JP3850734B2 - 熱可塑性樹脂組成物および多層構造体 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物および多層構造体 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反応性の高い官能基を有するブロック共重合体および該ブロック共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物に関する。また、当該ブロック共重合体の製造方法および多層構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子材料の特性を保持しつつさらに機能を付与する目的で、高分子化合物に少量の反応性官能基を導入することが従来より行われている。熱可塑性エラストマーとして高い性能を持つスチレン−水添ジエンブロック共重合体についても、反応性官能基を導入する試みがなされており、他の樹脂との相容性、接着性などを改善するために、例えば水酸基、酸無水物基、ボロン酸基などを導入する技術が知られている。この目的に用いられる反応性官能基のうちでも、ボロン酸基およびそれに類するホウ素含有基はその反応性の高さの点で他の官能基よりも優れている。
【0003】
特開平7−25198号公報(米国特許第5571871号)には、ボロン酸基などのホウ素含有基を末端に有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体が記載されている。また、特開平6−340783号(米国特許第5466748号)には、それとエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記する)とからなる樹脂組成物が記載されている。これらの公報において、スチレン−水添ジエンブロック共重合体にホウ素含有基を導入する方法として記載されているのは、アニオン重合末端に付加する方法である。
【0004】
また、特開平9−263608号公報には、押出機中で、二重結合量を0.0001meq/g以上含有する熱可塑性樹脂にホウ素−水素結合を有するホウ素化合物を反応させ、次いで分子内に水酸基を1個または2個有し、かつ760mmHg下で沸点300℃以下の化合物を添加することを特徴とするホウ素含有熱可塑性樹脂の製造法が記載されている。上記二重結合を含有する熱可塑性樹脂として使用可能な樹脂として、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、イソプレン−スチレンブロック共重合体およびその水添物が例示されている。
【0005】
EVOHは、ガスバリアー性、耐油性、保香性に優れる材料であるが、一方で透湿性が大きい、高価であるなどの欠点があるために単独で使用しにくく、通常ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂との積層構造体として使用されている。しかしながら、これらの熱可塑性樹脂とEVOHとの接着性は悪く、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体などの通常の接着剤を用いて積層構造体としても、層間の界面剥離が起こる場合がある。
【0006】
この問題を解決するために、特開平7−329252号公報には、EVOH層および熱可塑性樹脂層を、ボロン酸基等のホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂からなる層を介して積層した積層構造体が記載されている。ここで使用されるホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水添物が例示されている。また、特開2001−164059公報(欧州特許第1090953号)には、層間接着性に優れたEVOH樹脂組成物として、アルカリ金属塩を金属元素換算で50〜500ppm含有させたEVOH樹脂組成物が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、重合体の末端に付加する方法では導入されるボロン酸基の量が限られるために、高分子量の重合体に適用される場合には、官能基を導入したことによる効果が充分に発現しないことがある。また、オレフィン性二重結合に付加する方法においても、通常のスチレン−水添ジエンブロック共重合体に適用した場合、残存オレフィン性二重結合の量が極めて少量であるために、同様の問題が発生する。一方、この問題を回避するために未水添ジエンブロックを含む共重合体を使用することが考えられるが、その場合には多量のボロン酸基が導入されることにより重合体がゲル化し、使用に適さなくなる。
【0008】
また、接着剤としてボロン酸基などを含有する熱可塑性樹脂を用いるとコストがかかるので、コストを下げるために該官能基を含有しない熱可塑性樹脂で希釈したもので代用しようとすると、EVOH層と熱可塑性樹脂層との層間接着力が不十分となる。さらに、ボロン酸基などを含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体を接着剤層として用いて他の樹脂と共押出成形したのでは、当該ブロック共重合体が弾性体であるために安定的に押出すことが困難であった。一方、EVOHにアルカリ金属塩を含有させる場合、EVOHの高温での熱安定性が低下し、例えばフィルムにしたときに着色、フィッシュアイ、縦筋などの外観不良や分解ガスによる臭気の問題が発生しやすくなる。
【0009】
しかして、本発明の目的は、充分な量のホウ素含有基が導入された、反応性の高いスチレン−水添ジエンブロック共重合体を得ることにある。また、本発明の目的は、ガスバリアー性に優れ、層間の界面剥離がなく、かつ高温での熱安定性に優れた積層体を提供することにもある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的は、ボロン酸基および水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)であって、該ブロック共重合体(A)に含有される前記官能基量が100〜2000μeq/gであり、かつ該ブロック共重合体(A)に含有されるスチレン単位と水添ジエン単位の重量比[(スチレン単位)/(水添ジエン単位)]が5/95〜70/30であることを特徴とするスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)により達成されることが見出された。
【0011】
本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)において、該共重合体に含有されるオレフィン性二重結合量は、2000μeq/g以下であることが好ましい。また、該共重合体(A)の水添ジエンブロックを構成するジエン単量体は、ブタジエンおよび/またはイソプレンであることが好ましい。さらに、該共重合体(A)に含有される官能基は、ボロン酸環状エステル基であることが好ましい。そしてさらに、該共重合体(A)の重量平均分子量は、1000〜1000000であることが好ましい。
【0012】
本発明は、原料のスチレン−水添ジエンブロック共重合体のオレフィン性二重結合に、ボロン酸基および水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を付加反応により導入することを特徴とする、前記スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)の製造方法をも包含する。このとき、原料のスチレン−水添ジエンブロック共重合体のジエンブロックの水添率が90〜98モル%であることが好適である。また、原料のスチレン−水添ジエンブロック共重合体と、ホウ素−水素結合を有するホウ素化合物とを押出機内で溶融混練する製造方法も好適である。
【0013】
また、本発明は、前記スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)とを、重量比[(A)/(B)]で1/99〜50/50の割合で含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(C)をも包含する。この場合において、熱可塑性樹脂(B)はポリオレフィン(B1)であることが好ましい。この熱可塑性樹脂組成物(C)の好適な用途は接着剤である。
【0014】
上記熱可塑性樹脂組成物(C)が、下記式(1)または下記式(2)のいずれか又は両方を満足することも好適である。
|α−β|≦0.25 (1)
|γ−δ|≦0.25 (2)
ただし、
α:ブロック共重合体(A)のジエンブロックの分岐度
β:ポリオレフィン(B1)の分岐度
γ:ブロック共重合体(A)のジエンブロックのメチル基由来水素含有率
δ:ポリオレフィン(B1)のメチル基由来水素含有率
【0015】
本発明は前記スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)層および(A)以外の熱可塑性樹脂(D)層からなる多層構造体を包含する。また、前記熱可塑性樹脂組成物(C)層および(A)以外の熱可塑性樹脂(D)層からなる多層構造体をも包含する。このとき、熱可塑性樹脂組成物(C)層に含まれる熱可塑性樹脂(B)がポリオレフィン(B1)であり、かつ熱可塑性樹脂(D)層を構成する熱可塑性樹脂(D)がポリオレフィン(D1)であることが好適である。さらに、前記ポリオレフィン(B1)およびポリオレフィン(D1)がいずれも、その構成成分として同一のα−オレフィンを50重量%以上含有するポリオレフィンであることがより好適である。
【0016】
このような多層構造体の好適な実施態様は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(E)層と、前記熱可塑性樹脂(D)層とを、前記熱可塑性樹脂組成物(C)層を介して積層してなる多層構造体である。このときエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)のアルカリ金属塩の含有量が金属元素換算で100ppm以下であることがより好適である。また、これらの多層構造体は共押出成形又は多層射出成形してなるものであることが好適である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明において、スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)は、少なくとも1つのスチレンブロックと、少なくとも1つの水添ジエンブロックとを含有するブロック共重合体である。このようなスチレン−水添ジエンブロック共重合体には、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、ブロックを4つ以上含有するマルチブロック共重合体が含まれる。各ブロックの結合形態に特に制限はなく、例えばスチレンブロックをS1、S2…、水添ジエンブロックをHD1、HD2…と表した時に、ジブロック共重合体としてはS1−HD1のブロック形態が、トリブロック共重合体としてはS1−HD1−S2、HD1−S1−HD2、S1−HD1−HD2などのブロック形態が、またマルチブロック共重合体としてはS1−HD1−S2−HD2、S1−HD1−HD2−S2などのブロック形態が挙げられる。スチレンブロックS1、S2…は同じであっても、また異なっていてもよく、同様に水添ジエンブロックHD1、HD2…は同じであっても、また異なっていてもよい。また、水添ジエンブロックは、2種以上の異なるジエン単量体からなる水添ジエンランダム共重合体ブロックまたは水添ジエンテーパー共重合体ブロックであってもよい。
【0018】
スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)は、トリブロック共重合体であることが好ましい。本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)は、単体あるいは(A)以外の熱可塑性樹脂(B)との樹脂組成物(C)の形で、接着剤として好適に用いられる。特に、EVOH(E)層とポリオレフィン(D1)層との層間接着性樹脂として用いた場合に優れた性能を発揮する。ここで、スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)として、トリブロック共重合体を使用する場合、両末端のスチレンブロックがポリオレフィンと非相容であるため、スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)のポリオレフィン(D1)層への移行が極めて効果的に抑制される。
【0019】
EVOH(E)層およびポリオレフィン(D1)層からなる多層構造体は、特に好適には食品包装容器として用いられる。このため、スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)としてトリブロック共重合体を使用することにより、接着性樹脂層から食品へ移行するブロック共重合体(A)の量を抑制し、内容物の衛生性を向上させることができる。
【0020】
本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)に含有される、スチレン単位と水添ジエン単位の重量比[(スチレン単位)/(水添ジエン単位)]は、5/95〜70/30であることが必要である。スチレン単位の量がこの範囲よりも少なくなると、ポリマー製造時の析出が困難となって、界面活性剤などの析出を制御するための添加剤が必要となり、経済的および衛生的観点から好ましくない。好適には10/90以上であり、より好適には15/85以上である。また、スチレン単位の量がこの範囲よりも多くなると、スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)の重要な特徴のひとつであるポリオレフィンとの相容性が低下する。好適には50/50以下であり、より好適には40/60以下であり、さらに好適には30/70以下である。
【0021】
本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)に含有されるオレフィン性二重結合量は、共重合体1gあたり0.002当量以下、すなわち2000μeq/g以下であることが好ましく、1500μeq/g以下であることがより好ましい。オレフィン性二重結合量が2000μeq/gを超える場合、該共重合体の熱安定性が低下する。
【0022】
スチレン−水添ジエンブロック共重合体は、公知の方法で製造することができる。例えば、アルキルリチウムなどを開始剤として、飽和炭化水素などの溶媒中でリビングアニオン重合してスチレン−ジエンブロック共重合体を得、次いで、均一系または不均一系の水添触媒を用いてジエンブロックのオレフィン性二重結合を水添する方法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。このとき、本発明の作用効果を阻害しない範囲内で、スチレン、ジエン以外の成分を共重合してもよい。
【0023】
本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)を構成するジエン単量体としては、スチレンとブロック共重合が可能なものであれば特に制限はなく、例えばブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどの共役ジエン類が挙げられる。これらの中でも、コストおよび生産性の観点からブタジエンとイソプレンが好ましい。ジエン単量体がブタジエンである場合、ブタジエン単位における1,2/1,4結合比率は20/80〜100/0の範囲内であることが好ましい。
【0024】
本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)の例としては、スチレン−水添イソプレン−ブロック共重合体、スチレン−水添ブタジエンブロック共重合体、スチレン−水添イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−水添ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−水添(ブタジエン−イソプレンランダム共重合体)−スチレンブロック共重合体などが挙げられる。
【0025】
本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)は、ボロン酸基および水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、ホウ素含有官能基と称する。)を側鎖に含有することを特徴とする。ホウ素含有官能基のうち、ボロン酸基とは下記式(I)で示されるものである。
【0026】
【化1】
Figure 0003850734
【0027】
また、水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基とは、水の存在下で加水分解を受けて上記式(I)で示されるボロン酸基に転化し得るホウ素含有基を指す。より具体的には、水単独、水と有機溶媒(トルエン、キシレン、アセトンなど)との混合物、5%ホウ酸水溶液と前記有機溶媒との混合物などを溶媒とし、室温〜150℃の条件下に10分〜2時間加水分解したときに、ボロン酸基に転化し得る官能基を意味する。このような官能基の代表例としては、下記式(II)で示されるボロン酸エステル基、下記式(III)で示されるボロン酸無水物基、下記式(IV)で示されるボロン酸塩基などが挙げられる。
【0028】
【化2】
Figure 0003850734
【0029】
【化3】
Figure 0003850734
【0030】
【化4】
Figure 0003850734
【0031】
{式中、XおよびYは水素原子、脂肪族炭化水素基(炭素数1〜20の直鎖状、または分岐状アルキル基、またはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など)を表し、XおよびYは同じであってもよいし異なっていてもよい。ただし、XおよびYがともに水素原子の場合は除かれる。また、XとYは結合していてもよい。またR1、R2およびR3は上記XおよびYと同様の水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基を表し、R1、R2およびR3は同じでもよいし異なっていてもよい。またMはアルカリ金属を表す。さらに、上記のX、Y、R1、R2およびR3は他の基、例えば水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子などを有していてもよい。}
【0032】
一般式(II)で示されるボロン酸エステル基の具体例としては、ボロン酸ジメチルエステル基、ボロン酸ジエチルエステル基、ボロン酸ジブチルエステル基、ボロン酸ジシクロヘキシルエステル基、ボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基、ボロン酸ネオペンチルグリコールエステル基、ボロン酸カテコールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基、ボロン酸トリメチロールエタンエステル基、ボロン酸トリメチロールプロパンエステル基、ボロン酸ジエタノールアミンエステル基などが挙げられる。
【0033】
また、一般式(IV)で示されるボロン酸塩基としては、ボロン酸のアルカリ金属塩基などが挙げられる。具体的には、ボロン酸ナトリウム塩基、ボロン酸カリウム塩基などが挙げられる。
【0034】
このようなホウ素含有官能基のうち、熱安定性の観点からボロン酸環状エステル基が好ましい。ボロン酸環状エステル基としては、例えば5員環または6員環を含有するボロン酸環状エステル基が挙げられる。具体的には、ボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基などが挙げられる
【0035】
本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)に含有されるホウ素含有官能基は、1種のみであっても2種以上であってもよい。該ブロック共重合体(A)に含有されるホウ素含有官能基の量は、共重合体1g当たり0.0001〜0.002当量、すなわち100〜2000μeq/gであることが必要であり、150〜1500μeq/gであることが好ましい。官能基量が100μeq/gに満たない場合は、該ブロック共重合体(A)の反応性が不十分となる。また、官能基量が2000μeq/gを超える場合は、ゲル化が発生し易くなる。
【0036】
本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)に含有されるホウ素含有官能基は、該共重合体の側鎖として含有されていることが必要である。このことは、側鎖および末端にホウ素含有官能基を含有する場合を排除するものではない。該官能基がブロック共重合体の末端のみに結合している場合は、特に高分子量の共重合体では官能基量が相対的に低くなり、ブロック共重合体の反応性が不十分となる。
【0037】
本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)の重量平均分子量は、1000〜1000000であることが好ましく、10000〜500000であることがより好ましい。重量平均分子量が1000未満の場合、ポリマー製造時の析出が困難となる場合がある。また、重量平均分子量が1000000を超える場合、成形時の負荷が増大して成形困難となる場合がある。なお、重量平均分子量は、テトラヒドロフランなどを溶媒とするGPC(ゲル・パーミュエイション・クロマトグラフィー)測定によって得られるポリスチレン換算値である。また、本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)のメルトフローレートは、230℃、2160gの荷重下で0.1〜300g/10分であることが好ましい。
【0038】
次に、本発明のホウ素含有官能基を側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)の代表的製法について述べる。
第一の方法:ホウ素含有官能基を側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)は、窒素雰囲気下で、オレフィン性二重結合を主鎖および/または側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体に、ボラン錯体に代表されるホウ素−水素結合を有するホウ素化合物およびホウ酸トリアルキルエステルに代表されるホウ酸エステルを反応させることによってボロン酸ジアルキルエステル基を含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体を得た後、必要に応じて水またはアルコール類を反応させることによって得られる。こうして、該共重合体のオレフィン性二重結合にホウ素含有官能基が付加反応により導入される。この場合、オレフィン性二重結合が末端にもあれば、その末端にもホウ素含有官能基が導入される。
【0039】
原料となるスチレン−水添ジエンブロック共重合体のジエンブロックの水添率は、90〜98モル%であることが好ましく、92〜97モル%であることがより好ましい。水添率の規定された原料を用いることにより、導入されるホウ素含有官能基の量を制御することが容易になる。また、導入後に残存するオレフィン性二重結合の量の制御も同時に可能となる。ジエンブロックの水添率が90モル%未満の場合、該共重合体が反応中に熱劣化したり架橋したりすることがある。98モル%を超える場合、最終的に得られる共重合体に含有されるホウ素含有官能基の量が不足することがある。
【0040】
ボラン錯体としては、ボラン−テトラヒドロフラン錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−ピリジン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体、ボラン−トリエチルアミン錯体などが好ましい。これらの中でも、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体およびボラン−トリエチルアミン錯体がより好ましい。ボラン錯体の仕込み量は、スチレン−水添ジエンブロック共重合体のオレフィン性二重結合に対して1/3〜10当量の範囲が好ましい。
【0041】
ホウ酸トリアルキルエステルとしては、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリブチルボレートなどのホウ酸低級アルキルエステルが好ましい。ホウ酸トリアルキルエステルの仕込み量は、スチレン−水添ジエンブロック共重合体のオレフィン性二重結合に対して1〜100当量の範囲が好ましい。溶媒は特に使用する必要はないが、使用する場合は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリンなどの飽和炭化水素系溶媒が好ましい。
【0042】
オレフィン性二重結合を主鎖および/または側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体と、ボラン錯体およびホウ酸トリアルキルエステルとの反応は、室温〜300℃、好ましくは100〜250℃の温度範囲内で、1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間行うのがよい。
【0043】
上記の反応によってスチレン−水添ジエンブロック共重合体に導入されたボロン酸ジアルキルエステル基は、公知の方法により加水分解させてボロン酸基とすることができる。また、やはり公知の方法によりアルコール類とエステル交換反応させて任意のボロン酸エステル基とすることができる。さらに、加熱により脱水縮合させてボロン酸無水物基とすることができる。そしてさらに、公知の方法により金属水酸化物または金属アルコラートと反応させてボロン酸塩基とすることができる。
【0044】
このようなホウ素含有官能基の変換は、トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチルなどの有機溶媒を用いて行うこともできるが、以下で述べるように押出機中で行うことが好適である。アルコール類としては、メタノール、エタノール、ブタノールなどのモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール類などが挙げられる。また、金属水酸化物としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが挙げられる。さらに、金属アルコラートとしては、前記した金属と前記したアルコールとからなるものが挙げられる。これらはいずれも例示したものに限定されるものではない。これらの使用量は、通常ボロン酸ジアルキルエステル基に対して1〜100当量である。
【0045】
本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)を製造するに際しては、原料のスチレン−水添ジエンブロック共重合体と、ホウ素−水素結合を有するホウ素化合物とを押出機内で溶融混練する方法が好適である。
【0046】
使用する押出機としては、特に制限はなく、一軸押出機、二軸同方向回転押出機、二軸異方向回転押出機のいずれを用いてもよいが、二軸同方向回転押出機あるいは二軸異方向回転押出機が好ましい。また、押出機の樹脂出口近くにベントを設けることが好ましい。これにより過剰のホウ素化合物を除去および回収することができる。また、多段ベントを有する1台の押出機を使用してもよいし、2台以上の押出機を使用してもよい。1台の押出機を用いる場合、押出機の上流側から順に、1)原料樹脂であるスチレン−水添ジエンブロック共重合体のフィード口、2)ホウ素−水素結合を有するホウ素化合物およびホウ酸エステルの添加口、3)ベント口、4)アルコール類の添加口および5)ベント口を有する多段式押出機が好ましく、スクリュー形状としては、前記2)、3)、4)および5)の間にそれぞれシールあるいは逆ネジスクリューを有していることが好ましい。2台の押出機を使用する場合、1台目の押出機では上流側から順に、1)原料樹脂のフィード口、2)ホウ素−水素結合を有するホウ素化合物およびホウ酸エステルの添加口および3)ベント口を有する押出機が好ましく、2台目の押出機では上流側から順に、1)1台目の押出機で得られた樹脂をフィードするためのフィード口、2)アルコール類の添加口および3)ベント口を有する押出機が好ましく、前記1台目および2台目の押出機のスクリュー形状としては前記2)および3)の間にシールあるいは逆ネジスクリューを有していることが好ましい。
【0047】
使用するホウ素−水素結合を有するホウ素化合物は高温では空気中の酸素あるいは水あるいは酸素により分解されるため、押出機中の酸素および水蒸気の濃度はできるだけ低いことが好ましい。従って、押出機のフィーダーに窒素ガスを流したり、押出機に脱気用ベント口を設けることが好ましい。押出機内の最高温度は使用する原料樹脂であるスチレン−水添ジエンブロック共重合体およびホウ素化合物によって異なるが、通常、原料樹脂の融点から350℃の範囲が好ましく、さらに原料樹脂の融点+10℃から300℃の範囲がより好ましい。
【0048】
原料のスチレン−水添ジエンブロック共重合体とホウ素−水素結合を有するホウ素化合物を反応させた後、未反応のホウ素化合物を除去、特に減圧下で除去した後に、アルコール類を添加するのが好適である。ここでは未反応のホウ素化合物は、ホウ素量に換算して、500ppm以下さらには100ppm以下になるように除去するのがよい。ここで減圧下の圧力は、内部の真空度が300mmHg以下、好ましくは50mmHg以下である。アルコール類を添加することにより、不純物をより効率的に取り除くことができる。また同時に、反応によって導入されたボロン酸基のエステルの種類をエステル交換反応により、添加したアルコール類のエステルに変えることもできる。アルコール類を添加したあと、さらに減圧状態にし、未反応のホウ素化合物を除去することが好ましい。この除去により、不純物のホウ素化合物の量はホウ素量に換算して、100ppm以下、さらには20ppm以下とすることが好ましい。
【0049】
ホウ素−水素結合を有するホウ素化合物の添加方法としては、通常、押出機のバレルの途中からポンプにより注入する方法、あるいは、原料樹脂にあらかじめドライブレンドする方法、あるいは前記の途中で注入する方法およびあらかじめドライブレンドする方法を併用する方法が挙げられる。ホウ素化合物の添加量は特に制限はないが、原料樹脂であるスチレン−水添ジエンブロック共重合体に対し、0.001〜10重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは、0.01〜5重量%の範囲である。また、ホウ酸エステルの添加量の好適な範囲は原料樹脂に対し、0.01〜100重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.05〜10重量%の範囲である。また、アルコール類の添加量は特に制限はないが、原料樹脂に対し、0.1〜100重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜20重量%の範囲である。
【0050】
第二の方法:ホウ素含有官能基を側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)は、公知のカルボキシル基を側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体と、m−アミノフェニルベンゼンボロン酸、m−アミノフェニルボロン酸エチレングリコールエステルなどのアミノ基含有ボロン酸またはアミノ基含有ボロン酸エステルとを、公知の方法によってアミド化反応させることによって得られる。この時、カルボジイミドなどの縮合剤を用いてもよい。こうしてスチレン−水添ジエンブロック共重合体に導入されたホウ素含有官能基は、前記の方法により他のホウ素含有官能基に変換することができる。
【0051】
こうして得られた本発明のホウ素含有官能基を側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)は、単独で、または他の熱可塑性樹脂と混合して相容性改質剤、接着性付与剤として使用することができる。
【0052】
本発明のホウ素含有官能基を側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)とからなる熱可塑性樹脂組成物(C)において、スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)との重量比[(A)/(B)]は1/99〜50/50であることが好ましい。重量比[(A)/(B)]を1/99以上にすることにより、スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)の添加による樹脂の改質効果を得ることができる。この値以下の場合には、例えば、樹脂組成物(C)を接着剤として用いた場合に充分な接着性が得られない虞がある。重量比[(A)/(B)]は、より好適には2/98以上であり、さらに好適には3/97以上である。一方、重量比[(A)/(B)]を50/50以下にすることにより、押出安定性に優れる樹脂組成物(C)が得られ、樹脂組成物(C)からなる成形物の外観性が向上する。この値以上の場合には、樹脂組成物の弾性率が低くなり過ぎて均質な押出成形が困難になる虞がある。また、重量比[(A)/(B)]を50/50以下にすることにより、樹脂組成物(C)およびポリオレフィンとからなる多層構造体において、スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)のポリオレフィン層への移行を抑制することも可能である。重量比[(A)/(B)]は、より好適には40/60以下であり、さらに好適には30/70以下であり、最適には40/60以下である。
【0053】
スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)と配合する(A)以外の熱可塑性樹脂(B)としては、ポリエチレン(超低密度、低密度、中密度、高密度)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン(B1);前記ポリオレフィンの無水マレイン酸、グリシジルメタクリレートなどのグラフト変性物;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの半芳香族ポリエステル;ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステル;ポリカプロラクタム、ポリラウロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミドなどの脂肪族ポリアミド;ポリエチレングリコール、ポリフェニレンエーテルなどのポリエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、相容性が良好なポリオレフィン(B1)が好ましい。
【0054】
(A)以外の熱可塑性樹脂がポリオレフィン(B1)である場合、本発明のホウ素含有官能基を側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)は、ポリオレフィン(B1)を構成する単量体を構成成分として含有することが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂(B)がポリエチレンの場合、スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)としてはスチレン−水添ブタジエンブロック共重合体、スチレン−水添ブタジエン−スチレンブロック共重合体が好ましく、熱可塑性樹脂(B)がポリプロピレンの場合、スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)としては、スチレン−水添イソプレンブロック共重合体、スチレン−水添イソプレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。
【0055】
本発明の樹脂組成物(C)がスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)とポリオレフィン(B1)とからなる場合、下記式(1)を満足することが好ましい。
|α−β|≦0.25 (1)
ただし、
α:ブロック共重合体(A)のジエンブロックの分岐度
β:ポリオレフィン(B1)の分岐度
【0056】
上記分岐度とは、主鎖を構成する全炭素原子に対する、炭素−炭素結合の分岐を有する炭素原子の割合をいう。このとき、ブロック共重合体(A)の場合には、スチレンブロック部分を除いたジエンブロック部分の主鎖のみの分岐度を求める。またここで、炭素−炭素結合の分岐を有する炭素原子とはアルキル基が結合している炭素原子のことをいう。例えば、理想的なポリプロピレンであれば、CH炭素とCH(CH)炭素とが同数連結されているので、主鎖中の全炭素原子に対する分岐(この場合はメチル基)を有する炭素原子の割合である分岐度は0.5である。また、理想的な線状ポリエチレンであれば、主鎖は連続するCH炭素の連続体からなり分岐を含まないから、分岐度は0である。なお、炭素−炭素結合以外の分岐、例えば炭素−ホウ素結合などの分岐は、ここでいう分岐には含まれない。したがって、例えば水添ジエンブロックの主鎖の二重結合にホウ素化合物を付加させた結果炭素−ホウ素結合が形成されてもこの水添ジエンブロックの分岐度は変化しない。また、水添操作の前後においても分岐度は変化しない。
【0057】
ブロック共重合体(A)のジエンブロックの分岐度αと、それと配合されるポリオレフィン(B1)の分岐度βとの差の絶対値|α−β|が0.25以下であることにより、樹脂組成物(C)を接着性樹脂として用いた場合に特に優れた接着性を発揮することができる。|α−β|は0.2以下であることがより好適である。
【0058】
上記分岐度は、例えばNMRによる構造解析によって求めることができる。すなわち、H−NMRあるいは13C−NMRの測定チャートにおけるピーク面積の定量によって求めることができる。H−NMRと13C−NMRのいずれを用いて定量するかは、測定対象の樹脂によって異なり、適当な方が選択される。前述のように、水添操作の前後においても、また二重結合へのホウ素化合物の付加反応の前後においても、分岐度の値は変化しないから、例えば原料の未水添のスチレン−ジエンブロック共重合体において分岐度を測定しておいて、この値を、ホウ素含有官能基を側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)の分岐度αとすることも可能である。
【0059】
また、本発明の樹脂組成物(C)がスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)とポリオレフィン(B1)とからなる場合、下記式(2)を満足することも好ましい。
|γ−δ|≦0.25 (2)
ただし、
γ:ブロック共重合体(A)のジエンブロックのメチル基由来水素含有率
δ:ポリオレフィン(B1)のメチル基由来水素含有率
【0060】
上記メチル基由来水素含有率とは、全水素原子に対する、メチル基に由来する水素原子の割合をいう。このとき、ブロック共重合体(A)の場合には、スチレンブロック部分を除いたジエンブロック部分のみの水素原子を全水素原子として、メチル基由来水素含有率を求める。例えば、理想的なポリプロピレンであれば、CH基とCH基とCH基とをそれぞれ同数含有しているので、メチル基由来水素含有率は0.5である。また、理想的な線状ポリエチレンであれば、主鎖は連続するCH炭素の連続体からなるから、メチル基由来水素含有率はほぼ0となる。なお、例えば水添ジエンブロックの主鎖の二重結合にホウ素化合物を付加させた場合、それによって導入される水素原子によって水添ジエンブロックのメチル基由来水素含有率は変化することになる。
【0061】
ブロック共重合体(A)のジエンブロックのメチル基由来水素含有率γと、それと配合されるポリオレフィン(B1)のメチル基由来水素含有率δとの差の絶対値|γ−δ|が0.25以下であることにより、樹脂組成物(C)を接着性樹脂として用いた場合に特に優れた接着性を発揮することができる。|γ−δ|は0.2以下であることがより好適である。
【0062】
上記メチル基由来水素含有率は、H−NMRの測定チャートにおいて、メチル基に由来する水素原子のピーク面積を全水素原子のピーク面積で割ることで求めることができる。分岐を生じることでメチル基を同時に生じることが多いことから、このメチル基由来水素含有率は、前記分岐度とある程度の相関のあるパラメータである。本発明のブロック共重合体(A)のように、ホウ素化合物で変性した樹脂の場合には、ホウ素含有基に由来する水素原子あるいは炭素原子の影響で、前述の分岐度の定量が困難な場合がある。このような場合であっても、分岐度と相関のあるパラメータとして、上記メチル基由来水素含有率を用いて組み合わせの適否を判断することが可能である。
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)の製造方法としては特に制限はなく、例えば、本発明のホウ素含有官能基を側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)と、(A)以外の熱可塑性樹脂(B)とを、バンバリーミキサー、二軸押出機などを使用する公知の方法により溶融混練することによって製造することができる。このようにして得られた本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、既に述べたように、相容性改質剤、接着性付与剤として使用することができる。
【0064】
本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)は、好適にはブロック共重合体(A)層および(A)以外の熱可塑性樹脂(D)層からなる多層構造体として用いられる。別の好ましい実施態様では、本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)は、ブロック共重合体(A)および(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる樹脂組成物(C)層および(A)以外の熱可塑性樹脂(D)層からなる多層構造体として用いられる。
【0065】
積層される熱可塑性樹脂(D)としては、特に限定されないが、ポリエチレン(超低密度、低密度、中密度、高密度)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン(D1);前記ポリオレフィンの無水マレイン酸、グリシジルメタクリレートなどのグラフト変性物;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの半芳香族ポリエステル;ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステル;ポリカプロラクタム、ポリラウロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミドなどの脂肪族ポリアミド;ポリエチレングリコール、ポリフェニレンエーテルなどのポリエーテル;ポリカーボネート;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などのスチレン系重合体;ポリメチルメタクリレート;ポリ塩化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル系重合体などの樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン(D1)が好ましい。また、熱可塑性樹脂(D)層には、本発明の目的が阻害されない範囲で本発明の積層体のスクラップを混合してもよい。
【0066】
スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)および熱可塑性樹脂(B)からなる樹脂組成物(C)層と、熱可塑性樹脂(D)層とを積層してなる多層構造体を製造する場合、樹脂組成物(C)層に含まれる熱可塑性樹脂(B)がポリオレフィン(B1)であり、かつ熱可塑性樹脂(D)層を構成する熱可塑性樹脂(D)がポリオレフィン(D1)であることが好適である。このとき前記ポリオレフィン(B1)およびポリオレフィン(D1)がいずれも、その構成成分として同一のα−オレフィンを50重量%以上含有するポリオレフィンであることがより好適である。例えばエチレンを主成分とする樹脂同士やプロピレンを主成分とする樹脂同士を組み合わせてポリオレフィン(B1)およびポリオレフィン(D1)として使用することが好適である。こうすることによって、樹脂組成物(C)層とポリオレフィン(D1)層との間の層間接着性が優れたものになる。ポリオレフィン(B1)とポリオレフィン(D1)が同一の種類の樹脂であることが特に好適である。
【0067】
また、本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)は、好適には接着剤として用いられる。より好ましい実施態様では、スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)と(A)以外の熱可塑性樹脂(B)とを、重量比[(A)/(B)]で1/99〜50/50の割合で含有することを特徴とする樹脂組成物(C)が接着剤として用いられる。特に好ましい実施態様では、前記樹脂組成物(C)は、熱可塑性樹脂(D)とEVOH(E)との接着剤として用いられる。すなわち、EVOH(E)層と前記熱可塑性樹脂(D)層とを、前記樹脂組成物(C)層を介して積層してなる多層構造体が好適な実施態様である。
【0068】
本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)を接着剤として使用し、EVOH(E)層と熱可塑性樹脂(D)層とを積層してなる多層構造体を共押出成形した場合、共押出成形の直後から高い層間接着強度を示す。一方、無水マレイン酸変性ポリオレフィン等の汎用の接着性樹脂の接着力は、共押出成形終了後に徐々に接着強度が上昇し、通常1週間程度で安定することが多い。したがって、共押出成形直後の接着力から1週間後の接着強度を推測して品質管理する場合が多いが、予想に反して接着強度の上昇が小さかった場合には、商品充填後に剥離が発生する虞がある。EVOH層を含む多層構造体では、成形されてから実際に食品などが充填されるまでに1週間から1ヶ月程度要することが多いことから、充填時の接着強度を的確に推測できることは重要である。本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)を接着剤として使用することで、長時間経過後の接着強度のバラツキが少なく、かつ成形直後にも使用可能な多層構造体を提供することができる。
【0069】
本発明に用いられるEVOH(E)としては、エチレン含有量は3〜70モル%の範囲が好ましく、5〜60モル%の範囲がより好ましいが、この範囲に限定されるものではない。またケン化度は、通常10〜100モル%であり、50〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、95〜100モル%がさらにより好ましく、99〜100モル%が最も好ましい。ケン化度が低いと、EVOHの結晶化度が不十分となったり、溶融成形時の熱安定性が不十分となったりする。
【0070】
EVOHは、エチレンとビニルエステルとをラジカル開始剤を用いて共重合し、次いでアルカリ触媒の存在下にケン化する公知の方法により製造することができる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられる。これらのビニルエステルのうちの1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、酢酸ビニルが好ましい。
【0071】
このとき、本発明の目的が阻害されない範囲で他の共重合成分を共存させて共重合してもよい。ここで他の成分としてはプロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン系単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系単量体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルなどのビニルエーテル系単量体;アリルアルコール;ビニルトリメトキシシラン;N−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0072】
こうして得られたEVOHは単独で使用してもよいし、エチレン含有量、ケン化度、重合度などの異なるEVOHと混合して使用してもよい。さらに、本発明の目的が阻害されない範囲でEVOH以外の熱可塑性樹脂を添加して使用してもよい。EVOH中の熱可塑性樹脂の含有量は0〜50重量%の範囲が好ましく、0〜40重量%の範囲がより好ましい。
【0073】
このような熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(超低密度、低密度、中密度、高密度)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン;前記ポリオレフィンの無水マレイン酸、グリシジルメタクリレートなどのグラフト変性物;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの半芳香族ポリエステル;ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステル;ポリカプロラクタム、ポリラウロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミドなどの脂肪族ポリアミド;ポリエチレングリコール、ポリフェニレンエーテルなどのポリエーテルなどが挙げられる。
【0074】
本発明の積層体に用いられるEVOH(E)のメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下で測定した値)は0.1〜200g/10分が好ましく、0.5〜50g/10分がより好ましい。ただし、融点が190℃付近または190℃を超えるものは、上記荷重下、融点以上の温度における複数の測定値を、絶対温度の逆数を横軸、MFRを縦軸(対数目盛)とする片対数グラフとしてプロットし、190℃に外挿した値を用いることとする。
【0075】
また、本発明の積層体に用いられるEVOH(E)としては、アルカリ金属塩の含有量が金属元素換算で100ppm以下であるEVOHが特に好ましい。アルカリ金属塩の含有量の上限は、より好適には70ppm以下であり、最適には50ppm以下である。アルカリ金属塩の含有量の下限は、好ましくは3ppm以上であり、より好ましくは5ppm以上であり、さらに好ましくは7ppm以上である。EVOH(E)として、アルカリ金属塩の含有量が金属元素換算で100ppm以下のEVOHを用いることにより、EVOHの熱安定性が向上し、着色、フィッシュアイ、縦筋などの外観不良が抑制され、得られる多層構造体の外観性が向上する。
【0076】
従来、EVOH用の接着性樹脂としてさまざまな樹脂(例えば無水マレイン酸変性ポリオレフィン)が開発されていたが、そのいずれにおいても、実用的な接着強度を得るためには、100ppmを超えるアルカリ金属塩(金属元素換算値)を配合したEVOHを用いる必要があった。このため、多層構造体(特に共押出多層構造体)を製造するにあたっては、アルカリ金属塩含有量が少ない熱安定性に優れたEVOHを使用することができなかった。ところが、本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)および(A)以外の熱可塑性樹脂(B)からなる樹脂組成物(C)は、アルカリ金属塩の含有量が金属元素換算で100ppm以下であるEVOHに対しても極めて優れた接着強度を示す。このため、アルカリ金属塩の含有量が金属元素換算で100ppm以下であるEVOHを用いた場合においても、熱可塑性樹脂(D)およびEVOH(E)からなる多層構造体において、前記(D)と(E)とを、樹脂組成物(C)を介して積層することにより接着性に優れた多層構造体を提供することができる。かかる観点からも、本発明の意義は大きい。
【0077】
EVOH(E)のアルカリ金属塩の含有量を前記の範囲に調節する方法は特に限定されないが、ケン化後のEVOHは通常ケン化触媒残渣としてアルカリ金属塩を含有しているので、公知の方法を用いてケン化後のEVOHを洗浄してアルカリ金属塩を除去した後、改めてアルカリ金属塩を所定量含有させる方法が好ましい。ケン化後のEVOHを洗浄する方法としては、チップ状のEVOHを多量の水に投入して攪拌する方法、シャワー水を吹き付ける方法、塔型洗浄器を用いて連続的に洗浄する方法などが挙げられる。また、EVOHにアルカリ金属塩を含有させる方法としては、EVOHをアルカリ金属塩の溶液に浸漬させる方法、EVOHを溶融させてアルカリ金属塩またはその溶液と混合する方法、EVOHを適当な溶媒に溶解させてアルカリ金属塩と混合させる方法などが挙げられる。
【0078】
EVOHをアルカリ金属塩の溶液に浸漬する場合において、該溶液中のアルカリ金属塩の濃度は特に限定されない。また溶液の溶媒としては特に限定されないが、取扱い上の理由などから水溶液であることが好ましい。EVOHを浸漬する際の溶液の重量は、乾燥時のEVOHの重量に対して3倍以上、好ましくは20倍以上であることが好ましい。浸漬時間はEVOHの形態によってその好適な範囲が異なるが、1〜10mm程度のチップの場合には通常1時間以上、好ましくは2時間以上である。溶液への浸漬処理は特に限定されず、複数の溶液に分けて浸漬してもよく、一度に処理しても構わないが、工程の簡素化の点から一度に処理する事が好ましい。上記のように溶液に浸漬して処理した場合、更に乾燥を行うことで、EVOH(E)を得ることができる。
【0079】
本発明に用いられるEVOH(E)として、カルボン酸を10〜500ppm配合したEVOH(E)を用いることが好ましい。かかる範囲でカルボン酸を含有するEVOH(E)を用いることにより、EVOH(E)の熱安定性が向上し、得られる多層構造体の外観性が向上する。本発明に用いられるカルボン酸の25℃におけるpKaは3.5以上であることが好ましい。25℃におけるpKaが3.5に満たない場合、EVOH(E)のpHの制御が困難となる虞があり、またEVOH(E)の熱安定性が不良となる虞がある。
【0080】
本発明に用いられるカルボン酸としてはコハク酸、アジピン酸、安息香酸、カプリン酸、ラウリン酸、グリコール酸、乳酸ギ酸、酢酸、プロピオン酸などが挙げられるが、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸を用いた場合は成形時にゲル・ブツが発生しやすくなる虞がある。これらのカルボン酸の中でも、コスト的なメリットの他、酸性度が適当であり、EVOH(E)のpHがコントロールしやすい観点から、特に酢酸、プロピオン酸および乳酸がより好ましく、酢酸およびプロピオン酸が特に好ましい。
【0081】
カルボン酸の含有量が500ppmを超える場合は、EVOHの熱安定性が悪化し、得られる成形物に着色、フィッシュアイ、縦筋などの外観不良が生じやすくなる。カルボン酸の含有量の上限は、400ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。一方、カルボン酸の含有量の下限は20ppm以上であることがより好ましく、30ppm以上であることがさらに好ましい。
【0082】
また、EVOHの熱安定性を向上させる観点から、本発明に用いられるEVOH(E)として、リン酸化合物をリン酸根換算で1〜300ppm配合したEVOH(E)を用いることも好ましい。リン酸化合物の含有量の上限は、リン酸根換算で250ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましい。また、リン酸化合物の含有量の下限は、3ppm以上であることがより好ましく、5ppm以上であることがさらに好ましく、10ppm以上であることが特に好ましい。
【0083】
EVOH中に配合するリン酸化合物の種類は特に限定されるものではない。リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩としては第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていても良く、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。中でもリン酸、リン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウムおよびリン酸水素2カリウムの形でリン酸化合物を添加することが好ましく、リン酸、リン酸2水素ナトリウムおよびリン酸2水素カリウムの形でリン酸化合物を添加することがより好ましい。
【0084】
また、本発明の目的を阻外しない範囲であれば、EVOH(E)として、ホウ素化合物を配合したEVOH(E)を用いることもできる。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物の中でもオルトホウ酸が好ましい。ホウ素化合物をブレンドする場合、ホウ素化合物の含有量は好ましくはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。
【0085】
以上のように、本発明に用いられるEVOH(E)として、必要に応じてカルボン酸、リン酸化合物およびホウ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を配合したEVOH(E)を用いることが可能であるが、かかるEVOH(E)を製造する方法は特に限定されない。例えば、前述のアルカリ金属塩を含有させる方法と同様の方法が採用できる。
【0086】
熱可塑性樹脂(D)層とEVOH(E)層とを、樹脂組成物(C)層を介して積層してなる多層構造体の層構成としては、以下のようなものが好適な例として挙げられる。
3層 D/C/E
4層 D/C/E/D、 D/Reg/C/E、C/D/C/E
5層 D/C/E/C/D、D/C/E/C/Reg、D/C/E/AD/D、
E/C/D/C/E、D/Reg/D/C/E
6層 D/C/E/C/Reg/D
7層 D/C/E/Reg/C/Reg/D
【0087】
ここでADとは、無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどの従来の層間接着剤を意味し、またRegとは本発明の多層構造体のスクラップ層を意味する。また、多層構造体中に二層以上のD層を用いる場合は、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。同様に、多層構造体中に二層以上のC層、E層を用いる場合も、それらはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
多層構造体の各層の厚さは、任意に選択でき、これにより多層構造体の全体の厚さを所望の範囲にすることが可能である。ある程度厚みのある多層構造体を得るためには、コストの観点から、D層を厚くすることが好ましい。
【0088】
上述の多層構造体の製造方法としては、特に限定されるものではなく、共押出成形、多層射出成形、エキストルージョンコーティング、ドライラミネーション、溶液コーティングなどの公知の方法が採用される。これらの中でも、共押出成形および多層射出成形が好ましい。
【0089】
共押出成形を採用する場合、溶融押出しされた各層成分をダイ内で接触させて積層(ダイ内ラミネート法)してもよいし、ダイ外で接触させて積層(ダイ外ラミネート法)してもよい。このとき、接触を加圧下に行うことにより、多層構造体の各層の接着性を向上させることができる。圧力としては、1〜500Kg/cm2の範囲が好ましい。
【0090】
また、形状が複雑な部品類を成形する場合には、多層射出成形が採用される。具体的には、二色成形、インサート射出成形、共射出成形などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。成形方法は成形品の形状などにより適宜選択される。
【0091】
このようにして得られた多層構造体は、後述する実施例からも明らかなように層間接着力に優れ、さらに回収して再利用に供した場合も、表面の乱れ、ゲル、ブツなどの外観異常の発生が少ないという長所を有している。当該多層構造体は、さらに一軸延伸、二軸延伸、またはブロー延伸などの延伸、または真空圧空成形などの熱成形に供することにより、力学特性、ガスバリア性に優れたフィルム、シート、ボトル、カップなどの成形品とすることができる。得られた成形品は、食品包装剤、医療品(医薬品、医療器具)包装材、燃料タンクなどのガスバリア性が要求される用途に有用である。
【0092】
【実施例】
以下、実施例などにより本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において特に断りのない限り、比率は重量比を、「%」は「重量%」を意味する。各種測定は以下のような方法で行った。
【0093】
(1)共重合体(A)に含有される官能基の量
スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)中の二重結合量および官能基量は、重クロロホルムを溶媒とするH−NMR測定により得られたスペクトルから算出した。また、比較例の超低密度ポリエチレン中の二重結合量は、重パラキシレンを溶媒とするH−NMR測定により得られたスペクトルから算出した。さらに、超低密度ポリエチレン中の官能基量は重トルエンを溶媒とするH−NMR測定により得られたスペクトルから算出した。
【0094】
(2)重量平均分子量
スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)の重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするGPC測定により得られたポリスチレン換算値を用いた。以下にGPC測定条件を示す。
装置 :SYSTEM11(昭和電工社製)
カラム :MIXED−C 2本(ポリマーラボラトリー社製)
移動相 :テトラヒドロフラン
流量 :1.0ml/分
温度 :40℃
濃度 :0.1%
注入量 :100μL
検出器 :RI
標品 :ポリスチレン(ポリマーラボラトリー社製)
解析ソフト :ミレニアム32(ウォーターズ社製)
【0095】
(3)ブロック共重合体(A)のジエンブロックの分岐度(α)
水添前のスチレン−ジエンブロック共重合体について、下記の測定条件にしたがって、H−NMR測定を行い、1,4−付加体と1,2−付加体の割合を求め、それに基づいて特定された構造から、その分岐度を求めた。こうして得られた分岐度は、水添してからホウ素化合物で変性したスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)の分岐度(α)と同じである。
装置 :A0201−日本電子製超伝導核磁気共鳴装置Lambda500共鳴周波数:500MHz
パルス系列:シングルパルス
測定溶媒 :CDCl
測定濃度 :5重量%
測定温度 :50℃
積算回数 :64回
【0096】
(4)ポリオレフィン(B1)の分岐度(β)
下記の測定条件にしたがって、13C−NMRを測定することで、ポリオレフィン(B1)の分岐度(β)を定量した。
共鳴周波数 :125.65MHz
パルス系列 :Hゲート付デカップル
パルス幅 :45°パルス
パルス待ち時間 :1.03秒
データ取り込み時間:0.97秒
測定温度 :120℃
測定溶媒 :オルトジクロロベンゼン/ベンゼン−d6
=4/1(体積比)
測定濃度 :10重量%
緩和試薬 :Cr(acac)(15mg/ml)
【0097】
(5)ブロック共重合体(A)のジエンブロックのメチル基由来水素含有率(γ)
ブロック共重合体(A)を試料として、下記の測定条件にしたがって、H−NMR測定を行いメチル基に由来する水素原子の全水素原子に対する割合を求めた。このとき、スチレンブロックに由来する水素原子は全て除外して算出した。装置 :A0201−日本電子製超伝導核磁気共鳴装置Lambda500共鳴周波数:500MHz
パルス系列:シングルパルス
測定溶媒 :CDCl
測定濃度 :5重量%
測定温度 :50℃
積算回数 :64回
【0098】
(6)ポリオレフィン(B1)のメチル基由来水素含有率(δ)
ポリオレフィン(B1)を試料として、上記(5)の測定条件にしたがって、H−NMR測定を行いメチル基に由来する水素原子と全水素原子に対する割合を求めた。
【0099】
合成例1(実施例1、2で使用)
乾燥した窒素で置換された200Lの耐圧容器中、溶媒としてシクロヘキサン75Kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム45gを添加し、次いでスチレン3.6Kgを添加し、50℃で重合した後、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.21Kgを加え、次いでブタジエン32.8Kgおよびスチレン3.6Kgを順次添加し、重合させてスチレン−ブタジエン−スチレン型のトリブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の分岐度(α)は0.154であった。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/C(パラジウム・カーボン)を触媒として、水素圧力2MPa、反応温度100℃で水素添加を行い、スチレン−水添ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)を得た。得られたブロック共重合体の重量平均分子量は100400、スチレン含有量は18重量%、水添率は97モル%であった。
【0100】
合成例2(実施例3、4で使用)
乾燥した窒素で置換された200Lの耐圧容器中、溶媒としてシクロヘキサン75Kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム45gを添加し、次いでスチレン2.3Kgを添加し、50℃で重合した後、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.21Kgを加え、次いでブタジエン28.3Kgおよびスチレン2.3Kgを順次添加し、重合させてスチレン−ブタジエン−スチレン型のトリブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の分岐度(α)は0.095であった。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/Cを触媒として、水素圧力2MPa、反応温度100℃で水素添加を行い、スチレン−水添ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)を得た。得られたブロック共重合体の重量平均分子量は83000、スチレン含有量は14重量%、水添率は95モル%であった。
【0101】
合成例3(実施例5で使用)
乾燥した窒素で置換された200Lの耐圧容器中、溶媒としてシクロヘキサン75Kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム21gを添加し、次いでスチレン1.7Kgを添加し、50℃で重合した後、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.59Kgを加え、次いでイソプレン17.3Kgおよびスチレン1.7Kgを順次添加し、重合させてスチレン−イソプレン−スチレン型のトリブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の分岐度(α)は0.335であった。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/Cを触媒として、水素圧力2MPa、反応温度100℃で水素添加を行い、スチレン−水添イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)を得た。得られたブロック共重合体の重量平均分子量は83000、スチレン含有量は16重量%、水添率は92モル%であった。
【0102】
合成例4(実施例6で使用)
乾燥した窒素で置換された200L耐圧容器中、溶媒としてシクロヘキサン75Kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム45gを添加し、次いでスチレン6.4Kgを添加し、50℃で重合した後、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.21Kgを加え、次いでブタジエン29.6Kgおよびスチレン6.4Kgを順次添加し、重合させてスチレン−ブタジエン−スチレン型のトリブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の分岐度(α)は0.154であった。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/Cを触媒として、水素圧力2MPa、反応温度100℃で水素添加を行った。反応系を一定時間ごとにサンプリングしながら反応を行い、水添ブロック共重合体の水添率が90モル%になった段階で反応を停止し、スチレン−水添ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)を得た。得られたブロック共重合体の重量平均分子量は100400、スチレン含有量は30重量%であった。
【0103】
合成例5(比較例1で使用)
乾燥した窒素で置換された200L耐圧容器中、溶媒としてシクロヘキサン75Kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム45gを添加し、次いでスチレン6.4Kgを添加し、50℃で重合した後、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.21Kgを加え、次いでブタジエン29.6Kgおよびスチレン6.4Kgを順次添加し、重合させてスチレン−ブタジエン−スチレン型のトリブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の分岐度(α)は0.154であった。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/Cを触媒として、水素圧力2MPa、反応温度100℃で水素添加を行った。反応系を一定時間ごとにサンプリングしながら反応を行い、水添ブロック共重合体の水添率が52モル%になった段階で反応を停止し、スチレン−水添ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)を得た。得られたブロック共重合体の重量平均分子量は100400、スチレン含有量は30重量%であった。
【0104】
合成例6(比較例2で使用)
乾燥した窒素で置換された200L耐圧容器中、溶媒としてシクロヘキサン75Kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム45gを添加し、次いでスチレン6.4Kgを添加し、50℃で重合した後、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.21Kgを加え、次いでブタジエン29.6Kgおよびスチレン6.4Kgを順次添加し、重合させてスチレン−ブタジエン−スチレン型のトリブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の分岐度(α)は0.154であった。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/Cを触媒として、水素圧力2MPa、反応温度100℃で水素添加を行った。反応系を一定時間ごとにサンプリングしながら反応を行い、水添ブロック共重合体の水添率が99モル%になった段階で反応を停止し、スチレン−水添ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)を得た。得られたブロック共重合体の重量平均分子量は100400、スチレン含有量は30重量%であった。
【0105】
実施例1
上記の合成例1にしたがって作製した、表1に示す構成、物性を有するスチレン−水添ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)を、投入口を1L/分の窒素で置換しながら7kg/時の速度で二軸押出機に供給した。次に、液体フィーダー1よりボラン−トリエチルアミン錯体(TEAB)とホウ酸1,3−ブタンジオールエステル(BBD)の混合液(TEAB/BBD=29/71、重量比)を0.6kg/時の速度で、液体フィーダー2より1,3−ブタンジオールを0.4kg/時の速度で供給し、連続的に混練した。混練の間、ベント1およびベント2のゲージが約20mmHgを示すように圧力を調節した。その結果、吐出口から7kg/時の速度で、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を含有するSEBSが得られた。このSEBSの合成条件を表2に、官能基量、二重結合量およびメルトフローレート(MFR)を表3にそれぞれ示す。
【0106】
なお、反応に使用した二軸押出機の構成、運転条件は下記のとおりである。
同方向二軸押出機TEM−35B(東芝機械製)
Figure 0003850734
【0107】
実施例2
実施例1において、合成条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして混練を行った。その結果、表3に示す構成、物性を有するSEBSが得られた。
【0108】
実施例3
実施例1において、原料を上記の合成例2にしたがって作製した、表1に示す構成、物性を有するSEBSに変更し、かつ合成条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして混練を行った。その結果、表3に示す構成、物性を有するSEBSが得られた。
【0109】
実施例4
実施例3において、合成条件を表2に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして混練を行った。その結果、表3に示す構成、物性を有するSEBSが得られた。
【0110】
実施例5
実施例1において、原料を上記の合成例3にしたがって作製した、表1に示す構成、物性を有するスチレン−水添イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)に変更し、かつ合成条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして混練を行った。その結果、表3に示す構成、物性を有するSEPSが得られた。
【0111】
実施例6
実施例2において、原料を上記の合成例4にしたがって作製した、表1に示す構成、物性を有するSEBSに変更した以外は、実施例2と同様にして混練を行った。その結果、表3に示す構成、物性を有するSEBSが得られた。
【0112】
比較例1
実施例1において、原料を上記の合成例5にしたがって作製した、表1に示す構成、物性を有するSEBSに変更した以外は、実施例1と同様にして混練を行った。その結果、二軸押出機内のトルクが上昇し、トルクオーバーとなってスクリューが停止したため、反応生成物は得られなかった。
【0113】
比較例2
実施例2において、原料を上記の合成例6にしたがって作製した、表1に示す構成、物性を有するSEBSに変更した以外は、実施例2と同様にして混練を行った。その結果、表3に示す構成、物性を有するSEBSが得られた。
【0114】
比較例3
内容量1.5Lの耐圧容器にシクロヘキサン500g、sec−ブチルリチウム0.003モルを仕込み、50℃に加温した後、この温度を保って、スチレン単量体を15g滴下し追い込んだ後、イソプレン単量体を120g滴下し追い込み、さらにスチレン単量体を15g滴下し追い込んだ。続いて系内に、十分脱水したホウ酸トリメチルを0.7ml(アニオンリビング末端に対して2倍当量)滴下し、1時間追い込んだ。さらに、系外で調製したチーグラー触媒を重合体中の炭素−炭素二重結合の0.01倍当量添加した後、水素圧10Kg/cm2、水添温度70℃で5時間水素添加した。その結果、ボロン酸基を含有するSEPSが得られた。このSEPSのスチレン/イソプレン重量比を表1に、官能基量、二重結合量およびMFRを表3に示す。
【0115】
比較例4
実施例1において、原料を表1に示す構成、物性を有する超低密度ポリエチレン(VLDPE、住友化学製「エクセレン」(商品名)EUL430)に変更し、かつ合成条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして混練を行った。その結果、表3に示す構成、物性を有するVLDPEが得られた。
【0116】
【表1】
Figure 0003850734
【0117】
【表2】
Figure 0003850734
【0118】
【表3】
Figure 0003850734
【0119】
実施例7
実施例1で得られたボロン酸エステル基含有SEBSと、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE:三井化学株式会社製「ウルトゼックス2022L」)を25:75の重量比で溶融混練し、樹脂組成物を得た。上記ボロン酸エステル基含有SEBSの分岐度(α)は0.154であり、上記直鎖状低密度ポリエチレンの分岐度(β)は0.015であり、それらの差の絶対値|α−β|は0.139であった。
なお、混練に使用した二軸押出機の構成、運転条件は下記のとおりである。
同方向二軸押出機ラボプラストミル(東洋精機社製)
軸構成 :同方向二軸
スクリュー径 :25mmφ
L/D :25
温度設定 :220℃
スクリュー回転数:150rpm
フィード樹脂量 :5kg/時
【0120】
エチレン含有量38モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAcと略称する)の45%メタノール溶液をケン化反応器に仕込み、水酸化ナトリウム(80g/Lのメタノール溶液)をEVAc中の酢酸ビニル成分に対し、0.4当量となるように添加し、さらにメタノールを添加してEVAc濃度が20%になるように調整した。この溶液を60℃に昇温し、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間反応させた。その後、酢酸を投入して反応を停止し、円形の開口部を有する金板から反応溶液を水中に押出して析出させ、切断して直径約3mm、長さ約5mmのペレット(チップ)を得た。得られたペレットを遠心分離機で脱液し、さらに大量の水で洗浄・脱液する操作を繰り返した。こうして得られた含水率52%のEVOH含水ペレット3.5kgを、酢酸0.1g/L、リン酸二水素カリウム0.04g/L、ホウ酸0.34g/Lを含有する水溶液15Lに10時間浸漬した。このときの水溶液の温度は25℃であった。その後脱液し、80℃で6時間、107℃で24時間熱風乾燥して乾燥ペレットを得た。得られたEVOH乾燥ペレット中の各成分の含有量を、以下の方法にしたがって定量した。
【0121】
(7)酢酸の含有量の定量
試料とする乾燥EVOHペレット20gをイオン交換水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。抽出液を、フェノールフタレインを指示薬として、1/50規定のNaOHで中和滴定し、得られた酸のモル数に分子量をかけて、酢酸の含有量を定量した。
【0122】
(8)アルカリ金属イオンの定量
試料とする乾燥EVOHペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーにて定量分析し、金属イオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−C25を使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液とした。なお、定量に際してはそれぞれ塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液など各種金属塩の水溶液で作成した検量線を用いた。こうして得られたアルカリ金属イオンの量から、乾燥ペレット中のアルカリ金属塩の量を金属元素換算の値で得た。
【0123】
(9)リン酸化合物の定量
試料とする乾燥EVOHペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸イオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−A23を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際してはリン酸二水素ナトリウム水溶液で作成した検量線を用いた。こうして得られたリン酸イオンの量から、リン酸化合物の含有量をリン酸根換算の値で得た。
【0124】
(10)ホウ素化合物の定量
試料とする乾燥ペレット50mgを酸素フラスコ燃焼法により完全燃焼させ燃焼灰分を1mol/L硝酸水溶液10mlに溶解させた。
前記溶液を高周波プラズマ発光分析(ジャーレルアッシュ製ICP発光分析装置IRIS AP)により定量し、ホウ素化合物の含有量をホウ素元素換算値で得た。
【0125】
得られたEVOHの乾燥チップのケン化度は99.7モル%、メルトフローレート(MFR)は1.7g/10min(190℃、2160g荷重)であった。また、得られた乾燥EVOHペレットの酢酸の含有量は50ppmであり、アルカリ金属塩の含有量は金属元素換算で20ppmであり、リン酸化合物の含有量はリン酸根換算で20ppmであり、ホウ素化合物の含有量はホウ素元素換算で260ppmであった。
【0126】
次に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE:三井化学株式会社製「ウルトゼックス2022L」)、上記の樹脂組成物、上記のEVOHからなる3種5層のシートを、下記に示す製造条件にしたがって共押出成形により製造した。共押出成形により得られた3種5層フィルムの製膜直後のシートの樹脂組成物層とEVOH層とのT型剥離強度を20℃−65%RHの条件下、オートグラフ(引張速度250mm/min)を用いて測定し、得られた数値を層間接着力とした。層間接着力は1090g/15mmであった。この結果を表4に示す。
なお、成形に使用した押出機の構成、運転条件は下記のとおりである。
押出機1(LLDPE):32mmφ、単軸、GT−32−A型
(プラスチック工学研究所製)
スクリュー回転数:62rpm、設定温度:250℃
押出機2(樹脂組成物) :25mmφ、単軸、P25−18AC(大阪精機製)
スクリュー回転数:30rpm、設定温度:250℃
押出機3(EVOH) :20mmφ、単軸、ラボME型CO−EXT(東洋精機製)
スクリュー回転数:18rpm、設定温度:250℃
T型ダイ:300mm幅3種5層用(プラスチック工学研究所製)
設定温度:250℃
層構成:LLDPE/樹脂組成物/EVOH/樹脂組成物/LLDPE
厚み構成:50μm/10μm/10μm/10μm/50μm
【0127】
実施例8
実施例2で得られたボロン酸エステル基含有SEBSと、LLDPE(三井化学株式会社製「ウルトゼックス2022L」)を10:90の重量比で実施例7と同様の方法で溶融混練し、樹脂組成物を得た。上記ボロン酸エステル基含有SEBSの分岐度(α)は0.154であり、上記直鎖状低密度ポリエチレンの分岐度(β)は0.015であり、それらの差の絶対値|α−β|は0.139であった。この樹脂組成物を使用した以外は、実施例7と同様にして3種5層のシートを共押出成形により製造した。得られたシートの樹脂組成物層とEVOH層の層間接着力を測定したところ、980g/15mmであった。この結果を表4に示す。
【0128】
実施例9
実施例3で得られたボロン酸エステル基含有SEBSと、LLDPE(三井化学株式会社製「ウルトゼックス2022L」)を5:95の重量比で実施例7と同様の方法で溶融混練し、樹脂組成物を得た。上記ボロン酸エステル基含有SEBSの分岐度(α)は0.095であり、上記直鎖状低密度ポリエチレンの分岐度(β)は0.015であり、それらの差の絶対値|α−β|は0.080であった。この樹脂組成物を使用した以外は、実施例7と同様にして3種5層のシートを共押出成形により製造した。得られたシートの樹脂組成物層とEVOH層の層間接着力を測定したところ、1000g/15mmであった。この結果を表4に示す。
【0129】
実施例10
実施例4で得られたボロン酸エステル基含有SEBSと、LLDPE(三井化学株式会社製「ウルトゼックス2022L」)を5:95の重量比で実施例7と同様の方法で溶融混練し、樹脂組成物を得た。上記ボロン酸エステル基含有SEBSの分岐度(α)は0.95であり、上記直鎖状低密度ポリエチレンの分岐度(β)は0.015であり、それらの差の絶対値|α−β|は0.080であった。この樹脂組成物を使用した以外は、実施例7と同様にして3種5層のシートを共押出成形により製造した。得られたシートの樹脂組成物層とEVOH層の層間接着力を測定したところ、1100g/15mmであった。この結果を表4に示す。
【0130】
実施例11
実施例5で得られたボロン酸エステル基含有SEPSと、ポリプロピレン(日本ポリケム社製「ノーブレンEA7A」)を5:95の重量比で実施例7と同様の方法で溶融混練し、樹脂組成物を得た。上記ボロン酸エステル基含有SEPSの分岐度(α)は0.335であり、上記ポリプロピレンの分岐度(β)は0.499であり、それらの差の絶対値|α−β|は0.164であった。上記のポリプロピレン、上記の樹脂組成物、実施例7で使用したEVOHを各層成分とした以外は、実施例7と同様にして3種5層のシートを共押出成形により製造した。得られたシートの樹脂組成物層とEVOH層の層間接着力を測定したところ、1000g/15mmであった。この結果を表4に示す。
【0131】
比較例5
LLDPE(三井化学株式会社製「ウルトゼックス2022L」)、無水マレイン酸変性ポリエチレン(デュポン社製「BynelTM4125」)、実施例7で使用したEVOHを各層成分とした以外は、実施例7と同様にして3種5層のシートを共押出成形により製造した。得られたシートの樹脂組成物層とEVOH層の層間接着力を測定したところ、130g/15mmであった。この結果を表4に示す。
【0132】
比較例6
比較例2で得られたボロン酸エステル基含有SEBSと、LLDPE(三井化学株式会社製「ウルトゼックス2022L」)を25:75の重量比で実施例7と同様の方法で溶融混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を使用した以外は、実施例7と同様にして3種5層のシートを共押出成形により製造した。得られたシートの樹脂組成物層とEVOH層の層間接着力を測定したところ、150g/15mmであった。この結果を表4に示す。
【0133】
比較例7
比較例3で得られたボロン酸基含有SEPSと、LLDPE(三井化学株式会社製「ウルトゼックス2022L」)を50:50の重量比で実施例7と同様の方法で溶融混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を使用した以外は、実施例7と同様にして3種5層のシートを共押出成形により製造した。得られたシートの樹脂組成物層とEVOH層の層間接着力を測定したところ、50g/15mmであった。この結果を表4に示す。
【0134】
比較例8
比較例4で得られたボロン酸エステル基含有VLDPEと、LLDPE(三井化学株式会社製「ウルトゼックス2022L」)を25:75の重量比で実施例7と同様の方法で溶融混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を使用した以外は、実施例7と同様にして3種5層のシートを共押出成形により製造した。得られたシートの樹脂組成物層とEVOH層の層間接着力を測定したところ、100g/15mmであった。この結果を表4に示す。
【0135】
【表4】
Figure 0003850734
【0136】
合成例7(実施例12に使用)
乾燥した窒素で置換された200L耐圧容器中、溶媒としてシクロヘキサン75Kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム45gを添加し、次いでスチレン3.4Kgを添加し、50℃で重合した後、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.21Kgを加え、次いでブタジエン33.2Kgおよびスチレン3.4Kgを順次添加し、重合させてスチレン−ブタジエン−スチレン型のトリブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の分岐度(α)は0.150であった。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/Cを触媒として、水素圧力2MPa、反応温度100℃で水素添加を行い、スチレン−水添ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)を得た。得られたブロック共重合体の重量平均分子量は100900、スチレン含有量は17重量%、水添率は95モル%であった。
【0137】
実施例12
原料として上記の合成例7にしたがって作製したスチレン−水添ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)を使用し、ボラン−トリエチルアミン錯体(TEAB)とホウ酸1,3−ブタンジオールエステル(BBD)の混合液(TEAB/BBD=29/71、重量比)のフィード速度を1.5kg/時とし、1,3−ブタンジオールのフィード速度を0.9kg/時とした以外は、実施例1と同様にしてボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を含有するSEBSを得た。得られたSEBSの官能基量の合計量は450μeq/g(ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基310μeq/g;ボロン酸プロピレングリコールエステル基140μeq/g)であり、二重結合量は130μeq/gであった。得られたホウ素含有基を有するSEBSのH−NMRチャートを図1に示す。
【0138】
実施例13
実施例7と同様にして、実施例12で得られたボロン酸エステル基含有SEBSと、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE:三井化学株式会社製「ウルトゼックス2022L」)を5:95の重量比で溶融混練し、樹脂組成物を得た。ボロン酸エステル基含有SEBSの分岐度(α)は0.150であり、直鎖状低密度ポリエチレンの分岐度(β)は0.015であった。ボロン酸エステル基含有SEBSの分岐度(α)と直鎖状低密度ポリエチレンの分岐度(β)との差の絶対値|α−β|は0.135であった。また、ボロン酸エステル基含有SEBSのジエンブロックのメチル基由来水素含有率(γ)は0.16であり、直鎖状低密度ポリエチレンのメチル基由来水素含有率(δ)は0.04であり、それらの差の絶対値|γ−δ|は0.12であった。
【0139】
上記の直鎖状低密度ポリエチレン、上記の樹脂組成物、実施例7で使用したEVOHを各層成分とした以外は、実施例7と同様にして3種5層のシートを共押出成形により製造した。共押出成形により得られた3種5層フィルムの製膜直後のシートの樹脂組成物層とEVOH層とのT型剥離強度を20℃−65%RHの条件下、オートグラフ(引張速度250mm/min)を用いて測定し、得られた数値を層間接着力とした。層間接着力は1100g/15mmであり、極めて優れた接着性を示した。また、得られた多層シートは表面の平滑性に優れ、良好な外観を有していた。
【0140】
実施例14
実施例7と同様にして、実施例12で得られたボロン酸エステル基含有SEBSと、ポリプロピレン(日本ポリケム社製「ノーブレンEA7A」)を50:50の重量比で溶融混練し、樹脂組成物を得た。ボロン酸エステル基含有SEBSの分岐度(α)は0.150であり、ポリプロピレンの分岐度(β)は0.499であった。ボロン酸エステル基含有SEBSの分岐度(α)とポリプロピレンの分岐度(β)との差の絶対値|α−β|は0.349であった。また、ボロン酸エステル基含有SEBSのジエンブロックのメチル基由来水素含有率(γ)は0.16であり、ポリプロピレンのメチル基由来水素含有率(δ)は0.49であり、それらの差の絶対値|γ−δ|は0.33であった。
【0141】
上記のポリプロピレン、上記の樹脂組成物、実施例7で使用したEVOHを各層成分とした以外は、実施例7と同様にして3種5層のシートを共押出成形により製造した。共押出成形により得られた3種5層フィルムの製膜直後のシートの樹脂組成物層とEVOH層とのT型剥離強度を20℃−65%RHの条件下、オートグラフ(引張速度250mm/min)を用いて測定し、得られた数値を層間接着力とした。層間接着力は600g/15mmであった。また、得られた多層シートは、実施例13で得られた多層シートと比べて、表面の平滑性に劣った。
【0142】
実施例15
実施例7と同様にして、実施例12で得られたボロン酸エステル基含有SEBSと、ポリプロピレン(日本ポリケム社製「ノーブレンEA7A」)を25:75の重量比で溶融混練し、樹脂組成物を得た。ボロン酸エステル基含有SEBSの分岐度(α)0.150であり、ポリプロピレンの分岐度(β)は0.499であった。ボロン酸エステル基含有SEBSの分岐度(α)とポリプロピレンの分岐度(β)との差の絶対値|α−β|は0.349であった。また、ボロン酸エステル基含有SEBSのジエンブロックのメチル基由来水素含有率(γ)は0.16であり、ポリプロピレンのメチル基由来水素含有率(δ)は0.49であり、それらの差の絶対値|γ−δ|は0.33であった。
【0143】
上記のポリプロピレン、上記の樹脂組成物、実施例7で使用したEVOHを各層成分とした以外は、実施例7と同様にして3種5層のシートを共押出成形により製造した。共押出成形により得られた3種5層フィルムの製膜直後のシートの樹脂組成物層とEVOH層とのT型剥離強度を20℃−65%RHの条件下、オートグラフ(引張速度250mm/min)を用いて測定し、得られた数値を層間接着力とした。層間接着力は250g/15mmであった。
【0144】
実施例13〜15を比較すればわかるように、スチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)の分岐度(α)とポリオレフィン(B1)の分岐度(β)との差の絶対値|α−β|が0.25以下である場合には、それが0.25を超える場合よりも層間接着性が良好である。また、それらのメチル基由来水素含有率の差の絶対値|γ−δ|が0.25以下である場合にも、それが0.25を超える場合よりも層間接着性が良好である。一方、樹脂組成物(C)中のスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)の含有量を大きくすることである程度接着性の改善が可能であるが、この場合には得られるシートの表面の平滑性が劣ることになった。
【0145】
合成例8(実施例16に使用)
乾燥した窒素で置換された200Lの耐圧容器中、溶媒としてシクロヘキサン75Kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム21gを添加し、次いでスチレン2.5Kgを添加し、50℃で重合した後、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.59Kgを添加し、次いでイソプレン20Kgおよびスチレン2.5Kgを順次添加し、重合させてスチレン−イソプレン−スチレン型のトリブロック共重合体を得た。ブロック共重合体の分岐度(α)は0.335であった。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/Cを触媒として、水素圧力2MPa、反応温度100℃で水素添加を行い、スチレン−水添イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)を得た。得られたブロック共重合体の重量平均分子量は100000、スチレン含有量は20重量%、水添率は91モル%であった。
【0146】
実施例16
原料として上記の合成例8にしたがって作製したスチレン−水添イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)を使用し、ボラン−トリエチルアミン錯体(TEAB)とホウ酸1,3−ブタンジオールエステル(BBD)の混合液(TEAB/BBD=29/71、重量比)のフィード速度を1.4kg/時とし、1,3−ブタンジオールのフィード速度を0.9kg/時とした以外は、実施例1と同様にしてボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基を含有するSEPSを得た。得られたSEBSの官能基量の合計量は580μeq/g(ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基490μeq/g;ボロン酸プロピレングリコールエステル基90μeq/g)であり、二重結合量は430μeq/gであった。得られたホウ素含有基を有するSEPSのH−NMRチャートを図2に示す。
【0147】
実施例17
実施例7と同様にして、実施例12で得られたボロン酸エステル基含有SEPSと、ポリプロピレン(日本ポリケム社製「ノーブレンEA7A」)を10:90の重量比で溶融混練し、樹脂組成物を得た。ボロン酸エステル基含有SEPSの分岐度(α)は0.335であり、ポリプロピレンの分岐度(β)は0.499であった。ボロン酸エステル基含有SEPSの分岐度(α)とポリプロピレンの分岐度(β)との差の絶対値|α−β|は0.164であった。また、ボロン酸エステル基含有SEPSのジエンブロックのメチル基由来水素含有率(γ)は0.45であり、ポリプロピレンのメチル基由来水素含有率(δ)は0.49であり、それらの差の絶対値|γ−δ|は0.04であった。
【0148】
上記のポリプロピレン、上記の樹脂組成物、実施例7で使用したEVOHを各層成分とした以外は、実施例7と同様にして3種5層のシートを共押出成形により製造した。共押出成形により得られた3種5層フィルムの製膜直後のシートの樹脂組成物層とEVOH層とのT型剥離強度を20℃−65%RHの条件下、オートグラフ(引張速度250mm/min)を用いて測定し、得られた数値を層間接着力とした。層間接着力は600g/15mmであり、優れた接着性を示した。また、得られた多層シートは表面の平滑性に優れ、良好な外観を有していた。
【0149】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のスチレン−水添ジエンブロック共重合体は、ポリオレフィンなどの他樹脂との相容性、接着性が良好であり、単独で、または他の樹脂との組成物として、相容性改質剤、接着性付与剤として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例12で得られたホウ素含有基を有するSEBSのH−NMRチャートである。
【図2】実施例16で得られたホウ素含有基を有するSEPSのH−NMRチャートである。

Claims (9)

  1. ボロン酸基および水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を側鎖に含有するスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)であって、該ブロック共重合体(A)に含有される前記官能基量が100〜2000μeq/gであり、かつ該ブロック共重合体(A)に含有されるスチレン単位と水添ジエン単位の重量比[(スチレン単位)/(水添ジエン単位)]が5/95〜70/30であることを特徴とするスチレン−水添ジエンブロック共重合体(A)と;
    ポリオレフィン(B1)とを;
    重量比[(A)/(B1)]で1/99〜50/50の割合で含有し;かつ
    下記式(1)又は(2)のいずれかを満足することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(C)。
    |α−β|≦0.25 (1)
    |γ−δ|≦0.25 (2)
    ただし、
    α:ブロック共重合体(A)のジエンブロックの分岐度
    β:ポリオレフィン(B1)の分岐度
    γ:ブロック共重合体(A)のジエンブロックのメチル基由来水素含有率
    δ:ポリオレフィン(B1)のメチル基由来水素含有率
  2. 前記式(1)及び(2)のいずれも満足する請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
  3. 請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物(C)からなる接着剤。
  4. 請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物(C)層および(A)以外の熱可塑性樹脂(D)層からなる多層構造体。
  5. 熱可塑性樹脂(D)層を構成する熱可塑性樹脂(D)がポリオレフィン(D1)である請求項記載の多層構造体。
  6. 前記ポリオレフィン(B1)およびポリオレフィン(D1)がいずれも、その構成成分として同一のα−オレフィンを50重量%以上含有するポリオレフィンである請求項記載の多層構造体。
  7. エチレン−ビニルアルコール共重合体(E)層と、前記熱可塑性樹脂(D)層とを、前記熱可塑性樹脂組成物(C)層を介して積層してなる請求項4〜6のいずれか1項に記載の多層構造体。
  8. エチレン−ビニルアルコール共重合体(E)のアルカリ金属塩の含有量が金属元素換算で100ppm以下である、請求項記載の多層構造体。
  9. 共押出成形又は多層射出成形してなる請求項4〜8のいずれか1項に記載の多層構造体。
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