JP4690040B2 - マイクロスフェアの製法及び製造装置 - Google Patents
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Description
エマルションから有機溶媒を留去する方法では、水中乾燥法に使用するエマルションの製法として、通常、油相(O、S/O、W/O又はO/O)を水相に添加し、一度に、必要となるエマルションの全量を調製する方法が一般的である(例えば、特開平4−46115号公報(第1−6頁)、特開平6−145046号公報(第1−11頁)参照)。
ところで、水中乾燥法によるマイクロスフェア製造で必要となる乳化機には、バッチ槽内に設けてバッチ処理するもの、バッチ槽外に設けて連続処理に適するものが種々知られている[例えば、「化学工業の進歩24攪拌・混合」1990年発行 槇書店 第187−191頁参照]。
また、「乳化・分散技術応用ハンドブック」1987年発行、サイエンスフォーラム社、1987年2月25日、第140−143頁、第472−474頁には、水中乾燥法によるエマルション利用のマイクロカプセル技術が説明されていると共に、スタティックミキサーの1つであるスケヤミキサーによって連続混合することも説明されており、連続乳化によりエマルションを形成してマイクロスフェアを製造した例も知られている(例えば、特開平8−259460号公報(第12頁)、米国特許第5945126号公報(第1−12頁)参照)。
しかしながら、これらマイクロスフェア製法では、いずれも、一度に大量のマイクロスフェアを製造するには、大量のエマルションを一挙に水中乾燥するため、有機溶媒留去装置を大きくせざるを得ないという問題があった。
また、膜濾過の方法としては、対象流体の全量を膜によって処理するデッドエンド型濾過と膜を透過する流体と直角に対象流体を流し、対象流体を部分的に濾過するクロスフロー濾過とがあるが(例えば、ピーディーエイ・ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンス&テクノロジー(PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology)第50巻、第4号、第252−261頁(1996年)参照)、目詰まりを生じ難く、大量処理に適するクロスフロー濾過は水処理等に利用されてきており、水中乾燥法により製造したマイクロスフェアの回収、洗浄等にクロスフロー濾過を利用した例も知られるようになってきている(例えば、米国特許第6294204号公報(第6−8頁)、国際公開WO96/35414号パンフレット(第11、12頁)参照)。
更に、マイクロスフェア製造工程で得られるマイクロスフェア懸濁液の連続相を、濾過を利用して水及び製剤化媒体で置き換える装置も提案されている(例えば、米国特許第6270802号公報(第1−10頁)参照)。
本発明者らは、少量のマイクロスフェア製造を繰り返し行い、生成するマイクロスフェアを蓄積するプロセスを用いれば、マイクロスフェア製造装置を小型化し、品質の優れたマイクロスフェアを製造することができ、また、マイクロスフェアの製造スケールを自在に調整できることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は次の循環工程からなるマイクロスフェアの製法に関する。
(a)薬物、生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマー及び水より低沸点の有機溶媒を含む薬物含有ポリマー液を乳化装置中で水性溶液に乳化して、薬物含有ポリマー液が水性溶液に分散したエマルションを生成し、
(b)得られるエマルションをマイクロスフェア蓄積タンクに移し、
(c)マイクロスフェア蓄積タンクよりエマルションの一部をクロスフロー濾過装置に導通し、
(d−1)−i)クロスフロー濾過装置通過液をマイクロスフェア蓄積タンクに戻し、
(d−1)−ii)上記クロスフロー濾過装置からの濾液を工程(a)の水性溶液として循環利用して、工程(a)〜(d−1)を繰り返し、かつ、水より低沸点の有機溶媒が水非混和性である場合には、この循環過程の中で、マイクロスフェア蓄積タンクでの有機溶媒留去を行うか、或いは
(d−2)−i)クロスフロー濾過装置通過液をマイクロスフェア蓄積タンクに戻し、
(d−2)−ii)上記クロスフロー濾過装置からの濾液を工程(a)の水性溶液として循環利用することなく排出し、新たな水性溶液を用いて工程(a)〜(d−2)を繰り返し、かつ、水より低沸点の有機溶媒が水非混和性である場合には、この循環の過程の中で、マイクロスフェア蓄積タンクでの有機溶媒留去を行い、
(e)(d−1)又は(d−2)の過程終了後に、マイクロスフェア蓄積タンク中のマイクロスフェアを回収する。
本発明の方法によれば、乳化装置で製造され、マイクロスフェア蓄積タンクに移されたエマルションから、クロスフロー濾過により水性溶液部分のみを効率よく分離できるため、エマルション製造を繰り返し行っても、マイクロスフェア蓄積タンク中のエマルションの容量増加を抑制することができ、また、1回の乳化を小規模とすることができるため、乳化を均一に行いやすく、品質のよいマイクロスフェアを製造することができる。
第2図は水性溶液を循環利用しないマイクロスフェア製造装置のレイアウトを示す。
(2)マイクロスフェア蓄積タンク
(3)クロスフロー濾過装置
(4)薬物含有ポリマー液貯蔵タンク
(5)水性溶液貯蔵タンク
工程(a)における、薬物、生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマー及び水より低沸点の有機溶媒を含む薬物含有ポリマー液としては、例えば、次のものをあげることができる。
(i)生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマー及び薬物が水より低沸点の有機溶媒に溶解された溶液(O)
(ii)生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーが水より低沸点の有機溶媒に溶解し、これに薬物が懸濁された懸濁液(S/O)
(iii)生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーが水より低沸点の有機溶媒に溶解し、これに薬物の水溶液が分散された分散液(W/O)
(iv)水より低沸点の有機溶媒中に、一方の生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーが溶解されており、このポリマー溶液中に、他方の生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーの同有機溶媒溶液が分散されており、分散されているポリマー溶液中に薬物が溶解又は懸濁されている分散液(O/O)
薬物及びポリマーの有機溶媒溶液に溶解して(i)の溶液(O)を調製する場合、ポリマーの有機溶媒溶液中のポリマー濃度はポリマーの種類、分子量などによって変動するが、通常、1〜80重量%であり、20〜60重量%とするのが好ましい。また、ポリマーの0.1〜40重量%の薬物を溶解するのが好ましく、1〜30重量%の薬物をポリマーの有機溶媒溶液に溶解するのがマイクロスフェア中への薬物含量を向上させる上では好ましい。
また、薬物の有機溶媒に対する溶解度が低い場合には、薬物及びポリマーを共に溶解する溶媒系に溶解後、溶媒を留去して一旦薬物及びポリマーからなる固溶体を形成し、得られた固溶体を有機溶媒に溶解することにより、有機溶媒溶液とすることもできる(米国特許第5556642号/特開平6−32732号公報)。
薬物をポリマーの有機溶媒溶液に懸濁して(ii)の懸濁液(S/O)を調製する場合には、(i)の溶液(O)の場合と同様のポリマーの有機溶媒溶液に、ポリマーの0.1〜40重量%の薬物を懸濁するのが好ましく、とりわけ、1〜30重量%の薬物をポリマーの有機溶媒溶液に懸濁するのがマイクロスフェア中への薬物含量を向上させる上では好ましい。ポリマーの有機溶媒溶液に薬物を懸濁する場合、薬物は有機溶媒に溶解性でなければよい。
薬物のポリマーの有機溶媒溶液への懸濁は、ホモジナイザー、ソニケーター等を用いて行うことができ、薬物をポリマーの有機溶媒溶液に懸濁後、直ぐに、水性溶液に乳化するのが好ましい。
また、薬物をポリマーの有機溶媒溶液に懸濁する場合、生成するマイクロスフェアの粒子径にもよるが、マイクロスフェアからの初期バーストを抑制するためには、薬物を微粒子化しておくのがよく、薬物の平均粒子径を生成するマイクロスフェアの平均粒子径の1/5〜1/10000、より好ましくは1/10〜1/1000とするのが好ましい。
ポリマーの有機溶媒溶液に懸濁する薬物の微粒子化は、粉砕法、晶析法、スプレードライ法等の慣用の方法により行うことができる。
粉砕法による場合には、ジェットミル、ハンマーミル、回転ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、シェーカーミル、ロッドミル、チューブミル等の慣用の粉砕機で物理的に粉砕することにより、薬物を微粒子化することができる。
晶析法による場合には、薬物を一旦適当な溶媒に溶解させた後、pH調整、温度変化、溶媒組成の変更等を行って薬物を晶析させ、濾過、遠心分離等の方法で回収することにより、薬物を微粒子化することができる。
また、スプレードライ法による場合には、薬物を適当な溶媒に溶解させ、この溶液をスプレーノズルを用いてスプレードライヤーの乾燥室内に噴霧し、極めて短時間に噴霧液滴内の溶媒を揮発させることにより、薬物を微粒子化することができる。
更に、ペプチド性薬物については、薬物活性を保持しながら、微粒子化を行うため、例えば、次の方法を適宜適用することができる。
(A)ゼラチン等の水溶性高分子物質とポリペプチドを含む水溶液をスプレードライヤーで微粒子化する方法(特開平4−36233号公報)
(B)ポリペプチドと水溶性高分子物質を含む水溶液を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥物をジェットミルによって微粉砕する方法(特開平8−225454号公報)
(C)ポリペプチド水溶液をアセトン中に添加し、ポリペプチド微粒子を晶析させる方法[ジャーナル・オブ・エンカプスレーション(Journal of Encapsulation)14(2)巻、225〜241ページ(1997年)]
(D)界面活性剤とポリペプチドとを水中で混合し、これを急速乾燥する方法(特開平9−315997号公報)
(E)ポリペプチド水溶液に、水混和性有機溶媒もしくは揮発性塩類を添加し、凍結乾燥する方法(特開平11−322631号公報)
(F)ポリペプチドとポリエチレングリコールの混合水溶液を凍結乾燥し、有機溶媒にてポリエチレングリコールを溶解する方法(特開平11−302156号公報)
(G)ポリペプチド及び相分離誘起剤を含有する水溶液の凍結物に、ポリペプチド非溶解性の水混和性有機溶媒を添加し、凍結物中の相分離誘起剤及び氷を溶解し、得られるポリペプチド微粒子分散液からポリペプチド微粒子を回収する方法(国際公開WO02/30449号パンフレット)
ポリマーの有機溶媒溶液中に薬物水溶液を分散して(iii)の分散液(W/O)を調製する方法は、薬物が水溶性であり、かつ、ポリマーを溶解する有機溶媒が水非混和性である場合に適用することができ、とりわけ、n−オクタノール/水に対する分配比が0.1以下の薬物に適用するのが好ましい。
薬物水溶液中の薬物濃度は、通常、0.1重量%以上(薬物の溶解度以下)であり、1重量%以上であるのが好ましい。また、(i)の溶液(O)の場合と同様のポリマーの有機溶媒溶液に0.1〜30重量%、とりわけ1〜20重量%の薬物水溶液を分散するのが好ましい。
薬物水溶液には、薬物以外に他の添加物を含有していてもよく、添加物としては、例えば、安定化剤(アルブミン、ゼラチン、エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム、デキストリン、亜硫酸水素ナトリウム、ポリエチレングリコール等)、保存剤[p−ヒドロキシ安息香酸エステル類(メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル)等]、pH調整剤(炭酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リン酸、塩酸、水酸化ナトリウム又はこれらの塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)をあげることができる。
また、ペプチド性薬物の場合には、薬物水溶液に、薬物保持性物質(ゼラチン、寒天、ポリビニルアルコール、塩基性アミノ酸(アルギニン、ヒスチジン、リジン等))を添加してもよい。
薬物水溶液をポリマーの有機溶媒溶液に分散する場合、マイクロスフェアの粒子径にもよるが、薬物水溶液の液滴の平均粒子径が生成するマイクロスフェアの平均粒子径の1/5〜1/10000、より好ましくは1/10〜1/1000とするのが好ましく、ホモジナイザー、ソニケーター等を用いて分散を行うのが好ましい。また、薬物水溶液をポリマーの有機溶媒溶液に分散後、直ぐに、水性溶液に乳化するのが好ましい。
(iv)の分散液(O/O)を調製する場合、上記(i)溶液(O)又は(ii)の懸濁液(S/O)の場合と同様に、薬物を一方のポリマー溶液に溶解又は懸濁した後、その溶液又は懸濁液を、上記(iii)の分散液(W/O)を調製した場合と同様に、これと非混和性の他のポリマー溶液に分散することによって製造することができる。また、ポリマーの有機溶媒溶液としては、いずれも(i)の溶液(O)の場合と同様のものを適宜使用することができる。
生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーとしては、製剤分野で一般に使用される生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーをいずれも使用することができる。ここに、水難溶性のポリマーとは、25℃において、ポリマー1gを溶解するのに水1000g以上が必要となるものをいう。
生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーとしては、例えば、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステル、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル、ポリアミノ酸等をあげることができる。このうち、ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルとしては、平均分子量2000〜800000のものが好ましく、平均分子量5000〜200000のものがより好ましく、平均分子量が5000〜50000のものが最も好ましい。
ヒドロキシ脂肪酸のポリエステルの具体例としては、ポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体、2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸等をあげることができる。乳酸−グリコール酸共重合体は乳酸/グリコール酸のモル比が90/10〜30/70のものが好ましく、80/20〜40/60のものがより好ましい。一方、2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体は2−ヒドロキシ酪酸/グリコール酸のモル比が90/10〜30/70のものが好ましく、80/20〜40/60のものがより好ましい。
水より低沸点の有機溶媒とは、同圧下での沸点が水の沸点よりも低い有機溶媒のことであり、水混和性のもの及び水非混和性のもののいずれもが含まれる。
水より低沸点の水混和性有機溶媒とは、水より低沸点であると共に、水と如何なる割合でも完全に混和するものであり、例えば、水混和性ケトン系溶媒(アセトン等)、水混和性エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン等)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル等)をあげることができ、アセトンが好ましい。
水より低沸点の水非混和性の有機溶媒とは、水より低沸点であると共に、水に対して、水の量の10容量%以下しか混和しないものであり、例えば、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等)、脂肪族エステル系溶媒(酢酸エチル等)、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(n−ヘキサン、n−ペンタン、シクロヘキサン等)、水非混和性エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルtert.−ブチルエーテル等)をあげることができ、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒、脂肪族エステル系溶媒が好ましく、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチルがより好ましい。
本発明の方法が適用される薬物の具体例としては、例えば、抗腫瘍剤、ペプチド性薬物、抗生物質、解熱・鎮痛・消炎剤、鎮咳去痰剤、鎮静剤、筋弛緩剤、抗てんかん剤、抗潰瘍剤、抗うつ剤、抗アレルギー剤、強心剤、不整脈治療剤、血管拡張剤、降圧利尿剤、糖尿病治療剤、抗脂血症剤、抗凝血剤、止血剤、抗結核剤、ホルモン剤、麻薬拮抗剤、骨吸収抑制剤、骨形成促進剤、骨折治癒促進剤、軟骨疾患修復治療剤、血管新生抑制剤、抗嘔吐剤などが挙げられる。
抗腫瘍剤としては、たとえばパクリタキセル、ブレオマイシン、メトトレキセート、アクチノマイシンD、マイトマイシンC,硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ネオカルチノスタチン、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、テトラヒドロフリル−5−フルオロウラシル、クレスチン、ピシバニール、レンチナン、タモキシフェン、レバミゾール、ベスタチン、アジメキソン、シスプラチン、カルボプラチン、塩酸イリノテカンなどが挙げられる。
ペプチド性薬物としては、インスリン、ソマトスタチン、サンドスタチン、成長ホルモン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、ACTH誘導体、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TRH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)およびその誘導体、卵胞刺激ホルモン(FSH)、バソプレッシン、デスモプレシン、オキシトシン、カルシトニン、エルカトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン、ガストリン、セクレチン、パンクレイオザイミン、コレシストキニン、アンジオテンシン、ヒト胎盤ラクトーゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、エンケファリン、エンケファリン誘導体、エンドルフィン、キョウトルフィン、インターフェロン類(例えば、α、β、γ型等)、インターロイキン類(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等)、タフトシン、サイモポイエチン、サイモシン、サイモスチムリン、胸腺液性因子(THF)、血中胸腺因子(FTS)、並びにその誘導体およびその他の胸腺因子、腫瘍壊死因子(TNF)、ケモカイン類およびその誘導体、ミニサイトカイン類およびその誘導体、コロニー誘発因子(CSF、GCSF、GMCSF、MCSF等)、モチリン、ダイノルフイン、ボムベシン、ニューロテンシン、セルレイン、ブラジキン、ウロキナーゼ、アスパラキナーゼ、カリクレイン、サブスタンスP、インスリン様成長因子(IGF−I、IGF−II)、神経成長因子(NGF)、細胞増殖因子(EGF、TGF−α、TGF−β、PDGF、塩酸FGF、塩基性FGF等)、骨形成因子(BMP)、神経栄養因子(NT−3、NT−4、CNTF、GDNF、BDNF等)、血液凝固因子の第VIII因子、第IX因子、塩化リゾチーム、ポリミキシンB、コリスチン、グラミシジン、バシトラシン、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)等が挙げられる。
抗生物質としては、例えばゲンタマイシン、ジベカシン、カネンドマイシン、リビドマイシン、トブラマイシン、アミカシン、フラジオマイシン、シソマイシン、塩酸テトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、ロリテトラサイクリン、塩酸ドキシサイクリン、アンピシリン、ピペラシリン、チカルシリン、アスポキシシリン、セファロチン、セファロリジン、セフォチアム、セフスロジン、セフメノキシム、セフメタゾール、セファゾリン、セフォタキシム、セフォペラゾン、セフチゾキシム、モキサラクタム、チエナマイシン、スルファゼシン、アズスレオナム等が挙げられる。
解熱・鎮痛・消炎剤としては、例えばサリチル酸、スルピリン、フルフェナム酸、ジクロフェナック、インドメタシン、モルヒネ、塩酸ペチジン、酒石酸レボルファノール、オキシモルフォン等が挙げられる。
鎮咳去痰剤としては、例えば塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸ノスカピン、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸アロクラマイド、塩酸クロフェダノール、塩酸ピコペリダミン、クロペラスチン、塩酸プロトキロール、塩酸イソプロテレノール、硫酸サルブタモール、硫酸テレブタリン等が挙げられる。
鎮静剤としては、例えばクロルプロマジン、プロクロルペラジン、トリフロペラジン、硫酸アトロピン、臭化メチルスコポラミン等が挙げられる。
筋弛緩剤としては、例えばメタンスルホン酸プリジノール、塩化ツボクラリン、臭化パンクロニウム等が挙げられる。
抗てんかん剤としては、例えばフェニトイン、エトサクシミド、アセタゾラミドナトリウム、クロルジアゼポキシド等が挙げられる。
抗潰瘍剤としては、例えばメトクロプロミド、塩酸ヒスチジン等が挙げられる。
抗うつ剤としては、例えばイミプラミン、クロミプラミン、ノキシプチリン、硫酸フェネルジン等が挙げられる。
抗アレルギー剤としては、例えば塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸トリペレナミン、塩酸メトジラミン、塩酸クレミゾール、塩酸ジフェニルペラリン、塩酸メトキシフェナミン等が挙げられる。
強心剤としては、例えばトランスパイオキソカンファー、テオフィロール、アミノフィリン、塩酸エチレフリン等が挙げられる。
不整脈治療剤としては、例えばアジミライド、プロプラノロール、アルプレノロール、ブフェトロール、オキシプレノロール等が挙げられる。
血管拡張剤としては、例えば塩酸オキシフェドリン、塩酸ジルチアゼム、塩酸トラゾリン、ヘキソベンジン、硫酸バメタン等が挙げられる。
降圧利尿剤としては、例えばヘキサメトニウムブロミド、ペントリニウム、塩酸メカミルアミン、塩酸エカラジン、クロニジン等が挙げられる。
糖尿病治療剤としては、例えばグリミジンナトリウム、グリピザイド、塩酸フェンフォルミン、塩酸ブフォルミン、メトフォルミン等が挙げられる。
抗脂血症剤としては、例えばメバロチン、プラバスタチンナトリウム、シンバスタチン、フルバスタチン、クリノフィブラート、クロフィブラート、シンフィブラート、ベザフィブラート等が挙げられる。
抗凝血剤としては、例えばヘパリンナトリウム等が挙げられる。
止血剤としては、例えばトロンボプラスチン、トロンビン、メナジオン亜硫酸水素ナトリウム、アセトメナフトン、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、アドレノクロムモノアミノグアニジンメタンスルホン酸塩等が挙げられる。
抗結核剤としては、例えばイソニアジド、エタンブトール、パラアミノサリチル酸等が挙げられる。
ホルモン剤としては、例えばプレドニゾロン、リン酸ナトリウムプレドニゾリゾロン、デキサメタゾン塩酸ナトリウム、リン酸ヘキセストロール、メチマゾール等が挙げられる。
麻薬拮抗剤としては、例えば酒石酸レバロルファン、塩酸ナロルフィン、塩酸ナロキソン等が挙げられる。
骨吸収抑制剤としては、例えばイプリフラボン、アレンドロネート、チルドロネート等が挙げられる。
骨形成促進剤としては、例えば骨形成因子(BMP)、副甲状腺ホルモン(PTH)、細胞増殖因子(TGF−β等)、インスリン様成長因子(IGF−I等)などのポリペプチド等が挙げられる。
骨折治癒促進剤、軟骨疾患修復治療剤としては、ホスホジエステラーゼ4阻害薬(PCT/JP02/04930、PCT/JP02/04931)等が挙げられる。
血管新生抑制剤としては、例えば血管新生抑制ステロイド、フマギリン、フマギロール誘導体、アンジオスタチン、エンドスタチン等が挙げられる。
抗嘔吐剤としては、オンダンセトロン、トロピセトロンなどの5−ヒドロキシトリプタミンタイプ3受容体拮抗薬、ニューロキニン1受容体拮抗薬等があげられる。
上記薬物は、遊離のものであっても、その薬理学的に許容される塩であってもよい。例えば、薬物がアミノ基等の塩基性基を有する化合物である場合、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸等)または有機酸(例えば、炭酸、コハク酸等)との塩の形で用いることもできる。また、薬物がカルボキシル基等の酸性基を有する場合、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属)または有機塩基化合物(例えば、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類)との塩の形で用いることもできる。
また、薬物が塩を形成しているためにマイクロスフェアへの取込率が低い場合には、遊離の形に変換して用いてもよい。遊離の形に変換するには、酸付加塩の場合には、塩基性水溶液(例えば、炭酸水素アルカリ金属水溶液、炭酸アルカリ金属水溶液、水酸化アルカリ金属水溶液、リン酸アルカリ金属水溶液、リン酸水素アルカリ金属水溶液、弱塩基性緩衝液など)で処理した後、有機溶媒で抽出すればよく、塩基付加塩の場合には、弱酸性水溶液(例えば、塩化アンモニウム水溶液、弱酸性緩衝液など)で処理したのち、有機溶媒で抽出すればよい。抽出液からは、慣用の方法で溶媒を留去すれば遊離の形の薬物を得ることができる。
薬物をポリマーの有機溶媒溶液に溶解するか又は懸濁するか、或いは薬物の水溶液をポリマーの有機溶媒溶液に分散するかは、薬物の特性(水より低沸点の有機溶媒に対する溶解度、有機溶媒に対する安定性、水溶性等)、必要となるマイクロスフェアからの薬物溶出特性、含量、粒子径等に応じて適宜選択することができるが、薬物が有機溶媒で変性し易いときには、薬物をポリマーの有機溶媒溶液に懸濁するか又は薬物の水溶液をポリマーの有機溶媒溶液に分散することもできる。
薬物含有ポリマー液を水性溶液に乳化する際に使用する乳化装置としては、プロペラ式攪拌機、タービン型攪拌機、高圧乳化機、超音波分散装置、スタティックミキサー、内部せん断(液−液せん断)を利用した高速回転式ホモジナイザー等の既知の乳化装置をあげることができ、内部せん断(液−液せん断)を利用した高速回転式ホモジナイザー(エムテクニック社クレアミックス、シルバーソン社ハイシアーインライン式ミキサー等)を使用すれば、乳化強度を上げることができるため、粘度の高い薬物含有ポリマー液を用いても、粒子径の小さい液滴が水性溶液中に形成され、粒子径の小さいマイクロスフェアを製造することができる。
乳化はバッチ処理でも、連続処理でも行うことができ、バッチ処理の場合には、T.K.アジホモミクサー、T.K.コンビミックス、T.K.ホモジェッター、エムテクニック社クレアミックス連続バッチ式又はバッチ式システム等を使用することができ、一方、連続乳化を行う場合には、高速剪断型分散乳化機(例えば、特殊機化工業製T.K.ホモミックラインフロー)、インライン型攪拌装置(例えば、特殊機化工業製T.K.パイプラインホモミクサー、シルバーソン社製ハイシアーインライン式ミキサー、エムテクニック社製クレアミックス連続式システム、スケヤミキサー)等を使用することができる。
連続乳化の場合には、得られるエマルションを連続的にマイクロスフェア蓄積タンクに移し、バッチ処理の場合には、得られるエマルションをバッチ毎に蓄積タンクに移すのが好ましい。
乳化をバッチ処理で行う場合には、乳化装置の容量はマイクロスフェア蓄積タンクの容量の1/1000〜1/10であるのが好ましい。バッチ処理の場合、乳化は30分以内、とりわけ10分以内で行うのが好ましく、一方、連続処理の場合、乳化装置中の平均滞留時間が10分以内、とりわけ5分以内であるのが好ましい。
水性溶液は、ポリマーの有機溶媒溶液に水混和性有機溶媒を用いる場合と水非混和性の有機溶媒を用いる場合とで、使用できるものが異なる。
ポリマーの有機溶媒溶液に水混和性の有機溶媒を用いる場合には、例えば、国際公開WO01/80835号パンフレットに記載されたように、水混和性の有機溶媒とは混和せず、かつ、ポリマーを溶解しない溶媒を水と共に含む均一溶液を使用することが好ましく、炭素数1〜4の1価アルコール等を含んでいてもよい。この場合、水−グリセリン、水性エタノール−グリセリン等の均一混合溶液等を使用するのが好ましい。
水混和性の有機溶媒とは混和せず、かつ、ポリマーを溶解しない溶媒の水性溶液中での濃度は、25〜95重量%であり、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは60〜80重量%である。
また、水性溶液は乳化安定剤を含んでいてもよく、乳化安定剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム、キトサン、ゼラチン、レシチン、血清アルブミン、非イオン性界面活性剤[ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(日光ケミカルズ製Tween80、60)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(日光ケミカルズ製HCO−60、HCO−50)]をあげることができる。乳化安定化剤は水性溶液中に、0.001〜10重量%、とりわけ0.01〜2重量%添加するのが好ましい。
一方、ポリマーの有機溶媒溶液に水非混和性の有機溶媒を用いる場合には、水性溶液は、純粋な水であってもよく、必要に応じて、乳化安定剤を含んでいても良い。乳化安定剤としては、水混和性有機溶媒を用いる場合と同様のものを同程度の濃度で使用することができる。
本件の製法では、一度に大量のエマルション調製を行う必要がないため、乳化装置を小規模なものとすることができる。また、乳化装置を小規模とすることができるため、攪拌抵抗を小さくすることができ、薬物含有ポリマー液及び水性溶液全体の乳化の程度を均一にし易く、エマルションの液滴粒子径のバラツキが少なく、かつ、粒子径の小さい液滴のエマルションを生成することができ、また、乳化時間が短くなるため、薬物の水性溶液への漏出も抑制できる。
更に、本発明の方法では、乳化はバッチ処理及び連続処理のいずれでも実施することができるが、バッチ処理の方が連続乳化よりも、乳化される薬物含有ポリマー液及び水性溶液の乳化時間についてのバラツキが少なく、また、液滴の粒子径をモニターしながら乳化速度を調整しやすいため、液滴の粒子径のバラツキがより少なく、かつ、粒子径の小さい液滴のエマルションを生成しやすい。また、乳化のたび毎に、水性溶液を入れ替えるため、乳化工程において、エマルションの水相における有機溶媒濃度を一定レベル以下に保つことができ、薬物含量の低下、粒子径の変動等の品質の低下を生じにくい等の点で好ましい。
連続乳化の場合も、バッチ処理による場合も、乳化に用いられる水性溶液の容量は薬物含有ポリマー液の容量の10〜300倍とするのが好ましく、連続的に乳化を行う場合には、乳化処理時間に、乳化装置に導入される水性溶液の容量と薬物含有ポリマー液の容量との比によって算出される。
ポリマー液の比率を低下させれば、乳化段階で、薬物含有ポリマー液の液滴からある程度の有機溶媒が水性溶液に浸出するため、乳化段階である程度、液滴の固化が生じやすくなる。
なお、乳化直後のエマルションにおける液滴は、乳化装置、マイクロスフェア蓄積タンクにおいて、次第に有機溶媒が、水性溶媒中に浸出し、また、留去されて固化し、マイクロスフェアとなるが、マイクロスフェア形成過程においては、形成途中のマイクロスフェアも含めて液滴と総称するが、上記でマイクロスフェアの平均粒子径と対比される液滴の平均粒子径は、乳化直後の液滴における粒子径である。
このように薬物含有ポリマー液を水性溶液に乳化して得られる、薬物含有ポリマー液が水性溶液に分散したエマルションとしては、例えば、次のようなエマルションをあげることができる。
(i)生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマー及び薬物が水より低沸点の有機溶媒に溶解された溶液が、更に水性溶液に分散されているエマルション(O/W)
(ii)生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーが水より低沸点の有機溶媒に溶解し、これに薬物が懸濁された懸濁液が、更に水性溶液に分散されているエマルション(S/O/W)
(iii)生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーが水より低沸点の有機溶媒に溶解し、これに薬物の水溶液が分散された分散液が、更に水性溶液に分散されているエマルション(W/O/W)
(iv)水より低沸点の有機溶媒中に、一方の生体内適合かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーが溶解されており、このポリマー溶液中に、他方の生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーの同有機溶媒溶液が分散されており、分散されているポリマー溶液中に薬物が溶解又は懸濁されている分散液が、更に水性溶液に分散されているエマルション(O/O/W)
工程(b)において使用するエマルション蓄積タンクは、エマルション、エマルションの構成成分に対して反応性を有しない材質で形成されたものが好ましく、例えば、ステンレス製、テフロン製、テフロンコーティング製、グラスライニング等のものをあげることができる。
水より低沸点の有機溶媒が水非混和性である場合には、エマルション蓄積タンクは、有機溶媒留去機能を有している必要があるが、一方、水より低沸点の有機溶媒が水混和性である場合には、有機溶媒が水性溶液に溶解するため、エマルション蓄積タンクは有機溶媒留去機能を有していなくてもよいが、有機溶媒留去機能を有していてもよい。また、いずれの有機溶媒の場合も、乳化段階で有機溶媒が水性溶液に溶出され、薬物含有ポリマー液の液滴がある程度固化していれば、有機溶媒を留去しなくても、エマルションをクロスフロー濾過に付すことが可能である。
有機溶媒留去機能としては、(A)加温、減圧等を組合せて有機溶媒を留去する方法、(B)外水相と気相との接触面積、エマルションの循環・攪拌速度を規定すると共に、液面付近で気体を吹き付ける方法(特開平9−221418号公報)、(C)中空糸膜モジュールを用いて急速に有機溶媒を留去する方法(国際公開WO01/83594号パンフレット)等によるものを挙げることができる。
中空糸膜モジュールとしては、シリコンゴム製浸透気化膜(特に、ポリジメチルシロキサンで形成された浸透気化膜)、多孔質ポリテトラフルオロエチレンにシリコンゴムが充填された膜(特開平5−15749号公報等)、ポリビニルアルコール混合膜等の浸透気化膜(ケミカルエンジニアリング1998年3月号25〜29頁参照)を利用したものを好適に使用することができ、例えば、永柳工業株式会社製シリコーン膜モジュール「NAGASEP」、東レ株式会社製脱気膜エレメント「SG−100シリーズ」、三菱レイヨン株式会社製三層複合中空糸膜(脱気膜モジュール)、大日本インキ化学株式会社製「SEPAREL」中空糸膜モジュール等の市販のものを適宜使用することができる。
また、マイクロスフェア蓄積タンクの内容物を均一にした上で、その一部をクロスフロー濾過装置に導通させるため、マイクロスフェア蓄積タンクはエマルションを流動させるための攪拌翼、マグネティックスターラー等の攪拌機能、又はエマルションの下部より一部を吸引して上部に戻すためのポンプ機能を有しているのが好ましい。
工程(c)におけるクロスフロー濾過は、処理対象となるエマルションを濾過膜と並行に流すことにより、処理対象中の液体成分の一部が濾過膜を透過する濾過方法であり、濾過膜に並行に流れるエマルションの水性溶液の一部が濾過されて、濾過膜の逆側に濾液として透過し、残りのエマルションは濾過膜に並行に流れる。エマルションの流れる方向が濾過膜と並行であるため、目詰まりを生じ難く、濾過効率の低下が抑制されている。
濾過膜としては、所望のマイクロスフェアの平均粒子径の1/300〜1/3の孔径の孔を有するものが好ましく、一般に0.01〜10μmの孔径を有するものが好ましい。クロスフロー濾過に使用する濾過膜は、マイクロスフェア蓄積タンクの容量1リットル当たり、0.001〜0.1m2の濾過膜面積を有するものが好ましい。
クロスフロー濾過装置としては、ポリビニリデンフルオライド、再生セルロース、ポリエーテルスルホン、親水性ポリエーテルスルホン、ポリアミド複合膜等のポリマーで形成された濾過膜が、平板状に積層され、又は微細円筒の束の形とされることにより、単位体積当たりの表面積を大きくしたものを好適に使用することができ、例えば、ミリポア社製プロスタック、ザルトリウス社製ザルトコン、ポール社製ウルチクリーン、キュノ社製マイクロフロー等を使用することができる。
また、クロスフロー濾過を実施するに際しては、クロスフロー濾過装置からの濾液排出速度が同装置へのエマルション導通速度の1/100〜1/3となるように調整するのが好ましい。
工程(d−1)及び工程(d−2)において、クロスフロー濾過装置の濾過膜を透過せず、その表面を通過した通過液は、マイクロスフェア蓄積タンクに戻される。この通過液は、クロスフロー濾過装置に導通されたエマルションのうち、濾液を除いたものであり、クロスフロー濾過により、エマルションの量が濾液の分だけ減少することとなる。
工程(d−1)では、濾液を工程(a)の水性溶液として循環利用して、これと薬物含有ポリマー液とを用いて乳化を行い、工程(b)〜工程(d−1)を繰り返すが、必要に応じて、濾液から、水より低沸点の有機溶媒を留去した後、工程(a)の水性溶液として使用することもできる。この有機溶媒の留去は、通常、濾過装置と乳化装置を繋ぐ連絡通路において、適当な溶媒留去装置を設置して行うことができる。
このように、濾液を乳化工程の水性溶液として循環利用するため、タンクの中には、乳化の回数が増えるに従って、薬物含有ポリマー液の液滴が固化して生成したマイクロスフェアが蓄積することとなり、1度に大量のマイクロスフェアを製造する場合と比べて、小規模な乳化装置、小規模なマイクロスフェア蓄積タンクで工業的スケールでのマイクロスフェアを製造することが可能となる。
また、本発明の方法によれば、マイクロスフェア製造装置の小型化と共に、小型化による密閉系の作成・維持が容易となり、外部からの雑菌の混入抑制、有機溶媒の大気中への放散を防止することができ、かつ、乳化の回数を調整するだけで必要量に応じたマイクロスフェアの製造が可能となる。
更に、水性溶液が乳化安定化剤を含む場合には、水性溶液に含まれる乳化安定化剤も循環利用されるため、その消費量を抑制することもでき、乳化段階等で水性溶液に薬物が漏出した場合でも、薬物は循環利用される水性溶液に残るため、必要に応じて、マイクロスフェアの回収後に、水性溶液から薬物を回収することも可能となる。
一方、工程(d−2)では、濾液を工程(a)の水性溶液として循環利用することなく、新たな水性溶液と薬物含有ポリマー液とを用いて乳化を行い、工程(b)〜工程(d−2)を繰り返す。
この場合、乳化速度を調整して、濾液量と実質的に同じ量だけのエマルションをマイクロスフェア蓄積タンクに移すようにすれば、マイクロスフェア蓄積タンクのエマルションの量を実質的に一定にすることにより、マイクロスフェア蓄積タンクを小型化することができ、工程(a)〜工程(d−2)を繰り返すことにより、乳化の回数に応じて、薬物含有ポリマー液の液滴が固化して生成したマイクロスエアが蓄積することとなり、工程(d−1)の場合と同様、小規模な乳化装置、小規模なマイクロスフェア蓄積タンクにより工業的スケールでマイクロスフェアを製造することが可能となる。
また、密閉系の作成・維持が容易となり、外部からの雑菌の混入抑制、有機溶媒の大気中への放散防止、マイクロスフェア製造量の調整も容易となる。更に、乳化に使用する水性溶液として予め調製した同一組成の水性溶液を使用することができるため、濾液を循環利用する場合に比べて、乳化段階での均一性を保ちやすい。
上述したように、工程(c)でクロスフロー濾過装置を導通した際に得られる濾液は、(d−1)工程のように水性溶液として循環使用してもよく、また(d−2)工程のように循環使用することなく排出させてもよいが、循環使用される場合、水より低沸点の有機溶媒が水混和性であるときは、循環使用される濾液中に含有される該有機溶媒を循環中に付加的に留去してもよい。それによって水性溶媒中の有機溶媒量をさらに低減させて、溶媒除去・エマルション形成の促進を図ることができる。
一方、水より低沸点の有機溶媒が水非混和性である場合は、循環過程の中でマイクロスフェア蓄積タンクで有機溶媒を留去するが、その留去が充分でない場合には、工程(d−1)又は工程(d−2)の終了後、工程(e)のマイクロスフェア回収の前に、クロスフロー濾過を止めて、マイクロスフェア蓄積タンクでの有機溶媒留去を継続することにより、マイクロスフェアからの有機溶媒留去を補足してもよい。なお、このようなマイクロスフェア蓄積タンクでの水非混和性有機溶媒の留去が完全でなく、マイクロスフェアの形成上あるいは残留有機溶媒の規制の観点からより完全な有機溶媒の留去が求められる場合には、マイクロスフェア蓄積タンクでの有機溶媒留去に加えて、その溶媒除去効率を上げる手段を講じてもよい。例えば、(d−1)の場合には、クロスフロー濾過を継続し、濾液からの有機溶媒留去を行い、留去後の濾液を乳化工程に付すことなく乳化装置を素通りさせるかまたは別途設けたパイプを通してマイクロスフェア蓄積タンクに戻す操作を継続し、(d−2)の場合には、クロスフロー濾過を継続し、濾液の量に相当する新たな水性溶液をマイクロスフェア蓄積タンクに導入することにより、マイクロスフェアからの有機溶媒留去を補うことができる。
なお、本発明方法によるマイクロスフェアの製造は、(a)工程から(d−1)または(d−2)工程までを繰り返し、所望量のマイクロスフェアがマイクロスフェア蓄積タンクに蓄積されるまで行われ、その終了点は該蓄積タンクの大きさ、各マイクロスフェアの所望量等によっても左右されるが、生成したマイクロスフェアを長時間蓄積タンク内に貯蔵しておくことはマイクロスフェアの品質管理上好ましくなく、従って、マイクロスフェア生成に要する処理時間が2日以内とするのが好ましく、さらに好ましくは処理時間を1日以内とする。かくして生成したマイクロスフェアは工程(e)で回収される。
工程(e)において、マイクロスフェア蓄積タンクに蓄積した懸濁液からマイクロスフェアを回収するには、濾過(クロスフロー濾過、デッドエンド型濾過等)、遠心分離等により回収することができる。
クロスフロー濾過によってマイクロスフェアを回収する場合には、マイクロスフェア製造に使用したクロスフロー濾過装置をそのまま利用して、懸濁液中の水性溶液を除去してマイクロスフェアの回収を効率的に行うことができ、更に、マイクロスフェア蓄積タンクに洗浄液を導入して、クロスフロー濾過装置に循環すれば、クロスフロー濾過を利用して、マイクロスフェアの洗浄を行うこともでき、マイクロスフェア製造工程だけでなく、回収、洗浄までを密閉系中で行うことが可能となる。
また、回収の際、所望の粒子径のマイクロスフェアを得るために、適切な目開きの大きさを有する篩にかけることにより、マイクロスフェアの粒子径を更に整えることができ、目開きが150μm〜5μmの篩にかけて注射剤に使用するのが好ましい。
なお、本件方法で得られるマイクロスフェアには、有機溶媒の留去を行う程度により、マイクロスフェア中に有機溶媒が残留する場合があるが、次の方法により、留去することが可能である。
(I)回収されたマイクロスフェアを水相中で、ポリマーの溶解に使用した有機溶媒の沸点以上(水の沸点以下)に加温する方法(特開2000−239152号公報)。
(II)回収されたマイクロスフェアを高融点添加物で覆った後、加温乾燥する方法(特開平9−221417号公報)。
こうして得られるマイクロスフェアは、細粒剤、懸濁剤、埋め込み製剤、注射剤、貼付剤等として使用することができ、経口投与、非経口投与[筋肉内投与、皮下投与、血管内投与、経皮投与、経粘膜投与(口腔、膣、直腸粘膜投与等)]することができる。
マイクロスフェアを注射剤、経口ドライシロップ等の懸濁剤として使用する場合には、分散剤(非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、セルロース系増粘剤)を加えた液剤とするのが好ましく、また、上記分散剤、吸湿防止剤、凝集防止剤(マンニトール、ソルビトール、ラクトース、ブドウ糖、キシリトール、マルトース、ガラクトース、シュクロース、デキストラン)等の賦形剤の水溶液にマイクロスフェアを分散後、凍結乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥等の方法で固形化し、用時に、注射用蒸留水等に添加して投与することもできる。
上記注射剤(固形化したものも含む)には、適宜、等張化剤(塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖等)、pH調整剤(炭酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リン酸、塩酸、水酸化ナトリウム又はこれらの塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)、保存剤[p−ヒドロキシ安息香酸エステル類(メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル)、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビン酸、ホウ酸]を添加することもできる。
また、密閉系でマイクロスフェアを製造するために使用する本発明のマイクロスフェア製造装置は、本発明のマイクロスフェア製法を効率的に実施するためのものであり、本発明のマイクロスフェア製法において、工程(d−1)を実施する場合の装置として、乳化装置、マイクロスフェア蓄積タンク及びクロスフロー濾過装置が次のように構成されたものがあげられる。
(i)薬物含有ポリマー液及び水性溶液が乳化装置に導入できるような構造を有する、
(ii)乳化装置で得られるエマルションを有機溶媒留去機能を有するマイクロスフェア蓄積タンクに移すことができるように、乳化装置とマイクロスフェア蓄積タンクとが連結される、
(iii)マイクロスフェア蓄積タンクから内容物であるエマルションの一部をクロスフロー濾過装置に導通し、濾過装置通過液はマイクロスフェア蓄積タンクに戻され、一方、濾液は水性溶液として乳化装置に導かれるように、マイクロスフェア蓄積タンク、クロスフロー濾過装置及び乳化装置が連結される。
また、水より低沸点の有機溶媒として、水混和性のものを使用する場合には、必ずしも、マイクロスフェア蓄積タンクが有機溶媒留去機能を有していなくてもよいため、工程(d−1)を実施する場合の装置として、乳化装置、マイクロスフェア蓄積タンク及びクロスフロー濾過装置が次のように構成されたものを使用することもできる。
(i)薬物含有ポリマー液及び水性溶液が乳化装置に導入できるような構造を有する、
(ii)乳化装置で得られるエマルションをマイクロスフェア蓄積タンクに移すことができるように、乳化装置とマイクロスフェア蓄積タンクとが連結される、
(iii)マイクロスフェア蓄積タンクから内容物であるエマルションの一部をクロスフロー濾過装置に導通し、濾過装置通過液はマイクロスフェア蓄積タンクに戻され、一方、濾液は水性溶液として乳化装置に導かれるように、マイクロスフェア蓄積タンク、クロスフロー濾過装置及び乳化装置が連結される。
一方、本発明のマイクロスフェア製法において、クロスフロー濾過装置で生じる濾液を水性溶液として循環利用することなく行う工程(d−2)を経る方法を実施する場合の装置として、乳化装置、マイクロスフェア蓄積タンク及びクロスフロー濾過装置が次のように構成されたものがあげられる。
(i)薬物含有ポリマー液及び水性溶液が乳化装置に導入できるような構造を有する、
(ii)乳化装置で得られるエマルションを有機溶媒留去機能を有するマイクロスフェア蓄積タンクに移すことができるように、乳化装置とマイクロスフェア蓄積タンクとが連結される、
(iii)マイクロスフェア蓄積タンクから内容物であるエマルションをクロスフロー濾過装置に導通し、通過液はマイクロスフェア蓄積タンクに戻され、濾液が装置外に排出されるように、マイクロスフェア蓄積タンク及びクロスフロー濾過装置が連結される。
また、水より低沸点の有機溶媒として、水混和性のものを使用する場合には、工程(d−2)を実施する装置として、乳化装置、マイクロスフェア蓄積タンク及びクロスフロー濾過装置が次のように構成されたものを使用することもできる。
(i)薬物含有ポリマー液及び水性溶液が乳化装置に導入できるような構造を有する、
(ii)乳化装置で得られるエマルションをマイクロスフェア蓄積タンクに移すことができるように、乳化装置とマイクロスフェア蓄積タンクとが連結される、
(iii)マイクロスフェア蓄積タンクから内容物であるエマルションをクロスフロー濾過装置に導通し、通過液はマイクロスフェア蓄積タンクに戻され、濾液が装置外に排出されるように、マイクロスフェア蓄積タンク及びクロスフロー濾過装置が連結される。
これらマイクロスフェア製造装置において、乳化装置としては、上記マイクロスフェア製法の説明において例示した種々の乳化装置を目的に合わせて適宜使用することができ、また、連続乳化装置であっても、バッチ処理による乳化装置であってもよい。すなわち、乳化処理を連続的に行うのではなく、乳化装置への薬物含有ポリマー液と水性溶液および/またはクロスフロー濾過装置からの濾液との導入を断続的に行ってもよい。
本発明のマイクロスフェア製造装置では、少量ずつ繰り返し又は連続的に乳化を行うため、乳化装置の容量は、マイクロスフェア製造する際のエマルション全量を一度に製造する場合と比べ、遥かに小型化することができ、マイクロスフェア蓄積タンクの容量の1/10〜1/1000とするのが好ましい。
また、乳化装置には、薬物含有ポリマー液及び水性溶液が導入されるようになっており、薬物含有ポリマー及び水性溶液をそれぞれ貯蔵したタンクから乳化装置に導入できるようにしておくことが考えられるが、工程(d−1)を実施する場合には、水性溶液を貯蔵したタンクを設けることなく、予め、水性溶液を貯蔵したマイクロスフェア蓄積タンクからクロスフロー濾過装置を経由して、濾液として得られる水性溶液を乳化装置に導入することにより、循環プロセスを開始してもよい。
乳化装置は薬物含有ポリマー液及び水性溶液(濾液を循環利用する場合も含む)の導入速度を調節する機能を有していてもよく、例えば、濾液を水性溶液として循環利用する場合には、クロスフロー濾過装置からの濾液排出速度(乳化装置への水性溶液導入速度)に応じて薬物含有ポリマー液の導入量を制御する機能、濾液(乳化装置中の水性溶液)が一定量となった時点で一定量の薬物含有ポリマー液を導入する機能、濾液(乳化装置中の水性溶液)を乳化装置に連続的に導入しながら、濾液中の有機溶媒濃度が一定以下となった時点で一定量の薬物含有ポリマー液を導入する機能、クロスフロー濾過装置からの濾液排出速度(乳化装置への水性溶液導入速度)を一定に維持しながら、定期的に薬物含有ポリマー液を導入する機能等を有するものであってもよい。
乳化装置は生成するエマルションをマイクロスフェア蓄積タンクに移すことができるよう、マイクロスフェア蓄積タンクに連結されている。
連続乳化を行う場合には、例えば、乳化装置の上方又は横方向から薬物含有ポリマー液及び水性溶液を乳化装置に導入して乳化を行い、生成するエマルションを下方からマイクロスフェア蓄積タンクに移すようにレイアウトされていてもよく、また、乳化装置の下方又は横方向から薬物含有ポリマー液及び水性溶液を乳化装置に導入して乳化装置で乳化を行い、生成するエマルションが乳化装置上部からオーバーフローするようにしてマイクロスフェア蓄積タンクに自動的に移されるようにレイアウトされていてもよい。
また、乳化装置をバッチ式、すなわち断続的に行う場合にも、クロスフロー濾過装置からの濾液を水性溶液として循環利用する場合には、その濾液のフローを利用して生成したエマルションを乳化装置からマイクロスフェア蓄積タンクに移してもよい。
マイクロスフェア蓄積タンクとしては、上記マイクロスフェア製法の説明において例示した種々の材質のものを使用することができ、また、上記マイクロスフェア製法において説明した通り、種々の有機溶媒留去機能を有するものである。
本発明のマイクロスフェア製法では、マイクロスフェア製造量が大きくなっても、エマルションの容積の大部分を占める水性溶液の部分の容量が増加しないため、この方法を実施するためのマイクロスフェア蓄積タンクは小型化することができ、マイクロスフェア1kgを工業的に製造するのに必要となるマイクロスフェア蓄積タンクの大きさは10〜100リットル程度に抑えることができる。
クロスフロー濾過装置も、例えば、上記マイクロスフェア製法の説明において例示した市販されているもの等を適宜使用することができる。
マイクロスフェア蓄積タンクの内容物であるエマルションがクロスフロー濾過装置に導通され、濾過膜を透過しない通過液のみがマイクロスフェア蓄積タンクに戻されるように、マイクロスフェア蓄積タンクとクロスフロー濾過装置が連結され、一方、クロスフロー濾過装置からの濾液は乳化装置に導かれるか又は装置外に排出されるよう連結されている。
また、クロスフロー濾過装置の濾液を乳化装置に導く連結経路においては、濾液から有機溶媒を留去するための溶媒留去機能が付加されていてもよく、その付加的溶媒留去は、適当な溶媒留去装置を別途設けてもよく、あるいはマイクロスフェア蓄積タンクに使用される有機溶媒留去機能を適宜使用することができる。
更に、各連結経路においては、エマルション、濾液等の移送のため、必要に応じて、ポンプ等の移送促進機能を持たせてもよく、チューブポンプ、マグネットポンプ、ギアポンプ、遠心ポンプ、ダイアフラムポンプ等の移送手段を使用することができる。
マイクロスフェア製造に使用されることが多い塩化メチレン等の有機溶媒を工業的に使用する場合には、外部への有機溶媒の放散を防止できる密閉系製造装置を用いることが環境問題上必要であり[1999年7月13日付きで交付された「特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理の改善の促進に関する法律」および2000年3月29日付政令]、また、医薬として使用されるマイクロスフェアの無菌化、菌汚染防止という点でも密閉系でのマイクロスフェア製造が必須であるが、本発明のマイクロスフェア製造装置は小型化されているため、密閉系の作成が容易であり、マイクロスフェアの工業的製造装置として優れている。
また、濾液が装置外に排出される場合及び有機溶媒留去装置で有機溶媒が留去される場合には、濾液中の有機溶媒及び留去された有機溶媒が大気中に放散されないよう、有機溶媒を回収し、必要に応じて再利用するのが好ましい。
有機溶媒の回収法としては、冷却して液化させる方法、冷水へ導通する方法或いは多孔性粒子に導通して吸着させる方法などがある。吸着方法としては、繊維状活性炭吸着装置、汎用型クロロカーボン排出ガス回収装置、小型クロロカーボン排出ガス回収装置、低濃度クロロカーボン排出ガス回収装置、粒状活性炭素吸着装置、球状活性炭流動床吸着装置、圧縮深冷凝縮装置等(「クロロカーボン適正使用ハンドブック」85〜93頁参照)が用いられる。より具体的には、栗本鐵工所溶剤回収・脱臭装置「アメーグ」、東洋紡製低濃度溶剤ガス吸着・濃縮処理装置「ハロニーター」等の市販のものをそのまま使用することができる。
つぎに実施例及び参考例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(マイクロスフェア製造装置の例)
本発明の製法によるマイクロスフェア製造に使用され得る装置レイアウトの例を第1図及び第2図に示す。
第1図においては、薬物含有ポリマー液貯蔵タンク(4)から薬物含有ポリマー液を乳化装置(1)に導き、一方、当初、水性溶液はマイクロスフェア蓄積タンク(2)に予め充填されており、これからクロスフロー濾過装置(3)に導通され、濾過されなかった通過液はマイクロスフェア蓄積タンク(2)に戻され、濾液のみが乳化装置(1)に導かれて、乳化後、生成するエマルションをマイクロスフェア蓄積タンク(2)に移し、内容物であるエマルションはクロスフロー濾過装置(3)に導通され、濾過されなかった通過液はマイクロスフェア蓄積タンク(2)に戻され、濾液は乳化装置(1)に導かれ、薬物含有ポリマー液貯蔵タンク(4)から導かれる薬物含有ポリマー液と共に乳化される。こうして得られるエマルションはマイクロスフェア蓄積タンクに移され、上記操作が循環的に行われる。
第2図においては、薬物含有ポリマー液貯蔵タンク(4)及び水性溶液貯蔵タンク(5)からそれぞれ薬物含有ポリマー液及び水性溶液を乳化装置(1)に導き、乳化後、生成するエマルションをマイクロスフェア蓄積タンク(2)に移し、内容物であるエマルションはクロスフロー濾過装置(3)に導通され、濾過されなかった通過液はマイクロスフェア蓄積タンク(2)に戻され、濾液は排出され、新たに、薬物含有ポリマー液貯蔵タンク(4)及び水性溶液貯蔵タンク(5)からそれぞれ薬物含有ポリマー液及び水性溶液が乳化装置(1)に導かれ、乳化される。こうして得られるエマルションはマイクロスフェア蓄積タンクに移され、上記操作が反復的に行われる。
第1図及び第2図の装置において、乳化装置(1)としては、連続乳化装置であってもよく、非連続的なバッチ処理により乳化を行う装置であってもよい。また、マイクロスフェア蓄積タンク(2)は、液面への気体吹付けによる有機溶媒留去機能、中空糸膜モジュールによる有機溶媒留去機能等の付いたものであってもよいが、低沸点の有機溶媒が水混和性である場合には、有機溶媒留去機能を有しないものであってもよい。
(2)第1図に示すマイクロスフェア製造装置(非連続的なバッチ処理による乳化、中空糸膜モジュールによる有機溶媒留去機能付マイクロスフェア蓄積タンクを使用)にて、マイクロスフェア製造を行った。即ち、中空糸膜モジュール(NAGASEP平板タイプM60−600L−3600;有効面積1.8m2;永柳工業製)を内部に装着した、攪拌機(CLM−0.5SD)付ステンレス製マイクロスフェア蓄積タンク(密閉タンク;容量20リットル;エムテクニック製)に、予め、0.1%ポリビニルアルコール(ゴセノールEG−40;ケン化度86.5−89.0モル%;日本合成化学工業製)水溶液15リットルを入れ、400rpmで撹拌を行う。更に、中空糸膜モジュール内に15リットル/分で窒素ガスを導通する。タンク内のポリビニルアルコール水溶液をチューブポンプ(ミリポア製:XX80EL000)を用いて、クロスフロー濾過装置(プロスタック;膜孔径:0.65μm、総膜面積:0.332m2;ミリポア製)に10リットル/分の速度で導き、クロスフロー濾過膜への負荷圧を0.03〜0.05MPaとして得られる濾液をチューブポンプ(ミリポア製:XX8200115)で乳化装置(容量:350ml;クレアミックス(Clearmix)CLM−1.5S;ローター:R4;スクリーン:S1.5−24;エムテクニック製)に250ml/分の速度で流入させた。一方、上記(1)で得られた溶液22mlをシリンジに充填し、2分毎に、2mlずつ2〜3秒間で、乳化装置に注入した。16000rpmで乳化を行い、濾液の流入により乳化装置からオーバーフローするエマルションを攪拌機付ステンレス製マイクロスフェア蓄積タンクに導いた。上記(1)で得られた溶液の最後の注入から1分後迄、乳化を継続し、最後の注入から5分後に、濾液側のチューブポンプを停止して、乳化装置への濾液流入を止めた(クロスフロー濾過装置への循環は継続)。その後、室温にて、1時間、中空糸膜モジュール内に15リットル/分で窒素ガスを導通して、エマルションから有機溶媒を留去した。
(3)有機溶媒を留去後、再び濾液側のチューブポンプを運転し、250ml/分の割合で得られた濾液を廃棄した。マイクロスフェア蓄積タンクの内容物の容量が約3リットルとなった時点で、クロスフロー濾過を継続しながら、タンク上部より、精製水12リットルを250ml/分の速度で添加した。その後、濾過を継続して、マイクロスフェア蓄積タンクの内容物の容量を約1リットルとした。マイクロスフェア蓄積タンクの内容物をガラスビーカーに移し、更に、マイクロスフェア蓄積タンクに精製水1リットルを入れ、クロスフロー濾過装置内を循環させて洗浄した後、内容物をビーカーに移して、残存するマイクロスフェアをビーカーに回収した。残存マイクロスフェアの回収操作を再度繰り返した後、得られたマイクロスフェア懸濁液約3リットルを遠心分離(2000rpm、10分)して、マイクロスフェアを分取した。
(4)分取したマイクロスフェアをシャーレに移し、少量の精製水を加え、凍結乾燥装置[RLE−52ES;共和真空技術(株)製]にて−40℃で凍結後、20℃、0.1torr(13.3Pa)で15時間以上乾燥することにより、マイクロスフェア凍結乾燥末を得た。
マイクロスフェア凍結乾燥品の平均粒子径は、凍結乾燥品をポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(日光ケミカルズ製Tween80)の希薄溶液に適量分散させ、粒度分布測定装置(島津製作所製SALD−1100)にて測定したところ、平均粒子径は4.9μmであった。
使用したポリ乳酸及び酢酸リュープロライドの合計重量に対するマイクロスフェア凍結乾燥品重量の比率である回収率は79%であった。
マイクロスフェア凍結乾燥品5mgにアセトニトリル1.5mlを添加して溶解し、その後、0.5M塩化ナトリウム水溶液3.5mlを添加し、2000rpmで10分間遠心分離して沈殿物を除去し、上清200μlに移動相[26%(V/V)アセトニトリル/0.05Mリン酸1カリウム(pH2.5)]800μlを加えてHPLC装置[カラム充填剤:Nucleosil 100−5C18(GL−science);カラム温度:40℃;流速:1.0ml/分;検出波長:280nm]で測定し、酢酸リュープロライドの酢酸緩衝溶液(pH4.7)を使用して別途作成した検量線から、マイクロスフェア粒子中の酢酸リュープロライド量を算出したところ、9.13%であった。
ブロモホルム(ナカライテスク製;2.9mg/ml)を含有する1,4−ジオキサン(高速液体クロマトグラフィー用;片山化学製)1mlにマイクロスフェア粉末25mgを溶解し、試験液とした。この試験液2μlをガスクロマトグラム装置(本体GC−14B、インテグレータCR−7A;島津製作所製)で測定し[カラム充填剤:ガスクロパック54(GLサイエンス製);カラム温度160℃;検出器:FID;検出器温度:170℃;注入温度:180℃;移動気体:窒素;流速:60ml/分、Air;40kPa、H2;60kPa]、予め、ブロモホルム(2.9mg/ml)を含有する1,4−ジオキサンに塩化メチレンを溶解した標準液により作成した検量線に内挿して試験液濃度を求め、これと使用したマイクロスフェアの重量とからマイクロスフェア粒子の塩化メチレン含有率を算出したところ、1740ppmであった。
実施例1と同様に測定した平均粒子径は6.33μmであり、回収率は78.8%であった。マイクロスフェア粒子中の酢酸リュープロライド量を実施例1と同様に算出したところ、8.87%であり、マイクロスフェア粉末からマイクロスフェア粒子の塩化メチレン含有率を実施例1と同様に算出したところ、702ppmであった。
(2)第1図に示すマイクロスフェア製造装置(非連続的なバッチ処理による乳化、中空糸膜モジュールによる有機溶媒留去機能付マイクロスフェア蓄積タンクを使用)にて、マイクロスフェア製造を行った。即ち、中空糸膜モジュール(NAGASEP平板タイプM60−600L−3600;有効面積1.8m2;永柳工業製)を内部に装着した、攪拌機(CLM−0.5SD)付ステンレス製マイクロスフェア蓄積タンク(密閉タンク;容量20リットル;エムテクニック製)に、予め膜孔径0.22μmのフィルター(Durapore、GVWP)で濾過した0.1%ポリビニルアルコール(ゴセノールEG−40;ケン化度86.5−89.0モル%;日本合成化学工業製)水溶液15リットルを入れ、400rpmで撹拌を行う。更に、中空糸膜モジュール内に25リットル/分で窒素ガスを導通する。タンク内のポリビニルアルコール水溶液をチューブポンプ(ミリポア製:XX80EL000)を用いて、クロスフロー濾過装置(プロスタック;膜孔径:0.65μm、総膜面積:0.332m2;ミリポア製)に10リットル/分の速度で導き、クロスフロー濾過膜への負荷圧を0.03〜0.05MPaとして得られる濾液をチューブポンプ(ミリポア製:XX8200115)で乳化装置(容量:350ml;クレアミックス(Clearmix)CLM−1.5S;ローター:R4;スクリーン:S1.5−24;エムテクニック製)に250ml/分の速度で流入させた。一方、上記(1)で得られた溶液22mlをシリンジに充填し、2分毎に、2mlずつ2〜3秒間で、乳化装置に注入した。16000rpmで乳化を行い、濾液の流入により乳化装置からオーバーフローするエマルションを攪拌機付ステンレス製マイクロスフェア蓄積タンクに導いた。上記(1)で得られた溶液の最後の注入から1分後迄、乳化を継続し、最後の注入から5分後に、濾液側のチューブポンプを停止して、乳化装置への濾液流入を止めた(クロスフロー濾過装置への循環は継続)。その後、室温にて、2時間、中空糸膜モジュール内に25リットル/分で窒素ガスを導通して、エマルションから有機溶媒を留去した。
(3)有機溶媒を留去後、再び濾液側のチューブポンプを運転し、250ml/分の割合で得られた濾液を廃棄した。マイクロスフェア蓄積タンクの内容物の容量が約3リットルとなった時点で、クロスフロー濾過を継続しながら、タンク上部より、精製水12リットルを250ml/分の速度で添加した。その後、濾過を継続して、マイクロスフェア蓄積タンクの内容物の容量を約1リットルとした。マイクロスフェア蓄積タンクの内容物をガラスビーカーに移し、更に、マイクロスフェア蓄積タンクに精製水1リットルを入れ、クロスフロー濾過装置内を循環させて洗浄した後、内容物をビーカーに移して、残存するマイクロスフェアをビーカーに回収した。残存マイクロスフェアの回収操作を再度繰り返した。
(4)得られたマイクロスフェア懸濁液約3リットルをステンレス製トレイに移し、凍結乾燥装置[RL−100BS;共和真空技術(株)製]にて−40℃で凍結後、20℃、0.1torr(13.3Pa)で約40時間乾燥することにより、マイクロスフェア凍結乾燥末を得た。
実施例1と同様に測定した平均粒子径は5.49μmであり、回収率は74.7%であった。マイクロスフェア粒子中の酢酸リュープロライド量を実施例1と同様に算出したところ、10.05%であり、マイクロスフェア粉末からマイクロスフェア粒子の塩化メチレン含有率を実施例1と同様に算出したところ、709ppmであった。
Claims (18)
- 次の工程からなるマイクロスフェアの製法。
(a)薬物、生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマー及び水より低沸点の水非混和性有機溶媒を含む薬物含有ポリマー液を乳化装置中で水性溶液に乳化して、薬物含有ポリマー液が水性溶液に分散したエマルションを生成し、
(b)得られるエマルションをマイクロスフェア蓄積タンクに移し、
(c)マイクロスフェア蓄積タンクよりエマルションの一部をクロスフロー濾過装置に導通し、
(d−1)−i)クロスフロー濾過装置通過液をマイクロスフェア蓄積タンクに戻し、
(d−1)−ii)上記クロスフロー濾過装置からの濾液を工程(a)の水性溶液として循環利用して、工程(a)〜(d−1)を繰り返し、かつ、この循環過程の中で、マイクロスフェア蓄積タンクで、中空糸膜モジュールによる気化促進により、有機溶媒留去を行い、
(e)(d−1)の過程終了後に、マイクロスフェア蓄積タンク中のマイクロスフェアを回収する。 - 薬物含有ポリマー液が次のいずれかである請求項1記載の方法。
(i)生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマー及び薬物が水より低沸点の水非混和性有機溶媒に溶解された溶液、
(ii)生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーが水より低沸点の水非混和性有機溶媒に溶解し、このポリマー溶液に薬物が懸濁された懸濁液、
(iii)生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーが水より低沸点の水非混和性有機溶媒に溶解し、このポリマー溶液に薬物の水溶液が分散された分散液、
(iv)水より低沸点の水非混和性有機溶媒中に、一方の生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーが溶解されており、このポリマー溶液中に、他方の生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーの同水非混和性有機溶媒溶液が分散されており、分散されているポリマー溶液中に薬物が溶解又は懸濁されている分散液。 - 工程(a)の乳化を連続的に行い、得られるエマルションを連続的にマイクロスフェア蓄積タンクに移す請求項1又は2記載の方法。
- 工程(a)の乳化をバッチ処理で行い、得られるエマルションをバッチ毎にマイクロスフェア蓄積タンクに移す請求項1又は2記載の方法。
- 水より低沸点の水非混和性有機溶媒がハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒である請求項4記載の方法。
- 工程(d−1)の過程において、タンク内のエマルションの液量が一定となるよう、クロスフロー濾過の濾液排出速度と乳化装置からマイクロスフェア蓄積タンクへのエマルション流入速度とが同一にされている請求項1又は2に記載の方法。
- マイクロスフェア蓄積タンクの容量が、バッチ処理用乳化装置の容量の10〜1000倍の範囲である請求項4に記載の方法。
- クロスフロー濾過装置の濾過膜の孔径が所望マイクロスフェアの平均粒子径の1/300〜1/3であり、クロスフロー濾過装置からの濾液排出速度が同装置へのエマルション導通速度の1/100〜1/3となるように調整されている請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
- クロスフロー濾過装置の濾過膜の孔径が0.01〜10μmである請求項8記載の方法。
- 乳化を内部せん断(液−液せん断)を利用した高速回転式ホモジナイザーで行う請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
- 工程(a)において、薬物含有ポリマー液に対して、水性溶液を1〜1000容量倍用いて乳化を行う請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
- 生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマーがヒドロキシ脂肪酸のポリエステルである請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
- マイクロスフェアの回収をデッドエンド型濾過、クロスフロー濾過又は遠心分離或いはこれらの組合わせで行う請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
- マイクロスフェア回収後、水性溶液から薬物を回収する請求項1記載の方法。
- 請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法でマイクロスフェアを製造し、得られたマイクロスフェアを賦形剤の水溶液に分散後、凍結乾燥処理を行い、マイクロスフェア凍結乾燥品を製造する方法。
- 乳化装置、マイクロスフェア蓄積タンク及びクロスフロー濾過装置が次のように構成された、薬物、生体内適合性かつ生体内分解性の水難溶性ポリマー及び水より低沸点の水非混和性有機溶媒を含む薬物含有ポリマー液及び水性溶液から、密閉系でマイクロスフェアを製造するための装置。
(i)薬物含有ポリマー液及び水性溶液が乳化装置に導入できるような構造を有する、
(ii)乳化装置で得られるエマルションを水非混和性有機溶媒留去機能を有する中空糸膜モジュールを備えたマイクロスフェア蓄積タンクに移すことができるように、乳化装置とマイクロスフェア蓄積タンクとが連結される、
(iii)マイクロスフェア蓄積タンクから内容物であるエマルションの一部をクロスフロー濾過装置に導通し、濾過装置通過液はマイクロスフェア蓄積タンクに戻され、一方、濾液は水性溶液として乳化装置に導かれるように、マイクロスフェア蓄積タンク、クロスフロー濾過装置及び乳化装置が連結される。 - マイクロスフェア蓄積タンクの容量が、1度に製造されるマイクロスフェア1kg当たり、10〜100リットルであり、かつ、乳化装置容量の10〜1000倍である請求項16に記載の装置。
- クロスフロー濾過装置における濾過膜の孔径が0.01〜10μmであり、クロスフロー濾過装置からの濾液排出速度とマイクロスフェア蓄積タンクへのエマルション流入速度とを調整する機能を有する請求項16又は17に記載の装置。
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