JP4610690B2 - 成形物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスバリア性およびガソリンバリア性に優れ、プライマー処理や接着剤なしにビニルアルコール系重合体を基材に積層可能な成形物からなる燃料タンク用付属部品およびその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビニルアルコール系重合体は、ガスバリア性、耐油性、機械的強度に優れているが、高価であるためにこれを単独でしにくい欠点があり、かつ透湿性が大きい欠点がある。この短所を改善するために、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂とビニルアルコール系重合体との積層構造体として用いられる。しかし、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル等の多くの熱可塑性樹脂とビニルアルコール系重合体との接着性は悪いため、層間の界面剥離が起こる問題がある。この問題を改善するために無水マレイン酸変性ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体等の各種接着材が開発されている。しかしながら、上述した接着材を用いると、工程が増えるためにコストアップにつながるという問題があった。
【0003】
また、特開昭57−64519号公報などには、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物をアルコール−水混合溶媒に溶解した溶液の層を支持体上に形成させた後に乾燥させて膜を製造する技術が開示されているが、かかる場合は一般に支持体とエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の間に充分な層間接着強度が得るために、煩雑なプライマー処理を行う必要や、接着剤を使用する必要があることが多く、コストアップの要因となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、プライマー処理や接着剤がない場合においても、ガスバリア性、ガソリンバリア性、層間接着強度の優れた、基材とビニルアルコール系共重合体からなる成形物からなる燃料タンク用付属部品を得ることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、高密度ポリエチレンである樹脂(A)100重量部にボロン酸基若しくは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂(B)0.01〜70重量部を添加した組成物(a)からなる基材にビニルアルコール系重合体(C)をコートしてなる成形物からなる燃料タンク用付属部品を提供することにより達成される。
【0006】
好適な実施態様では、本発明の燃料タンク用付属部品は基材にビニルアルコール系重合体(C)の溶液をコートしてなる。また別の好適な実施態様では、基材にビニルアルコール系重合体(C)の水性分散液をコートしてなる。
【0007】
また、好ましい実施態様では、ビニルアルコール系重合体(C)がエチレン含有率が60モル%以下のビニルアルコール系重合体である。
【0008】
また、本発明は樹脂(A)100重量部にボロン酸基若しくは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂(B)0.01〜70重量部を添加した組成物(a)からなる基材に、プライマー処理をせずに、直接ビニルアルコール系重合体(C)をコートする、上記の燃料タンク用付属部品の製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる樹脂(A)は、高密度ポリエチレンである。
【0011】
樹脂(A)は、溶融成形が行える観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。樹脂(A)が熱可塑性樹脂である場合は、樹脂(A)の好適なメルトインデックス(MI)(230℃、2160g荷重下で測定した値)は0.01〜400g/10分が好ましく、0.1〜200g/10分がより好ましい。
【0012】
また、12以下の溶解性パラメータ(Fedorsの式から算出)を有する樹脂であることが好ましい。このように、一般的には溶解性パラメータがビニルアルコール系重合体(C)と大きく異なり樹脂同士の親和性が低い場合でも、本発明の燃料タンク用付属部品を構成する成形物においては組成物(a)からなる基材とビニルアルコール系重合体(C)が、プライマー処理を行う必要もなく、また、接着剤を介さずとも相互が充分な層間接着性を示す。かかる観点からも本発明の意義は大きく、樹脂(A)の溶解性パラメータが11以下の場合、さらには10以下の場合でも本発明の燃料タンク用付属部品は充分に本発明の効果を奏する。
【0013】
本発明の燃料タンク用付属部品の場合は、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特に溶融成形性、機械強度およびガソリンバリア性等の観点から高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0014】
本発明のボロン酸基または水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性重合体(B)において、ボロン酸基とは下記式(I)で示されるものである。
【0015】
【化1】
また水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基(以下ホウ素含有基と略記する)としては、水の存在下で加水分解を受けて上記(I)で示されるボロン酸基に転化しうるホウ素含有基であればどのようなものでもよいが、代表例として下記一般式(II)で示されるボロン酸エステル基、下記一般式(III)で示されるボロン酸無水物基、下記一般式(IV)で示されるボロン酸塩基が挙げられる。
【0016】
【化2】
【0017】
【化3】
【0018】
【化4】
【0019】
{式中、X、Yは水素原子、脂肪族炭化水素基(炭素数1〜20の直鎖状、または分岐状アルキル基、またはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など)を表わし、X,Yは同じ基でもよいし、異なっていても良い。また、XとYは結合していてもよい。ただし、X,Yがともに水素原子の場合は除かれる。またR1,R2,R3は上記X,Yと同様の水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基を表わし、R1,R2,R3は同じ基でも良いし、異なっていても良い。またMはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わす。また上記のX,Y,R1,R2,R3には他の基、例えば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子などを有していてもよい。
【0020】
一般式(II)〜(IV)で示される、ボロン酸エステル基、ボロン酸無水物基、ボロン酸塩基の具体例としてはボロン酸ジメチルエステル基、ボロン酸ジエチルエステル基、ボロン酸ジブチルエステル基、ボロン酸ジシクロヘキシル基、ボロン酸エチレングリコールエステル、ボロン酸プロピレングリコールエステル基(ボロン酸1,2−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基)、ボロン酸ネオペンチルエステル、ボロン酸カテコールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基、ボロン酸トリメチロールエタンエステル基、ボロン酸トリメチロールエタンエステル基、ボロン酸ジエタノールアミンエステル基等のボロン酸エステル基;ボロン酸無水物基;ボロン酸のアルカリ金属塩基、ボロン酸のアルカリ土類金属塩基等が挙げられる。
なお前記の水存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基とは、本発明のオレフィン系重合体を水または水と有機溶媒(トルエン、キシレン、アセトンなど)との混合液体または5%ホウ酸水溶液と前記有機溶媒との混合液体中で、反応時間10分〜2時間、反応温度室温〜150℃の条件下に加水分解した場合に、ボロン酸基に転化しうる基を意味する。
【0021】
本発明の(B)のボロン酸およびホウ素含有基の総量の制限は特にはないが、0.0001ミリ等量/g以上が好ましく、0.001〜1ミリ等量/gの範囲がより好ましい。
【0022】
本発明の(B)のボロン酸基または水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性重合体の好適なベースポリマーの例としては、ポリエチレン(超低密度、低密度、中密度、高密度)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−エチルアクリレ−ト共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系重合体;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ジエン系ブロック共重合体の水添物(スチレン−イソプレン−ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等の水添物)等のスチレン系重合体;ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系重合体;ポリ塩化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の半芳香族ポリエステル;ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
【0023】
本発明の(B)のボロン酸基またはホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂のベースポリマーは樹脂(A)の種類により適宜選ばれるが、樹脂(A)を構成する単量体を構成成分として含有する熱可塑性重合体が好ましい場合が多い。樹脂(A)が高密度ポリエチレンの場合、(B)のベースポリマーとしては通常ポリエチレン(高密度、中密度、低密度、超低密度)が好ましい。
【0024】
本発明のボロン酸基または水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂(B)の好適なメルトインデックス(MI)(230℃、2160g荷重下で測定した値)は0.01〜500g/10分が好ましく、0.1〜50g/10分がより好ましい。
【0025】
次に本発明の(B)のボロン酸基若しくは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂の代表的製法について述べる。
第一の製法:ボロン酸基あるいは水の存在によりボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有するオレフィン系重合体は、窒素雰囲気下で炭素−炭素二重結合を有するオレフィン系重合体にボラン錯体およびホウ酸トリアルキルエステルを反応させることによって、ボロン酸ジアルキルエステル基を有するオレフィン系重合体を得た後、水あるいはアルコール類を反応させることによって得られる。この製法において原料として末端に二重結合を有するオレフィン系重合体を使用すれば、末端にボロン酸基あるいは水の存在によりボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有するオレフィン系重合体が得られ、側鎖または主鎖に二重結合を有するオレフィン系重合体を原料として使用すれば、側鎖にボロン酸基あるいは水の存在によりボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有するオレフィン系重合体が得られる。
【0026】
原料の二重結合を有するオレフィン系重合体の代表例としては、1)通常のオレフィン系重合体の末端に微量に存在する二重結合を利用する方法;2)通常のオレフィン系重合体を無酸素条件下、熱分解し、末端に二重結合を有するオレフィン系重合体を得る製法;3)オレフィン系単量体とジエン系単量体の共重合によりオレフィン系単量体とジエン系単量体との共重合体を得る製法;が挙げられる。1)については、公知のオレフィン系重合体の製法を用いることができるが、フィリップス法による製法や連鎖移動剤として水素を用いず、重合触媒としてメタロセン系重合触媒を用いる製法(例えば、DE4030399)が好ましい。2)については、公知の方法(例えばUS2835659,3087922)によりオレフィン系重合体を窒素雰囲気下や真空条件下等の無酸素条件下で300〜500℃の温度で熱分解することによって得られる。3)については公知のチーグラー系触媒を用いたオレフィン−ジエン系共重合体の製法(例えば特開昭50−44281、DE3021273)を用いることができる。
【0027】
ボラン錯体としては、ボラン−テトラヒドロフラン錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−ピリジン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体、ボラン−トリエチルアミン錯体等が好ましい。これらの中でボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−メチルアミン錯体およびボラン−トリエチルアミン錯体がより好ましい。ボラン錯体の仕込み量はオレフィン系重合体の二重結合に対し、1/3等量〜10等量の範囲が好ましい。
ホウ酸トリアルキルエステルとしては、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリブチルボレート等のホウ酸低級アルキルエステルが好ましい。ホウ酸トリアルキルエステルの仕込み量はオレフィン系重合体の二重結合に対し1〜100等量の範囲が好ましい。溶媒は特に使用する必要はないが、使用する場合は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の飽和炭化水素系溶媒が好ましい。
【0028】
ボロン酸ジアルキルエステル基を有するオレフィン系重合体へ導入する反応は、反応温度室温〜300℃、好ましくは100〜250℃、反応時間1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間行うのがよい。
【0029】
水あるいはアルコール類を反応させる条件としては通常、トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒を反応溶媒として用い、水またはメタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール,ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコール類をボロン酸基に対し、1〜100等量以上の大過剰量を反応させることによって得られる。
【0030】
ボロン酸基若しくは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂(B)の第二の製法;末端にボロン酸基またはホウ素含有基基を有するオレフィン系重合体、ビニル系重合体、ジエン系重合体はボロン酸基またはホウ素含有基を有するチオール存在下でオレフィン系単量体、ビニル系単量体、ジエン系単量体から選ばれる少なくとも一種をラジカル重合することによって得られる。
【0031】
原料のボロン酸基あるいは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有するチオールは窒素雰囲気下で二重結合を有するチオールにジボランまたはボラン錯体を反応後、アルコール類または水を加えることによって得られる。ここで、二重結合を有するチオールとしては2−プロペン−1−チオール、2−メチル−2−プロペン−1−チオール、3−ブテン−1−チオール、4−ペンテン−1−チオール等が挙げられ、この内、この内、2−プロペン−1−チオールおよび2−メチル−2−プロペン−1−チオールが好ましい。ボラン錯体としては、前記したものと同様なものが使用され、このうちボラン−テトラヒドロフラン錯体およびボラン−ジメチルスルフィド錯体が特に好ましい。ボランまたはジボランの添加量は二重結合を有するチオールに対して等量程度が好ましい。反応条件としては室温から200℃が好ましい。溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)、ジグライム等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の飽和炭化水素系溶媒等が挙げられるが、ののうちTHFが好ましい。反応後に添加するアルコール類としては、メタノール、エタノール等の低級アルコールが好ましく、特に、メタノールが好ましい。
【0032】
このようにして得られた、ボロン酸基あるいは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有するチオールの存在下、オレフィン系単量体、ビニル系単量体、ジエン系単量体から選ばれる少なくとも一種類をラジカル重合することによって末端に該官能基を有する重合体が得られる。
重合条件としては、アゾ系あるいは過酸化物系の開始剤を用い、重合温度は室温から150℃の温度範囲が好ましい。該官能基を有するチオールの添加量としては単量体1g当たり0.001ミリモルから1ミリモル程度が好ましく、チオールの添加方法としては、特に制限はないが、単量体として酢酸ビニル、スチレン等の連鎖移動しやすいものを使用する場合は、重合時にチオールをフィードすることが好ましく、メタクリル酸メチル等の連鎖移動しにくいものを使用する場合は、チオールを最初から加えておくことが好ましい。
【0033】
ボロン酸基若しくは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂(B)の第3の製法;側鎖にボロン酸基あるいは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂はボロン酸基あるいは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する単量体と前記したオレフィン系単量体、ビニル系単量体およびジエン系単量体から選ばれる少なくとも一種類の単量体とを共重合させることによって得られる。ここでボロン酸基あるいは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する単量体としては、例えば、3−アクリロイルアミノベンゼンボロン酸、3−アクリロイルアミノベンゼンボロン酸エチレングリコールエステル、3−メタクリロイルアミノベンゼンボロン酸、3−メタクリロイルアミノベンゼンボロン酸エチレングリコールエステル、4−ビニルフェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボロン酸エチレングリコールエステル等が挙げられる。また側鎖にボロン酸基あるいは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、および無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸と前記したオレフィン系単量体、ビニル系単量体およびジエン系単量体から選ばれる少なくとも一種類の単量体またはグラフト共重合体のカルボキシル基をカルボジイミド等の縮合剤を用いてまたは用いずにm−アミノフェニルベンゼンボロン酸、m−アミノフェニルボロン酸エチレングリコールエステルなどのアミノ基含有ボロン酸またはアミノ基含有ボロン酸エステルとアミド化反応させることによって得られる。
【0034】
本発明に使用する、ビニルアルコール系重合体(C)はビニルエステル重合体ケン化物であり、エチレンなどに代表されるα−オレフィンで変性されていても良いが、得られる樹脂のガスバリア性等の観点から、変性を行う場合はエチレンで変性することが特に好ましい。エチレン単位の含有量は60モル%以下であることが好ましく、より好適には55モル%以下、さらに好適には50モル%以下である。エチレン含有量が60モル%を越えると、ガスバリア性が低下する虞がある。
【0035】
ビニルアルコール系重合体(C)が実質的にポリビニルアルコールのみからなり、エチレン変性がなされていない場合は、水溶性に優れ、かつ含アルコールガソリンに対する高いバリア性を発揮できる点で好ましい。これに対し、エチレン単位の含有率が20〜60モル%の場合は、得られる塗膜が耐水性に優れたものとなる点で好ましい。また、エチレン単位の含有率が2〜18モル%の場合は、上記の二者の中間的な性質が得られ、ビニルアルコール系重合体(C)がポリビニルアルコールのみからなる場合ほどではないものの、水溶性に優れ、塗膜の耐水性はポリビニルアルコールのみからなる場合よりも高くなる点で好適である。また、エチレン単位の含有率を2〜18モル%とすることで、ポリビニルアルコールのみからなる場合よりも塗膜の耐屈曲性を向上させることが可能である。
【0036】
また、ビニルアルコール系重合体(C)のビニルエステル単位のケン化度としては、10〜100モル%の範囲から選ばれ、50〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、95〜100モル%、さらには99〜100モル%が最良である。ケン化度は余り低すぎると結晶化度を低下させたり、また溶融成形時の熱安定性が悪化する場合があるので、ケン化度は高い方が好ましい。ここでビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表例として挙げられるが、その他にプロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステルも挙げられる。これらのビニルエステルは一種あるいは二種以上混合して使用してもよい。また、ビニルアルコール系重合体(C)はエチレン含有量、ケン化度、重合度のうちの少なくとも一つが異なるビニルアルコール系重合体を混合して使用してもよい。
【0037】
ビニルアルコール系重合体には本発明の目的が阻害されない範囲で他の共重合成分を含有させてもよい。ここで他の一成分としてはプロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン系単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のメタクリルアミド系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;アリルアルコール;ビニルトリメトキシシラン;N−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0038】
また本発明のビニルアルコール系重合体(C)には本発明の目的が阻害されない範囲でビニルアルコール系重合体以外の熱可塑性樹脂を添加してもよい。ビニルアルコール系重合体層(C)中の熱可塑樹脂の含有量は0〜50重量%の範囲で選ばれ、0〜40重量%の範囲が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(超低密度、低密度、中密度、高密度)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン;前記ポリオレフィンの無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート等のグラフト変性物;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の半芳香族ポリエステル;ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル;ポリカプロラクタム、ポリラウロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド等の脂肪族ポリアミド;ポリエチレングリコール、ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル等が挙げられる。
【0039】
また本発明に使用するビニルアルコール系重合体の好適な重合度は特に規定されるものではないが、強度および耐久性の面から100以上であり、好適には200以上、さらに好適には300以上である。一方、成形物成形時の生産性の観点から3000以下であり、好適には2700以下、さらに好適には2500以下である。ここでビニルアルコール系重合体の重合度は1モル/リットルのチオシアン酸アンモニウムを含有する水/フェノール系混合溶剤(重量比15/85)中、30℃で測定した固有粘度より求められる。
【0040】
本発明の成形物は、樹脂(A)100重量部にボロン酸基若しくは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂(B)0.01〜70重量部を添加した組成物(a)からなる基材にビニルアルコール系重合体(C)をコートしてなる。当該組成物(a)においては、(A)および(B)の配合量において、(B)の添加量の下限はより好ましくは(A)100重量部に対して(B)0.1重量部であり、さらに好ましくは(B)0.5重量部であり、より一層好ましくは1重量部であり、特に好ましく5重量部である。また、(A)および(B)の配合量において、(B)の添加量の上限はより好ましくは(A)100重量部に対して(B)60重量部であり、さらに好ましくは(B)50重量部である。(B)の添加量が(A)100重量部に対して0.01部に満たない場合は、本発明に用いられる組成物(a)とビニルアルコール系重合体(C)との層間接着性の改善効果が不充分なものとなる。また、(B)の添加量が(A)100重量部に対して70重量部を超える場合は、組成物(a)全体の中での樹脂(A)が占める相対的な割合が減るため、本来樹脂(A)が有している性能を充分に発揮できなくなる。
【0041】
樹脂(A)100重量部に対し、ボロン酸基若しくは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂(B)を0.01〜70重量部添加した組成物(a)は任意の方法で作成でき、特に限定されない。例えば、樹脂(A)およびボロン酸基若しくは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂(B)を同時に単軸または2軸スクリュー押出機などでペレット化し乾燥する方法などが好適なものとして例示される。
【0042】
上記に示すような方法などで得られた組成物(a)は溶融成形によりフィルム、シート、容器、パイプ、繊維等、各種の成形体に成形される。これらの成形物は再使用の目的で粉砕し再度成形することも可能である。また、フィルム、シート、繊維等を一軸または二軸延伸することも可能である。溶融成形法としては押出成形、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、射出成形等が可能である。
【0043】
このようにして得られた上記組成物(a)の成形物からなる基材にビニルアルコール系重合体(C)をコートすることにより本発明の燃料タンク用付属部品を構成する成形物が得られる。コート方法は特に限定されないが、ビニルアルコール系重合体(C)を溶剤に溶解させた溶液を基材に塗布・乾燥してなるいわゆる溶液コートや、ビニルアルコール系重合体(C)の水性分散液を基材に塗布・乾燥させてなる方法などが代表的なものとして挙げられる。
【0044】
ビニルアルコール系重合体(C)の溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール、グリセリン等の3価アルコール、フェノール、クレゾール等のフェノール類、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等、水、あるいはこれらの含水物等が単独あるいは2種以上混合されて使用できる。上記に列記した中でも、溶剤としては水、アルコールまたはこれらの混合溶剤が好ましく、特に好ましい溶剤はアルコール−水系の混合溶剤、例えば水−ノルマルプロピルアルコール、水−イソプロピルアルコール、水−メチルアルコール等である。
【0045】
ビニルアルコール系重合体(C)溶液中には可塑剤(多価アルコール等)、フィラー、補強材(ガラス繊維)、着色材偏光素子、紫外線吸収剤、界面活性剤、ホウ酸、ホウ砂等を添加しても良い。
【0046】
また該溶液中には、粘度を低下させる目的で水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムなどのアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム硝酸カルシウムなどのアルカリ土類金属化合物、その他の電解質を0.01〜0.5重量%(対ポリマー)配合しても良い。
【0047】
該溶液を本発明に用いられる組成物(a)からなる基材に塗布する方法としては、キャスティングヘッドからの塗出、ロールコート、エアナイフコート、グラビアロールコート、ドクターロールコート、ドクターナイフコート、カーテンフローコート、スプレーコート、ワイヤーバーコート、ロッドコート、浸漬(ディップコート)、刷毛塗りなどの任意の手段が例示される。当該溶液が塗布された基材は、必要に応じて乾燥されるが、その乾燥熱処理する方法としては、乾熱処理法、例えば赤外線照射法、熱風乾燥法などが例示される。これらの赤外線照射、熱風乾燥などはそれぞれ単独で使用しても良いし、また併用することもできる。また乾燥、熱処理の温度は20℃以上であることが好ましい。好適には30℃以上、さらに好適には40℃以上である。乾燥、熱処理温度が20℃を下回ると乾燥にかかる時間が長くなる。一方、上限は本発明の組成物(a)の軟化点以下であれば良い。乾燥、熱処理中は条件、例えば温度を増減させること、例えば最初は低温で処理し、徐々に温度を上昇させることなどは自由である。このような乾燥、熱処理を施すことにより、ガスバリア性の優れた皮膜が本発明の組成物(a)表面に形成される。
【0048】
また、該溶液を塗布、乾燥、熱処理した後の皮膜の厚さは、所望によって任意に選択しうるが、バリア性の観点から皮膜の厚みの下限は0.01μm以上であることが好適であり、より好適には0.1μm以上であり、更に好適には0.5μm以上である。また皮膜強度の観点から皮膜の厚みの上限は80μm以下であることが好適であり、より好適には50μm以下、さらに好適には40μm以下である。
【0049】
上述の通り、本発明に用いられる組成物(a)からなる基材に、ビニルアルコール系重合体(C)の水性分散液をコートすることも好適である。ビニルアルコール系重合体(C)の水性分散液の製造方法は特に限定されず、特開平4−225032号公報あるいは特開平5−179001号公報などに開示されている方法で製造することが可能である。また、ビニルアルコール系重合体(C)の水性分散液を組成物(a)からなる基材に塗布・乾燥する方法は、上述したビニルアルコール系重合体(C)の溶液を基材に塗布・乾燥する方法と同様の方法が採用され、得られるビニルアルコール系重合体(C)の厚みも、溶液の場合と同様である。
【0050】
上記成形物は、ガスバリアー性に優れたビニルアルコール系重合体を含有しているので、特にガスバリアー性の要求される食品包装材、医療品(医薬品、医療器具)包装材、あるいは燃料タンク用付属部品として有用である。また、本発明の燃料タンク用付属部品を構成する成形物はビニルアルコール系重合体(C)の溶液あるいは水性分散液をコートすることにより積層化するため、複雑な形状の成形品であっても比較的容器に多層化出来る観点からもメリットが大きい。
【0051】
燃料タンク用付属部品としては、燃料タンク用コネクタおよび燃料タンク用圧抜きバルブなど、燃料タンク本体に装着されて用いられるものが好適なものとして挙げられる。燃料タンク用コネクタの好適な実施態様としては、燃料タンク本体に装着された燃料タンク用コネクタに、さらにフレキシブルな燃料輸送用のパイプが装着される態様などが挙げられるが、これらに限定されない。該コネクタを燃料タンク本体に装着させる方法としては、ねじ込み式、填め込み式、熱融着による接合などが例示されるが、組み付け工数の減少および接合部分からの燃料漏れの抑制という観点から、熱融着により装着されることが好ましい。そのため、該コネクタは燃料タンク本体との熱融着性に優れていることが特に好ましい。なお、熱融着には一般的な手法が用いられ、ヒーターなどにより燃料容器本体および/または燃料容器用成形部品の融着面を加熱した後、融着を行う方法、燃料容器本体と当該成形部品を高周波融着する方法、および燃料容器本体と当該成形部品を超音波融着する方法などが例示されるが、これらに限定されない。
【0052】
本発明の成形物を燃料タンク用コネクタとして用いる場合は、樹脂(A)として密度0.93以上のポリエチレンを用いることが、機械強度およびガソリンバリア性等の観点から好ましい。最も好適な実施態様では、密度0.93以上のポリエチレンからなる樹脂(A)およびボロン酸基若しくは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂(B)からなる組成物(a)を用いて射出成形により燃料タンク用コネクタを成形し、燃料タンク本体との融着面以外をビニルアルコール系重合体(C)で溶液コートすることにより、燃料タンク用コネクタが得られる。ガソリンバリア性の観点からは、燃料容器本体との融着面以外の総てをビニルアルコール系重合体(C)でコートすることが好ましいが、コスト面および操作の簡略化を重視した場合は、当該コネクタの内、直接燃料と接触する面のみをコートすることも好適である。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
ポリオレフィン中の二重結合量は、重パラキシレンを溶媒として用い、270MHz 1H−NMRにより定量した。
ポリオレフィン中のボロン酸基およびそのエステル基の量は重パラキシレン:重クロロホルム:エチレングリコール=8:2:0.02の比率の混合溶媒を用いて270MHz 1H−NMRにより定量し、ポリスチレン中のボロン酸基およびそのエステル基の量は重クロロホルム:エチレングリコール=10:0.02の比率の混合溶媒を用いて270MHz 1H−NMRにより定量した。
【0056】
合成例1
攪拌機、窒素導入管、冷却器を備えた5Lセパラブルフラスコに旭化成株式会社製タフテック(登録商標)H1062を500gおよびデカリン1500gを仕込み、減圧により窒素置換後、オイルバスの温度を130℃に設定し、攪拌により溶解した。これにトリエチルアミンボラン57.5gおよびホウ酸1,3−ブタンジオールエステル143gの混合液を加え、5分間攪拌後、攪拌を止め、オイルバスの温度を200℃に昇温した。昇温後、しばらくして全体がゲル化した後、壁面からゲルの溶解が始まり、攪拌可能になった時点で再び攪拌を開始した。反応容器中のゲルが完全に消失してから、さらに1時間加熱後、冷却器の代わりに蒸留器具を付け、常圧で蒸留を開始した。オイルバスの温度を220℃まで上げ、留出がほぼ止まるまで蒸留を続けた。得られたポリマーの溶液を冷却後、アセトン5Lに再沈殿し、さらに、120℃で1晩真空乾燥することにより、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を0.22mmol/g有するポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンのトリブロック共重合体の水添物を得た。
【0057】
合成例2
合成例1の旭化成株式会社製タフテック(登録商標)H1062の代わりに、三井石油化学株式会社製EPT(登録商標)3012pを用いて同様の反応を行った結果、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を0.3mmol/g有するエチレン−プロピレン共重合体を得た。
【0058】
合成例3
冷却器、撹拌機および滴下ロート付きセパラブルフラスコに高密度ポリエチレン{MI(190℃、荷重2160g)0.5g/10分、密度0.95、末端二重結合量0.04meq/g)800g、デカリン2500gを仕込み、減圧することにより脱気した後、窒素置換を行った。これに、ホウ酸トリメチル80g、ボラン−トリエチルアミン錯体5.5gを添加後、200℃で4時間反応を行った後、蒸留器具を取り付け、さらにメタノール100mlをゆっくり滴下した。メタノール滴下終了後、減圧蒸留により、メタノール、ホウ酸トリメチル、トリエチルアミン等の不純物を除去した。さらにエチレングリコール31gを添加後、アセトン10Lに再沈精製した。得られたゲル状ポリエチレンを60℃で12時間熱風乾燥後、100℃で12時間真空乾燥することによりボロン酸エチレングリコールエステル基量0.032meq/g、MI(190℃、荷重2160g)0.2g/10分の高密度ポリエチレンを得た。
【0059】
参考例1
Exxon社製HDPE(PaxonBA46−055:190℃−2160g時のメルトフローインデックス=0.03g/10min)100部に対し、合成例1で作製したボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を0.3mmol/g有するエチレン−プロピレン共重合体を30部を二軸スクリュータイプのベント式押出機に入れ、窒素の存在下220℃で押出ペレット化を行い、樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを150℃で熱プレスによる圧縮成形により厚さ1mmのシート状に成形した。
【0060】
一方、ビニルアルコール系重合体として、ケン化度98モル%、重合度1700のポリビニルアルコールを使用し、これを水/イソプロピルアルコール=70重量部/30重量部溶液に10重量部になるように80℃に加熱、溶解し、ポリビニルアルコール溶液を得た。先に作製した厚さ1mmのシートを該ポリビニルアルコール溶液中に浸漬した後、該シートをポリビニルアルコール溶液から引き上げ、直ちに80℃、5分間熱風乾燥を実施した。この時ポリビニルアルコール皮膜は20μmであった。
【0061】
ポリビニルアルコールが塗布された上記シートの中央部を縦5cm、横5cmの枠を作り、更に縦1cmずつ、横1cmずつに分け、計25個のマスを書き込んだ。更にこのマスをカッターナイフで切り込みを入れた。その後、25個のマス全てに布テープ(ニチバン株式会社製、布粘着テープLS段ボール包装用強粘着タイプ)を均一に張り付け、一気に剥離した。この時布テープと一緒に熱プレスシートから剥離しなかったポリビニルアルコールのマスの数を接着力とし、その数は25であった。
【0062】
参考例2
参考例1と同じ樹脂組成物ペレットを使用し、熱プレスによる圧縮成形により厚さ1mmのシートを作製した。一方、ビニルアルコール系重合体として、エチレン含量32モル%、ケン化度99モル%、重合度1100のエチレン−ビニルアルコール共重合体を使用し、これを水/イソプロピルアルコール=35重量部/65重量部溶液に10重量部になるように80℃に加熱、溶解し、エチレン−ビニルアルコール共重合体溶液を得た。先に作製した厚さ1mmのシートを該エチレン−ビニルアルコール共重合体溶液に浸漬した後、該シートをエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液から引き上げ、直ちに80℃、5分間熱風乾燥を実施した。この時のエチレン−ビニルアルコール共重合体皮膜の厚みは15μmであった。
【0063】
エチレン−ビニルアルコール共重合体が塗布された該シートの中央部を縦5cm、横5cmの枠を作り、更に縦1cmずつ、横1cmずつに分け、計25個のマスを書き込んだ。更にこのマスをカッターナイフで切り込みを入れた。その後、25個のマス全てに布テープ(ニチバン株式会社製、布粘着テープLS段ボール包装用強粘着タイプ)を均一に張り付け、一気に剥離した。この時布テープと一緒にシートから剥離しなかったポリビニルアルコールのマスの数を接着力とし、その数は25であった。
【0064】
参考例3
参考例1と同じ樹脂組成物ペレットを使用し、熱プレスによる圧縮成形により厚さ1mmのシートを作製した。一方、ビニルアルコール系重合体として、エチレン含量5モル%、ケン化度98モル%、重合度1700のエチレン−ビニルアルコール共重合体を使用し、これを水/イソプロピルアルコール=70重量部/30重量部溶液に10重量部になるように80℃に加熱、溶解し、エチレン−ビニルアルコール共重合体溶液を得た。先に作製した厚さ1mmのシートを該エチレン−ビニルアルコール共重合体溶液に浸漬した後、該シートをエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液から引き上げ、直ちに80℃、5分間熱風乾燥を実施した。この時のエチレン−ビニルアルコール共重合体皮膜の厚みは20μmであった。
【0065】
エチレン−ビニルアルコール共重合体が塗布された該シートの中央部を縦5cm、横5cmの枠を作り、更に縦1cmずつ、横1cmずつに分け、計25個のマスを書き込んだ。更にこのマスをカッターナイフで切り込みを入れた。その後、25個のマス全てに布テープ(ニチバン株式会社製、布粘着テープLS段ボール包装用強粘着タイプ)を均一に張り付け、一気に剥離した。この時布テープと一緒にシートから剥離しなかったポリビニルアルコールのマスの数を接着力とし、その数は25であった。
【0066】
比較例1
合成例1で作製したボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を0.3mmol/g有するエチレン−プロピレン共重合体を使用しないこと以外は参考例1と同じ方法で、ポリビニルアルコール溶液コート熱プレスシートを作製した。この時の接着力は0であった。
【0067】
比較例2
合成例1で作製したボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を0.3mmol/g有するエチレン−プロピレン共重合体の代わりに、無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学製、アドマーGT−5A)を使用すること以外は参考例1と同様にしポリビニルアルコールを溶液コートしたシートを作製した。この時の接着力は0であった。
【0068】
実施例1
Exxon社製HDPE(PaxonBA46−055:190℃−2160g時のメルトフローインデックス=0.03g/10min)100部に対し、合成例1で作製したボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を0.3mmol/g有するエチレン−プロピレン共重合体を30部を二軸スクリュータイプのベント式押出機に入れ、窒素の存在下220℃で押出ペレット化を行い、樹脂組成物ペレットを得た。
【0069】
得られたペレットを射出成形機に仕込み、内径63mm、外径70mm、高さ40mmの円筒状単層射出成形品(図1)を作製した。この成形品は燃料タンク用コネクタ類似の形状(以下、コネクタ様成形品という)を有し、図2に示されるように、コネクタ様成形品1は、容器本体2に取り付けられ、コネクタ様成形品1の口部にパイプ3が取り付けられる。一方、高密度ポリエチレン(HDPE:三井化学製HZ8200B)を内外層とし、更に接着性樹脂(無水マレイン酸変性LDPE、三井化学製アドマーGT−5A)を用い、3種5層のダイレクトブロー成形機にて容量35リットル、表面積0.85m2のバリア性樹脂系多層タンクを作製した。本タンクの構成は、(外)HDPE/接着性樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合体/接着性樹脂/HDPE(内)=2500/100/150/100/2500(μm)であった。
【0070】
一方、ビニルアルコール系重合体(C)として、ケン化度98モル%、重合度1700のポリビニルアルコールを使用し、これを水/イソプロピルアルコール=70重量部/30重量部溶液に10重量部になるように80℃に加熱、溶解し、ポリビニルアルコール溶液を得た。上記コネクタ様成形物をタンク装着部以外について、ポリビニルアルコール溶液に30秒間浸漬し、直ちに引き上げ80℃、5分間熱風乾燥機で乾燥し、ポリビニルアルコールを溶液コートした(平均厚み10μm)コネクタを作製した。
【0071】
本タンクにコネクタ装着のための直径55mmの孔を二箇所あけた後、その部分および上記作製したコネクタの双方を250度の鉄板で40秒融解させた後に圧着して熱融着させて、多層タンクを得た。得られた本コネクタを2個融着させた多層タンクを用いて、以下の方法でガソリンバリア性を評価した。結果は0.02(g/pkg・4weeks)であった。
【0072】
・ガソリンバリア性の測定方法
上記の方法で得られた、開口部を有する本コネクタを2個融着させた多層タンクに、25リッターのモデルガソリン(トルエン:イソオクタン=50/50体積%)を充填した。次いで、本コネクタの片側に直径80mm、厚さ0.5mmのアルミ板をエポキシ系接着剤にて強固に接着させた後、防爆型恒温恒湿槽(40℃−65%RH)にて4週間後の重量減少量(n=5)を測定し、本単層射出成形品を2個融着させた多層タンクからの燃料透過量(g/pkg・4weeks)を求めた。
【0073】
比較例3
ポリビニルアルコールを溶液コートをしないこと以外は参考例2と同じ操作を行い、ガソリンバリア性を評価した。結果は3.6(g/pkg・4weeks)であった。
【0074】
【発明の効果】
本発明の、高密度ポリエチレンである樹脂(A)100重量部にボロン酸基若しくは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂(B)0.01〜70重量部を添加した組成物(a)からなる基材にビニルアルコール系重合体(C)をコートしてなる成形物からなる燃料タンク用付属部品は、組成物(a)からなる基材に対するプライマー処理が不要であり、かつ当該基材とビニルアルコール系重合体(C)が接着剤を介することなく強度に接着し、更にガスバリア性およびガソリンバリア性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 多層射出成形機により成形された円筒状成形品(コネクタ様成形品)を示す図である。
【図2】 コネクタ用成形品の使用形態を示す図である。
【符号の説明】
1:コネクタ様成形品
2:容器本体
3:パイプ
Claims (4)
- 高密度ポリエチレンである樹脂(A)100重量部にボロン酸基若しくは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂(B)0.01〜70重量部を添加した組成物(a)からなる基材にビニルアルコール系重合体(C)をコートしてなる成形物からなる燃料タンク用付属部品。
- 基材にビニルアルコール系重合体(C)の溶液または水性分散液をコートしてなる請求項1記載の燃料タンク用付属部品。
- ビニルアルコール系重合体(C)がエチレン含有率が60モル%以下のビニルアルコール系重合体である請求項1または2のいずれかに記載の燃料タンク用付属部品。
- 樹脂(A)100重量部にボロン酸基若しくは水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂(B)0.01〜70重量部を添加した組成物(a)からなる基材に、プライマー処理をせずに、直接ビニルアルコール系重合体(C)をコートする、請求項1〜3のいずれかに記載の燃料タンク用付属部品の製造方法。
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