JP4674932B2 - 履帯ブッシュおよびその製造方法並びに製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばブルドーザのような建設機械に使用される履帯ブッシュおよびその製造方法並びに製造装置に関し、より詳しくは耐摩耗性、耐衝撃疲労性に優れた履帯ブッシュとその履帯ブッシュをより簡便な装置を用いて低コストで生産する履帯ブッシュの製造方法並びに製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建設機械等の履帯51は図23に示されるような各部品群で構成されており、とりわけ履帯ブッシュ52は、終減速装置からの回転運動を伝えるスプロケットティースと噛み合い、履帯51を回転させる機能を持つことから、内外周面においては耐摩耗性が要求されると同時に、ブッシュとしては苛酷な強度と靭性とが要求される。また、高速で走る履帯では、履帯ピン53と履帯ブッシュ52との焼き付きを防止するために、これらの隙間に潤滑油を介在させたオイル封入履帯が使用されており、この場合には、スプロケットと直接接触する外周面の耐摩耗性だけでなく、図24に示されるように、履帯ブッシュの端面のシール平坦部61とダストシール(リップシール)62とで潤滑油をシールする必要から、少なくとも前記平坦部61でのダストシール62当たり位置の範囲(外周面から肉厚tの約1/2までが摩耗後の当たり位置)が焼入れによって十分に硬化されていることが要求される。
【0003】
これらの必要特性を満足させるために、従来、この履帯ブッシュの製造に際しては、次に示されるような方法が実施されている。
▲1▼肌焼鋼に浸炭処理を施して、内外表面層に高硬度なマルテンサイトを形成し、耐摩耗性と強度の確保を図るようにしたもの(特公昭52−34806号公報参照)。
▲2▼中炭素鋼を使用して、素材調質したブッシュ素材の内外周部をそれぞれ高周波焼入れして内外表面層に高硬度なマルテンサイトを形成したり、外周面からの高周波焼入れによって深く焼入れた後に内周面から高周波焼入れして外・内周面硬化層間に焼戻しマルテンサイトからなる硬化層をV字型に形成して、耐摩耗性と強度の確保を図るようにしたもの(特公昭63−16314号公報参照)。
▲3▼中炭素鋼のブッシュ素材を一旦焼入れ処理可能な温度以上に加熱し、内周面を先行冷却した所定時間後に外周面からの冷却を止めるか、もしくは高周波加熱によって外周面を加熱しながら内周面冷却を行い、所定時間後に外周面加熱を止めて外周面冷却を行う一連の焼入れ操作によって、ブッシュの外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層を形成し、両焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層を残すようなU字型のスムーズな硬度分布を持たせ、さらに外周面部からの硬化層深さを内周面からの硬化層深さに比べてより深く形成するようにし、耐摩耗性に優れた履帯ブッシュとその安価な製造方法を提供するようにしたもの(特開平11−61264号公報、特開平11−236619号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記▲1▼の浸炭法においては、履帯ブッシュの端面部も均一に浸炭硬化されるのでオイル封入ブッシュとしての機能性は良いが、外周円筒面での耐摩耗性を高めるために浸炭硬化層を深くする必要があるため、浸炭時間が長くかかるとともに、浸炭ガスの大量使用等によるコスト面での問題がある。また、例えばブッシュの肉厚が厚くなる大型履帯ブッシュでは、強度、耐摩耗性の観点から必要硬化層深さが深くなるため、生産性の低下とコストの高騰とが問題になる。さらに、内外周表面においては浸炭加熱時間が長時間に及ぶために粒界酸化層や不完全焼入れ層が数十μm厚さで形成されるために、疲労強度や耐衝撃特性が劣化し易くなるという問題点がある。
【0005】
一方、前記▲2▼の高周波焼入れ法では、▲1▼の浸炭法に比べてコスト的な改善がなされているが、外周面と内周面からの二度の焼入れ処理が必要であり、十分な生産性の改善と低コスト化とが図られた熱処理とはなっていない。また、この高周波焼入れ法の場合、オイル封入履帯ブッシュの端面部での焼入れ部分のムラや抜けが避けられず、ブッシュ内周部への土砂の侵入を防止するためのダストシール面としての耐摩耗性の確保に問題がある。
【0006】
また、前記▲3▼の内周面を先行冷却した後に外周面を冷却する方法では、一度の焼入れ作業で耐摩耗性に優れた履帯ブッシュを極めて低コストで製造することができるという利点があるが、内周面の冷却にスプレー冷却を適用すると、通常、このスプレー冷却では、その熱伝達率を高めるためにノズル孔径の約10倍の距離に被冷却面が来るように設定されることが多く、またスプレー水の排出性が悪いために、より小内径の円筒管内周面の冷却に適用する場合には、十分な冷却性と均一性が得られないという問題点がある。とりわけ内径の小さな履帯ブッシュに適用する場合や、生産性を高める目的で2個以上の履帯ブッシュに対しその端面部同士を重ねた状態で内周面の焼入れを実施する場合に、内周面の焼入れムラが避けられず、十分な生産性向上とコスト低減とが図れないという問題点がある。
【0007】
また、特開平11−236619号公報に開示されているような、外周面からの高周波加熱によって一旦ブッシュ素材全体を焼入れ可能な温度に加熱した後に、外周面の加熱を継続しながら内周面の冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面加熱を止めてその外周面を冷却する方法では、冷却時間に比べて加熱時間が長く、かつ加熱速度を高めるほど履帯ブッシュの外周面が内周面に比べて加熱され過ぎて、焼入れ時に焼き割れが発生し易いといった問題点があり、これが十分な生産性と安定した品質の実現を阻害する要因となっている。また、加熱され過ぎる場合には、履帯ブッシュを支える治具も加熱後に焼入れ媒体にて冷却されるサイクルが繰返されることから、治具の耐久性に関わる問題もある。
【0008】
また、前述のように2個以上の履帯ブッシュに対しその端面部同士を重ねた状態で内周面の焼入れを実施する場合に、重ねることによって履帯ブッシュ両端面のシール平坦部に安定した焼入れ硬化層を確保することができず、オイル封入ブッシュに適用できないという問題点がある。
【0009】
さらに、内周面の冷却にスプレー冷却を適用する場合には、履帯ブッシュ両端面部と接触して内周面側と外周面側の水流を分離する仕切り板とブッシュ端面部との間からの内周面冷却媒体の漏れを完全に遮断することが難しく、前述のオイル封入履帯ブッシュの端面部での焼入れ部分のムラや抜けが完全に避けられず、ブッシュ内周部への土砂の侵入を防止するためのダストシール面としての耐摩耗性確保のための検査が必要になる。
【0010】
また、高周波焼入れ法によって焼入れ硬化層を生産性良く形成することができたとしても、焼入れ後に実施する低温焼戻し処理では大規模な焼戻し炉が必要になるので、生産ラインそのものが大規模になるという問題点がある。また、高周波焼戻しする場合においても、内外周面からの焼戻し加熱が必要になり、生産性が十分でないという問題点がある。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、冷却媒体の管内層流により内周面冷却を実施することによって、内径の小さな履帯ブッシュや2個以上重ねて焼入れを行う履帯ブッシュの内周面にムラ無く焼入れ層を形成することを可能にし、浸炭処理もしくは高周波焼入れ処理よりも生産性とコストの改善を図ることのできる履帯ブッシュおよびその製造方法並びに製造装置を提供することを主たる目的とするものである。
【0012】
また、本発明は、内周面を管内層流冷却することによって、履帯ブッシュ端面部に接触させる水流分離用の仕切り治具の隙間から内周面冷却媒体が漏れるのを完全に遮断できるようにし、さらに仕切り治具によってブッシュ両端面近傍の内周面からの冷却速度を遅らせることによって、その端面のシール平坦部を焼入れ硬化できるようにし、これによってオイル封入履帯ブッシュにも適用できる履帯ブッシュの製造方法および製造装置を提供することを目的とするものである。
【0013】
さらに、本発明は、内周面からの加熱が不要で、かつ小内径で長尺な円筒状鋼管の内周面を確実に焼入れできることから、耐摩耗性と強度を必要とする円筒状汎用部品を安価に製造できる方法と装置を提供することを目的とするものである。
【0014】
さらに、本発明は、焼入れ後の履帯ブッシュに焼戻し処理を実施する工程を廃止もしくは簡略化するために、外周面からの高周波加熱を実施しながら内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を行う一連の焼入れ作業において、外周面からの高周波追い加熱中もしくは高周波加熱を止めて外周面冷却を始めるまでの間に、内周面からの冷却を所定時間止めて、外周面から内周面への熱の拡散によって内周面を短時間で焼き戻して、内周面の再冷却を実施し、所定時間後に外周面からの冷却を行う一連の焼入れ作業によって、内周面焼入れ硬化層が焼戻しマルテンサイト組織からなるようにし、外周面焼入れ硬化層の焼戻し処理を廃止するか、外周面からの短時間の高周波焼戻しを実施することによって十分な靭性と耐摩耗性が得られる履帯ブッシュを安価に製造できる方法と装置を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
本出願における第1の特徴点は、履帯ブッシュの内周面を冷却する際に、その両端面近傍の内周面の冷却を遅らせ、かつ外周面からの高周波追い加熱によって有効に両端面部が加熱されるような内周面冷却媒体と外周面冷却媒体との仕切り治具を用いることによって、両端面のシール平坦部の表面層を外周面から肉厚の1/2以上の幅にわたって焼入れ硬化させることにある。また、これと同じ原理の仕切り治具を2個の履帯ブッシュ間に配置することによって、端面部硬化層を必要とするオイル封入用履帯ブッシュを焼入れることを可能にし、顕著な生産性の向上を図ることにある。
【0016】
ここで、前記外周面からの高周波追い加熱は、履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に加熱する作業の後、
▲1▼履帯ブッシュの内周面を先行冷却しながらも、外周面が焼入れ処理可能な温度を維持するように加熱することを追い加熱と呼ぶが、さらに後述するように、別に設けた炉加熱もしくは高周波加熱する装置で加熱した履帯ブッシュを焼入れ装置に移して、一連の焼入れ作業を行う場合には、上記追い加熱だけでなく、
▲2▼焼入れ装置へのハンドリング時に発生し易い外周面における局部的温度ムラを解消する。
▲3▼炉加熱された履帯ブッシュの外周面温度をより高くし、より長い内周面先行冷却時間によっても、外周面温度が冷え過ぎず、ブッシュ肉厚内部に軟質な未焼入れ層を安定して形成するとともに外周面焼入れ硬化層を形成し易くする。
▲4▼履帯ブッシュ外周面の焼入れ硬化層を焼戻す。
等の目的をもって行われる。本発明では、上記▲1▼の加熱を追い加熱と呼ぶ。
【0019】
次に、本出願における第2の特徴点は、前述の外周面からの高周波追い加熱を実施しながら、もしくはその高周波追い加熱を終了して、内周面を先行冷却している途中でその先行冷却を短時間の間止めて外周面側の熱を内周面側へ拡散移動させた後、外周面の冷却と内周面の再冷却とを実施することによって、内周面に短時間の高温焼戻しによるマルテンサイト組織の硬化層を形成するとともに、より硬質のマルテンサイト組織の硬化層を外周面に形成する点にある。
【0020】
要するに、本発明による履帯ブッシュは、
履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に加熱した後、外周面からの高周波加熱を実施しつつ内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に前記外周面からの冷却を実施する一連の焼入れ作業において、前記外周面からの高周波加熱中もしくはその高周波加熱を止めて前記外周面の冷却を始めるまでの間に、前記内周面からの冷却を一旦止めて前記外周面から前記内周面への熱の拡散によって内周面側を焼戻しした後、前記外周面および前記内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層が形成されるとともに、外周面側焼入れ硬化層および内周面側焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層が残されてなり、かつ前記外周面側焼入れ硬化層の硬化層深さが前記内周面側焼入れ硬化層の硬化層深さに比べてより深く形成されてなり、前記未焼入れ層の組織が焼入れ温度からの冷却過程で析出するフェライトおよびパーライトのうちの1種以上の組織からなるとともに、前記内周面側焼入れ硬化層が焼戻しマルテンサイト組織からなることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の履帯ブッシュにおいては、両端面のシール平坦部の表面層が外周面から肉厚の1/2以上の幅にわたって焼入れ硬化されてなるのが好ましい。また、前記外周面側焼入れ硬化層は、高周波加熱による焼戻し処理が施されて、少なくとも前記外周面の硬度がHV=500以上であるのが好ましい。
【0022】
次に、前記第1の特徴を有する履帯ブッシュの製造を可能にするために、本発明による履帯ブッシュの製造方法は、第1に、
履帯ブッシュの外周面からの高周波加熱が行えるとともに、内周面冷却媒体と外周面冷却媒体とが互いに干渉し合わないように履帯ブッシュの両端面部で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却とを独自に行える焼入れ装置であって、前記内周面冷却媒体が、履帯ブッシュの内径よりも小さい外径を有する導入管にて流入された後、前記仕切り治具の壁面によって方向変換されて前記導入管外周面と履帯ブッシュ内周面とに囲まれる空間に流されるように構成される焼入れ装置を用いて、履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に外周面からの高周波加熱によって加熱した後、もしくは別工程で焼入れ処理可能な温度に全体加熱した履帯ブッシュ素材を外周面からの高周波追い加熱ができる焼入れ装置にセットした後、この履帯ブッシュ素材の内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、または外周面からの高周波加熱を実施しつつ内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの高周波加熱を止めて履帯ブッシュの軸心方向に平行に該履帯ブッシュの外周面に冷却媒体を流すことによって外周面からの冷却を実施する一連の焼入れ作業において、履帯ブッシュの端面の内周面の冷却を遅らせること、および/または外周面からの高周波追い加熱によって有効に両端面部が加熱されるような形状の仕切り治具であって、内周面に履帯ブッシュの両端面のシール平坦部および内周面面取り部に当接する内周面冷却防止用の薄肉円筒部を有する上部仕切り治具および下部仕切り治具と、内周面に内周面冷却防止用の薄肉円筒部を有し、隣接する履帯ブッシュ同士がその端面を露出するようにして当該中間仕切り治具を介して重ねられる中間仕切り治具とよりなる仕切り治具を用い、前記内周面および外周面を履帯ブッシュの軸心方向に平行に冷却媒体を流して冷却することによって、外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層を形成するとともに、外周面側焼入れ硬化層および内周面側焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層を残すようにし、かつ前記外周面側焼入れ硬化層の硬化層深さが前記内周面側焼入れ硬化層の硬化層深さに比べてより深く形成し、前記未焼入れ層の組織を焼入れ温度からの冷却過程で析出するフェライトおよびパーライトのうちの1種以上の組織にするとともに、両端面のシール平坦部の表面層を外周面から肉厚の1/2以上の幅にわたって焼入れ硬化させることを特徴とするものである。
【0023】
また、前記第2の特徴を有する履帯ブッシュの製造を可能にするために、本発明による履帯ブッシュの製造方法は、第2に、
履帯ブッシュの外周面からの高周波加熱が行えるとともに、内周面冷却媒体と外周面冷却媒体とが互いに干渉し合わないように履帯ブッシュの両端面部で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却とを独自に行える焼入れ装置を用いて、履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に外周面からの高周波加熱によって加熱した後、もしくは別工程で焼入れ処理可能な温度に全体加熱した履帯ブッシュ素材を外周面からの高周波追い加熱ができる焼入れ装置にセットした後、1)この履帯ブッシュ素材の内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、もしくは2)外周面からの高周波加熱を実施しつつ内周面からの冷却を実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、もしくは3)外周面からの高周波加熱を実施しつつ内周面からの冷却を実施した後、外周面からの高周波加熱を止めて履帯ブッシュの軸心方向に平行に該履帯ブッシュの外周面に冷却媒体を流すことによって外周面からの冷却を実施するいずれかの一連の焼入れ作業において、外周面からの冷却を始めるまでの間に、内周面からの冷却を一旦止めて外周面から内周面へ熱を拡散させるようにし、外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層を形成するとともに、外周面側焼入れ硬化層および内周面側焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層を残すようにし、かつ前記外周面側焼入れ硬化層の硬化層深さが前記内周面側焼入れ硬化層の硬化層深さに比べてより深く形成し、前記未焼入れ層の組織を焼入れ温度からの冷却過程で析出するフェライトおよびパーライトのうちの1種以上の組織にし、前記内周面側焼入れ硬化層を焼戻しマルテンサイト組織にすることを特徴とするものである。
【0024】
本発明において、前記外周面は高周波加熱により焼戻しされるのが好ましい。
【0025】
また、前記各発明において、前記内周面冷却媒体と外周面冷却媒体とを仕切る仕切り治具は、内周面に履帯ブッシュの両端面のシール平坦部および内周面面取り部に当接する内周面冷却防止用の薄肉円筒部を有する上部仕切り治具および下部仕切り治具と、内周面に内周面冷却防止用の薄肉円筒部を有し、隣接する履帯ブッシュ同士がその端面を露出するようにして当該中間仕切り治具を介して重ねられる中間仕切り治具とよりなり、その接触部における媒体漏れが極小になるようにされているのが良い。
【0026】
前述の外周面からの高周波追い加熱を実施しながら、もしくはその高周波追い加熱を終了して、内周面を先行冷却している途中でその先行冷却を短時間の間止めた場合には、外周面側の熱が内周面側に拡散移動して内周面側の温度が上昇する。この際、内周面の先行冷却中に内周面側に焼入れマルテンサイトが既に形成されているときには、そのマルテンサイトには急速に焼戻されて靭性が付与される。例えば肉厚8mmの履帯ブッシュを6kHzの高周波加熱電源で950℃に全体加熱した後に、外周面温度を950℃に保持するように外周面からの高周波追い加熱を実施しながら5秒間内周面に層流による水冷却を施し、その高周波加熱と内周面冷却を1秒間中断する間に、内周面温度は外周面側からの熱流入によって約150℃から500〜600℃に再加熱・焼戻しされる。この後、外周面の冷却と内周面の再冷却とを同時に実施することによって、内周面には短時間の高温焼戻しされたマルテンサイト組織の硬化層が形成されるとともに、外周面にはより硬質のマルテンサイト組織の硬化層が形成される。このことを利用することによって、別工程での内周面の低温焼戻し処理を必要としない履帯ブッシュを製造できることがわかる。また、外周面でのより硬質なマルテンサイトに靭性を必要とする場合には、外周面のみの高周波焼戻し処理だけで目的が達成されるため、従来の大規模な低温焼戻し設備が必要でなくなり、特に、本焼入れ装置の高周波加熱による短時間焼戻し処理を行えば、極めて低コスト化が図られるとともに、生産性に関しても顕著に向上できることは明らかである。
【0027】
前述の外周面からの高周波加熱による履帯ブッシュの全体加熱の後、内周面を先行冷却しながら外周面からの高周波追い加熱を実施する際の電力投入は、内周面からの冷却によって外周面温度が少なくともA3線温度以上であることが外周面に焼入れ硬化層を形成する条件であり、通常800℃以上の温度に保持されるように設定される。これを実現するためには、外周面温度を自動的に計測しながら、外周面冷却による外周面焼入れ硬化層の品質を確保するのが好ましく、生産ライン設備においてこの機能を装備することは品質管理上極めて有効である。なお、外周面温度の計測方法としては、光温度計による非接触測定や熱電対による接触式のいずれでも有効である。
【0028】
なお、前記外周面からの高周波追い加熱を実施するに際しては、履帯ブッシュが肉薄の場合、例えば10mmの肉厚の場合には、1kHzの高周波加熱を実施した場合に内周面にまで高周波加熱の加熱浸透深さが達するので、少なくとも3kHz以上の周波数を選定するのが望ましい。したがって、全体加熱には加熱浸透深さの深い低い周波数での加熱が望ましく、一方前記高周波追い加熱では高い周波数での加熱が望まれるので、焼入れ装置の加熱電源として、2種の周波数電源もしくは2種以上の周波数が発振できる電源を使用することが好ましい。したがって、低い周波数による全体加熱を別工程で実施した後に、加熱された履帯ブッシュを焼入れ装置に配置して、高い周波数での追い加熱を実施することが、省電力と生産性、品質の観点で望ましいことは明らかである。しかし、生産性と設備投資の観点からすれば、1種の周波数の高周波電源で全体加熱と追い加熱の両方を効率良く実施することが望ましく、その際の電源としては、周波数と加熱浸透深さの観点から、履帯ブッシュ肉厚(約6〜30mm)に応じて1〜20kHzの電源を用いるのが好ましい。
【0029】
また、前記浸透深さに関しては、内周面を先行冷却しながら、外周面を加熱しているときには、内周面の所定深さまではマルテンサイトが形成され、さらにその肉厚内部においてパーライト変態しているため、それらの範囲においては強磁性体化して前記加熱浸透深さは常磁性のオーステナイト状態における加熱浸透深さの約1/30(αFeの浸透深さp(mm)の近似式;p=16/(√f),γFeの浸透深さp(mm)の近似式;p=500/(√f)、ただしfは周波数(Hz))に減少することになり、前述されたほどに周波数の影響は顕著でないと考えられる。しかし、近似的には、前述の周波数の選定を参考にするのが良い。
【0030】
さらに、前述の第1特徴点および第2の特徴点に記載したように、履帯ブッシュの内周面を先行冷却し、所定時間後に外周面冷却する焼入れ操作(Time Shift Quench(TSQ))は、内周面先行冷却によって内周面側に焼入れ硬化層を形成し、さらに、より中心部ではフェライト、パーライト、ベイナイトを形成した後、外周面冷却によって外周面側に焼入れ硬化層を形成する技術であるが、履帯ブッシュの肉厚が薄い場合にはフェライト、パーライト、ベイナイトが形成される前や十分に形成される前に外周面が冷却され易いので、履帯ブッシュの全体加熱温度はできるだけ高く設定する(例えば900〜1000℃)ことが好ましい。前記履帯ブッシュ素材全体を別工程で炉加熱する場合においては、焼入れ装置に備えた高周波加熱装置で、短時間で外周面から再加熱することが好ましい。
【0031】
また、前述の第1特徴点および第2の特徴点に記載したように、履帯ブッシュの外周面からの高周波追い加熱を実施しつつ内周面の先行冷却を実施し、所定時間後に外周面からの高周波追い加熱を止めて外周面冷却する焼入れ操作(Time Shift Induction Quench(TSIQ))は、前記TSQの内周面の先行冷却によって外周面が冷却されないように外周面からの高周波誘導による追い加熱を付与して、履帯ブッシュの肉厚が薄い場合においても、また履帯ブッシュ素材に使う鋼の焼入れ性が高い場合においても履帯ブッシュ肉厚内部に軟質なフェライト、パーライト、ベイナイトを十分に形成するとともに、外周面側に形成する焼入れ硬化層をより深く形成するのに好ましい。
【0032】
次に、本出願における第3の特徴点は、内径がより小さな履帯ブッシュにおいて、内周面にムラ無く、より均一な焼入れ硬化層を形成するために、または生産性を高める目的で、2個以上の履帯ブッシュの端面部同士を重ねてなる小内径長尺円筒体において、内周面にムラ無く、より均一な焼入れ硬化層を形成するために、内周面へのスプレー冷却を止め、冷却媒体を導入する管をブッシュ内径部に配置し、この冷却媒体を、履帯ブッシュ内径より小さな外径を持つ冷却媒体導入管の外周面とブッシュ内周面とに挟まれた空間で、履帯ブッシュの長手方向に、かつ熱伝達面に平行に流す管内流冷却法(以下、熱伝達面に平行な冷却媒体の層流によって冷却されることから、単に「層流冷却」という。)を実施することにある。
【0033】
要するに、本発明による履帯ブッシュの製造方法は、第3に、
履帯ブッシュ素材を焼入れ処理可能な温度に加熱した後、履帯ブッシュの軸心方向に平行に冷却媒体を流すことによって内周面および外周面が冷却される内周面冷却と外周面冷却および/または外周面からの高周波加熱ができる焼入れ装置を用いて、この履帯ブッシュ素材の内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、もしくは外周面からの高周波追い加熱を実施しつつ内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、もしくは外周面からの高周波加熱を止めて履帯ブッシュの軸心方向に平行に該履帯ブッシュの外周面に冷却媒体を流すことによって外周面からの冷却を実施する一連の焼入れ作業において、前記内周面冷却用の冷却媒体を導入するために、履帯ブッシュの内径よりも小さい外径を有する導入管を内周面側に配置し、この導入管にて流入される冷却媒体を壁面によって方向変換させてその導入管外周面と履帯ブッシュ内周面とに囲まれる空間に履帯ブッシュの内周面に平行で、かつその履帯ブッシュの軸心方向に平行に流すことによる層流冷却を行うことによって、複数個の履帯ブッシュの内周面においてもムラの無い焼入れ硬化層を形成するとともに、外周面からの冷却によっても外周面側に焼入れ硬化層を形成し、かつ外周面側焼入れ硬化層および内周面側焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層を残すようにし、しかも前記外周面側焼入れ硬化層の硬化層深さが前記内周面側焼入れ硬化層の硬化層深さに比べてより深く形成し、前記未焼入れ層の組織が焼入れ温度からの冷却過程で析出するフェライトおよびパーライトのうちの1種以上の組織にすることを特徴とするものである。
【0034】
前記各発明において、前記高周波加熱もしくは高周波追い加熱が鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルによって行われ、複数個の履帯ブッシュが同時に焼入れされるのが好ましく、この場合に、前記鞍型誘導子による加熱は、互いに隣接する履帯ブッシュ間に絶縁体を挟んで行われるのが好ましい。
【0035】
また、複数個の履帯ブッシュを同時に焼入れる際に、隣接する履帯ブッシュ同士がその端面を露出させるような中間仕切り治具を介して重ねられることによって、この中間仕切り治具に接する履帯ブッシュ両端面のシール平坦部の表面層が外周面から肉厚の1/2以上の幅にわたって焼入れ硬化されるのが好ましい。
【0038】
また、前述の層流の発生方法に対して、内径ノズルからスプレー状の冷却媒体を履帯ブッシュの内周面に吹付け、内径ノズルと履帯ブッシュ内周面との空間に充填するとともに、履帯ブッシュの上端側を閉じることによって履帯ブッシュの長手下方に向かう層流を形成する方法や、それとは逆に、履帯ブッシュの下端側を閉じることによって履帯ブッシュの長手上方に向かう層流を形成する方法もある。なお、長手上方に向かう層流は層流化するための冷却媒体の流量が少なくて済むことが明らかであるが、焼入れ硬化させるためには十分な冷却能を実現する必要があり、それにはそれに必要な冷却媒体量が流されなければならないことや、冷却媒体を排出するための工夫が必要となるため、設備的には前記長手上方に向かう層流を利用することが好ましい。
【0039】
また、複数個の履帯ブッシュ等を重ねた小内径円筒体の内周面を前記層流冷却によって焼入れ硬化できることは、端面の表面が焼入れ硬化される必要のない履帯ブッシュの生産性を極めて高めることができ、かつ焼入れ設備に対する投資を大きく抑えることができるのは明らかである。
【0040】
前述の方向変換部材は、内外周面をそれぞれ冷却する冷却媒体の流れを仕切るものであるのが好ましく、また、冷却媒体導入管から流出する冷却媒体の衝突による衝撃や流れの乱れによるガスの巻き込みおよびガスの滞留を極力抑える観点からは、方向変換部位における形状は凹型の球面もしくはそれに類似する曲面からなることが好ましく、さらに、その曲面形状は、履帯ブッシュと接触する位置においてその履帯ブッシュの軸方向にほぼ平行であるのが好ましい。このような形状にすれば、その接触部において冷却媒体を十分に層流化することができ、ベルヌーイの流れの原理から、履帯ブッシュと方向変換部材の僅かな隙間において負圧が生じて、冷却媒体の外周面側への漏れは発生せず、オイル封入履帯ブッシュとして使用した場合に必要とされるブッシュ端面の表面をムラなく焼入れすることが可能となる。
【0041】
さらに、前記内周面を冷却する際に、履帯ブッシュの両端面部近傍の内周面の冷却を遅らせ、かつ外周面からの高周波追い加熱によって有効に両端面部が加熱されるような、前記内周面冷却媒体と外周面冷却媒体との仕切り治具を用いることによって、履帯ブッシュ両端面シール平坦部の表面層を、外周面位置からブッシュ肉厚の1/2以上の幅にわたって安定した焼入れ硬化層を形成することができる。
【0042】
ここで、導入管外周面と履帯ブッシュ内周面との囲まれた空間は、直径差で1mm以上で、20mm以下とするのが好ましい。この理由としては、下限の1mmは、ブッシュ内周面の位置と導入管の位置および高周波追い加熱時に履帯ブッシュを同軸中心で回転させることが加熱の均一化に必要であることを考慮した場合などの位置精度上の配慮と、冷却媒体が冷却時に履帯ブッシュから取り出す熱量によって加熱され過ぎないようにするための配慮による。また、上限の20mmは、この20mmを越えると必要水量が多くなり過ぎて無駄になることによる。なお、現実的には3〜10mmもあれば冷却上の問題はない。
【0043】
また、前記履帯ブッシュの内周面を均一に焼入れるには、履帯ブッシュに用いる鋼材の焼入れ性との関係で議論されるべきであるが、通常の炭素鋼を用いる場合には、冷却媒体が水で、かつ前述のように履帯ブッシュの長手方向に流れる層流冷却を実施する場合、履帯ブッシュ内径と冷却媒体の導入管の外径から求まる断面積に対する単位断面積当たり水量が9リットル/min・cm2以上、その際の流速が1.5m/sec以上であることが好ましく、さらに、ムラの無い焼入れ硬化層を形成する十分な冷却能を得るためには、履帯ブッシュの内周面、外周面の各面積に対する単位面積当たりの水量が0.1リットル/min・cm2以上であるのが好ましい。また、例えばCr,Mo,Mn,Niなどの各種合金元素を添加して焼入れ性を改善した鋼材を利用する場合には、より少量の冷却媒体での焼入れも可能と考えられるが、逆に、安価な水を冷却媒体にすることによって鋼材の原価低減が図られる方向での改善が望ましい。
【0044】
ところで、内周冷却を開始する前や冷却中に外周面からの高周波追い加熱が実施されるため、冷却媒体の導入管が履帯ブッシュ内周面に近接し過ぎる場合には、この導入管自身も高周波加熱を受けることになって、無駄なエネルギーを浪費したり、あるいは導入管が加熱冷却されることによって変形劣化する危険性が考えられる。このため、前記冷却媒体を導入する導入管は、その導入管の外周面に断熱機能や輻射熱を反射する機能を持つ材料を被覆するか、あるいはカバーすることが好ましく、これによって加熱時間の短縮による生産性の向上も図ることができる。
【0045】
さらに、前述のように冷却媒体の導入管自身が高周波加熱される場合には、周波数を高めることによって、加熱浸透深さが浅くできるので、適性な高周波を選択することによる加熱の低減方法も好ましい。
【0046】
また、導入管の材質を、高周波加熱によってほとんど発熱しないSi3N4,Al2O3,SiO2等のセラミックス材料もしくはFe−30〜50at%Mn合金等の反強磁性合金を用いることや、電気抵抗が極めて大きな金属合金(例えばニクロム、カンタル等)を用いることがより好ましい。同様のことは、履帯ブッシュの上下端面に接触させて用いる冷却媒体の仕切り治具や履帯ブッシュ間に挟んで使用される中間仕切り治具の材料についても言える。
【0047】
履帯ブッシュの外周面冷却については、通常、スプレー焼入れ装置を用いることが好ましいが、一方では、このスプレー焼入れ装置と外周面からの高周波加熱用の誘導子(またはコイル)との位置関係の問題がある。すなわち、誘導子は履帯ブッシュ外周面に近接させるほど効率良く履帯ブッシュを加熱することができるものであるが、この加熱終了後に外周面のスプレー冷却を開始する際には、誘導子がスプレー冷却の障害となり、焼きムラを発生する恐れがある。また、例えば履帯ブッシュを2個端面同士で重ねて焼入れを行う場合のように、履帯ブッシュが長尺になると、必然的に上端部でのスプレー水の落下量が多くなり、下端部でのスプレー冷却の邪魔になったり、水量が多過ぎることによる冷却水の滞留によって下端部での焼きムラが発生してしまう。この問題を解決するために、特開平11−236619号公報に開示されているように、内周面冷却を実施しながら、履帯ブッシュ、加熱コイルもしくは外周面冷却ジャケットのいずれかを移動させることによって、外周面冷却ジャケット内に加熱コイルが入らないようにして外周面冷却を実施する方法もあるが、このような方法では焼入れ設備がより複雑になる問題がある。
【0048】
この問題に対して高周波コイルを渦巻き型にして、外周面冷却ジャケットからのスプレーをコイル隙間を通して履帯ブッシュ外周面冷却に用いることも考えられるが、このようにした場合には、コイルに衝突して起こるスプレーの反射流の問題や、履帯ブッシュ外周面と高周波コイル内径とのクリアランスが小さ過ぎると冷却ムラが起こり易いという問題がある。
【0049】
これを解決するために、本出願における第4の特徴点は、焼入れ処理可能な温度にほぼ均一に加熱した履帯ブッシュの内周面を焼入れる装置において、ブッシュ外径よりも大きい内径を持つ外周用円筒管内に履帯ブッシュを配置して、外周用円筒管の外側からブッシュ内周面を冷却しながら外周面を高周波追い加熱し、加熱終了後にブッシュ外周面との空間に冷却媒体を流し、層流冷却法によってその外周面冷却を実施することにある。この方法は最も単純な方法であるが、前述のように外周面冷却ジャケット内に追い加熱コイルが入らない状態で外周面冷却を実施するために内周面冷却を実施しながらブッシュ、追い加熱コイル、外周面冷却ジャケットのどれかを移動する必要がなくなり、焼入れ設備がより簡易化される。
【0050】
要するに、本発明による履帯ブッシュの製造方法は、第4に、前記第3の特徴を有する発明において、前記外周面の冷却を、履帯ブッシュをその外径より大きい内径を有する外周用円筒体内に配置して、この外周用円筒体と履帯ブッシュ外周面との間に冷却媒体を履帯ブッシュの外周面に平行で、かつその履帯ブッシュの軸心方向に流して層流冷却により行うようにしたものである。ここで、前記外周用円筒体は、鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルを一部に含むか、またはその鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルの内側もしくは外側に配置されるとともに、絶縁材料により、その外周用円筒体が誘導加熱され難いように工夫されたものとするのが好ましい。また、外周用円筒体が誘導加熱されない観点からは、外周用円筒体が高周波加熱時にコイル近傍になく、外周面冷却時に素早くその機能を達成する前記位置に移動できる機構や、外周用円筒体が2つ以上に分割された構造で、外周面冷却時に合わさって円筒体を形成する機構を備えておれば良いことは明らかであり、かつ外周用円筒体が安価で、耐久性に優れる金属製を利用できることは好ましい。
【0051】
ここで、前記内周面および外周面の層流冷却は、履帯ブッシュと冷却媒体の導入管の外径から求まる断面積に対して9リットル/min・cm2以上の冷却媒体量、冷却媒体の流速が1.5m/sec以上および/または履帯ブッシュの内周面、外周面の各面積に対して0.1リットル/min・cm2以上の冷却媒体量の条件のうちのいずれか1つ以上を満足する冷却条件にて行われるのが好ましい。また、前記高周波加熱に際して、均熱性を高めるために、履帯ブッシュがその円筒中心軸を略中心にして回転されるのが好ましい。なお、追い加熱停止後の外周面の層流冷却時には、回転を停止しても良い。また、前記各発明において、前記冷却に使用する冷却媒体は水もしくは水溶性焼入れ液であるのが良い。前記外周面からの冷却はその外周面を均一に冷却するスプレー等による噴流冷却であっても良い。また、前記焼入れ処理後に100℃以上350℃以下で低温焼戻し処理が施されるのが好ましい。
【0052】
次に、前述の履帯ブッシュの製造方法をより具体的に実現するための履帯ブッシュの製造装置は、第1に、
履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に加熱する加熱装置および/または前記履帯ブッシュ素材の外周面からの高周波加熱ができる焼入れ装置とを備える履帯ブッシュの製造装置において、
前記焼入れ装置は、履帯ブッシュの内径よりも小さい外径を有する冷却媒体導入のための導入管を履帯ブッシュの内周面側に配し、その履帯ブッシュ内周面と前記導入管の外周面と仕切り治具とに囲まれる空間に冷却媒体を流すことによって内周面を層流冷却するように構成される内周面冷却装置を有していることを特徴とするものである。
【0053】
前記焼入れ装置は、さらに、導入管にて流入される冷却媒体を方向変換してその導入管外周面と履帯ブッシュ内周面とに囲まれる空間に方向変換部材を備え、内周面を層流冷却するように構成するのが好ましい。
【0054】
本発明において、内周面の冷却に層流冷却を実施することによって、複数個の内径の小さい履帯ブッシュを加熱装置にて焼入れ処理可能な温度に加熱した後、端面部同士が重なるように焼入れ装置に移すか、もしくは一度にそれらを焼入れ装置を備えた高周波加熱装置で外周面から高周波加熱した後、内周面を先行冷却するか、もしくは外周面からの高周波加熱を実施しつつ内周面の先行冷却を実施し、所定時間後に追い加熱を停止してから外周面を冷却する一連の焼入れ作業によって、外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層が形成されるとともに、これら外周面側および内周面側の両焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層を残すようなU字型のスムーズな硬度分布を持ち、さらに外周面側からの硬化層深さが内周面側からの硬化層深さに比べてより深く形成され、かつ前記未焼入れ層の組織が焼入れ温度からの冷却過程で析出するフェライト、パーライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのうちの1種以上の組織からなる複数個の履帯ブッシュを生産することができるようになる。
【0055】
ここで、前記内周面冷却装置は、内周面冷却の停止時に前記導入管と履帯ブッシュ内周面とで構成される空間に流動する冷却媒体を履帯ブッシュの外側へ排出するガス導入弁を備えているのが好ましい。また、前記冷却媒体を導入する導入管は、外周面からの高周波加熱によって極度に過熱されるものではないので、安価なオーステナイト系ステンレス鋼や銅系材料を使っても問題となるものではないが、原理的には高周波加熱によってほとんど発熱しないSi3N4,Al2O3,SiO2等のセラミックス材料もしくはFe−30〜50at%Mn合金等の反強磁性合金により作製されるのがより好ましい。
【0056】
また、前記履帯ブッシュの製造装置は、第2に、
履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に加熱する加熱装置および/または前記履帯ブッシュ素材の外周面からの高周波加熱ができる焼入れ装置とを備える履帯ブッシュの製造装置において、
前記焼入れ装置は、履帯ブッシュの外周面側に配されその履帯ブッシュの外径よりも大きい外径を有して冷却媒体を導入する外周用円筒管を備え、この外周用円筒管と履帯ブッシュ外周面との間に冷却媒体を流し、外周面を層流冷却するように構成されていることを特徴とするものである。
【0057】
ここで、前記冷却媒体を導入する外周用円筒管は、高周波追い加熱によってほとんど発熱しないSi3N4,Al2O3,SiO2,ムライト等により作製されるのがより好ましい。また、前記外周用円筒体は、前述の絶縁性材料によって構成されるか、もしくは鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルを一部に含むか、またはその鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルの内側もしくは外側に配置されるとともに、絶縁材料により、その外周用円筒体が誘導加熱され難いように工夫された構成とするのが好ましい。また、外周用円筒体が誘導加熱されない観点からは、外周用円筒体が高周波加熱時にはコイル近傍になく、外周面冷却時に素早くその機能を達成する前記位置に移動できる機構や、鞍型誘導子を一部に含むか、またはその鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルの外側に配置される前記外周用円筒体は、2個以上に分割されるとともに、高周波加熱時においてはその鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルから離れた位置にあって誘導加熱されるのを極力避け、冷却時には合わさって外周円筒体になる構成であっても良い。
【0058】
さらに、前記焼入れ装置は、高周波追い加熱のためのコイルの内径側および外径側の少なくとも一方に履帯ブッシュを囲む断熱材が配置され、および/または内周面冷却媒体を導入する導入管の外周面が断熱材にて被覆されるのが好ましい。また、前記焼入れ装置は、外周面冷却開始時点での履帯ブッシュ外周面の温度をモニター、管理する検査装置を備えているのが好ましい。
【0059】
次に、本出願では、更なる生産性の向上を図るために、履帯ブッシュを支持する支持装置、高周波加熱装置、履帯ブッシュを加圧・固定する加圧装置および冷却装置等を組み合わせたシステムを提供するものである。
【0060】
要するに、本発明による履帯ブッシュの製造装置は、第3に、
履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に外周面から高周波加熱した後に所定の焼入れ作業ができるように、または別工程において焼入れ処理可能な温度に全体加熱した履帯ブッシュ素材をセットした後に所定の焼入れ作業ができるように、履帯ブッシュを支持する支持装置と、この支持装置により支持された履帯ブッシュの外周面から高周波加熱を行う高周波加熱装置と、前記履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体とが互いに干渉し合わないようにその履帯ブッシュの両端面に仕切り治具を押し当ててその履帯ブッシュを加圧・固定する加圧装置と、内周面冷却と外周面冷却とを独自に行える冷却装置とを備え、
前記所定の焼入れ作業は、履帯ブッシュの内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、もしくは履帯ブッシュの外周面からの高周波加熱と内周面からの先行冷却とを実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施する一連の焼入れ作業または、履帯ブッシュの内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、もしくは履帯ブッシュの外周面からの高周波加熱と内周面からの先行冷却とを実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施する作業において、外周面からの冷却を始めるまでの間に、内周面からの冷却を一旦止めて外周面から内周面への熱の拡散によって内周面を焼戻しした後、内周面の再冷却を実施し、外周面からの冷却を行う一連の焼入れ作業のいずれかであることを特徴とするものである。
【0062】
本発明において、前記高周波加熱装置は、複数個の履帯ブッシュを同時に加熱する際に隣接する履帯ブッシュの接触位置または履帯ブッシュ間にセットした仕切り治具位置での放電現象を防止する渦巻き型コイルであるのが好ましい。また、前記支持装置は、回転および上下移動ができるようにされているのが好ましい。
【0063】
次に、本出願における第5の特徴点は、冷却時間に比べて加熱時間が長いことから、加熱速度を高め過ぎて履帯ブッシュの外周面が内周面に比べて加熱され過ぎて、焼入れ時に焼割れが発生し易いという問題点を回避するために、複数個の履帯ブッシュを焼入れ処理可能な温度に炉加熱もしくは高周波加熱する装置を別に設け、焼入れ装置外で予め加熱した状態にして、前述の外周面からの高周波加熱のできる焼入れ装置に移すようにし、焼入れ装置内での高周波加熱をできる限り短時間に限定することによって前述の問題を解決し、併せて焼入れ治具などの劣化を抑制できるようにしたものである。
【0064】
要するに、本発明による履帯ブッシュの製造装置は、第4に、
履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度にほぼ均一に加熱する加熱装置と、前記履帯ブッシュ素材の外周面からの高周波加熱ができる焼入れ装置と、前記加熱装置にて加熱後の履帯ブッシュ素材を前記焼入れ装置に搬入するとともに、この焼入れ装置にて処理済みの履帯ブッシュをその焼入れ装置から搬出する搬送装置とを備え、前記焼入れ装置が、前記履帯ブッシュ素材の内周面からの先行冷却を実施しながら、所定時間後に外周面からの加熱を止めて外周面を冷却するように構成されていることを特徴とするものである。
【0065】
本発明の製造装置(システム)によれば、加熱装置によって複数個の履帯ブッシュを全体加熱することができるので、加熱の生産性を高めることができ、焼入れ装置内で全体加熱を実施する場合に比べて生産性が飛躍的に向上するとともに、焼入れ治具類の劣化も防止することができる。例えば、外径59mm,内径38mm,長さ138mmの履帯ブッシュを2個同時に焼入れする場合、従来方式では内、外周面を別工程で高周波焼入れしており、約30秒で1個生産されていたのに対し、本システムによれば、約6秒で1個生産することができ、生産性を約5倍向上させることができた。
【0066】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による履帯ブッシュおよびその製造方法並びに製造装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0067】
(1)内周面冷却用層流ノズル
図1(a)(b)(c)には、内周面冷却用層流ノズル例が示されている。これらは焼入れ装置内における履帯ブッシュの荷姿が縦置きの場合である。
【0068】
図1(a)に示される例では、履帯ブッシュ1の内径よりも小さい外径を有する導入管2がその履帯ブッシュ1の内周面側に配され、履帯ブッシュ1の上端面のシール平坦部には方向変換部材3が押付けられている。この方向変換部材3は、下面が球面もしくはそれに類似する曲面に形成されている。こうして、前記導入管2内には冷却媒体が下から上へ向かって流され(矢印P)、履帯ブッシュ1の最上部位置より上の位置で、方向変換部材3によって流れ方向が変換された後(矢印Q)、導入管2の外周面とブッシュ内周面に囲まれた空間内を流される(矢印R)。
【0069】
次に、図1(b)に示される例では、導入管4の外周面に凹凸加工5が施されており、これによって焼入れ時の蒸気膜破壊をより促進させるようにされている。これ以外の構成等については、図1(a)に示される例と基本的に異なるところがない。
【0070】
また、図1(a)(b)に示される層流の発生方法に対して、図1(c)に示されるように、内径ノズル6からスプレー状の冷却媒体を履帯ブッシュ1の内周面に吹付け、内径ノズル6と履帯ブッシュ1内周面との空間に充填するとともに、履帯ブッシュ1の上端側を閉じることによって履帯ブッシュ1の長手下方に向かう層流を形成する方法もある。この方法においては、履帯ブッシュ1の内径の大きさとの関係で流量を調整する必要がある。このことは、先の導入管2による層流発生とほぼ同じ関係が成り立つことから明らかである。また、この内径ノズル6による層流冷却は、履帯ブッシュ内周面の上、中、下部にほぼ均一に、常に冷えた冷却媒体を供給することができるという特徴があり、例えば中間仕切り治具を使って複数個のブッシュを重ねて同時にそれらの外周面を焼入れる際の履帯ブッシュ間の間隙部の焼入れ性を高め、履帯ブッシュ両端部シール平坦面の焼入れ硬化層を形成するのに好ましいことは明らかである。また、内周面での層流の排出性と均一冷却性を確保するには、図示のようにスプレーに下向きの角度を付けて排水方向に流れを作るのが好ましく、この方法は、より長尺な円筒管の内周面冷却に適用するのが良い。しかし、前記内径ノズル6からの噴射による層流発生方法は、一定以上の流量を確保する際に、数多くのノズル孔をあけることが必要であり、また例えば冷却途中で内周面冷却を停止するときのコントロール性が悪いこと等の特性もあることから、コストと特性の両方の観点から選択されるべきであり、前述の導入管2による層流発生方法の方が、コストおよび中断特性の点で有利である。なお、層流を確認する手段としては、透明円筒管にスプレーノズルを配置して、スプレーによる気泡が消える条件(圧力、流量)を目視にて確認することが好ましい。
【0071】
次に、図2(a)(b)には、方向変換部材の変形例が示されている。このように、方向変換部材としては、図1(a)(b)に示されるような曲面形状に限らず、図2(a)に示されるような断面三角形形状の方向変換部材3Aや、図2(b)に示されるような断面台形形状の方向変換部材3Bを用いても同様の効果が得られるのは明らかである。
【0072】
(2)仕切り治具
図3には、2個の履帯ブッシュを重ねて内周面を冷却する際の仕切り治具形状とその配置が示されている。
【0073】
図示のように、内周面冷却媒体と外周面冷却媒体とを仕切る仕切り治具は、上部仕切り治具7、下部仕切り治具8および中間仕切り治具9よりなっている。上部仕切り治具7および下部仕切り治具8は、内周面に内周面冷却防止用の薄肉円筒部7a,8aをそれぞれ有し、履帯ブッシュ1の両端面のシール平坦部および内周面面取り部に押し付けられる。また、中間仕切り治具9は、やはり内周面に内周面冷却防止用の薄肉円筒部9a,9aを有し、隣接する履帯ブッシュ1同士がその端面を露出するようにその中間仕切り治具9を介して重ねられる。こうして、履帯ブッシュ1の両端面近傍の内周面の冷却が遅らせられ、かつ外周面からの高周波追い加熱によって有効に両端面部が加熱されるようにされており、両端面のシール平坦部の表面層が外周面から肉厚の1/2以上の幅にわたって焼入れ硬化されることを可能にしている。
【0074】
(3)外周面の管内流冷却のための外周用円筒体
図4(a1)(a2)〜(d1)(d2)には、外周面の管内流冷却(層流冷却)のための外周用円筒体が例示されている。
【0075】
図4(a1)(a2)に示される外周用円筒体10においては、鞍型誘導子11と外周面冷却用ジャケット12と一体に形成されている。なお、符号13にて示されるのは絶縁体、符号14にて示されるのはフェライト鉄である。この例において、層流を発生させる冷却媒体は、外周面冷却ジャケット12にあけた多数のノズル孔から供給される。
【0076】
前記外周面冷却用ジャケット12は、必ずしも鞍型誘導子11と一体化される必要はなく、例えば2分割されていて、高周波加熱時には鞍型誘導子によって誘導加熱されない位置にあって、高周波加熱を止めて外周面冷却を開始する時に合わさって円筒体を形成すれば良いことは明らかであり、その際には、絶縁体13のような複雑な細工を必要としないことも明らかである。
【0077】
次に、図4(b1)(b2)に示される外周用円筒体15は、渦巻き型コイル16が埋め込まれてなる構成である。なお、符号13は絶縁体である。また、図4(c1)(c2)に示される外周用円筒体17は、渦巻き型コイル16の内径部に絶縁体13を介して円筒体を配置した構成である。
【0078】
さらに、図4(d1)(d2)に示される外周用円筒体18は、渦巻き型コイル16の外径部に絶縁体13を介して外周面冷却用ジャケット12を配置した構成である。この例の場合にも、図4(a1)(a2)に示される例と同様、層流を発生させる冷却媒体は、外周面冷却ジャケット12にあけた多数のノズル孔から供給される。
【0079】
また、この外周面冷却用ジャケット12においても、前記2分割の外周面冷却用ジャケットと同じく、分割すると効果的であり、その際には、絶縁体13のような複雑な細工を必要としないことが明らかである。
【0080】
これら各外周用円筒体10,15,17,18においては、外周面の層流冷却媒体の排出性を考慮した場合には、履帯ブッシュ1の上端部側もしくは下端部側から冷却媒体を導入して反対側に排出するのが好ましいが、例えば図5の矢印S,Tにて示されるように、履帯ブッシュ1の両端部側からそれぞれ冷却媒体を導入して、矢印U,Vにて示されるように中央部から排出するようにすることもできる。また、この逆に中央部から導入して両端部から排出するようにすることもできる。
【0081】
(4)焼入れ装置
図6には、焼入れ装置の一例を示す概略構成図が示されている。
【0082】
この焼入れ装置20においては、基盤21上に支柱22が立設されるとともに、この基盤21上に高周波加熱装置23および冷却装置24が支持され、前記支柱22の下部には、図示されない昇降手段により第1アーム部材25が昇降自在に支持され、支柱22の上部には、昇降モータ26およびボールスクリュー27によって第2アーム部材28が昇降自在に支持されている。ここで、前記高周波加熱装置23は、図示されない高周波電源に接続される高周波変成器29と、この高周波変成器29に接続されて履帯ブッシュ1の外周面に配される渦巻き型コイル30とを備える構成とされている。また、前記冷却装置24は、履帯ブッシュ1の内周面冷却を行うための導入管(導水管)2と、履帯ブッシュ1の外周面冷却を行うための外周面冷却用ジャケット12とを備える構成とされ、これら内周面冷却と外周面冷却とが独自に制御できるようにされている。
【0083】
前記第1アーム部材25上には履帯ブッシュ1を支持する略円筒形状の支持装置31が、前記導入管2と同一軸心上で軸心周りに回転可能に支持されるとともに、この支持装置31をベルト駆動により正逆回転させるギヤモータ32が支持されている。なお、この支持装置31の上端部には下部仕切り治具8が取り付けられている。一方、前記第2アーム部材28上には、エアシリンダ33により上下動される加圧装置34が支持され、この加圧装置34の下端部には上部仕切り治具7が取り付けられている。また、前記基盤21上の前記外周面冷却ジャケット12の隣接位置には、外周面温度測定用のサーモビューア35がエアシリンダ36の作動により上下移動可能に設けられている。
【0084】
このような構成の焼入れ装置20を用いる焼入れ作業は、履帯ブッシュ素材全体を別工程において焼入れ処理可能な温度に全体加熱した後、本装置にセットされて行われるか、あるいは本装置にセットして高周波加熱装置23にて高周波加熱した後に行われる。この焼入れ装置20に前記履帯ブッシュ1をセットするには、まず支持装置31を第1アーム部材25の上昇により所定位置まで上昇させ、この支持装置31上に履帯ブッシュ1を載置した後、第2アーム部材28を昇降モータ26の駆動により所定の高さ位置まで下降させ、次いでエアシリンダ33の作動により加圧装置34を下降させてその下端部の上部仕切り治具7を履帯ブッシュ1の上端面に押し付ける。
【0085】
続いて、第1アーム部材25および第2アーム部材28を共に同期させて下降させることにより、履帯ブッシュ1の内周面側に導入管2が挿入されるように、かつ外周面側が渦巻き型コイル30および外周面冷却用ジャケット12にて取り囲まれるようにする。この後、外周面からの高周波加熱を実施しつつ内周面からの冷却を実施し、所定時間後に外周面からの高周波加熱を止めて冷却を実施するという一連の焼入れ作業がなされる。なお、外周面の追い加熱時には、均熱性を高めるために、支持装置31がその軸心周りに回転され、追い加熱停止後の外周面の層流冷却時にはその回転が停止される。また、外周面冷却開始時点において、履帯ブッシュ1の外周面の温度がサーモビューア35により計測され、外周面の焼入れ品質が確保される。
【0086】
(5)熱処理装置
図7には、熱処理装置の一例を示す概略構成図が示されている。
【0087】
この熱処理装置40においては、履帯ブッシュ1全体を焼入れ処理可能な温度までほぼ均一に加熱するトンネル式高周波加熱炉(加熱装置)41が設けられ、このトンネル式高周波加熱炉41にて加熱された履帯ブッシュ1を焼入れ装置20に搬入するとともに、この焼入れ装置20にて処理済みの履帯ブッシュ1を搬出する搬送装置42が設けられている。
【0088】
このような熱処理装置40を用いれば、トンネル式高周波加熱炉41によって複数個の履帯ブッシュ1を全体加熱することができるので、加熱の生産性を高めることができる。そして、このように複数個同時に加熱した後の履帯ブッシュ1を中間仕切り治具を介して多数個重ねて焼入れ装置20にて熱処理することで、焼入れ装置内で全体加熱を実施する場合に比べて生産性を飛躍的に向上させることができる。また、焼入れ治具類の劣化を防止することができるという利点もある。
【0089】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0090】
(履帯ブッシュの準備)
以下の各実施例において使用した3種類の履帯ブッシュの形状が図8に示されている。これらブッシュにおいて、端部の内径には1〜1.5cの面取りがなされている。なお、使用した鋼材組成は、炭素濃度がほぼ0.5重量%で、DI値はブッシュA,Bが0.85inch、ブッシュCが1.63inchの炭素鋼である。
【0091】
(実施例1;加熱実験1)
本実施例では、図9に示されるように、高周波加熱用誘導子として、内周面にフェライト鉄14を埋め込んだ鞍型誘導子11を使用した。この鞍型誘導子11の外周側には外周面冷却用ジャケット12が配置され、内周側には冷却水の導入管(導水管)2が配置されている。ここで、前記フェライト鉄14の埋め込み長さは履帯ブッシュ1の長さとほぼ同じとし、かつ鞍型誘導子11は履帯ブッシュ1の外周面から約3mm離れるような形状とした。また、高周波加熱電源としては6kHz,300kWのものを使用した。なお、図9において符号13にて示されるのは絶縁体である。
【0092】
図10に示されるように、履帯ブッシュ1は、上下端部が、履帯ブッシュ内周面と外周面の各冷却媒体を仕切る上部仕切り治具7および下部仕切り治具8により固定され、この状態で240rpmの速度で回転されながら約950℃に全体加熱される。このときの履帯ブッシュA,B,Cのそれぞれの1個当たりの投入電力は、A;50kW,B;80kW,C;150kWとした。この場合、例えば履帯ブッシュBの加熱時間は約24秒程度であった。
【0093】
しかし、回転させながら外周面からの高周波加熱を実施する場合、仕切り治具7,8にSUS304等の金属体を使用すると、履帯ブッシュとの接触部において放電が起こり、接触部近傍と端面部が異常に加熱されることがわかったので、本実施例では仕切り治具7,8の材料を絶縁体である石綿にして前記放電現象を防止するようにした。なお、前記鞍型誘導子11を用いる加熱実験に際しては、前記仕切り治具7,8の材質として、より耐久性に優れたSiN4,ムライト,Al2O3,石英等のセラミック材を用いるのが好ましい。
【0094】
さらに、履帯ブッシュBを2個重ねて外周面からの高周波加熱を実施した場合にも、重ね合わさった履帯ブッシュ端面部で前述と同様の放電現象が起こって異常加熱されたので、この場合においても重ね合わせる部分に図11に示されるような絶縁性に優れた石綿よりなる中間仕切り治具9を介在させることによって、放電現象を防止することができた。
【0095】
(実施例2;加熱実験2)
本実施例では、前記実施例1において観察された放電現象を防止するために、履帯ブッシュBに対して、図12に示されるような渦巻き型コイル16を用いて高周波加熱を実施した。なお、この渦巻き型コイル16の基本設計は、φ10mmの銅管を用いてコイル間隔が10〜25mmになるように、かつコイル内径が履帯ブッシュ外径より約15mm大きくなるように巻き、両端部のコイル終端部における1/2巻きを履帯ブッシュ端面に平行になるようにしている。高周波電源は実施例1と同じものを用い、履帯ブッシュB1個当たりの投入電力は110kWとして加熱した。このとき、この履帯ブッシュBが約950℃に加熱される時間は約12秒程度であった。
【0096】
また、前述のSUS304製の仕切り治具(図10参照)を用いて加熱した場合においても、治具接触部での放電現象の発生は無く、これに起因する異常加熱も防止できることがわかった。
【0097】
さらに、2個の履帯ブッシュBを重ねて加熱した場合においても、履帯ブッシュが重ね合わさった部分での放電現象も防止できることは、複数個の履帯ブッシュを同時に加熱する生産性の高い加熱方式として極めて有効な手段であることがわかった。また、前記仕切り治具が耐久性に優れた金属で製作できることはコスト的にも極めて有効であった。
【0098】
なお、実施例1において発生した放電現象が本実施例で防止できた大きな原因は、鞍型誘導子によって履帯ブッシュに流れる電流の方向が円筒軸に平行な方向であるのに対し、渦巻き型コイルによって履帯ブッシュに流れる電流の方向が円筒体の円周に沿う方向であることによることは明らかである。
【0099】
(実施例3;内周面冷却装置と冷却状況の観察)
本実施例では、内周面冷却の冷却媒体として水を用い、さらに履帯ブッシュの代わりに各履帯ブッシュの内径に等しい透明なアクリル樹脂円筒管を用いて目視観察による流れ実験を実施した。具体的には、図13(a)に示されているように、冷却水の導入管2の外径を履帯ブッシュ(アクリル樹脂円筒管)1の内径よりそれぞれ2,4,8,10,20mm小さく設定して、履帯ブッシュ1の内径よりも僅かに小さい直径の球面をもつ上部仕切り治具7を用いて、履帯ブッシュ内周面と導入管外周面とで構成される空間に履帯ブッシュの円筒軸の上から下の方向へ冷却水を流すことによって実施した。このときの水量としては、25,50,100,150,200,300リットル/minの水準とした。
【0100】
また、比較例として、図13(b)に示されるスプレーノズル6Aを使用した。ここで、ノズル設計は、例えば履帯ブッシュBでは、ノズル孔径をφ1.3mmとして、ノズル外径を履帯ブッシュ内径(φ38mm)よりノズル孔径の約18倍小さくなるφ15mmとし、さらにノズル孔径の約9倍の直径をもつ履帯ブッシュ内周面面積を冷却するものとして孔数を千鳥に配置するようにした。
【0101】
前述のアクリル樹脂円筒管を用いた目視観察による流れ実験の結果、25〜300リットル/minの流量で冷却水の導入管外径と履帯ブッシュの内径との差が2〜20mmで、冷却水の導入開始からほとんど瞬時に、空気巻き込みのない良好な層流状態が達成されることがわかったが、より詳細に、層流状態が発生するためのアクリル樹脂円筒管内径と導入管外径から求まる空間断面積に対する水量を調査した結果、図13(a)の層流ノズルでは約9リットル/min・cm2以上、図13(b)のスプレーノズルでは約12リットル/min・cm2以上であることがわかった。また、導入管2からの冷却水供給を停止した後の層流水はそれ自身がもつ慣性力によって排出されようとするが、この層流水は密閉空間内に真空状態が発生することによる反力によって引き戻され、排出口からの空気の進入を待って不均一にゆっくりと排出されることがわかった。この現象は、内周面冷却途中に層流冷却を中断した場合には、この不均一でゆっくりとした冷却水の排出によって、履帯ブッシュ内周面の冷却が不均一になることによるものであるのは明らかであり、内周面冷却を焼入れ途中で一旦中断して再冷却するような、自己熱による焼戻し(セルフテンパー)処理が困難であることを示している。
【0102】
本実施例では、前述の慣性力によって層流水がすばやく排出されるようにするため、前記密閉空間内に真空状態が発生しないようにするガス導入弁43を配し、このガス導入弁43を介して冷却停止からほぼ0.1秒後に空気などのガスを導入するように作動させた結果、極めて良好な排出性が確認できた。
【0103】
なお、履帯ブッシュB,C用のスプレーノズル6A(C用のノズル外径φ25mm)を用いて、水量と内周面の水流状況とを観察した。この結果、履帯ブッシュCでは、100,150,200リットル/minの条件では、履帯ブッシュ上部においては良好なスプレー条件が実現されていたが、中、下部においては上部からの落下水とスプレー水の干渉によって十分なスプレー条件が達成されていないことがわかった。また、300リットル/minの条件では、スプレー冷却状態から履帯ブッシュ内周面とスプレーノズル外周面とで形成される空間にほぼ完全に水充填され、ほぼ完全な層流状態が実現されることがわかった。また、履帯ブッシュBでも150リットル/minの条件で同じ結果が得られた。これにより、これらの条件でのスプレー冷却が層流冷却にほぼ等しいことが明らかであった。さらに、スプレーノズル6Aを用いた冷却では、冷却水を停止した後においてもノズル孔からの流水がしばらく続くために、前述のような導入管2による冷却水の排出性が期待できないことがわかった。
【0104】
(実施例4;内周面冷却時の外周面温度変化の観察による冷却方法の検討)
履帯ブッシュCを用いて実施例2と同じ条件にて約980℃に加熱した後に10秒間放冷し、高周波による追い加熱を実施せずに、100、200リットル/minの流量で前述の層流冷却とスプレー冷却のみを実施して、外周面の温度変化を非接触式光温度計で計測しながら、冷却速さと冷却の均一性を観察した。この結果、層流冷却法では、図14(a)に示されるように履帯ブッシュの上、中、下のいずれの場所においてもほぼ均等に冷却されているのに対し、スプレー冷却法では、図14(b)に示されるように上部の冷却速度は層流冷却とほぼ同じであるが、中〜下部にかけて冷却が遅れることが観察され、層流冷却法が内周面冷却法として極めて有効であることがわかった。ただし、スプレー冷却法においても、水量を300リットル/minに上げた場合には、ほぼ均一に冷却されている。これは実施例3に示したように内周面が層流冷却状態に変化しているためである。
【0105】
なお、履帯ブッシュCおよびBにて確認されたスプレー冷却による不均一化の問題は、ブッシュ内径がより小さくなり、冷却条件がより厳しくなる履帯ブッシュAにおいてより問題となる。また、このスプレー冷却の場合、複数個の履帯ブッシュを端面部同士で重ねて同時に内周面を均一に冷却することは極めて困難であることは明らかである。
【0106】
そこで、本実施例ではさらに、2個の履帯ブッシュBを端面部同士で重ね合わせて実施例2と同じ条件で内周面冷却だけを実施し、外周面の温度変化を前記と同じように計測した。この結果、2個の履帯ブッシュBの全外周面がほぼ均等に冷却され、層流冷却法が小径長尺円筒体の内周面冷却方法として極めて有効な手段であることがわかった。
【0107】
さらに、前記2個の履帯ブッシュBの内周面冷却を3秒間実施した後に2秒間内周面冷却を中断して内周面を復温させて再冷却した場合であっても、外周面の温度変化は均一であり、実施例3のガス導入弁43を作動させることによる冷却水の排出性改善効果も確認された。
【0108】
(実施例5;仕切り治具による断熱効果の確認)
図15に、本実施例で使用した履帯ブッシュC用の仕切り治具が示されている。図示のように、上部仕切り治具7、下部仕切り治具8ともに、履帯ブッシュ1の内周面に長さが10mmの内周面冷却防止用の薄肉円筒部7a,8aが設けられており、約45°の面取り部で履帯ブッシュ1と接触して固定されるように設計した。また、仕切り治具材料としては、SUS304と石綿とを使用した。
【0109】
前記仕切り治具7,8を用いて履帯ブッシュCを実施例4と同じ条件で加熱・放冷した後に、流量200リットル/min、導入管外径が履帯ブッシュ内径より8mm小さい条件で内周面冷却を実施して、外周面での温度変化を調べた。この結果、仕切り治具7,8が位置する近傍において、外周面の冷却が顕著に遅れ、仕切り治具による冷却防止効果が明確に確認され、より断熱効果の大きい石綿材を用いた場合にその効果が一層顕著であった。
【0110】
同様の冷却防止効果は、2個の履帯ブッシュB間に中間仕切り治具9(図3参照)を配置して重ね合わせ、実施例2と同じ条件で加熱した後に、流量200リットル/min、導入管外径が履帯ブッシュ内径より8mm小さい条件で内周面冷却を実施して、外周面での温度変化を調べた結果においても確認された。これらの上下仕切り治具および中間仕切り治具による冷却防止効果は、後述する実施例で、1個もしくは複数個の履帯ブッシュ両端面部のシール平坦部を外周面冷却によって焼入れ硬化させるための手段として極めて有効であることがわかった。
【0111】
(実施例6;焼入れ実験1)
本実施例では、実施例1の鞍型誘導子による加熱を実施した後に、表1に示される条件にて所定時間の放冷後に、加熱条件とほぼ同じ条件で外周面からの高周波追い加熱を実施しながら内周面を履帯ブッシュ内径より8mm小さい導入管を使って、各種流量の層流冷却および実施例3に記載のスプレー冷却を実施し、完冷した後に、内周面と外周面の硬さ計測によって焼入れムラの発生状況を調べた。
【表1】
【0112】
なお、表1の内周面先行冷却時間は各履帯ブッシュA,B,Cの肉厚断面における焼入れ硬化硬さ分布を予備調査して選ばれたものである。例えば図16は履帯ブッシュBを外周面から約950℃に加熱した後、内周面層流冷却時間を変えて先行冷却した後に外周面をスプレー冷却した場合(TSQ)と5.5秒間の先行冷却中も外周面からの高周波加熱を継続した後、その加熱を止めて外周面をスプレー冷却した場合(TSIQ)に得られた硬さ分布を示したものである。同図から、TSQにおいて、内外周面を同時に冷却した場合には、肉厚断面においてスルーハード化するが、先行時間4〜6秒では前記本発明の主旨に沿った硬さ分布が得られ、さらに5.5秒のTSIQでは(同図中×印で示す)、本発明の主旨である外周面硬化層がより深く形成されるとともに、内部における未焼入れ硬化層がより安定して軟質となることがわかる。
【0113】
また、本実施例で使用する外周面スプレー冷却用のジャケットは、ノズル孔径を1.5mmとして、ノズル間隔を13.5mmで千鳥状に配置したものとした。また、履帯ブッシュ外周面とジャケット内周面とのクリアランスは履帯ブッシュA,B,Cのそれぞれに対して30mmとした。
【0114】
表2に、内、外周面の焼入れ結果が示されている。2段重ねの履帯ブッシュAの層流焼入れにおいて内周面における焼入れムラは無く、極めて良好な焼入れ品質が確保できたのに対し、スプレー冷却では、履帯ブッシュ内径がその長さに対して小さいために、1個の焼入れにおいても、内周面下部に位置する場所に焼入れムラが発生している。例えば履帯ブッシュA,B,Cの長さLと内径dの比(L/d)で評価した場合には、約3.3以上で焼入れムラが発生し易いことがわかった。このことは、上部スプレー水の排出性を考慮すると、前記L/d比と焼入れムラの発生し易さとの関係は極めて重要である。
【表2】
【0115】
なお、内径ノズルから噴射されるスプレー水に下部位置で最大30°の下向き角度になるように順次角度を持たせて内周面冷却を実施した結果、ほぼ内周面における焼入れムラを解消することができた。しかし、2個同時の焼入れにおいては焼入れムラの発生を防止することはできなかった。
【0116】
ただし、2個の履帯ブッシュBと1個の履帯ブッシュCをそれぞれ内周面スプレー水量を200,300リットル/minにして焼入れた場合には、内周面に発生していた焼入れムラが防止されることがわかった。これは実施例3にて述べたように、内周面のスプレー冷却が層流化したことによることは明らかである。
【0117】
さらに、2個の履帯ブッシュBを履帯ブッシュ内径と導入管外径との径差が8mmで、水量が25,50リットル/minの条件で焼入れを実施した場合には、25リットル/minで下段側の履帯ブッシュ内周面に焼入れムラがわずかに発生し始めることがわかったので、内周面をムラ無く焼入れるためには、流速が1m/sec以上で、かつ水流量が0.1リットル/min・cm2以上の条件が好ましいことがわかった。
【0118】
また、本実施例では、外周面での焼入れムラは焼入れ荷姿の下段側に多く発生しており、外周面冷却用のスプレー水の鞍型誘導子との干渉による冷却ムラに起因していることが明らかである。これは、履帯ブッシュCについて、高周波追い加熱終了後約3秒間で鞍型誘導子を除去して外周面スプレー冷却を実施することによって、外周面での焼入れムラの発生が防止できることからも明らかである。
【0119】
なお、本実施例における高周波による全体加熱条件は実施例1と同じ条件であったが、外周面冷却用ジャケットを配置した状態での加熱は、履帯ブッシュの加熱時の放熱性を減じることから、加熱時間としては実施例1の場合に比べて約20%短縮できており、より断熱性を高めることによってより加熱時間の短縮化が可能であることは明らかである。このことは履帯ブッシュ内径部に配置されるノズルなどに対しても有効である。
【0120】
(実施例7;焼入れ実験2)
本実施例では、まず2個の履帯ブッシュBを用いて、実施例2の渦巻き型コイルによる加熱を実施した後に、表1に示される条件で所定時間の放冷後に、加熱条件とほぼ同じ条件で所定時間の外周面からの高周波追い加熱を実施しながら内周面を層流冷却またはスプレー冷却し、さらに高周波追い加熱を中止した後にコイルを1秒以内で移動除去させ、外周面冷却を実施する一連の焼入れ操作後に、内周面と外周面の硬さ計測によって焼入れムラの発生状況を調べた。この結果が表3に示されている。併せて、渦巻き型コイルを移動させずに、コイル隙間からの外周面スプレー冷却を実施した結果についても表3に示されている。
【表3】
【0121】
実施例6で問題となった外周面の焼入れムラはコイルを移動させた場合には完全に除去することができた。また、コイルを移動させないでコイル隙間からの外周面冷却ではロックウェル硬さがHRC50以下になる顕著な焼入れムラは観察されなかったが、外周面の平均焼入れ硬さがHRC2〜3ほど低くなり、履帯ブッシュの耐摩耗性の観点からは改善の余地を残していることは明らかである。
【0122】
また、本実施例では、実施例5で述べた仕切り治具における高さ10mmの薄肉円筒部7a,8a(図15参照)を、3mmにしたものと無いものとを用いた履帯ブッシュCの両端面部のシール平坦面の焼入れ改善を実施した。図17(a1)(a2)(b1)(b2)(c1)(c2)はそれぞれ、薄肉円筒部長さが0mm,3mm,10mmの場合における履帯ブッシュの両端面部近傍のマクロ組織を比較したものである。この図から明らかなように、シール平坦面において薄肉円筒部の長い仕切り治具を使うほどに、外周面焼入れ硬化層がより内周側に寄り、とりわけ薄肉円筒部の長さが10mmの石綿製仕切り治具を用いたものでは前記硬化層が完全に内周面に繋がっていることがわかる。
【0123】
図18には、図17(a1)(a2)〜(c1)(c2)に対応する平坦部の表面硬さが示されている。この結果から、外周面からの高周波追い加熱を実施しながら内周面を先行冷却する際に、仕切り治具を使った冷却防止効果を付加することによって、外周面から履帯ブッシュ肉厚の1/2以上のシール平坦面を焼入れ硬化できることが明らかである。
【0124】
さらにまた、2個の履帯ブッシュBを重ねて組立てる時に、履帯ブッシュ間にSUS304製の仕切り治具(図3参照)を配置して、2個同時に高周波加熱し、表1に示される条件で焼入れした結果、中間の仕切り治具が配置された端面部のシール平坦部が前記履帯ブッシュCと同様に焼入れ硬化されていることがわかった。
【0125】
(実施例8;焼入れ実験3)
本実施例では、履帯ブッシュCを用いて、実施例7と同じ条件で全体加熱した後に10秒間放冷による均熱化を図り、16秒間の外周面からの高周波追い加熱と内周面の層流冷却とを同時に行い、その後4秒間の追い加熱と内周面冷却とを中断した後に、内周面と外周面からの冷却を実施して焼入れ操作を終了した。ここで、内周面冷却を中断する際には、実施例3で述べたガス導入弁43によって空気を導入し、中断時の層流の排出性を高めた場合とそうでない場合とを比較した。この結果、中断時の層流の排出性を高めた場合においてのみ、履帯ブッシュC内周面における焼入れムラの発生がなく、極めて良好な品質が確認できた。
【0126】
図19には、履帯ブッシュC中央部の肉厚方向での硬さ分布を、実施例7の低温で焼戻し(180℃、2hr)したものと比較して示されているが、内周面の焼入れ硬化層の硬さがわずかに焼戻されていることがわかる。
【0127】
(実施例9;外周面の層流冷却実験)
本実施例は、履帯ブッシュBを用いて外周面を層流冷却により冷却したものである。図20には、内、外周面層流焼入れ装置の概略構成が示されている。この焼入れ装置は、履帯ブッシュ1の外径より大きい内径を有する外周用円筒体44内にその履帯ブッシュ1を配置して、この履帯ブッシュ1の外周面と外周用円筒体44との間に冷却媒体をその履帯ブッシュ1の軸心方向に流すようにし、かつその外周用円筒体44の外側に渦巻き型の高周波コイル45を配置したものである。ここで、外周用円筒体44には肉厚が5mmの石英材を使用した。なお、符号46にて示されるのは断熱体である。
【0128】
加熱・冷却条件は前述のとおりであるが、外周面の水量は300リットル/min、内周面の水量は200リットル/minとした。この結果、外周面硬さは実施例7の表3に示したようにコイルを移動させて焼入れたものと同じであった。このことから、外周面を層流冷却することが履帯ブッシュの耐摩耗性の観点からより好ましく、またコイル移動のための設備投資も軽減できることがわかった。
【0129】
(実施例10)
本実施例では、実施例7で熱処理した履帯ブッシュCを180℃で2時間焼戻したものと実施例8の内周面焼入れ硬化層を自己焼戻ししただけのものの強度を調査するとともに、比較材としてSCM420鋼材で浸炭焼入れして180℃で2時間焼戻して製作した履帯ブッシュCの強度を調査した。強度評価は図21に示される衝撃疲労試験装置を用い、車体重量(50,000kg)の2倍,3倍,4倍に相当する衝撃荷重をかけて、破壊に至るまでの衝撃回数を調べることにより行った。図22にはその測定結果が示されている。この結果から明らかに、本発明品は従来の浸炭処理した履帯ブッシュに比べて高い衝撃疲労強度を示している。また、実施例8で内周面焼入れ硬化層を自己焼戻し処理したものにおいても優れた強度を示すことがわかり、別の低温焼戻し処理が省略できることによる大幅な生産性の向上とコストの低減が期待できることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)(b)(c)は、内周面冷却用ノズル例を示す断面図である。
【図2】図2(a)(b)は、方向変換部材の変形例を示す断面図である。
【図3】図3は、仕切り治具とその配置を示す断面図である。
【図4】図4(a1)(a2)〜(d1)(d2)は、外周用円筒体の例を示す断面図である。
【図5】図5は、外周面層流冷却の水流の例を示す断面図である。
【図6】図6は、焼入れ装置の概略構成図である。
【図7】図7は、熱処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】図8は、実施例に用いた履帯ブッシュ形状である。
【図9】図9は、高周波加熱用誘導子の形状を示す断面図である。
【図10】図10は、冷却媒体の仕切り治具形状を示す断面図である。
【図11】図11は、中間仕切り治具形状を示す断面図である。
【図12】図12は、渦巻き型コイルの形状を示す図である。
【図13】図13(a)(b)は、内周面冷却装置を示す断面図である。
【図14】図14(a)(b)は、内周面冷却による外周件の温度変化を示すグラフである。
【図15】図15は、履帯ブッシュC用仕切り治具形状を示す図である。
【図16】図16は、表1の内周面先行冷却時間を設定するための予備調査結果を示すグラフである。
【図17】図17(a1)(a2)(b1)(b2)(c1)(c2)は、履帯ブッシュCの端面シール平坦部近傍のマクロエッチ組織を示す写真およびその説明図である。
【図18】図18は、履帯ブッシュCの端面シール平坦部の表面硬さ分布を示す図である。
【図19】図19は、内周面冷却の中断による自己焼戻し履帯ブッシュCの硬さ分布を示すグラフである。
【図20】図20は、内、外周面層流焼入れ装置を示す断面図である。
【図21】図21は、衝撃疲労試験装置を示す図である。
【図22】図22は、履帯ブッシュCの衝撃疲労試験結果を示す図である。
【図23】図23は、履帯の分解斜視図である。
【図24】図24は、履帯ブッシュ端面のシール平坦部におけるシール当たり位置を説明する図である。
【符号の説明】
1 履帯ブッシュ
2,4 導入管(導水管)
3,3A,3B 方向変換部材
6 内径ノズル
7 上部仕切り治具
8 下部仕切り治具
9 中間仕切り治具
10,15,17,18,44 外周用円筒体
11 鞍型誘導子
12 外周面冷却用ジャケット
13 絶縁体
16,30 渦巻き型コイル
20 焼入れ装置
23 高周波加熱装置
24 冷却装置
29 高周波変成器
31 支持装置
34 加圧装置
40 熱処理装置
41 トンネル式高周波加熱炉
42 搬送装置
43 ガス導入弁
Claims (22)
- 履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に加熱した後、外周面からの高周波加熱を実施しつつ内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に前記外周面からの冷却を実施する一連の焼入れ作業において、前記外周面からの高周波加熱中もしくはその高周波加熱を止めて前記外周面の冷却を始めるまでの間に、前記内周面からの冷却を一旦止めて前記外周面から前記内周面への熱の拡散によって内周面側を焼戻しした後、前記外周面および前記内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層が形成されるとともに、外周面側焼入れ硬化層および内周面側焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層が残されてなり、かつ前記外周面側焼入れ硬化層の硬化層深さが前記内周面側焼入れ硬化層の硬化層深さに比べてより深く形成されてなり、前記未焼入れ層の組織が焼入れ温度からの冷却過程で析出するフェライトおよびパーライトのうちの1種以上の組織からなるとともに、前記内周面側焼入れ硬化層が焼戻しマルテンサイト組織からなることを特徴とする履帯ブッシュ。
- 両端面のシール平坦部の表面層が前記外周面から肉厚の1/2以上の幅にわたって焼入れ硬化されてなる請求項1に記載の履帯ブッシュ。
- 前記外周面側焼入れ硬化層は、高周波加熱による焼戻し処理が施されて、少なくとも前記外周面の硬度がHV=500以上である請求項1または2に記載の履帯ブッシュ。
- 履帯ブッシュの外周面からの高周波加熱が行えるとともに、内周面冷却媒体と外周面冷却媒体とが互いに干渉し合わないように履帯ブッシュの両端面部で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却とを独自に行える焼入れ装置であって、前記内周面冷却媒体が、履帯ブッシュの内径よりも小さい外径を有する導入管にて流入された後、前記仕切り治具の壁面によって方向変換されて前記導入管外周面と履帯ブッシュ内周面とに囲まれる空間に流されるように構成される焼入れ装置を用いて、履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に外周面からの高周波加熱によって加熱した後、もしくは別工程で焼入れ処理可能な温度に全体加熱した履帯ブッシュ素材を外周面からの高周波追い加熱ができる焼入れ装置にセットした後、この履帯ブッシュ素材の内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、または外周面からの高周波加熱を実施しつつ内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの高周波加熱を止めて履帯ブッシュの軸心方向に平行に該履帯ブッシュの外周面に冷却媒体を流すことによって外周面からの冷却を実施する一連の焼入れ作業において、履帯ブッシュの端面の内周面の冷却を遅らせること、および/または外周面からの高周波追い加熱によって有効に両端面部が加熱されるような形状の仕切り治具であって、内周面に履帯ブッシュの両端面のシール平坦部および内周面面取り部に当接する内周面冷却防止用の薄肉円筒部を有する上部仕切り治具および下部仕切り治具と、内周面に内周面冷却防止用の薄肉円筒部を有し、隣接する履帯ブッシュ同士がその端面を露出するようにして当該中間仕切り治具を介して重ねられる中間仕切り治具とよりなる仕切り治具を用い、前記内周面および外周面を履帯ブッシュの軸心方向に平行に冷却媒体を流して冷却することによって、外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層を形成するとともに、外周面側焼入れ硬化層および内周面側焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層を残すようにし、かつ前記外周面側焼入れ硬化層の硬化層深さが前記内周面側焼入れ硬化層の硬化層深さに比べてより深く形成し、前記未焼入れ層の組織を焼入れ温度からの冷却過程で析出するフェライトおよびパーライトのうちの1種以上の組織にするとともに、両端面のシール平坦部の表面層を外周面から肉厚の1/2以上の幅にわたって焼入れ硬化させることを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。
- 履帯ブッシュの外周面からの高周波加熱が行えるとともに、内周面冷却媒体と外周面冷却媒体とが互いに干渉し合わないように履帯ブッシュの両端面部で仕切り治具を押し当てながら、内周面冷却と外周面冷却とを独自に行える焼入れ装置を用いて、履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に外周面からの高周波加熱によって加熱した後、もしくは別工程で焼入れ処理可能な温度に全体加熱した履帯ブッシュ素材を外周面からの高周波追い加熱ができる焼入れ装置にセットした後、1)この履帯ブッシュ素材の内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、もしくは2)外周面からの高周波加熱を実施しつつ内周面からの冷却を実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、もしくは3)外周面からの高周波加熱を実施しつつ内周面からの冷却を実施した後、外周面からの高周波加熱を止めて履帯ブッシュの軸心方向に平行に該履帯ブッシュの外周面に冷却媒体を流すことによって外周面からの冷却を実施するいずれかの一連の焼入れ作業において、外周面からの冷却を始めるまでの間に、内周面からの冷却を一旦止めて外周面から内周面へ熱を拡散させるようにし、外周面および内周面から肉厚中心部に向かって焼入れ硬化層を形成するとともに、外周面側焼入れ硬化層および内周面側焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層を残すようにし、かつ前記外周面側焼入れ硬化層の硬化層深さが前記内周面側焼入れ硬化層の硬化層深さに比べてより深く形成し、前記未焼入れ層の組織を焼入れ温度からの冷却過程で析出するフェライトおよびパーライトのうちの1種以上の組織にし、前記内周面側焼入れ硬化層を焼戻しマルテンサイト組織にすることを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。
- 前記外周面が高周波加熱により焼戻しされる請求項5に記載の履帯ブッシュの製造方法。
- 前記内周面冷却媒体と外周面冷却媒体とを仕切る仕切り治具は、内周面に履帯ブッシュの両端面のシール平坦部および内周面面取り部に当接する内周面冷却防止用の薄肉円筒部を有する上部仕切り治具および下部仕切り治具と、内周面に内周面冷却防止用の薄肉円筒部を有し、隣接する履帯ブッシュ同士がその端面を露出するようにして当該中間仕切り治具を介して重ねられる中間仕切り治具とよりなり、その接触部における媒体漏れが極小になるようにされている請求項5または6に記載の履帯ブッシュの製造方法。
- 履帯ブッシュ素材を焼入れ処理可能な温度に加熱した後、履帯ブッシュの軸心方向に平行に冷却媒体を流すことによって内周面および外周面が冷却される内周面冷却と外周面冷却および/または外周面からの高周波加熱ができる焼入れ装置を用いて、この履帯ブッシュ素材の内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、もしくは外周面からの高周波追い加熱を実施しつつ内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、もしくは外周面からの高周波加熱を止めて履帯ブッシュの軸心方向に平行に該履帯ブッシュの外周面に冷却媒体を流すことによって外周面からの冷却を実施する一連の焼入れ作業において、前記内周面冷却用の冷却媒体を導入するために、履帯ブッシュの内径よりも小さい外径を有する導入管を内周面側に配置し、この導入管にて流入される冷却媒体を壁面によって方向変換させてその導入管外周面と履帯ブッシュ内周面とに囲まれる空間に履帯ブッシュの内周面に平行で、かつその履帯ブッシュの軸心方向に平行に流すことによる層流冷却を行うことによって、複数個の履帯ブッシュの内周面においてもムラの無い焼入れ硬化層を形成するとともに、外周面からの冷却によっても外周面側に焼入れ硬化層を形成し、かつ外周面側焼入れ硬化層および内周面側焼入れ硬化層間に軟質な未焼入れ層を残すようにし、しかも前記外周面側焼入れ硬化層の硬化層深さが前記内周面側焼入れ硬化層の硬化層深さに比べてより深く形成し、前記未焼入れ層の組織が焼入れ温度からの冷却過程で析出するフェライトおよびパーライトのうちの1種以上の組織にすることを特徴とする履帯ブッシュの製造方法。
- 前記高周波加熱もしくは高周波追い加熱が鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルによって行われ、複数個の履帯ブッシュが同時に焼入れされる請求項4〜8のいずれかに記載の履帯ブッシュの製造方法。
- 前記鞍型誘導子による加熱は、互いに隣接する履帯ブッシュ間に絶縁体を挟んで行われる請求項9に記載の履帯ブッシュの製造方法。
- 複数個の履帯ブッシュを同時に焼入れる際に、隣接する履帯ブッシュ同士がその端面を露出させるような中間仕切り治具を介して重ねられることによって、この中間仕切り治具に接する履帯ブッシュ両端面のシール平坦部の表面層が外周面から肉厚の1/2以上の幅にわたって焼入れ硬化される請求項9または10に記載の履帯ブッシュの製造方法。
- 前記外周面の冷却は、履帯ブッシュをその外径より大きい内径を有する外周用円筒体内に配置して、この外周用円筒体と履帯ブッシュ外周面との間に冷却媒体を履帯ブッシュの外周面に平行で、かつその履帯ブッシュの軸心方向に流して層流冷却により行われる請求項8〜11のいずれかに記載の履帯ブッシュの製造方法。
- 前記外周用円筒体は、鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルを一部に含むか、またはその鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルの内側もしくは外側に配置されるとともに、絶縁材料をその外周用円筒体に隣接させて誘導加熱され難いように工夫された請求項12に記載の履帯ブッシュの製造方法。
- 履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に加熱する加熱装置および/または前記履帯ブッシュ素材の外周面からの高周波加熱ができる焼入れ装置とを備える履帯ブッシュの製造装置において、
前記焼入れ装置は、履帯ブッシュの内径よりも小さい外径を有する冷却媒体導入のための導入管を履帯ブッシュの内周面側に配し、その履帯ブッシュ内周面と前記導入管の外周面と仕切り治具とに囲まれる空間に冷却媒体を流すことによって内周面を層流冷却するように構成される内周面冷却装置を有していることを特徴とする履帯ブッシュの製造装置。 - 前記内周面冷却装置は、内周面冷却の停止時に前記導入管と履帯ブッシュ内周面とで構成される空間に流動する冷却媒体を履帯ブッシュの外側へ排出するガス導入弁を備えている請求項14に記載の履帯ブッシュの製造装置。
- 履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に均一に加熱する加熱装置と、前記履帯ブッシュ素材の外周面からの高周波追い加熱ができる焼入れ装置とを備える履帯ブッシュの製造装置において、
前記焼入れ装置は、履帯ブッシュの内周面側に配されその履帯ブッシュの内径よりも小さい外径を有して冷却媒体を導入する導入管と、履帯ブッシュの外周面側に配されその履帯ブッシュの外径よりも大きい外径を有して冷却媒体を導入する外周用円筒管を備え、この外周用円筒管と履帯ブッシュ外周面との間に冷却媒体を流し、外周面を層流冷却するように構成されていることを特徴とする履帯ブッシュの製造装置。 - 前記冷却媒体を導入する外周用円筒管は、高周波追い加熱によって発熱しないSi3N4,Al2O3,SiO2,ムライトにより作製される請求項16に記載の履帯ブッシュの製造装置。
- 前記外周用円筒体は、鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルを一部に含むか、またはその鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルの内側もしくは外側に配置されるとともに、絶縁材料をその外周用円筒体に隣接させて誘導加熱され難いように工夫された請求項16に記載の履帯ブッシュの製造装置。
- 鞍型誘導子を一部に含むか、またはその鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルの外側に配置される前記外周用円筒体は、2個以上に分割されるとともに、高周波加熱時においてはその鞍型誘導子もしくは渦巻き型コイルから離れた位置にあって、冷却時には合致して外周円筒体になる構成である請求項16に記載の履帯ブッシュの製造装置。
- 前記焼入れ装置は、高周波追い加熱のためのコイルの内径側および外径側の少なくとも一方に履帯ブッシュを囲む断熱体が配置され、および/または内周面冷却媒体を導入する導入管の外周面が断熱体にて被覆される請求項14または16に記載の履帯ブッシュの製造装置。
- 履帯ブッシュ素材全体を焼入れ処理可能な温度に外周面から高周波加熱した後に所定の焼入れ作業ができるように、または別工程において焼入れ処理可能な温度に全体加熱した履帯ブッシュ素材をセットした後に所定の焼入れ作業ができるように、履帯ブッシュを支持する支持装置と、この支持装置により支持された履帯ブッシュの外周面から高周波加熱を行う高周波加熱装置と、前記履帯ブッシュの内周面冷却媒体と外周面冷却媒体とが互いに干渉し合わないようにその履帯ブッシュの両端面に仕切り治具を押し当ててその履帯ブッシュを加圧・固定する加圧装置と、内周面冷却と外周面冷却とを独自に行える冷却装置とを備え、
前記所定の焼入れ作業は、履帯ブッシュの内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、もしくは履帯ブッシュの外周面からの高周波加熱と内周面からの先行冷却とを実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施する一連の焼入れ作業または、履帯ブッシュの内周面からの冷却を先行して実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施するか、もしくは履帯ブッシュの外周面からの高周波加熱と内周面からの先行冷却とを実施し、所定時間後に外周面からの冷却を実施する作業において、外周面からの冷却を始めるまでの間に、内周面からの冷却を一旦止めて外周面から内周面への熱の拡散によって内周面を焼戻しした後、内周面の再冷却を実施し、外周面からの冷却を行う一連の焼入れ作業のいずれかであることを特徴とする履帯ブッシュの製造装置。 - 前記高周波加熱装置は、複数個の履帯ブッシュを同時に加熱する際に隣接する履帯ブッシュの接触位置または履帯ブッシュ間にセットした仕切り治具位置での放電現象を防止する渦巻き型コイルである請求項21に記載の履帯ブッシュの製造装置。
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