JP3856545B2 - 履帯ブッシュの熱処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばブルドーザのような建設機械などに使用される履帯ブッシュの熱処理方法に関するものであり、より詳しくは履帯ブッシュの耐摩耗性,耐衝撃性を改善するための熱処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建設機械等の履帯51は図14に示されているような各部品群で構成されており、とりわけ履帯ブッシュ52は、終減速装置からの回転運動を伝えるスプロケットティースと噛み合い、履帯51を回転させる機能を持つことから、内外径面においては耐摩耗性が要求されると同時にブッシュとしては苛酷な強度と靭性とが必要とされる。これらの必要特性を満足させるために、従来、この履帯ブッシュの製造に際しては、次に示されるような方法が実施されている。
▲1▼肌焼鋼に浸炭処理を施して、内外表面層に高硬度なマルテンサイトを形成し、耐摩耗性と強度の確保を図るようにしたもの(例えば特公昭52ー34806号公報参照)。
▲2▼中炭素鋼を使用して、素材調質したブッシュ素材の内外径部をそれぞれ高周波焼き入れして内外表面層に高硬度なマルテンサイトを形成し、また外径から高周波焼き入れによって深く焼き入れた後に内周面から高周波焼き入れして外,内周面硬化層間に焼き戻しマルテンサイトからなる軟化層をV字型に形成させて耐摩耗性と強度の確保を図るようにしたもの(特公昭63−16314号公報参照)。
なお、図15には、これらの従来法によって生産されるブッシュの代表的な硬化パターン模式図(a)(b)(c)および断面の硬度分布(d)がそれぞれ示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記▲1▼の浸炭法においては、浸炭時間が長くかかるとともに、浸炭ガスの大量使用等のコスト的な観点からの問題が大きく、例えばブッシュの肉厚が厚くなる大型履帯ブッシュでは、強度,耐摩耗性の観点から必要硬化層深さがより深くなるため、生産性の低下とコストの高騰が問題になる。さらに、内外周表面においては浸炭加熱時間が長時間に及ぶために粒界酸化層や不完全焼き入れ層が数十μm厚さで形成され、疲労強度や耐衝撃特性が劣化し易くなるという問題点がある。
【0004】
一方、▲2▼の高周波焼き入れ法では、▲1▼の浸炭法に比べてコスト的な改善がなされているが、高周波焼き入れ前の素地硬度の確保のための素材調質処理が必要であったり、内外径を同時に加熱することが出来ないために、内径,外径の二度焼き入れ処理が必要であるなど、依然として高価な熱処理になってしまうという問題点がある。
【0005】
さらに、ブッシュ外周面側は使用中において過酷な土砂摩耗条件に晒されることから、ブッシュとしての摩耗寿命を高めるために、ブッシュ外周面側の焼き入れ硬化層をより深くすることが望ましいが、高周波焼き入れ法では外周面加熱の時間が長くなって生産性が悪化し、経済的に不利になる。
【0006】
さらにまた、特公平1−37453号公報において、中炭素低合金鋼を素材として外径面側から高周波移動加熱を行いながら、外径面側から冷却して、履帯ブッシュの肉厚全体を焼き入れしたスルハード履帯ブッシュの熱処理方法が開示されており、かなり安価な熱処理となっている。しかし、この公報に記載の熱処理方法では、外径面側一方からの冷却によって肉厚全体をスルハード化させる必要があるために、使用する鋼の焼き入れ性を高めるためのコストアップが避けられず、また冷却途中での焼き割れ感受性を考慮して、含有させる炭素濃度が0.5重量%以下の中炭素低合金鋼に限定され、その結果として履帯ブッシュ外径面の耐摩耗性改善を図るのが難しいという問題点がある。
【0007】
本発明は前述のような問題点に鑑みてなされたもので、その主たる目的は、中高炭素の円筒状鋼製履帯ブッシュ素材を焼き入れ処理可能な温度に加熱した後に、一工程の焼き入れ作業中において、焼き割れなく、履帯ブッシュ肉厚全体を焼き入れ硬化層とすることによって、前述の浸炭処理,高周波焼き入れ処理よりも生産性とコストの改善を図り、素材の炭素含有量を高く設定することによって履帯ブッシュ外周面部の耐摩耗性をより高めた履帯ブッシュを安価に製造する熱処理方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明では、前述のように内径面(内周面)と外径面(外周面)との冷却開始時間に差異を持たせるものの、基本的には内外周面からの両方冷却でスルハード化させることによって、前述の外周面側からだけの冷却によるスルハード化に比べて、市販性の高い安価な鋼材を履帯ブッシュ素材として使用できるような熱処理方法を提供するものである。
【0009】
さらに、本発明では、前述の履帯ブッシュの内周表面の焼き入れ硬化層を優先的に靱性化して衝撃疲労強度の改善を図るとともに、外周表面側焼き入れ硬化層の硬度を高めた状態にすることによって、靱性と外周面耐摩耗性に優れた履帯ブッシュの熱処理方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前述の目的を達成するために、本発明による履帯ブッシュの熱処理方法は、
中高炭素鋼もしくは中高炭素低合金鋼を素材とする履帯ブッシュをA1温度以上に加熱した後に、外径面冷却と内径面冷却の開始が個々に決められる焼き入れ装置を用いて、外径表面部もしくは内径表面部のうちのいずれか一方からの冷却を先行開始して後に続いて外径表面部もしくは内径表面部のうちの他方からの冷却を実施して履帯ブッシュの肉厚全体を焼き入れし、その後に履帯ブッシュ全体を焼き戻しすることを特徴とするものである。
【0011】
このように履帯ブッシュ素材を焼き入れ処理可能な温度に加熱した後に、水,水溶性焼き入れ液,オイル等の冷却媒体を用い、内周面冷却と外周面冷却の開始が個々に決められる焼き入れ装置を利用して、一回の焼き入れで内周面または外周面からの先行冷却によって履帯ブッシュの肉厚芯部での熱容量を少なくし熱勾配を持たせた後に、時間的遅れを持つ外周面または内周面からの冷却によって、焼き入れ途中で発生する熱応力と変態応力に起因する引張り応力を低減させてスルハード化による焼き割れ感受性を無くし、本来内周面および外周面からの同時冷却によってはスルハードとなり、焼き割れる高炭素な合金組成の鋼に対してもスルハード化による焼き割れを防止するとともに、履帯ブッシュの外周面の耐摩耗寿命を改善し、かつ安価にブッシュを製造するものである。
【0012】
なお、履帯ブッシュ素材に使用する鋼として、0.35重量%の中炭素鋼からほぼ1.5重量%炭素の高炭素鋼を使用して、外周面焼き入れ硬化層の硬度を浸炭焼き入れブッシュほぼ同等以上にまで引き上げることによって、耐摩耗性、摩耗寿命および強度に優れた履帯ブッシュを安価に製造する。また、本発明に適用できる鋼の焼き入れ性を決める合金組成は内外周面からの同時冷却によってスルハード化する最下限DI値以上で決められるが、前述のように基本的には内外周両面からの冷却で焼き入れされるものであり、前述の外周面からだけの冷却によるスルハード化される中炭素低合金鋼よりも安価な鋼がより肉厚の厚い大型の履帯ブッシュに対しても用いることが出来るようにし、大幅なコストの低減を図った。
【0013】
特に中高炭素鋼材を用いることによって履帯ブッシュ外周面側の耐摩耗性を確保しながら、履帯ブッシュの耐衝撃性(靱性)を得るために、ブッシュ素材を焼き入れ可能な温度に加熱した後に、上述の方法による焼き入れ処理において内周面冷却終了時間を早めて、内周部のセルフテンパー化を図った後に履帯ブッシュ全体に焼き戻しを施し、または焼き入れ完了後に内周表面部からの高周波焼き戻し(誘導焼き戻し)を施してとりわけ内周表面硬化層の硬さをH450〜600に調整することによって靱性を高め、かつ外周面側の焼き入れ硬化層の硬度を高めたまま、浸炭硬化層以上の耐摩耗性と耐衝撃性に優れた履帯ブッシュを安価に製造するものである。
【0014】
本発明の特徴は、上述のようにブッシュ全体をほぼ均一に加熱、内周面先行冷却開始後に、外周面冷却を実施して一工程の焼き入れ作業中に焼き入れ操作を終える熱処理操作に基づくので、従来の高周波焼き入れ法のように、内周面側と外周面側の二度の硬化深さの調整を実施する必要がなく、内外径を別々に加熱焼き入れすることがないために高生産性が実現できる。特に、加熱方法は誘導加熱方式や炉加熱方式にこだわる必要は無いが、誘導加熱方式を採用することによって生産性の向上と設備投資の抑制、エネルギー効率の改善などの点で好ましい。
【0015】
さらに、本発明では前記焼き入れ方法では内周面冷却と外周面冷却の開始が個々に決められる焼き入れ装置を利用することを特徴としている。また、円筒状内周面側の冷却方法としては冷却ムラを発生しやすいことから、水スプレーや油スプレー等の噴流冷却方式が好ましいが、例えば、内周部側を先行冷却する際の冷却媒体が先行冷却中に外周部に干渉しないように、例えば図1に示すように冷却媒体の流れを考慮してスプレー角度を持たせることや、図1のA部のような仕切り構造(遮蔽板)を施すことが好ましい。
【0016】
さらに、炉加熱方式の場合には多数個の履帯ブッシュを上述のように内周面から先行冷却する場合や外周面から先行冷却する場合には、図2(a)(b)に示されるように、履帯ブッシュ1の端面同士を突き合わせて一本の鋼管のように配置した後に内周面部と外周面部とをそれぞれ内周面冷却水2および外周面冷却水3によって独自に制御して焼き入れることが望ましい。なお、これら内周面冷却水2および外周面冷却水3は遮蔽板4によって遮蔽される。また、図2(b)(c)に示される例では、内部に内周面冷却ノズル5が配されている。
【0017】
誘導コイルを用いて履帯ブッシュの一部を移動加熱しながら、例えば内周面を先行して冷却し、外周面を冷却する時差焼き入れする方法は、焼き入れ設備が大がかりにならず、かつ生産の自由度の高い方法である。この場合においても、例えば図3に示されているように、履帯ブッシュ1の上下端面には遮蔽板4,4’が配置され、内周面冷却ノズル5が誘導加熱帯を先行冷却するとともに、外周面冷却ノズル6による冷却が時間的遅れを持って行われるように配置されて、誘導加熱コイル7および内周面冷却ノズル5および外周面冷却ノズル6をブッシュ軸方向に相対的に移動しながら焼き入れることが望ましく、さらに履帯ブッシュを回転させながら実施することが好ましい。なお、外周面を先行して冷却する場合には上述と逆の冷却ノズルの配置になることは当然のことである。
【0018】
前述の説明のように、本発明によれば、高周波加熱や炉加熱によって▲1▼ほぼ均一に加熱した履帯ブッシュをオイル、水などの冷却媒体によって、▲2▼内周面または外周面からの先行冷却を実施した後、▲3▼外周面または内周面からの冷却を施して、焼き割れ感受性をなくして一工程中において中高炭素で焼き入れ性の低い安価な鋼材を用いた履帯ブッシュの肉厚全体を焼き入れ硬化させ、外周面の耐摩耗寿命の改善を図る安価な熱処理方法を提供することによって経済的利益を大きく得ることができる。
【0019】
さらに、浸炭ブッシュと同等以上の高炭素含有量で、耐摩耗性に優れた高硬度な硬化層を外周面に深く形成させることにより、顕著な耐摩耗性と耐摩耗寿命の改善とを図ることができ、また内周面をより高温側で焼き戻し、内周表面層を靱性化することによる耐衝撃強度の向上を図ることができ、履帯ブッシュの機能を大幅に向上することができる。
【0020】
【実施例】
次に、本発明による履帯ブッシュの熱処理方法の具体的な実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施例1)
本実施例で使用した鋼材成分が表1に示されている。また、本実施例に使ったブッシュ形状が図4に、このブッシュの各サイズが表2にそれぞれ示されている。焼き入れのための加熱には中性雰囲気中での炉加熱を行い、焼き入れ装置としては図1に示したようなスプレー焼き入れ装置を使用した。なお、本スプレー焼き入れ装置はブッシュ内周面を冷却するためのスプレーと外周面を冷却するスプレーとから構成されており、かつスプレー冷却開始が独立して制御されるようになっている。また、内周面冷却用スプレーはブッシュ内径部での水がブッシュ下部方向に滞留無く流れることを考慮して、内周面法線方向に対して適当な噴射角度を持たせており、かつブッシュ下部端には内周面冷却用の冷却水の流れと外周面冷却用の冷却水の流れを仕切るための遮蔽板、ブッシュ上部端には内周面冷却用の冷却水の流れと外周面冷却用の冷却水の流れを仕切るためのキャップを設置している。
【0022】
【表1】
Figure 0003856545
【0023】
【表2】
Figure 0003856545
【0024】
なお、焼き入れ操作は基本的には上述の条件での炉加熱によって履帯ブッシュを850℃,30分で均熱加熱した後に、すばやく図1の焼き入れ装置に示されるように履帯ブッシュを設置して、内周面と外周面の冷却を所定の条件で開始して焼き入れ、続いて140℃で3時間の低温焼き戻し処理を施した。なお、一部は加熱方式を外周面側からの全体高周波加熱として実施している。
【0025】
図5は、No.1〜No.4の鋼材を用いた履帯ブッシュ(形状B)を利用して内外周面を同時に焼き入れたときのスルハード化と焼き割れ頻度の関係を示したものであり、縦軸には表面残留応力、横軸には外径部表面硬度の勾配を取っている。図中に10本中の焼き割れ本数を注記しているが、スルハード化に伴って焼き割れ性が顕著になっていることが分かる。また、図6〜図10はNo.1,No.2,No.4,No.5,No.6の鋼材を用いた履帯ブッシュに対して、内外周面の冷却開始を同時に行った場合と内周面を先行冷却してから外周面を冷却して焼き入れた場合の肉厚断面における硬度分布を示したものである。図中には履帯ブッシュ10本中に発生した焼き割れ履帯ブッシュの数(割れ率)を併記しているが、2秒の内周面先行冷却によって完全に焼き割れが防止できていることが分かる。焼き割れを防止できる先行冷却時間の設定は、適用する履帯ブッシュの肉厚によって変わると考えられ、例えば肉厚が8.3mmの小型履帯ブッシュ(形状A)に対しては約1秒の先行冷却によって焼き割れが防止できることが分かった。
【0026】
また、1.34重量%の炭素を含有するNo.6は8秒の内周面先行冷却によってもスルハード化されており、かつ完全に焼き割れ性が防止されていることが分かる。また、図8〜図10の硬度分布から分かるように外周面部の硬化層の硬さはHv700〜850と浸炭熱処理履帯ブッシュと同等以上になっており、明らかにブッシュ外周面部の耐摩耗性が顕著に高められることがわかる。なお、No.4の鋼材を用いた履帯ブッシュ(形状B)を使って、外周面先行冷却時間による焼き割れ性の関係を調べたが、先のNo.4の内周面先行冷却とほぼ同じく焼き割れ性を防止できることが分かった。
【0027】
(実施例2)
図11には衝撃疲労試験方法を示した。実施例1と同じ熱処理を施したNo.1,No.4,No.6の履帯ブッシュ(形状B)を履帯リンクに圧入して、打撃ハンマーを落下させてブッシュ内径部に発生する応力が車体重量(36トン)の2,3,4倍に相当する条件で衝撃荷重をかけ、破壊に至るまでの衝撃回数を調べることによってブッシュの衝撃疲労特性を比較した。なお、本実施例ではSCM415鋼を使って、浸炭処理後に油焼き入れ焼き戻し(850℃焼き入れ、180℃,3hrの焼き戻し)を施した従来の浸炭ブッシュを比較のために使用した。表面硬度は約HV 750、素地硬度はHV 390であった。
【0028】
測定結果を図12に示したが、明らかにNo.6を除く本発明品は従来の浸炭ブッシュに比べて高い衝撃強度を示しているが、これは従来の浸炭ブッシュ内周面に前述のように粒界酸化や不完全焼き入れ層が存在することおよび浸炭品の表面炭素濃度が高く(約0.8重量%炭素)、表面硬度がより高いことに起因すると考えられる。また、本発明品のNo.6履帯ブッシュは焼き入れ状態においてセメンタイトを分散析出していることが図12での衝撃強度の明らかな改善に繋がらないと考えることが出来ることから、本発明品においても内周表面硬度を調整し、より靭性化することによって衝撃疲労強度を高めることが可能となる。
【0029】
図13は、No.6の本発明ブッシュの内周面側から高周波焼き戻しを実施して、内周表面硬度と衝撃破壊回数との関係を調べたものであるが、明らかに表面硬度がHv=450〜550に最適強度が認められた。なお、Hv=400においても従来浸炭ブッシュよりも強度が高いが、実際の使用条件においては履帯ピンとの干渉によって例えば焼き付きや摩耗の進行が問題となるので、経験的ではあるがHv=450以上が好ましい。
【0030】
また、最高硬さの上限については従来浸炭ブッシュ品との比較において特に規定されるものでないが、浸炭表面硬度(〜Hv=750)と同程度であって問題となることはないと考えられる。しかし衝撃性能を最適化する意味合いからすると内周部表面硬度はHv=650程度に止めておくことが好ましいと考えられる。
【0031】
なお、本発明では内外周面の両方冷却を独自に制御できる装置を用いることが特徴であることから、内周面硬化の硬さを低減する方法として焼き入れ途中での内周面冷却時間を短くして内径部がセルフテンパー化することによって硬さを調整することが可能であることは容易に想像される。
【0032】
(実施例3)
図3に示される焼き入れ装置を利用するとともに、表3に示される焼き入れ条件で実施した。なお、試験に供試する履帯ブッシュ形状はBとし、鋼材成分はNo.4のもの使用して、さらに、内周面冷却ノズル5からの冷却水の内周面に当たる位置と外周面冷却ノズル6からの冷却水の外周面にあたる位置との差を0と30mmに調整して、移動速度が5mm/secの時に内径先行冷却時間が約0と6secとなるように調整している。誘導加熱温度は外周表面で約920℃、内周表面温度が約850℃となるように調整している。
【0033】
【表3】
Figure 0003856545
【0034】
焼き入れ後に140℃で1時間焼き戻したときのブッシュ肉厚断面での硬度分布は図8とほぼ同じ結果を示しているが、内外周面を同時に冷却したブッシュは10本中4本の焼き割れを示したが、内周面を約6秒先行冷却したブッシュに関しては完全に焼き割れが防止できていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、焼き入れ装置を示す断面図である。
【図2】図2(a)(b)は、多数個ブッシュの焼き入れ装置を例示する断面図、図2(c)は、(b)の縦断面図である。
【図3】図3は、誘導加熱コイルを用いた焼き入れ装置を示す断面図である。
【図4】図4は、供試ブッシュの形状を示す断面図である。
【図5】図5は、形状Bの履帯ブッシュを利用したスルハード化と焼き割れ頻度との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、形状B,組成No.1の時差焼き入れブッシュの硬度分布を示すグラフである。
【図7】図7は、形状B,組成No.2の時差焼き入れブッシュの硬度分布を示すグラフである。
【図8】図8は、形状B,組成No.4の時差焼き入れブッシュの硬度分布を示すグラフである。
【図9】図9は、形状B,組成No.5の時差焼き入れブッシュの硬度分布を示すグラフである。
【図10】図10は、形状B,組成No.6の時差焼き入れブッシュの硬度分布を示すグラフである。
【図11】図11は、衝撃疲労試験方法を示す図である。
【図12】図12は、衝撃疲労試験結果を示すグラフ▲1▼である。
【図13】図13は、衝撃疲労試験結果を示すグラフ▲2▼である。
【図14】図14は、履帯ブッシュの分解斜視図である。
【図15】図15(a)(b)(c)は、従来法によって生産されるブッシュの代表的な硬化パターンの模式図、図15(d)は、断面の硬度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 履帯ブッシュ
2 内周面冷却水
3 外周面冷却水
4 遮蔽板
5 内周面冷却ノズル
6 外周面冷却ノズル
7 誘導加熱コイル
8 履帯リンク

Claims (7)

  1. 中高炭素鋼もしくは中高炭素低合金鋼を素材とする履帯ブッシュをA1温度以上に加熱した後に、外径面冷却と内径面冷却の開始が個々に決められる焼き入れ装置を用いて、外径表面部もしくは内径表面部のうちのいずれか一方からの冷却を先行開始して後に続いて外径表面部もしくは内径表面部のうちの他方からの冷却を実施して履帯ブッシュの肉厚全体を焼き入れし、その後に履帯ブッシュ全体を焼き戻しすることを特徴とする履帯ブッシュの熱処理方法。
  2. 前記焼き入れ装置が、履帯ブッシュの冷却途中で外径面冷却媒体と内径面冷却媒体とが互いに干渉しないように、冷却媒体の流れを考慮して、内径面冷却媒体と外径面冷却媒体との間に履帯ブッシュを介して仕切り構造を有する焼き入れ装置であることを特徴とする請求項1に記載の履帯ブッシュの熱処理方法。
  3. 炉加熱または誘導加熱法によって履帯ブッシュ素材を焼き入れ温度にほぼ均一に全体加熱した後に、外径表面部もしくは内径表面部のうちのいずれか一方を1秒以上先行冷却し始めた後に続いて外径表面部もしくは内径表面部のうちの他方を冷却することを特徴とする請求項1に記載の履帯ブッシュの熱処理方法。
  4. 履帯ブッシュ素材の外径表面部もしくは内径表面部のうちのいずれか一方から移動誘導加熱しながら、外径表面部および内径表面部からの加熱面に対するスプレー冷却を少なくとも1秒以上の時間的差異を持たせて実施することを特徴とする請求項1に記載の履帯ブッシュの熱処理方法。
  5. 前記焼き戻しを、140〜300℃の温度範囲で行うことを特徴とする請求項1に記載の履帯ブッシュの熱処理方法。
  6. 中高炭素鋼もしくは中高炭素低合金鋼を素材とする履帯ブッシュをA1温度以上に加熱した後に、外径面冷却と内径面冷却の開始が個々に決められる焼き入れ装置を用いて、外径表面部もしくは内径表面部のうちのいずれか一方からの冷却を先行開始して後に続いて外径表面部もしくは内径表面部のうちの他方からの冷却を実施して履帯ブッシュの肉厚全体を焼き入れし、その後に内径表面側からの誘導焼き戻し処理を施すか、または焼き入れ冷却時の内径表面側の冷却を外径表面側の冷却よりも速く止めて内径表面のセルフテンパー化を行った後に履帯ブッシュ全体に焼き戻し処理を施すことを特徴とする履帯ブッシュの熱処理方法。
  7. 前記焼き戻し処理において、内径部表面層の硬さが 450〜600に調整されていることを特徴とする請求項に記載の履帯ブッシュの熱処理方法。
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