JP4612135B2 - 化粧材の製造方法及び化粧材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の床面、壁面、天井等の内装、家具並びに各種キャビネット等の表面装飾材料、建具の表面化粧、車両内装等に用いる表面化粧材として利用される化粧材とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物の壁、天井等の内装、家具、キャビネット等の表面装飾材として用いられる化粧シートは、その基材シートにポリ塩化ビニルシートが多く使用されている。
例えば、ポリ塩化ビニルシートに木目模様等を印刷し、これに透明なポリ塩化ビニルシートを積層したものや、更に、透明なポリ塩化ビニルシートにエンボス加工を施したものがある。
また、ポリ塩化ビニルシートに代わるものとして、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂シートを使用した化粧シートが提案されている(特開昭54ー62255号公報参照)。
【0003】
また、建築物の内装や家具、キャビネット等の装飾用の表面に使用される化粧シートとして、基材シートの片面に絵柄層又はベタ印刷層等の印刷インキ層を設け、このインキ層を保護するために、トップコート層として、熱硬化型のウレタン樹脂等を塗布し、熱乾燥、熱硬化させて熱硬化性樹脂層を形成する方法、又は電離放射線硬化性樹脂を塗布し、電離放射線を照射して塗膜を硬化して、表面に硬化した電離放射線硬化性樹脂層を形成する方法がある。
特に、架橋密度の高い電離放射線硬化性樹脂を用いて硬化した電離放射線硬化性樹脂層は、表面硬度、耐薬品性、耐汚染性等の物性に優れたものである。
【0004】
上記の如くバインダー樹脂として硬い樹脂を使用することで、確かに耐摩耗性は向上する。
従来から、建築物の内層や家具、キャビネット等の装飾用の材料として、メラミン化粧板、ダップ化粧板、ポリエステル化粧板、プリント合板、塩化ビニル化粧板等の各種化粧材が用いられている。
メラミン化粧板等のように硬質の基材を用いた化粧材の場合は、表面樹脂層の柔軟性はあまり問題にならないので、耐摩耗性を改良する方法として、表面に硬い樹脂を使用することは有効な手段である。
しかし、基材として、厚みの薄い紙やプラスチックシートのような柔軟性を有する基材を使用する場合は、樹脂の架橋密度を高くすると樹脂層の柔軟性が損なわれて、表面樹脂層が衝撃によって割れたり、亀裂が発生し易くなる等の問題が生じる。
従って、表面樹脂の架橋密度を上げて、耐摩耗性を改良しようとしても、柔軟性を要求される場合は限界があった。
【0005】
そのため、樹脂層の柔軟性を低下させずに耐摩耗性を改良する方法として、樹脂層に無機材料を添加する方法が、従来から行われている。
例えば、特開昭60ー23642号公報には、サンドブラスト法やブラシ研磨法等の研磨剤として使用されている平均粒径が1〜50μmのシリカ(SiO2 )及びアルミナ(Al2 O3 )を主成分とする天然ガラスの粉末を配合した塗料を用いて、表面保護層を形成することが開示されている。
上記塗料によって形成された表面保護層は、従来品に比べて、硬度が硬く、且つ柔軟性を有し、耐摩耗性や耐擦傷性に優れた物性を示した。
【0006】
また、転写シートの場合は、転写後の被転写体の表面の耐摩耗性や耐擦傷性を向上させる目的で、表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂に、平均粒径1〜50μmのアルミナ粉末を、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して10〜30重量部添加し、このアルミナを含有する電離放射線硬化性樹脂を用いて転写シートの保護層を形成することが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ポリ塩化ビニル製のシートを用いた化粧シートは、廃棄されて焼却された場合、塩酸ガスやダイオキシンの発生の恐れがあると言われているため、使用後の廃棄処理に問題がある。
また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂に紫外線吸収剤を添加したシートを使用した化粧シートは、耐候性が不十分であると共に、紫外線吸収剤がブリードアウトして後加工のトラブルの原因となることが多い。
更に、ポリオレフィン系樹脂からなる基材シートに電離放射線硬化性樹脂層を積層した化粧シートは、基材シートと電離放射線硬化性樹脂層の接着強度が弱く後加工のトラブルの原因となる。
【0008】
また、基材シートに紙又は不織布等の繊維質基材を用い、これに紫外線硬化性樹脂を塗布した後、紫外線を照射して基材表面に硬化した紫外線硬化性樹脂層を設けて化粧シートとした場合、表面は耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性、耐候性、耐摩耗性等に優れているが、紫外線硬化性樹脂が紙等の繊維質基材に浸透していくので、紫外線を照射しても繊維質基材に浸透した紫外線硬化性樹脂を完全に硬化させることができないため、繊維質基材の裏面にベトつき発生して、合板等の被着体との接着不良となり易い。
更に、紙を用いた化粧シートを木質基材等に積層した場合、該化粧材を折り曲げ加工する際に、折り曲げ部に白化、亀裂、破断等が生じることがある。
特に、寒冷地でVカット加工(化粧シートを積層した化粧材を折り曲げ加工をする際に、化粧材にV字状の溝を形成して折り曲げ加工を行うこと、以下単にVカット加工という)等の折り曲げ加工を行う際に、折り曲げ部に白化、亀裂、破断等の問題が生じ易くなる。
また、ポリ塩化ビニル又はポリオレフィン系樹脂からなるプラスチックシートを用いた化粧シートの場合、化粧シートを被着体に積層する際に、有機溶剤を用いた接着剤を使用する必要があるため、有機溶剤による作業環境問題が生じる。
【0009】
本発明は、従来の化粧シートのもつ問題点を解消することを目的として鋭意研究した結果、透明な合成樹脂フィルム(又はシート)の表面に透明な電離放射線硬化性樹脂層を形成し、裏面に絵柄層を形成した後、その絵柄層の上に、着色不透明な電子線硬化性樹脂を塗布し、これに紙等の繊維質基材を積層し、直ちに電子線を照射して、電子線硬化性樹脂を硬化させて、透明な合成樹脂フィルムと繊維質基材を積層することにより、表面が耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性、耐候性、耐摩耗性等に優れており、且つラッピング加工適性及び折り曲げ加工適性に優れてた化粧材が得られることを見い出し、本発明に到った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために、化粧材の製造方法の構成を以下のようにした。透明又は半透明な合成樹脂フィルムの裏面に、未硬化の着色不透明な電子線硬化性樹脂からなる接着剤を塗布した後、該接着剤が浸透性のある基材の裏面にまで浸透して行かない様に、塗布された該接着剤を介して、浸透性のある基材と積層すると同時に電子線を照射して該接着剤を硬化させることで、該浸透性のある基材に該基材の裏面側を残して浸透している着色不透明な電子線硬化性樹脂層、とすることを特徴とする化粧材の製造方法とした。また、前記浸透性のある基材が、繊維質基材からなることを特徴とする化粧材の製造方法とした。更に、前記合成樹脂フィルムの裏面に絵柄層を設けてから、前記接着剤を塗布すること、また、前記前記合成樹脂フィルムの表面に、架橋型樹脂からなる保護層を設けてから前記接着剤を塗布することを特徴とする化粧材の製造方法とした。そして、前記架橋型樹脂が電離放射線硬化性樹脂からなることを特徴とする化粧材の製造方法とした。また、前記製造方法でシート状の化粧材を製造した後、更に、該シート状化粧材を接着剤を介して被着体にラッピング加工法により積層することを特徴とする化粧材の製造方法、そして、そのラッピング加工法により作製した化粧材に更に折り曲げ加工を施すことを特徴とする化粧材の製造方法とした。
また、本発明の化粧材は、前記いずれかの製造方法で製造されて成る化粧材であって、透明又は半透明な合成樹脂フィルムの裏面に、浸透性のある基材が着色不透明な電子線硬化性樹脂からなる接着剤を硬化させて成る着色不透明な電子線硬化性樹脂層を介して積層されて成り、且つ該着色不透明な電子線硬化性樹脂層が、前記浸透性のある基材に該基材の裏面側を残して浸透していることを特徴とする化粧材とした。
【0011】
即ち、本発明の化粧材は、図1に示すように、層構成は基本的には、透明な合成樹脂フィルム13と繊維質基材11を、着色不透明な電子線硬化性樹脂層12からなる接着剤を介して積層したものである。しかも、本発明の化粧材は、透明な合成樹脂フィルム13と繊維質基材11との積層を、着色不透明な電子線硬化性樹脂層12とする未硬化の接着剤を透明又は半透明な合成樹脂フィルム13の裏面に塗布した後、該接着剤が浸透性のある基材の裏面にまで浸透して行かない様に、塗布された該接着剤を介して積層すると同時に電子線を照射して該接着剤を硬化させることで製造する。また、図2に示すように、透明な合成樹脂フィルム13の裏面に印刷等により絵柄層14を形成し、表面には透明な電離放射線硬化性樹脂層15を形成して、表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐候性、耐薬品性等を付与した後、着色不透明な電子線硬化性樹脂層12からなる接着剤を介して繊維質基材11を積層して化粧材1としたものである。更に、本発明の化粧材は、図3に示すように、繊維質基材11として紙等の薄いシートを用いて、繊維質基材11、着色不透明な電子線硬化性樹脂層12、絵柄層14、透明な合成樹脂フィルム13、透明な電離放射線硬化性樹脂層15を積層した化粧シート3を作製し、該化粧シート3の裏面(繊維質基材11)に水性の接着剤層16を設け、この接着剤層16を介して木質板等の被着体17にラッピング加工法により積層して化粧材1とし、また、ラッピング加工法により作製した化粧材1を、図5に示すように、Vカット加工法等により折り曲げ加工を施して折曲げ化粧材1aとしたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照にしながら本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の化粧材の一例を示した模式断面図である。
図2は本発明の化粧材の別の態様で、透明な合成樹脂フィルムの裏面に絵柄層及び表面に電離放射線硬化性樹脂による保護層を設けたときの化粧材の模式断面図である。
図3は本発明の化粧材の更に別の態様で、化粧シートを被着体に積層して化粧材としたときの模式断面図である。
図4は化粧シートを被着体に積層して作製した化粧材をVカット加工するときの説明図であり、図5はVカット加工した化粧材を折り曲げ加工したときの模式断面図である。
図6は本発明の化粧材を作製するときの説明図である。
図7は実施例1により、図8は実施例2により、図9は実施例3により、図10は実施例4により、図11は実施例5により、化粧材を作製するときの説明図である。
図12比較例1により、図13は比較例2により、図14は比較例3により、図15は比較例4により、化粧材を作製するときの説明図である。
【0013】
本発明の化粧材は、図1に示すように、基本的には、繊維質基材11と透明な合成樹脂フィルム13を、着色不透明な電子線硬化性樹脂層12からなる接着剤層を介して積層して化粧材1としたものである。
また、図2に示すように、透明な合成樹脂フィルム13の裏面に印刷等により絵柄層14を形成し、表面に透明な電離放射線硬化性樹脂層15を形成して、表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐候性等を付与した後、透明な合成樹脂フィルム13の絵柄層14側に着色不透明な電子線硬化性樹脂層12からなる接着剤層を形成し、該接着剤層を介して繊維質基材11を積層して化粧材1としたものである。
更に、本発明の化粧材は、繊維質基材11として紙等の薄いシートを用いて、図3に示すように、繊維質基材11、着色不透明な電子線硬化性樹脂層12、絵柄層14、透明な合成樹脂フィルム13、透明な電離放射線硬化性樹脂層15からなる化粧シート3を作製し、該化粧シート3の裏面(繊維質基材11)に接着剤層16を設け、この接着剤層16を介して木質板、プラスチック板等の被着体17に貼着して化粧材1としたものである。
【0014】
また、本発明の化粧材は、図4(a)に示すように、繊維質基材として薄葉紙11b等を用いて、薄葉紙11b/着色不透明な電子線硬化性樹脂層12/絵柄層14/透明な合成樹脂フィルム13/透明な電離放射線硬化性樹脂層15からなる化粧シート3を作製し、この化粧シート3を、図4(b)に示すように、接着剤層16を介して被着体として木質板17bに積層して化粧材1を作製する。
次いで、この化粧材1の木質板17bに、図4(c)に示すように、Vカット加工によりV字状溝24を形成した後、図5に示すように、V字状溝24を利用して化粧材1に折り曲げ加工を施して、折曲げ化粧材1aとすることがある。
【0015】
以上のように、本発明においては、透明な合成樹脂フィルム13と繊維質基材11の接着剤層として電子線硬化性樹脂を用い、該接着剤の硬化に電子線を用いているため、接着剤層に着色不透明な組成物を用いても完全に硬化させることができる。そにため、化粧材1の隠蔽性は接着剤層で持せることができる。
また、接着剤層としての着色不透明な電子線硬化性樹脂12を介して、透明な合成樹脂フィルム13と紙などの繊維質基材11を積層した後、直ちに電子線照射により接着剤を硬化するので、未硬化の電子線硬化性樹脂が繊維質基材11へ浸透することが抑制され、透明な合成樹脂フィルム13と繊維質基材11を強固に接着することができる。
【0016】
即ち、従来、紫外線は着色層を透過しないため、紫外線硬化性樹脂では接着剤層に着色層を使用することは不可能であったが、本発明においては樹脂の硬化に電子線を用いるため、接着剤層として着色不透明な樹脂組成物を用いることができるので、透明な合成樹脂フィルム13に隠蔽性を持たせるためのベタ印刷層を設ける必要がなくなる。
また、接着剤層(着色不透明な電子線硬化性樹脂層12)の硬化は電子線照射によって行うため、接着剤層が隠蔽性のある着色層でも短時間で硬化することができる。そのため、接着剤層として透明な合成樹脂フィルム13に塗布した未硬化の着色不透明な電子線硬化性樹脂層12に繊維質基材11が積層された場合でも、電子線照射により電子線硬化性樹脂が直ちに硬化されるので、繊維質基材11への電子線硬化性樹脂の浸透が抑制されて、着色した接着剤層は所定の厚さを維持することができて隠蔽性が維持される。それと同時に、合成樹脂フィルム13と繊維質基材11を強固に接着させることができる。
更に、繊維質基材11に浸透した電子線硬化性樹脂も電子線照射により硬化されるので、未硬化の電子線硬化性樹脂が繊維質基材の裏面まで浸透して行き、化粧材の裏面を汚染するようなことはなくなる。
また、繊維質基材として、紙などの薄いシートを用いた場合、作製された化粧シートの裏面は紙であるので、化粧シートを木質板等の被着体に積層する際に、水溶性の接着剤を使用することができる。そのため、有機溶剤による環境問題を解消することができる。
【0017】
従って、従来、接着剤層に紫外線硬化性樹脂を用いた場合の問題点を解消することができた。
即ち、接着剤層に紫外線硬化性樹脂を用いて、絵柄層を設けた透明な合成樹脂フィルムと繊維質基材を積層した場合、紫外線照射による樹脂の硬化は電子線のように短時間では硬化することができないので、未硬化の紫外線硬化性樹脂は繊維質基材に浸透し行き、透明な合成樹脂フィルムと繊維質基材の間に所定の厚さの接着剤層を形成することは困難であった。
また、繊維質基材に浸透した紫外線硬化性樹脂は紫外線照射によっても十分硬化することができないので、未硬化の紫外線硬化性樹脂が、繊維質基材の裏面迄浸透して、化粧材裏面がベトツク等の問題が生じていた。
しかし、本発明においては、前述のように、接着剤層に電子線硬化性樹脂を使用し、電子線を用いて電子線硬化性樹脂を硬化するので、繊維質基材への接着剤の浸透が抑制されて、上記紫外線硬化性樹脂の問題点を解決することができた。
【0018】
以下に、本発明の化粧材の製造方法について説明する。
先ず、図6(a)に示すように、PETフィルム、PPフィルム等の透明な合成樹脂フィルム13の表面に、耐擦傷性、耐摩耗性、耐候性、耐薬品性等を付与するために、透明な電離放射線硬化性樹脂を塗布し、これに電離放射線を照射して硬化した電離放射線硬化性樹脂からなる透明な電離放射線硬化性樹脂層15を形成する。
次いで、表面に透明な電離放射線硬化性樹脂層15を形成した透明な合成樹脂フィルム13の裏面に、図6(b)に示すように、グラビア印刷等により絵柄層14を設けて印刷シート2を作製する。
【0019】
次に、前記印刷シート2の絵柄層14側に、図6(c)に示すように、着色した電子線硬化性樹脂を塗布して未硬化の着色不透明な電子線硬化性樹脂層12aを形成する。
次いで、図6(d)に示すように、前記未硬化の着色不透明な電子線硬化性樹脂層12a面に、紙、不織布等の繊維質基材11を重ね合わて、印刷シート2と繊維質基材11を積層し、直ちに、図6(d)に示すように、前記積層シートの透明な合成樹脂フィルム13の透明な電離放射線硬化性樹脂層15側から電子線18を照射して未硬化の電子線硬化性樹脂を硬化する。
電子線照射により未硬化の電子線硬化性樹脂を硬化することにより、透明な合成樹脂フィルム13と繊維質基材11は硬化した電子線硬化性樹脂により強固に接着されて、図6(e)に示すように、硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層12bを介して、透明な合成樹脂フィルム13と繊維質基材11が積層された化粧材1が得られる。
【0020】
得られた化粧材1は硬化した電子線硬化性樹脂層が着色されて不透明であるので、隠蔽性に優れた化粧材となる。
本発明においては、着色電子線硬化性樹脂の硬化に電子線が使用されているため、着色電子線硬化性樹脂層を厚くして不透明にしても、電子線硬化性樹脂は完全に硬化させることができるので、隠蔽性に優れた化粧材を得ることができる。
また、透明な合成樹脂フィルムに塗布した未硬化の電子線硬化性樹脂層に、繊維質基材11が積層されると同時に、電子線が照射されて未硬化の電子線硬化性樹脂が硬化されるため、未硬化の電子線硬化性樹脂の繊維質基材11への浸透を最小限に抑制することができるので、未硬化の着色電子線硬化性樹脂層を所定の厚さに形成することができる。
従って、未硬化の着色電子線硬化性樹脂が繊維質基材11へ浸透して、未硬化の着色電子線硬化性樹脂層が薄くなり、隠蔽性が不十分になることがなくなる。
【0021】
以上のように、本発明においては、硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層12bは化粧材の隠蔽性を目的に形成されるので、硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層12bの厚さは、着色剤の含有量によって異なるが、5〜30μmの範囲が好ましい。
硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層12bの厚さが5μm未満では、十分な隠蔽性を得るのが困難であると共に、電子線硬化性樹脂に添加する着色剤及びその他の充填剤の含有量を多くする必要があり、コーティング適性に問題が生じる。また、硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層12bの厚さが5μm未満では、絵柄層を設けた透明な合成樹脂フィルム13と繊維質基材11の十分な接着力が得られなくなる。
硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層12bの厚さが30μmを超える場合は、特別な場合を除いて、30μm以下で十分隠蔽性が得られ、更に、透明な合成樹脂フィルムと繊維質基材の接着力も十分得られるので、これ以上厚くしてもコスト的に不利となる。
【0022】
本発明に用いられる電子線硬化性樹脂としては、分子中に重合不飽和結合又はカチオン重合性官能基を有するプレポリマー(所謂オリゴマーも包含する)及び/又はモノマーを適宜混合した組成物で、電子線により硬化可能なものが用いられる。
【0023】
電子線硬化性樹脂としては、具体的には、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基又はチオールを2個以上有する単量体、プレポリマー、オリゴマーからなるものである。
これら、単量体、又はプレポリマーは単体で用いるか、又は数種類混合して用いる。
尚、ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタアクリロイル基の意味で用いており、以下(メタ)は同様の意味で用いるものとする。
【0024】
前記プレポリマー、オリゴマーの例としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類、カチオン重合型エポキシ化合物等が挙げられる。
分子量としては、通常250〜10,000程度のものが用いられる。ラジカル重合性不飽和基を有するポリマーとしては、上記ポリマーの重合度を10,000程度以上としたものが用いられる。
【0025】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。
【0026】
カチオン重合性官能基を有する単量体の例としては、上記カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体が利用できる。チオール基を有する単量体の例としては、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ジペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等がある。
【0027】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が使用できる。分子量としては、250〜100,000程度のものが用いられる。
【0028】
ラジカル重合性不飽和基を有する単官能単量体の例としては、(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体、例えば、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体の例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
上記電子線硬化性樹脂には、顔料又は染料からなる着色剤を添加して着色不透明な電子線硬化性樹脂層にする。接着剤層として用いる着色電子線硬化性樹脂は、化粧シート(又は化粧材)を被着体に接着したとき被着体の表面を隠蔽することが目的とする場合が多いため着色不透明にすることが好ましい。
着色剤として、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、イソイントリノ、バンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー等の有機顔料あるいは染料、アルミニウム、真珠等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛等、の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。
また、着色電子線硬化性樹脂には必要に応じて、無機充填剤を添加することがある。無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、シリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)等の粉末等が使用される。
【0031】
また、上記電子線硬化性樹脂には、塗工液の塗工適性の付与、又は塗膜の物性調整のために、ウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、等の熱可塑性樹脂が添加される。
塗膜の可撓性を向上させるためには、ウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ブチラール樹脂が好ましい。
【0032】
本発明においては、化粧材の表面に耐摩耗性、耐擦傷性、耐候性、耐薬品性等を付与するために、透明な合成樹脂フィルムの表面に、透明な電離放射線硬化性樹脂層が形成される。
また、電離放射線硬化性樹脂の代わりに熱硬化性樹脂を用いることもできる。
該透明な電離放射線硬化性樹脂層を形成する電離放射線硬化性樹脂としては、前述した電子線硬化性樹脂、又は紫外線硬化性樹脂が使用できる。
尚、ここで、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線の中で、分子を重合或いは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、電子線又は紫外線が電離放射線として用いられる。
電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、前述のように、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基又はチオールを2個以上有する単量体、プレポリマー、オリゴマーからなるものである。
【0033】
電離放射線硬化性樹脂として紫外線又は可視光線にて硬化させる場合には、前述した電子線硬化型樹脂の中に光重合開始剤を添加したものを使用する。
ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いることができる。
また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることができる。
尚、これらの光重合開始剤の添加量としては、該電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。
【0034】
電離放射線硬化性樹脂のコーティング法としては、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ディップコート、シルクスクリーンコートによるベタコート、ワイヤーバーコート、コンマコート、スプレーコート、フロートコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等を用いることができる。その中でもグラビアコートが好ましい。
【0035】
電離放射線硬化性樹脂を硬化させる電離放射線照射装置としては、紫外線照射装置や電子線照射装置が用いられる。
紫外線照射装置としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等の光源が使用される。紫外線の波長としては、通常、190〜380nmの波長領域が主として用いられる。
電子線照射装置としては、コックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型或いは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が用いられる。
【0036】
そして、電子線を照射する場合、加速電圧100〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVで照射し、吸収線量としては、通常、1〜300kGy(キログレイ)程度である。吸収線量が1kGy未満では、塗膜の硬化が不十分となり、又、照射量が300kGyを超えると硬化した塗膜及び基材が黄変したり、損傷したりする。
また、紫外線照射の場合、その照射量は50〜1000mJ/cm2 の範囲 が好ましい。
紫外線照射量が50mJ/cm2 未満では、塗膜の硬化が不十分となり、また、照射量が1000mJ/cm2 を超えると硬化した塗膜が黄変したりする。
また、電離放射線の照射方法として、先ず紫外線を照射して電離放射線硬化性樹脂を少なくとも表面が指触乾燥する程度以上に硬化させ、而る後に、電子線を照射して塗膜を完全に硬化させる方法もある。
【0037】
本発明に使用される繊維質基材としては、紙、合成紙、不織布、織布等が用いられる。
例えば、紙としては、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、紙にポリ塩化ビニル樹脂をゾル又はドライラミネートした所謂ビニル壁紙原反、上質紙、コート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等が挙げられる。
また、紙類似シートとしては、ガラス繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維、等の無機繊維質、ポリエステル、ビニロン等の合成樹脂等の繊維からなる不織布又は織布等がある。
また、合成紙としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂を用いた合成紙がある。
【0038】
被着体として用いられる板としては、木板単体、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木材板、木質繊維板等の木質板、鉄板、アルミニウム板、亜鉛メッキ鋼板、ポリ塩化ビニルゾル塗工鋼板、銅板等の金属板、石膏板、石膏スラグ板等の石膏系板、硅酸カルシウム板、石綿スレート板、軽量発泡コンクリート板、中空押出しセメント板等のセメント板、パルプセメント板、石綿セメント板、木片セメント板等の繊維セメント板、陶器、磁気、石器、土器、ガラス、ホウロウ等のセラミック板、アクリル、ポリカーボネート、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアセテート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ABS、フェノール樹脂塩化ビニル、セルロース系樹脂、ゴム等の熱可塑性樹脂板が挙げられる。
【0039】
また、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂板、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の樹脂をガラス繊維不織布、布帛、紙、その他の各種繊維質基材に含浸硬化して複合化した、所謂FRP等の樹脂板が挙げられる。
更に、本発明に用いる被着体としては、上記各種基材の2種以上の基材を接着剤、又は、熱融着等の公知の方法によって積層した複合基材を使用することもできる。
【0040】
透明な合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ビニロン等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート・イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、三酢酸セルロース、セロハン等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂のフィルム、又はシートの単体、又はこれらのフィルム又はシートの積層体が挙げられる。
【0041】
透明な合成樹脂フィルムには、片面に印刷等により絵柄層が形成される。
絵柄層としては、印刷による印刷模様、エンボス加工によるエンボス模様、ヘアライン加工による凹凸模様があり、更に、凹凸模様の凹部に公知のワイピング加工法によって着色インキを充填して絵柄層を形成することもできる。
印刷絵柄層とては、木目柄、石目柄、布目柄、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、各種抽象模様、或いは全面ベタ印刷等がある。
本発明においては、透明な合成樹脂フィルムと繊維質基材の接着剤層に着色不透明な電子線硬化性樹脂を用いているので、隠蔽層の目的で形成される全面ベタ印刷は省略されることがある。
【0042】
絵柄印刷のインキとしては、合成樹脂フィルムの材質や形態によって異なるが、一般的には、硝化綿、酢酸セルロース、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の単独重合体、又は他のモノマーとの重合体をビヒクルとし、これと通常の顔料、染料等の着色剤、体質顔料、硬化剤、添加剤、溶剤等からなるインキが使用される。
【0043】
絵柄の印刷としては、グラビア印刷、凹版印刷、オフセット印刷、活版印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、静電印刷、インクジェット印刷等通常の印刷方式が使用できる。
もしくは、別に離型性シート上に一旦絵柄模様を形成して転写シートを作成し、得られた転写シートからの転写印刷方式によって模様印刷を転写して設けてもよい。
また、印刷模様の代りに、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属を真空蒸着、スパッタリング等によって、基材に、金属薄膜を全面又は部分的に形成して絵柄層とすることもできる。
【0044】
本発明の化粧材がシート状の場合は、各種被着体に積層し、所定の成形加工等を施して、各種用途に用いることができる。
例えば、壁、天井、床等の建築物の内装、窓枠、扉、手すり等の建具の表面化粧、家具又は弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車両の内装、航空機の内装、窓硝子の化粧等に利用できる。
そのために、化粧シートが直接素材等に接着できない場合は、適当な易接着層又は接着剤層を介して被着体に接着する。
しかし、化粧シートが熱融着等で被着体に接着可能な場合は、易接着層又は接着剤層は省略してもよい。
被着体としては各種素材の平板、曲面板等の板材、シート(或いはフィルム)、或いは各種立体形状物品(成形品)が対象となる。
例えば、射出成形品等の曲面を有する成形品に対しても、利用することができる。
【0045】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて、本発明を更に詳しく説明する。
(実施例1)
先ず、透明な合成樹脂フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人(株)製 以下PETフィルム13aとする)を用いて、その裏面にグラビア印刷により木目柄を印刷し、図7(a)に示すように、PETフィルム13aに絵柄層14を形成して印刷シート2を作製した。
次いで、図7(b)に示すように、前記印刷シート2の絵柄層12側に、接着剤として下記の着色電子線硬化性樹脂組成物(A)を用いて、グラビアコートにて塗布量が10g/m2 になるようにコーティングして、未硬化の着色不透明な電子線硬化性樹脂層12aを形成した。
【0046】
着色電子線硬化性樹脂組成物(A)の組成
・ウレタンアクリレートオリゴマー 40重量部
・ウレタンポリマー 10重量部
・2官能アクリレート 10重量部
・酸化チタン顔料 40重量部
【0047】
次に、図7(c)に示すように、着色不透明な電子線硬化性樹脂層12aの上に、厚さ30μmの薄葉紙11b(三興製紙(株)製)をラミネートすると同時に、PETフィルム12a側から、電子線照射装置を用いて、加速電圧200keVにて、吸収線量が50kGy(キログレイ)になるように電子線18を照射して電子線硬化性樹脂を完全に硬化させて、図7(d)に示すように、硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層12bを形成すると共に、絵柄層14を形成したPETフィルム13aと薄葉紙11bを接着して化粧材材1を作製した。
【0048】
(実施例2)
透明な合成樹脂フィルムとして、エンボス模様を施した厚さ30μmのポリプロピレンフィルム(東レ(株)製 以下PPフィルム13bとする)を用いて、その裏面にグラビア印刷により木目柄を印刷し、図8(a)に示すように、PPフィルム13bに絵柄層14を形成して印刷シート2を作製した。
次いで、図8(b)に示すように、前記印刷シート2の絵柄層12側に、接着剤として、実施例1で用いた着色電子線硬化性樹脂組成物(A)をグラビアコートにてコーティングして、塗布量が10g/m2 になるように未硬化の着色不透明な電子線硬化性樹脂層12aを形成した。
【0049】
次に、図8(c)に示すように、着色不透明な電子線硬化性樹脂層12a上に、厚さ60μmの含浸紙11a((株)興人製)をラミネートすると同時に、PPフィルム12b側から、実施例1と同様に、吸収線量が50kGy(キログレイ)になるように電子線18を照射して、図8(d)に示すように、硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層12bを形成すると共に、絵柄層14を形成したPETフィルム13aと含浸紙11aを接着して化粧材材1を作製した。
【0050】
(実施例3)
実施例1で用いた厚さ50μmのPETフィルムの表面に、下記の透明な電子線硬化性樹脂組成物(B)をグラビアコートにて塗布量が5g/m2 になるようにコーティングし、その上から、図9(a)に示すように、電子線照射装置にて加速電圧165keVにて、吸収線量が30kGy(キログレイ)になるように電子線18を照射し、PETフィルム13aの表面に透明な電子線硬化性樹脂層15aを形成した。
【0051】
透明な電子線硬化性樹脂組成物(B)の組成
・6官能アクリレート 40重量部
・2官能アクリレート 60重量部
【0052】
次に、表面に透明な電子線硬化性樹脂層15aを形成したPETフィルム13aの裏面に、実施例1と同様に、図9(b)に示すように、絵柄層14を形成して印刷シート2を作製し、次いで、図9(c)に示すように、未硬化の着色不透明な電子線硬化性樹脂層12aを形成した。
次に、図9(d)に示すように、着色不透明な電子線硬化性樹脂層12a上に、厚さ60μmの含浸紙11a((株)興人製)をラミネートすると同時に、PETフィルム12a側から、実施例1と同様に、吸収線量が50kGy(キログレイ)になるように電子線18を照射して、図9(e)に示すように、硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層12bを形成すると共に、絵柄層14を形成したPETフィルム13aと含浸紙11aを接着して化粧材材1を作製した。
【0053】
(実施例4)
実施例3と同様に、図10(a)に示すように、厚さ50μmのPETフィルム12aの表面に透明な電子線硬化性樹脂層15aを形成後、そのPETフィルム12aの裏面(透明な電子線硬化性樹脂層15aの反対側)に、図10(b)に示すように、実施例3と同様に、未硬化の着色不透明な電子線硬化性樹脂層12aを形成した後、図10(c)に示すように、厚さ60μmの含浸紙11aをラミネートし、吸収線量が50kGy(キログレイ)になるように電子線18を照射して、図10(d)に示すように、硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層12bを形成すると共に、PETフィルム13aと含浸紙11aを接着して化粧材1を作製した。
【0054】
(実施例5)
実施例3と同様に、図11(a)に示すように、厚さ50μmのPETフィルム12aの表面に透明な電子線硬化性樹脂層15aを形成後、そのPETフィルム12aの裏面に絵柄層14を形成して印刷シート2を作製した。
次いで、実施例3と同様に、前記印刷シート2の絵柄層14側に、未硬化の着色不透明な電子線硬化性樹脂層12aを形成した後、図11(b)に示すように、厚さ60μmの含浸紙11aをラミネートし、吸収線量が50kGy(キログレイ)になるように電子線18を照射し、未硬化の着色不透明な電子線硬化性樹脂層12aを硬化して、図11(c)に示すように、硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層12bを形成すると共に、PETフィルム13aと含浸紙11aを接着して化粧シート3を作製した。
次に、図11(d)に示すように、前記化粧シート3の含浸紙11a側に水性のウレタン系エマルジョン型接着剤を塗布して接着剤層16を形成し、該接着剤層16を介して、厚さ30mmで、表面の形状が3RのMDF17a(中密度繊維板)にラッピング加工により積層して、化粧材1を作製した。
その結果、ラッピング加工において亀裂や剥離を生じることなく、接着強度の優れた化粧材1を得ることができた。
【0055】
更に、実施例1、2、3、4で作製したシート状の化粧材を、実施例5と同様に、MDF(中密度繊維板)にラッピング加工を行った結果、亀裂や剥離を生じることなく、接着強度の優れた化粧材を得ることができた。
【0056】
比較例として、接着剤層に着色不透明な電子線硬化性樹脂を用いない化粧材を作製した。
(比較例1)
図12(a)に示すように、実施例1と同様に、PETフィルム13aに絵柄層14を形成した後、更にその上にグラビア印刷によりベタ印刷層14aを形成して印刷シート2を作製した。
次いで、前記印刷シート2のベタ印刷層14a面に、下記の透明な電子線硬化性樹脂組成物(C)を用いて、図12(b)に示すように、実施例1と同様に、塗布量10g/m2 の未硬化の透明な電子線硬化性樹脂層20aを形成した。
【0057】
透明な電子線硬化性樹脂組成物(C)の組成
・ウレタンアクリレートオリゴマー 66重量部
・ウレタンポリマー 17重量部
・2官能アクリレート 17重量部
【0058】
次に、実施例1と同様に、図12(c)に示すように、透明な電子線硬化性樹脂層20aの上に、厚さ30μmの薄葉紙11bをラミネートすると同時に、実施例1と同様に、吸収線量が50kGy(キログレイ)になるように電子線18を照射して電子線硬化性樹脂を硬化させて、図12(d)に示すように、硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層12bを形成すると共に、PETフィルム13aと薄葉紙11bを接着して化粧材材1bを作製した。
得られた化粧材1bは十分な隠蔽性が得られず、化粧材として十分な性能が得られなかった。
【0059】
(比較例2)
図13(a)に示すように、実施例1と同様に、PETフィルム13aに絵柄層14を形成して印刷シート2を作製した。
次いで、前記印刷シート2の絵柄層14面に、二液硬化型接着剤をコーティングして、図13(b)に示すように、未硬化の二液硬化型接着剤層21aを形成し、更に、図13(c)に示すように、未硬化の二液硬化型接着剤層21aに実施例1で用いた薄葉紙11bをラミネートし、この積層シートを40℃にて3日間養生して、二液硬化型接着剤を硬化させて硬化した二液硬化型接着剤層21bを形成して、図13(d)に示すような化粧材1bを作製した。
しかし、比較例2においては、二液硬化型接着剤を硬化させるのに、40℃にて3日間養生が必要であり、実施例に比較して作業能率が低下した。
【0060】
(比較例3)
図14(a)に示すように、実施例1と同様に、PETフィルム13aに絵柄層14を形成して印刷シート2を作製した。
次いで、前記印刷シート2の絵柄層14面に、下記の着色した紫外線硬化性樹脂組成物(D)をコーティングして、図14(b)に示すように、塗布量10g/m2 の未硬化の着色不透明な紫外線硬化性樹脂層22aを形成した。
【0061】
着色紫外線硬化性樹脂組成物(D)の組成
・ウレタンアクリレートオリゴマー 40重量部
・ウレタンポリマー 10重量部
・2官能アクリレート 10重量部
・酸化チタン顔料 38重量部
・ベンゾフェノン系光重合開始剤 2重量部
【0062】
次に、前記未硬化の着色不透明な紫外線硬化性樹脂層22a面に、実施例1で用いた紙薄葉紙11bをラミネートして積層シートを作製し、図14(c)に示すように、この積層シートのPETフィルム側から、160ワットの高圧水銀灯2灯設置した紫外線照射装置を用いて、5cmの距離から10m/分の速度で紫外線25を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させて、図15(d)に示すように、硬化した紫外線硬化性樹脂層21bを形成して化粧材1bを作製した。
しかし、比較例3においては、接着剤層の紫外線硬化性樹脂に酸化チタン顔料が添加されているため、酸化チタン顔料により紫外線の透過が妨害されるので、紫外線硬化性樹脂が十分硬化させることができず、目的とする化粧材を得ることができなかった。
【0063】
(比較例4)
図15(a)に示すように、厚さ200μmの透明なポリ塩化ビニルフィルム13c(以下PVCフィルム13cとする)に絵柄層14及びベタ印刷層14aを形成して化粧シート3を作製した。
次いで、前記化粧シート3のベタ印刷層14a面に、図15(b)に示すように、ウレタン系エマルジョン型接着剤を塗布してエマルジョン型接着剤層23を形成し、該エマルジョン型接着剤層23を介して厚さ30mmのMDF17a(中密度繊維板)にラッピング加工にて積層し、図15(c)に示すような化粧材1bを作製した。
しかし、化粧シートとMDFの接着強度不足により、ラッピング加工直後に、化粧シートが剥離して、目的とする化粧材を得ることができなかった。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、絵柄層を設けた透明な合成樹脂フィルムと繊維質基材を積層するための接着剤として、着色不透明な電子線硬化性樹脂を使用しているため、この接着剤層が化粧シートの隠蔽層の役割を果たすので、透明な合成樹脂フィルムにベタ印刷による隠蔽層を設ける必要がなくなる。また、接着剤として電子線硬化性樹脂を使用しているため、化粧シートの裏面に紙などの繊維質基材を用いることができるので、化粧シートを被着体として木質基材等に接着するとき、水溶性の接着剤でラッピング加工ができる。従って、化粧シートと被着体のラッピング加工を有機溶剤を使用せずに行うことができるので、作業環境が改善され、有機溶剤による環境問題を解決することができる。更に、この化粧シートを木質基材等に積層して化粧材とした場合でも、折り曲げ加工する際に、折り曲げ部に白化、亀裂、破断等が生じることがない。特に、寒冷地ではVカット加工(化粧シートを積層した化粧材を折り曲げ加工をする際に、化粧材にV字状の溝を形成して折り曲げ加工を行うこと)等の折り曲げ加工を行う際に、折り曲げ部に白化、亀裂、破断等の問題が生じ易くなるが、本発明の化粧材は、寒冷地においても加工適性が良好である。また、表面に硬化した電離放射線硬化性樹脂層を設けているので、化粧材の耐擦傷性、耐摩耗性、耐候性、耐薬品性、耐汚染性等を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧材の一例を示した模式断面図である。
【図2】本発明の化粧材の別の態様で、透明な合成樹脂フィルムの裏面に絵柄層及び表面に透明な電離放射線硬化性樹脂層からなる保護層を設けたときの化粧材の模式断面図である。
【図3】本発明の化粧材の更に別の態様で、化粧シート(シート状化粧材)を被着体に積層して化粧材としたときの模式断面図である。
【図4】化粧シートを被着体に積層した化粧材をVカット加工するときの模式断面図である。
【図5】本発明の化粧材をVカット加工により折り曲げ加工したときの図である。
【図6】本発明の化粧材を作製するときの説明図である。
【図7】実施例1により化粧材を作製するときの説明図である。
【図8】実施例2により化粧材を作製するときの説明図である。
【図9】実施例3により化粧材を作製するときの説明図である。
【図10】実施例4により化粧材を作製するときの説明図である。
【図11】実施例5により化粧材を作製するときの説明図である。
【図12】比較例1により化粧材を作製するときの説明図である。
【図13】比較例2により化粧材を作製するときの説明図である。
【図14】比較例3により化粧材を作製するときの説明図である。
【図15】比較例4により化粧材を作製するときの説明図である。
【符号の説明】
1 化粧材
1a 折曲げ化粧材
1b 化粧材(比較例で作製した)
2 印刷シート
3 化粧シート
11 繊維質基材
11a 含浸紙
11b 薄葉紙
12 着色不透明な電子線硬化性樹脂層
12a 未硬化の着色不透明な電子線硬化性樹脂層
12b 硬化した着色不透明な電子線硬化性樹脂層
13 透明な合成樹脂フィルム
13a PETフィルム
13b PPフィルム
13c PVCフィルム
14 絵柄層
14a ベタ印刷層
15 透明な電離放射線硬化性樹脂層(表面層)
15a 透明な電子線硬化性樹脂層(表面層)
16 接着剤層
17 被着体
17a MDF(中密度繊維板)
17b 木質板
18 電子線
19 エンボス模様
20a 未硬化の透明な電子線硬化性樹脂層(接着層)
20b 硬化した透明な電子線硬化性樹脂層(接着層)
21a 未硬化の二液硬化型接着剤層
21b 硬化した二液硬化型接着剤層
22a 未硬化の着色不透明な紫外線硬化性樹脂層
22b 硬化した着色不透明な紫外線硬化性樹脂層
23 エマルジョン型接着剤層
24 V字状溝
25 紫外線
Claims (8)
- 透明又は半透明な合成樹脂フィルムの裏面に、未硬化の着色不透明な電子線硬化性樹脂からなる接着剤を塗布した後、該接着剤が浸透性のある基材の裏面にまで浸透して行かない様に、塗布された該接着剤を介して、浸透性のある基材と積層すると同時に電子線を照射して該接着剤を硬化させることで、該浸透性のある基材に該基材の裏面側を残して浸透している着色不透明な電子線硬化性樹脂層、とすることを特徴とする化粧材の製造方法。
- 前記浸透性のある基材が、繊維質基材からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧材の製造方法。
- 前記合成樹脂フィルムの裏面に絵柄層を設けてから、前記接着剤を塗布することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧材の製造方法。
- 前記前記合成樹脂フィルムの表面に、架橋型樹脂からなる保護層を設けてから前記接着剤を塗布することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の化粧材の製造方法。
- 前記架橋型樹脂が電離放射線硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項4に記載の化粧材の製造方法。
- 前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の製造方法でシート状の化粧材を製造した後、更に、該シート状化粧材を接着剤を介して被着体にラッピング加工法により積層することを特徴とする化粧材の製造方法。
- 前記請求項6に記載の製造方法で化粧材を製造した後、更に、折り曲げ加工を施すことを特徴とする化粧材の製造方法。
- 前記請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の化粧材の製造方法で製造されて成る化粧材であって、
透明又は半透明な合成樹脂フィルムの裏面に、浸透性のある基材が着色不透明な電子線硬化性樹脂からなる接着剤を硬化させて成る着色不透明な電子線硬化性樹脂層を介して積層されて成り、且つ該着色不透明な電子線硬化性樹脂層が、前記浸透性のある基材に該基材の裏面側を残して浸透していることを特徴とする化粧材。
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