JP3618373B2 - 多層構造体および成形物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、機械的性質の改善された樹脂組成物の層を含む多層構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ビニルアルコール系重合体単独では柔軟性および機械的特性が不充分であり、これを改善するためにビニルアルコール系重合体以外のポリオレフィンなどの熱可塑性重合体をブレンドしていた。一方、ポリオレフィンなどの熱可塑性重合体単独ではガスバリヤー性が不充分であり、これを改善するためにビニルアルコール系重合体をブレンドしていた。しかしながら、ビニルアルコール系重合体とポリオレフィンなどの熱可塑性重合体とは親和性が低く、分散性が不良のために、これらのブレンド物からなる成形物やフィルムは機械的特性が著しく低下したり、透明性が大きく低下するという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、末端にアルキル基を導入したエチレン−ビニルアルコール系重合体とオレフィン系重合体とをブレンドする方法(特開昭63−202638号);エチレン−ビニルアルコール系共重合体とエポキシ基を導入したオレフィン系重合体とをブレンドする方法(特開平3−88837号)が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法では依然として改善効果が小さく、ブレンド物の分散性、透明性および機械的特性をさらに向上させることが望まれていた。
本発明の目的は、機械的性質の改善された、ビニルアルコール系重合体およびビニルアルコール系重合体以外の熱可塑性重合体からなる樹脂組成物の層を含む多層構造体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、二種類以上のビニルアルコール共重合体(A)、(B)と、ボロン酸基、ボリン酸基、水の存在下でボロン酸基、ボリン酸基に転化しうるホウ素含有基から選ばれる少なくとも−つの官能基を有するポリオレフィン(C)からなる樹脂組成物、および これらにさらに熱可塑性重合体(D)を配合した樹脂組成物を提供することによって達成される。
【0006】
本発明に使用されるビニルアルコール系重合体(A),(B)中のビニルアルコール単位の含有量は特に制限はないが、1〜90モル%が好ましく、30〜80モル%がより好ましく、40〜75モル%がさらにより好ましい。ビニルアルコール系重合体としては、特にエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体が好ましい。ビニルアルコール系重合体がエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体である場合には、エチレン含量は、10〜90モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましく、25〜60モル%がさらにより好ましい。
【0007】
ビニルアルコール系重合体が共重合体である場合のビニルアルコール単位以外の単位としては、ビニルエステル単位およびコモノマー単位が挙げられる。ビニルエステル単位の具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニルおよび安息香酸ビニル等からなる単位が挙げられる。コモノマー単位としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;メタクリルアミド、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリル誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アリルアルコール;ビニルトリメチルシラン;N−ビニルピロリドン等からなる単位が挙げられる。
ビニルアルコール系重合体の中のケン化されていないビニルエステル単位は該重合体の結晶化度を低下させるため、該重合体のケン化度は高い方が好ましい。したがって、ビニルアルコール系重合体のビニルエステル単位のけん化度としては1〜100モル%が好ましく、20〜100モル%、50〜100モル%、さらには80〜100モル%がより好ましく、最適には95〜100モル%、さらには99〜100モル%である。
【0008】
ビニルアルコール系重合体のメルトインデックス(2160gの荷重下、190℃で測定した値、ただし、融点が190℃付近あるいは190℃を越えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、メルトインデックス(対数)を縦軸としてプロットし、190℃に外挿した値;以下MIと略記する)は特に制限はないが、0.1〜100g/10分が好ましい。ビニルアルコール系重合体のMIが0.1g/10分未満の場合またはビニルアルコール系重合体が熱可塑性でない場合には、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール系可塑剤またはこれらの混合物を添加してMIを適性値に調節するのが好ましい。
【0009】
本発明において用いるビニルアルコール系重合体(A)と(B)とはメルトインデックス、けん化度、およびビニルアルコ−ル含有量の少なくともひとつが異なる事が必須である。けん化度に関しては、1〜10モル%、好適には2〜8モル%異なる事が望ましく、ビニルアルコ−ル含有量に関して、1〜40モル%、好適には2〜35モル%異なる事が望ましい。メルトインデックスについては0.1〜50g/10分、好適には0.2〜30g/10分異なることが望ましい。また、これらはひとつのみ異なっていてもよいし、また 2つまたは全部が異なっていてもよい。好ましくは、ビニルアルコ−ル共重合体(A)と(B)の融点が異なるように選択するのが好適である。好適な融点差は1〜70℃、さらに好適には2〜50℃である。また、(A)と(B)との添加比率に関しては(A)/(B)=1/99〜99/1、好適には5/95〜95/5、より好適には10/90〜90/10である。
【0010】
ビニルアルコール系重合体(A)(B)二種類用いる大きな目的は、ビニルアルコール系重合体一種類の場合と比較して、同じ性能を発現するに必要な、下記で述べるボロン酸変性ポリオレフィン(C)あるいは熱可塑性樹脂(D)の添加量を大巾に削減可能である。その結果、ガスバリア−性、透明性、熱安定性、コストの面で好適である。
【0011】
本発明におけるボロン酸基、ボリン酸基、水の存在下でボロン酸基、ボリン酸基に転化しうるホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有するポリオレフィン(b)とは、詳しくは、ボロン酸基、ボリン酸基、水の存在下でボロン酸基、ボリン酸基に転化しうるホウ素含有基からなる群より選ばれる少なくとも一つの官能基がホウ素−炭素結合により主鎖、側鎖または末端に結合したポリオレフィンである。このうち、前記官能基が側鎖または末端に結合したポリオレフィンが好ましく、末端に結合したポリオレフィンが最適である。ここで末端とは片末端または両末端を意味する。また、ホウ素−炭素結合の炭素は後述するポリオレフィンのベースポリマーに由来するもの、あるいはベースポリマーに反応させるホウ素化合物に由来するものである。ホウ素−炭素結合の好適な例としては、ホウ素と主鎖あるいは末端あるいは側鎖のアルキレン基との結合があげられる。本発明においては、ボロン酸基を有するポリオレフィンが好適であるので、以下この点について説明する。本発明において、ボロン酸基とは、下記(I)で示されるものである。
【0012】
【化1】
【0013】
また水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基(以下単にホウ素含有基と略記する)としては、水の存在下で加水分解を受けて上記式(I)で示されるボロン酸基に転化しうるホウ素含有基であれば、どのようなものでもよいが、代表例として下記一般式(II)で示されるボロン酸エステル基、下記一般式(III )で示されるボロン酸無水物基、下記一般式(IV)で示されるボロン酸塩基があげられる。
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
{式中、X,Yは水素原子、脂肪族炭化水素基(炭素数1〜20の直鎖状、または分岐状アルキル基、またはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基など)を表わし、X,Yは同じ基でもよいし、異なっていてもよい。またXとYは結合していてもよい。ただしX,Yがともに水素原子である場合は除かれる。またR1 、R2 、R3 は上記X,Yと同様の水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基を表わし、R1 、R2 、R3 は同じ基でもよいし、異なっていてもよい。またMはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わす。また上記のX,Y,R1 、R2 、R3 には他の基、たとえばカルボキシル基、ハロゲン原子などを有していてもよい。}
【0018】
一般式(II)〜(IV)で示されるボロン酸エステル基の具体例としてはボロン酸ジメチルエステル基、ボロン酸ジエチルエステル基、ボロン酸ジプロピルエステル基、ボロン酸ジイソプロピルエステル基、ボロン酸ジブチルエステル基、ボロン酸ジヘキシルエステル基、ボロン酸ジシクロヘキシル基、ボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基(ボロン酸1,2−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基)、ボロン酸トリメチレングリコールエステル基、ボロン酸ネオペンチルグリコールエステル基、ボロン酸カテコールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基、ボロン酸トリメチロールエタンエステル基等のボロン酸エステル基;ボロン酸無水物基;ボロン酸のアルカリ金属塩基、ボロン酸のアルカリ土類金属塩基等が挙げられる。
【0019】
前記の官能基の中でもとくにボロン酸エチレングリコールエステル基などのボロン酸エステル基がEVOH(d)との相溶性の点から好ましい。
なお前記の水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基とは、ポリオレフィンを、水または水と有機溶媒(トルエン、キシレン、アセトンなど)との混合液体中で、反応時間10分〜2時間、反応温度室温〜150℃の条件下に加水分解した場合に、ボロン酸基またはボリン酸基に転化しうる基を意味する。
【0020】
前記官能基の含有量は特に制限はないが、0.0001〜1meq/g(ミリ当量/g)が好ましく、特に、0.001〜0.1meq/gが好ましい。この程度の少量の官能基の存在により、樹脂組成物の相溶性、透明性等が著しく改善されることは驚くべきことである。
ボロ酸変性ポリオレフィン(b)のベースポリマーとしてはエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、3−メチルペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類で代表されるオレフィン系単量体等があげられる。
【0021】
ベースポリマーはこれらの単量体の一種または二種あるいは三種以上からなる重合体として使用される。これらのベースポリマーのうち、特にエチレン系重合体{超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体の金属塩(Na,K,Zn系アイオノマー)、エチレン−プロピレン共重合体等}、プロピレン系重合体が好適なものとして挙げられる。
【0022】
本発明に使用するポリオレフィン(b)の好適なメルトインデックス(MI)(210℃、2160g荷重下で測定した値)は0.005〜1000g/10分が好ましく、0.1〜100g/分がより好ましい。
【0023】
次に本発明に用いるボロン酸基およびホウ素含有基を有するポリオレフィン系重合体の代表的製法について述べる。ボロン酸基あるいは水の存在によりボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有するオレフィン系重合体は、窒素雰囲気下で炭素−炭素二重結合を有するオレフィン系重合体にボラン錯体およびホウ酸トリアルキルエステルを反応させることによって、ボロン酸ジアルキルエステル基を有するオレフィン系重合体を得た後、水あるいはアルコール類を反応させることによって得られる。この製法において原料として末端に二重結合を有するオレフィン系重合体を使用すれば、末端にボロン酸基あるいは水の存在によりボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有するオレフィン系重合体が得られ、側鎖または主鎖に二重結合を有するオレフィン系重合体を原料として使用すれば、側鎖にボロン酸基あるいは水の存在によりボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有するポリオレフィン系重合体を得られる。
【0024】
原料の二重結合を有するオレフィン系重合体の代表的製法としては、1)通常のオレフィン系重合体の末端に微量に存在する二重結合を利用する方法;2)通常のオレフィン系重合体を無酸素条件下、熱分解し、末端に二重結合を有するオレフィン系重合体を得る製法;3)オレフィン系単量体とジエン系重合体の共重合によりオレフィン系単量体とジエン系単量体との共重合体を得る製法;が挙げられる。1)については、公知のオレフィン系重合体の製法を用いることができるが、特に、連鎖移動剤として水素を用いず、重合触媒としてメタロセン系重合触媒を用いる製法(例えば、DE4030399)が好ましい。2)については、公知の方法(例えばUS2835659,3087922)によりオレフィン系重合体を窒素雰囲気下や真空条件下等の無酸素条件下で300℃〜500℃の温度で熱分解することによって得られる。3)については公知のチーグラー系触媒を用いたオレフィン−ジエン系共重合体の製法(例えば特開昭50−44281、DE3021273)を用いることができる。
【0025】
ボラン錯体としては、ボラン−テトラヒドロフラン錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−ピリジン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体、ボラン−トリエチルアミン等が好ましい。これらのなかで、ボラン−トリエチルアミン錯体およびボラン−トリメチルアミン錯体がより好ましい。ボラン錯体の仕込み量はオレフィン系重合体の二重結合に対し、1/3当量から10当量の範囲が好ましい。
ホウ酸トリアルキルエステルとしては、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリブチルボレート等のホウ酸低級アルキルエステルが好ましい。ホウ酸トリアルキルエステルの仕込み量はオレフィン系重合体の二重結合に対し1から100当量の範囲が好ましい。溶媒は特に使用する必要はないが、使用する場合は、ヘキサン、ヘブタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の飽和炭化水素系溶媒が好ましい。
ボロン酸ジアルキルエステル基を二重結合を有するオレフィン系重合体へ導入する反応は、反応温度室温〜300℃、好ましくは100〜250℃、反応時間1〜10時間、好ましくは5〜5時間行うのがよい。
【0026】
水あるいはアルコール類を反応させる条件としては通常、トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒を反応溶媒として用い、水またはメタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、ペンタニリスリトール、ジペンタニリスリトール等の多価アルコール類をボロン酸基に対し、1から100等量以上の六過剰量を用い、室温〜150℃の温度で1分〜1日程度反応を行うことによって得られる。
なお、前記の官能基の中でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基とは、水または水と有機溶媒(トルエン、キシレン、アセトンなど)との混合溶媒中で、反応時間10分〜2時間、反応温度室温〜150℃の条件下に加水分解した場合に、ボロン酸基に転化しうる基を意味する。
【0027】
本発明の樹脂組成物はビニルアルコール系重合体(A),(B)および
ボロン酸変性ポリオレフィン(C)からなる。成分(A)と成分(B)の重量配合比は、99:1ないし1:99であり、95:5ないし5:95がより好ましく、95:5ないし30:70がさらにより好ましく、95:5から45:55が特に好ましい。また、成分(A)と(B)の合計重量と成分(C)の重量配合比は、99:1ないし1:99であり、95:5ないし5:95がより好ましく、95:5ないし30:70がさらにより好ましく、95:5ないし45:55が特に好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、成分(A),(B),および成分(C)に、さらにそれ以外の他の熱可塑性重合体(D)を含有する態様も含まれる。
ここで熱可塑性重合体(D)としては、前記した成分(C)のベースポリマーがあげられ、好適にはポリオレフィン{ポリエチレン(高、中、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン(PP)等}、アイオノマー(IO)、エチレン−酢酸ビニル共重合体 (EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(EEA)、ポリスチレン(PS)、さらにはポリエステル (ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリアセタールがあげられる。これらの熱可塑性重合体(D)は1種のみを使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。熱可塑性重合体(D)の含有量は、成分(C)と成分(D)の重量配合比99:1ないし1:99であり、より好適には95:5ないし5:95である。これらの熱可塑性重合体(D)は、多層構造体のスクラップを回収再利用する場合に主に存在することになるが、そのような場合(スクラップを回収層として使用する場合)でもスクラップ回収層未使用品にくらべ落下破袋強度などの機械的強度の点で大差がない。
【0029】
成分(D)は、成分(A)、(B)と成分(C)をブレンドした後に配合するのが効果的である。この場合、成分(A)、(B)および成分(C)の合計含有量が少量でも、分散不良による性能低下を防止できる。ブレンドの方法には、バンバリミキサーによる方法、単軸あるいは二軸スクリュー押出機による溶融ブレンド方法など公知の方法が採用できる。またこのブレンドの際に、本発明の作用効果が阻害されない範囲で他の添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤等を配合できる。
【0030】
前記した樹脂組成物層の少なくとも片面に熱可塑性重合体層を積層することにより好適な態様である多層構造体が得られる。ここで熱可塑性重合体としては、樹脂組成物層の耐湿性、機械的性質などをより改善するものであれば、とくに限定されないが、たとえば前記したホウ素含有基を有するポリオレフィン(C)のベースポリマー(官能基を有しないもの)などがあげられる。好適にはポリオレフィン{ポリエチレン(高、中、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン(PP)等}、アイオノマー(IO)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(EEA)、ポリスチレン(PS)があげられ、さらにはポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリアセタールがあげられる。また、熱可塑性重合体として前記したビニルアルコ−ル系重合体(A)、 (B) たとえばエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などもあげられる。また熱可塑性重合体の種類は要求される特性および用途によって適宜選択される。
【0031】
多層構造体は共押出、共射出、押出コーティング等公知の方法で成形され、またこれらの成形品のスクラップを再使用することもできるし、またスクラップを再使用する場合、本発明の樹脂組成物をスクラップ中に配合すること、あるいは本発明で用いる成分(A)、(B)または成分(C)をスクラップ中に配合することもできる。
【0032】
多層構造体を得る場合、本発明の樹脂組成物層と熱可塑性樹脂層に接着性樹脂層を介在させることが両層を強固に接着せしめることができるので好ましい場合が多い。ここで接着性樹脂としては、両層を強固に接着するものであれば、特に限定されるものではないが、不飽和カルボン酸またはその無水物(無水マレイン酸など)をオレフィン系重合体または共重合体[ポリエチレン{低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(SLDPE)}、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メチルエステルまたはエチルエステル)共重合体、ポリプロピレンなど]にグラフトしたもの、水素化スチレン−ブタジエン共重合体の酸無水物(無水マレイン酸など)変性物、液状ブタジエンの酸無水物変性物、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体の酸無水物変性物等のジエン系重合体酸無水物変性物等が好適に用いられる。
【0033】
多層構造体の層構成としては、樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層、樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層、熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層、熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層/スクラップ回収層/熱可塑性樹脂層、熱可塑性樹脂層/スクラップ回収層/樹脂組成物層/スクラップ回収層/熱可塑性樹脂層、あるいはこれらの層の少なくとも一つの層間に前記した接着性樹脂層を介在させたものが挙げられる。
【0034】
前記した本発明の樹脂組成物より得た多層構造体は、ガスバリアー性の要求される食品、医薬、医療器材、衣料などの包装材料において、またガスバリアー性および機械的強度、特に耐衝撃性の要求されるパイプ、タンクなどの非食品分野において有用である。
【0035】
とくに本発明の多層構造体は、1)有機液体用タンク、パイプ、床暖房用温水パイプ、2)回収層を含むカップ、ボトル、3)耐ピンホール性を必要とするフィルム、4)延伸、収縮性を必要とするフィルム、シートに用いた場合、その性能が顕著に発現する。
【0036】
燃料(ガソリンなど)、農薬、有機液体などの有機液体のタンク、パイプ用途としては、従来、有機液体透過性、例えばガソリン、特にメタノール混合ガソリンバリアー性の良好な高密度ポリエチレン(HDPE)/接着性樹脂(Ad)/エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)/Ad/HDPEの多層構成タンク、あるいはポリアミド(PA)/EVOH/PAの多層構成パイプが用いられており、さらには床暖房用温水パイプとして、EVOH/Ad/HDPEの多層構成パイプが用いられて来ているが、長期間(1〜50年)使用した場合、EVOH層に起因する衝撃強度の低下、ストレスクラックの発生等により、バリアー性の大巾悪化ないしは液体の漏れが発生する場合があり、耐衝撃強度、耐ストレスクラック性の改善、解決が求められている。
【0037】
回収層を含むカップ、ボトル用途としては、カップ、ボトル成形時発生するバリ、スクラップは30〜50%に達し、地球環境問題等により廃棄、焼却が困難なばかりでなく、製造コスト低減の必要性からも回収再使用が求められている。しかし、ガスバリアー性を目的に製造されるポリエチレン(PE)/Ad/EVOH/Ad/PEあるいはポリプロピレン(PP)/Ad/EVOH/Ad/PP等の多層構成カップ、ボトルはそのまま回収再使用すると、PP、PEとEVOHとの相溶性が悪いため、成形時流動異常が生じ均一な膜面が得られないだけでなく、透明性も悪化し、商品化が困難であり、相溶性の改善、解決が求められている。
【0038】
耐ピンホール性を必要とするフィルム用途としては、最近の省資源化に於いて、ダンボール箱の内部にプラスチック性のフィルムを内袋として用いるバッグインボックス(BIB)等の用途に於いて、ガスバリアー性包材として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)/Ad/EVOH/Ad/LLDPE構成の多層体が用いられているが、輸送時の振動等による繰返し屈曲の為、剛直なEVOH層にピンホールが発生、さらには貫通穴による液漏れが生じ易く問題があり、耐ピンホール性、柔軟性の改善が求められている。
【0039】
また、延伸、収縮性を必要とするフィルム、シート用途としては、バリアー性シュリンクフィルム、バリアー性スキンパックフィルム、熱成形用バリアー性シートが挙げられる。シュリンクフィルム、スキンパックフィルムに関しては、EVA/Ad/EVOH/Ad/EVAあるいはEVA/Ad/EVOH/Ad/IO等が挙げられるがEVOH層の延伸倍率、延伸速度の面から延伸性が十分でなく、その結果熱収縮性が十分に得られない欠点がある。また、熱成形シートに関してはPP/Ad/EVOH/Ad/PPあるいはPS/Ad/EVOH/Ad/PS等の多層シートに於いて、熱成形時EVOH層の延伸不良により、熱成形容器側面にクラック、ムラ等の異常が発生する問題があり、EVOH層の延伸性、収縮性の改善が求められている。
ところが、前記いずれの場合も、本発明において使用する樹脂組成物層をEVOH層に代えて使用した場合、それぞれの問題点を著しく改善することができる。このことは後述する実施例の記載から明らかである。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。なお、以下の合成例および実施例において特に断りのない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0041】
合成例1
末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有する超低密度ポリエチレンの合成:
冷却器、撹拌機および滴下ロート付きセパラブルフラスコに超低密度ポリエチレン{MI7g/10分(210℃、荷重2160g)密度0.89、末端二重結合量0.048meq/g}1000g、デカリン2500gを仕込み、室温で減圧することにより脱気を行った後、窒素置換を行った。これにホウ酸トリメチル78g、ボラン−トリエチルアミン錯体5.8gを添加し、200℃で4時間反応後、蒸留器具を取り付け、さらにメタノール100mlをゆっくり滴下した。メタノール滴下終了後、減圧蒸留により、メタノール、ホウ酸トリメチル、トリエチルアミン等の低沸点の不純物を留去した。さらにエチレングリコール31gを添加し、10分間撹拌後、アセトンに再沈し、乾燥することにより、ボロン酸エチレングリコールエステル基量0.027meq/g、MI5g/10分の超低密度ポリエチレン(ボロン酸変性ポリエチレン)(B−PE)を得た。
【0042】
合成例2
末端に二重結合を有するポリプロピレンの合成:
フィーダーに窒素導入管を備えたスクリュー径25mmφの二軸セグメント式押出機にポリプロピレン(MI0.5g/10分、密度0.90)を供給し、下記の条件で押出しペレット化を行った。
温度条件(℃):C1/C2/C3/C4/C5/ダイ=250/370/370/350/270/210
吐出量:1.45kg/h
スクリュー回転数:235rpm
窒素流量:5L/分
得られたペレットをヘキサンに1日浸漬後、乾燥することにより、二重結合量0.012meq/g、MI20g/10分のポリプロピレンを得た。
【0043】
末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有するポリプロピレンの合成冷却器、撹拌機および滴下ロート付きセパラブルフラスコに合成例の末端に二重結合を有するポリプロピレン1000g、デカリン2000gを仕込み、室温で減圧することにより脱気を行った後、窒素置換を行った。これにホウ酸トリメチル40g、ボラン−トリエチルアミン錯体2.9gを添加し、200℃で4時間反応後、蒸留器具を取り付け、さらにメタノール100mlをゆっくり滴下した。メタノール滴下終了後、減圧蒸留により、メタノール、ホウ酸トリメチル、トリエチルアミン等の低沸点の不純物を留去した。さらにエチレングリコール31gを添加し、10分間撹拌後、アセトンに再沈し、乾燥することにより、ボロン酸エチレングリコールエステル基量0.012meq/g、MI21g/10分のポリプロピレン(ボロ酸変性ポリプロピレン)(B−PP)を得た。
【0044】
実施例1
合成例1のB−PE(C)10重量部を、エチレン含量31モル、ケン化度99.6モル%、メルトインデックス1.5g/10分のエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)(A)60重量部およびエチレン含量38モル、ケン化度99.5%、メルトインデックス1.7g/10分のEVOH(B)30重量部を混合後、以下の条件でペレット化を行った。
使用押出機 :セグメント式ラボ2軸押出機(25mm径)
スクリュー形状 :Cタイプ(強混練タイプ)
スクリュー回転数:230rpm
吐出量 :0.6Kg/h
【0045】
該ペレットを単層フィルム成形装置に投入し、100μのフィルムを得、JISダンベル3号を用いて10%引張伸度付加のもと、40℃のガソリンに3時間浸漬し、ストレスクラック性の評価を行ったが、クラックは認められなかった。また、前記ペレットを用いて3種5層の共押出多層ダイレクトブロー装置にかけ、多層容器を作成した。シートの構成は両最外層高密度(ポリエチレン樹脂層)が各850μまた接着性樹脂層(無水マレイン酸変性ポリエチレン)が各100μ、さらに中間層には上記EVOH組成物(C)層100μである。得られた容器にガソリンを充填し、40℃−65%RH条件下で1年間放置したが、クラック、ガソリンバリアー性の悪化は認められなかった。加速試験として、該容器の胴部を切取り、上記単層フィルムと同様にJISダンベル3号を用いて10%引張伸度付加のもと、40℃ガソリンに3時間浸漬し、ストレスクラック性の評価を行ったが、クラックは認められなかった。また該容器のガソリンの透過度は0.01g/m2 .dayであった。
【0046】
実施例2
実施例1で用いたEVOH組成物を用いて4種5層共押出多層パイプ成形装置にかけ、多層パイプを作成した。パイプの構成は最外層(12ナイロン層)が450μ、接着性樹脂層が各50μ、6ナイロン層が100μ、上記EVOH組成物層が150μであり、最内層(6ナイロン層)が250μである。得られたパイプの末端に金属製金具を取付け、R(半径)=30cmでループ状に巻き、ガソリンを充填し、40℃−65%RH条件下で1年間放置したが、クラック、ガソリンバリアー性の悪化は認められなかった。加速試験として、該パイプの胴部を輪切りにし、10%引張伸度が付加出来るように、パイプ内径周囲長さより10%長い外周径を持つ円柱状の治具で該輪切りパイプを押し広げ(10%引張伸度付加)、40℃、15%メタノール含有ガソリンに3時間浸漬し、ストレスクラック性の評価を行ったが、クラックは認められなかった。また、該パイプのガソリン透過度は0.3g/m2 .dayであった。
【0047】
比較例1
B−PE(C)を使用する代りに、通常のポリエチレンを用いたほかは、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
得られた100μの単層フィルムを、実施例1と同様にガソリン浸漬した結果、ストレスクラックが認められた。
また、3種5層共押出多層ダイレクトブローによる多層容器に実施例1と同様にガソリン浸漬した結果、1年間放置後のガソリンバリアー性は0.01から0.9g/m2 .dayまで上昇し、クラックによると推定される、ガソリンバリアー性の悪化が認められた。
【0048】
実施例3
実施例1で得られたEVOH組成物を用いて3種5層共押出装置にかけ、多層シート(ポリスチレン樹脂層、接着性樹脂層/EVOH組成物層/接着性樹脂層/ポリスチレン樹脂層)を作成した。シートの構成は、両最外層のポリスチレン樹脂層(旭ダウ スタイロン 691)が800μ、また接着性樹脂層(東ソ−「メルセンM−5420」、マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体)が各50μ、さらに中間層(EVOH組成物層)が50μである。該シートは真空圧空熱成形機にかけ(延伸速度9×10%/min.)130℃で成形をおこなった。その結果、成形物は、クラック、ムラ、偏肉もなく、外観および透明性も良好であった。この容器を20℃−65%RHに調湿し、酸素透過度を測定したところ(モコン社製10/50型)、0.9cc.20μ/m2 .24hr.atmと非常に良好なガスバリアー性を示すだけでなく、20サンプル測定した時の測定値のバラツキ(R=最大の酸素透過度値−最小の酸素透過度値)が0.3と非常に小さく、信頼性の高い高ガスバリアー性容器であった。
【0049】
また、熱成形時生じたスクラップ、トリムを粉砕し4種7層共押出装置にかけ、多層シート(ポリスチレン樹脂層/回収層/接着性樹脂層/EVOH組成物層/接着性樹脂層/回収層/ポリスチレン樹脂層)を作成した。シートの構成は、両最外層のポリスチレン樹脂層200μ、回収層600μまた接着性樹脂層が100μ、さらに中間層(EVOH組成物層)が50μである。該シートのシート成形性および熱成形性は良好であり、容器の落下破袋強度も回収層未使用品と大差なかった。
【0050】
比較例2
B−PE(C)を使用する代りに、通常のポリエチレンを用いたほかは、実施例1と同様にして多層容器を得た。
得られたEVOH組成物を実施例3と同様に熱成形したが、成形物は、クラック、ムラ、偏肉はなかったが、白濁し透明性が不良好であった。顕微鏡の観察の結果、EVOH層に微小なボイドが無数に見受けられた。この容器を20℃−65%RHに調湿し、ガスバリアー性を測定したところ(モコン社製10/50型)、酸素透過度5.5cc.20μ/m2 .24hr.atmとガスバリアー性が不良であった。
また、実施例3と同様、4種7層共押出シート成形に於いて、多層シートの外観は波打っており流動異常をうかがわせた。そのためか、熱成形容器にはムラ、偏肉が存在し、透明性も不良好であった。更に、容器の落下破袋強度も回収層未使用品の約1/4に低下していた。
【0051】
実施例4
実施例1において、エチレン含量38モル%、けん化度99.5%のEVOH(B)30重量部をエチレン含量31モル%、けん化度95%のEVOH(B)20重量部に変更したEVOH組成物を用いて実施例3と同様にシ−ト成形、熱成形を行った。その結果、成形物は、クラック、ムラ、偏肉もなく、外観および透明性も良好であった。この容器を20℃−65%RHに調湿し、酸素透過度を測定したところ(モコン社製10/50型)、0.6cc.20μ/m2 .24hr.atmと非常に良好なガスバリアー性を示すだけでなく、20サンプル測定した時の測定値のバラツキ(R=最大の酸素透過度値−最小の酸素透過度値)が0.3と非常に小さく、信頼性の高い高ガスバリアー性容器であった。
【0052】
実施例5
実施例1において、合成例1のB−PE(C)10重量部を合成例2のB−PP(C)20重量部に変更したEVOH組成物を用いて3種5層共押出装置にかけ、多層シート(ポリプロピレン樹脂層、接着性樹脂層/EVOH組成物層/接着性樹脂層/ポリプロピレン樹脂層)を作成した。シートの構成は、両最外層のポリプロピレン樹脂層(三井石油化学 ノ−ブレンPY220)が800μ、また接着性樹脂層(三井石油化学 アドマ−QF500 無水マレイン酸変性ポリプロピレン)が各50μ、さらに中間層(EVOH組成物層)が50μである。該シートは真空圧空熱成形機にかけ(延伸速度9×10%/min.)180℃で成形をおこなった。その結果、成形物は、クラック、ムラ、偏肉もなく、外観および透明性も良好であった。この容器に水充填、上蓋、周囲をヒ−トシ−ルした後、レトルト装置((株)日坂製作所、高温高圧調理用殺菌試験装置RCS−40ORTGN)を使用し、120℃の殺菌処理を実施した。殺菌処理後のカップは透明性(白化)不良、外観不良、形態の不良は認められなかった。
【0053】
実施例6
実施例1で用いたEVOH組成物を3種5層共押出装置にかけ、多層フィルム(ポリエチレン樹脂層/接着性樹脂層/EVOH組成物層/接着性樹脂層/ポリエチレン樹脂層)を作成した。該多層フィルムの構成は、両最外層のポリエチレン樹脂層が60μ、また接着性樹脂層(三井石油化学:アドマー NF−500、マレイン酸変性ポリエチレン)が各10μ、さらに中間層(EVOH組成物層)が10μである。
得られたこれらの多層フィルムはゲルボフレックステスターによる耐屈曲性、及び接着性の評価を実施した。その結果、屈曲回数280回で始めて貫通孔(ピンホール)が発生、またEVOH/Ad間の接着強度も420g/15mm巾と比較的良好な性能を示した。この多層フィルムはバックインボックスの内袋として有用であった。
【0054】
比較例3
B−PE(C)を使用する代りに、通常のポリエチレンを用いたほかは、実施例1と同様にして試験を行った。
該ペレットを用いて実施例4と同様の多層フィルムを得、耐屈曲性、及び接着性の評価を実施した。その結果、屈曲回数110回で始めて貫通孔(ピンホール)が発生、またEVOH/Ad間の接着強度も120g/15mm巾と低く、かつ透明性が不十分であり、不満足な結果であった。
【0055】
実施例7
実施例1において、エチレン含量31モル%、けん化度99.6%のメルトインデックッス1.5g/10分のEVOH(A)をエチレン含量31モル%、けん化度99.6%メルトインデックッス0.2g/10分のEVOH(A)に変更し、さらに エチレン含量38モル%、けん化度99.5%のメルトインデックッス1.7g/10分のEVOH(B)をエチレン含量31モル%、けん化度99.5%メルトインデックッス50g/10分のEVOH(B)に変更したEVOH組成物を用いて実施例6と同様に多層フィルムを得た。その結果、多層フィルムはゲルボフレックステスターによる耐屈曲性(回数)は420回で始めて貫通孔(ピンホール)が発生、またEVOH/Ad間の接着強度も360g/15mm巾と比較的良好な性能を示した。この多層フィルムはバックインボックスの内袋として有用であった
【0056】
実施例8
実施例1で用いたEVOH組成物を3種5曹共押出装置にかけ、多層シートを作成した。シートの構成は両最外層{EVA樹脂層(三井デュポンケミカル:エバフレックスEV−340)}が各300μまた接着性樹脂層(三井石油化学アドマーVF−600)が各50μ、さらに中間層(EVOH組成物層)は50μである。得られたシートをパンタグラフ式二軸延伸機にかけ、70℃で延伸倍率3×3倍で同時二軸延伸を行った。
得られた多層熱収縮フィルムはクラック、ムラ、偏肉もなく、外観、透明性も良好であった。このフィルムを20℃−100%RHに調湿し、ガスバリアー性を測定したところ(モコン社製10/50型)、酸素透過度40cc.20μ/m2 .24hr.atmと良好なガスバリアー性を示した。また70℃での熱収縮性を測定した所、50%の面積収縮率を示した。
【0057】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物を用いた組成物は、耐衝撃性、耐屈曲性、耐ピンホール性などの機械的性質およびガスバリアー性に優れ、さらに延伸収縮性、回収性に優れ、さらにガソリンなどの有機液体に対する耐ストレスクラック性も優れている。
Claims (7)
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、(A)とは異なるエチレン−ビニルアルコール共重合体(B)およびボロン酸基、ボリン酸基、水の存在下でボロン酸基、ボリン酸基に転化しうるホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有するポリオレフィン(C)からなり、かつ成分(A)と成分(B)の重量配合比が99:1ないし1:99であり、成分(A)と(B)の合計量と成分(C)の重量配合比が99:1ないし30:70であって、成分(A)と(B)との相違点が、(1)けん化度が2〜8モル%異なる、(2)ビニルアルコール含有量が2〜35モル%異なる、および、(3)メルトインデックスが0.2〜30g/10分異なる、からなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする樹脂組成物の層と、他の熱可塑性重合体の層とを含む多層構造体。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、(A)とは異なるエチレン−ビニルアルコール共重合体(B)、ボロン酸基、ボリン酸基、水の存在下でボロン酸基、ボリン酸基に転化しうるホウ素含有基から選ばれる少なくとも一つの官能基を有するポリオレフィン(C)および熱可塑性重合体(D)からなり、かつ成分(A)と成分(B)の重量配合比が99:1ないし1:99であり、成分(C)と成分(D)の重量配合比が99:1ないし1:99であり、成分(A)と(B)の合計量と成分(C)の重量配合比が99:1ないし30:70であって、成分(A)と(B)との相違点が、(1)けん化度が2〜8モル%異なる、(2)ビニルアルコール含有量が2〜35モル%異なる、および、(3)メルトインデックスが0.2〜30g/10分異なる、からなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする樹脂組成物の層と、他の熱可塑性重合体の層とを含む多層構造体。
- 請求項1または2記載の多層構造体からなるフィルムまたはシート。
- 請求項1または2記載の多層構造体からなるタンク。
- 請求項1または2記載の多層構造体からなるパイプ。
- 請求項1または2記載の多層構造体からなるカップ。
- 請求項1または2記載の多層構造体からなるボトル。
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