JP4649701B2 - 自己走査型発光装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自己走査型発光装置、特に光出力効率を改善した自己走査型発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多数個の発光素子を同一基板上に集積した発光素子アレイは、その駆動用ICと組み合わせて光プリンタ等の書き込み用光源として利用されている。発光素子の1例として、発光ダイオード(LED)が挙げられる。通常、1次元に配列したLEDアレイが使用されるが、外部駆動用ICから画像信号に対応した信号をアレイ内の各々のLEDへ供給するため、LEDアレイチップ内にLEDと同一数のボンディングパッドを形成する必要がある。解像度600dpiの場合、LEDの配列ピッチは42.3μmであり、ボンディングパッド(BP)の配列方向の一辺の長さを80μmとするとBPの配列ピッチは80μm以上となり、LED配列方向と平行方向に最低2列のBP配列が必要になる。
【0003】
このため、LEDアレイチップの面積が必然的に大きくなりコスト低減化に限界が見えていた。また、A3対応の600dpiプリントヘッドを作製する場合、1次元配列した発光点の数は7000個以上になるが、これと同一数のワイヤーボンディング(WB)が外部駆動ICと接続するために必要となり、WB工程への負荷が極めて高くなる。また、印刷画像の品質を高めるためには、より解像度の高い発光素子アレイが必要となるが、BP数の増加すなわちチップ面積の増大によるLEDアレイのコストアップや、WB数の増大による更なるWB工程への負荷増など、コスト面あるいは技術面から見て商品化可能なプリントヘッドの作製は容易ではない。
【0004】
以上のようなLEDアレイに関する課題を解決するため、本発明の出願人は発光素子アレイの構成要素としてpnpn構造を持つ発光サイリスタを採用することにより発光点の自己走査ができるという発明を開示し(特開平1−238962号公報、特開平2−14584号公報、特開平2−92650号公報、特開平2−92651号公報)、光プリンタ用光源として実装上簡便となること、発光素子チップ面積を小さくできること、発光素子ピッチを細かくできること、コンパクトな発光装置を作製できること等を示した。
【0005】
さらに、スイッチ素子(サイリスタ)アレイを転送部として、発光素子(発光サイリスタ)アレイと分離した構造の自己走査型発光装置を提案している(特開平2−263668号公報)。
【0006】
図8に、自己走査型発光装置の一構成の等価回路図を示す。この発光装置は、発光サイリスタ素子T(1)、T(2)・・・のアレイで構成される。図ではアレイの一部のみを示す。発光サイリスタ素子間は、ダイオードD1,D2・・・により接続している。VGAは電源(通常−5V)であり、負荷抵抗RLを経て各発光サイリスタ素子のゲート電極に接続されている。発光サイリスタ素子T(1)のゲート電極にはスタートパルスφSが加えられ、カソード電極には、交互にクロックパルスφ1、φ2が加えられている。
【0007】
動作を簡単に説明する。まずクロックパルスφ1の電圧がロー(L)レベルで、発光サイリスタ素子T(2)がオン状態であるとする。この時、T(2)のゲート電極電位はVGAの−5Vからほぼ0Vにまで上昇する。この電位上昇の影響はダイオードD2によってT(3)のゲート電極に伝えられ、その電位を約−1V(ダイオードD2の順方向立ち上がり電圧(拡散電位に等しい))に設定する。しかし、ダイオードD1は逆バイアス状態であるため、T(1)のゲート電極の電位は影響を受けず、−5Vのままとなる。
【0008】
発光サイリスタのオン電位は、ゲート電極電位+pn接合の拡散電位(約1V)で近似されるから、次のクロックパルスφ2のLレベル電位は約−2V(発光サイリスタ素子T(3)をオンさせるために必要な電圧)以上で、かつ約−4V(発光サイリスタ素子T(5)をオンさせるために必要な電圧)以下に設定しておけば、発光サイリスタ素子T(3)のみがオンし、これ以外の発光サイリスタ素子はオフのままにすることができる。したがって、2本のクロックパルスでオン状態、すなわち発光状態が転送されることになる。
【0009】
スタートパルスφSは、このような転送動作を開始させるためのパルスであり、スタートパルスφSをLレベル(約−5V)にすると同時にクロックパルスφ2をLレベル(約−2〜−4V)とし、発光サイリスタ素子T(1)をオンさせる。その後すぐ、スタートパルスφSはHレベルに戻される。
【0010】
発光状態に入ると、各発光サイリスタの発光強度はφ1、φ2のクロックラインに流す電流量、すなわち電流制限抵抗R1,R2で決められ、任意の強度にて画像書き込みが可能となる。また、発光状態を次の素子に転送するためには、各クロックラインの電圧を一度0Vまで上げ、発光している発光サイリスタ素子を一旦オフにしておく必要がある。
【0011】
自己走査型発光装置の他の態様を図9に示す。図8の構成に加え、もう一群の発光サイリスタ素子L(1)、L(2)・・・のアレイを設けている。T(1)、T(2)・・・のゲート電極とL(1)、L(2)・・・のゲート電極は互いに配線G(1)、G(2)・・・で接続されている。この構成ではT(1)、T(2)・・・をスイッチ素子専用として転送動作に用い、L(1)、L(2)・・・を発光素子専用に使用する。いま、スイッチ素子T(2)がオン状態にあるとすると、図8の場合と同様にT(2)のゲート電極電位は、VGA(ここでは−5Vと想定する)より上昇し、ほぼ0Vとなる。したがって、書き込み信号φIの電圧が、pn接合の拡散電位(約−1V)以下であれば、発光素子L(2)を発光状態とすることができる。
【0012】
これに対し、スイッチ素子T(1)のゲート電極は約−5Vであり、T(3)のゲート電極は約−1Vとなる。したがって、発光素子L(1)の書き込み電圧は−6V、発光素子L(3)の書き込み電圧は−2Vとなる。これから、発光素子L(2)のみに書き込める書き込み信号φIの電圧は、−1〜−2Vの範囲となる。発光素子L(2)がオン、すなわち発光状態に入ると、発光強度は書き込み信号φIに流す電流量、すなわち抵抗RIで決められ、任意の強度にて画像書き込みが可能となる。また、発光状態を次の発光素子に転送するためには、書き込み信号φIラインの電圧を一度0Vまで上げ、発光している発光素子を一旦オフにしておく必要がある。
【0013】
以上の等価回路では、発光サイリスタは、アノードを共通に接地しているが、極性を変えることによって、カソードを接地するような構成とできることは、当業者には明らかであろう。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記いずれの場合も電気的にはサイリスタ機能を基本としており、発光機能はサイリスタ機能に付随した機能として扱われていた。すなわち、サイリスタ機能を発現させるためにpnpn4層構造の不純物濃度や膜厚が決定され、サイリスタがオンした時に発生する光を利用するものである。サイリスタ機能を優先しなければならないため、pnpn4層構造の不純物濃度や膜厚が発光出力を最大とする条件とは必ずしも一致しない。また、発光領域が中心2層のpn層である場合が多いため、pnpn深層内部で発光した光が外部に出射するまでに、光吸収や光散乱などの影響を受けやすく、その結果外部光出力効率が悪いなどの課題があった。
【0015】
本発明の目的は、上記自己走査型発光装置の特徴を損なうことなく、発光機能は通常のpn接合発光ダイオードに担わせることにより、光出力を増大させた新たな構造の自己走査型発光装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様は、スイッチングのためのしきい電圧もしくはしきい電流が外部から電気的に制御可能な3端子スイッチ素子多数個を、一次元もしくは二次元的に配列した発光素子アレイである。隣接するスイッチ素子のしきい電圧もしくはしきい電流を制御する制御電極を、電圧もしくは電流に対して一方向性をもつ電気的手段にて互いに接続する。前記一次元もしくは二次元的に配列された各スイッチ素子の残りの2端子のうちの一方に、発光ダイオードの一方の電極を接続する。
【0017】
該接続した電極に外部から2相のクロックパルスを、それぞれ1素子おきに供給する。一方の相のクロックパルスにより、あるスイッチ素子がオン状態になり、それにしたがって発光ダイオードが発光しているとき、そのスイッチ素子近傍のスイッチ素子のしきい電圧もしくはしきい電流を、前記電気的手段を介して変化させる。他方の相のクロックパルスにより、前記あるスイッチ素子に隣接するスイッチ素子をオン状態にさせ、それにしたがって該スイッチ素子に接続した発光ダイオードを発光させる自己走査型発光装置が形成できる。
【0018】
本発明の第2の態様は、スイッチングのためのしきい電圧もしくはしきい電流が外部から電気的に制御可能な第1群の3端子スイッチ素子多数個を一次元もしくは二次元的に配列した発光素子アレイである。隣接するスイッチ素子のしきい電圧もしくはしきい電流を制御する制御電極を、電圧もしくは電流に対して一方向性をもつ電気的手段にて互いに接続する。
【0019】
前記一次元もしくは二次元的に配列された各スイッチ素子の残りの2端子のうちの一方に外部から2相のクロックパルスを、それぞれ1素子おきに供給し、一方の相のクロックパルスにより、あるスイッチ素子がオン状態になり、そのスイッチ素子近傍のスイッチ素子のしきい電圧もしくはしきい電流を、前記電気的手段を介して変化させる。他方の相のクロックパルスにより、前記あるスイッチ素子に隣接するスイッチ素子をオン状態にさせる。
【0020】
さらにスイッチングのためのしきい電圧もしくはしきい電流が外部から電気的に制御可能な第2群の3端子スイッチ素子多数個を一次元もしくは二次元的に配列する。この第2群のスイッチ素子の各制御電極を前記第1群のスイッチ素子の対応する制御電極に接続する。第2群の各スイッチ素子の残りの2端子のうちの一方に、発光ダイオードの第1の電極を接続し、該発光ダイオードの第2の電極に外部から電流注入パルスを供給する。発光ダイオードの第1の電極と接続した第2群のスイッチ素子の電極にも抵抗を介して電流注入パルスを供給し、第1群のスイッチ素子がオン状態のとき、対応する発光ダイオードが電流注入パルスによって発光させる自己走査型発光装置が形成できる。
【0021】
ここで3端子スイッチ素子としてはpnpn構造サイリスタが使用でき、このサイリスタと前記発光ダイオードを半絶縁性基板上に形成することにより上記2つの態様の自己走査型発光装置が実現できる。
【0022】
さらに本発明の第3の態様は、n型半導体基板上にn型第1層、p型第2層、n型第3層、p型第4層、n型第5層、p型第6層を順に積層し、n型基板もしくはn型第1層、n型第3層、およびp型第4層、p型第6層表面に電極を設けたpnpnpn構造発光素子を多数個を一次元もしくは二次元的に配列した発光素子アレイである。隣接する素子のn型第3層に設けた電極を、ダイオードにより互いに接続する。
【0023】
前記一次元もしくは二次元的に配列された発光素子のp型第4層およびp型第6層に設けた電極に抵抗を介して外部から2相のクロックパルスを、それぞれ1素子おきに供給する。一方の相のクロックパルスにより、ある発光素子が発光しているとき、その発光素子近傍の発光素子のしきい電圧を、前記ダイオードを介して変化させ、他方の相のクロックパルスにより、前記ある発光素子に隣接する発光素子を発光させる自己走査型発光装置が形成できる。この態様は本発明第1の態様に対応して、スイッチ素子と発光ダイオードを新たに1素子に統合したものである。
【0024】
また本発明の第4の態様では、n型基板上にn型第1層、p型第2層、n型第3層、p型第4層を積層してなるpnpn構造3端子サイリスタ多数個を一次元もしくは二次元的に配列する。隣接するサイリスタのn型第3層に設けたゲート電極を、ダイオードを介して互いに接続する。
【0025】
前記一次元もしくは二次元的に配列された各サイリスタのp型第4層に設けた電極に外部から2相のクロックパルスを、それぞれ1素子おきに供給する。一方の相のクロックパルスにより、あるサイリスタがオン状態になり、そのサイリスタ近傍のサイリスタのしきい電圧を、前記ダイオードを介して変化させ、他方の相のクロックパルスにより、前記あるサイリスタに隣接するサイリスタをオン状態にさせる。
【0026】
前記n型半導体基板上にn型第1層、p型第2層、n型第3層、p型第4層、n型第5層、p型第6層を順に積層し、n型基板もしくはn型第1層、n型第3層、およびp型第4層、p型第6層表面に電極を設けたpnpnpn構造発光素子を多数個を一次元もしくは二次元的に配列する。前記発光素子のn型第3層に設けた電極を前記サイリスタの対応するゲート電極に接続する。
【0027】
前記発光素子のp型第6層とp型第4層に設けた電極にそれぞれ抵抗を介して電流注入パルスを外部から供給し、前記サイリスタがオン状態のとき、対応する発光素子が電流注入パルスによって発光する自己走査型発光装置が形成できる。この態様は本発明第2の態様に対応して、スイッチ素子と発光ダイオードを新たに1素子に統合したものである。
上記、各態様において、半導体の導電型であるp型とn型は互いに反転してもよい。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1に本実施例の発光素子構造を示す。n形基板(図1(a))またはp形基板(図1(b))を使うことで、基板上のpnpnpn層の並びが変わるが、どちらでもサイリスタ機能を有する発光素子を作製することが可能である。最上部のp+n+層8,9が発光機能を担うダイオード部40であり、その下部のpnpn層が素子のスイッチング機能を担うサイリスタ部30である。
【0029】
以下では、p形基板を用いた実際の実験結果をもとに説明する。
まず、p形基板上にMOCVD法を用いてpnpnpnエピタキシャル層を形成する。形成した素子層構造を図2に、各層の特性値を表1に示した。なお、図1では基板1からアノード層4までの同一導電型の層は一体として示してある。
【0030】
つぎにp型第3層6の表面をエッチングにより露出させ、p型オーミック電極を形成してサイリスタ部30のゲート電極36とする。さらにn型第4層7の表面をエッチングにより露出させ、n型オーミック電極を設ける。この電極32はサイリスタ部30のカソード電極であるとともに発光ダイオード部40のアノード電極としての機能を兼ねる。最表面のn型第6層9にもn型オーミック電極を設け、発光ダイオード部40のカソード電極42とする。基板裏面または基板上のp型第1層1〜4にp型オーミック電極を形成しサイリスタ部30のアノード電極35とする。
【0031】
従来は、基板1からカソード層7まででサイリスタを形成し、pゲート層6とnゲート層5で発生した波長780nmの光を光出力として利用していた。本発明では、pダイオード層8とnダイオード層9を新たに加えることで、サイリスタ上に発光ダイオード機能を付加させている。この構成では、発光ダイオードにおける光出力波長を780nmとなるように設定してあるため、サイリスタでの発光も併せて光出力として利用できる。このような基板をパターニングすることで4端子発光素子を形成した。
【0032】
【表1】
【0033】
つぎにこの素子を自己走査型発光素子アレイに適用した場合について説明する。
図3は転送部と発光部を分離しないタイプの自己走査型発光装置の構成を示している。すなわち、図8の発光サイリスタ素子T(1)、T(2)・・・を本発明の発光素子F(1)、F(2)・・・で置き換えた構成である。図4は発光素子F(1)、F(2)・・・をサイリスタT1、T2・・・と発光ダイオードL1、L2・・・の直列接続で表した等価回路図である。サイリスタ部の特性を発現させるpnpn層は、従来と同様の組成とする。これによりサイリスタ部は従来同等のサイリスタ特性をもち、安定な転送動作が行えることを確認できた。
【0034】
発光素子F(1)、F(2)・・・のサイリスタ部のカソード電極と発光ダイオード部のカソード電極はそれぞれ抵抗RとR1またはR2を介してφ1端子もしくはφ2端子に接続する。図の回路では抵抗Rはすべての発光素子にそれぞれ設けている。この場合、抵抗Rは抵抗RLと同様に半導体チップ内に集積するのが望ましいが、抵抗R1、R2同様に共通な1本の抵抗を使用する構成をとることもできる。抵抗R1、R2は発光ダイオードの発光時の電流を決定する。図の例ではアレイに対して各1本を共通に使用している。発光ダイオードの発光光量を調整するためには、R1,R2はチップに内蔵せず外付けの抵抗である方が望ましい。
【0035】
図5,図6は転送部と発光部を分離したタイプに対応する本発明の自己走査型発光装置の構成および等価回路図を示している。図9の発光サイリスタL(1)、L(2)・・・を発光素子F(1)、F(2)・・・で置き換えた構成である。転送部は図9と同じサイリスタであり、pダイオード層およびnダイオード層は不要である。ただし必ずしもこれらの層を物理的に除去する必要はない。このタイプでは転送用サイリスタからの発光は望ましくないが、p、nダイオード層はこれを遮光するのに有効である。
【0036】
本構造で発光部のパターニング形状を同一にして、光出力を比較すると、従来構造ではφI電流が10mAのとき各発光素子の平均光出力は約90μWであったのに対して、本発明の素子では同一電流に対して約120μWと30%以上光量が増加していることを確認した。
【0037】
本実施例では、MOCVD法によるエピタキシャル層を利用したが、高キャリア濃度のダイオード層を形成するために、拡散法を併用することでも可能である。拡散法を併用することで、工程は増加するが、エピタキシャル膜よりも高キャリア濃度の層を形成できるので、光出力の更なる向上の点では有利である。
また、発光ダイオード部をダブルへテロ構造として、電子および正孔の閉じこめ効率を向上させることで、光出力の更なる向上を実現できる。
【0038】
さらに、主たる発光機能を発光ダイオードに担わすため、サイリスタ部は発光にとらわれずにサイリスタ機能を重視した設計ができるようになるので、安定したスイッチング動作を有する動作範囲の広い発光サイリスタアレイを作製できる。
【0039】
なお、本発明のpnpnpn構造素子は図4、図6の等価回路図に示すように機能的にはpnpn構造サイリスタとpn構造発光ダイオードを直列接続したものと考えられる。したがって両者を積層せず別々に形成してもよい。アレイ化することを考慮すると、両素子を同一基板上に形成する必要がある。発光ダイオードのアノード、カソードはともにサイリスタのカソードと電気的に分離されていなければならないので、基板としては半絶縁性GaAs基板を用いる必要がある。この基板上にpnpnの4層をエピタキシャル成長し、発光ダイオード部はサイリスタの基板側2層を利用する。
【0040】
素子構造を図7に示す。基板70が半絶縁性であるので、サイリスタ50と発光ダイオード60の基板70に接する側の層から電極52,62を取り出す必要がある。また、サイリスタ50と発光ダイオード60が物理的に分離されるため、発光時にサイリスタ部と発光ダイオード部の異なる2点が光る。本素子を光書き込みなどに利用する場合、これは望ましくないので、サイリスタのカソードに接続する抵抗を動作に支障のない範囲でできるだけ大きくしてサイリスタ部の発光を抑えるか、もしくはサイリスタ部を覆う遮光膜を設ける必要がある。
【0041】
このように上記pnpnpn構造素子に比べると難点もあるが、従来同様の層数で構成できるのが利点である。表1にも示すようにサイリスタの下2層はキャリア濃度を高く設定できるので、発光ダイオードを構成するには適している。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、自己走査型発光素子アレイの発光素子としてpnpnpn6層構造素子を用いる。この素子は、基板表面側のpn2層を発光ダイオードとして利用し、残りのpnpn4層構造をサイリスタとして利用する。これによりpn2層は発光ダイオードとしての機能が十分に発揮でき、光出力を増大させることが可能となった。またサイリスタ部はスイッチング素子として最適化できるため、安定な自己走査動作が維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発光素子の構造を示す図である。
【図2】本発明の発光素子の層構造を示す図である。
【図3】本発明の自己走査型発光装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の自己走査型発光装置の等価回路図である。
【図5】本発明の自己走査型発光装置の他の構成を示す図である。
【図6】本発明の自己走査型発光装置の他の構成の等価回路図である。
【図7】本発明の発光素子の他の構造を示す図である。
【図8】従来の自己走査型発光装置の等価回路図である。
【図9】従来の自己走査型発光装置の他の構成の等価回路図である。
【符号の説明】
50 サイリスタ
60 発光ダイオード
70 半絶縁性半導体基板
Claims (2)
- 半絶縁性基板上に第1の導電型第1層、第2の導電型第2層、第1の導電型第3層、第2の導電型第4層を積層してなる発光サイリスタと、
前記半絶縁性基板上に前記発光サイリスタに隣接して配され、当該発光サイリスタの第1の導電型第1層および第2の導電型第2層と共にエピタキシャル成長させて形成する発光ダイオードと、
前記発光サイリスタの第1の導電型第1層、第1の導電型第3層、第2の導電型第4層に設ける電極と、
前記発光ダイオードの第1の導電型第1層および第2の導電型第2層に設ける電極と、
を備え、
前記発光サイリスタの第1の導電型第1層に設けられた電極と前記発光ダイオードの第2の導電型第2層に設けられた電極とは接続されることを特徴とする発光素子。 - 複数個の請求項1に記載の発光素子を一次元もしくは二次元的に配列し、
前記発光素子の隣接する発光サイリスタの第1の導電型第3層に設けられた電極を、ダイオードにより互いに接続し、
前記発光素子の発光ダイオードの第2の導電型第2層に設けた電極および当該第2の導電型第2層に設けた電極と抵抗を介して共通に接続される前記発光サイリスタの第1の導電型第1層に設けた電極に外部から2相のクロックパルスを、それぞれ1素子おきに供給し、
一方の相のクロックパルスにより、ある発光素子が発光しているとき、その発光素子近傍の発光素子のしきい電圧を、前記ダイオードを介して変化させ、
他方の相のクロックパルスにより、前記ある発光素子に隣接する発光素子を発光させることを特徴とする自己走査型発光装置。
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