ合成法であれ、αG−AA、L−アスコルビン酸及び糖類を含有する溶液が得られる限り特に問わない。例えば、その代表的な製造方法として、L−アスコルビン酸とα−グルコシル糖化合物とを含有する溶液に糖転移酵素又は糖転移酵素とグルコアミラーゼとを作用させる方法を例示できる。具体的には、特開平3−183492号公報に記載された方法を例示することができる。
【0013】
本発明で用いる原料溶液の固形分濃度は、通常、1乃至75%、望ましくは、10乃至70%、より望ましくは、20乃至60%、更に望ましくは、30乃至40%の範囲が好適に使用される。又、原料溶液のpHは、アルカリ性側ではL−アスコルビン酸が分解し易いので酸性側のpHが望ましく、通常、pH7未満、望ましくは、pH1.0乃至6.5、更に望ましくは、pH1.5乃至6.0の範囲とするのが望ましい。更に、OH形陰イオン交換樹脂を用いることから、原料溶液を陰イオン交換樹脂と接触させる前に、原料溶液中に存在する陰イオン、有機酸、アミノ酸等の不純物をできるだけ除去又は低減させておくのが望ましい。
【0014】
本発明で言うL−アスコルビン酸とは、通常、遊離のL−アスコルビン酸のみならず、L−アスコルビン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩などのL−アスコルビン酸の塩、又は、それらの混合物を包含する場合がある。つまり、本発明の糖転移反応に用いるL−アスコルビン酸は、遊離のL−アスコルビン酸だけでなく、本発明の実施を妨げない限り、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カルシウムなどのL−アスコルビン酸の塩、及びそれらの混合物を包含するものとする。又、本発明で言うαG−AAについても、遊離の酸のみならず、本発明の実施を妨げない限りその塩をも包含するものとする。
【0015】
更に、本発明で言うα−グルコシル糖化合物は、同時に用いる糖転移酵素の作用により、L−アスコルビン酸にα−D−グルコシル残基が等モル以上結合したαG−AAを含むα−グリコシル−L−アスコルビン酸を生成し得るものであればよく、例えば、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、マルトオクタオースなどのマルトオリゴ糖の他、デキストリン、シクロデキストリン、アミロースなどの澱粉部分加水分解物、更には、液化澱粉、糊化澱粉、溶性澱粉などを例示できる。αG−AAの生成を容易にするためには、用いる糖転移酵素に好適なα−グルコシル糖化合物を選択すればよい。例えば、糖転移酵素として、α−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)を用いる場合には、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、マルトオクタオースなどのマルトオリゴ糖、又は、DE約5乃至60のデキストリン、澱粉部分加水分解物などが好適に用いられる。又、糖転移酵素として、シクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19)を用いる場合には、シクロデキストリン又はDE1未満の澱粉糊化物からDE約60のデキストリンまでの澱粉部分加水分解物などが好適に用いられる。更に、糖転移酵素として、α−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)を用いる場合には、DE1未満の糊化澱粉からDE約30のデキストリンまでの澱粉部分加水分解物などが好適に使用される。
【0016】
前記糖転移反応に用いるL−アスコルビン酸の濃度(w/v%)は、通常、1w/v%以上、望ましくは、約2乃至30w/v%が好適であり、α−グルコシル糖化合物の濃度は、L−アスコルビン酸の濃度に対して、通常、約0.5乃至30倍の範囲が望ましい。
【0017】
本発明に用いる糖転移酵素は、L−アスコルビン酸とα−グルコシル糖化合物を含有する水溶液に作用させるとき、L−アスコルビン酸を分解せずに、L−アスコルビン酸の2位の炭素のアルコール基にα−グルコシル基を1個以上糖転移したαG−AAなどのα−グリコシル−L−アスコルビン酸を生成し得るものである限り、その性質、性状、由来は特に問わない。例えば、前記糖転移酵素として用いることのできるα−グルコシダーゼとしては、マウスの腎臓、ラットの腸粘膜、イヌ、ブタの小腸など動物由来のもの、イネ種子、トウモロコシ種子など植物由来のもの、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属などに属するカビ、又はサッカロミセス(Saccharomyces)属などに属する酵母などの微生物由来のものが、更に、他の糖転移酵素であるシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼとしては、バチルス(Bacillus)属、クレブシーラ(Klebsiella)属などに属する細菌由来のものが、又、他の糖転移酵素であるα−アミラーゼとしては、バチルス属などに属する細菌由来のものを例示できる。
【0018】
これらの糖転移酵素は、必ずしも精製品である必要はなく、粗酵素であっても本発明に於いては使用することができる。しかしながら、好適には、斯かる粗酵素は、使用前、公知の方法で精製して用いられる。又、市販の糖転移酵素を利用することも可能である。使用に際し、これら酵素を固定化して用いることも随意である。糖転移酵素反応時のpHと温度は、糖転移酵素がL−アスコルビン酸及びα−グルコシル糖化合物に作用してαG−AAが生成する条件であればよく、通常、pH3乃至9、望ましくは、pH4乃至7、温度約20乃至80℃の範囲から選ばれる。使用酵素量と反応時間とは密接に関連しており、通常、経済性の観点から、約3乃至80時間で反応が終了するように酵素量を設定する。又、固定化された糖転移酵素をバッチ式で繰り返し用いたり、連続式で用いることも有利に実施できる。
【0019】
又、酵素反応中、L−アスコルビン酸は反応系に存在する酸素による酸化分解を受け易いので、できるだけ低酸素又は無酸素条件下、或いは還元条件下に保ち、必要ならば、チオ尿素、亜硫酸塩などを共存せるのがよい。又、L−アスコルビン酸は光分解を受け易いことから、暗所又は遮光下で反応させるのが望ましい。
【0020】
更に、必要ならば、糖転移反応能を有する微生物を、その増殖用培地中にL−アスコルビン酸とα−グルコシル糖化合物とを共存させて、αG−AAを含むα−グリコシル−L−アスコルビン酸を生成させることも可能である。
【0021】
糖転移酵素の作用により生成するα−グリコシル−L−アスコルビン酸は、L−アスコルビン酸の2位の炭素のアルコール基に1個又は複数のα−D−グルコシル基が結合した化合物である。これらα−D−グルコシル基の数は、通常、2乃至7個程度で、α−D−グルコシル基同士はα−1,4結合で結合している。具体的な化合物としては、αG−AA、2−O−α−D−マルトシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−D−マルトトリオシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−D−マルトテトラオシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−D−マルトペンタオシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−D−マルトヘキサオシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−D−マルトヘプタオシル−L−アスコルビン酸などを例示できる。α−グルコシダーゼによって生成させる場合には、通常、αG−AAのみが生成するが、使用する糖転移酵素の種類や反応条件によっては、αG−AAと共に、2−O−α−D−マルトシル−L−アスコルビン酸や2−O−α−D−マルトトリオシル−L−アスコルビン酸などのα−グリコシル−L−アスコルビン酸を共に生成させることもできる。
【0022】
シクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼやα−アミラーゼによってα−グリコシル−L−アスコルビン酸を生成させる場合には、一般に、α−グルコシダーゼの場合よりもα−D−グルコシル基の結合数の多いα−グリコシル−L−アスコルビン酸を混在生成させることができる。又、使用するα−グルコシル糖化合物の種類にもよるが、一般的には、シクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼの場合には、L−アスコルビン酸にα−D−グルコシル基が1乃至7個程度結合したα−グリコシル−L−アスコルビン酸が生成し、α−アミラーゼの場合には、生成するα−グリコシル−L−アスコルビン酸の種類が少ない傾向にある。
【0023】
又、αG−AAを生成させるに際し、糖転移酵素とグルコアミラーゼとを併用してαG−AAの生成率を高めることもできる。一般的には、糖転移反応効率を高めるために、予め、L−アスコルビン酸とα−グルコシル糖化合物に糖転移酵素を作用させて、L−アスコルビン酸にα−D−グルコシル残基を等モル以上転移させてαG−AAを含むα−グリコシル−L−アスコルビン酸を生成せしめ、次いでこれにグルコアミラーゼを作用させてαG−AA以外のα−グリコシル−L−アスコルビン酸に結合したα−D−グルコシル残基を加水分解してαG−AAを生成、蓄積させるのが望ましい。
【0024】
グルコアミラーゼとしては、微生物、植物、動物など各種起源のものが利用できる。通常、アスペルギルス(Aspergillus)属、リゾプス(Rhizopus)属に属する細菌由来の市販のグルコアミラーゼが有利に利用できる。又、グルコアミラーゼと共にβ−アミラーゼ(EC 3.2.1.2)を併用することも随意である。
【0025】
本発明で用いる陰イオン交換樹脂について説明するに、その母体構造は、ゲル形、巨大網目構造型(MR形)、或いは多孔型の何れのものでもよく、その基材は、強塩基性又は弱塩基性のスチレン系(スチレン−ジビニルベゼン共重合体)、アクリル系の陰イオン交換樹脂の何れのものも用いることができる。又、陰イオン交換樹脂の交換基は、陰イオン吸着能を有するものである限り使用でき、強塩基性(I型、II型)、中塩基性、弱塩基性のいずれの陰イオン交換樹脂も用いることができる。市販品としては、例えば、ローム・アンド・ハース社製の商品名『アンバーライトIRA67』、『アンバーライトIRA96SB』、『アンバーライトIRA400』、『アンバーライトIRA401B』、『アンバーライトIRA402』、『アンバーライトIRA402BL』、『アンバーライトIRA410』、『アンバーライトIRA411S』、『アンバーライトIRA440B』、『アンバーライトIRA458RF』、『アンバーライトIRA473』、『アンバーライトIRA478RF』、『アンバーライトIRA900』、『アンバーライトIRA904』、『アンバーライトIRA910CT』、『アンバーライトIRA958』、『アンバーライトXT5007』、『アンバーライトXT6050RF』、『アンバーライトXE583』及び『アンバーライトCG400』、三菱化学社製造の商品名『ダイヤイオンSA10A』、『ダイヤイオンSA11A』、『ダイヤイオンSA12A』、『ダイヤイオンSA20A』、『ダイヤイオンSA21A』、『ダイヤイオンNSA100』、『ダイヤイオンPA308』、『ダイヤイオンPA312』、『ダイヤイオンPA316』、『ダイヤイオンPA408』、『ダイヤイオンPA412』、『ダイヤイオンPA418』、『ダイヤイオンHPA25』、『ダイヤイオンHPA75』、『ダイヤイオンWA10』、『ダイヤイオンWA20』、『ダイヤイオンWA21J』、『ダイヤイオンWA30』及び『ダイヤイオンDCA11』、ダウケミカル社製造の商品名『ダウエックスSBR』、『ダウエックスSBR−P−C』、『ダウエックスSAR』、『ダウエックスMSA−1』、『ダウエックスMSA−2』、『ダウエックスMSA−22』、『ダウエックスMSA−66』、『ダウエックスMWA−1』、『ダウエックスモノスフィアー550A』、『ダウエックスマラソンA』、『ダウエックスマラソンA2』、『ダウエックス1×2』、『ダウエックス1×4』、『ダウエックス1×8』及び『ダウエックス2×8』などの陰イオン交換樹脂を例示できる。これら陰イオン交換樹脂の内、『アンバーライトIRA411S』、『ダイヤイオンWA30』、『アンバーライトIRA478RF』及び『アンバーライトIRA910CT』は、αG−AA及びL−アスコルビン酸の吸着量が大で、それらの分離能も良好であり、本発明に於いては好適に用いることができる。陰イオン交換樹脂のイオン形としては、OH形に加えて、Cl形やCH3COO形のものも適宜使用できる。本発明に於いては、吸着量の点で、OH形のものが優れており有利に用いられる。
【0026】
本発明で用いる溶離液としては、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸などの1種又は2種以上の酸の水溶液や、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等の1種又は2種以上の塩類の水溶液を用いることができる。又、これら1種又は2種以上の酸及び塩類を適宜組み合わせて用いることも可能である。溶離液として、塩類の水溶液を用いる場合には、カラムに充填した陰イオン交換樹脂から脱着し、溶出した溶出液中に含まれるαG−AAは、通常、塩形である。この塩形のαG−AAは、必要ならば、H形陽イオン交換樹脂を用いて脱ミネラルして遊離の酸形のαG−AAとすることができる。又、溶離液として、酸の水溶液を用いる場合には、カラムに充填した陰イオン交換樹脂から脱着し、溶出した溶出液中に含まれるαG−AAは、通常、遊離の酸形のαG−AAである。本発明に於いては、溶離液として用いる酸の水溶液の内、経済性と陰イオン交換樹脂の再生のし易さの観点から塩酸の水溶液が好適に用いられる。又、溶離液として用いる酸又は塩類の水溶液濃度は必ずしも一定である必要はなく、目的に応じて、段階的に変更したり、グラジエント溶出することも可能である。又、αG−AAとL−アスコルビン酸の脱着、溶出に使用した溶離液は、製造コスト低減の目的で、回収して再利用することもできる。
【0027】
次に、前記した原料溶液、陰イオン交換樹脂、及び溶離液を用いて、αG−AA高含有物を得る方法について述べる。前記したように、本発明で用いる原料溶液は、通常、αG−AA、L−アスコルビン酸と共に、α−グルコシル糖化合物、このα−グルコシル糖化合物由来のD−グルコースやα−グルコシル糖化合物の分解物などの糖類、更には、塩類を含有している。したがって、本発明に於いては、原料溶液を先ず濾過し、H形陽イオン交換樹脂又は活性炭処理とH形陽イオン交換樹脂により脱ミネラル処理を行う。次いで、脱ミネラル処理液をカラムに充填した陰イオン交換樹脂と接触させて、αG−AAとL−アスコルビン酸とを吸着せしめ、次いで水洗して糖類を除去した後、溶離液として0.5N未満の酸及び/又は塩類の水溶液をカラムに供給して、αG−AA高含有画分とL−アスコルビン酸高含有画分とに分画し、このαG−AA高含有画分を採取する。この際、分離された未反応のL−アスコルビン酸及びα−グルコシル糖化合物は、経済性を考慮して、再度、次の糖転移反応の原料として用いることもできる。
【0028】
本発明に於いて用いるカラムは、適宜形状、大きさ、長さの1乃至複数のカラムを直列又は並列に配置して用いればよい。複数のカラムを用いる場合、適宜の樹脂層長となるように、カラムを直列接続して用いることができる。原料溶液を陰イオン交換樹脂に通液するときの流速は、SV5以下が望ましく、より望ましくは、SV1乃至3の範囲が望ましい。又、溶離液を陰イオン交換樹脂に供給するときの流速は、SV1以下が望ましく、より望ましくは、SV0.3乃至0.7の範囲が望ましい。カラムから脱着し、溶出してくるαG−AA高含有画分とL−アスコルビン酸高含画分の溶出順序は、使用する陰イオン交換樹脂の種類、殊に、陰イオン交換樹脂の母体構造や官能基の種類により変えることができる。カラム操作時の温度は、αG−AAやL−アスコルビン酸の温度による分解の影響を考慮して、通常、0乃至80℃、望ましくは、10乃至40℃、更に望ましくは、15乃至25℃の範囲が望ましい。又、使用する酸及び/又は塩類の水溶液に関し、0.5N以上の酸及び/又は塩類の水溶液を用いる場合、αG−AAを陰イオン交換樹脂から迅速かつ容易に脱着し、溶出させることができるものの、αG−AAと共にL−アスコルビン酸も脱着し、溶出してくることから、両者の分離が不十分となり、高純度のαG−AA高含有画分を高収率で得ることは困難となる。ところが、酸及び/又は塩類の水溶液濃度が全体で0.5N未満、望ましくは、0.1乃至0.45N、更に望ましくは、0.2乃至0.3Nのとき、αG−AAとL−アスコルビン酸は、カラムに充填した陰イオン交換樹脂からそれぞれの高含有画分として脱着し、溶出してくることから、両者を効率よく分離でき、両者の高含有画分を高収率で採取することができる。尚、酸及び/又は塩類の水溶液濃度を0.1N未満とした場合でも、αG−AA高含有画分とL−アスコルビン酸高含有画分を採取することは可能である。しかしながら、αG−AAとL−アスコルビン酸の陰イオン交換樹脂からの脱着、溶出時間が長くなると共に、得られるαG−AAの濃度が低くなる傾向にある。
【0029】
カラムに充填した陰イオン交換樹脂から脱着し、溶出してきたαG−AA高含有画分は、必要により、精製した後、濃縮して過飽和溶液にすれば、容易に結晶形態のαG−AAが析出してくるので、結晶形態のαG−AA高含有物として採取することも随意である。一方、L−アスコルビン酸高含有画分は、αG−AAを得るための酵素反応の原料として再利用することも可能である。又、前記αG−AA高含画分、又はL−アスコルビン酸高含有画分以外の画分である。しかしながら、αG−AAとL−アスコルビン酸との分離が不完全な両者の混合画分を、再度、本発明の原料溶液として用いると、より高純度のαG−AA高含有物とL−アスコルビン酸高含有物を高収率で容易に得ることができる利点がある。
【0030】
このように、本発明のαG−AAの製造方法は、操作性、製造コストの点で優れているだけでなく、固形分当たりの純度が約90%以上の高品質のαG−AA高含有物を、原料溶液中のαG−AAに対するαG−AAの収率約85%以上、より好ましくは、90%以上で得ることを可能にしたものである。
【0031】
斯くして得られた本発明のαG−AA高含有物は、安定型L−アスコルビン酸高含有物として、ビタミンC強化剤、安定剤、品質改良剤、抗酸化剤、生理活性剤、紫外線吸収剤などとして、各種食品、化粧品、医薬品、飼料、餌料、工業用原料などの広範な用途に有利に用いることができる。
【0032】
以下、実験により本発明を更に詳細に説明する。
【0033】
【実験】
<陰イオン交換樹脂に吸着したαG−AAとL−アスコルビン酸の分離と溶出に及ぼす溶離液の濃度の影響>
デキストリン(DE約6)2重量部を水6重量部に加熱溶解し、これを還元下に保って、L−アスコルビン酸1重量部を加え、pH5.5、60℃に維持しつつ、これにシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製)をデキストリングラム当り400単位加えて24時間反応させた。本反応液をUF膜で濾過して酵素を除去した後、濾液を55℃、pH5.0に調整し、これにグルコアミラーゼ(生化学工業株式会社製)を前記デキストリングラム当り10単位加えて24時間反応させた。本反応液を加熱して酵素を失活させ、活性炭で脱色濾過し、得られた濾液を固形分濃度約40%に濃縮した。この濃縮液中の固形分組成は、高速液体クロマトグラフィーにより分析した(高速液体クロマトグラフィーで用いた装置は、島津製作所製『LC−6A』;カラムは、島津テクノリサーチ株式会社製『STRカラム ODS−II』;溶離液は、0.02M NaH2PO4−H3PO4(pH2.0);流速は、0.5ml/min;検出に用いた示差屈折計は、東ソー株式会社製『RI−8020』。)。その結果、濃縮液中の固形分組成は、αG−AA約31%、L−アスコルビン酸約21%、D−グルコース約31%、及びα−グルコシル糖化合物約17%であった。前記活性炭で脱色濾過して得た濾液を強酸性陽イオン交換樹脂(商品名『ダイヤイオンSK1B(H形)』、三菱化学株式会社製)100mlを充填したカラム(内径20mm、長さ350mm、カラム内温度25℃)にSV2で通液して脱ミネラルした。得られた固形分濃度30%の溶液を330gずつ、200mlの陰イオン交換樹脂(商品名『アンバーライトIRA411S(OH形)』、ローム・アンド・ハース社製)を充填した7本のカラム(それぞれ内径20mm、長さ650mm、カラム内温度25℃)にそれぞれSV2で通液し、その後、各カラムに水約1,000mlをSV2で通液して陰イオン交換樹脂を水洗し、非吸着成分を溶出させた。次いで、7本のカラムにそれぞれ0.1N、0.15N、0.2N、0.3N、0.4N、0.45N又は0.5Nの塩酸水溶液をSV0.5で通液し、カラム出口の固形分濃度が0.2%以上となった時点から溶出液の回収を始め、カラム出口の溶出液がそれぞれ0.1N、0.15N、0.2N、0.3N、0.4N、0.45N又は0.5Nの塩酸水溶液に置換されるまで分画を続けた。分画はフラクションコレクターを用いて、20分毎に分画してサンプリングし、各サンプル中の固形分組成を上記したと同様にして高速液体クロマトグラフィーで分析した。その分析結果に基づいて、溶離液として0.1N及び0.5Nの塩酸水溶液を用いたときの溶出液中の固形分当たりの各成分の濃度をプロットして得られた濃度分布を示す溶出曲線を図3、図4にそれぞれ示す。尚、図3、図4に於いて、縦軸は溶出液中の固形分当たりの各成分の濃度(%(w/w))を、横軸はカラムからの溶出液量(ml)を示し、符号「−〇−」はαG−AAを、「−●−」はL−アスコルビン酸を、又「−△−」は糖類を示す。図3から、塩酸の水溶液濃度0.1Nの条件下では、αG−AAとL−アスコルビン酸との分離は良好である。しかしながら、塩酸の水溶液濃度が高い場合と比較して、αG−AAとL−アスコルビン酸の溶出は遅くなり、得られるαG−AA高含有画分とL−アスコルビン酸高含有画分の濃度が若干低くなる傾向を示した。又、図4から、脱着剤として用いる塩酸の水溶液濃度が0.5Nの条件下では、塩酸の水溶液濃度が低い場合と比較して、αG−AAとL−アスコルビン酸の溶出が早くなり、両者の分離が不十分となり、αG−AA高含有画分の収率が低くなることが判明した。又、図3、図4から明らかなように、糖類の大部分は陰イオン交換樹脂に吸着しないものの、僅かながら陰イオン交換樹脂に吸着し、溶離液で溶離されることが判明した。
【0034】
更に、具体的には図示しないものの、脱着剤として用いる塩酸の水溶液濃度が0.1乃至0.45Nの条件下では、αG−AAとL−アスコルビン酸の分離、溶出が良好で、殊に、脱着剤として用いる塩酸の水溶液濃度が0.2乃至0.3Nの条件下での溶出が好適であることが判明した。又、溶離液として、これら塩酸の水溶液を用いて得られた結果は、塩酸の水溶液に代えて他の種類の酸又は塩類、及び各種酸及び塩類を併用する水溶液を溶離液として用いた場合、更に、陰イオン交換樹脂の種類を変えた場合にも同様に当てはまる結果である。
【0035】
以下、本発明のαG−AA高含有物の製造方法を実施例により詳細に説明する。
【0036】
【実施例1】
<αG−AA高含有物の製造方法>
溶離液として、0.25N塩酸水溶液を使用した以外は実験と同じ条件でαG−AA高含有物を製造した。本実施例に於ける、陰イオン交換樹脂から溶出してくる溶出液を前記実験と同様にして分画してサンプリングし、各サンプル中の固形分組成を高速液体クロマトグラフィーで分析した。その分析結果に基づいて溶出液中の各成分の固形分濃度をプロットして得られた濃度分布を示す溶出曲線を図5に示す。尚、図5に於いて、縦軸は溶出液中の固形分当たりの各成分の固形分濃度(%(w/w))を、横軸はカラムからの溶出液量(ml)を示し、符号「−〇−」はαG−AAを、「−●−」はL−アスコルビン酸を、「−△−」は糖類を示す。本品は固形分当たり純度約93%のαG−AAを含有し、原料溶液中のαG−AAに対するαG−AAの収率は約92%であった。尚、図5から明らかなように、糖類の大部分は陰イオン交換樹脂に吸着しないものの、僅かながら陰イオン交換樹脂に吸着し、溶離液で溶出されることが判明した。
【0037】
【実施例2】
<αG−AA高含有物の製造方法>
デキストリン(DE約6)2重量部を水6重量部に加熱溶解し、これを還元下に保って、L−アスコルビン酸1重量部を加え、pH5.5、60℃に維持しつつ、これにシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製)をデキストリングラム当り400単位加えて24時間反応させた。本反応液をUF膜で濾過して酵素を除去した後、濾液を55℃、pH5.0に調整し、これにグルコアミラーゼ(生化学工業株式会社販売)を前記デキストリングラム当り10単位加えて24時間反応させた。本反応液を加熱して酵素を失活させ、活性炭で脱色濾過し、得られる濾液を固形分濃度約40%に濃縮した。この濃縮液中の固形分組成を前記実験で用いたのと同じ高速液体クロマトグラフィー条件で分析したところ、αG−AA約31%、L−アスコルビン酸約21%、D−グルコース約31%、及びα−グルコシル糖化合物約17%であった。前記活性炭で脱色濾過して得た濾液を強酸性陽イオン交換樹脂(商品名『ダイヤイオンSK1B(H形)』、三菱化学株式会社製)を100ml充填したカラム(内径20mm、長さ350mm、カラム内温度25℃)にSV2で通液して脱ミネラルした。得られた濃度30%の溶液330gを200mlの陰イオン交換樹脂(商品名『ダイヤイオンWA30(OH形)』、三菱化学株式会社製)を充填したカラム(内径20mm、長さ650mm、カラム内温度25℃)にSV2で通液し、その後、水約1,000mlをSV2で通液して水洗し、非吸着成分を溶離させた。次いで、溶離液として0.25N塩酸水溶液をSV0.5で通液し、カラム出口の固形分濃度が0.2%以上となった時点から溶出液の回収を始め、カラム出口の溶出液が0.25Nの塩酸水溶液に置換されるまで分画を続けた。この分画は、フラクションコレクターを用いて20分毎に行い、得られた各画分の一部をサンプリングし、各サンプル中の固形分組成を前記実験と同様にして高速液体クロマトグラフィーで分析した。溶出液中の各成分の固形物濃度をプロットして得られた濃度分布を示す溶出曲線を図6に示す。図6から明らかなように、本実施例に於いては、実施例1とは異なる陰イオン交換樹脂を用いたことから、αG−AAとL−アスコルビン酸の溶出順序が逆転したけれども、実施例1と同様に、αG−AAとL−アスコルビン酸との分離は良好で、所望のαG−AA高含有画分を回収してαG−AA高含有物を得た。尚、図6に於いて、縦軸は溶出液中の固形分当たりの各成分の濃度(%(w/w))を、横軸はカラムからの溶出液量(ml)を示し、符号「−〇−」はαG−AAを、「−●−」はL−アスコルビン酸を、「−△−」は糖類を示す。図6から明らかなように、αG−AAとL−アスコルビン酸は陰イオン交換樹脂から良好に脱着、溶離し、所望のαG−AA高含有画分を回収してαG−AA高含有物を得た。本品は固形分当たり純度約93%のαG−AAを含有し、原料溶液中のαG−AAに対するαG−AAの収率は約90%であった。尚、図6から明らかなように、糖類の大部分は陰イオン交換樹脂に吸着しないものの、僅かながら陰イオン交換樹脂に吸着し、溶離液で溶離されることが判明した。
【0038】
【実施例3】
<αG−AA高含有物の製造方法>
強酸性陽イオン交換樹脂(商品名『ダイヤイオンSK1B(H形)』、三菱化学株式会社製)を充填したカラム(内径400mm、長さ1,000mm)を用いて脱ミネラルし、陰イオン交換樹脂として、ローム・アンド・ハース社製の陰イオン交換樹脂(商品名『アンバーライトIRA910CT(OH形)』)を充填したカラム(内径560mm、長さ1,000mm、カラム内温度25℃)を使用し、溶離液として0.3N硝酸水溶液を用いた以外は実施例2と同じ条件でαG−AA高含有物を製造した。本品は、液状αG−AA高含有物で、固形分当たり純度約92%のαG−AA高含有物で、原料溶液中のαG−AAに対するαG−AAの収率は約90%であった。次いで、この液状αG−AA高含有物を固形分濃度約76%になるまで減圧濃縮し、得られた濃縮液を助晶缶にとり、結晶αG−AAを種晶として1%加えて40℃に保ち、ゆっくり攪拌しつつ徐冷して2日間かけて25℃まで下げ、次いで、バスケット型遠心分離機で分蜜し、得られた結晶に少量の水をスプレーして洗浄し、結晶形態のαG−AAを採取して、αG−AA高含有物を得た。本品は固形分当たり、純度約99%のαG−AA高含有物であった。
【0039】
【実施例4】
<αG−AA高含有物の製造方法>
溶離液として、0.45Nの塩酸水溶液を用いた以外は実施例2と同じ条件でαG−AA高含有物を製造した。実施例2同様、カラムに充填した陰イオン交換樹脂からのαG−AAとL−アスコルビン酸との分離は良好であった。本実施例で得られたαG−AA高含有物は、固形分当たり純度約90%のαG−AAを含有し、原料溶液中のαG−AAに対するαG−AAの収率は約91%であった。
【0040】
【実施例5】
<αG−AA高含有物の製造方法>
強酸性陽イオン交換樹脂(商品名『ダイヤイオンSK1B(H形)』、三菱化学株式会社製)を充填したカラム(内径800mm、長さ1,600mm)を用いて脱ミネラルし、陰イオン交換樹脂として、『アンバーライトIRA478RF(OH形)』(ローム・アンド・ハース社製)を充填したカラム(内径1,200mm、長さ1,600mm、カラム内温度25℃)を使用し、溶離液として0.2N NaCl水溶液を用いた以外は実施例2と同じ条件でαG−AA高含有物を製造した。本品は、αG−AAのナトリウム塩で(αG−AA−Na)、固形分当たり純度約90%のαG−AA−Naを含有し、原料溶液中のαG−AAに対するαG−AA−Naの収率はモル比で約90%であった。
【0041】
【発明の効果】
上記したように、本発明によれば、原料溶液として、αG−AA、L−アスコルビン酸及び糖類を含有する溶液を、カラムに充填した陰イオン交換樹脂と接触させてαG−AAとL−アスコルビン酸とを陰イオン交換樹脂に吸着せしめ、次いで陰イオン交換樹脂を水洗して糖類を除去した後、溶離液として0.5N未満の酸及び/又は塩類の水溶液をカラムに供給してαG−AA高含有画分とL−アスコルビン酸高含有画分とに分画し、このαG−AA高含有画分を採取することにより、αG−AA高含有物とL−アスコルビン酸高含有物を高収率で得ることができるようになった。即ち、本発明によれば、従来のαG−AA高含有物の製造方法に於いて、陰イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィー後に必要不可欠とされていた強酸性陽イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーと、その処理前に必要とされていた濃縮工程とを省略できることから、その分、αG−AA高含有物の製造工程が簡略化され、製造コストが低減され、加えて高収率で高純度αG−AAを得ることができることとなった。本発明の製造方法は、従来の製造方法とは違って、強酸性陽イオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーを経由する必要がないことから、従来の製造方法に於いて、原料溶液中のαG−AAに対するαG−AAの収率が約75乃至80%どまりであったものを約85%以上、より好ましくは、90%以上にまで高めることが可能となった。
【0042】
このように、本発明は、操作性、製造コスト、及び収率の優れた高品質のαG−AA高含有物の製造方法を可能としたものである。又、本発明の製造方法により得られるαG−AA高含有物は、安定型L−アスコルビン酸高含有物として、ビタミンC強化剤、安定剤、品質改良剤、抗酸化剤、生理活性剤、紫外線吸収剤などとして、各種食品、化粧品、医薬品、飼料、餌料、工業用原料などの広範な用途に有利に用いることができる。
【0043】
本発明は斯くも顕著なる作用効果を奏する発明であり、斯界に与える影響は誠に多大なものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来のαG−AA高含有物の製造方法に於ける製造工程の流れ図である。
【図2】図2は、本発明のαG−AA高含有物の製造方法に於ける製造工程の流れ図である。
【図3】図3は、溶離液として0.1N塩酸を用いて陰イオン交換樹脂(商品名『アンバーライトIRA411S(OH形)』、ローム・アンド・ハース社製)からαG−AAとL−アスコルビン酸とを溶出したときの各成分の固形分濃度をプロットして得られた濃度分布を示す溶出曲線を示す図である。
【図4】図4は、溶離液として0.5N塩酸を用いて陰イオン交換樹脂(商品名『アンバーライトIRA411S(OH形)』、ローム・アンド・ハース社製)からαG−AAとL−アスコルビン酸とを溶出したときの各成分の固形分濃度をプロットして得られた濃度分布を示す溶出曲線を示す図である。
【図5】図5は、溶離液として0.25N塩酸を用いて陰イオン交換樹脂(商品名『アンバーライトIRA411S(OH形)』、ローム・アンド・ハース社製)からαG−AAとL−アスコルビン酸とを溶出したときの各成分の固形分濃度をプロットして得られた濃度分布を示す溶出曲線を示す図である。
【図6】図6は、溶離液として0.25N塩酸を用いて陰イオン交換樹脂(商品名『ダイヤイオンWA30(OH形)』、三菱化学株式会社製)からαG−AAとL−アスコルビン酸とを溶出したときの各成分の固形分濃度をプロットして得られた濃度分布を示す溶出曲線を示す図である。
【符号の説明】
−〇−....αG−AA
−●−....L−アスコルビン酸
−△−....糖類
Claims (5)
- 原料溶液として、2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸及び糖類を含有する溶液を、カラムに充填した陰イオン交換樹脂と接触させて2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸とL−アスコルビン酸とを陰イオン交換樹脂に吸着せしめ、次いで陰イオン交換樹脂を水洗して糖類を除去した後、溶離液として0.2乃至0.3Nの酸及び/又は塩類の水溶液をカラムに供給して2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸高含有画分とL−アスコルビン酸高含有画分とに分画し、この2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸高含有画分を採取することを特徴とする2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸高含有物の製造方法。
- 陰イオン交換樹脂が、OH形陰イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1記載の2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸高含有物の製造方法。
- 酸が、塩酸、硫酸、硝酸及びクエン酸から選ばれる1種又は2種以上の酸であることを特徴とする請求項1又は2記載の2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸高含有物の製造方法。
- 塩類が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、クエン酸ナトリウム、及びクエン酸カリウムから選ばれる1種又は2種以上の塩類であることを特徴とする請求項1又は2記載の2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸高含有物の製造方法。
- 更に濃縮工程及び晶出工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸高含有物の製造方法。
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