JP4566362B2 - ガソリンバリア性に優れた燃料容器用多層成形部品 - Google Patents

ガソリンバリア性に優れた燃料容器用多層成形部品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガソリンバリア性、燃料タンクとの熱融着性および耐衝撃性に優れた燃料容器用多層成形部品、ならびに当該成形部品が燃料容器本体に装着された燃料容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用に代表される燃料タンクにおいて、軽量化、防錆性、易成形加工性、リサイクル性などの点から、金属製から熱可塑性樹脂製のタンクへの実用化が積極的に進められている。
【0003】
しかしながら、熱可塑性樹脂製のタンクを用いた場合、タンクからのガソリン成分の透過・揮発が問題となっているため、高いガソリンバリア性を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略すことがある)との多層プラスティックタンクなどの技術が開発されている(特開平9−29904号公報)。このように燃料容器にEVOHを含有させることにより、燃料容器本体からのガソリン成分の透過・揮発は大幅に改善されている。
【0004】
他方で、燃料容器に付属する成形部品(例えば、燃料チューブ、給油口のガス抜きライン、圧抜き用バルブ、およびこれら容器本体とのコネクターなど)は、一般には、高密度ポリエチレン製のものが使用されている。このため、燃料が透過・揮発する。従って、燃料容器本体をガスバリア性の優れたものとしても、接続する成形部品から燃料が透過、揮発し、しかもその量は無視できない量となる。
【0005】
このため高密度ポリエチレンの代わりにバリア性樹脂(例えば、EVOHなど)を使用することが考えられる。しかし、バリア性樹脂のみを燃料容器用成形部品として用いた場合は、ガソリンが透過・揮発するという問題点は解決できるが、燃料容器本体との熱融着性、耐衝撃性などが不満足なものとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そのため、ガソリンバリア性、燃料タンクとの熱融着性および耐衝撃性に優れた性能を発揮する燃料容器用成形部品が望まれている。このような成形部品を装着した燃料容器は、燃料チューブ、給油口のガス抜きライン、圧抜き用バルブなどと燃料容器本体を接続するコネクター部分からの燃料の漏れが大幅に改善される。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(a1)60〜95重量%および多層構造重合体粒子(a2)5〜40重量%からなるバリア性樹脂組成物(A)層と、カルボン酸変性ポリオレフィンおよびボロン酸変性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(b1)1〜99重量%および、前記(b1)以外の11以下の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する熱可塑性樹脂(b2)1〜99重量%からなる樹脂組成物(B)層とからなる燃料容器用多層成形部品であって、多層構造重合体粒子(a2)が、メタクリル酸メチルまたはスチレンの単独もしくはそれを主成分とする2種以上のラジカル重合性単量体の組み合わせから形成される硬質層を最外層として有し、かつアクリル系ゴム、共役ジエン系重合体または共役ジエン系重合体の水素添加物から構成されるゴム層を内部に有する多層構造重合体粒子であり、熱可塑性樹脂(b2)が、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂およびポリ塩化ビニル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である燃料容器用多層成形部品に関する。
【0008】
好ましい実施態様では、前記熱可塑性樹脂(b2)がポリオレフィン系樹脂であり、より好適には高密度ポリエチレンである。
【0009】
好適な実施態様では、バリア性樹脂組成物(A)層および/または樹脂組成物(B)層が無機フィラー1〜50重量%を含有している。
【0010】
好適な実施態様では、前記成形部品が多層射出成形機により成形されている。より好適な実施態様では、前記成形部品が、インサート射出成形機、二色成形機または共射出成形機により成形されている。
【0011】
また、好適な実施態様では、前記成形部品が、燃料容器用コネクター、燃料容器用キャップおよび燃料容器用バルブからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0012】
好適な実施態様では、前記成形部品が、樹脂組成物(B)層を介して燃料容器本体に装着されてなる。別の好適な実施態様では、前記成形部品が、熱融着によって燃料容器本体に装着されてなる。特に好ましい実施態様では、本発明の多層成形部品が装着された燃料容器が、自動車用ガソリンタンクとして用いられる。
【0013】
また、熱硬化性樹脂(C)からなる部品を、前記の燃料容器用多層成形部品を介して、燃料容器本体に装着していることも好ましい。
【0014】
さらに、前記熱硬化性樹脂(C)がポリメチレンオキサイド系樹脂であることも好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の燃料容器用多層成形部品は、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(a1)60〜95重量%および多層構造重合体粒子(a2)5〜40重量%からなるバリア性樹脂組成物(A)層と、カルボン酸変性ポリオレフィンおよびボロン酸変性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(b1)1〜99重量%および、前記(b1)以外の11以下の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する熱可塑性樹脂(b2)1〜99重量%からなる樹脂組成物(B)層からなる。
【0016】
バリア性樹脂組成物(A)層と樹脂組成物(B)層との多層構成とすることで、樹脂組成物(B)層が有するタンク本体との熱融着性や、バリア性樹脂組成物(A)層との接着性、良好な機械強度およびバリア性樹脂組成物(A)層が有するガソリンバリア性、耐有機溶剤性および耐衝撃性を併せ持つ燃料容器用多層成形部品を得ることが可能である。
【0017】
本発明に用いられるEVOH(a1)としては、エチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られるものが好ましく、エチレン含有量は5〜60モル%である。エチレン含有量の下限は好適には15モル%以上であり、より好適には20モル%以上であり、さらに好適には25モル%以上である。エチレン含有量の上限は好適には55モル%以下であり、より好適には50モル%以下である。エチレン含有量が5モル%未満の場合は溶融成形性が悪化する。一方、60モル%を超えるとバリア性が不足する。
【0018】
さらに、本発明に用いられるEVOH(a1)のビニルエステル成分のケン化度は85%以上である。ビニルエステル成分のケン化度は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは97%以上であり、最適には99%以上である。ケン化度が85%未満では、ガソリンバリア性、熱安定性が不充分となる。
【0019】
EVOH製造時に用いるビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。また、EVOHは共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有することができる。ここで、ビニルシラン系化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシランが挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。さらに、本発明の目的が阻害されない範囲で、他の共単量体、例えば、プロピレン、ブチレン、あるいは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルもしくは(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸またはそのエステル、および、N−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドンを共重合することも出来る。
【0020】
さらに、本発明の目的を阻外しない範囲でEVOH(a1)にホウ素化合物をブレンドすることもできる。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物の中でもオルトホウ酸が好ましい。
ホウ素化合物をブレンドする場合、ホウ素化合物の含有量は好ましくはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。ホウ素化合物の含有量がかかる範囲にあることで、加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOHを得ることができる。20ppm未満では加熱溶融時のトルク変動の抑制の改善効果が小さくなる虞があり、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
【0021】
また、本発明に用いられるEVOH(a1)に対し、アルカリ金属塩をアルカリ金属元素換算で5〜5000ppm含有させることも層間接着性等の改善のために効果的であることから好ましい。
アルカリ金属塩のより好適な含有量はアルカリ金属元素換算で20〜1000ppm、さらには30〜500ppmである。ここでアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、アルカリ金属塩としては、一価金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、燐酸塩、金属錯体等が挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。中でも酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸ナトリウムが好適である。
【0022】
また、本発明に用いられるEVOH(a1)に対し、リン酸化合物を、リン酸根換算で20〜500ppm、より好適には30〜300ppm、最適には50〜200ppm含有させることも好ましい。上記範囲でリン酸化合物を配合することにより、EVOH(a1)の熱安定性を改善することができる。特に、長時間にわたる溶融成形を行う際のゲル状ブツの発生や着色を抑制することができる。
【0023】
EVOH(a1)中に配合するリン酸化合物の種類は特に限定されるものではない。リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩としては第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていても良く、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。中でもリン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウムの形でリン化合物を添加することが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるEVOH(a1)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1〜50g/10分、より好適には0.3〜40g/10分、更に好適には0.5〜30g/10分である。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。これらのEVOH樹脂(a1)は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0025】
また本発明の目的を阻外しない範囲で熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、他の樹脂(ポリアミド、ポリオレフィンなど)、グリセリンやグリセリンモノステアレートなどの可塑剤をEVOH(a1)にブレンドすることもできる。また、高級脂肪族カルボン酸の金属塩またはハイドロタルサイト化合物などを添加することは、EVOH(a1)の熱による劣化を防ぐという観点から有効である。
【0026】
ここで、ハイドロタルサイト化合物としては、特に、MxAly(OH)2x+3y-2z(A)z・aH2O(MはMg、CaまたはZn、AはCO3またはHPO4、x、y、z、aは正数)で示される複塩であるハイドロタルサイト化合物を挙げることができる。特に好適なものとして以下のハイドロタルサイト化合物が例示される。
【0027】
Mg6Al2(OH)16CO3・4H2
Mg8Al2(OH)20CO3・5H2
Mg5Al2(OH)14CO3・4H2
Mg10Al2(OH)22(CO32・4H2
Mg6Al2(OH)16HPO4・4H2
Ca6Al2(OH)16CO3・4H2
Zn6Al6(OH)16CO3・4H2
Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2
【0028】
また、ハイドロタルサイト化合物として、特開平1−308439号(USP4954557)に記載されているハイドロタルサイト系固溶体である、[Mg0.75Zn0.250.67Al0.33(OH)2(CO30.167・0.45H2Oのようなものも用いることができる。
【0029】
高級脂肪族カルボン酸の金属塩とは、炭素数8〜22の高級脂肪酸の金属塩をいう。炭素数8〜22の高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸などが挙げられる。金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウムなどが挙げられる。このうちマグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属が好適である。
【0030】
これらの高級脂肪族カルボン酸の金属塩、またはハイドロタルサイト化合物の含有量は、EVOH(a1)100重量部に対して0.01〜3重量部が好ましく、より好適には0.05〜2.5重量部である。
【0031】
本発明に用いられる多層構造重合体粒子(a2)は、少なくとも硬質層とゴム層とを有する粒子であ、硬質層を最外層として有し、かつゴム層を内部に有する。ここでいうゴム層とは、ガラス転移温度(以下、Tgと称することがある)が25℃以下の重合体層、硬質層とはTgが25℃より高い重合体層を意味する。多層構造重合体粒子は2層で構成されていても良く、3層で構成されていても良く、また、4層以上で構成されても良い。2層構造の場合は、ゴム層(中心層)/硬質層(最外層)の構成であり、3層構造の場合は、硬質層(中心層)/ゴム層(中間層)/硬質層(最外層)、ゴム層(中心層)/ゴム層(中間層)/硬質層(最外層)またはゴム層(中心層)/硬質層(中間層)/硬質層(最外層)の構成であり、4層構造の場合には、例えば、ゴム層(中心層)/硬質層(中間層)/ゴム層(中間層)/硬質層(最外層)の構成である。
【0032】
本発明に用いられる多層構造重合体粒子(a2)のゴム層は、アクリル系ゴム、共役ジエン系重合体または共役ジエン系重合体の水素添加物から構成され、構成するのに好ましい重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体、この共役ジエン系重合体の水素添加物、ポリアクリル酸エステルなどのアクリル系ゴムが挙げられ、これらは1種または2種以上で使用される
【0033】
アクリル系ゴムは、アクリル酸エステルを重合させて形成される。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル等のアクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。中でも、アクリル酸ブチルまたはアクリル酸エチルが好ましい。
【0034】
アクリル系ゴムまたは共役ジエン系重合体は、主として、アクリル酸アルキルエステルおよび/または共役ジエン系化合物からなる単量体系を重合して製造される。このアクリル系ゴムまたは共役ジエン系重合体は、必要に応じて、上記単量体に加えて、他の単官能の重合性単量体を共重合させて得ることもできる。共重合させ得る他の単官能の単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ナフチル、メタクリル酸イソボルニル等のメタクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等が挙げられる。他の単官能の重合性単量体は、ゴム層を形成する重合性単量体全体の20重量%以下が望ましい。
【0035】
本発明で用いられる多層構造重合体粒子(a2)の一部を形成するゴム層は、ゴム弾性を発現させるために架橋した分子鎖構造を有していることが好ましく、また、ゴム層の分子鎖とそれに隣接する層中の分子鎖が化学結合によりグラフトされていることが好ましい。そのためには、ゴム層を形成させるための単量体系の重合において、少量の多官能の重合性単量体を架橋剤またはグラフト剤として併用することが好ましい場合がある。
【0036】
多官能の重合性単量体は、分子内に炭素−炭素間二重結合を2個以上有する単量体をいい、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸とアリルアルコ−ル、メタアリルアルコ−ル等の不飽和アルコ−ルまたはエチレングリコ−ル、ブタンジオ−ル等のグリコ−ルとのエステル;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸等のジカルボン酸と前記の不飽和アルコールとのエステルなどが包含される。多官能の重合性単量体の具体的な例は、アクリル酸アリル、アクリル酸メタアリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸メタアリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタアリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ブタンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト等が例示される。なお、前記の用語「ジ(メタ)アクリレ−ト」は、「ジアクリレ−ト」と「ジメタクリレ−ト」との総称を意味する。これらは、単独でも用いられ、複数種を組み合わせても用いられる。中でも、メタクリル酸アリルが好適に用いられる。
【0037】
多官能の重合性単量体の使用量は、ゴム層を形成する重合性単量体全体の10重量%以下に止めることが好ましい。これは、多官能の重合性単量体の量が多すぎると、ゴムとしての性能を低下させ、ひいては熱可塑性樹脂組成物の柔軟性を低下させると考えられるからである。なお、共役ジエン系化合物を主成分とする単量体系を用いる場合には、それ自体が架橋あるいはグラフト点として機能するため、必ずしも多官能の重合性多量体を併用しなくても良い。
【0038】
本発明において硬質層は、メタクリル酸メチルまたはスチレンの単独もしくはそれを主成分とする2種以上のラジカル重合性単量体の組み合わせから形成され、使用され得るラジカル重合性単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキル;メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸アダマンチル等の脂環骨格を有するメタクリル酸エステル;メタクリル酸フェニル等の芳香環を有するメタクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等が例示される。これらのラジカル重合性単量体は、単独でも、複数種を組み合わせても用いられる
【0039】
本発明において多層構造重合体粒子が水酸基に対して反応性または親和性を有する少なくとも1種の官能基を有する場合、EVOH中への多層構造重合体粒子の分散性が向上し、得られるバリア性樹脂組成物(A)層の衝撃強度がより良好となる。従って、多層構造重合体粒子を製造するための重合反応において、単量体の一部として、水酸基に対して反応性もしくは親和性を有する官能基またはそれが保護された形の官能基を有するラジカル重合性化合物を使用することが好ましい。
【0040】
多層構造重合体粒子の上記官能基を形成させるために好ましく用られ、水酸基との反応性もしくは親和性を有する共重合可能な化合物としては、下記の混和条件下で、EVOH中の水酸基と反応して化学結合を生ずることのできる基もしくは水酸基と水素結合のような分子間結合を生ずることのできる基を有する不飽和化合物などが挙げられる。上記の水酸基に対して反応性もしくは親和性を有する官能基としては、例えば、水酸基、エポキシ基、イソシアネ−ト基(−NCO)、カルボキシル基などの酸基、無水マレイン酸から誘導されるような酸無水物基、下記の混和条件で保護基がはずれ、前記のいずれかの基に変化するような基などが挙げられる。
【0041】
その具体例は、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、クロトン酸2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン等の水酸基を有する重合性化合物;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエ−テル、3,4−エポキシブテン、4,5−エポキシペンチル(メタ)アクリレ−ト、10,11−エポキシウンデシルメタクリレ−ト、p−グリシジルスチレン等のエポキシ基含有重合性化合物;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、アコニチン酸、メザコン酸、メチレンマロン酸等のカルボン酸等である。なお、前記の用語「ジ(メタ)アクリレ−ト」は、「ジアクリレ−ト」と「ジメタクリレ−ト」との総称を意味し、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」と「メタクリル酸」との総称を意味する。
【0042】
上記の水酸基に対して反応性もしくは親和性を有する官能基の中でも、カルボキシル基などの酸基、無水マレイン酸から誘導される酸無水物基、エポキシ基が好ましい。中でもカルボキシル基などの酸基またはエポキシ基が特に好ましい。カルボキシル基などの酸基としては、メタクリル酸、アクリル酸が例示され、エポキシ基としてはメタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0043】
水酸基に対して反応性もしくは親和性を有する官能基またはそれが保護された形の官能基を有するラジカル重合性化合物の使用量は、多層構造重合体粒子を製造するための単量体全体に対して0.01〜75重量%であることが好ましく、0.1〜40重量%であることがより好ましい。なお、上記の保護基は、後述するようなEVOHとの混和条件ではずれ、前記官能基を与えるような基であり、本発明の目的が阻害されない基であれば良い。保護された官能基を有するラジカル重合性化合物としては、メタクリルカルバミン酸t−ブチル等が挙げられる。
【0044】
多層構造重合体粒子が水酸基に対して反応性または親和性を有する官能基を有するものである場合、この官能基は最外層である硬質層中の分子鎖上に存在するのが好ましい。しかし、EVOHとの樹脂組成物の形において、この官能基がEVOH中の水酸基と実質的に反応し得るか、または分子間結合を形成し得る限りにおいて、多層構造重合体粒子の各層(最外層、中間層、内層)のいずれに存在しても良い。
【0045】
多層構造重合体粒子におけるゴム層の含量は50〜90重量%の範囲内であることが好ましい。ゴム層を形成する重合体部分の量が少なすぎると柔軟性が不足し、最外層を形成する重合体部分の量が少なすぎると多層構造重合体粒子のハンドリング性が低下する。
【0046】
本発明に用いられる多層構造重合体粒子を製造するための重合法については、特に制限がなく、例えば、通常の乳化重合法に準じることにより、球状の多層構造重合体粒子を容易に得ることが出来る。乳化重合は、当業者が通常用いる手段に従って行われ、必要に応じて、オクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン等の連鎖移動剤を用いることが出来る。なお、乳化重合後、当業者が通常用いる方法(例えば、凝固、乾燥などの方法)に従って、ポリマーラテックスから多層構造重合体粒子が分離され、取得される。
【0047】
この際、得られる多層構造重合体粒子の個々の平均粒子径については、特に制限はないが、平均粒子径が小さすぎると多層構造重合体粒子のハンドリング性が低下し、逆に大きすぎると、バリア性樹脂(A)層の衝撃強度の改善効果が少なくなる。従って、個々の多層構造重合体粒子の平均粒子径は0.02〜2μmの範囲内とすることが好ましく、0.05〜1.0μmの範囲内とすることがより好ましい。また、製造される多層構造重合体粒子の形態についても特に制限されることはなく、例えば、多層構造重合体粒子が相互に最外層部分で融着あるいは凝集した状態のペレット状、パウダー状またはグラニュー状などの形態(以下、集合粒子ということがある)でも良い。完全に独立した形態および集合粒子のいずれの形態であっても良い。
【0048】
EVOH中における多層構造重合体粒子の分散状態には、特に制限はない。個々の多層構造重合体粒子が完全に独立した形態で均一に分散している状態、複数個の多層構造重合体粒子が相互に融着あるいは凝集してなる集合粒子の形態で均一に分散している状態、あるいは、完全に独立した粒子と集合粒子とが均一に分散している状態などのいずれの状態でも良い。分散された状態の多層構造重合体粒子は、完全に独立した形態および集合粒子の形態を含めて、平均粒子径が10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。0.03〜1μmの範囲内の平均粒子径を有する粒子の状態でEVOH中に均一に分散していることが特に好ましい。分散する粒子の粒径が10μmを超えると、多層構造重合体粒子がEVOHのマトリックス中に均一に分散しにくくなり、結果としてバリア性樹脂(A)層の衝撃強度が低下する。また、バリア性樹脂(A)の作成方法としては、EVOH(a1)からなる粉体と、多層構造重合体粒子(a2)をドライブレンドしたものであっても良い。しかしながら、EVOH(a1)および多層構造重合体粒子(a2)からなるバリア性樹脂(A)が安定したモルフォロジーを得ることができ、バリア性樹脂(A)層の耐衝撃性を大きく改良する観点からは、両者を溶融混練により混合することが好ましい。
【0049】
本発明に用いられる樹脂組成物(B)層は、カルボン酸変性ポリオレフィンおよびボロン酸変性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(b1)1〜99重量%および、前記(b1)以外の11以下の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する熱可塑性樹脂(b2)1〜99重量%からなる。
【0050】
上記(b1)として用いられるカルボン酸変性ポリオレフィンとは、オレフィン、特にα−オレフィンと不飽和カルボン酸またはその無水物とからなる共重合体のことをいい、分子中にカルボキシル基を有するポリオレフィンおよびポリオレフィン中に含有されるカルボキシル基の全部あるいは一部が金属塩の形で存在しているものも含まれる。カルボン酸変性ポリオレフィンのベースとなるポリオレフィンとしては、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)など)、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の各種ポリオレフィンが挙げられる。これらの中でも樹脂組成物(B)層としての機械強度および耐久性の観点から、HDPE、LDPE、LLDPE、VLDPEが好ましい。
【0051】
不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタアクリル酸、エタアクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸などが例示され、特にアクリル酸あるいはメタアクリル酸が好ましい。不飽和カルボン酸の含有量は、好ましくは0.5〜20モル%、より好ましくは2〜15モル%、さらに好ましくは3〜12モル%である。不飽和カルボン酸無水物としては無水イタコン酸、無水マレイン酸等が例示され、特に無水マレイン酸が好適である。不飽和カルボン酸無水物の含有量としては、好ましくは0.0001〜5モル%、より好ましくは0.0005〜3モル%、更に好ましくは0.001〜1モル%である。これらの不飽和カルボン酸またはその無水物の中でも、バリア性樹脂組成物(A)層との層間接着性の観点から、無水マレイン酸を用いることが好ましい。すなわち、カルボン酸変性ポリオレフィンとして、α−オレフィンおよび無水マレイン酸の共重合体を用いることが特に好ましい。
【0052】
また、共重合体に含有されても良い他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸イソブチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などが例示される。
【0053】
カルボン酸変性ポリオレフィンの金属塩における金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの遷移金属が例示される。カルボン酸変性ポリオレフィンの金属塩における中和度は、100%未満、特に90%以下、さらに70%以下の範囲が望ましい。中和度の下限値については、通常5%以上、特に10%以上、さらには30%以上が望ましい。
【0054】
本発明に用いられるカルボン酸変性ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)の下限は0.01g/10分であり、好適には0.05g/分以上であり、より好適には0.1g/10分以上である。また、MFRの上限は50g/10分以下、より好適には30g/10分以下、最適には10g/10分以下であることが望ましい。これらのカルボン酸変性ポリオレフィンは、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0055】
本発明で用いられるボロン酸変性樹脂(b1)とは、ボロン酸基、ボリン酸基および水の存在下でボロン酸基またはボリン酸基に転化しうるホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する樹脂である。すなわち、ボロン酸基、ボリン酸基あるいは水の存在下でボロン酸基またはボリン酸基に転化しうるホウ素含有基からなる群より選ばれる少なくとも一つの官能基がホウ素−炭素結合により主鎖、側鎖または末端に結合した樹脂である。
【0056】
またホウ素−炭素結合の炭素は後述する樹脂のベースポリマーに由来するもの、あるいはベースポリマーに反応させるホウ素化合物に由来するものである。ホウ素−炭素結合の好適な例としては、ホウ素と主鎖あるいは末端あるいは側鎖のアルキレン基との結合が挙げられる。本発明においてはボロン酸基を有する樹脂が好適であるので、以下この点について説明する。本発明において、ボロン酸基とは、下記式(I)で示されるものである。
【0057】
【化1】
Figure 0004566362
【0058】
また水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基(以下単にホウ素含有基と略記する)としては、水の存在下で加水分解を受けて上記式(I)で示されるボロン酸基に転化しうるホウ素含有基であれば、どのようなものでも良いが、代表例として下記一般式(II)で示されるボロンエステル基、下記一般式(III)で示されるボロン酸無水物基、下記一般式(IV)で示されるボロン酸塩基が挙げられる。
【0059】
【化2】
Figure 0004566362
【0060】
【化3】
Figure 0004566362
【0061】
【化4】
Figure 0004566362
【0062】
{式中、X,Yは水素原子、脂肪族炭化水素基(炭素数1〜20の直鎖状、または分岐状アルキル基、またはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など)を表し、X,Yは同じ基でも良いし、異なっていても良い。またXとYは結合していても良い。ただしX,Yがともに水素原子である場合は除かれる。またR1,R2,R3は上記X,Yと同様の水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基を表し、 R1,R2,R3は同じ基でも良いし、異なっていても良い。またMはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わす。また上記のX,Y,R1,R2,R3には他の基、たとえばカルボキシル基、ハロゲン原子などを有していても良い。
【0063】
一般式(II)〜(IV)で示されるボロン酸エステルの具体例としては、ボロン酸ジメチルエステル基、ボロン酸ジエチルエステル基、ボロン酸ジプロピルエステル基、ボロン酸ジイソプロピルエステル基、ボロン酸ジブチルエステル基、ボロン酸ジヘキシルエステル基、ボロン酸ジシクロヘキシル基、ボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基(ボロン酸1,2−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基)、ボロン酸トリメチレングリコールエステル基、ボロン酸ネオペンチルグリコールエステル基、ボロン酸カテコールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基、ボロン酸トリメチロールエタンエステル基等のボロン酸エステル基;ボロン酸無水物基;ボロン酸のアルカリ金属塩基、ボロン酸のアルカリ土類金属塩基等が挙げられる。なお前記の水の存在下でボロン酸基またはボリン酸基に転化しうるホウ素含有基とは、ポリオレフィンを、水または水と有機溶媒(トルエン、キシレン、アセトンなど)との混合液体中で、反応時間10分〜2時間、反応温度25℃〜150℃の条件下に加水分解した場合に、ボロン酸基またはボリン酸基に転化しうる基を意味する。
【0064】
前記官能基の含有量は特に制限はないが、0.0001〜1meq/g(ミリ当量/g)が好ましく、特に、0.001〜0.1meq/gが好ましい。
【0065】
ボロン酸基、ボリン酸基および水の存在下でボロン酸基またはボリン酸基に転化しうるホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する樹脂のベースポリマーを構成するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、3−メチルペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の瘁|オレフィン類で代表されるオレフィン系単量体等や、スチレン、皹メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、t−ブトキシスチレン等のスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類などのビニル基含有芳香族化合物;インデン、アセナフチレン等のビニレン基含有芳香族化合物などに例示されるビニル芳香族化合物、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等に代表される共役ジエン化合物などが挙げられる。
【0066】
ベースポリマーはこれらの単量体の一種または二種あるいは三種以上からなる重合体として使用される。これらのベースポリマーのうち、特にエチレン系重合体{超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体の金属塩(Na,K,Zn系アイオノマー)、エチレン−プロピレン共重合体}、およびビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体が好適なものとして挙げられる。
【0067】
次に本発明に用いる、ボロン酸基、ボリン酸基および水の存在下でボロン酸基またはボリン酸基に転化しうるホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する樹脂の代表的製法について述べる。ボロン酸基、ボリン酸基および水の存在下でボロン酸基またはボリン酸基に転化しうるホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する樹脂は、窒素雰囲気下で炭素−炭素二重結合を有する樹脂にボラン錯体およびホウ酸トリアルキルエステルを反応させることによって、ボロン酸ジアルキルエステル基を有する樹脂を得た後、水あるいはアルコール類を反応させることによって得られる。この製法において原料として末端に二重結合を有する樹脂を使用すれば、末端にボロン酸基あるいは水の存在によりボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する樹脂が得られ、側鎖または主鎖に二重結合を有する樹脂を原料として使用すれば、側鎖にボロン酸基あるいは水の存在によりボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有する樹脂を得られる。
【0068】
原料の二重結合を有する樹脂の代表的製法としては、(1)通常のオレフィン系重合体の末端に微量に存在する二重結合を利用する方法;(2)通常のオレフィン系重合体を無酸素条件下、熱分解し、末端に二重結合を有するオレフィン系重合体を得る製法;(3)オレフィン系単量体とジエン系重合体の共重合によりオレフィン系単量体とジエン系単量体との共重合体を得る製法;(4)ビニル芳香族化合物と共役ジエン系単量体との共重合体を得る方法;などが挙げられる。1)については、公知のオレフィン系重合体の製法を用いることができるが、特に、連鎖移動剤として水素を用いず、重合触媒としてメタロセン系重合触媒を用いる製法(例えば、DE4030399)が好ましい。(2)については、公知の方法(例えば、US2835659,3087922)によりオレフィン系重合体を窒素雰囲気下や真空条件下等の無酸素条件下で300℃〜500℃の温度で熱分解することによって得られる。(3)については公知のチーグラー系触媒を用いたオレフィン−ジエン系重合体の製法(例えば、特開昭50−44281、DE3021273)を用いることができる。
【0069】
上記の(1)および(2)の方法で得られた二重結合を有するオレフィン系重合体を原料とすることで、末端にボロン酸基、ボリン酸基および水の存在下でボロン酸基またはボリン酸基に転化しうるホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基が結合したポリオレフィンが得られる。また、(3)の方法で得られた二重結合を有するオレフィン系重合体および(4)の方法で得られるビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物からなる共重合体を原料とすることで、前記官能基が側鎖に結合した樹脂が得られる。
【0070】
ボラン錯体としては、ボラン−テトラヒドロフラン錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−ピリジン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体、ボラン−トリエチルアミン等が好ましい。これらのなかで、ボラン−トリエチルアミン錯体およびボラン−トリメチルアミン錯体がより好ましい。ボラン錯体の仕込み量はベースポリマーの二重結合に対し、1/3当量から10当量の範囲が好ましい。ホウ酸トリアルキルエステルとしては、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリブチルボレート等のホウ酸低級アルキルエステルが好ましい。ホウ酸トリアルキルエステルの仕込み量はオレフィン系重合体の二重結合に対し1から100当量の範囲が好ましい。溶媒は特に使用する必要はないが、使用する場合は、ヘキサン、ヘブタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の飽和炭化水素系溶媒が好ましい。
【0071】
導入する反応は、反応温度25℃〜300℃、好ましくは100〜250℃、反応時間1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間行うのが良い。
【0072】
水あるいはアルコール類を反応させる条件としては通常、トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒を反応溶媒として用い、水またはメタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1.3−プロパンジオール、ネオペンテルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコール類をボロン酸基に対し、1〜100等量以上の大過剰量を用い、25℃〜150℃の温度で1分〜1日程度反応を行うことによって得られる。なお、前記の官能基の中でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基とは、水または水と有機溶媒(トルエン、キシレン、アセトンなど)との混合溶媒中で、反応時間10分〜2時間、反応温度25℃〜150℃の条件下に加水分解した場合に、ボロン酸基に転化しうる基を意味する。
【0073】
前記(b1)としてボロン酸変性樹脂を用いる場合は、前記(b2)が高密度ポリエチレンである場合は、高密度ポリエチレンとの相容性の観点からは、ポリエチレンをベースポリマーとすることが好ましい。特に、末端にボロン酸基、ボリン酸基および水の存在下でボロン酸基またはボリン酸基に転化しうるホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有するポリエチレンが好ましい。一方、バリア性樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)層の層間接着性の改善効果を重視する場合は、側鎖にボロン酸基、ボリン酸基および水の存在下でボロン酸基またはボリン酸基に転化しうるホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する樹脂を用いることが好ましい。この様なベースポリマーとしてはビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物からなる共重合体が好ましい。特にガソリンとの接触の可能性が大きい場合は、末端にボロン酸基、ボリン酸基および水の存在下でボロン酸基またはボリン酸基に転化しうるホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する、ボロン酸変性ポリエチレンの方が好適である。
【0074】
また、前記(b2)として用いられる溶解性パラメーターが11以下の熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である。燃料容器本体の最外層は通常ポリオレフィン系樹脂であるため、熱可塑性樹脂(b2)の溶解性パラメーターが11を超える場合は、本発明の燃料容器用成形部品のタンク本体との熱融着性が不充分となる。ポリオレフィン系樹脂としては、高密度もしくは低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1などのα−オレフィンの単独重合体、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1などから選ばれたα−オレフィン同士の共重合体などが例示される。また、スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS)、スチレン−イソブチレンとのブロック共重合体、スチレン−ブタジエンとの共重合体あるいはスチレン−イソプレンとのブロック共重合体等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂(b2)として、上記に例示した樹脂をそれぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0075】
これらの11以下の溶解度パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する熱可塑性樹脂(b2)の中でも、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、高密度ポリエチレンを用いることがより好ましい。高密度ポリエチレンの密度は0.93g/cm3以上であることが好適であり、より好適には0.935g/cm3以上であり、さらに好適には0.94g/cm3以上である。
【0076】
本発明に用いられる高密度ポリエチレンの好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)の下限は0.01g/10分であり、好適には0.05g/分以上であり、より好適には0.1g/10分以上である。また、MFRの上限は50g/10分以下であることが好ましく、より好適には30g/10分以下、最適には10g/10分以下であることが望ましい。
【0077】
上述の通り、本発明に用いられる樹脂組成物(B)層はカルボン酸変性ポリオレフィンおよびボロン酸変性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(b1)1〜99重量%および、前記(b1)以外の11以下の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する熱可塑性樹脂(b2)1〜99重量%からなる樹脂組成物である。
【0078】
前記(b1)がカルボン酸変性ポリオレフィンからなる場合、(B)層は(b1)10〜90重量%および(b2)10〜90重量%からなる樹脂組成物であることが、バリア性樹脂組成物(A)層との層間接着性の観点から好ましい。(B)層の組成は、(b1)20〜80重量%および(b2)20〜80重量%であることがより好ましく、(b1)30〜70重量%および(b2)30〜70重量%であることが特に好ましい。
【0079】
一方、前記(b1)がボロン酸変性樹脂からなる場合は、(B)層は(b1)5〜95重量%および(b2)5〜95重量%からなる樹脂組成物であることが、(B)層の機械強度と、(B)層および(A)層の層間接着性とのバランスの観点から好ましい。(B)層の組成は、(b1)5〜80重量%および(b2)20〜95重量%であることがより好ましく、(b1)5〜60重量%および(b2)40〜95重量%であることが特に好ましい。
【0080】
前記樹脂(b1)および前記樹脂(b2)をブレンドして樹脂組成物(B)を得る方法に関しては、特に限定されるものではなく、前記樹脂(b1)からなるペレットおよび前記樹脂(b2)からなるペレットをドライブレンドしてそのまま溶融成形に供することもできるし、より好適にはバンバリーミキサー、単軸又は二軸スクリュー押出し機などで混練し、ペレット化してから溶融成形に供することもできる。分散状態を均一なものとし、ゲル、ブツの発生や混入を防止するためには、混練ペレット化操作時に混練度の高い押出機を使用し、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが望ましい。
【0081】
また、本発明の多層成形部品において、バリア樹脂組成物(A)層および/または樹脂組成物(B)層が無機フィラー1〜50重量%を含有してなることも好ましい。本発明で用いられる無機フィラーの好ましい例としては、マイカ、セリサイト、ガラスフレークおよびタルクなどが挙げられ、特に限定されるものではない。これらの無機フィラーは単独で用いることもできるし、また複数の混合物としても用いることが出来る。無機フィラーはバリア性樹脂組成物(A)層、樹脂組成物(B)層のいずれに加えても良く、両方に添加しても良い。バリア性樹脂組成物(A)層に無機フィラーを添加した場合、ガソリンバリア性が向上する観点で好適である。また、無機フィラーを樹脂組成物(B)層に添加した場合は、機械強度の向上や、ガソリンによる膨潤の低減に代表される耐有機溶剤性の向上などの改善効果を得ることが可能である。
【0082】
本発明における無機フィラーの含有量は1〜50重量%であることが好適であり、含有量の下限はより好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上であり、最適には15重量%以上である。また、含有量の上限はより好ましくは45重量%以下であり、更に好ましくは40重量%以下である。1重量%未満の場合、機械強度やガソリンバリア性の向上などの改善効果が不満足なものとなる虞がある。一方、50重量%を超える場合は成形時に流動異常が生じ易くなり、ヒケ、ウェルドライン等の原因となり、外観良好な成形品を得ることが出来ない虞がある。
【0083】
本発明に用いられるバリア性樹脂組成物(A)層、樹脂組成物(B)層の少なくとも一方が無機フィラーを含む樹脂組成物である場合は、通常の溶融混練装置により各成分を溶融混練することにより容易に目的とする樹脂組成物を得ることができる。各成分をブレンドする方法は特に限定されるものではないが、単軸または二軸スクリュー押出機などで溶融混錬し、ペレット化し乾燥する方法等が挙げられる。溶融配合操作においては、ブレンドが不均一になったり、ゲル、ブツが発生、混入したりする可能性があるので、ブレンドペレット化はなるべく混練度の高い押出機を使用し、ホッパー口を窒素ガスでシールし、低温で押出しすることが望ましい。
【0084】
本発明の燃料容器用多層成形品の層構成は特に限定されないが、バリア性樹脂組成物(A)層をA、樹脂組成物(B)層をBとした場合、(外)A/B(内)、(外)B/A(内)、(外)B/A/B(内)、(外)B/A/B/A/B(内)などが好適なものとして例示される。特に、本発明の燃料容器用多層成形部品が二色成形機で成形される場合は、成形のし易さの観点からA/B構成が好適である。一方、共射出成形で成形される場合は、成形のし易さ、金型の設計のし易さ、コストメリットなどの観点から、(外)A/B(内)、(外)B/A(内)、(外)B/A/B(内)の構成を有することが好適である。成形のし易さおよび金型の設計のし易さを特に重視する場合は、(外)A/B(内)あるいは(外)B/A(内)の2種2層構成を有することが特に好ましい。なお、ここで(内)は内層側、すなわち直接燃料と接触する側の層を指す。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、樹脂組成物(B)層は複層構成であっても良く、接着性樹脂層とポリオレフィン系樹脂層を含む複層構成や、樹脂組成物(B)層とバリア性樹脂組成物(A)をブレンドしてなる樹脂組成物層(回収層など)とポリオレフィン系樹脂層を含む複層構成であっても良い。
【0085】
各層厚みについては特に限定されない。バリア性樹脂組成物(A)層のガソリンバリア性は、前記(A)に含まれるEVOH(a1)の量によって変化するため、多層成形部品が要求されるガソリンバリア性能、およびバリア性樹脂組成物(A)が有するガソリンバリア性を考慮して、(A)層の厚みを設定することが好ましい。さらに、射出成形時の成形のし易さという観点からはある程度の厚みが必要である。本厚み構成はこの成形性によって設定することが必要である。
【0086】
また、上述の通り、成形のし易さおよび金型の設計のし易さを特に重視する場合は、本発明の多層成形部品は(A)層/(B)層の二種二層の層構成を持つことが好ましい。かかる層構成を有する場合は、(A)層の厚みは全層厚みの10〜90%であることが好ましく、20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがさらに好ましい。
【0087】
本発明の燃料容器用多層成形部品を得る方法としては、例えば、一般のポリオレフィンの分野における適切な成形方法が用いられるが、コネクター、キャップ、バルブなどに例示される燃料容器用多層成形部品は一般に形状が複雑になるため、多層射出成形方法により成形することが特に好適である。多層射出成形としては二色成形、インサート射出成形、共射出成形などが挙げられ、目的とする成形品の形状等により適宜選ばれ、特に限定されるものではない。また、上記の通り、成形のし易さおよび金型の設計のし易さを特に重視する場合は、本発明の多層成形部品は(A)層/(B)層の二種二層の層構成を持つことが好ましいが、かかる層構成を持つ多層成形品を製造する場合は、二色成形機を用いて製造することが好ましい。
【0088】
ここで、二色成形とは、例えば2組の射出機構を有する成形機を用い、単一の金型に溶融したバリア性樹脂組成物(A)もしくは樹脂組成物(B)を射出後、樹脂組成物(B)もしくはバリア性樹脂組成物(A)を射出するものである。二色成形は金型が反転する方式が従来から用いられているが、コアーバック方式なども適宜選ぶことが出来、特に限定されるものではない。金型反転方式の例としては、例えば(1)まずバリア性樹脂組成物(A)を射出後、金型を反転させ続いて樹脂組成物(B)を射出して、バリア性樹脂組成物(A)層/樹脂組成物(B)層の2層構成を得る方法、(2)まず樹脂組成物(B)を射出後、金型を反転させ続いてバリア性樹脂組成物(A)を射出して、バリア性樹脂組成物(A)層/樹脂組成物(B)層の2層構成を得る方法、(3)樹脂組成物(B)を射出後、金型を反転させてバリア性樹脂組成物(A)を射出、再度金型を反転させて樹脂組成物(B)を射出して、樹脂組成物(B)層/バリア性樹脂組成物(A)層/樹脂組成物(B)層の3層構成を得る方法などが挙げられるが特に限定はされない。
【0089】
インサート射出成形とは、例えば予め成形しておいた成形品を金型に装着後、射出成形を行うものである。例えば、予めバリア性樹脂組成物(A)からなる成形品もしくは樹脂組成物(B)からなる成形品を射出成形により得た後、これをインサート射出成形機に装着し、樹脂組成物(B)および/またはバリア性樹脂組成物(A)を射出して得られる、バリア性樹脂組成物(A)層/樹脂組成物(B)層の2層構成品、樹脂組成物(B)層/バリア性樹脂組成物(A)層/樹脂組成物(B)層の3層構成品等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0090】
共射出成形とは、例えば2台の射出シリンダーを有する成形機を用い単一の金型に1回の型締め操作を行い、溶融したバリア性樹脂組成物(A)および樹脂組成物(B)層をそれぞれの射出シリンダーより同心円状のノズル内にタイミングをずらして交互に射出すること、あるいは同心円状のノズル内に同時に射出することにより得られる。例えば(1)先に内外層用の樹脂組成物(B)層を射出し、次いで、中間層となるバリア性樹脂組成物(A)を射出して、樹脂組成物(B)層/バリア性樹脂組成物(A)層/樹脂組成物(B)層の3層構成の成形品を得る方法、あるいは(2)先に内外層用の樹脂組成物(B)層を射出し、次いでバリア性樹脂組成物(A)を射出して、それと同時にあるいはその後に樹脂組成物(B)層を再度射出し、樹脂組成物(B)層/バリア性樹脂組成物(A)層/樹脂組成物(B)層/バリア性樹脂組成物(A)/樹脂組成物(B)層の5層構成の成形品を得る方法などが挙げられるが、特に限定されない。
【0091】
本発明の燃料容器用成形部品とは、燃料容器本体に装着されて用いられる成形部品をいい、具体的には、燃料容器用コネクター、燃料容器用キャップ、燃料容器用バルブなどが挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、燃料容器用コネクターおよび燃料容器用バルブである。
【0092】
成形部品を燃料容器本体に装着する方法は特に限定されず、ねじ込み式、填め込み式による装着、および熱融着による装着が例示されるが、熱融着による装着が組み付け工数の減少および装着部分からの燃料漏れの抑制という観点から、特に好ましい。熱融着には一般的な手法が用いられ、ヒーターなどにより燃料容器本体および/または燃料容器用成形部品の融着面を加熱した後、融着を行う方法、燃料容器本体と当該成形部品を高周波融着する方法、および燃料容器本体と当該成形部品を超音波融着する方法などが例示されるが、これらに限定されない。
【0093】
成形部品コネクターとしての成型部品の使用態様としては、燃料容器本体に装着された燃料容器用コネクターとして使用する態様、さらにフレキシブルな燃料輸送用のパイプが装着される態様などが挙げられるが、これらに限定されない。このコネクターを燃料容器本体に装着する方法としては、ねじ込み式、填め込み式、熱融着による接合などが例示されるが、組み付け工数の減少および接合部分からの燃料漏れの抑制という観点から、熱融着により装着されることが好ましい。そのため、このコネクターは燃料容器本体との熱融着性に優れていることが特に好ましい。また、燃料容器本体とこのコネクターの装着部分からの燃料漏れを抑制するために、コネクターはガソリンバリア性に優れていることが特に好適である。さらに、コネクターは耐ストレスクラック特性、耐有機溶剤性に優れていることが、燃料容器用成形部品の長期連続使用性、すなわち製品寿命の観点から好適である。
【0094】
また、燃料容器用コネクターとしての好適な実施態様としては、燃料容器本体に接合された燃料容器用コネクターに、さらにフレキシブルな燃料輸送用のパイプが接合される。このため、車両走行時や、燃料容器からエンジンへの燃料の供給時、あるいは燃料供給口から燃料容器への燃料の受け入れ時など、燃料容器そのものの振動あるいは輸送パイプの振動によるコネクターへの連続的負荷が発生する。これらの観点から、燃料容器用コネクターは、耐衝撃性、耐ストレスクラック性、耐有機溶剤性に優れていることが望ましい。
【0095】
燃料容器用キャップは、給油口の閉蓋具として用いられる。その接合方法は特に限定されないが、ねじ込み式、填め込み式などが例示され、好ましくはねじ込み式である。現在、多くの燃料容器用キャップは金属製であるが、軽量化、リサイクルなどの観点から熱可塑性樹脂製のキャップが近年注目を集めている。また、給油口は給油管、燃料容器用コネクターを経て燃料容器本体と繋がっているが、従来、金属製の燃料容器用キャップから発生する錆による金属酸化物の燃料容器への混入が問題となっている。かかる観点からも、熱可塑性樹脂からなるキャップの存在意義は大きい。かかる燃料容器用キャップはガソリンバリア性、耐有機溶剤性、耐ストレスクラック特性に優れていることが好ましく、開閉を繰り返すことから、耐摩耗性等の機械強度にも優れていることがさらに好ましい。
【0096】
また、熱硬化性樹脂(C)からなる部品が、成形部品が装着された燃料容器本体に、成形部品を介して装着されてなる燃料容器も、本発明の実施態様として好適である。上記構成の燃料容器は、熱硬化性樹脂(C)からなる部品が機械強度および優れたガソリンバリア性を有し、かつ熱硬化性樹脂(C)からなる部品と燃料容器本体との装着部分に本発明の樹脂組成物からなる成形部品を介在させることにより、高いガソリンバリア性を付与することが出来る点で好適である。熱硬化性樹脂(C)としては、機械強度、ガソリンバリア性などの観点からポリメチレンオキサイド系樹脂を用いることが特に好適である。かかる構成によって燃料容器に装着される燃料容器用成形部品は特に限定されないが、燃料容器用圧抜きバルブが好適である。
【0097】
熱硬化性樹脂(C)からなる部品が、成形部品を介して燃料容器に装着される方法は特に限定されない。まず、燃料容器本体に成形部品を装着し、次にこの成形部品に熱硬化性樹脂(C)からなる燃料容器用部品をねじ込み式あるいは填め込み式などの方法で装着する方法、または、まず、熱硬化性樹脂(C)からなる部品に上記成形部品を装着し、ついで、これを燃料容器本体に装着する方法などが例示されるが、特に限定されない。
【0098】
成形部品を燃料容器本体に装着する方法は特に限定されない。ねじ込み式、填め込み式による装着、および熱融着による装着が例示されるが、熱融着による装着が組み付け工数の減少および装着部分からの燃料漏れの抑制という観点から、特に好ましい。
【0099】
熱硬化性樹脂(C)からなる部品に、成形部品を装着する方法は特に限定されない。ねじ込み式、填め込み式による方法が好適である。また、熱硬化性樹脂(C)からなる部品と燃料容器との接合面を本発明に用いる樹脂組成物で被覆する方法も好適である。熱硬化性樹脂(C)と本発明で用いられる樹脂組成物は一般的に接着性が小さいことから、熱硬化性樹脂(C)からなる部品の表面を、成形部品の機能を阻害しない範囲内で出来るだけ本発明に用いる樹脂組成物で被覆することが特に好適である。かかる構成を採用することにより、熱硬化性樹脂(C)からなる成形部品本体と、本発明の樹脂組成物との界面の剥離を抑制することが可能である。
【0100】
また、成形部品本体を、本発明に用いる樹脂組成物で被覆する方法は特に限定されないが、先に射出成形法などで作成した熱硬化性樹脂(C)からなる部品本体を金型内に設置し、これに射出成形機にて本発明の樹脂組成物を射出して被覆する方法(インサートインジェクション法)、あるいは熱硬化性樹脂(C)および本発明に用いる樹脂組成物を共射出成形する方法などが好適なものとして挙げられるが、インサートインジェクション法が特に好適である。
【0101】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0102】
(使用材料)
本発明の実施例および比較例の燃料容器用成形部品製造に用いた、樹脂および樹脂組成物を以下の表1に示す。
【0103】
【表1】
Figure 0004566362
【0104】
合成例1
多層構造重合体粒子(a−2)の合成
窒素雰囲気下、攪拌翼、冷却管および滴下ロートを装着した重合器に、蒸留水600重量部、乳化剤としてのラウリルザルコシン酸ナトリウム0.136重量部およびステアリン酸ナトリウム1.7重量部を加え、70℃に加熱して均一に溶解させた。次いで、同温度において、アクリル酸ブチル100重量部、アクリル酸エチル60重量部および多官能の重合性単量体としてのメタクリル酸アリル2.0重量部を加え、30分攪拌した後、ペルオキソ二硫酸カリウム0.15重量部を加えて重合を開始した。4時間後、ガスクロマトグラフィーで各単量体がすべて消費されたことを確認した。
【0105】
次いで、得られた共重合体ラテックスにペルオキソ二硫酸カリウム0.3重量部を加えた後、メタクリル酸メチル60重量部、メタクリル酸20重量部および連鎖移動剤としてのn−オクチルメルカプタン0.1重量部の混合物を滴下ロートより2時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で、さらに30分間反応を続け、各単量体が消費されたことを確認して重合を終了した。得られたラテックスの平均粒子径は0.20μmであった。これを−20℃に24時間冷却して凝集させた後、凝集物を取り出し、80℃の熱水で3回洗浄した。さらに、50℃で2日間減圧乾燥して、アクリル酸ブチルを主成分とするアクリル系ゴム(Tg=−44℃)の内層を有し、メタクリル酸メチルとメタクリル酸からなる硬質最外層(Tg=128℃)を有する2層構造の重合体粒子を得た。このようにして得られたラテックスにおける多層構造重合体粒子の粒子径の測定をレーザー粒径解析システムPAR−III(大塚電子株式会社)を用いて、動的光散乱法で行った結果、この多層構造重合体粒子の平均粒子径は、0.20μmであった。
【0106】
実施例1
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.5%、 MFR1.6g/10分(190℃−2160g荷重下)のEVOH(a−1)90重量部と、合成例1に従って作製した多層構造重合体粒子(a−2)10重量部とを二軸スクリュータイプのベント式押出機に入れ、窒素の存在下220℃で押出しペレット化を行いバリア樹脂(a−3)を得た。
【0107】
一方、MFR0.3g/10分(190℃−2160g荷重下 )、密度0.952g/cm3のポリエチレン(b−1)50重量%および無水マレイン酸変性ポリエチレン(b−2)(三井化学製「アドマーGT6A」)50重量%からなるブレンド物を以下の方法で得た。即ち、密度0.952g/cm3のポリエチレン(b−1)50重量部および無水マレイン酸変性ポリエチレン(b−2)50重量部を二軸スクリュータイプのベント式押出機に入れ、窒素の存在下220℃で押出しペレット化を行い樹脂組成物(b−4)のペレットを得た。
【0108】
バリア性樹脂組成物(A)として上記樹脂組成物ペレット(a−3)を用い、樹脂組成物(B)として上記樹脂組成物ペレット(b−4)を用い、(A)/(B)の層構成を有する2種2層の多層成形物を以下のようにして得た。
すなわち、上記作成したペレット(a−3)およびペレット(b−4)を二色成形機にそれぞれ仕込み、内径34mm、外径40mm、高さ75mmの、図1に示すような形状の2種2層の多層成形品を作製した。前記多層成形部品の断面図を図2に示す。層構成は(外)樹脂組成物(B)層/バリア性樹脂組成物(A)層(内)であり、各部位において厚み比を(外)55/45%(内)となるようにした。この多層成形品は燃料容器用コネクター類似の形状(以下、コネクター様成形品という)を有し、図3に示されるように、コネクター様成形品は容器本体胴部に設けられた開口部に装着されて用いられる。好適な実施態様では、コネクター様成形品41は、容器本体42に取り付けられ、コネクター様成形品41の口部にパイプ43が取り付けられる(図4)。
【0109】
一方、高密度ポリエチレン(HDPE: 三井化学製HZ8200B)を内外層とし、中間層としてEVOH(a−1)、更に接着性樹脂(無水マレイン酸変性LDPE、三井化学製アドマーGT5A)を用い、3種5層のダイレクトブロー成形機にて容量35リットル、表面積0.85m2のEVOH系多層タンクを作製した。本タンクの層構成は、(外)HDPE/接着性樹脂/EVOH(a−1)/接着性樹脂/HDPE(内)=2500/100/150/100/2500μmであった。
【0110】
上記多層タンクにコネクター装着のために直径50mmの開口部を2ヶ所あけた後、その開口部付近のタンク外表面部分および上記作製した2種2層のコネクター様成形品の双方を250℃の鉄板で40秒融解させた後に、圧着して熱融着させて、2個のコネクター様成形品付き多層タンクを得た。本多層成形品を融着させた多層タンクを用いて、以下の方法でガソリンバリア性を評価した。
【0111】
(1)ガソリンバリア性
得られた2ヶ所の開口部をもつ多層タンクに、30リッターのモデルガソリン(トルエン:イソオクタン=50/50体積%)を充填した。次いで、本コネクター様成形品の片側に直径60mm、厚さ0.5mmのアルミ板をエポキシ系接着剤にて強固に接着させた後、防爆型恒温恒湿槽(40℃−65%RH)にて60日後の重量減少量(n=5)を測定した(W)。対照として、多層タンクに使用した樹脂と同じ樹脂を用いて得られた多層シート(HDPE/接着性樹脂/EVOH(a−1)/接着性樹脂/HDPE=2100/100/600/100/1100μmを、コネクターと同様に2ヶ所の開口部に熱融着させたタンク(厚み1100μmのHDPE層側をタンク本体に熱融着)を用意し、同様にモデルガソリンの重量減少量を測定した(w)。本コネクター部からのガソリン減少量は以下の式(1)から算出した。
コネクターからのガソリン減少量 = W−w (1)
【0112】
また、以下の方法にしたがって、多層成形部品の耐衝撃性を評価した。
【0113】
(2)耐衝撃性
上記方法で作製された多層成形品を20℃−65%RHの条件下で20日間調湿した後、同じく20℃−65%RHに調湿された室内で、10mの高さからコンクリートの床に落下させた。落下後の多層成形品の外観を目視にて観察し、評価を行った。
【0114】
また、以下の方法に従って、バリア性樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)層との層間接着強度を評価した。
【0115】
(3)層間接着強度
バリア性樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)を用いて、突き当て型テストピースを二色成形機により作成した。バリア性樹脂組成物(A)からなる小片と樹脂組成物(B)からなる小片のそれぞれの大きさは、長さ120mm、幅50mm、厚さ2mmであり、それぞれの小片が80mm重なっている(図5)。この様なテストピースを使用し、オートグラフ(島津製AG−500A)を用いて180度剥離強度を求めた。
【0116】
(4)燃料タンクとの熱融着性
上記方法で作製された、コネクター様多層成形品が装着されたガソリンタンクのコネクター周辺部を、コネクターを中心に直径20cmで切り出し、コネクター様多層成形品が融着された多層シートを得た。前記の成形品が融着された多層シートを用いて、オートグラフ(島津製AG−500A)を用いて融着部が剥離する強度を求めた。すなわち、図6に示すように、成形品が融着された多層シートのシート部分を、治具(1)により押さえ、成形品部分を治具(2)を用いて多層シートと鉛直方向に引っ張り、多層シートと成形品が剥離する強度を測定した。
【0117】
本実施例においては、コネクター部分からのガソリン透過量は0.01g/2pieces・60days未満であり、良好なガソリンバリア性を示した。また、多層成形部品の耐衝撃性の評価結果は、A判定であった。さらに、層間接着強度の試験を行ったところ、(A)層と(B)層が剥離する前に(B)層の破断が生じるという、良好な層間接着性を示した。また、燃料タンクとの熱融着強度の試験においても、融着部は融着したままコネクター様多層成形品が断裂するという、良好な融着性を示した。
【0118】
実施例2
実施例1と同様に、バリア性樹脂組成物(A)として上記樹脂組成物ペレット(a−3)を用い、樹脂組成物(B)として上記樹脂組成物ペレット(b−4)を用い、それぞれの樹脂組成物ペレットを二色成形機に仕込み、実施例1と同様にして、2種2層の多層成形品を作製した。層構成は(外)バリア性樹脂組成物(A)/樹脂組成物(B)層(内)であり、各部位において厚み比を(外)45/55%(内)となるようにした。
得られた多層成形品を用いて、実施例1と同様にしてガソリンバリア性および耐衝撃性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0119】
合成例2
末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有する超低密度ポリエチレンの合成:(b−3)
冷却器、撹拌機および滴下ロート付きセパラブルフラスコに超低密度ポリエチレン{MFR7g/10分(210℃−荷重2160g)密度0.89g/cm3、末端二重結合量0.048meq/g}1000g、デカリン2500gを仕込み、室温で減圧することにより脱気を行った後、窒素置換を行った。これにホウ酸トリメチル78g、ボラン−トリエチルアミン錯体5.8gを添加し、200℃で4時間反応後、蒸留器具を取り付けさらにメタノール100mlをゆっくり滴下した。メタノール滴下終了後、減圧蒸留により、メタノール、ホウ酸トリメチル、トリエチルアミン等の低沸点の不純物を留去した。さらにエチレングリコール31gを添加し、10分間撹拌後、アセトンに再沈し、乾燥することにより、ボロン酸エチレングリコールエステル基量0.027meq/g、MFR5g/10分(210℃−荷重2160g)のボロン酸変性超低密度ポリエチレンを得た。
【0120】
実施例3
MFR0.3g/10分(190℃−2160g荷重下 )、密度0.952g/cm3のポリエチレン(b−1)50重量部、および合成例2に従って作製したボロン酸変性樹脂(b−3)50重量部を二軸スクリュータイプのベント式押出機に入れ、窒素の存在下220℃で押出しペレット化を行い、樹脂組成物(b−5)のペレットを得た。
【0121】
樹脂組成物(B)層として、上記作成した樹脂組成物(b−5)を用いた以外は、実施例1と同様にして、多層成形部品を作製し、ガソリンバリア性および耐衝撃性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
また、バリア性樹脂組成物(A)として樹脂組成物(a−3)、樹脂組成物(B)として(b−5)を用いて、上記の方法にしたがって接着強度の試験を行ったところ、(A)層と(B)層が剥離する前に(B)層の破断が生じるという、良好な層間接着性を示した。
【0122】
実施例4
樹脂組成物(B)層として、実施例3で作成した樹脂組成物(b−5)を用いた以外は、実施例2と同様にして、多層成形部品を作製し、ガソリンバリア性、耐衝撃性および熱融着性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0123】
比較例1
実施例1において、バリア性樹脂組成物(A)としてEVOH(a−1)のみを用いた以外は、実施例1と同様にして多層成形部品を作製し、ガソリンバリア性、耐衝撃性および熱融着性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
また、実施例1と同様にして二色成形のテストピースを作成し、層間接着強度を評価した結果、EVOH(a−1)((A)層)および組成物(b−4)((B)層)は良好な接着性を示し、(A)層と(B)層が剥離する前に(B)層の破断が生じた。
【0124】
比較例2
実施例1において、熱可塑性樹脂(B)として、(b−1)のみを用いた以外は実施例1と同様にして多層成形部品を作製し、ガソリンバリア性、耐衝撃性および熱融着性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
また、実施例1と同様にして二色成形のテストピースを作成したが、バリア性樹脂組成物(a−3)((A)層)およびポリエチレン(b−1)((B)層)は層間接着性に乏しく、オートグラフの治具への取付作業中に、(A)層と(B)層の間で剥離が生じた。
【0125】
比較例3
射出成形機を用いて、実施例1で作製したコネクター様成形品(図1)と同一の形状を有する、EVOH(a−1)からなる単層成形品を作製した。得られた単層成形品を用いて、上記方法にしたがって、ガソリンバリア性および耐衝撃性について評価した。結果を表2に示す。
また、実施例1と同様にして熱融着性の評価を試みたが、上記成形品は熱融着性に乏しく、オートグラフの治具への取付作業中に、成形品と多層シート(成形品が装着されたタンク本体から切り出されたもの)との間で剥離が生じた。
【0126】
比較例4
射出成形機を用いて、実施例1で作製したコネクター様成形品(図1)と同一の形状を有する、ポリエチレン(b−1)からなる単層成形品を作製した。得られた単層成形品を用いて、上記方法にしたがって、ガソリンバリア性、耐衝撃性および熱融着性について評価した。結果を表2に示す。
【0127】
【表2】
Figure 0004566362
【0128】
本発明の構成を有する実施例1〜4の多層成形部品は、ガソリンバリア性、耐衝撃性および熱融着性に優れていた。また、バリア性樹脂組成物(A)層と樹脂組成物(B)層との、層間接着性にも優れていた。
【0129】
これに対して、(A)層がEVOHのみからなる比較例1では、(A)層の耐衝撃性が不充分であった。また、(B)層がポリエチレンのみからなる比較例2では、(A)層と(B)層との層間接着性が不充分であり、多層成形部品の耐衝撃性が不満足なものとなった。
【0130】
また、成形品がEVOHのみからなる単層射出成形品である比較例3では、充分な耐衝撃性および熱融着性が得られなかった。更に、成形品がポリエチレンのみからなる単層射出成形品である比較例4では、充分なガソリンバリア性が得られなかった。
【0131】
【発明の効果】
ガソリンバリア性、耐衝撃性および熱融着性に優れた燃料容器用多層成形部品、ならびに当該成形部品が燃料容器本体に装着された燃料容器を提供することができる。かかる燃料容器は、特に自動車用ガソリンタンクとして用いることが特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 二色成形機により成形された多層成形品(コネクター様成形品)を示す図である。
【図2】 二色成形機により成形された多層成形品(コネクター様成形品)の断面図である。
【図3】 コネクター様成形品の使用形態を示す図である。
【図4】 コネクター様成形品の使用形態を示す図である。
【図5】 層間接着強度測定のための、テストピースの構造を示す図である。
【図6】 熱融着性の評価試験方法を示す模式図である。
【符号の説明】
31:燃料容器胴部の開口部に装着された多層成形部品(内層)
32:燃料容器胴部の開口部に装着された多層成形部品(外層)
33:燃料容器本体(外層)
34:燃料容器本体(中間層)
35:燃料容器本体(内層)
41:コネクター様成形品
42:容器本体
43:パイプ
51:バリア性樹脂組成物(A)からなる、テストピースの一部
52:樹脂組成物(B)からなる、テストピースの一部
61:コネクター様多層成形品
62:多層シート(成形品が装着された燃料容器本体の開口部周囲が切り取られたもの)
63:治具(1)
64:治具(2)

Claims (11)

  1. エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(a1)60〜95重量%および多層構造重合体粒子(a2)5〜40重量%からなるバリア性樹脂組成物(A)層と、カルボン酸変性ポリオレフィンおよびボロン酸変性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(b1)1〜99重量%および、前記(b1)以外の11以下の溶解性パラメーター(Fedorsの式から算出)を有する熱可塑性樹脂(b2)1〜99重量%からなる樹脂組成物(B)層とからなる燃料容器用多層成形部品であって、
    多層構造重合体粒子(a2)が、メタクリル酸メチルまたはスチレンの単独もしくはそれを主成分とする2種以上のラジカル重合性単量体の組み合わせから形成される硬質層を最外層として有し、かつアクリル系ゴム、共役ジエン系重合体または共役ジエン系重合体の水素添加物から構成されるゴム層を内部に有する多層構造重合体粒子であり、
    熱可塑性樹脂(b2)が、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂およびポリ塩化ビニル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である燃料容器用多層成形部品
  2. 熱可塑性樹脂(b2)が高密度ポリエチレンである請求項1記載の多層成形部品。
  3. バリア性樹脂組成物(A)層および/または樹脂組成物(B)層が無機フィラー1〜50重量%を含有してなる請求項1または2に記載の燃料容器用多層成形部品。
  4. 成形部品が、多層射出成形機により成形されている請求項1〜3のいずれかに記載の燃料容器用多層成形部品。
  5. 成形部品が、二色成形機、インサート射出成形機、または共射出成形機により成形されている請求項4記載の燃料容器用多層成形部品。
  6. 燃料容器用多層成形部品が燃料容器用コネクター、燃料容器用キャップまたは燃料容器用バルブであるである請求項1〜5のいずれかに記載の燃料容器用多層成形部品。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の燃料容器用多層成形部品が、樹脂組成物(B)層を介して燃料容器本体に装着されてなる燃料容器。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の燃料容器用成形部品が、熱融着によって燃料容器本体に装着されてなる燃料容器。
  9. 請求項1〜6のいずれかの項に記載の成形部品が装着された燃料容器に、熱硬化性樹脂(C)からなる部品が該成形部品を介して装着されている燃料容器。
  10. 熱硬化性樹脂(C)がポリメチレンオキサイドである、請求項9記載の燃料容器。
  11. 請求項7〜10のいずれかに記載の燃料容器からなる自動車用燃料タンク。
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