JP4650993B2 - 樹脂製管を接続するための継手 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明はナツトと把持環を有する形式の樹脂製管の継手、特に予めナツトを組込まれた継手へ樹脂製管を挿入し、樹脂製管の外面を係止するのに適した、樹脂製管を接続するための継手に関するものである。
【従来の技術】
【0002】
樹脂製管の外面を係止する数々の継手が既によく知られている。これらの継手は圧縮性スリーブの副組立体と、圧縮性スリーブの内端に固着された弾性ガスケツトリングと、把持環と、ナツトとを備えている。ガスケツトリングはナツトを締め付けると筒形本体のソケツトの衝合部に当接し、ナツトをさらに締め付けると把持環を径方向へ圧縮し、把持環から径内方へ突出する爪状の突条を樹脂製管の外周面に係合し、樹脂製管を継手に結合する。樹脂製管の端部は把持環とスリーブを貫通して筒形本体のソケツトに挿入可能である。ナツトと筒形本体は衝合部を備えており、かつ圧縮性スリーブの外端のフランジの内外
面に当接する。
【0003】
これらの継手は技術的にも商業的にも好結果を得る改良がなされ、非常な成功を収めている。
【0004】
かかる継手がしばしば遭遇する実際的な問題は、継手が特に家庭や計器箱のような取付場所では軸方向寸法が長すぎることである。しかし、樹脂製の継手は性質上、必要な強度を得るような長さを要するのが常識とされている。
【0005】
こうして、大きさが制約される取付場所には、強度、特性の面でより短くすることが可能な金属製の継手が用いられている。しかし、金属製の継手は樹脂製の継手よりも高価になる。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがつて、本発明の目的は上述の問題を克服する樹脂製管継手を公にすること、すなわち公知のものよりも明らかに短く、狭い取付場所へ配設するのに有用で経済的な代替品としての、樹脂製管を接続するための継手を提供することにある。
【0007】
この継手は明らかに樹脂材料の使用量を少く、製造経費を節減できる。短い樹脂製継手の利点は、貯蔵、倉庫、輸送、重量などの問題に寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の構成は継手の筒形本体と、該筒形本体の内周面に係合する把持環と、前記筒形本体の基端部の外周面に形成したねじ軸に螺合する袋状のナツトとを備えており、前記ナツトの基端部に、筒形本体の内周面と平行かつ部分的に嵌合可能の外周面と、該外周面の先端縁からナツトの基端部へ延びる先細りのテーパ面とを有するかぎ状の突条を設け、前記把持環は外周面が前記筒形本体の内周面に嵌合する筒体であつて、該筒体の基端に前記ナツトのかぎ状の突条の内周のテーパ面に対向して形成したテーパ面と、前記筒体の内周面から径内方へ突出する爪とを有する変形可能のものであり、前記ナツトを締め付けると、前記ナツトのかぎ状の突条の内周のテーパ面が前記把持環のテーパ面に当接して前記把持環に軸方向と径方向の力を及ぼし、前記ナツトのかぎ状の突条の外周面を前記筒形本体の内周面へ滑り込ませ、前記把持環は該把持環のテーパ面の大径端部から径外方へ延びる環状のリツプを備えており、前記ナツトが締め付けられていない時、前記把持環のリツプは前記筒形本体の基端面に当接し、前記ナツトが締め付けられた時、前記リツプの外縁が前記筒形本体の内周のテーパ面に当接して、前記把持環に軸方向と径方向の力を及ぼし、リツプが前記筒形本体の内部へ入り込むことで、前記把持環は径方向の内側へと圧縮されて、樹脂製管を保持することを特徴とする。
【発明の実施の形態】
【0009】
本発明によれば、少くとも外周面に沿つて延びるねじ軸28と内周面42とを有する中空の筒形本体20と、前記筒形本体のねじ軸28と螺合するねじ孔26を一端に有し、前記筒形本体の内周面42と平行で該内周面の少くとも一部で摺接可能の外周面62と外周面の内端縁から外方(図の右方)へ延びる先細りのテーパ面46とを有するかぎ状の突条36を備えるナツト14と、前記筒形本体の内周面42と平行な外周面62と該外周面62から外方へ延びる先細りのテーパ面48と内周面から径内方へ延びる爪24とを備える変形可能の把持環16とを具備するものであり、前記ナツトが締め付けられると、前記ナ
ツトのテーパ面46が前記把持環のテーパ面48に当接して軸方向と径方向の力を及ぼし、これにより前記ナツトのかぎ状の突条の外周面40を前記筒形本体の内周面42に沿つて滑り込ませることを特徴とする、樹脂製管を接続するための継手が提供される。
【0010】
好ましくは、把持環が十分に径内方へ変形すると、把持環が樹脂製管12に係合して樹脂製管を筒形本体20へ引き込む。ナツト14がさらに締め付けられると、把持環のテーパ面48がナツトのかぎ状の突条の内周のテーパ面46に押されて筒形本体の内部へ摺動する。
【0011】
好ましくは、筒形本体の内周面42が筒形本体の外方へ末広がりのテーパ面68に形成され、ナツトが締め付けられると、把持環が筒形本体の内部へ移動し、ナツトのかぎ状の突条の外周面66の一部が筒形本体のテーパ面68に接する。
【0012】
同様に、ナツトのかぎ状の突条の外周面66が内方へ先細りのテーパ面68に形成され、ナツトが締め付けられると、把持環が筒形本体の内部へ移動し、ナツトのかぎ状の突条の外周面66の一部が筒形本体のテーパ面68に接する。
【0013】
好ましくは、筒形本体の内周面42が筒形本体の外方へ末広がりのテーパ面68に形成され、ナツトのかぎ状の突条の外周面が内方へ先細りのテーパ面66にされ、ナツトが締め付けられると、両方のテーパ面が互いに当接する。筒形本体の内周のテーパ面68とナツトの各テーパ面66,46は同様のものであるのが好ましい。さらに好ましくは、筒形本体とナツトの各テーパ面68,66の勾配は数゜程度である。
【0014】
好ましくは、筒形本体の基端部はナツトの基端部とかぎ状の突条36とにより覆われ、ナツトが筒形本体の内空部へ滑り込んで筒形本体に衝合するようになつている。
【0015】
好ましくは、把持環はテーパ面48の大径端から径外方へ延びる環状のリツプ70を備えており、ナツトが締め付けられていない時、把持環のリツプは筒形本体の基端53に当接するようになつており、ナツトが締め付けられた時把持環は圧縮されてリツプ70を筒形本体の内部へ入り込ませ、リツプの外縁が筒形本体のテーパ面68に接する。
【0016】
好ましくは、把持環のテーパ面48の勾配は、把持環のテーパ面に対向するナツトのかぎ状の突条の内周の先細りのテーパ面46の勾配よりも通常は緩く、ナツトのかぎ状の突条36が把持環に係合すると、把持環を筒形本体の内部へ入り込ませて把持環を圧縮し、把持環のテーパ面48の勾配がナツトのかぎ状の突条の内周の先細りのテーパ面46の勾配と同じになる。さらに好ましくは、休止状態ないし解放状態にある把持環のテーパ面48の勾配は37゜程度であり、ナツトのかぎ状の突条の内周の先細りのテーパ面46の勾配は45゜程度である。
【0017】
ナツトはナツトのかぎ状の突条の内周の先細りのテーパ面46の縁部から径内方へ延びる環状の段部72を備えており、把持環が圧縮されると、前記段部が把持環に当接され、把持環が筒形本体から軸方向へ抜け出るのを抑える。
好ましくは、ナツトのかぎ状の突条の内周の先細りのテーパ面46の幅は把持環のテーパ面48の幅よりも大きく、これによりナツトが締め付けられると、ナツトのかぎ状の突条の内周の先細りのテーパ面46と把持環のテーパ面48との全面的接触を維持しつつ、ナツトのかぎ状の突条の内周のテーパ面46が把持環のテーパ面48で相対摺動して該テーパ面48を覆う。さらに好ましくは、ナツトのかぎ状の突条の内周の先細りのテーパ面46の幅は把持環のテーパ面48の幅よりも1/3程度大きい。
【0018】
本発明の継手はアセタール樹脂材料またはポリプロピレン樹脂材料からつくられる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を添付図面を参照して詳細に説明する。詳細な説明は具体的実施例に基づいているが、他の実施例も可能であり、本発明の精神と範囲を逸脱しないで実施例に変更を加えることができる。図面と以下の説明で符号を用いる場合、同様の部材には同符号を用いる。
【0020】
図1に示すように、継手10には樹脂製管12が挿入される。継手10はナツト14と、把持環16と、シールリング18と、筒形本体20とを備えている。把持環16は複数の割溝22を有し、これにより把持環16の周方向の変形による組付けを容易にする。把持環16は製造が容易な切欠環またはコレツトとして構成してもよい。把持環16は軸方向に隔置する径内方の爪24を備えている。割溝22は把持環16を径方向に圧縮して爪24を樹脂製管12に係合させる。
【0021】
ナツト14は筒形本体20のねじ軸28を螺合するねじ孔26を備えている。使用時樹脂製管12はナツト14の開口30と把持環16の孔32へ挿通される。ナツト14の周方向に並設された突条34は握りを構成し、手でナツト14を回すのを助ける。
【0022】
ナツト14は筒形本体20の端部38の周囲へ突出し、かつ筒形本体20の内周面42と平行な外周面40を有するかぎ状の突条36を備えており、両方の内周面42と外周面40は継手10と樹脂製管12との軸線44と平行である。両方の内周面42と外周面40は互いに接近し、ナツト14が締め付けられると、ナツト14の外周面40は筒形本体20の内周面42に沿つて摺動する。
【0023】
かぎ状の突条36は内方(図1で左方)へ末広がりのテーパ面46を備えており、テーパ面46は把持環16の外方(図1で右方)へ先細りのテーパ面48に対応する勾配になつている。ナツト14が締め付けられると、ナツト14のテーパ面46は把持環16のテーパ面48へ当接する。ナツト14と把持環16の各テーパ面46,48は継手10の軸線44に対し同じ勾配であるから、把持環16は径方向と軸方向の力を受ける。
【0024】
使用時、樹脂製管12はナツト14の開口30と把持環16の孔32とシールリング18を経て、樹脂製管12が突条52に当るまで筒形本体20の孔50へ挿入される。ナツト14がねじ込まれない内は、爪24は樹脂製管12に係合せず、ナツト14と把持環16の各テーパ面46,48は離れている。
【0025】
ナツト14の筒形本体20への初期の締付けは、ナツト14のテーパ面46を把持環16のテーパ面48へ当接する。2つのテーパ面46,48は軸線44に対し共通の勾配であるから、把持環16は径方向と軸方向の力を受ける。径方向の力は把持環16を圧縮し、爪24を樹脂製管12に噛み込ませ、樹脂製管12を筒形本体20の内部へ引き込み、突条52へ係合する。
【0026】
同時に、把持環16の端面54はシールリング18に係合してシールリング18を圧縮し、樹脂製管12との間をシールする。ナツト14をさらに締め付けると、ナツト14の停止面56は筒形本体20の停止面58に達し、両者の間の内空部60はナツト14が締め付けられるに従つて次第に狭くなる。
【0027】
ナツト14のさらなる締付けはシールリングないしOリング18を圧縮し、把持環16の外周面62が筒形本体20の内周面64から離れると、つまり外周面64が内方へ湾曲すると、把持環16のテーパ面48を径方向へ圧縮する。そして、ナツト14はナツト14の停止面56と筒形本体20の停止面58が当接して内空部60をなくすか、把持環16が径方向と軸方向の力に抗するまで移動する。これは効果的なシールが達せられたことを使用者に示す。
【0028】
上述したように、当業者にはナツト14の形状構成では、継手10が樹脂製管12をシールし、継手10から樹脂製管12の外れを防止する力を把持環16に及ぼすことが理解できよう。かかるナツト14は十分な強度がないという常識に反して、樹脂(プラスチツク、以下同じ)の型成形または押出成形により得られ、上述したナツト14の形状構成が、ナツト14をより長い構成にしないでも、継手10に樹脂製管12をロツクするに十分な強度に加工できることが分かる。
【0029】
しかし、樹脂材料を用いる場合は、樹脂材料はプロピレンのような軟質のものであり、ナツト14の僅かな形状変更とかナツト14と筒形本体20の相互関係で支持する必要がある。これは、図2〜5に示すようにナツト14が筒形本体20から付加的な支持力を受け入れるように構成される。
【0030】
この実施例では、ナツト14は内方へ末広りのテーパ面46を有するかぎ状の突条36を備えており、テーパ面46は把持環16の外方へ先細りのテーパ面48と一致する形状と勾配のものである。
【0031】
しかし、第1の実施例とは反対にナツト14のかぎ状の突条の外周のテーパ面66は、少くとも数°の勾配になつており、筒形本体20の内周面のテーパ面68と一致するように設計されている。ナツト14が締め付けられる時、停止面56,58は互いに当接するか少くとも接近し、テーパ面66,68も当接して効果的にロツクされる。これはナツト14から受ける径外方の力が筒形本体20へ変換される。ナツト14は効果的に筒形本体20へ結合され、剛的組立体を形成する。この組立体は幾つかの利点を有する。
【0032】
把持環16とナツト14のテーパ面48,46の両方をテーパ面にする必要はなく、一方のテーパ面をテーパ面にするだけでもよいと解すべきである。重要なことは、把持環16が筒形本体20の内部へ移動した時、2つのテーパ面46,48が互いに接近するようなテーパ面にされることである。したがつて、把持環16またはナツト14にテーパ面を形成するか否かは重大なことではない。もちろん、最良の形状構成はテーパ面46,48の両方がテーパ面に形成されることである。しかし、樹脂には許容性があり、両方のテーパ面46,48が同じテーパ面に形成されることはありえない。
【0033】
第1に、樹脂製管12に作用する圧縮力は、一部が補強を施されたナツト14を経て筒形本体20へ径方向の力として変換される。ナツト14と筒形本体20の荷重分担の態様は、ナツト14を補強のないものよりも短くすることを許容する。他の手段では、ナツト14の構造は引張力を勘案して、より大きくかつ/またはより長くしなければならない。補強のないより短いナツト14は、樹脂製管12が引張力の下で継手10から完全に引き出せないように把持環16ないし切欠環を装着している。
第2に、ナツト14の補強は樹脂製管12から継手10へ作用する曲げ力に対し抗力を及ぼす。ナツト14と筒形本体20との連携は、筒形本体20に沿つてナツト14が移動するのを阻止し、シール状態を維持する。
【0034】
図2に示すナツト14が締付けられてない状態では、ナツト14のかぎ状の突条36の少くとも一部が筒形本体20の端部38(図1を参照)へ突出しているのが好ましいが、これは本質的なことではない。これはナツト14を締め付けると、ナツト14の突条36が筒形本体20の端部38で停滞するよりもむしろ、筒形本体20の内部へ円滑に滑り込むのを確実にする。
【0035】
本実施例によるナツト14の操作は、図3〜5に示される。筒形本体20に対するナツト14の初期締付けは、ナツト14のテーパ面46を把持環16のテーパ面48に当接させる。2つのテーパ面46,48はナツト14の軸線44に対し同じ勾配であるので、把持環16は径方向と軸方向の力を受ける。径方向の力は把持環16を圧縮し、爪24を樹脂製管12に噛み込ませ、こうして樹脂製管12を筒形本体20の内部へ引き込み、突条52に乗り上げさせる。
【0036】
同時に、把持環16の後面(左端面)54がシールリング18に当接してシールリング18を圧縮し始め、図3に示すように、樹脂製管12をシールする。ナツト14をさらに筒形本体20へ締め付けると、図4に示すように、ナツト14の停止面56は筒形本体20の停止面58に接近する。この位置でナツト14がさらに移動すると、2つの停止面56,58の間の内空部60が次第に狭くなる。
【0037】
図4に示すように、ナツト14がさらに締め付けられると、シールリングないしOリング18がさらに圧縮され、ナツト14の移動は把持環16のテーパ面48をさらに径方向へ圧縮するので、停止面56が筒形本体20の停止面58に接する。既に述べたように、ナツト14の停止面56と筒形本体20の停止面58が当接して内空部60が狭くなり、把持環16がそれ以上径方向と軸方向に移動しない。
図5に示すように、この構成は樹脂製管12に引張力が加えられた時、樹脂製管12を継手10へ固定するのを助ける。樹脂製管12に荷重が加えられると、樹脂製管12は筒形本体20から軸線44で示す軸方向の力を受ける。ナツト14と把持環16の各テーパ面46,48の形状は、把持環16が筒形本体20から外方へ引かれると、把持環16がさらに圧縮されるように働く。この種の構造の潜在的な難点は、シールリング18の圧縮が弱くなることである。その理由はナツト14と把持環16のテーパ面46,48の相対的な勾配に留意することが重要である。一方ではナツト14の締付けないしねじ込みが樹脂製管12に係合する把持環16の圧縮をもたらすようなテーパ面46,48の勾配とし、他方では樹脂製管の軸方向の力が把持環16の筒形本体20の外方(図5で右方)への過大な移動を許すほど、テーパ面46,48の勾配が重大なものではないようにする。
テーパ面46,48の勾配は普通には45゜に設定される。しかし、テーパ面46,48の勾配は把持環16に作用する軸方向の力と径方向の力との割合に応じて選択さできるように調整される。例えば、テーパ面46,48の勾配の軸線44に対する勾配が30゜てあれば、把持環16の受ける軸方向の力と径方向の力の割合は1:1ではなく、勾配の正弦に関係する。勾配の変更は軸方向の力と径方向の力の相対的な力を制御するように考慮される。
【0038】
ナツト14が締め付けられると、2つの楔状のテーパ面46,48は一方の端部で互いに接する。しかし、ナツト14がさらに締め付けられると、把持環16は径方向の力を受け、把持環16のテーパ面48を押し下げるように働き、ナツト14のテーパ面46と把持環16のテーパ面48との相対的な角度ないし勾配が変化することになる。締め付けられたナツト14が相対的な強度を有することはさらに厳しいものであるから、ナツト14が初期係合時よりも締め付けられた時、テーパ面46,48は互いに平行かつ平坦であることが要求される。この理由は、把持環16のテーパ面48の初期の勾配がナツト14のそれよりも継手10の軸線44を含む面に近いからである。
【0039】
図6〜8は本発明のさらに有利な実施例を示す。これは図2〜5に示した継手10における潜在的な操作の難しさを克服する。同継手10においてナツト14が完全に締め付けられた時、図8に示すように、把持環16の前端部(右端部)は径方向へ圧縮され、把持環16と筒形本体20の内周面68との間の接触だけが、把持環16のシールリング18に近い後端部(左端部)に生じる。当業者であれば、かかる継手10に樹脂製管12を組み付けた時、樹脂製管12に作用する横方向の力がナツト14のテーパ面46を横切つて把持環16の前端部(図6で右端部)へ作用することが分るであろう。把持環16はリツプ70を備えており、リツプ70は把持環16のテーパ面48の延長部に形成されている。リツプ70は筒形本体20の基端部38で筒形本体20の内径よりも大きな初期の内径を有し、圧縮された状態にない時、筒形本体20の停止面58(図4参照)の一部に対向している。ナツト14が把持環16の前端部(右端部)に当るように締め付けられると、ナツト14から受ける軸方向と径方向の力で把持環16は筒形本体20の内部へ滑り込む。図示してないが、リツプ70と把持環16の間の角度は直角というよりは弓状に湾曲した形のものであり、把持環16を筒形本体20へ滑り込ませ、かつリツプ70を筒形本体20の基端部38へ乗り上げさせるように働く。
【0040】
把持環16が筒形本体20の内部へ滑り込むと、リツプ70の縁部は筒形本体20の内周面68に当接するので、把持環16は前後端部で筒形本体20の内周面68に係合し、こうして把持環16が筒形本体20に対して回転しないようになる。すなわち、把持環16の軸線方向の力が樹脂製管12と把持環16に作用した時でも、把持環16の軸線は継手10の残りの部分と同軸を保っている。
【0041】
把持環16のリツプ70はまた継手10の組立てに際し次のような利点を備えている。把持環16が筒形本体20の内部へ挿入される時、リツプ70は把持環16が正しい姿勢(把持環16の前端部が径方向に圧縮された姿勢)に挿入されるのを確実にする。
【0042】
図6〜9は上述した把持環16のテーパ面48の初期の勾配が、ナツト14のテーパ面46の勾配よりも緩くなつていることの利点を示す。図示のように、ナツト14が締め付けられ、把持環16の前端(図6で右端)が径方向へ圧縮されると、2つのテーパ面46,48の間の相対的な勾配が変化し、2つのテーパ面46,48が平行になる通常の操作位置に変化する。
【0043】
上述の形状構成は継手を従来のものよりも短くすることができることが分かる。継手にナツトがねじ込まれていない状態でも、ナツト14のかぎ状の突条36は筒形本体20の内部へ臨むように配設されるのが好ましい。この突条36は鋭いものではなく、つまり鋭い環状のものではなく幾分丸みをもつている。
【0044】
ナツト14のテーパ面46の寸法は把持環16のテーパ面48の寸法よりも大きなものである。テーパ面46は、把持環16がナツト14のテーパ面46(図2,5を比較して)に沿つて動き、両者の相対的な滑り運動を許す時でも、把持環16のテーパ面48とナツト14のテーパ面46が全面的に当接するのを許す。
【0045】
樹脂製管12を筒形本体20の内部へ確実に保持するために、ナツト14は段部72(図9参照)を備えており、継手10が締付け状態にある時、把持環16が筒形本体20から引き出されるのを阻止する。これは、図9に示すように、環状の段部72は楔状のテーパ面48から内方へ継手の軸線と垂直に突出する。当業者であれば理解できるように、把持環16は段部72に直接当接し、把持環16がそれ以上外方へ動くのを許さないので、把持環16が継手10から引き出されるのを阻止する効果を奏する。
【0046】
上述の特性の全てを備えた継手10が図10に示される。当業者であれば上述した全ての特徴のもつ先進性を理解できるであろう。これを要約すれば次の発明の効果に記載のとおりである。
【0047】
本発明の範囲を逸脱することなく、本発明にさらなる利点や改良を加えることは容易である。本発明は最も実際的で好適な実施例と思われる点について示しかつ説明したが、本発明はここに詳細に述べたことに限定されるものでなく、特許請求の範囲の全てが同等の機器や装置を含むように方向づけられており、本発明の精神と範囲において他の趣向をなし得るものであると理解すべきである。
【発明の効果】
【0048】
(a) ナツトのかぎ状の突条の内周に楔状のテーパ面を設けたことは、必要とする素材の量を減じ、これまで取付け不能とされていた場所にも取り付け得る短い継手を提供できる。
【0049】
(b) ナツトのかぎ状の突条の内周および/または筒形本体の内周にテーパ面を設けたことは、ナツトを通じて筒形本体の内部へ径方向の力を伝達するのを助け、これにより例えば特定の大きさの継手では用いる材料の剛性が十分でないか、操作温度と圧力を含む操作条件に問題がある場合に、必要とされる付加的支持力を与える。
(c) 把持環にリツプを備えたことは、継手の組立てを助け、継手の休止状態で樹脂製管が軸方向に外れるような把持環の能力低下に対する付加的支持力を把持環と筒形本体の間に与える。
(d) ナツトのかぎ状の突条の内周の楔状のテーパ面と把持環のテーパ面の形状は、両方のテーパ面が当初は平行でなくても、ナツトが締め付けられて把持環が内方へ湾曲されると、両方のテーパ面が平行になり、良好な組立てが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施例に係る楔状部のあるナツトを備えた、樹脂製管を接続するための継手の側面断面図である。
【図2】本発明の第2実施例に係る筒形本体の内周のテーパ面と係合する楔状のテーパ面を有するナツトを備えた、樹脂製管を接続するための継手の側面断面図である。
【図3】図2のナツトを部分的に締め付けた状態を示す、樹脂製管を接続するための継手の側面断面図である。
【図4】図2のナツトを完全に締め付けた状態を示す、樹脂製管を接続するための継手の側面断面図である。
【図5】図2のナツトを完全に締め付けた時樹脂製管が軸方向の力を受ける状態を示す、樹脂製管を接続するための継手の側面断面図である。
【図6】本発明の第3実施例に係るナツトを完全に締め付ける前の把持環を示す、樹脂製管を接続するための継手の側面断面図である。
【図7】図6のナツトを操作位置に締め付けた状態を示す、樹脂製管を接続するための継手の側面断面図である。
【図8】図6のナツトを完全に締め付けた状態を示す、樹脂製管を接続するための継手の側面断面図である。
【図9】本発明の第4実施例に係るロツク用段部のあるナツトを備えた、樹脂製管を接続するための継手の側面断面図である。
【図10】各実施例の樹脂製管を接続するための継手を分解して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
10:継手 12:樹脂製管 14:ナツト 16:把持環 18:シールリング 20:筒形本体 22:割溝 24:環状の爪 26:ねじ孔 28:ねじ軸 30:開口 32:孔 34:突条 36:かぎ状の突条 38:基端部 40:かぎ状の突条の外周面 42:内周面 44:軸線 46:テーパ面 48:テーパ面 50:孔 52:突条 54:後面 56:停止面 58:停止面 60:内空部 62:外周面 64:内周面 66:外周面 68:テーパ面 70:リツプ 72:段部
Claims (1)
- 継手の筒形の本体と、該本体の内周面に係合する把持環と、前記本体の基端部の外周面に形成したねじ軸に螺合する袋状のナツトとを備えており、前記ナツトの基端部に本体の内周面と平行かつ部分的に嵌合可能の外周面と、該外周面の先端縁からナツトの基端部へ延びる先細りのテーパ面とを有するかぎ状の突条を設け、前記把持環は外周面が前記本体の内周面に嵌合する筒体であって、該筒体の基端に前記ナツトのかぎ状の突条の内周のテーパ面に対向して形成したテーパ面と、前記筒体の内周面から径内方へ突出する爪とを有する変形可能のものであり、前記ナツトを締め付けると、前記ナツトのかぎ状の突条の内周のテーパ面が前記把持環のテーパ面に当接して前記把持環に軸方向と径方向の力を及ぼし、前記ナツトのかぎ状の突条の外周面を前記本体の内周面へ滑り込ませ、
前記把持環は該把持環のテーパ面の大径端部から径外方へ延びる環状のリツプを備えており、前記ナツトが締め付けられていない時、前記把持環のリツプは前記本体の基端面に当接し、前記ナツトが締め付けられた時、前記リツプが前記ナツトのテーパ面に当接することにより、前記把持環に軸方向と径方向の力を及ぼし、リツプが前記本体の径方向の内側へと移動することで、前記把持環は径方向の内側へと圧縮されて、樹脂製管を保持することを特徴とする、樹脂製管を接続するための継手。
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