JP4653556B2 - ランフラットタイヤ及びそれを用いた車両 - Google Patents

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Description

本発明は、サイドウォール領域に補強ゴム層が設けられたいわゆる自己支持型のランフラットタイヤ及びそれを用いた車両に関する。
従来、図7に示されるように、サイドウォール部cに断面略三日月状をなす補強ゴム層dが設けられたいわゆる自己支持型のランフラットタイヤbが広く知られている(例えば下記特許文献参照)。ランフラットタイヤbは、内圧が低下した場合、補強されたサイドウォール部cによって大きなタイヤ荷重を支持できる。このため、パンク時でも比較的高速度で例えば数百kmの距離を走行できる。近年、ランフラットタイヤbのパンク状態での走行(以下、このような走行を「ランフラット走行」と呼ぶことがある。)距離を増大させるために、補強ゴム層dの厚さ及び硬さが大きく形成される傾向がある。
しかしながら、補強ゴム層dの厚さが大きくなるとタイヤ重量が増大し、車両の操縦安定性や燃費性能を悪化させる。また補強ゴム層dの硬さが大きくなると、内圧が適正に充填された状態での乗り心地が悪化する。
特公平7−108610号公報 特許第2763857号公報 特許第3007882号公報 特開2002−79814号公報 特開2002−211216号公報
図6(A)、(B)には、ランフラットタイヤが装着された四輪自動車のような車両aの正面略図が示されている。該車両aには、通常、ホイールアライメントとしてキャンバー角θが与えられる。キャンバー角θは、車両を正面から見たときの車輪WHの中心線の傾き角度を示す。正面からみて一対の車輪WHの上部が車両の内側に傾けられたもの(即ちハ字状に傾けられたもの)は一般にネガティブキャンバーと呼ばれる。逆に、正面からみて一対の車輪WHの上部が車両の外側に傾けられたもの(即ちV字状に傾けられたもの)はポジティブキャンバーと呼ばれる。
ランフラットタイヤの損傷状況を数多く調べると、装着される車両によって損傷部位が異なることが分かった。多くの場合、ネガティブキャンバーの車両では車両内側のサイドウォール部に、またポジティブキャンバーの車両では車両外側のサイドウォール部に、それぞれ損傷が見られる。したがって、キャンバー角を有する車両に装着されたランフラットタイヤは、傾けられた側のサイドウォール部により大きな負荷を受け、当該側のサイドウォール部に損傷が生じ易いという傾向がある。
しかし、従来のランフラットタイヤは、両側のサイドウォール領域に、厚さ、ゴム硬さ、長さ及び断面積に関して実質的に同じ仕様を持った補強ゴム層が配されているため、一方のサイドウォール領域において耐久性の過不足が生じやすい。
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、サイドウォール領域に配された補強ゴム層を、一方のサイドウォール部に設けられた第1の補強ゴム層と、他方のサイドウォール部に設けられた前記第1の補強ゴム層とは異なる第2の補強ゴム層とから構成することを基本として、耐久性と乗り心地とをバランス良く向上しうるランフラットタイヤ及びそれを用いた車両を提供することを目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部、リムに着座する一対のビード部、前記トレッド部と前記ビード部との間をのびる一対のサイドウォール部、前記各々のビード部に埋設されたビードコア間をのびるトロイド状のカーカス、及び前記カーカスの内側かつサイドウォール領域に配された断面略三日月状をなす補強ゴム層を具えたランフラットタイヤであって、前記補強ゴム層は、一方のサイドウォール部に設けられた第1の補強ゴム層と、他方のサイドウォール部に設けられかつ前記第1の補強ゴム層とは異なる第2の補強ゴム層とからなり、前記第1の補強ゴム層の硬さは、前記第2の補強ゴム層の硬さよりも大きく、しかも前記第1の補強ゴム層のタイヤ半径方向の長さは、前記第2の補強ゴム層のタイヤ半径方向の長さよりも大きいことを特徴としている。
また請求項記載の発明は、前記第1の補強ゴム層のタイヤ子午線断面における断面積は、前記第2の補強ゴム層の前記断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のランフラットタイヤである。
また請求項記載の発明は、前記第1の補強ゴム層の最大厚さは、前記第2の補強ゴム層の最大厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のランフラットタイヤである。
また請求項記載の発明は、ネガティブキャンバーで組み付けられた一対の車輪を含む車両であって、前記一対の車輪は、各々、前記第1の補強ゴム層が車両内側に向けて装着された請求項1ないしのいずれかに記載されたランフラットタイヤを含むことを特徴とする車両である。
また請求項記載の発明は、ポジティブキャンバーで組み付けられた一対の車輪を含む車両であって、前記一対の車輪は、各々、前記第1の補強ゴム層が車両外側に向けて装着された請求項1ないしのいずれかに記載されたランフラットタイヤを含むことを特徴とする車両である。
本発明のランフラットタイヤは、サイドウォール領域を補強する補強ゴム層が、一方のサイドウォール部に設けられた第1の補強ゴム層と、他方のサイドウォール部に設けられた前記第1の補強ゴム層とは異なる第2の補強ゴム層とを含む。この結果、第1の補強ゴム層と、第2の補強ゴム層とは、耐久性(耐負荷能力)について相対的な差が存在する。本発明のランフラットタイヤは、耐久性が高い方の補強ゴム層を、車両のキャンバー角に依存して定まる負荷の大きい側に位置させて使用される。これにより、ランフラット走行距離を増大させる。また、耐久性が低い方の補強ゴム層は、走行時に負荷の小さい側に位置することより、耐久性の低さがクローズアップされることがない。しかも耐負荷能力の低い補強ゴム層は、撓みやすいため、乗り心地を高めることができる。このように、本発明のランフラットタイヤは、キャンバー角を有する車両に用いられ、耐久性と乗り心地とをバランス良く向上しうる。
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には本実施形態のランフラットタイヤ1の正規状態におけるタイヤ回転軸を含む子午線断面図が示される。なお特に言及が無い場合、タイヤ各部の寸法などは前記正規状態での値のものとする。ここで「正規状態」とは、タイヤの実質的な形状を一義的に定めるもので、正規リムJにリム組みされかつ正規内圧を充填した無負荷の状態とする。
また「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim"とする。さらに「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
本実施形態のランフラットタイヤ1は、路面と接地するトレッド部2と、リムに着座する一対のビード部4、4と、前記トレッド部2と前記ビード部4との間をのびる一対のサイドウォール部3とを有するトロイド状をなす。またランフラットタイヤ1は、前記各々のビード部4、4に埋設されたビードコア5、5間をのびるトロイド状のカーカス6と、このカーカス6の外側かつトレッド部2の内部に配置されたベルト層7と、前記カーカス6の内側かつサイドウォール領域に配された断面略三日月状をなす補強ゴム層9とが設けられている。この例のランフラットタイヤ1は、乗用車用であり、かつ、チューブレスタイプとして形成されたものが例示される。
前記カーカス6は、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aから形成されたものが示されている。カーカスプライ6Aは、カーカスコードをトッピングゴムにて被覆して形成され、前記カーカスコードにはナイロン、ポリエステル、レーヨン、芳香族ポリアミドなどの有機繊維が好適に用いられる。またカーカスコードは、例えばタイヤ赤道Cに対して75〜90度、より好ましくは90度の角度で傾けて配列される。
またカーカスプライ6Aは、本例では一対のビードコア5、5間をトロイド状に跨る本体部6aと、この本体部6aの両端に連なりかつ前記ビードコア5の周りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを含む。本体部6aと折返し部6bとの間には、前記ビードコア5からタイヤ半径方向外側に先細状でのびるビードエーペックス8が配される。ビードエーペックス8は、例えばJISA硬さで65〜95度、より好ましくは70〜95度程度の硬質ゴムにより形成されるのが望ましい。これにより、ビード部4の曲げ剛性を高めてタイヤ1の縦撓みを抑制しうる。
この例では、カーカスプライ6Aの折返し部6bの外端6beが、ベルト層7のタイヤ軸方向の外端7eをタイヤ軸方向内側に超えた位置で終端するものが示されている。このような折返し部6bは、少ない枚数でサイドウォール部3を効果的に補強しうる。また、ゴムとの接着性が低い折返し部6bの外端6beは、パンク走行中に大きく撓み易いサイドウォール部3から遠ざかり、歪の少ないベルト層7とカーカスプライ6Aの本体部6aとの間へ位置する結果、該外端6beを起点としたセパレーション等の損傷を抑制し、ランフラット耐久性を高めるのに役立つ。
前記ベルト層7は、本例ではスチールからなるベルトコードをタイヤ赤道Cに対して例えば10〜35゜程度で傾けて配列した2枚のベルトプライ7A、7Bから構成されている。ベルトプライ7A、7Bは、前記ベルトコードが互いに交差するように重ね合わされ、カーカス6を強くタガ締めしトレッド部2の剛性を高め得る。ベルトコードとしてはは、スチール材料以外にも、アラミド、レーヨン等の高弾性の有機繊維材料を必要に応じて用いることができる。
前記補強ゴム層9は、前記カーカス6のタイヤ軸方向内側かつサイドウォール領域に配されている。サイドウォール領域Yは、ベルト層7の外端7eを通る第1のタイヤ軸方向線HL1と、リムJのフランジJ1のタイヤ半径方向の外端を通る第2のタイヤ軸方向線HL2との間の領域とし、補強ゴム層9の少なくとも一部は、このサイドウォール領域Yに配されている。
本実施形態の補強ゴム層9は、中央部9cからタイヤ半径方向の内端9i及びタイヤ半径方向の外端9oに向かってそれぞれ厚さが徐々に減じられており、全体として断面略三日月状で形成される。前記内端9iは、例えばビードエーペックス8の外端8oよりもタイヤ半径方向内側かつビードコア5よりもタイヤ半径方向外側に位置するのが好ましい。また補強ゴム層9の外端9oは、トレッド部2の内側に至ってのびており、この例ではベルト層7の外端7eよりもタイヤ軸方向内側で終端するものが例示される。とりわけ、タイヤ1のトレッド部2からビード部4までが実質的に一定の厚さK(ただし、サイドウォール部3の表面の凹凸や絵文字、リムプロテクタ等の隆起は除く。)となるように補強ゴム層9の厚さ及び長さを設定することが好適である。このような補強ゴム層9は、サイドウォール領域Yで効果的にタイヤの縦剛性を補強し、ランフラット走行時のサイドウォール部3の歪を軽減できる。
また補強ゴム層9は、一方のサイドウォール部3Aに設けられた第1の補強ゴム層9Aと、他方のサイドウォール部3Bに設けられた前記第1の補強ゴム層9Aとは異なる第2の補強ゴム層9Bとを含む。この実施形態では、第1の補強ゴム層9A及び第2の補強ゴム層9Bは、第1の補強ゴム層9Aの硬さが、第2の補強ゴム層9Bの硬さよりも大きい点で両者は異なっている。しかし、第1の補強ゴム層9A及び第2の補強ゴム層9Bは、いずれも実質的に同じ断面形状、即ち実質的に同一の断面積でタイヤ周方向に連続してのびている。
ゴム硬さが大きい第1の補強ゴム層9Aによって補強された一方のサイドウォール部3Aは、縦撓みが他方のサイドウォール部3Bに比して低減し、これにより発熱量を抑え耐久性が相対的に向上する。またゴム硬さが小さい第2の補強ゴム層9Bによって補強された他方のサイドウォール部3Bは、一方のサイドウォール部3Bに比して耐久性は劣るが、縦撓み量を大きく確保し、これにより衝撃吸収能力が高められる。従って、このようなランフラットタイヤ1は、ネガティブキャンバーの車両に対しては、前記第1の補強ゴム層9Aが設けられた一方のサイドウォール部3Aが車両内側に、第2の補強ゴム層9Bが設けられた他方のサイドウォール部3Bが車両外側に向けて装着される。これにより、負荷の大きい車両内側に位置する一方のサイドウォール部3Bを効果的に補強しうるとともに、負荷の小さい車両外側に位置する他方のサイドウォール部3Bにおいて耐久性を損ねることなく衝撃を吸収して乗り心地を向上させることができる。
なおポジティブキャンバーの車両に装着される場合、タイヤの装着の向きは前記の場合とは逆になる。即ち、第1の補強ゴム層9Aが設けられた一方のサイドウォール部3Aが車両外側に向けて装着され、第2の補強ゴム層9Bが設けられた他方のサイドウォール部3Bが車両内側に向けて装着される。
第1の補強ゴム層9Aのゴム硬さHd1は、装着される車両の特性やタイヤサイズなどに応じて適宜設定されるため、特に限定はされないが、好ましくはJISデュロメータA硬さで65°以上、より好ましくは70°以上、さらに好ましくは74°以上が望ましく、また上限に関しては、好ましくは90°以下、より好ましくは85゜以下、さらに好ましくは80゜以下が望ましい。第1の補強ゴム層9Aのゴム硬さHd1が65゜未満の場合、一方のサイドウォール部3Aに高い曲げ剛性を与えることができず、ランフラット走行時において補強ゴム層9の内側部分に圧縮歪が集中して早期に熱破壊が生じやすくなる傾向がある。逆に補強ゴム層9のゴム硬さHd1が90゜を超えると、適正な内圧が充填された通常走行時において、乗り心地が著しく悪化する傾向がある。
また第2の補強ゴム層9Bのゴム硬さHd2も特に限定されないが、好ましくは第1の補強ゴム層9Aの硬さHd1との差(Hd1−Hd2)が3゜以上、より好ましくは5゜以上、さらに好ましくは7゜以上が望ましく、また、上限に関しては、好ましくは15゜以下、より好ましくは13゜以下、さらに好ましくは9゜以下となるように定められるのが望ましい。前記ゴム硬さの差(Hd1−Hd2)が3゜未満になると、他方のサイドウォール部3Bにおいて衝撃吸収能力が低下して乗り心地が損なわれる傾向があり、逆に15゜を超えると、他方のサイドウォール部3Bの縦撓み量が一方のサイドウォール部3Aに比べて過度に大きくなる傾向があり、耐久性を低下させるおそれがある。
また各補強ゴム層9に用いるゴムポリマーとしては、特に限定はされないが、好ましくはジエン系ゴム、より具体的には天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムが望ましい。これらは1種又は2種以上をブレンドして用いることができるのは言うまでもない。またゴム硬さの調節は、配合の変更や、フィラーの充填量などを違えることにより適宜行うことができる。
図2には、ランフラットタイヤ1の他の実施形態が示される、図2は正規状態であって、図1と同じ部分には同一の符号が付されている。ランフラットタイヤ1は、補強ゴム層9として、一方のサイドウォール部3Aに設けられた第1の補強ゴム層9Aと、他方のサイドウォール部3Bに設けられた前記第1の補強ゴム層9Aとは異なる第2の補強ゴム層9Bとを含む。この実施形態では、第1の補強ゴム層9A及び第2の補強ゴム層9Bは、実質的に異なる断面形状で形成される。
また、第1の補強ゴム層9Aのタイヤ子午線断面における断面積Saが、第2の補強ゴム層9Bの断面積Sbよりも大きく形成されている。そして、さらにこの実施形態では、第1の補強ゴム層9Aの最大厚さWaが、第2の補強ゴム層9Bの最大厚さWbよりも大きく形成されているが、各々の補強ゴム層9A、9Bのタイヤ半径方向の長さは実質的に同一である。また第1の補強ゴム層9A及び第2の補強ゴム層9Bは、同一のゴム組成物が用いられており、そのゴム硬さなどは同一である。
最大厚さWaが大きい第1の補強ゴム層9Aによって補強された一方のサイドウォール部3Aは、縦撓みが他方のサイドウォール部3Bに比して低減し、これにより耐久性が相対的に向上する。また最大厚さWbが小さい第2の補強ゴム層9Bによって補強された他方のサイドウォール部3Bは、一方のサイドウォール部3Bに比して縦撓み量を大きく確保できるため、相対的にランフラット時の耐久性は低下するが、衝撃吸収能力が高められ乗り心地を向上するのに役立つ。
従って、このようなランフラットタイヤ1は、ネガティブキャンバーの車両に対しては、前記第1の補強ゴム層9Aが設けられた一方のサイドウォール部3Aが車両内側に、第2の補強ゴム層9Bが設けられた他方のサイドウォール部3Bが車両外側に向けて装着される。これにより、負荷の大きい車両内側に位置する一方のサイドウォール部3Bを効果的に補強しうるとともに、負荷の小さい車両外側に位置する他方のサイドウォール部3Bにおいて耐久性の低下をクローズアップさせることなく衝撃を吸収して乗り心地を向上させることができる。なおポジティブキャンバーの車両に装着される場合、タイヤの装着の向きは前記の場合とは逆になる。
第1の補強ゴム層9Aの最大厚さWaは、装着される車両の特性やタイヤサイズなどに応じて適宜設定されるため、特に限定はされないが、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上、さらに好ましくは9mm以上が望ましく、また、上限に関しては、好ましくは15mm以下、より好ましくは13mm、さらに好ましくは11mmが望ましい。第1の補強ゴム層9Aの最大厚さWaが5mm未満の場合、一方のサイドウォール部3Aに高い曲げ剛性を与えることができず、ランフラット走行時において補強ゴム層9の内側部分に圧縮歪が集中して早期に熱破壊が生じやすくなる傾向がある。逆に第1の補強ゴム層9の最大厚さWaが15mmを超えると、適正な内圧が充填された通常走行時において、乗り心地が著しく悪化する傾向がある。
また第2の補強ゴム層9Bの最大厚さWbも特に限定されないが、好ましくは第1の補強ゴム層9Aの最大厚さWaとの差(Wa−Wb)が、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは5mm以上であるのが望ましく、また、上限に関しては、好ましくは9mm以下、より好ましくは7mm以下、さらに好ましくは6mm以下が望ましい。前記差(Wa−Wb)が2mm未満になると、両者の差が小さく、他方のサイドウォール部3Bにおいて衝撃吸収能力が低下して乗り心地が損なわれる傾向がある。逆に、前記差が9mmを超えると、他方のサイドウォール部3Bの縦撓み量が一方のサイドウォール部3Aに比べて過度に大きくなる傾向があり、この部分の耐久性が低下するおそれがある。なお前記各厚さWa、Wbは、各補強ゴム層9A、9Bの中心線と直角方向に測定されるものとする。
図3には、ランフラットタイヤ1のさらに他の実施形態が示される、図3は正規状態であって、図1及び図2と同じ部分には同一の符号が付されている。この実施形態においても、第1の補強ゴム層9Aの断面積Saは、第2の補強ゴム層9Bの断面積Sbよりも大きい。具体的には第1の補強ゴム層9Aのタイヤ半径方向の長さLaが、第2の補強ゴム層9Bの長さLbよりも大きく形成されており、各々の補強ゴム層は実質的に同一の最大厚さを持っている。またこの実施形態では、第1の補強ゴム層9A及び第2の補強ゴム層9Bは、同一のゴム組成物が用いられており、そのゴム硬さ等は同一である。
長さLaが大きい第1の補強ゴム層9Aによって補強された一方のサイドウォール部3Aは、縦撓みが他方のサイドウォール部3Bに比して低減し、これにより耐久性が相対的に向上する。また長さLbが小さい第2の補強ゴム層9Bによって補強された他方のサイドウォール部3Bは、一方のサイドウォール部3Bに比して縦撓み量を大きく確保できるため、相対的にランフラット時の耐久性は低下するが、衝撃吸収能力が高められ乗り心地を高めるのに役立つ。
従って、このようなランフラットタイヤ1は、ネガティブキャンバーの車両に対しては、前記第1の補強ゴム層9Aが設けられた一方のサイドウォール部3Aが車両内側に、第2の補強ゴム層9Bが設けられた他方のサイドウォール部3Bが車両外側に向けてそれぞれ装着される。これにより、負荷の大きい車両内側に位置する一方のサイドウォール部3Bを効果的に補強しうるとともに、負荷の小さい車両外側に位置する他方のサイドウォール部3Bにおいて耐久性の低下をクローズアップさせることなく衝撃を吸収して乗り心地を向上させることができる。なおポジティブキャンバーの車両に装着される場合、タイヤの装着の向きは前記の場合とは逆になる。
各補強ゴム層9A、9Bの前記長さLa、Lbは、装着される車両の特性やタイヤサイズなどに応じて適宜設定されるため、特に限定はされない。しかし、好ましい態様としては、各補強ゴム層の外端は、ベルト層7の外端7eのタイヤ半径方向内方位置までのびることが望ましい。また、各補強ゴム層の内端は、ビードエーペックス8の外端8oよりもタイヤ半径方向内方に位置するのが望ましい。これにより、各々のサイドウォール部3A、3Bに高い曲げ剛性を与え、ランフラット走行距離を高めうる。
図4には、本発明のランフラットタイヤ1のさらに他の実施形態が示される、図4は正規状態であって、図1、図2及び図3と同じ部分には同一の符号が付されている。この実施形態においても、第1の補強ゴム層9A及び第2の補強ゴム層9Bは、実質的に異なる断面形状で形成される。具体的には第1の補強ゴム層9Aの厚さWa及びタイヤ半径方向の長さLaが、第2の補強ゴム層9Bの厚さWb及び長さLbよりも大きく形成されている。これにより、第1の補強ゴム層9Aの断面積は、第2の補強ゴム層9Bの断面積よりも大きい。またこの実施形態では、第1の補強ゴム層9Aの硬さHd1は、第2の補強ゴム層9Bの硬さHd2よりも大きい。このような実施形態のランフラットタイヤ1は、一方のサイドウォール部3Aと、他方のサイドウォール部3Bとの剛性差をより大きく設定することができる。
図5には、本発明のランフラットタイヤ1のさらに他の実施形態が示される、図5は正規状態であって、図1、図2、図3及び図4と同じ部分には同一の符号が付されている。この実施形態においても、第1の補強ゴム層9A及び第2の補強ゴム層9Bの各々は、複数層のゴム積層体で構成されたものが例示される。即ち、各補強ゴム層9A、9Bは、タイヤ軸方向外側に配された外層部10と、この外層部10のタイヤ軸方向内側に配された内層部11とを含む。このように、補強ゴム層9A、9Bを複数層のゴム積層体とした場合においても、そのゴム硬さ、最大厚さ及び/又はタイヤ半径方向の長さなどを前記実施形態に従って異ならせることができる。
本発明の効果を確認するために、表1の仕様に基づいて215/60R16のランフラットタイヤを複数種類試作し、タイヤ重量、ランフラット耐久性能及び乗り心地を評価した。なお各タイヤとも、補強ゴム層以外は、同一の構成である。テスト方法は、次の通りである。
<タイヤ重量>
タイヤ1本当たりの重量を測定し、比較例1を100とする指数で表示した。数値が小さいほど軽量であることを示す。
<ランフラット耐久性能>
各供試タイヤをバルブコアを取り去った正規リム(16×7JJ)にリム組し内圧を零とした擬似パンク状態でドラム試験機上を以下の条件で走行させ、タイヤが破壊するまでの走行時間を測定した。結果は比較例1を100とする指数により表示した。数値が大きいほど良好である。
走行速度:90km/h
縦荷重:5.74kN
キャンバー角:3゜
なお実施例のタイヤについては、第1の補強ゴム層を有する一方のサイドウォール部をキャンバー角で傾けられた側に位置させてテストが行われた。
<乗り心地>
各供試タイヤを16×7JJのリムに組み付け内圧200kPaを満たして排気量2500ccの国産FR車の4輪に装着するとともに、ドライバー1名乗車の下、ドライアスファルト路面の段差路、ベルジャン路(石畳の路面)、ビッツマン路(小石を敷き詰めた路面)等において、ゴツゴツ感、突き上げ、ダンピングに関して官能評価を行い、比較例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど良好である。なお車両は、3゜のネガティブキャンバーを有しており、各実施例のタイヤは、第1の補強ゴム層が設けられた一方のサイドウォール部が車両内側に向けて装着された。
テストの結果等を表1に示す。
Figure 0004653556
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例1に比べて重量増加を伴うことなくランフラット耐久性能と乗り心地とを高い次元で向上していることが確認できる。
本発明の実施形態を示すランフラットタイヤの断面図である。 本発明の他の実施形態を示すランフラットタイヤの断面図である。 本発明の他の実施形態を示すランフラットタイヤの断面図である。 本発明の他の実施形態を示すランフラットタイヤの断面図である。 本発明の他の実施形態を示すランフラットタイヤの断面図である。 (A)はネガティブキャンバーの車両の正面略図、(B)はポジティブキャンバーの車両の正面略図である。 従来のランフラットタイヤの断面図である。
符号の説明
1 ランフラットタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
3A 一方のサイドウォール部
3B 他方のサイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
7 ベルト層
9 補強ゴム層
9A 第1の補強ゴム層
9B 第1の補強ゴム層

Claims (5)

  1. トレッド部、
    リムに着座する一対のビード部、
    前記トレッド部と前記ビード部との間をのびる一対のサイドウォール部、
    前記各々のビード部に埋設されたビードコア間をのびるトロイド状のカーカス、及び
    前記カーカスの内側かつサイドウォール領域に配された断面略三日月状をなす補強ゴム層を具えたランフラットタイヤであって、
    前記補強ゴム層は、一方のサイドウォール部に設けられた第1の補強ゴム層と、他方のサイドウォール部に設けられかつ前記第1の補強ゴム層とは異なる第2の補強ゴム層とからなり、
    前記第1の補強ゴム層の硬さは、前記第2の補強ゴム層の硬さよりも大きく、
    しかも前記第1の補強ゴム層のタイヤ半径方向の長さは、前記第2の補強ゴム層のタイヤ半径方向の長さよりも大きいことを特徴とするランフラットタイヤ。
  2. 前記第1の補強ゴム層のタイヤ子午線断面における断面積は、前記第2の補強ゴム層の前記断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のランフラットタイヤ。
  3. 前記第1の補強ゴム層の最大厚さは、前記第2の補強ゴム層の最大厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のランフラットタイヤ。
  4. ネガティブキャンバーで組み付けられた一対の車輪を含む車両であって、
    前記一対の車輪は、各々、前記第1の補強ゴム層が車両内側に向けて装着された請求項1ないし3のいずれかに記載されたランフラットタイヤを含むことを特徴とする車両
  5. ポジティブキャンバーで組み付けられた一対の車輪を含む車両であって、
    前記一対の車輪は、各々、前記第1の補強ゴム層が車両外側に向けて装着された請求項1ないし3のいずれかに記載されたランフラットタイヤを含むことを特徴とする車両
JP2005141529A 2005-05-13 2005-05-13 ランフラットタイヤ及びそれを用いた車両 Expired - Fee Related JP4653556B2 (ja)

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