JP4010346B2 - 不等肉厚部を有する部材の内周面を高周波焼入する方法 - Google Patents

不等肉厚部を有する部材の内周面を高周波焼入する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不等肉厚部を有する部材の内周面を高周波焼入する方法及び装置に関し、さらに詳しくは、不等肉厚部を有するトリポート型等速ボールジョイント(トリポートハウジング)の軌道溝やホイールハブの転動溝等を無酸化状態の下で高周波焼入するのに適用して好適な高周波焼入方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来において高周波無酸化移動焼入を行なうに際しては、次のような方法を採用している。すなわち、開放された下端部分が冷却槽の冷却液中に浸積されている容器、或いは、冷却槽が内部に配置された密閉容器を用いると共に、この容器の内部を不活性ガス或いは還元性ガスを充満した状態とし、この状態の下で前記容器内に配設された高周波誘導加熱コイルにてワーク(軸状部材)を下降移動させながら加熱し、しかる後に冷却槽の冷却液中に浸積し、冷却液中に設けた冷却ジャケットから冷却液をワークに噴射させることにより焼入を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の高周波無酸化移動焼入方法及び装置にあっては、ワーク(被焼入体)の加熱位置と冷却位置とが異なるので加熱直後の冷却ができずに冷却の遅れが生じ、冷却時には所要の焼入温度よりも低い温度(浅い加熱状態)になるおそれがある。このような浅い加熱状態の下での冷却では、不完全な焼入となり易い。そのためこのような不具合を回避するには、加熱位置と冷却位置との間でワークを迅速に移動させることができ、しかも、ワークの停止位置を高精度で定めることができる高性能のワーク移動機構が必要となる。
【0004】
また、前記容器内への高周波誘導加熱コイル,冷却槽等の配設により、それなりの容積を必要とする。従って、容器内に充満させるためのガスの量も必然的に多くなり、容器内に残存する酸素(空気)を容器外に排出するのに時間を要し、焼入作業の能率が悪いという問題点がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解消すべくなされたものであって、その目的は、高性能のワーク移動機構を必要としない簡素な構成でありながら、不等肉厚部を有する部材(有底碗状体又は無底筒状体)の内周面を理想的な無酸素状態の下で高周波焼入することができるような方法及び装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明では、不等肉厚部を有する有底碗状体の内周面を高周波誘導加熱コイルにて加熱した後に、この加熱した内周面に冷却手段から冷却液を噴射することにより、前記内周面に焼入を施すようにした高周波焼入方法において、
(A) 前記有底碗状体の内周面の底部に向けて所要の圧力及び流量の不活性ガス、又は還元性ガス、或いは不活性ガス及び還元性ガスの混合ガスを噴射して、このガスを前記高周波誘導加熱コイルと前記有底碗状体の被加熱部との間に形成された通路に流動せしめることにより、前記ガスを前記有底碗状体の被加熱部の表面に接触させつつ前記内周面の開口端に向けて流動せしめる工程と、
(B) 前記開口端より流れ出たガスを前記開口端に隣接して設けたハウジング内に充満させながら、前記有底碗状体及びハウジングの内部の空気を前記ハウジングに設けたガス排出部より排出させることにより、前記有底碗状体の内周面を無酸素状態にする工程と、
(C) この無酸素状態の下で前記有底碗状体の内周面の被加熱部を高周波誘導加熱する工程と、
(D) 前記有底碗状体の被加熱部が所要の焼入温度に到達した時点で高周波誘導加熱を遮断すると共に前記ガスの噴射を停止する工程と、
(E) この後に、所要の焼入温度に加熱された前記有底碗状体の内周面に冷却液を噴射して前記内周面を急速冷却する工程と、
をそれぞれ具備するようにしている。
【0007】
また、本発明では、不等肉厚部を有する無底筒状体の内周面を高周波誘導加熱コイルにて加熱した後に、この加熱した内周面に冷却手段から冷却液を噴射することにより、前記内周面に焼入を施すようにした高周波焼入方法において、
(A) 前記無底筒状体の両端の開放口のうちの一方に蓋状治具を取付けてこの蓋状治具にて前記無底筒状体の一端の開放口を閉塞する工程と、
(B) 前記無底筒状体の他端の開放口から前記蓋状治具に向けて所要の圧力及び流量の不活性ガス、又は還元性ガス、或いは不活性ガス及び還元性ガスの混合ガスを噴射して、このガスを前記高周波誘導加熱コイルと前記無底筒状体の被加熱部との間に形成された通路に流動せしめることにより、前記ガスを前記無底筒状体の被加熱部の表面に接触させつつ前記無底筒状体の他端の開放口に向けて流動せしめる工程と、
(C) 前記無底筒状体の他端の開放口より流れ出たガスをこの開放口に隣接して設けたハウジング内に充満させながら、前記無底筒状体及びハウジングの内部の空気を前記ハウジングに設けたガス排出部より排出させることにより、前記無底筒状体の内周面を無酸素状態にする工程と、
(D) この無酸素状態の下で前記無底筒状体の内周面の被加熱部を高周波誘導加熱する工程と、
(E) 前記無底筒状体の被加熱部が所要の焼入温度に到達した時点で高周波誘導加熱を遮断すると共に前記ガスの噴射を停止する工程と、
(F) この後に、所要の焼入温度の加熱された前記無底筒状体の内周面に冷却液を噴射して前記内周面を急速冷却する工程と、
をそれぞれ具備するようにしている。
【0008】
また、本発明では、前記ハウジングから排出するガスの流量を、被加熱部に噴射するガスの流量、前記内周面の内部空間容積、及び前記ハウジングの容積に応じて調整するようにしている。
【0009】
また、本発明では、前記ハウジングから排出されるガスを、前記ハウジングのガス排出部において燃焼させるようにしている。
【0010】
また、本発明では、ガス導入管の一端から前記有底碗状体の内周面の底部に向けてのガスの噴射と、前記ガス導入管のうちの少なくとも前記有底碗状体の内周面の被加熱部に対向する箇所に設けた複数の細孔から前記有底碗状体の内周面の被加熱部に直接的に向けてのガスの直接噴射とを併用し、前記被加熱部への直接噴射ガス流量を前記底部への噴射ガス流量より小さく調整するようにしている。
【0011】
また、本発明では、ガス導入管の一端から前記無底筒状体の一端の蓋状治具に向けてのガスの噴射と、前記ガス導入管のうちの少なくとも前記有底碗状体の内周面の被加熱部に対向する箇所に設けた複数の細孔から前記無底筒状体の内周面の被加熱部に直接的に向けてのガスの直接噴射とを併用し、前記被加熱部への直接噴射ガス流量を前記蓋状治具への噴射ガス流量より小さく調整するようにしている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図9を参照して説明する。なお、以下においては、自動車の回転力伝達部の構成部品である固定式等速ボールジョイントの外輪の受口部内表面(内周面)を高周波焼入する場合の実施態様について述べることとする。
【0017】
一般に、等速ボールジョイント1は、図1に示す如く、走行輪(図示せず)が保持されるステム部2及びこのステム部2の一端に設けられたベルマウス状受口部3で構成される外輪4と、駆動軸としてのシャフト5に連結される内輪6と、これらの外輪4と内輪6の間に挿入された動力伝達用の複数個の継手ボール(鋼球)7とで構成されている。上述の受口部3と内輪6との間に複数個の継手ボール7を介在させる必要があるため、前記受口部3の内表面の複数箇所にはこれら継手ボール7が嵌合する凹状溝8がそれぞれ設けられ、これらの凹状溝8内にそれぞれ嵌合された継手ボール7が受口部3と内輪6との間の所定位置に回転自在の状態で保持されるようになっている。従って、受口部3の肉厚は、図3に示すように、凹状溝8の部分では相対的に薄い薄肉部9aとなされると共に、互いに隣接する凹状溝8,8間のリブの部分では相対的に厚肉部9bとなされている。しかして、前記受口部3は不等肉厚部を有するように構成され、全体として花形状を呈する部材となされている。
【0018】
この外輪4の受口部3は有底碗状体として構成され、ステム部2の側が底部となされると共にステム部2とは反対側の部分が開放口となされている。そして、受口部3の湾曲状内周面3bのうちの所定箇所、すなわち図2及び図3において斜線αで示ような底部を除く周面部分に焼入硬化層10が形成されるようになっている。
【0019】
図4は上述の焼入硬化層10を前記受口部3の内周面3bに無酸化焼入により形成するために用いられる本発明の高周波焼入装置の一例を示すものである。図4に示す本例の高周波焼入装置12は、有底碗状体である受口部3を有する外輪4を所定位置に保持するワーク保持治具13と、受口部3の湾曲状内周面3bに対応配置されてこの内周面3bを高周波誘導加熱する高周波誘導加熱コイル14と、受口部3の底部3aに不活性ガス、又は還元性ガス、或いは不活性ガス及び還元性ガスの混合ガスを導入するガス導入管(ガス噴射管)15と、ワーク保持治具13に保持された受口部3の開放口に対応してその上部箇所に配置されるハウジング16と、ハウジング16内に充満されるガスをハウジング16の外部へ排出するガス排出管17と、受口部3の加熱部に冷却液を噴射する冷却液噴射管18と、ハウジング16内に溜まった冷却液をハウジング16の外部へ排出する冷却液排出管19とをそれぞれ具備している。なお、上述のハウジング16及びガス排出管17は、ガス導入管15から受口部3内に導入されたガスにより受口部3内及びその上面付近の空気(酸素)を外部へ排出させて導入ガスをハウジング16内に充満させるためのものである。
【0020】
さらに詳述すると、外輪4のステム部2はワーク保持治具13に挿入配置されて受口部3がワーク保持治具13上に載置された状態の下で図外のワーク昇降機構にて所定位置に移動され、この所定位置に固定されるように構成されている。そして、図外のワーク回転機構により外輪4がワーク保持治具13と一緒に回転駆動されるようになっている。
【0021】
また、高周波誘導加熱コイル14は、内部を水冷できる銅パイプからなるものであって、受口部3の凹状溝8を非接触状態のもとで誘導加熱すべくワーク形状に沿って被加熱面と所要の間隙をもつように複数に巻回されている。そして、この高周波誘導加熱コイル14にはコイルリード14aを介して高周波電源20から高周波電流が適宜に供給されるように構成されている。
【0022】
なお、上述のガス導入管15と冷却液噴射管18とは同軸状の配置構成となされており、ガス導入管15及び冷却液噴射管18は螺旋状の高周波誘導加熱コイル14の中央部分を貫通した状態で、そられの一端部(ガス噴射端部及び冷却液噴射端部)が前記受口部3に底部3aに対して僅かな隙間をもって対応配置されるようになっている。また、上述のガス排出管17及び冷却液排出管19は共にハウジング16に配設されている。そして、ガス排出管17には導入ガス流量に応じて排出ガス流量を調整する排出ガス流量調整調整弁22と、この調整弁22を開閉するための電磁弁23とが直列接続される一方、焼入液水排出管19には導入冷却液流量に応じて排出冷却液流量を調整する排出冷却液流量調整弁24、この調整弁24を開閉するための電磁弁25が直列接続されている。
【0023】
本例の高周波焼入装置12においては、さらに、図外の保持機構により所定高さ位置に保持されたワーク外周冷却環27が設けられている。この冷却環27は、ワーク保持治具13に固定配置された外輪4の受口部3の外周部を焼入冷却して薄肉の凹状溝8部分の硬化深さ(焼入硬化層10の深さ)を制御するためのものである。すなわち、冷却環27に取付られた冷却液導入管28を介して冷却環27の内周面に開口された多数の細孔29から所要圧力,流量の冷却液をワーク外周面に噴射することにより、前記凹状溝8の薄肉部9aにおける硬化深さを調整し得るようになっている。
【0024】
また、前記冷却環27の上端面上には、冷却環27より噴射され受口部3の外周面に衝突した冷却液が上方へ飛散するのを防ぐために外周冷却液遮蔽板30が配設されている。
【0025】
このような等速ボールジョイント1の外輪4の受口部3(不等肉厚部を有する部材)の湾曲状内周面の無酸化焼入は、下記の手順で行われる。
(1) 高周波誘導加熱コイル14の下方に配置されているワーク保持治具13に外輪4のステム部2を挿入して載置する。
(2) 図外のワーク昇降機構によりワーク保持治具13と共に外輪4を上昇させ、高周波誘導加熱コイル14と受口部3の底部3a及び湾曲状内周面3bとの間に所要の間隙をもった位置で上昇動作を停止させる。
(3) 電磁弁25を閉弁状態に切り換えることにより冷却液排出管19を閉じた状態にする。
(4) ガス導入管15から受口部3の底部3aに向けて所要の圧力,流量のガスを噴射し、受口部3内及びハウジング16内の空気(酸素)をハウジング16の外部へ排出させ、受口部3内及びハウジング16内をガスで充満させる。この際、ハウジング16内の空気若しくはガスをガス排出管17を通してハウジング16の外部に排出する。このとき、ハウジング16から排出するガスの流量を、被加熱部に噴射するガスの流量、受口部3の内周面の内部空間容積、及びハウジング16の容積に応じて調整する。
(5) 図外の回転機構によりワーク保持治具13と一緒に外輪4をその軸線を中心に回転させると共に、冷却環27より冷却液を受口部3の外周面に向かって噴射する。
(6) 高周波電源20から高周波誘導加熱コイル14へ所要周波数出力の高周波電流を供給し、受口部3の湾曲状内周面3b(被加熱面若しくは被焼入面)を所定の焼入温度まで所要時間加熱する。この際、ガス導入管15から受口部3の底部3aにガスが噴射されてそのガスが図4において矢印βで示すように受口部3の内周面3bと高周波誘導加熱コイル14との間の隙間領域を通りつつ受口部3の内周面3bに沿って受口部3の開放口に向けて流動され、これに伴ってハウジング16内に充満されたガスが継続的にガス排出管17を通してハウジング16の外部へ排出される。
(7) 所定の焼入温度に到達したら、高周波誘導加熱コイル14への通電を停止し、加熱を終了する。
(8) 通電停止と同時に、ガス導入管15からのガスの導入(噴射)を停止し、電磁弁23を閉弁状態に切り換えることによりガス排出管17を閉じる。これに応じて、電磁弁25を開弁状態に切り換えることにより焼入液排出管19を開き、焼入冷却液を焼入液導入管18から受口部3の底部3aに向けて噴射する。そして、前記底部3aで分散した冷却液を受口部3の被加熱面(湾曲状内周面)に沿って流し、焼入水排出管12よりハウジング16の外部へ排出する。
(9) 所要時間にわたる冷却の後に、冷却液の噴射を停止し焼入を終了する。(10) しかる後に、受口部3の外周冷却を停止し、受口部3を所定位置まで下降させて回転を停止し、焼入処理が施された外輪4をワーク保持治具13より取り外す。
以上の一連の手順により高周波無酸化焼入が行われる。
【0026】
以下に、前実施例の具体的な加工条件を述べる。
高周波焼入条件
(1) 加熱条件
Figure 0004010346
前記加工条件により前記加工手順にしたがって焼入加工することにより、焼入表面は無酸化の状態で焼入された。
【0027】
図5は既述の実施例と同一のワークに対して、そのワーク姿勢を上下正反対、すなわち受口部3の開放口を下向きにセットして高周波無酸化焼入を行なうようにした場合の実施態様を示すものである。このようにした場合にも、既述の場合と同様に高周波無酸化焼入を施すことができる。なお、図5において、31はバース板 32モータ、33はこのモータ32にて回転駆動される歯車、34はこの歯車33に噛合するワーク受け治具兼用の歯車であり、これらによってワーク回転機構が構成されている。図5に実施態様によれば、受口部3の底部3aに噴射されたガスの流れ方向は下向きとなるため、その流れがより良好となり、その分だけより理想的な無酸素状態で焼入を施すことができる。
【0028】
また、図6〜図9は本発明の高周波焼入方法及び装置を他の部品(ワーク)の内周面の焼入に用いた応用例を示すものである。具体的には、図6及び図7は内部に3つの軌道溝を有するトリポート型等速ジョイント(トリポートハウジング)40の軌道溝41の一発焼入に本発明の高周波焼入方法及び装置を応用した例を示すものである。なお、図6及び図7において、図1〜図5と同様の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。この場合にも、既述の実施態様の場合と全く同様に軌道溝41の内周面に無酸化焼入による焼入硬化層パターンを形成することができる。
【0029】
また、図8及び図9はディスクブレーキ用リアアクスルに用いられているホイールハブ(ボールベアリング)50(無底筒状体)の転動溝51,52の焼入に本発明の高周波焼入方法及び装置を応用した例を示すものである。なお、図8及び図9において、図1〜図5と同様の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。この場合には、図8に示す場合には、ホイールハブ50の両端部が共に開放されている(底部がない)ため、ワーク保持治具13に上端に設けられた蓋状治具53にてホイールハブ50の下方側の開放口54を閉塞するようにしている。そして、この蓋状治具53とは反対側の上部部分にハウジング16を設けて、前記蓋状治具53にガス及び冷却液を噴射しながら無酸化焼入を施すようにしている。また、図9に示す場合には、ホイールハブ50の上方側の開放口54に蓋状治具53を取付けてこれを閉塞するようにしている。この蓋状治具53とは反対側の下部部分にハウジング16を設けて、前記蓋状治具53にガス及び冷却液を噴射しながら無酸化焼入を施すようにしている。
【0030】
このような構成によれば、一端の開放口54を蓋状治具53にて閉塞した状態にして既述の実施態様の場合と同様の操作を行なわしめることにより、不等肉厚部を有する無底筒状体であるホイールハブ50の転動溝51,52を無酸化焼入することができる。
【0031】
以上、本発明の実施態様につき述べたが、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、ハウジング16からガス排出管17を介して排出されるガスを、ガス排出部において燃焼させるように構成することも可能である。この場合には、排出ガスによる作業環境の悪化を回避することができる。
【0032】
また、ガス導入管15の一端から有底碗状体の内周面の底部(受口部3の底部3a)又は無底筒状体の一端の蓋状治具(ホイールハブ50の開放端54に嵌着された蓋状治具53)に向けてのガスの噴射と、ガス導入管15のうちの少なくとも前記有底碗状体の内周面の被加熱部に対向する箇所に設けた複数の細孔(図示せず)から被加熱部に向けてのガスの直接噴射とを併用するようにしても良い。すなわち、ガスを被加熱部に直接噴射するために、ガス導入管15の複数の細孔が設けられている箇所に対向する冷却液噴射管18の下端部分を削除し、冷却液噴射管18から被加熱部(内周面3b)への冷却液の噴射が可能なように構成する。この場合には、前記被加熱部への直接噴射ガス流量を前記底部又は蓋状治具への噴射ガス流量より小さく調整するのが望ましい。このような構成によれば、ガスが被加熱部の全体に亘って噴射されることとなる上に、噴射されたガスが被加熱部に沿って確実にかつ円滑に流れる異となるため、良好な無酸化焼入を施すことができる。
【0033】
【発明の効果】
以上の如く、本発明の高周波焼入方法は、有底碗状体又は無底筒状体の内周面の被加熱部に沿って所要の圧力及び流量の不活性ガス、又は還元性ガス、或いは不活性ガス及び還元性ガスの混合ガスを流し、そのガスをハウジング内に充満させつつハウジング内のガス(空気を含む)をハウジングの外部へ排出させ、これにより無酸素状態の下で焼入処理を施すようにしたものであるから、前記被加熱部に沿って流れるガスにより有底碗状体又は無底筒状体の内部の空気(酸素)は外部へ排出されると共に、被加熱部は加熱中の期間に亘って前記ガスと接触しているため無酸素状態が保たれることとなり(すなわち、被加熱部の表面上に沿って流れるガスの存在により、被加熱部の表面への空気の巻き込みが防止されて無酸素状態が維持されることとなり)、無酸素状態での理想的な焼入を施すことができる。従って、本発明によれば、高性能のワーク移動機構を必要としない簡素な構成でありながら、不等肉厚部を有する部材(有底碗状体又は無底筒状体)の内周面を理想的な無酸素状態の下で高周波焼入することができるような方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】等速ボールジョイントの断面構成図である。
【図2】等速ボールジョイントの外輪の受口部の凹状溝における焼入硬化層パターンを示す縦断面図である。
【図3】等速ボールジョイントの外輪の受口部の凹状溝における焼入硬化層パターンを示す横断面図である。
【図4】本発明の第1の実施態様に係る高周波焼入装置を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第2の実施態様に係る高周波焼入装置を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第3の実施態様に係る高周波焼入装置を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第4の実施態様に係る高周波焼入装置を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第5の実施態様に係る高周波焼入装置を示す縦断面図である。
【図9】本発明の第6の実施態様に係る高周波焼入装置を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 等速ボールジョイント
3 有底碗状体としての受口部
3a 底部
3b 内周面
4 外輪
6 内輪
8 凹状溝
9a 薄肉部
9b 厚肉部
10 焼入硬化層
12 高周波焼入装置
13 ワーク保持治具
14 高周波誘導加熱コイル
15 ガス導入管
16 ハウジング
17 ガス排出管
18 冷却液噴射管
19 冷却液排出管
20 高周波電源
22 排出ガス流量調整弁
24 排出冷却液流量調整弁
27 ワーク外周冷却環
29 細孔
40 トリポート型等速ボールジョイント
41 軌道溝
50 無底筒状体としてのホイールハブ(ボールベアリング)
51,52 転動溝
53 蓋状治具

Claims (6)

  1. 不等肉厚部を有する有底碗状体の内周面を高周波誘導加熱コイルにて加熱した後に、この加熱した内周面に冷却手段から冷却液を噴射することにより、前記内周面に焼入を施すようにした高周波焼入方法において、
    (A) 前記有底碗状体の内周面の底部に向けて所要の圧力及び流量の不活性ガス、又は還元性ガス、或いは不活性ガス及び還元性ガスの混合ガスを噴射して、このガスを前記高周波誘導加熱コイルと前記有底碗状体の被加熱部との間に形成された通路に流動せしめることにより、前記ガスを前記有底碗状体の被加熱部の表面に接触させつつ前記内周面の開口端に向けて流動せしめる工程と、
    (B) 前記開口端より流れ出たガスを前記開口端に隣接して設けたハウジング内に充満させながら、前記有底碗状体及びハウジングの内部の空気を前記ハウジングに設けたガス排出部より排出させることにより、前記有底碗状体の内周面を無酸素状態にする工程と、
    (C) この無酸素状態の下で前記有底碗状体の内周面の被加熱部を高周波誘導加熱する工程と、
    (D) 前記有底碗状体の被加熱部が所要の焼入温度に到達した時点で高周波誘導加熱を遮断すると共に前記ガスの噴射を停止する工程と、
    (E) この後に、所要の焼入温度に加熱された前記有底碗状体の内周面に冷却液を噴射して前記内周面を急速冷却する工程と、
    をそれぞれ具備することを特徴とする、不等肉厚部を有する部材の内周面を高周波焼入する方法。
  2. 不等肉厚部を有する無底筒状体の内周面を高周波誘導加熱コイルにて加熱した後に、この加熱した内周面に冷却手段から冷却液を噴射することにより、前記内周面に焼入を施すようにした高周波焼入方法において、
    (A) 前記無底筒状体の両端の開放口のうちの一方に蓋状治具を取付けてこの蓋状治具にて前記無底筒状体の一端の開放口を閉塞する工程と、
    (B) 前記無底筒状体の他端の開放口から前記蓋状治具に向けて所要の圧力及び流量の不活性ガス、又は還元性ガス、或いは不活性ガス及び還元性ガスの混合ガスを噴射して、このガスを前記高周波誘導加熱コイルと前記無底筒状体の被加熱部との間に形成された通路に流動せしめることにより、前記ガスを前記無底筒状体の被加熱部の表面に接触させつつ前記無底筒状体の他端の開放口に向けて流動せしめる工程と、
    (C) 前記無底筒状体の他端の開放口より流れ出たガスをこの開放口に隣接して設けたハウジング内に充満させながら、前記無底筒状体及びハウジングの内部の空気を前記ハウジングに設けたガス排出部より排出させることにより、前記無底筒状体の内周面を無酸素状態にする工程と、
    (D) この無酸素状態の下で前記無底筒状体の内周面の被加熱部を高周波誘導加熱する工程と、
    (E) 前記無底筒状体の被加熱部が所要の焼入温度に到達した時点で高周波誘導加熱を遮断すると共に前記ガスの噴射を停止する工程と、
    (F) この後に、所要の焼入温度の加熱された前記無底筒状体の内周面に冷却液を噴射して前記内周面を急速冷却する工程と、
    をそれぞれ具備することを特徴とする、不等肉厚部を有する部材の内周面を高周波焼入する方法。
  3. 前記ハウジングから排出するガスの流量を、被加熱部に噴射するガスの流量、前記内周面の内部空間容積、及び前記ハウジングの容積に応じて調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記ハウジングから排出されるガスを、前記ハウジングのガス排出部において燃焼させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
  5. ガス導入管の一端から前記有底碗状体の内周面の底部に向けてのガスの噴射と、前記ガス導入管のうちの少なくとも前記有底碗状体の内周面の被加熱部に対向する箇所に設けた複数の細孔から前記有底碗状体の内周面の被加熱部に直接的に向けてのガスの直接噴射とを併用し、前記被加熱部への直接噴射ガス流量を前記底部への噴射ガス流量より小さく調整することを特徴とする請求項1,3,4の何れか1項に記載の方法。
  6. ガス導入管の一端から前記無底筒状体の一端の蓋状治具に向けてのガスの噴射と、前記ガス導入管のうちの少なくとも前記有底碗状体の内周面の被加熱部に対向する箇所に設けた複数の細孔から前記無底筒状体の内周面の被加熱部に直接的に向けてのガスの直接噴射とを併用し、前記被加熱部への直接噴射ガス流量を前記蓋状治具への噴射ガス流量より小さく調整することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の方法。
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