JP3850893B2 - 積層構造物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ガスバリアー性に優れ、回収性および接着性の改善された熱可塑性樹脂層およびエチレン−ビニルアルコール系共重合体層を有する積層構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(以下これをEVOHと略記する)は、ガスバリアー性、耐油性、機械的強度が著しく優れているが、高価であるために、これを単味材料として使用しにくい欠点があり、かつ、透湿性が大きい欠点がある。この短所を改善するために、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂とEVOHとの積層構造体として用いられる。しかし、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル等の多くの熱可塑性樹脂とEVOHとの接着性は悪いため、層間の界面剥離が起こる問題がある。この問題を改善するために無水マレイン酸変性ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体)、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体等の各種接着剤が開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、層間接着性および回収性は必ずしも十分とは言えず、これをさらに改善することが求められている。しかして、本発明の目的は、ガスバリアー性、層間接着性および回収性の優れた樹脂積層物を得ることである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、EVOH層(A)および熱可塑性樹脂層(C)を、下記一般式(II)で示されるボロン酸エステル基を有する熱可塑性樹脂からなる接着剤層(B)を介して積層した積層構造体を提供することにより達成される。
【0005】
【化3】
【0006】
{式中、X、Yは炭素数1〜20の直鎖状、または分岐状アルキレン基を表し、XとYは結合している}
【0007】
本発明に使用する、EVOHはエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物であり、エチレン単位の含有量は特に制限はないが、10〜99モル%の範囲が選ばれ、好ましくは15〜60モル%、さらには20〜60モル%が好ましく、最適には25〜55モル%である。また、EVOHのビニルエステル単位のケン化度としては、10〜100モル%の範囲から選ばれ、50〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、95〜100モル%、さらには99〜100モル%が最適である。ケン化度は余り低すぎると結晶化度を低下させたり、また溶融成形時の熱安定性が悪化する場合があるので、ケン化度は高い方が好ましい。ここでビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表例として挙げられるが、その他にプロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステルも挙げられる。これらのビニルエステルは一種あるいは二種以上混合して使用してもよい。また、EVOHはエチレン含量、ケン化度、重合度のうちのすくなくとも一つが異なるEVOHを混合して使用してもよい。
【0008】
EVOHには本発明の目的が阻害されない範囲で他の共重合成分を含有させてもよい。ここで他の成分としてはプロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン系単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のメタクリルアミド系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;アリルアルコール;ビニルトリメトキシシラン;N−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0009】
また本発明に使用するEVOHのメルトインデックス(MI)(210℃、2160g荷重下で測定した値)は0.1〜200g/10分が好ましく、0.5〜50g/10分がより好ましい。
【0010】
また本発明のEVOH層(A)には本発明の目的が阻害されない範囲でEVOH以外の熱可塑性樹脂を添加してもよい。EVOH層(A)中の他の熱可塑樹脂の含有量は0〜50重量%の範囲で選ばれ、0〜40重量%の範囲が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(超低密度、低密度、中密度、高密度)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン;前記ポリオレフィンの無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート等のグラフト変性物;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の半芳香族ポリエステル;ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル;ポリカプロラクタム、ポリラウロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド等の脂肪族ポリアミド;ポリエチレングリコール、ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル等が挙げられる。
【0011】
本発明において、ボロン酸基とは下記式(I)で示されるものである。
【0012】
【化4】
【0013】
本発明の(B)層のボロン酸エステル基を有する熱可塑性樹脂において、ボロン酸エステル基は下記一般式(II)で示される。これらの官能基(以下ホウ素含有基と記することがある)は、水の存在下で加水分解を受けて上記式(I)で示されるボロン酸基に転化しうる。
【0014】
【化5】
【0015】
{式中、X、Yは炭素数1〜20の直鎖状、または分岐状アルキレン基を表し、XとYは結合している}
【0016】
一般式(II)で示される、ボロン酸エステル基の具体例としては、ボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基(ボロン酸1,2−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基)、ボロン酸ネオペンチルグリコールエステル基等が挙げられる。なお前記の水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基とは、本発明のオレフィン系重合体を水または水と有機溶媒(トルエン、キシレン、アセトンなど)との混合液体または5%ホウ酸水溶液と前記有機溶媒との混合液体中で、反応時間10分〜2時間、反応温度室温〜150℃の条件下に加水分解した場合に、ボロン酸基に転化しうる基を意味する。
【0017】
本発明の(B)層のホウ素含有基の総量の制限は特にはないが、0.0001ミリ等量/g以上が好ましく、0.001〜1ミリ等量/gの範囲がより好ましい。
【0018】
本発明の(B)層のホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂の好適なベースポリマーの例としては、ポリエチレン(超低密度、低密度、中密度、高密度)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−エチルアクリレ−ト共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系重合体;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ジエン系ブロック共重合体の水添物(スチレン−イソプレン−ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等の水添物)等のスチレン系重合体;ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系重合体;ポリ塩化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の半芳香族ポリエステル;ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
【0019】
本発明の(B)層のホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂の好適なメルトインデックス(MI)(230℃、2160g荷重下で測定した値)は0.01〜500g/10分が好ましく、0.1〜50g/10分がより好ましい。
【0020】
本発明の(B)層にホウ素含有基を有さない樹脂を添加することにより希釈してもよい。この種の樹脂としては通常ホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂のベースポリマーと相溶性の良好な樹脂が挙げられ、その例としては、上記のホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂の好適なベースポリマーと同様の樹脂が挙げられる。
【0021】
本発明の(B)層のホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂のベースポリマーは(C)層の熱可塑性樹脂の種類により適宜選ばれるが、(C)層の熱可塑性樹脂を構成する単量体を構成成分として含有する熱可塑性樹脂が好ましい場合が多い。例えば、(C)層が高密度ポリエチレンの場合、(B)層のベースポリマーとしては通常ポリエチレン(高密度、中密度、低密度、超低密度)が好ましく、(C)層がポリスチレンの場合、(B)層のベースポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン−ジエン系ブロック共重合体の水添物(スチレン−イソプレン−ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等の水添物)等のスチレン系重合体が好ましい。
【0022】
次に本発明の(B)層のホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂の代表的製法について述べる。
第一の製法:ホウ素含有基を有するオレフィン系重合体は、窒素雰囲気下で炭素−炭素二重結合を有するオレフィン系重合体にボラン錯体およびホウ酸トリアルキルエステルを反応させることによって、ボロン酸ジアルキルエステル基を有するオレフィン系重合体を得た後、アルコール類を反応させることによって得られる。この製法において原料として末端に二重結合を有するオレフィン系重合体を使用すれば、末端にホウ素含有基を有するオレフィン系重合体が得られ、側鎖または主鎖に二重結合を有するオレフィン系重合体を原料として使用すれば、側鎖にホウ素含有基を有するオレフィン系重合体が得られる。
【0023】
原料の二重結合を有するオレフィン系重合体の代表例としては、1)通常のオレフィン系重合体の末端に微量に存在する二重結合を利用する方法;2)通常のオレフィン系重合体を無酸素条件下、熱分解し、末端に二重結合を有するオレフィン系重合体を得る製法;3)オレフィン系単量体とジエン系単量体の共重合によりオレフィン系単量体とジエン系単量体との共重合体を得る製法;が挙げられる。1)については、公知のオレフィン系重合体の製法を用いることができるが、フィリップス法による製法や連鎖移動剤として水素を用いず、重合触媒としてメタロセン系重合触媒を用いる製法(例えば、DE4030399)が好ましい。2)については、公知の方法(例えばUS2835659,3087922)によりオレフィン系重合体を窒素雰囲気下や真空条件下等の無酸素条件下で300〜500℃の温度で熱分解することによって得られる。3)については公知のチーグラー系触媒を用いたオレフィン−ジエン系共重合体の製法(例えば特開昭50−44281、DE3021273)を用いることができる。
【0024】
ボラン錯体としては、ボラン−テトラヒドロフラン錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−ピリジン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体、ボラン−トリエチルアミン錯体等が好ましい。これらの中でボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラン−メチルアミン錯体およびボラン−トリエチルアミン錯体がより好ましい。ボラン錯体の仕込み量はオレフィン系重合体の二重結合に対し、1/3等量〜10等量の範囲が好ましい。ホウ酸トリアルキルエステルとしては、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリブチルボレート等のホウ酸低級アルキルエステルが好ましい。ホウ酸トリアルキルエステルの仕込み量はオレフィン系重合体の二重結合に対し1〜100等量の範囲が好ましい。溶媒は特に使用する必要はないが、使用する場合は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の飽和炭化水素系溶媒が好ましい。
【0025】
ボロン酸ジアルキルエステル基をオレフィン系重合体へ導入する反応は、反応温度室温〜300℃、好ましくは100〜250℃、反応時間1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間行うのがよい。
【0026】
アルコール類を反応させる条件としては通常、トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒を反応溶媒として用い、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール,ネオペンチルグリコール等の多価アルコール類をボロン酸ジアルキルエステル基に対し、1〜100等量以上の大過剰量を反応させることによって得られる。
【0027】
第二の製法;末端にホウ素含有基を有するオレフィン系重合体、ビニル系重合体、ジエン系重合体はホウ素含有基を有するチオール存在下でオレフィン系単量体、ビニル系単量体、ジエン系単量体から選ばれる少なくとも一種をラジカル重合することによって得られる。
【0028】
原料のホウ素含有基を有するチオールは窒素雰囲気下で二重結合を有するチオールにジボランまたはボラン錯体を反応後、アルコール類を加えることによって得られる。ここで、二重結合を有するチオールとしては2−プロペン−1−チオール、2−メチル−2−プロペン−1−チオール、3−ブテン−1−チオール、4−ペンテン−1−チオール等が挙げられ、この内、2−プロペン−1−チオールおよび2−メチル−2−プロペン−1−チオールが好ましい。ボラン錯体としては、前記したものと同様なものが使用され、このうちボラン−テトラヒドロフラン錯体およびボラン−ジメチルスルフィド錯体が特に好ましい。ボランまたはジボランの添加量は二重結合を有するチオールに対して等量程度が好ましい。反応条件としては室温から200℃が好ましい。溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)、ジグライム等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の飽和炭化水素系溶媒等が挙げられるが、このうちTHFが好ましい。反応後に添加するアルコール類としては、メタノール、エタノール等の低級アルコールが好ましく、特に、メタノールが好ましい。
【0029】
このようにして得られた、ホウ素含有基を有するチオールの存在下、オレフィン系単量体、ビニル系単量体、ジエン系単量体から選ばれる少なくとも一種類をラジカル重合することによって末端に該官能基を有する重合体が得られる。重合条件としては、アゾ系あるいは過酸化物系の開始剤を用い、重合温度は室温から150℃の温度範囲が好ましい。該官能基を有するチオールの添加量としては単量体1g当たり0.001ミリモルから1ミリモル程度が好ましく、チオールの添加方法としては、特に制限はないが、単量体として酢酸ビニル、スチレン等の連鎖移動しやすいものを使用する場合は、重合時にチオールをフィードすることが好ましく、メタクリル酸メチル等の連鎖移動しにくいものを使用する場合は、チオールを最初から加えておくことが好ましい。
【0030】
第三の製法;側鎖にホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂はホウ素含有基を有する単量体と前記したオレフィン系単量体、ビニル系単量体およびジエン系単量体から選ばれる少なくとも一種類の単量体とを共重合させることによって得られる。ここでホウ素含有基を有する単量体としては、例えば、3−アクリロイルアミノベンゼンボロン酸エチレングリコールエステル、3−メタクリロイルアミノベンゼンボロン酸エチレングリコールエステル、4−ビニルフェニルボロン酸エチレングリコールエステル等が挙げられる。また側鎖にホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、および無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸と前記したオレフィン系単量体、ビニル系単量体およびジエン系単量体から選ばれる少なくとも一種類の単量体またはグラフト共重合体のカルボキシル基をカルボジイミド等の縮合剤を用いてまたは用いずにm−アミノフェニルボロン酸エチレングリコールエステルなどのアミノ基含有ボロン酸エステルとアミド化反応させることによって得られる。
【0031】
本発明の(C)層の熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン(超低密度、低密度、中密度、高密度)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の半芳香族ポリエステル;ポリバレロラクトン、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル;ポリカプロラクタム、ポリラウロラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド等の脂肪族ポリアミド;ポリエチレングリコール、ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル;ポリカーボネート;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等のスチレン系重合体;ポリメチルメタクリレート;ポリ塩化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系重合体などの耐湿性樹脂が挙げられる。
【0032】
本発明の(C)層の熱可塑性樹脂のメルトインデックス(MI)(230℃、2160g荷重下で測定した値)は0.01〜200g/10分が好ましく、0.1〜50g/10分がより好ましい。
【0033】
なお、本発明の熱可塑性樹脂からなる層(C)に本発明の積層体のスクラップを任意の比率で混入してもよい。
【0034】
前記したEVOH層(A)とホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂層(B)と熱可塑性樹脂層(C)とを積層する方法としては、ダイ内ラミネート法、ダイ外ラミネート法等、溶融下における積層成形法を用いることができる。すなわち、溶融押し出しされた上記の樹脂成分を、ダイ内で接触させて積層してもよいし、ダイ外で接触させてもよい。好ましくは、該接触層は加圧下に行う。圧力は、1〜500Kg/cm2が特に良好である。これによって接着性が向上する利点がある。
【0035】
本発明の積層構造体の層構成としては、つぎのようなものが好適な例として挙げられる。
3層 A/B/C
4層 C/A/B/C、A/B/C/A
5層 C/B/A/B/C、Reg/B/A/B/C、
C/AD/A/B/C、A/B/C/B/A、A/Reg/C/B/A
6層 C/Reg/B/A/B/C
7層 C/Reg/B/A/B/Reg/C
ここでADとは従来の層間接着剤、たとえば無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどを意味し、またRegとは本発明の積層構造体のスクラップ層、またはスクラップを含む層を意味する。また、積層体中に二層以上のC層を用いる場合は、それらは同一であってもよいし、またことなっていてもよいし、同様に積層体中に二層以上のA層、またはB層を用いる場合も、それらはそれぞれ同一であってもよいし、またことなっていてもよい。
【0036】
また別の方法として、エキストルージョンコーティング、ドライラミネーション、溶液コーティングなどの積層方法も採用されうる。また、このようにして得た、パリソン、フィルム、シートなどの多層構造体を一軸延伸、二軸延伸、あるいはブロー延伸などの延伸を実施することにより、または熱成形することにより、力学特性、ガスバリアー性などにさらに特徴ある物性を有する容器(ボトル、カップなど)を得ることができる。ここで熱成形とは、シートを予め、加熱軟化させたのち、プラグおよび真空圧空により変形させると同時に冷却してカップを成形する操作を意味する。また、加熱とは該シートを変形に必要な温度に所定の時間放置し、該シートが熱的にほぼ均一になる様に操作する方法であれば良く、操作性を考慮して種々のヒーターで加熱均一化する方法が好ましい。
【0037】
また積層物の各層の厚さは、所望によって任意に選択しうる。フィルム状の積層物にあっては、熱可塑性樹脂の厚さをホウ素含有基を有する熱可塑性樹脂およびEVOHと同程度まで薄くしうるが、厚い成形品にあっては熱可塑性樹脂の厚さを増加させることが有利である。このようにして得られた積層構造体は後述する実施例からも明かなように層間接着強度が優れるばかりではなく、回収性も優れている。ここで回収性が優れているとは積層構造体のスクラップを回収して再利用したときに、外観異常、たとえば波状の膜面の乱れ、ゲル、ブツなどの少ない積層構造物が得られることをいう。
【0038】
上記の層構成の積層構造体は、ガスバリアー性に優れたEVOHを含有しているので、特にガスバリアー性の要求される食品包装剤、医療品(医薬品、医療器具)包装材、あるいは燃料タンクとして有用である。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。なお、以下の合成例および実施例において特に断りのない限り、比率は重量比を、「%」は「重量%」を意味する。ポリオレフィン中の二重結合量は、重パラキシレンを溶媒として用い、270MHz1H−NMRにより定量した。ポリオレフィン中のボロン酸エステル基の量は重パラキシレン:重クロロホルム:エチレングリコール=8:2:0.02の比率の混合溶媒をもちいて270MHz1H−NMRにより定量し、ポリスチレン中のボロン酸エステル基の量は重クロロホルム:エチレングリコール=10:0.02の比率の混合溶媒をもちいて270MHz1H−NMRにより定量した。
【0040】
合成例1
末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有する高密度ポリエチレンの合成:冷却器、攪拌機および滴下ロート付きセパラブルフラスコに高密度ポリエチレン{MI(190℃、荷重2160g)0.5g/10分、密度0.95、末端二重結合量0.04meq/g)800g、デカリン2500gを仕込み、減圧することにより脱気した後、窒素置換を行った。これに、ホウ酸トリメチル80g、ボラン−トリエチルアミン錯体5.5gを添加後、200℃で4時間反応を行った後、蒸留器具を取り付け、さらにメタノール100mlをゆっくり滴下した。メタノール滴下終了後、減圧蒸留により、メタノール、ホウ酸トリメチル、トリエチルアミン等の不純物を除去した。さらにエチレングリコール31gを添加後、アセトン10リットル(L)に再沈精製した。得られたゲル状ポリエチレンを60℃で12時間熱風乾燥後、100℃で12時間真空乾燥することにより
ボロン酸エチレングリコールエステル基量0.032meq/g、MI(190℃、荷重2160g)0.2g/10分の高密度ポリエチレンを得た。
【0041】
合成例2
3−メルカプトボロン酸エチレングリコールエステルの合成:冷却器および滴下ロート付きフラスコに水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)19.26gを仕込み窒素置換を行った。これにベンゾフェノンおよび金属ナトリウムで乾燥蒸留したTHF500mlを仕込み、アイスバスで0℃に冷却した後、攪拌を行いながら三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体99.95gを30分かけて滴下を行った。2時間後0℃で2−プロペン−1−チオール45.61gを30分かけて滴下を行なった。40分攪拌後、60℃に昇温してさらに3時間攪拌を行った。0℃に冷却し、メタノール100mlを40分かけて滴下を行なった。反応液を濾過し固形分を除いた後、溶媒を留去し、エチレングリコール38gを加え、塩化メチレン−水で抽出し、過剰のエチレングリコールを除き、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧蒸留により3−メルカプトボロン酸エチレングリコールエステルおよび2−メルカプト−1−メチルエチルボロン酸エチレングリコールエステルの4:1の混合物46.7gを得た{沸点70℃(4mmHg)}。
【0042】
合成例3
末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有するポリスチレンの合成:攪拌機および還流冷却機を備えたセパラブルフラスコにスチレン2000gおよび合成例2で得られた3−メルカプトプロピルボロン酸エチレングリコ−ルエステル(MPBE)0.31gを仕込み、減圧脱気を行なった。120℃に加熱後、MPBE0.394%、アザビスシクロヘキサンカルボニトリル0.069%のスチレン溶液を最初、28.8mlフィ−ド後、2ml/分の割合でフィ−ドを行ない、210分後反応およびフィ−ドを停止した。この時の重合率は50%であった。このポリスチレンをメタノ−ルで再沈することにより精製後、乾燥することにより、ボロン酸エステル基量0.012meq/g、MI(230℃、荷重2160g)5g/10分の末端にボロン酸エチレングリコ−ルエステル基を有するポリスチレンを得た。
【0043】
実施例1
内径65mmφの押出機I、内径40mmφの押出機II、内径40mmφの押出機IIIを備え、押出機I、IIにあっては溶融材料が各々二層に分岐後、押出機IIIより溶融押出された樹脂層に押出機IIよりの樹脂、押出機Iよりの樹脂と順次合流させるタイプのフィードブロック式三種五層共押出装置を用い、押出機Iには(C)層樹脂として高密度ポリエチレン{密度0.945g/10分、MI(190℃、荷重2160g)0.03g/10分}、押出機IIには(B)層樹脂として合成例1の末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有する高密度ポリエチレン、押出機IIIには(A)層樹脂としてEVOH{エチレン含量27%、MI(210℃、荷重2160g)}3.8gを供給し、ダイ温度240℃、引き取り速度1m/分で共押出しを行い、(C1)/(B1)/(A)/(B2)/(C2)の三種五層の積層体を得た。各層の厚みは(C1)および(C2)層は450μm、(B1)層および(B2)層が25μm、(A)層が50μmであり、(A)層/(B1)層間の接着強度をT型剥離法によって求めたところ4.5Kg/15mmであった。さらに上記の試験によって得られたシートを粉砕機により粉砕した。内径65mmφの押出機I、内径40mmφの押出機II、内径40mmφの押出機III、内径40mmφの押出機IVを備え、押出機I、II、IIIにあっては溶融材料が各々二層に分岐後、押出機IVより溶融押出された樹脂層に押出機IIIよりの樹脂、押出機IIよりの樹脂、押出機Iよりの樹脂と順次合流させるタイプのフィードブロック式四種七層共押出装置を用い、押出機IVには(C)層樹脂として高密度ポリエチレン{密度0.945g/10分、MI(190℃、荷重2160g)0.03g/10分}、押出機IIには(Reg)層樹脂として上記のシートの粉砕品、押出機IIIには(B)層樹脂として合成例1の末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有する高密度ポリエチレン、押出機IVには(A)層樹脂としてEVOH{エチレン含量27%、MI(210℃、荷重2160g)}3.8gを供給し、ダイ温度240℃、引き取り速度1m/分で共押出しを行い、(C1)/(Reg)/(B1)/(A)/(B2)/(C2)の四種六層の積層体を得た。各層の厚みは(C1)層は100μm、(Reg)層は400μm、(B1)層および(B2)層が25μm、(A)層が50μm、(C2)層は400μmであった。このシートの膜面状態は良好で、膜面の乱れはまったく認められなかった。
【0044】
比較例1
ボロン酸エチレングリコールエステル基を有する高密度ポリエチレンの代わりに、無水マレイン酸変性HDPE{密度0.94、MI(190℃、荷重2160g)0.9g/10分、無水マレイン酸含量0.04meq/g}と同様な試験を行ったところ、三種五層シートの(A)層/(B1)層間の接着強度を調べたところ、接着強度は1.5Kg/15mmで、この回収層を含む四種六層シートは中央部に波状の膜面の乱れが認められ、回収性は不良であった。
【0045】
比較例2
内径65mmφの押出機I、内径40mmφの押出機II、内径40mmφの押出機IIIを備え、押出機I、IIにあっては溶融材料が各々二層に分岐後、押出機IIIより溶融押出された樹脂層に押出機IIよりの樹脂、押出機Iよりの樹脂と順次合流させるタイプのフィードブロック式三種五層共押出装置を用い、押出機Iには(C)層樹脂として高密度ポリエチレン{密度0.945g/10分、MI(190℃、荷重2160g)0.03g/10分}、押出機IIには(B)層樹脂として合成例1の原料の末端に二重結合を有する高密度ポリエチレン、押出機IIIには(A)層樹脂としてEVOH{エチレン含量27%、MI(210℃、荷重2160g)3.8g}を供給し、ダイ温度240℃、引き取り速度1m/分で共押出しを行い、(C1)/(B1)/(A)/(B2)/(C2)の三種五層の積層体を得た。各層の厚みは(C1)および(C2)層は450μm、(B1)層および(B2)層が25μm、(A)層が50μmであり、(A)層/(B1)層間の接着強度をT型剥離法によって求めたところ、0.1Kg/15mm以下であり手で容易に剥離し、実用性に耐えるものではなかった。
【0046】
実施例2
内径65mmφの押出機I、内径40mmφの押出機II、内径40mmφの押出機IIIを備え、押出機I、IIにあっては溶融材料が各々二層に分岐後、押出機IIIより溶融押出された樹脂層に押出機IIよりの樹脂、押出機Iよりの樹脂と順次合流させるタイプのフィードブロック式三種五層共押出装置を用い、押出機Iには(C)層樹脂としてポリスチレン{MI(230℃、荷重2160g)2g/10分}、押出機IIには(B)層樹脂として合成例3の末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有するポリスチレン、押出機IIIには(A)層樹脂としてEVOH{エチレン含量44%、MI(210℃、荷重2160g)12g/10分}を供給し、ダイ温度220℃、引き取り速度2m/分で共押出しを行い、(C1)/(B1)/(A)/(B2)/(C2)の三種五層の積層体を得た。各層の厚みは(C1)および(C2)層は150μm、(B1)層および(B2)層が15μm、(A)層が20μmであり、(A)層/(B1)層間の接着強度をT型剥離法によって求めたところ、3.5Kg/15mmであった。
【0047】
比較例3
ボロン酸エチレングリコールエステル基を有するポリスチレンの代わりに、ポリスチレン{MI(230℃、荷重2160g)5g/10分}を用いる以外は、実施例2と同様な試験を行った。(C)/(B)層間の接着強度を調べたところ、接着強度は0.1Kg/15mm以下であり、手で容易に剥離し、実用性に耐えるものではなかった。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、ガスバリヤー性、層間接着性および回収性の優れた積層構造物が得られる。
Claims (3)
- 請求項1または2に記載の積層構造体からなるフィルムまたはシート。
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