JP5139762B2 - ランフラットタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、パンクした状態でもある程度の距離を走行しうるランフラットタイヤに関する。
タイヤは、カーカス及びベルトを備えている。ベルトは、カーカスと積層されている。ベルトは、カーカスを補強する。ベルトは、ベルトプライからなる。ベルトプライは、コードとトッピングゴムとからなる。互いのコードが異なる2つのベルトプライを有するタイヤが、特開2000−272306公報に開示されてる。
近年、サイドウォールの内側に支持層を備えたランフラットタイヤが開発され、普及しつつある。この支持層には、高硬度な架橋ゴムが用いられている。このランフラットタイヤは、サイド補強型ランフラットタイヤと称されている。サイド補強型ランフラットタイヤでは、パンクによって内圧が低下すると、支持層によって荷重が支えられる。この支持層は、パンク状態でのタイヤの撓みを抑制する。パンク状態で走行が継続されても、高硬度な架橋ゴムが、支持層での発熱を抑制する。このランフラットタイヤでは、パンク状態でも、ある程度の距離の走行が可能である。このランフラットタイヤが装着された自動車には、スペアタイヤの常備は不要である。このランフラットタイヤの採用により、不便な場所でのタイヤ交換が避けられうる。
特開2000−272306公報
サイド補強型ランフラットタイヤは、前述の通り、支持層を備えている。この支持層の剛性は高いので、このタイヤの縦バネ定数は大きい。支持層は、タイヤの乗り心地を阻害する。さらに支持層は、タイヤの質量の増大を招来する。質量の大きなタイヤは、燃費の点で不利である。
ベルトに細いコードが用いられることにより、優れた乗り心地と軽量とが得られる。しかし、細いベルトコードは、補強効果に劣る。細いベルトコードを有するタイヤは、強度に劣る。さらにこのタイヤは、パンク状態での耐久性にも劣る。
ベルトコードの密度が小さく設定されれば、優れた乗り心地と軽量とが得られる。しかし、ベルトコードの密度が小さいタイヤは、強度に劣る。さらにこのタイヤは、パンク状態での耐久性にも劣る。
従来のサイド補強型ランフラットタイヤにおいて、強度及び耐久性と、乗り心地及び燃費とは、相反する。本発明の目的は、強度、耐久性及び乗り心地に優れ、しかも軽量であるサイド補強型ランフラットタイヤの提供にある。
本発明に係るランフラットタイヤは、
(1)その表面がトレッド面をなすトレッド、
(2)このトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォール、
(3)このサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビード、
(4)上記トレッド及びサイドウォールに沿っており両ビードの間に架け渡されたカーカス、
(5)上記サイドウォールの軸方向内側に位置しており、その断面が略三日月形状である支持層
並びに
(6)外側ベルトプライ及び内側ベルトプライを含んでおりトレッドとカーカスとの間に位置するベルト
を備える。このタイヤは、互いに曲率半径が異なる複数の円弧からなる曲面を含むプロファイルを有する。外側ベルトプライは、並列する多数のコードとトッピングゴムとを有する。内側ベルトプライは、並列する多数のコードとトッピングゴムとを有する。外側ベルトプライの構成は、内側ベルトプライの構成とは異なっている。
外側ベルトプライのコード密度Eoが内側ベルトプライのコード密度Eiと異なってもよい。好ましくは、外側ベルトプライのコード密度Eoと内側ベルトプライコードの密度Eiとの差(Eo−Ei)の絶対値は、5本/5cm以上である。
外側ベルトプライのコードの直径Doが内側ベルトプライのコードの直径Diと異なってもよい。好ましくは、外側ベルトプライのコードの直径Doと内側ベルトプライのコードの直径Diとの比(Do/Di)は、1.00/1.05以下又は1.05/1.00以上である。
外側ベルトプライのコードの構成が、内側ベルトプライのコードの構成と異なってもよい。
カーカスは、並列する多数のカーカスコードとトッピングゴムとを有する。好ましくは、このカーカスコードはアラミド繊維からなる。好ましくは、カーカスコードの撚り係数Tは、0.5以上0.7以下である。このカーカスコードは、アラミド繊維が下撚りされてなる複数のヤーンが上撚りされた構造を有する。撚り係数Tは、下記数式(I)によって算出される。
T = N * ((0.125 * D / 2) / ρ)1/2 * 10−3 (I)
この数式(I)において、Nはコード10cm当たりの上撚り数を表し、Dはトータル繊度(dtex)を表し、ρはコード材料の比重(g/cm)を表す。
好ましくは、カーカスのトッピングゴムの複素弾性率Eは、5MPa以上13MPa以下である。
本発明に係るランフラットタイヤは、互いに構成が異なる内側ベルトプライ及び外側ベルトプライを備えているので、強度、パンク状態での耐久性、乗り心地及び軽量に優れる。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係るランフラットタイヤ2の一部が示された断面図である。この図1において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。このタイヤ2は、図1中の一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。この図1において両矢印Hで示されているのは、基準線BLからのタイヤ2の高さである。
このタイヤ2は、トレッド4、ウイング8、サイドウォール10、クリンチ部12、ビード14、カーカス16、支持層18、ベルト20、バンド22、インナーライナー24及びチェーファー26を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプの空気入りタイヤである。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面28を形成する。トレッド面28には、溝30が刻まれている。この溝30により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、キャップ層5とベース層6とを有している。キャップ層5は、架橋ゴムからなる。ベース層6は、他の架橋ゴムからなる。キャップ層5は、ベース層6の半径方向外側に位置している。キャップ層5は、ベース層6に積層されている。
サイドウォール10は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール10は、架橋ゴムからなる。サイドウォール10は、カーカス16の外傷を防止する。サイドウォール10は、リブ32を備えている。リブ32は、軸方向外側に向かって突出している。パンク状態での走行のとき、このリブ32がリムフランジと当接する。この当接により、ビード14の変形が抑制されうる。変形の抑制は、パンク状態でのタイヤ2の耐久性に寄与する。
ビード14は、サイドウォール10の半径方向内側に位置している。ビード14は、コア34と、このコア34から半径方向外向きに延びるエイペックス36とを備えている。コア34はリング状であり、複数本の非伸縮性ワイヤー(典型的にはスチール製ワイヤー)を含む。エイペックス36は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス36は、高硬度な架橋ゴムからなる。
図1において矢印Haで示されているのは、基準線BLからのエイペックス36の高さである。この基準線BLは、コアの半径方向における最も内側地点を通過する。タイヤ2の高さHに対するエイペックス36の高さHaの比(Ha/H)は、0.1以上0.7以下が好ましい。比(Ha/H)が0.1以上であるエイペックス36は、パンク状態において車重を支持しうる。このエイペックス36は、パンク状態でのタイヤ2の耐久性に寄与する。この観点から、比(Ha/H)は0.2以上がより好ましい。比(Ha/H)が0.7以下であるタイヤ2は、乗り心地に優れる。この観点から、比(Ha/H)は0.6以下がより好ましい。
カーカス16は、カーカスプライ38からなる。カーカスプライ38は、両側のビード14の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール10に沿っている。カーカスプライ38は、コア34の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ38には、主部40と折り返し部42とが形成されている。折り返し部42の端44は、ベルト20の直下にまで至っている。換言すれば、折り返し部42はベルト20とオーバーラップしている。このカーカス16は、いわゆる「超ハイターンアップ構造」を有する。超ハイターンアップ構造を有するカーカス16では、折り返し部42が、サイドウォール10を十分に補強する。
後述されるように、カーカスプライ38は、並列された多数のカーカスコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、45°から90°、さらには75°から90°である。換言すれば、このカーカス16はラジアル構造を有する。
支持層18は、サイドウォール10の軸方向内側に位置している。支持層18は、カーカス16とインナーライナー24とに挟まれてる。支持層18は、半径方向において、内向きに先細りであり外向きにも先細りである。この支持層18の断面は、三日月に類似の形状である。支持層18は、高硬度な架橋ゴムからなる。タイヤ2がパンクしたとき、この支持層18が車重を支える。この支持層18により、パンク状態であっても、タイヤ2はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ2は、「サイド補強型ランフラットタイヤ」である。タイヤ2が、図1に示された支持層18の形状とは異なる形状を有する支持層を備えてもよい。
カーカス16のうち、支持層18とオーバーラップしている部分は、インナーライナー24と離れている。換言すれば、支持層18の存在により、カーカス16は湾曲されられている。パンク状態のとき、支持層18には圧縮荷重がかかり、カーカス16のうち支持層18と近接している領域には引張り荷重がかかる。支持層18はゴム塊なので、圧縮荷重に十分に耐えうる。カーカスコードは、引張り荷重に十分に耐えうる。支持層18とカーカスコードとにより、パンク状態でのタイヤ2の縦撓みが抑制される。縦撓みが抑制されたタイヤ2は、パンク状態での操縦安定性に優れる。
パンク状態での縦歪みの抑制の観点から、支持層18の硬度は60以上が好ましく、65以上がより好ましい。通常の走行時の乗り心地の観点から、硬度は90以下が好ましく、80以下がより好ましい。硬度は、「JIS K6253」の規定に準じ、タイプAのデュロメータによって測定される。図1に示された断面にこのデュロメータが押し付けられ、硬度が測定される。測定は、23℃の温度下でなされる。
支持層18の下端46は、エイペックス36の上端48よりも、半径方向において内側に位置している。換言すれば、支持層18はエイペックス36とオーバーラップしている。図1において矢印L1で示されているのは、支持層18の下端46とエイペックス36の上端48との半径方向距離である。距離L1は、5mm以上50mm以下が好ましい。距離L1がこの範囲であるタイヤ2では、均一な剛性分布がえられる。距離L1は10mm以上がより好ましい。距離L1は40mm以下がより好ましい。
支持層18の上端50の近傍は、ベルト20の端52よりも軸方向において内側に位置している。換言すれば、支持層18はベルト20とオーバーラップしている。図1において矢印L2で示されているのは、支持層18の上端50とベルト20の端52との軸方向距離である。距離L2は、2mm以上50mm以下が好ましい。距離L2がこの範囲であるタイヤ2では、均一な剛性分布が得られる。距離L2は5mm以上がより好ましい。距離L1は40mm以下がより好ましい。
パンク状態での縦歪みの抑制の観点から、支持層18の最大厚みは3mm以上が好ましく、4mm以上がより好ましく、7mm以上が特に好ましい。タイヤ2の軽量の観点から、最大厚みは、25mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。
ベルト20は、カーカス16の半径方向外側に位置している。ベルト20は、カーカス16と積層されている。ベルト20は、カーカス16を補強する。ベルト20は、外側ベルトプライ54及び内側ベルトプライ56からなる。図1から明らかなように、内側ベルトプライ56の幅は、外側ベルトプライ54の幅よりも若干大きい。ベルト20の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅W(後に詳説)の0.85倍以上1.0倍以下が好ましい。ベルト20が、3枚以上のプライを備えてもよい。
バンド22は、ベルト20を覆っている。図示されていないが、このバンド22は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは実質的に周方向に延びており、螺旋状に巻かれている。バンド22は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このコードによりベルト20が拘束されるので、ベルト20のリフティングが抑制される。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維は、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維等である。
タイヤ2が、バンド22に代えて、ベルト20の端の近傍のみを覆うエッジバンドを備えてもよい。タイヤ2が、バンド22と共に、エッジバンドを備えてもよい。
図2は、図1のタイヤ2のベルト20の一部が示された分解斜視図である。図2には、外側ベルトプライ54及び内側ベルトプライ56が示されている。図2において矢印Aで示される方向は、タイヤ2の周方向である。外側ベルトプライ54は、並列された多数の外側コード58とトッピングゴム60とからなる。各外側コード58は、赤道面に対して傾斜している。内側ベルトプライ56は、並列された多数の内側コード62とトッピングゴム60とからなる。各内側コード62は、赤道面に対して傾斜している。外側コード58の赤道面に対する傾斜方向は、内側コード62の赤道面に対する傾斜方向とは逆である。外側コード58及び内側コード62の材質は、スチールである。
外側ベルトプライ54におけるコード密度Eoは、内側ベルトプライ56におけるコード密度Eiよりも大きい。換言すれば、外側ベルトプライ54の構成は、内側ベルトプライ56の構成とは異なっている。この外側ベルトプライ54は、強度に優れる。この外側ベルトプライ54は、タイヤ2の強度に寄与する。このタイヤ2は、パンク状態での耐久性に優れる。内側ベルトプライ56は、軽量である。この内側ベルトプライ56を有するタイヤ2は、支持層18を有するにもかかわらず、軽量でかつ乗り心地に優れる。もし、密度Eo及び密度Eiの両方が大きい場合、タイヤは重くかつ乗り心地に劣る。もし、密度Eo及びEiの両方が小さい場合、タイヤは強度及び耐久性に劣る。本発明に係るタイヤ2は、互いのコードの密度が異なる内側ベルトプライ56及び外側ベルトプライ54を有するので、強度、耐久性、乗り心地及び軽量がバランスされる。外側ベルトプライ54におけるコード密度Eoが、内側ベルトプライ56におけるコード密度Eiよりも小さくてもよい。
内側ベルトプライ56よりも外側ベルトプライ54の方が、乗り心地、操縦安定性等の性能により大きな影響を与える。これらの性能の観点から、外側ベルトプライ54におけるコード密度Eoが内側ベルトプライ56におけるコード密度Eiよりも大きいことが好ましい。
強度、耐久性、乗り心地及び軽量の観点から、差(Eo−Ei)の絶対値は5本/5cm以上が好ましく、6本/5cm以上がより好ましく、8本/5cm以上が特に好ましい。差(Eo−Ei)の絶対値は、20本/5cm以下が好ましい。
強度及び耐久性の観点から、密度Eo及びEiは、それぞれ、15本/5cm以上が好ましく、20本/5cm以上がより好ましい。乗り心地及び軽量の観点から、密度Eo及びEiは、60本/5cm以下が好ましく、50本/5cm以下がより好ましい。
外側コード58の直径Doは、内側コード62の直径Diよりも大きい。換言すれば、外側ベルトプライ54の構成は、内側ベルトプライ56の構成とは異なっている。この外側ベルトプライ54は、強度に優れる。この外側ベルトプライ54は、タイヤ2の強度に寄与する。このタイヤ2は、パンク状態での耐久性に優れる。内側ベルトプライ56は、軽量である。この内側ベルトプライ56を有するタイヤ2は、支持層18を有するにもかかわらず、軽量でかつ乗り心地に優れる。もし、直径Do及び直径Diの両方が大きい場合、タイヤは重くかつ乗り心地に劣る。もし、直径Do及び直径Diの両方が小さい場合、タイヤは強度及び耐久性に劣る。本発明に係るタイヤ2は、互いのコードの直径が異なる内側ベルトプライ56及び外側ベルトプライ54を有するので、強度、耐久性、乗り心地及び軽量がバランスされる。外側コード58の直径Doが、内側コード62の直径Diよりも小さくてもよい。乗り心地及び操縦安定性の観点からは、外側コード58の直径Doが内側コード62の直径Diよりも大きいことが好ましい。
直径Doが直径Diよりも大きい場合、強度、耐久性、乗り心地及び軽量の観点から、比(Do/Di)は1.05/1.00以上が好ましく、1.10/1.00以上がより好ましく、1.20/1.00以上が特に好ましい。比(Do/Di)は、1.40/1.00以下が好ましい。
直径Doが直径Diよりも小さい場合、強度、耐久性、乗り心地及び軽量の観点から、比(Do/Di)は1.00/1.05以下が好ましく、1.00/1.10以下がより好ましく、1.00/1.20以下が特に好ましい。比(Do/Di)は、1.00/1.40以上が好ましい。
強度及び耐久性の観点から、直径Do及び直径Diは、0.4mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。乗り心地及び軽量の観点から、直径Do及び直径Diは、2.0mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましい。
外側コード58の構成は、「2+2×0.23」である。この外側コード58は、直径が0.23mmである4本のフィラメントからなる。この外側コード58は、2本のフィラメントが撚られてなる芯に、2本のフィラメントが巻き付けられることで得られる。内側コード62の構成は、「2+1×0.25」である。この内側コード62は、直径が0.25mmである3本のフィラメントからなる。この内側コード62は、2本のフィラメントが撚られてなる芯に、1本のフィラメントが巻き付けられることで得られる。外側コード58の構成は、内側コード62の構成とは異なっている。換言すれば、外側ベルトプライ54の構成は、内側ベルトプライ56の構成とは異なっている。外側コード58の剛性は、内側コード62の剛性よりも大きい。従って、外側ベルトプライ54は強度に優れる。この外側ベルトプライ54は、タイヤ2の強度に寄与する。このタイヤ2は、パンク状態での耐久性に優れる。内側ベルトプライ56は、軽量である。この内側ベルトプライ56を有するタイヤ2は、支持層18を有するにもかかわらず、軽量でかつ乗り心地に優れる。もし、外側コード58及び内側コード62の剛性が大きい場合、タイヤは重くかつ乗り心地に劣る。もし、外側コード58及び内側コード62の剛性が小さい場合、タイヤは強度及び耐久性に劣る。本発明に係るタイヤ2は、互いのコードの剛性が異なる内側ベルトプライ56及び外側ベルトプライ54を有するので、強度、耐久性、乗り心地及び軽量がバランスされる。外側コード58の剛性が、内側コード62の剛性よりも小さくてもよい。乗り心地及び操縦安定性の観点からは、外側コード58の剛性が内側コード62の剛性よりも大きいことが好ましい。
外側コード58の構成及び内側コード62の構成の対としては、下記のものが例示される。
外側コード58の構成 内側コード62の構成
第一対 2+2×0.23 2+1×0.25
第二対 1×4×0.27 2+1×0.25
第三対 1×4×0.27 2+2×0.23
第四対 2+1×0.25 2+2×0.23
第五対 2+1×0.25 1×4×0.27
第六対 2+2×0.23 1×4×0.27
構成が「1×4×0.27」のコードは、直径が0.27mmである4本のフィラメントからなる。このコードは、4本のフィラメントが撚られることで得られる。
このタイヤ2では、コード密度、コードの直径及びコードの構成において、外側ベルトプライ54が内側ベルトプライ56と異なっている。コード密度、コードの直径及びコードの構成のうちの1つ又は2つにおいて、外側ベルトプライ54が内側ベルトプライ56と異なってもよい。本明細書では、外側ベルトプライ54の構成が内側ベルトプライ56の構成と異なるベルト20は、「ミックスベルト」と称される。
外側コード58の傾斜角度θ1(絶対値)及び内側コード62の傾斜角度θ2(絶対値)は、30°以下が好ましい。角度θ1及びθ2が30°以下に設定されることにより、ミックスベルト20であっても、大きな剛性が得られうる。この観点から、角度θ1及びθ2は28°以下が好ましく、26°以下がより好ましい。角度θ1及びθ2は、20°以上が好ましい。傾斜角度θ2は、傾斜角度θ1と同一でもよく、異なってもよい。
図3は、図1のタイヤ2の一部が示された断面図である。図3には、トレッド4、ウイング8及びサイドウォール10が示されている。トレッド4からウイング8を経てサイドウォール10に至る表面の形状は、プロファイルと称される。図3において矢印W/2で示されているのは、タイヤ2の幅Wの半分である。幅Wは、リブ32(図1参照)を除いて、軸方向で最も外側にある点P100が基準とされて決定される。プロファイルは、中心点TCから点P100に至っている。図2において、点P60、点P75及び点P90は、それぞれ、点TCからの軸方向距離がタイヤ2の半分の幅(W/2)の60%、75%及び90%であるプロファイル上の点を表す。
このタイヤ2は、CTTプロファイルを有している。このCTTプロファイルでは、中心点TCから点P90の間において、その曲率半径が徐々に減少している。CTTプロファイルは、典型的には、インボリュート曲線に基づいて決定される。CTTプロファイルが、インボリュート曲線に近似された多数の円弧から構成される部位を備えてもよい。図3に示されたタイヤ2では、中心点TCから点P90の間において、プロファイルが、インボリュート曲線に近似された多数の円弧から構成されている。円弧の数は3以上が好ましく、5以上がより好ましい。他の関数曲線に依拠して、CTTプロファイルが決定されてもよい。
CTTプロファイルが、関数曲線に近似された多数の円弧を備える場合、それぞれの円弧は、これに隣接する円弧と接する。それぞれの円弧の曲率半径は、これよりも軸方向内側にある円弧の曲率半径よりも小さい。
図3において、Y60は点TCと点P60との半径方向距離を表し、Y75は点TCと点P75との半径方向距離を表し、Y90は点TCと点P90との半径方向距離を表し、Y100は点TCと点P100との半径方向距離を表す。このCTTプロファイルは、下記数式(1)から(4)を満たす。
0.05 < Y60/H ≦ 0.10 (1)
0.10 < Y75/H ≦ 0.2 (2)
0.2 < Y90/H ≦ 0.4 (3)
0.4 < Y100/H ≦ 0.7 (4)
このCTTプロファイルは、タイヤ2の諸性能に寄与する。このプロファイルでは、タイヤ2に正規荷重の80%が付加されたときの接地幅は、タイヤ2の最大幅Wの0.50倍以上0.65倍以下である。
CTTプロファイルを備えたタイヤ2では、ショルダー(点P60及び点P75の近傍)における半径が小さい。小さな半径のタイヤ2は、軽量である。CTTプロファイルとミックスベルト20とが組み合わされたタイヤ2は、極めて軽量である。
CTTプロファイルを備えたタイヤ2では、接地面の適正な形状が得られる。適正な接地形状により、優れた乗り心地が得られる。CTTプロファイルとミックスベルト20とが組み合わされたタイヤ2は、乗り心地に極めて優れる。
図4は、図1のタイヤ2のカーカスプライ38の一部が示された断面斜視図である。このカーカスプライ38は、並列された多数のカーカスコード64と、トッピングゴム66とからなる。
図5は、図4のカーカスプライ38のカーカスコード64の一部が示された分解図である。このカーカスコード64は、2本のヤーン68が上撚りされた構造を有する。それぞれのヤーン68は、アラミド繊維が下撚りされてなる。このカーカスコード64の撚り係数Tは、0.5以上である。このカーカスコード64は、いわゆる「ハイツイスト構造」を有する。アラミド繊維は、高強度である。このカーカスコード64では、アラミド繊維とハイツイスト構造との相乗効果により、極めて高い耐疲労性が達成されている。3本以上のヤーン68が撚られてもよい。
撚り係数Tは、下記数式(I)によって算出される。
T = N * ((0.125 * D / 2) / ρ)1/2 * 10−3 (I)
この数式(I)において、Nはコード10cm当たりの上撚り数を表し、Dはトータル繊度(dtex)を表し、ρはコード材料の比重(g/cm)を表す。トータル繊度Dは、それぞれのヤーンの繊度の総和である。
このカーカスコード64は、パンク状態におけるタイヤ2の縦歪みを抑制する。このカーカスコード64は、パンク状態でのタイヤ2の操縦安定性及び耐久性に寄与する。パンク状態での走行により、タイヤ2は昇温する。アラミド繊維の弾性率の温度依存性は小さいので、パンク状態での走行においても、カーカスコード64がカーカス16の破損を抑制する。
2枚のプライに高剛性なコードが用いられたベルトに比べ、ミックスベルト20は、強度に劣る。ハイツイスト構造のカーカスコード64は、ミックスベルト20の欠点を補う。このカーカスコード64を備えたタイヤ2は、ミックスベルト20を備えているにもかかわらず、強度及びパンク状態でのタイヤ2の耐久性に優れる。
タイヤ2の強度及び耐久性の観点から、撚り係数Tは、0.6以上がより好ましい。カーカスコード64の製作容易の観点から、撚り係数Tは0.7以下が好ましい。
カーカスコード64の耐疲労性の観点から、上撚り数Nは、40以上が好ましく、50以上がより好ましい。上撚り数Nは、100以下が好ましい。
カーカスコード64の耐疲労性の観点から、カーカスコード64の、下撚り数N1と上撚り数Nとの比(N1/N)は、0.2以上2.0以下が好ましく、0.5以上1.5以下が好ましい。比(N1/N)は、理想的には1.0である。
カーカスコード64のトータル繊度Dは、1500dtex以上5000dtex以下が好ましい。それぞれのヤーン68の繊度は、700dtex以上3000dtex以下が好ましい。カーカスコード64の密度Deは、30本/5cm以上60本/5cm以下が好ましい。カーカスプライ38におけるトータル繊度Dと密度Deとの積(D*De)は、70000以上150000以下が好ましく、100000以上120000以下がより好ましい。
トッピングゴム66の複素弾性率Eは、5MPa以上である。このトッピングゴム66は、高弾性である。このトッピングゴム66は、パンク状態でのタイヤ2の操縦安定性及び耐久性に寄与する。この観点から、複素弾性率Eは6MPa以上がより好ましい。複素弾性率Eは、13MPa以下が好ましい。複素弾性率Eは、「JIS K6394」の規定に準拠して、以下に示される条件で、粘弾性スペクトロメーター(島津製作所社の「VA−200」)によって測定される。
初期歪み:10%
振幅:±2%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
タイヤ2の各部位の寸法及び角度は、特に言及のない限り、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。但し、乗用車タイヤの場合、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1から5に示された構造を備えたランフラットタイヤを得た。このタイヤは、最大厚みが9mmであり硬度が78である支持層を備えている。このタイヤのカーカスコードは、アラミド繊維からなる。このカーカスコードの撚り係数Tは、0.66である。このカーカスコードは、いわゆる「ハイツイスト構造」を有する。このカーカスコードのトータル繊度Dは、2200dtexである。このカーカスコードの10cm当たりの上撚り数Nは、68である。カーカスコードの密度は、50本/5cmである。このタイヤの外側ベルトプライは、下記表1に示されるタイプIIのコードを備える。このタイヤの内側ベルトプライは、下記表1に示されるタイプIのコードを備える。外側コードの傾斜角度θ1及び内側コードの傾斜角度θ2は、26°である。このタイヤは、CTTプロファイルを有している。このプロファイルは、インボリュート曲線に近似された多数の円弧からなる。中心点TCから点P90の間の円弧の数は、5である。このプロファイルでは、(Y60/H)は0.09であり、(Y75/H)は0.14であり、(Y90/H)は0.37であり、(Y100/H)は0.57である。このタイヤのサイズは、「245/40R18」である。
[実施例2及び3]
傾斜角度θ1及びθ2を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2及び3のタイヤを得た。
[実施例4及び5]
支持層の最大厚みを下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4及び5のタイヤを得た。
[実施例6及び7]
外側ベルトプライにタイプIのコードを用い、内側ベルトプライにタイプIIのコードを用いた他は実施例1と同様にして、実施例6のタイヤを得た。外側ベルトプライに下記表1に示されるタイプIIIのコードを用い、内側ベルトプライにタイプIIのコードを用いた他は実施例1と同様にして、実施例6のタイヤを得た。
[実施例8]
材質がレーヨン繊維であるカーカスコードを用いた他は実施例1と同様にして、実施例8のタイヤを得た。このカーカスコードの繊度は、1840dtex/2である。このカーカスコードの撚り係数Tは、0.59である。
[実施例9及び10]
下記表1に示される撚り係数Tを有するカーカスコードを用いた他は実施例1と同様にして、実施例9及び10のタイヤを得た。実施例9のカーカスコードの繊度は、1100dtex/2である。実施例10のカーカスコードの繊度は、1670dtex/2である。
[実施例11]
CTTプロファイルではない通常のプロファイルを形成した他は実施例1と同様にして、実施例11のタイヤを得た。このタイヤでは、(Y60/H)は0.06であり、(Y75/H)は0.08であり、(Y90/H)は0.19であり、(Y100/H)は0.57である。
[比較例1]
従来の市販タイヤを、比較例1とした。このタイヤは、CTTプロファイルではない通常のプロファイルを備えている。このタイヤのカーカスコードでは、材質はレーヨン繊維であり、繊度は1840dtex/2であり、撚り係数Tは、0.59である。外側ベルトプライ及び内側ベルトプライは、タイプIIIのコードを有している。
[比較例2から4]
外側ベルトプライ及び内側ベルトプライに、下記表2に示されるコードを用いた他は実施例1と同様にして、比較例2から4のタイヤを得た。
[質量]
タイヤの質量を測定した。この結果が、比較例4が基準とされた指数として、下記の表1及び2に示されている。数値が小さいほど、好ましい。
[パンク状態での耐久性]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を230kPaとした。このタイヤを、38℃±3℃の温度下に34時間保持した。リムのバルブコアを抜き取って、タイヤの内部を大気と連通させた。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、4.14kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行距離を、測定した。この結果が、比較例4が基準とされた指数として、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
[縦バネ定数]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を230kPaとした。このタイヤを接地させて、5kNの荷重を負荷した。負荷によるタイヤの縦方向撓み量を測定し、上記荷重を上記撓み量で除して、縦バネ定数を測定した。この結果が、比較例4が基準とされた指数として、下記の表1及び2に示されている。数値が小さいほど好ましい。
[強度]
「JIS D4230」の規格に準拠したプランジャー破壊試験を行い、破壊エネルギーを測定した。この結果が、比較例4が基準とされた指数として、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど好ましい。
[官能評価]
タイヤを正規リムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を230kPaとした。このタイヤを、前側エンジン後輪駆動タイプであり、排気量が4300ccである乗用車に装着した。アスファルト舗装されかつ段差を有する路面、ベルジャン路面及びビッツマン路面にてこの乗用車を走行させ、ドライバーに乗り心地と操縦安定性とを評価させた。この結果が、比較例4が基準とされた指数として、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど好ましい。
Figure 0005139762
Figure 0005139762
表1及び2に示されるように、各実施例のタイヤは、全ての項目において優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係るランフラットタイヤは、種々の車両に装着されうる。
図1は、本発明の一実施形態に係るランフラットタイヤの一部が示された断面図である。 図2は、図1のタイヤのベルトの一部が示された分解斜視図である。 図3は、図1のタイヤの一部が示された断面図である。 図4は、図1のタイヤのカーカスプライの一部が示された断面斜視図である。 図5は、図4のカーカスプライのカーカスコードの一部が示された分解図である。
符号の説明
2・・・ランフラットタイヤ
4・・・トレッド
10・・・サイドウォール
14・・・ビード
16・・・カーカス
18・・・支持層
20・・・ベルト
22・・・バンド
34・・・エイペックス
38・・・カーカスプライ
54・・・外側ベルトプライ
56・・・内側ベルトプライ
58・・・外側コード
60・・・トッピングゴム
62・・・内側コード
64・・・カーカスコード
68・・・ヤーン

Claims (7)

  1. その表面がトレッド面をなすトレッド、
    このトレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォール、
    このサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のビード、
    上記トレッド及びサイドウォールに沿っており両ビードの間に架け渡されたカーカス、
    上記サイドウォールの軸方向内側に位置しており、その断面が略三日月形状である支持層
    並びに
    外側ベルトプライ及び内側ベルトプライを含んでおりトレッドとカーカスとの間に位置するベルト
    を備えており、
    互いに曲率半径が異なる複数の円弧からなる曲面を含むプロファイルを有しており、
    上記外側ベルトプライが、並列する多数のコードとトッピングゴムとを有しており、
    上記内側ベルトプライが、並列する多数のコードとトッピングゴムとを有しており、
    上記外側ベルトプライのコードの密度が上記内側ベルトプライのコードの密度よりも大きく、
    上記外側ベルトプライのコードの直径が上記内側ベルトプライのコードの直径よりも大きいランフラットタイヤ。
  2. 上記外側ベルトプライのコード密度Eoと内側ベルトプライのコード密度Eiとの差(Eo−Ei)の絶対値が、5本/5cm以上である請求項1に記載のタイヤ。
  3. 上記外側ベルトプライのコードの直径Doと内側ベルトプライのコードの直径Diとの比(Do/Di)が、1.05/1.00以上である請求項1又は2に記載のタイヤ。
  4. 上記外側ベルトプライのコードの構成が、内側ベルトプライのコードの構成と異なっている請求項1から3のいずれかに記載のタイヤ。
  5. 上記カーカスが並列する多数のカーカスコードとトッピングゴムとを有しており、このカーカスコードがアラミド繊維からなる請求項1から4のいずれかに記載のタイヤ。
  6. 上記カーカスコードが、アラミド繊維が下撚りされてなる複数のヤーンが上撚りされた構造を有しており、
    このカーカスコードの、下記数式(I)によって算出される撚り係数Tが、0.5以上0.7以下である請求項5に記載のタイヤ。
    T = N * ((0.125 * D / 2) / ρ)1/2 * 10−3 (I)
    (この数式(I)において、Nはコード10cm当たりの上撚り数を表し、Dはトータル繊度(dtex)を表し、ρはコード材料の比重(g/cm)を表す。)
  7. 上記カーカスのトッピングゴムの複素弾性率Eが、5MPa以上13MPa以下である請求項5又は6に記載のタイヤ。
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