JP4817898B2 - 熱処理装置および熱処理方法 - Google Patents
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Description
一方、係る構成部材(ローラ等)の内周面は、シャフト挿通のため、あるいは、軸受けを収容するために、靭性は確保するものの、嵌合を不利なものとしないために、ある程度の被切削性あるいは被加工性が要求されるので、外周面ほど硬さを高くすることができない。
しかし、係る熱処理においては、熱処理対象物が具備する全熱量が大きなため、冷却を行った面における硬化深さが十分に得られないという問題が存在する。
しかし、係る従来技術は、焼もどし炉のような雰囲気加熱では個別での処理は不可能なため、誘導加熱などによらなければならないので、高価な誘導加熱設備を必要とする。また、全体としての熱処理時間が長くなってしまうので、作業性の向上が困難である。
しかし、熱処理対象物の芯部まで冷やし切ってから焼入れ機外に搬出しているので、全体としての冷却時間が長くなってしまうという問題点を有している。
しかし、係る従来技術は、原材料である圧延鋼材(鋼製品)の熱処理を意図したものであり、上述したような問題を何ら解決するものではない。
熱処理対象物がたとえばスプロケット(1A)である場合には、前記第1の領域はスプロケット(1A)の歯の部分(11A)であり、前記第2の領域はスプロケット(1A)の回転軸が挿入される貫通孔の内周面(12A)およびスプロケット側面の取付用フランジ接合個所(13A)である。
そして前記制御手段(6)は、第4の所定時間(t4)が経過したら第1の冷却手段および第2の冷却手段(2、3)を停止させるように制御するのが好ましい。
一方、第1の領域(11、11A)については、第1の冷却手段(2)により急速冷却(冷却液の噴射)が続行されるので、焼入れ硬化が行われる。
その結果、第1の領域(11、11A)は極めて硬さが高くなり、十分な耐摩耗性を獲得することができる。そして第2の領域(12、12A、13A)については、高温での自己焼もどしの結果として硬さはさほど高くはならないので、良好な被切削性あるいは被加工性が得られるのである。
上記メリットに関連して、同一レベルの硬化深さを得るのに、より低級な鋼でも対応可能になる。
比較的低い温度での自己焼もどしの工程を入れることで、良好な耐摩耗性を有する部材が得られる。
まず、図1〜図5を参照して、第1実施形態を説明する。
図1において、全体を符号100で示す熱処理装置は、図示しない加熱装置を備えており、あるいは、図示しない加熱装置の一部分を構成している。この加熱装置自体は、従来から公知の装置あるいは市販されている装置をそのまま流用することができる。
第2の冷却装置3は、第2の開閉弁5を介装した第2の冷却流体供給ラインL2を介して、冷却流体が供給されるように構成されている。
また、第1の冷却流体供給ラインL1は、分岐点B2で、複数の分岐ラインL11(図1では2本示しているが、あくまでも例示である)に分岐している。
図1において、符号Soはコントロールユニット6と開閉弁4、5を接続する制御信号ラインを示している。
一方、図3は、熱処理対象物である中空円筒状部材の一例として、スプロケット1Aを示した斜視図である。図3において、スプロケットの歯の部分(歯面)には符号11Aを付し、図示しない回転軸が挿入される貫通孔の内周面に符号12Aを付し、スプロケット1Aの側面において、取付用フランジ(図示せず)と接触して押圧される領域(取付フランジ接合個所)を符号13Aで示す。
図示の実施形態では、図2で示す中空円筒状部材1を熱処理対象物とした場合について、例示している。
図4において、符号LAは外周面(図2の符号11、図3の符号11A)の温度変化特性を示し、符号LBは内周面(図2の符号12、図3の符号12A)の温度変化特性を示し、符号LCは中空円筒状部材1の肉厚の中間部(13:半径方向について、外周面11と内周面12との中間の部分:いわゆる「肉厚芯部」)の温度変化特性を示している。
図5のフローチャートにおいて、ステップS1では、熱処理対象物1が所定温度、たとえば850℃(図4のT0点)まで加熱されたか否かを判定する。そして、所定温度(たとえば850℃)に加熱されるまで待機する(ステップS1でNOのループ)。所定温度(たとえば850℃)に達したならば(ステップS1のYES)、第1および第2の開閉弁4、5を開放して、第1(外周側)の冷却装置2および第2(内周側)の冷却装置3から、図1の例では中空円筒状部材1の外周面11および内周面12へ冷却液を噴射する(ステップS2)。
ここで、所定時間t1は、内周側の温度が図4では符号Ti1で示す温度(たとえば、約400℃)まで降下するまでの時間である。所定時間t1は、熱処理の対象物(ワーク)の要求品質、寸法、形状等により異なる。たとえば、中空円筒状部材であれば、当該部材の要求品質、全長、外周の径寸法、内周の径寸法、質量等によって、所定時間t1が適宜決定される。
第2の冷却装置3からの冷却液の噴射のみが停止する結果、中空円筒状部材1(図1参照)の内周面12には、外周面11と内周面12との(半径方向について)間の領域(肉厚芯部13)に残存する熱が内周面12側に伝導して、内周側が高温で焼もどしされる(高温での自己焼もどし)。
内周面12の温度(温度変化特性LB参照)は、肉厚芯部13の温度(温度変化特性LC参照)と同程度になる位まで(約650℃:図4において、温度変化特性LBと温度変化特性LCとが交差する個所の温度)昇温し、その後、緩やかに降温する。
図4を参照すれば明らかなように、当該焼もどし(自己焼もどし)は、比較的高い温度(図4において、温度変化特性LBと温度変化特性LCとが交差する個所の温度:約650℃)まで加熱されて行われる。
すなわち、内周面12とは異なり、外周面11では、いわゆる「自己焼もどし」は行われない。
第2の所定時間t2が経過するまでは、上述した領域D(図4)の状態、すなわち、外周面11は冷却液により急速冷却が行われ、内周面12は自己焼もどしが行われる状態を続行する(ステップS5がNOのループ)。
第2の所定時間t2が経過したならば(ステップS5のYES)、ステップS6に進み、第1の開閉弁4も閉鎖して、第1の冷却装置2を停止して、制御を終了する。
一方、外周面11は冷却液の噴射が続行されるので急速冷却が続き、焼入れ硬化する。その結果、外周面11は、高硬度となり、良好な耐摩耗性が得られる。
ここで第2実施形態は、図1〜図5で説明した第1実施形態と同様の熱処理装置を用いている。
そして、第2実施形態と第1実施形態とは、熱処理あるいは熱処理のための制御が異なっている。
図6を参照すれば、第2実施形態に係る熱処理では、コントロールユニット6は、熱処理の対象物、たとえば中空円筒状部材1(図1参照)が所定の温度(たとえば850℃:図6の符号T0)に加熱された際に、第1の冷却装置2(図1参照)および第2の冷却装置3(図1参照)を作動させて、中空円筒状部材1の外周面11(図1)および内周面12(図1)に冷却液を噴射する。
そして、第4の所定時間t4が経過したならば、第1の冷却装置2および第2の冷却装置3を停止させて、中空円筒状部材1の外周面11および内周面12に対する冷却液の噴射を中止する。
図7のステップS11〜S14までは、図5(第1実施形態)のステップS1〜S4と同様である。従って図7のステップS14では、図5のステップS4と同ように、第2の冷却装置3(図1)からの冷却液の噴射を停止させ、中空円筒状部材1(図1参照)の内周面12に、いわゆる「肉厚芯部」に残存する熱を伝導させて、いわゆる「高温自己焼もどし」(比較的高い温度で行われる自己焼もどし)を行わせる。
第3の所定時間t3が経過したなら(ステップS15のYES)、ステップS16に進み、第2の開閉弁5(図1)を再び開放して、第2の冷却装置3による内周面12の冷却を再開する(ステップS16)。
なお、第3の所定時間t3については、中空円筒状部材1の要求品質や寸法等により、ケース・バイ・ケースで決定される。
第4の所定時間t4が経過すれば(ステップS17がYES)、第1および第2の開閉弁4、5(図1)を閉鎖し、第1および第2の冷却装置2、3を停止して、中空円筒状部材1の外周面11および内周面12の冷却を終了する(ステップS18)。そして、制御を終了する。
その結果、熱処理作業全体の時間を短縮して、熱処理作業の能率を向上させることができるのである。
第3実施形態においても、第1実施形態および第2実施形態でおける熱処理装置100と同様な装置が用いられる。
ここで、第3実施形態において、第1実施形態あるいは第2実施形態と相違する点は、熱処理における冷却あるいはそのための制御である。
コントロールユニット6(図1)は、たとえば中空円筒状部材1が所定の温度(たとえば850℃:図8の温度T0点)に加熱された場合に、第1の冷却装置2および第2の冷却装置3を作動させ、第1の所定時間t1が経過したら第2の冷却装置3のみを停止させて、内周面12側を、比較的高温にて、いわゆる「高温自己焼もどし」(図8の領域Sh2)を行わせる。
図9におけるステップS21〜S26までは、図7のステップS11〜S16と同様である。たとえば、図9のステップS24(図8の領域Sh2に相当)では、図5のステップS4や図7のステップS14と同ように、第2の冷却装置3(図1)からの冷却液の噴射を停止させ、肉厚芯部13に残存する熱を伝導させて、中空円筒状部材1(図1参照)の内周面12に、比較的高温にて、いわゆる「高温自己焼もどし」を行わせる。
図8において、第6の所定時間t6において、たとえば外周面11の温度は100℃前後である。
たとえば、第1と第2の冷却装置の作動タイミングを図示の実施形態と逆にすることで、当該熱処理を受けたワーク(中空円筒状部材)の外周面を柔らかく、内周面を硬くすることもできる。
その場合、第1の冷却装置2はスプロケット1Aの歯の部分(歯面)11Aに冷却用流体(たとえば冷却液)を噴射するように構成される。そして、第2の冷却装置3は、スプロケット1Aの貫通孔の内周面12Aと、スプロケット1A側面における取付用フランジ(図示せず)との接合個所(取付フランジ接合個所)13Aに対して、冷却用流体(たとえば冷却液)を噴射するように構成される。
2・・・第1の冷却手段/外周側の冷却装置
3・・・第2の冷却手段/内周側の冷却装置
4・・・第1の開閉弁
5・・・第2の開閉弁
6・・・コントロールユニット
11・・・外周面
12・・・内周面
13・・・肉厚の中央部/肉厚芯部
L1・・・第1の冷却流体供給ライン/第1の冷却液ライン
L2・・・第2の冷却流体供給ライン/第2の冷却液ライン
Claims (6)
- 熱処理対象物である中空円筒状部材またはスプロケットを熱処理するための熱処理装置において、熱処理対象物の硬さが要求される第1の領域を冷却する第1の冷却手段と、熱処理対象物の被切削性あるいは被加工性が要求される第2の領域を冷却する第2の冷却手段と、制御手段とを有し、該制御手段は所定温度まで加熱された熱処理対象物を焼入れ冷却するために第1の冷却手段および第2の冷却手段を同時に作動させた後、第2の冷却手段を停止させ、第2の領域の高温自己焼もどしを行う制御をするように構成されていることを特徴とする熱処理装置。
- 前記制御手段は、所定時間が経過したら第2の冷却手段を再び作動させる制御を行うように構成されている請求項1の熱処理装置。
- 前記制御手段は、所定時間が経過したら第2の冷却手段を再び作動させ、別の所定時間が経過したら第1の冷却手段および第2の冷却手段を停止し、熱処理対象物の内部に残留した熱が第1の領域および第2の領域の表面および表面近傍に伝導することにより焼もどしを行う制御を実行するように構成されている請求項1の熱処理装置。
- 請求項1の熱処理装置を用いて熱処理対象物に熱処理を行う熱処理方法において、第1の冷却手段および第2の冷却手段を同時に作動させる工程と、第2の領域の高温自己焼もどしを行うために、第1の所定時間が経過したら第2の冷却手段を停止させる工程、とを有することを特徴とする熱処理方法。
- 請求項2の熱処理装置を用いて熱処理対象物に熱処理を行う熱処理方法において、所定時間が経過したら第2の冷却手段を再び作動する工程を有する請求項4の熱処理方法。
- 請求項3の熱処理装置を用いて熱処理対象物に熱処理を行う熱処理方法において、所定時間が経過したら第2の冷却手段を再び作動する工程と、第2の冷却手段を再び作動させてから別の所定時間が経過したら第1および第2の冷却手段を停止する工程と、熱処理対象物の内部に残留した熱が第1の領域および第2の領域の表面および表面近傍に伝導することにより焼もどしを行う工程、とを有する請求項4の熱処理方法。
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