JP3765338B2 - 注射用徐放性製剤の製造法 - Google Patents

注射用徐放性製剤の製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、注射用徐放性製剤の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内分解性ポリマーを用いた薬物のマイクロスフェア型徐放性製剤については、例えば、特開昭57-118512号、特開昭57-150609号、特開昭60-100516号(EP-A 145240)、特開昭62-201816号(EP-A 190833)、特開昭63-233926号、特開昭64-42420号、特開平3-032302号、特開平4-321622号(EP-A 442671)、特開平5-70363号、特開平5-112468号、特開平5-194200号(EP-A 535937)、特開平6-145046号(EP-A 582459)、特開平6-192068号(EP-A 586238)などが開示されている。特に、特開昭60-100516号、特開昭62-201816号では水中乾燥法により高いトラップ率で、分散性の良い水溶性生理活性物質の徐放性マイクロスフェアの調製法が開示されている。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
生体内分解性ポリマーを用いた薬物のマイクロスフェア型徐放性製剤については、マイクロスフェアの粒子形の揃った微粒子を調製し、投与時の分散性、通針性、さらに市場に出荷された後使用されるまでの凝集、粒子の合一の防止が必要である。また、有機溶剤を使用する調製法においては、最終製剤中の残存溶媒が製剤の安定性、人への安全性の観点から問題となり、工程でのより完全な溶媒の除去が重要である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決するために鋭意研究の結果、マイクロスフェアを凍結乾燥する際に糖を加えて加熱することによって、残存有機溶媒をほぼ完全に低減でき、粒子の合一を防止し、分散性,通針性が良好で、保存安定性が良好な徐放性マイクロスフェアが製造できること、また、凍結乾燥時に糖を添加することにより、乾燥時の粒子の合一が抑制され、特に、マイクロスフェアのガラス転移温度以上の高温での乾燥が可能になり、水分や溶媒をほぼ完全に除去できることを見い出した。
すなわち本発明は、生理活性ペプチドを含む溶液を内水相とし、重量平均分子量約5000〜約25000のポリ乳酸を含む溶液を油相とするW/O型乳化物から得られるマイクロスフェアに、該マイクロスフェアに対し、約2〜約60重量%の糖を添加し、凍結乾燥し、ついでマイクロスフェアのガラス転移温度から該ガラス転移温度より約20℃高い温度の範囲で約24〜約120時間加熱することを特徴とする注射用徐放性製剤の製造法に関する。
【0005】
本明細書中、アミノ酸,保護基等に関し、略号で表示する場合、IUPAC−IUB コミッション・オン・バイオケミカル・ノーメンクレーチュアー(Commission on Biochemical Nomenclature)による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものとし、また、アミノ酸に関し光学異性体がありうる場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
また、本明細書中で使用される略号は次のような意味を示す。
NAcD2Nal :N-アセチル-D-3-(2-ナフチル)アラニル
D4ClPhe :D-3-(4-クロロフェニル)アラニル
D3Pal :D-3-(3-ピリジル)アラニル
NMeTyr :N-メチルチロシル
DLys(Nic):D-(イプシロン-N-ニコチノイル)リシル
Lys(Nisp):(イプシロン-N-イソプロピル)リシル
DhArg(Et2):D-(N,N'-ジエチル)ホモアルギニル
【0006】
生理活性ペプチドとしては、2個以上のアミノ酸によって構成されるもので、分子量約200〜約80,000のものが好ましい。生理活性ペプチドは、好ましくはLH−RH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)アゴニストまたはLH−RHアンタゴニストである。
LH−RHアゴニストとしては、例えば
式: (Pyr)Glu-R1-Trp-Ser-R2-R3-R4-Arg-Pro-R5 (I)
〔式中、R1はHis,Tyr,Trpまたはp-NH2-Phe;R2はTyrまたはPhe;R3はGlyまたはD型のアミノ酸残基;R4はLeu,IleまたはNle;R5はGly-NH-R6(R6は水素原子または水酸基を有しまたは有しないアルキル基)またはNH-R7(R7は水素原子、アミノまたは水酸基を有しまたは有しないアルキル基、またはウレイド(-NH-CO-NH2))を示す〕で表されるペプチドまたはその塩が挙げられる。
【0007】
上記式(I)中、R3におけるD型のアミノ酸残基としては、例えば炭素数が9までのα-D-アミノ酸(例、D-Leu,Ile,Nle,Val,Nval,Abu,Phe,Phg,Ser,Thr,Met,Ala,Trp,α−Aibu)などが挙げられ、それらは適宜置換基(例、tert-ブチル、tert-ブトキシ、tert-ブトキシカルボニル、メチル、ジメチル、トリメチル、2-ナフチル、インドリル-3-イル、2-メチルインドリル、ベンジル-イミダゾ-2-イル等)を有していてもよい。
式(I)中、R6またはR7におけるアルキル基としては、例えばC1-4アルキル基が好ましく、その例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルが挙げられる。
また、式(I)で表されるペプチド〔以下、ペプチド(I)と略記することがある〕の塩としては、例えば酸塩(例、炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩等),金属錯体化合物(例、銅錯体、亜鉛錯体等)が挙げられる。
ペプチド(I)またはその塩は、例えば米国特許第3,853,837号,同第4,008,209号,同第3,972,859号,英国特許第1,423,083号,プロシーデイングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)第78巻,第6509〜6512頁(1981年)等に記載の方法あるいはこれに準ずる方法により製造することができる。
【0008】
ペプチド(I)は、好ましくは下記(a)〜(j)である。
(a)リュープロレリン〔Leuprorelin、式(I)においてR1=His,R2=Tyr,R3=D-Leu,R4=Leu,R5=NHCH2-CH3であるペプチド〕;(b)ゴナドレリン(Gonadrelin)
【化1】
Figure 0003765338
〔ドイツ特許第2213737号〕;(c)ブセレリン(Buserelin)
【化2】
Figure 0003765338
〔米国特許第4024248号、ドイツ特許第2438352号、特開昭51-41359号〕;(d)トリプトレリン(Triptorelin)
【化3】
Figure 0003765338
〔米国特許第4010125号、特開昭52-31073号〕;(e)ゴセレリン(Goserelin)
【化4】
Figure 0003765338
〔米国特許第4100274号、特開昭52-136172号〕;(f)ナファレリン(Nafarelin)
【化5】
Figure 0003765338
〔米国特許第4234571号、特開昭55-164663号、特開昭63-264498号、特開昭64-25794号〕;(g)ヒストレリン(Histrelin)
【化6】
Figure 0003765338
;(h)デスロレリン(Deslorelin)
【化7】
Figure 0003765338
〔米国特許第4569967号、米国特許第4218439号〕;(i)メテレリン(Meterelin)
【化8】
Figure 0003765338
〔WO9118016〕;(j)レシレリン(Lecirelin)
【化9】
Figure 0003765338
〔ベルギー特許第897455号、特開昭59-59654号〕等が挙げられる。
上記した式(c)〜(j)において、式(I)のR3に相当するアミノ酸は、D−体である。
ペプチド(I)またはその塩は、特に好ましくはリュープロレリンまたは酢酸リュープロレリンである。ここにおいて、酢酸リュープロレリンとは、リュープロレリンの酢酸塩である。
【0009】
LH−RHアンタゴニストとしては、例えば米国特許第4,086,219号,同第4,124,577号,同第4,253,997号,同第4,317,815号で開示されたもの、あるいは式
【化10】
Figure 0003765338
〔式中、Xは水素またはテトラヒドロフリルカルボキサミドを、Qは水素またはメチルを、AはニコチノイルまたはN,N’−ジエチルアミジノを、BはイソプロピルまたはN,N’−ジエチルアミジノを示す〕で表されるペプチド〔以下、ペプチド(II)と略記することがある〕またはその塩が挙げられる。
式(II)において、Xは好ましくはテトラヒドロフリルカルボキサミド、さらに好ましくは(2S)−テトラヒドロフリルカルボキサミドである。また、Aは好ましくはニコチノイルである。Bは好ましくはイソプロピルである。
また、ペプチド(II)が1種以上の不斉炭素原子を有する場合、2種以上の光学異性体が存在する。このような光学異性体およびこれらの混合物も本発明に含まれる。
【0010】
ペプチド(II)またはその塩は、自体公知の方法により製造できる。このような方法としては、例えば特開平3-101695、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry)、35巻、3942頁、(1992)などに記載の方法あるいはこれに類する方法が挙げられる。
ペプチド(II)の塩としては、好ましくは、薬理学的に許容される塩が用いられる。このような塩としては、無機酸(例、塩酸,硫酸,硝酸など),有機酸(例、炭酸,重炭酸,コハク酸,酢酸,プロピオン酸,トリフルオロ酢酸など)などとの塩が挙げられる。ペプチド(II)の塩は、さらに好ましくは有機酸(例、炭酸,重炭酸,コハク酸,酢酸,プロピオン酸,トリフルオロ酢酸など)との塩である。ペプチド(II)の塩は、特に好ましくは酢酸との塩である。これらの塩は、モノないしトリ塩のいずれであってもよい。
【0011】
ペプチド(II)またはその塩の好ましい例を以下に示す。
【化11】
Figure 0003765338
〔式中、mは1ないし3の実数を示す〕
(3)NAcD2Nal-D4ClPhe-D3Pal-Ser-Tyr-DhArg(Et2)-Leu-hArg(Et2)-Pro-
DAlaNH2
(4)NAcD2Nal-D4ClPhe-D3Pal-Ser-Tyr-DhArg(Et2)-Leu-hArg(Et2)-Pro-
DAlaNH2・n(CH3COOH)
〔式中、nは1ないし3の実数を示す〕
ペプチド(II)またはその塩は、特に好ましくは上記(1),(2)である。
【0012】
生理活性ペプチドとして、さらに例えばインスリン,ソマトスタチン,ソマトスタチン誘導体(サンドスタチン,米国特許第4,087,390号,同第4,093,574号,同第4,100,117号,同第4,253,998号参照),成長ホルモン,プロラクチン,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),ACTH誘導体(エビラタイドなど),メラノサイト刺激ホルモン(MSH),甲状腺ホルモン放出ホルモン〔(Pyr)Glu-His-ProNH2 の構造式で表わされ、以下TRHと略記することもある〕その塩およびその誘導体(特開昭50-121273号,特開昭52-116465号公報参照),甲状腺刺激ホルモン(TSH),黄体形成ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH),バソプレシン,バソプレシン誘導体{デスモプレシン〔日本内分泌学会雑誌,第54巻第5号第676〜691頁(1978)〕参照},オキシトシン,カルシトニン,副甲状腺ホルモン(PTH),グルカゴン,ガストリン,セクレチン,パンクレオザイミン,コレシストキニン,アンジオテンシン,ヒト胎盤ラクトーゲン,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG),エンケファリン,エンケファリン誘導体〔米国特許第4,277,394号,ヨーロッパ特許出願公開第31567号公報参照〕,エンドルフイン,キョウトルフイン,インターフェロン類(例、α型,β型,γ型等),インターロイキン類(例、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12等),タフトシン,サイモポイエチン,サイモシン,サイモスチムリン,胸腺液性因子(THF),血中胸腺因子(FTS)およびその誘導体(米国特許第4,229,438号参照),およびその他の胸腺因子〔医学のあゆみ,第125巻,第10号,835-843頁(1983年)〕,腫瘍壊死因子(TNF),コロニー誘発因子(CSF,GCSF,GMCSF,MCSF等),モチリン,ダイノルフイン,ボムベシン,ニューロテンシン,セルレイン,ブラディキニン,ウロキナーゼ,アスパラギナーゼ,カリクレイン,サブスタンスP,インスリン様成長因子(IGF−I,IGF−II),神経成長因子(NGF),細胞増殖因子(EGF,TGF−α,TGF−β,PDGF,酸性FGF,塩基性FGF等),骨形成因子(BMP),神経栄養因子(NT−3,NT−4,CNTF,GDNF,BDNF等),血液凝固因子の第VIII因子,第IX因子,塩化リゾチーム,ポリミキシンB,コリスチン,グラミシジン,バシトラシンおよびエリスロポエチン(EPO),トロンボポエチン(TPO),エンドセリン拮抗作用を有するペプチド類(ヨーロッパ特許公開第436189号,同第457195号,同第496452号,特開平3-94692号,同3-130299号公報参照)などが挙げられる。
【0013】
生理活性ペプチドはそれ自身であっても、薬理学的に許容される塩(例えば、ペプチドがアミノ基等の塩基性基を有する場合、無機酸、例えば塩酸,硫酸,硝酸や有機酸、例えば炭酸,コハク酸等との塩;ペプチドがカルボキシ基等の酸性基を有する場合、無機塩基、例えばナトリウム,カリウム等のアルカリ金属や有機塩基化合物、例えばトリエチルアミン等の有機アミン類、例えばアルギニン等の塩基性アミノ酸類との塩)であってもよい。
【0014】
ポリ乳酸としては、L−体、D−体およびこれらの混合物の何れでもよいが、D−体/L−体(モル%)が約75/25ないし約20/80の範囲のものが好ましい。さらに好ましくは、D−体/L−体(モル%)が約60/40ないし約25/75の範囲のポリ乳酸である。特に好ましくは、D−体/L−体(モル%)が約55/45ないし約25/75の範囲のポリ乳酸である。
該ポリ乳酸の重量平均分子量は、約5,000から約25,000、好ましくは約10,000から約20,000である。また、ポリ乳酸の分散度は、好ましくは約1.2から約4.0、さらに好ましくは約1.5から約3.5である。
ポリ乳酸は、乳酸の二量体であるラクチッドを開環重合する方法、及び乳酸を脱水重縮合する方法等の公知方法またはそれに準じる方法により製造することができる。本発明で使用する比較的低分子量のポリ乳酸を得るためには、乳酸を直接脱水重縮合する方法により製造するのが好ましい。このような方法は、例えば特開昭61-28521に記載されている方法あるいはこれに類似の方法にしたがって行われる。
【0015】
ポリ乳酸に関し、重量平均分子量および分散度は、重量平均分子量が120,000、52,000、22,000、9,200、5,050、2,950、1,050、580、162の9種類のポリスチレンを基準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の分子量および算出した分散度である。測定は、GPCカラムKF804Lx2(昭和電工製)、RI モニターL−3300(日立製作所製)を使用し、移動相としてクロロホルムを用いた。
【0016】
本発明のマイクロスフェアは、生理活性ペプチド(以下、薬物と略記することもある)とポリ乳酸とを含有する微粒子(マイクロスフェア)であればよく、その具体例としては、例えば1個の粒子中に1個の薬物コアーを含有するマイクロカプセル、1個の粒子中に多数の薬物コアーを含有する多核マイクロカプセル、または分子状で薬物が固溶体としてポリ乳酸に溶解あるいは分散しているような微粒子等が挙げられる。
本発明のマイクロスフェアは、生理活性ペプチドを含む溶液を内水相とし、重量平均分子量約5000〜約25000のポリ乳酸を含む溶液を油相とするW/O型乳化物から、公知のマイクロカプセル化方法、例えば水中乾燥法、相分離法あるいは噴霧乾燥法などによりマイクロカプセル化する方法またはこれに準ずる方法により製造することができる。
【0017】
上記W/O型乳化物は、例えば以下のようにして製造される。
まず、水に薬物を溶解または分散する。水溶液または水分散液中の薬物の濃度は0.001〜90%(w/w)、好ましくは0.01〜80%(w/w)に調整するのがよい。これに必要であれば、マイクロスフェアへの薬物の取り込み率を向上させることを目的として、ゼラチン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ポリビニールアルコールあるいは塩基性アミノ酸(例、アルギニン、ヒスチジン、リジンなど)などの薬物保持物質を加えて溶解もしくは懸濁し、内水相とする。薬物保持物質の添加量は、薬物に対し通常0.01〜100重量倍、より好ましくは0.05〜50重量倍である。これらの薬物保持物質は、あらかじめ任意の濃度に薬物と共に溶解し除菌フィルターを用いて除菌濾過した後、凍結乾燥して保存し調製時に溶解して用いることもできる。
【0018】
内水相には、薬物の安定性、溶解性を保つためのpH調整剤として、炭酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リン酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アルギニン、リジンおよびそれらの塩などを添加してもよい。また、さらに薬物の安定化剤として、アルブミン、ゼラチン、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、デキストリン、亜硫酸水素ナトリウム、ポリオール化合物(例、ポリエチレングリコールなど)、パラオキシ安息香酸エステル類(例、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、ベンジルアルコール、クロロブタノールなどを添加してもよい。内水相は、溶液、懸濁液または分散液のいずれであってもよく、本明細書中、これらを単に溶液を略記することがある。
このようにして得られた内水相をポリ乳酸を含む溶液(油相)中に加え、ついで乳化操作を行い、W/O型エマルションを調製する。該乳化操作は、公知の分散法、例えば断続振とう法、プロペラ型攪拌機あるいはタービン型攪拌機などの攪拌機による方法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法などにより行われる。
【0019】
上記ポリ乳酸を含む溶液(油相)は、該ポリ乳酸を有機溶媒に溶解することにより製造される。該有機溶媒としては、沸点が約120℃以下で、かつ水と混和しない性質のもので、ポリ乳酸を溶解するものであればよく、例えばハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素など)、脂肪酸エステル(例、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、エーテル類(例、エチルエーテル、イソプロピルエーテルなど)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などが挙げられ、なかでもジクロロメタンが好ましい。これらの有機溶媒は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
このポリ乳酸の有機溶媒溶液は、次の乳化工程に移行する前に一般にフィルターにて除菌濾過して用いる。また、ポリ乳酸の安定性に依存するが、このポリ乳酸の有機溶媒溶液は、室温ないし冷所で密閉容器の中で保存してもよい。
ポリ乳酸の有機溶媒溶液中の濃度は、該ポリ乳酸の種類、分子量、有機溶媒の種類により異なるが、通常0.01〜90%(w/w)、好ましくは0.1〜80%(w/w)である。未溶解物がないように溶解するのがよい。
【0020】
薬物の水溶液または水分散液(内水相)とポリ乳酸を含む溶液(油相)との混合割合は、内水相1重量部当たり油相が0.1〜1000重量部、好ましくは1〜100重量部である。
また、ポリ乳酸に対する薬物の割合は、薬物の種類、所望の薬理効果および効果の持続期間などにより異なるが、例えば約0.01〜約50重量%、好ましくは約0.5〜約40重量%、特に好ましくは約0.1〜約30重量%であるように混合するのがよい。
【0021】
ついで、このようにして調製されたW/O型エマルションを、該エマルションから溶媒を除去することによりマイクロスフェアを得る工程、すなわちマイクロカプセル化工程に付す。
W/O型エマルションを、水中乾燥法によりマイクロカプセル化する場合は、W/O型エマルションをさらに第3相の水相中に加え、W/O/W型の3相エマルションを形成させた後、油相中の溶媒を蒸発させ、マイクロスフェアを調製する。
上記外相の水相中に乳化剤を加えてもよく、その例としては、一般に安定なO/W型エマルションを形成するものであればいずれでもよいが、例えばアニオン界面活性剤(例、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、非イオン性界面活性剤(例、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル[Tween 80、Tween 60(アトラスパウダー社)]、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体[HCO-60、HCO-70(日光ケミカルズ)]など)、あるいはポリビニルアルコール、ポリビニールピロリドン、ゼラチンなどが挙げられる。これらの乳化剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。乳化剤の使用の際の濃度は、約0.01から20%の範囲から適宜選択でき、より好ましくは約0.05から10%の範囲で用いられる。
油相の溶媒の蒸発には、通常用いられる方法が採用される。該方法としては、プロペラ型攪拌機、あるいはマグネチックスターラーなどで攪拌しながら常圧もしくは徐々に減圧して溶媒を蒸発させる方法、ロータリーエバポレーターなどを用いて、真空度、温度を調節しながら溶媒を蒸発させる方法等が挙げられる。
このようにして得られるマイクロスフェアは、遠心分離あるいは濾過して分取した後、蒸留水で数回繰り返し洗浄し、マイクロスフェアの表面に付着している遊離の薬物、薬物保持物質、乳化剤等を除去する。
【0022】
また、薬物が、一種の水不溶性溶媒(例、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、酢酸エチル、シクロヘキサン)と少なくとも一種の水混和性の有機溶媒(例、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル)よりなる油相に溶解する場合;ポリ乳酸と前記水不溶性溶媒の溶液よりなる油相に溶解する場合;あるいは前記水不溶性溶媒に少なくとも一種のグリセリン脂肪酸エステルまたはプロピレングリコール脂肪酸エステルを添加してなる油相に溶解する場合;これらの油相を前記のW/O/Wエマルションを経た水中乾燥法に用いた水相に分散し、O/Wエマルションとして水中乾燥法に付すことによりマイクロスフェアを得ることができる。
【0023】
相分離法によりマイクロスフェアを製造する場合は、上記したW/O型エマルションに攪拌下、コアセルベーション剤を徐々に加え、ポリ乳酸を析出、固化させる。コアセルベーション剤としては、ポリ乳酸の溶剤に混和する高分子系、鉱物油系または植物油系の化合物で、ポリ乳酸を溶解しないものであればよく、例えばシリコン油、ゴマ油、大豆油、コーン油、綿実油、ココナツ油、アマニ油、鉱物油、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどが挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。
このようにして得られたマイクロスフェアは、濾過して分取した後、ヘキサン、ヘプタン等により繰り返し洗浄し、加温してコアセルベーション剤を除去する。
また、所望により、上記した水中乾燥法の場合と同様にして、マイクロスフェアを蒸留水で数回繰り返し洗浄し、マイクロスフェアの表面に付着している遊離の薬物、薬物保持物質等を除去する。
【0024】
噴霧乾燥法によりマイクロスフェアを製造する場合には、上記したW/Oエマルションを、ノズルを用いてスプレードライヤー装置(噴霧乾燥機)の乾燥室内へ噴霧し、極めて短時間に微粒化液滴内の有機溶媒および水を揮発させ、微粒状のマイクロスフェアを調製する。
所望により、上記した水中乾燥法の場合と同様にして、このようにして得られたマイクロスフェアを蒸留水で数回繰り返し洗浄し、マイクロスフェアの表面に付着している遊離の薬物、薬物保持物質等を除去する。
本発明におけるマイクロスフェアの粒子径は、懸濁注射剤として使用する場合に、その分散性、通針性を満足させる範囲であればよく、例えば平均径として約1から約300μm、好ましくは約5から約100μmである。
【0025】
本発明の注射用徐放性製剤は、このようにして得られたマイクロスフェアに、該マイクロスフェアに対し、約2〜約60重量%の糖を添加し、凍結乾燥し、ついでマイクロスフェアのガラス転移温度から該ガラス転移温度より約20℃高い温度の範囲で約24〜約120時間加熱することにより製造される。
本発明に用いられる糖としては、例えばD−マンニトール、アルギン酸ナトリウム、果糖、デキストラン、デキストリン、白糖、D−ソルビトール、ラクトース、ブドウ糖、マルトース、デンプン類、あるいはトレハロースなどが挙げられる。これらの糖は、単独で用いても適宜混合して用いてもよい。これらの中で、凍結乾燥が容易で毒性が少ないD−マンニトールが特に好ましい。
糖の添加方法は、特に限定されないが、例えば糖の水溶液にマイクロスフェアをよく分散する方法、マイクロスフェアに糖を単に添加した後、混合機などを用いて混合する方法等が挙げられる。
糖の添加量は、好ましくはマイクロスフェアに対し、約5〜約40重量%である。なお、マイクロスフェアが既に糖と混合されている場合、例えば水中乾燥あるいは噴霧乾燥時またはその前に糖が用いられ、それが混合されている場合などでは、その量を考慮して合計量が前記範囲内になるように加えればよい。
凍結乾燥は、公知の方法にしたがって行えばよい。
【0026】
加熱温度は、好ましくはマイクロスフェアのガラス転移温度から該ガラス転移温度より約10℃高い温度の範囲である。加熱温度は、通常品温が約30〜約60℃の温度範囲となるように選択される。
ここで、ガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)を用い、加温速度を毎分10または20℃で昇温した際に得られる中間点ガラス転移温度を言う。
加熱時間は、さらに好ましくは約24〜約72時間である。
加熱温度、加熱時間、乾燥の程度、加熱方法は、マイクロスフェアの粒子径、安定性、ガラス転移温度、融点、融着、変形のしやすさ、中に含有される薬物の安定性、それに添加した糖の種類および量、マイクロスフェアの分散性の程度によって決定される。
このように加熱することにより、マイクロスフェア中の水分および有機溶媒の除去をより完全に行なうことができる。
【0027】
本発明の注射用徐放性製剤に含まれる薬物の量は、該薬物の種類、投与剤形、対象とする疾患などにより変化し得るが、通常は1製剤当たり約0.001mgから約5g、好ましくは約0.01mgから約2gである。
本発明の注射用徐放性製剤としては、マイクロスフェアに糖を添加し、凍結乾燥し、加熱したもの(以下、マイクロスフェア末と略記することもある)をそのまま用いてもよいし、さらにマイクロスフェア末を水性あるいは油性の分散媒に用時分散して用いてもよい。
水性の分散媒としては、例えば蒸留水に等張化剤(例、塩化ナトリウム、ブドウ糖、D−マンニトール、ソルビトール、グリセリン)、分散剤(例、Tween 80、HCO-50、HCO-60(日光ケミカルズ製)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム)、保存剤(例、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、フェノール)、無痛化剤(例、ブドウ糖、グルコン酸カルシウム、塩酸プロカイン)などを溶解して得られる溶液が用いられる。
油性の分散媒としては、オリーブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、大豆油、コーン油、中鎖脂肪酸グリセリドなどが用いられる。
本発明の注射用徐放性製剤は、プレフィルドシリンジのチャンバー内に充填してもよい。また、上記した分散媒とマイクロスフェア末とを、2つのチャンバーを有するプレフィルドシリンジ、すなわちダブルチャンバープレフィルドシリンジ(DPS)内の異なるチャンバーに別々に充填してもよい。
【0028】
本発明の注射用徐放性製剤は、低毒性であり安全に用いられる。
本発明の注射用徐放性製剤の投与量は、主薬である薬物の種類と含量、剤形、薬物放出の持続期間、投与対象動物(例、マウス、ラット、ウマ、ウシ、人などの温血哺乳動物)、投与目的により異なるが、該主薬の有効量であればよい。例えば、成人(体重50kg)1人に1回あたりの投与量として、マイクロスフェアとしての重量が約1mgないし約10g、好ましくは約10mgないし約2gの範囲から、適宜選択することができる。なお、上記した分散媒を用いる場合、該分散媒の容量は、約0.5ないし約3mlの範囲から適宜選択することができる。
本発明の注射用徐放性製剤は、投与対象動物に対し、例えば筋肉内投与ないし皮下投与することができる。
本発明において、生理活性ペプチドが例えばペプチド(I)、(II)またはそれらの塩である場合、例えば前立腺癌、前立腺肥大症、乳癌、子宮内膜症、子宮筋腫、中枢性思春期早発症等のホルモン依存性疾患の予防・治療剤または避妊薬として有用な注射用徐放性製剤が得られる。
とりわけ、本発明の注射用徐放性製剤において、生理活性ペプチドがペプチド(I)またはその塩であり、該製剤を上記疾患の予防・治療剤として用いる場合、該製剤の成人(体重50kg)1人に対する1回あたりの投与量は、ペプチド(I)またはその塩として、好ましくは約1ないし約100mg、さらに好ましくは約1ないし約10mgである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に参考例、実施例および実験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
なお、%は、特記しない限り重量%を示す。
【実施例】
参考例1
200mlの蒸留水を80℃に加温し、ゼラチン3.4gを溶解した。これに酢酸リュープロレリン21.7gを加え濾過した後、凍結乾燥した。この乾燥末21gを蒸留水18mlに加温しながら溶解した。これに別に溶解、濾過した乳酸−グリコール酸共重合体(以下、PLGAと略記)〔乳酸/グリコール酸=75/25(モル%)、重量平均分子量:14000〕(143.3g)を含むジクロロメタン溶液383.3gを添加し、オートミニミキサーで8分間攪拌乳化(回転数:6000rpm)した後、18℃に調整した。これを予め溶解、濾過し同じ温度に調整した0.1%ポリビニールアルコール(PVA)水溶液30Lに加えて再び乳化した。この場合、ホモミックラインフロー(特殊機化)を用い、ミキサーの回転数は約7000rpmで乳化した。このW/O/Wエマルションを軽く攪拌しながら約3時間ほど脱溶媒した(水中乾燥法)。
得られたマイクロスフェアを74μmのフルイを通して荒い粒子を除去した後、濾過あるいは遠心分離によって分離した。これを蒸留水で洗浄し、遊離の薬物、PVAを除去した後、D−マンニトール23.2gを溶解した356mlの水溶液に分散して250μmおよび90μmのフルイで篩過した。これをトレーに広げて分注し、凍結乾燥した。乾燥時の棚温度は徐々に上昇させ、最終52℃で68時間乾燥させた。これを篩過粉砕してマイクロスフェア末を得た。この操作で14%D−マンニトール含有のマイクロスフェア末が160g得られた。
【0030】
参考例2
4gの化合物Aを4mlの蒸留水に溶解した。これに別に溶解、濾過したPLGA〔乳酸/グリコール酸=75/25(モル%)、重量平均分子量:11000〕(30.4g)を含むジクロロメタン溶液82.6gを添加し、オートミニミキサーで5分間攪拌乳化(回転数:約6000rpm)した後、17℃に調整した。これを予め溶解、濾過し同じ温度に調整した0.1%ポリビニールアルコール(PVA)水溶液6.8Lに加えて、参考例1と同様にして乳化、軽く攪拌しながら約3時間ほど脱溶媒した(水中乾燥法)。
得られたマイクロスフェアを参考例1と同様にして分取し、少量の水で再分散しD−マンニトール9gを溶解し、篩過後、凍結乾燥した。乾燥時の棚温度は徐々に上昇させ、最終43℃で68時間乾燥させた。これを篩過粉砕してマイクロスフェア末を得た。この操作で30%D−マンニトール含有のマイクロスフェア末約35gが得られた。
【0031】
参考例3
プロチレリン(TRH)遊離体7.5gを13mlの蒸留水に溶解した。これに別にPLGA〔乳酸/グリコール酸=75/25(モル%)、重量平均分子量:14000〕(100g)を125mlのジクロロメタンに溶解、濾過した溶液を添加し、オートミニミキサーで5分間攪拌乳化(回転数:5000〜6000rpm)した後、18℃に調整した。これを予め溶解、濾過し同じ温度に調整した0.1%ポリビニールアルコール(PVA)水溶液25Lに加えて、参考例1と同様にして乳化、軽く攪拌しながら約3時間ほど脱溶媒した(水中乾燥法)。
得られたマイクロスフェアを参考例1と同様にして分取し、少量の水で再分散しD−マンニトール15.2gを溶解し、篩過後、凍結乾燥した。乾燥時の棚温度は徐々に上昇させ、最終50℃で91時間乾燥させた。これを篩過粉砕してマイクロスフェア末を得た。この操作で15%D−マンニトール含有のマイクロスフェア末約100gが得られた。
【0032】
参考例4
メソトレキセート60mgおよびアルギニン900mgを3mlの蒸留水に溶解した。これに別にPLGA〔乳酸/グリコール酸=75/25(モル%)、重量平均分子量:14000〕(30g)を48gのジクロロメタンに溶解、濾過した溶液を添加し、オートミニミキサーで6分間攪拌乳化(回転数:約6000rpm)した後、18℃に調整した。これを予め溶解、濾過し同じ温度に調整した0.1%ポリビニールアルコール(PVA)水溶液3Lに加えて、参考例1と同様にして乳化、軽く攪拌しながら約3時間ほど脱溶媒した(水中乾燥法)。
得られたマイクロスフェアを参考例1と同様にして分取し、少量の水で再分散しD−マンニトール6.2gを溶解し、篩過後、凍結乾燥した。乾燥時の棚温度は徐々に上昇させ、最終50℃で48時間乾燥させた。これを篩過粉砕してマイクロスフェア末を得た。この操作で20%D−マンニトール含有のマイクロスフェア末約30gが得られた。
【0033】
参考例5
実施例1と同様にして、酢酸リュープロレリン(11.25mg)、ポリ乳酸(重量平均分子量:13,000〜18,000)(99.3mg)およびマンニトール(19.45mg)を含有するマイクロスフェアを製造し、得られるマイクロスフェアをガラスバイアル(容積:9ml)に充填する。本工程は、無菌化した原料および材料を用い、無菌的に行われる。
一方、カルボキシメチルセルロースナトリウム(10mg)、マンニトール(100mg)、ポリソルベート80(2mg)を適量の注射用蒸留水に溶解し、必要により、酢酸でpH5.0〜7.5として、通常の注射剤の製造法にしたがって、分散媒(全量2ml)を製造する。得られる分散媒を、ガラスアンプル(容積:2ml)に充填する。得られる分散媒は、蒸気によって滅菌し、製品とする。
上記したマイクロスフェアおよび分散媒を用い、分散媒2mlまたは1ml中に酢酸リュープロレリン11.25mgを含有する注射剤を製造する。
参考例6
実施例1と同様にして、酢酸リュープロレリン(22.5mg)、ポリ乳酸(重量平均分子量:13,000〜18,000)(198.6mg)およびマンニトール(38.9mg)を含有するマイクロスフェアを製造し、得られるマイクロスフェアをガラスバイアル(容積:9ml)に充填する。本工程は、無菌化した原料および材料を用い、無菌的に行われる。
一方、参考例5と同様にして、分散媒(全量2ml)を製造する。得られる分散媒を、ガラスアンプル(容積:2ml)に充填する。得られる分散媒は、蒸気によって滅菌し、製品とする。
上記したマイクロスフェアおよび分散媒を用い、分散媒1.5ml中に酢酸リュープロレリン11.25mg、22.5mgまたは30mgを含有する注射剤を製造する。
【0034】
実施例1
6.7mlの蒸留水に酢酸リュープロレリン5.8gを溶解した。これに別に溶解、濾過したポリ乳酸(重量平均分子量:15000)(51.6g)を含むジクロロメタン溶液138gを添加し、オートミニミキサーで9分間攪拌乳化(回転数:約6000rpm)した後、15℃に調整した。これを予め溶解、濾過し同じ温度に調整した0.1%ポリビニールアルコール(PVA)水溶液13.5Lに加えて、参考例1と同様にして乳化、軽く攪拌しながら約3時間ほど脱溶媒した(水中乾燥法)。
得られたマイクロスフェアを参考例1と同様にして分取し、少量の水で再分散しD−マンニトール8.7gを溶解し、篩過後、凍結乾燥した。乾燥時の棚温度は徐々に上昇させ、最終52℃で69時間乾燥させた。これを篩過粉砕してマイクロスフェア末を得た。この操作で15%D−マンニトール含有のマイクロスフェア末58gが得られた。
以下に、糖としてD−マンニトールを選択し、マイクロスフェアの粒子径、分散性の経時変化におよぼす添加濃度の影響を検討した。
【0035】
実験例1
リュープロレリンを9.1%含有するマイクロスフェアを参考例1の方法に従って調製した。すなわち、リュープロレリン400mg、ゼラチン565mgを蒸留水0.5mlに溶解し、これにPLGA〔乳酸/グリコール酸=75/25(モル%)、重量平均分子量:14000〕(4g)をジクロロメタン5mlに溶解した溶液に加えて乳化しW/Oエマルションを得た。これをさらに0.25%のPVA溶液1L中に加えて乳化しW/O/Wエマルションとし、軽く攪拌して3時間水中乾燥した。
これを蒸留水によって洗浄した後、一定量のD−マンニトール水溶液を加えて分散し凍結乾燥した。その後、40℃で1日間、50℃で3日間減圧乾燥した後、420μmのフルイで篩過して軽く粉砕した。それぞれの粉末についてマイクロスフェア末として100mgをバイアルに充填しよく乾燥したゴム栓で、40℃の恒温室で静置保存した。その後、経時的に取り出し、4℃で保存したものと同時にCoulter Multisizer(コールター社)で粒度分布の変化を測定した。粉末は5ないし10%となるように分散液に分散し、19.44μmのポリスチレン粒子を標準物質として重量平均粒子径を求めた。
測定して得られたそれぞれの粒子径(μm)の結果を下表に示す。
【表1】
Figure 0003765338
4℃で4週間保存したものを初期値としたが、これはほぼ50℃での加温乾燥後の粒子径を表していると考えられる。すなわち、製造時の加熱乾燥工程での熱による変化は7.5%のD−マンニトール添加によって明らかに抑制され、約10μmの粒子径の増大を抑制できた。この効果は15%添加によりさらに強く生じたが、7.5%添加時と大きくは変わらなかった。
40℃での保存による変化はいずれも粒子径の増大が見られ、D−マンニトールを添加しない場合、14.4μmもの粒子径の増大が見られたが、7.5%および15%を添加した場合それぞれ7.1μmないし5.8μmの増大に抑制された。この乾燥時の加温温度はマイクロスフェアのガラス転移温度より高い温度であるがD−マンニトールを添加することによって粒子の凝集を抑え、また40℃における経時的粒子の凝集を防止できたことが明らかになった。
【0036】
実験例2
参考例2で示したような方法で調製された化合物AのマイクロスフェアでD−マンニトール含量が15.0%,27.1%,31.4%のものにつき、製造直後および40℃,75%RH(相対湿度),3週間保存したものにつき外観および粒子径を測定した。
結果を下表に示す。
【表2】
Figure 0003765338
*1 −:凝集なし、±:僅かに凝集、+:凝集、++:激しく凝集
*2 アイソトン中で激しく手撹拌した(超音波は使用していない)
ガラス転移温度以上の43℃の最終温度で凍結乾燥したマイクロスフェアについての結果では、D−マンニトールが15%以上であればいずれも20から21μmの微粒子が安定して得られた。これらのマイクロスフェアの保存安定性では、15%では40℃、3週後に25.6μmの粒子径の増大が見られたが、添加量を増やすと共にこの凝集は抑制され31.4%の添加では僅か4.4μmの増大に抑制できた。
これらの実験によって、糖の添加により、調製時および保存時のマイクロスフェアの凝集が顕著に抑制され、予想外に良好な分散性および分散安定性を有するマイクロスフェアが得られることが明らかになった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の製造法によれば、凍結乾燥時のマイクロスフェア粒子の凝集、合一が抑制され、マイクロスフェアのガラス転移温度以上での加熱が可能であるので、マイクロスフェア中の水分や有機溶媒をほぼ完全に除去することができる。
また、本発明の製造法によれば、薬物保持物質を用いなくとも、薬物の取り込み率および薬物含量が十分に高い注射用徐放性製剤が得られる。
さらに、ポリ乳酸、糖の添加、マイクロスフェアのガラス転移温度以上での加熱の組み合わせにより、長期間(例えば3カ月以上)にわたり、薬物をほぼ0次で放出することが可能な注射用徐放性製剤が得られる。
本発明の注射用徐放性製剤は、マイクロスフェア粒子の凝集が抑制され、室温で長期間安定に保存することができる。

Claims (9)


  1. (Pyr)Glu-R -Trp-Ser-R -R -R -Arg-Pro-R (I)
    〔式中、 R His Tyr Trp または p-NH -Phe R Tyr または Phe R Gly またはD型のアミノ酸残基; R Leu Ile または Nle R Gly-NH-R R は水素原子または水酸基を有しまたは有しないアルキル基)または NH-R R は水素原子、アミノまたは水酸基を有しまたは有しないアルキル基、またはウレイド( -NH-CO-NH ))を示す〕で表されるペプチドまたはその塩を含む溶液を内水相とし、重量平均分子量5000〜25000のポリ乳酸を含む溶液を油相とするW/O型乳化物から得られるマイクロスフェアに、該マイクロスフェアに対し、2〜60重量%の糖を添加し、凍結乾燥し、ついでマイクロスフェアのガラス転移温度から該ガラス転移温度より20℃高い温度の範囲で24〜120時間加熱することを特徴とする注射用徐放性製剤の製造法。
  2. 式(I)で表されるペプチドまたはその塩が酢酸リュープロレリンである請求項記載の製造法。
  3. ポリ乳酸の重量平均分子量が10000〜20000である請求項1記載の製造法。
  4. ポリ乳酸に対する生理活性ペプチドの割合が0.1〜30重量%である請求項1記載の製造法。
  5. マイクロスフェアが水中乾燥法によって得られる請求項1記載の製造法。
  6. 糖がD−マンニトール、アルギン酸ナトリウム、果糖、デキストラン、デキストリン、白糖、D−ソルビトール、ラクトース、ブドウ糖、マルトースおよびトレハロースから選ばれる1種以上である請求項1記載の製造法。
  7. 糖がD−マンニトールである請求項記載の製造法。
  8. 加熱温度がマイクロスフェアのガラス転移温度から該ガラス転移温度より10℃高い温度である請求項1記載の製造法。
  9. 加熱時間が24〜72時間である請求項1記載の製造法。
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