JP4606532B2 - ポリオレフィン製微多孔膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池用セパレータとして使用され、特にリチウムイオン二次電池用セパレータとして好適に使用される、ポリオレフィン製微多孔膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィンを素材とする微多孔膜は、種々の電池にセパレータとして使用されており、なかでも、近年、需要が急増しているリチウムイオン二次電池において好適に使用されている。ポリオレフィン製微多孔膜は、基本的特性として、電子絶縁性に優れる、電解液含浸によりイオン透過性を有する、耐電解液性・耐酸化性に優れる、適度の強度を持っている、130〜150℃程度で孔閉塞効果を有する等の性能を具備しており、これらが好適に使用される理由とみられる。
【0003】
しかしながら、リチウムイオン二次電池の性能競争激化に伴い、ポリオレフィン製微多孔膜に対する要求は厳しくなってきている。そのひとつとして、電池組立の高速化に伴い、微多孔膜の強度向上が求められている。強度の向上により、電池組立時の破膜は減少し、歩留まりが改善される方向にある。特に最近は、電池の高容量化に向け、セパレータを薄膜化することが検討されており、より一層の強度向上が望まれている。
【0004】
電池組立における歩留まりを低下させる原因として、ふたつのセパレータの強度要因が考えられる。ひとつは、電極材等の鋭利部が突き刺さることによる、ピンホールや亀裂の発生がある。これに対応する強度試験として、突刺強度試験が挙げられる。もうひとつは、電池の捲回工程において、セパレータは引張応力を受け、強度が充分でないと亀裂や膜切れを発生することである。これに対応する強度試験として、引張強度試験が挙げられる。
【0005】
これまでに、強度の高いセパレータとして、多くの提案がなされている。例えば、特開平6−212006号、特開平8−34873号、特開平9−157423号、特開平10−306168号、特開平11−130899号各公報などが挙げられる。
しかし、これらはいずれも突刺強度か引張破断強度のいずれか一方を高めた技術であり、また、それぞれの強度についても実質的には充分な強度は得られていない。さらに、従来の強度向上技術では、TD(横方向;機械方向と直行方向)の収縮力をも増大させる方向にある。TD収縮力が大きいと、電池組立時に膜収縮による短絡が発生したり、電池の高温試験時に膜収縮による短絡が発生する恐れがある。加えて、従来の強度向上技術は、得られる膜の平均孔径が大きくなる傾向にある。平均孔径が大きいと、電池反応は不均一になる方向であり、またデンドライトも発生しやすく、好ましくない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、リチウムイオン二次電池用セパレータとして、基本的性能を保持しつつ、突刺強度が非常に高く、引張破断強度が非常に高く、TD収縮力が小さいポリオレフィン製微多孔膜を提供することを目的とする。
さらに本発明は、リチウムイオン二次電池用セパレータとして、基本的性能を保持しつつ、突刺強度が非常に高く、引張破断強度が非常に高く、TD収縮力が小さく、且つ、平均孔径が小さく、孔の屈曲率の大きい微多孔構造を有する、ポリオレフィン製微多孔膜を提供することを目的とする。本発明の微多孔膜は、屈曲率が大きいことにより、電解液含浸性が高くサイクル性等の電池性能が向上すること、及びシャットダウン性能が向上することが考えられる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決したものである。即ち、本発明は、
(1)気孔率が20〜70%、透気度が1〜2000secであり、突刺強度が1000〜3000g/25μm、引張破断強度が1700〜7000kg/cm2 、TDの最大収縮力が0〜15kg/cm2 であることを特徴とするポリオレフィン製微多孔膜、
(2)平均孔径が0.01〜0.08μm、孔の屈曲率が2.5〜7.0であることを特徴とする上記(1)記載のポリオレフィン製微多孔膜、
(3)(a)粘度平均分子量15万〜100万のポリオレフィン及び可塑剤からなる混合物を溶融混練し、(b)シート状に成形して冷却固化させ、(c)得られたシートを延伸機の把持チャックにシートの端から10〜100mm内側まで挿入し把持させて、二軸方向へ延伸を行い、(d)可塑剤を抽出し、(e)少なくとも一軸の方向に延伸を行い、その後TDに収縮力緩和させることを特徴とするポリオレフィン製微多孔膜の製造方法に関するものである。
【0008】
以下に本発明を詳述する。本発明におけるポリオレフィン製微多孔膜の気孔率は、20%〜70%であり、25%〜60%であることが好ましい。気孔率が20%未満になると、セパレータとして使用される場合の電解液含量が低く、電気抵抗は増加するため好ましくない。気孔率が70%を越えると、膜強度に劣り、本発明の要件が達成されない。
本発明におけるポリオレフィン製微多孔膜の透気度は、1〜2000secであり、1〜1500secが好ましい。透気度が2000secを越えると、イオン透過性が悪く、電気抵抗が増加するため好ましくない。
【0009】
本発明におけるポリオレフィン製微多孔膜の突刺強度は、1000〜3000g/25μmである。突刺強度が低いと、電極材等の鋭利部が微多孔膜に突き刺さり、ピンホールや亀裂が発生しやすい。従来、400〜700g/25μm程度の微多孔膜が、セパレータとして実用化されているが、電池組立時の不良率をより小さくする必要から、1000〜3000g/25μmの微多孔膜が良い。
本発明におけるポリオレフィン製微多孔膜の引張破断強度は、1700〜7000kg/cm2 である。引張破断強度が弱いと、電池の捲回工程において、引張応力に耐えられず、亀裂や膜切れを発生しやすい。従来、1000kg/cm2 から1500kg/cm2 程度の微多孔膜がセパレータとして実用化されているが、電池組立時の不良率をより小さくするためには、1700〜7000kg/cm2 の微多孔膜が良い。
【0010】
本発明におけるポリオレフィン製微多孔膜のTD(横方向;機械方向と直行方向)の最大収縮力は0〜15kg/cm2 である。15kg/cm2 を越えると、例えば電池組立時における100℃程度の熱乾燥工程で収縮による短絡が生じたり、或いは、例えば電池性能試験である150℃程度の高温保存試験で収縮による短絡を生じる恐れがある。
さらに本発明におけるポリオレフィン製微多孔膜の平均孔径は、0.01〜0.08μmである。平均孔径が0.08μmを越えると、電池反応が不均一になる方向であり、またデンドライトも発生しやすく、好ましくない。
【0011】
さらに本発明におけるポリオレフィン製微多孔膜の孔の屈曲率は、2.5〜7.0である。従来、屈曲率が2.5未満の微多孔膜がセパレータとして実用化されているが、電解液含浸性を高めサイクル性等の電池性能を向上させ、かつシャットダウン性能を向上させるためには、屈曲率2.5〜7.0が良い。
次に、本発明の微多孔膜の製造方法の例を説明する。
本発明の微多孔膜は、例えば、以下の(a)〜(e)の工程からなる方法により得られる。
(a)粘度平均分子量15万〜100万のポリオレフィン及び可塑剤からなる混合物を溶融混練する。
(b)溶融物を押し出し、シート状に成形して冷却固化させる。
(c)得られたシートを延伸機の把持チャックにシートの端から10〜100mm内側まで挿入し把持させて、二軸方向へ延伸を行う。
(d)延伸後、可塑剤を抽出する。
(e)つづいて少なくとも一軸の方向に延伸を行い、その後TDに収縮力緩和させる。
【0012】
本発明で使用されるポリオレフィンとは、ポリオレフィン単独物及びポリオレフィン組成物である。主たる成分のポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられるが、製膜時の延伸性に優れるポリエチレンが好ましい。
ポリエチレンとしては、密度は0.940g/cm3 以上のホモポリマー、或いはα−オレフィンコモノマー含量が2モル%以下の高密度ポリエチレンが好ましく、ホモポリマーであることが更に好ましい。α−オレフィンコモノマーの種類には特に制限はない。ポリエチレンの粘度平均分子量は15万〜100万が好ましく、20万から80万が更に好ましい。
【0013】
ポリエチレンの重合触媒には特に制限はなく、チーグラー型触媒、フィリップス型触媒、カミンスキー型触媒等いずれのものでも良い。ポリエチレンの重合方法として、一段重合、二段重合、もしくはそれ以上の多段重合等があり、いずれの方法のポリエチレンも使用可能であるが、一段重合で得られるポリエチレンが好ましい。
主たる成分以外のポリオレフィンとして、製膜性を損なうことなくまた本発明の要件を外さない範囲で、各種のポリオレフィンを配合することができる。例えば、孔閉塞特性の向上を目的したα―オレフィンコモノマーの含量が高い低融点ポリエチレンや、耐熱性の向上を目的としたポリプロピレン及びポリー4−メチル−1−ペンテン等を配合することができる。また、ポリオレフィン以外の材料についても、リチウムイオン二次電池用セパレータとしての性能を損なうことなく、製膜性を損なうことなく、そして本発明の要件を外さない範囲で配合することができる。
【0014】
本発明で使用されるポリオレフィンの粘度平均分子量は15万〜100万であり、20万から80万であることが好ましい。粘度平均分子量が15万未満であると、シート状物から可塑剤を抽出する前の延伸工程において延伸応力が上がらないため、最終的に得られる膜の突刺強度及び引張破断強度は低くなり、本発明で規定の特性を有する膜を得るのが難しい。一方、粘度平均分子量が100万を越えると、溶融混練時の負荷が高いためシート状へ吐出する速度を上げられず、生産性が悪くなる。また、抽出前の延伸工程時の延伸応力が非常に大きくなり、延伸機のチャックがシートを把持できなくなる。
【0015】
本発明で使用されるポリオレフィンには、必要に応じて、フェノール系やリン系やイオウ系等の酸化防止剤、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料等の公知の添加剤を混合して使用できる。
本発明で使用される可塑剤としては、ポリオレフィンと混合した際に、それらの融点以上において均一溶液を形成しうる不揮発性溶媒が適している。例えば、流動パラフィンやパラフィンワックス等の炭化水素類、フタール酸ジオクチルやフタール酸ジブチル等のエステル類、オレイルアルコールやステアリルアルコール等の高級アルコールが挙げられるが、延伸時に大きな応力を得るために炭化水素類が好ましく、さらに抽出効率の上で流動パラフィンが好ましい。
【0016】
可塑剤の前記混合物(ポリオレフィンと可塑剤との混合物)に占める重量割合は、30〜80%、好ましくは40〜70%である。可塑剤が30%未満であると最終的に得られる膜の気孔率は低く、透気度は高くなり、本発明で規定の特性を有する膜を得るのが難しい。一方、可塑剤が80%を越えると、最終的に得られる膜の気孔率は高くなり、本発明で規定の特性を有する膜を得るのが難しい。
この発明で使用される抽出溶媒としては、ポリオレフィンに対して貧溶媒であり、且つ可塑剤に対しては良溶媒であり、沸点がポリオレフィンの融点よりも低いものが望ましい。このような抽出溶媒としては、例えば、n−ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレンや1,1,1−トリクロロエタン等ハロゲン化炭化水素類、エタノールやイソプロパノール等のアルコール類、アセトンや2−ブタノン等のケトン類が挙げられる。この中から適宜選択し、単独もしくは混合して用いられる。
【0017】
本発明における(a)工程の溶融混練の方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、一軸押出し機、二軸押出し機等のスクリュー押出し機、ニーダー、バンバリーミキサー等により溶融混練させる方法が挙げられる。可塑剤は、上記ヘンシェルミキサー等で原料ポリマーと混合しても良く、また、溶融混練時に押出し機に直接フィードしても良い。
【0018】
溶融混練温度は、融点以上300℃以下が好ましく、160〜250℃がさらに好ましい。せん断力は比較的小さい方が好ましいが、小さすぎると混練力に劣るので、各機器において最適化が必要である。
次に、本発明における(b)工程のシート成形方法としては、溶融物をT−ダイを装着した押出し機より押出し、冷却することによって得るのが好ましい。冷却方法としては、冷風や冷却水等の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法等が挙げられるが、冷媒で冷却したロールに接触させる方法が厚み制御が優れる点で好ましい。
【0019】
本発明における(c)工程の抽出前二軸延伸は、一軸延伸機による逐次二軸延伸や、同時二軸延伸機による同時二軸延伸により行うことができる。延伸倍率は面倍率で20倍以上、延伸温度はポリオレフィンの結晶分散温度〜結晶融点の範囲であるが、本発明で規定の高い突刺強度と高い引張破断強度を得るためには、大きな延伸応力が得られる条件とすべきであり、特に高い突刺強度を得るためには必須である。また、本発明で規定の孔の屈曲率を得るためにも、大きな延伸応力を賦与する必要がある。
【0020】
そのためには、延伸倍率は高い方が好ましい。また、延伸温度は低い方が好ましいが、低すぎるとシート中のポリマー濃厚相とポリマー希薄相の界面が破壊され、延伸力がポリマーに伝達されなくなるので、100℃付近を下限とすることが好ましい。
本発明では、二軸延伸する際、シートを延伸機の把持チャックにシートの端から10〜100mm内側まで挿入し把持させる。従来の延伸機の設定では、チャックの押さえ部と台座の間でのシートの滑りが大きいためにチャックがシートを把持できず、大きな延伸応力が得られる延伸を行うことができなかった。本発明では、図1に示すように、チャックの押さえ部と台座の間にシートを挿入して把持させる時に、シートの端がチャックの台座からはみ出る長さを、従来0〜3mmであったのを、チャックの改良および設定変更により10〜100mmとした。10mm未満では大きな延伸応力でシートを延伸することが難しく、本発明で規定の特性を有する膜を得るのが難しい。
【0021】
次に、(d)の抽出工程では、前記の抽出溶媒に、(c)で得られた延伸膜を浸漬することにより可塑剤を抽出し、その後充分に乾燥させる。抽出により、膜中の可塑剤残量が1重量%未満とすることが好ましい。
本発明における(e)の抽出後延伸−収縮力緩和工程では、可塑剤抽出後の膜を一軸延伸機や同時二軸延伸機を使用して延伸し、さらに延伸と同一の或いは別の一軸延伸機や同時二軸延伸機を使用してTDへ膜を縮小させることにより、TDの収縮力の緩和を行う。抽出後延伸工程において、延伸温度は結晶分散温度以上結晶融点未満で、延伸倍率は面倍率として20倍以内で行うことが好ましいが、延伸温度120℃以上で行うことが特に本発明で規定の高い引張破断強度を得るために好ましい。また、延伸倍率が20倍を越えると、膜の平均孔径が大きくなり、本発明で規定の特性を有する膜を得るのは難しい。
【0022】
続いて、収縮力緩和工程において、(e)工程の抽出後延伸温度より高い温度、具体的には結晶分散温度より高く結晶融点以下の温度で、TD方向に0.95倍以下の縮小を行うことにより、本発明で規定のTD最大収縮力を有する膜を得ることができる。
以上の方法で得られたポリオレフィン製微多孔膜は、必要に応じて、プラズマ照射、界面活性剤含浸或いは塗布、表面グラフト等の表面修飾を施すことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を制限しない。本発明で用いた各種物性は、以下の試験方法に基づいて測定した。
(1)膜厚(μm)
ダイヤルゲージ(尾崎製作所PEACOCK NO.25)にて測定した。
(2)気孔率(%)
10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm3 )と重量(g)を求め、それらとポリマー密度(g/cm3 )より、次式を用いて計算した。
【0024】
気孔率=(体積−重量/ポリマー密度)/体積×100
(3)突刺強度(g/25μm)
カトーテック製KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secの条件で突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として生の突刺強度(g)が得られる。これに25(μm)/膜厚(μm)を乗じることにより25μm換算突刺強度(g/25μm)を算出した。
(4)透気度(sec)
JIS P−8117に準拠のガーレー式透気度計にて測定した。この時の圧力は0.01276atm、膜面積は6.424cm2 、透過空気量は100ccである。
(5)孔径(μm)及び屈曲率
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。
【0025】
この場合、孔径d(μm)と屈曲率τ(無次元)は、空気の透過速度定数Rgas(m3/(m2・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m3/(m2・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力Ps(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求めることができる。
d=2ν・(Rliq/Rgas)・(16η/3Ps)・106
τ2=d・(ε/100)・ν/(3L・Ps・Rgas)
ここで、Rgasは透気度(sec)から次式を用いて求められる。
Rgas=0.0001/(透気度・(6.424×10-4)・(0.01276×101325))
また、Rliqは透水度(cm3/(cm2・sec・atm))から次式を用いて求められる。
【0026】
Rliq=透水度/100/101325
なお、透水度は次のように求められる。直径41mmのステンレス製の透液セルに、あらかじめアルコールに浸しておいた微多孔膜をセットし、該膜のアルコールを水で洗浄した後、約0.5atmの差圧で水を透過させ、120sec間経過した際の透水量(cm3 )より、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
【0027】
さらに、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(k)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10-2kg/mol)から次式を用いて求められる。
ν2=8RT/πM
(6)引張破断強度(kg/cm2 )
引張試験機(島津オートグラフAG−A型)を用いて引張試験を行い、サンプル破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除し、引張破断強度(kg/cm2)とした。測定条件は、温度;23±2℃、サンプル形状;幅10mm×長さ100mm、チャック間距離;50mm、引張速度;200mm/minである。
(7)TD最大収縮力(kg/cm2)
熱機械的分析装置(セイコー電子工業製TMA120)を用いて、温度を昇温走査し収縮荷重(g)の測定を行った。測定条件は、サンプル形状;幅3mm×長さ10mm、初期荷重;1.2g、温度走査範囲30〜200℃、昇温速度;10℃/minである。TD最大収縮力は、得られた収縮荷重曲線における最大収縮荷重(g)を、下記式に代入し算出した。
【0028】
TD最大収縮力=(最大収縮荷重/(3×T))×100
T:サンプル厚み(μm)
(8)粘度平均分子量Mv
135℃のデカリン溶液中で極限粘度[η]を測定し、次式によりMvを算出した。
[η]=6.8×10-4Mv0.67
(9)密度(g/cm3)
ASTMーD1505に準拠し、密度勾配管法(23℃)で測定した
(10)α−オレフィンコモノマー含量(モル%)
13CーNMRスペクトルにおいて、α―オレフィンコモノマー単位由来のシグナル強度の積分値のモル換算量(A)を、(A)とエチレン単位由来のシグナル強度の積分値のモル換算量(B)との和で除して、100を乗じることにより、α―オレフィンコモノマー含量を求めた。
(11)分子量分布Mw/Mn
ゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィーの測定によって求められるMwとMnの比である。装置はWaters社製150ーC型を用い、東ソー(株)製TSKーゲルGMH6ーHTの60cmのカラム2本と昭和電工(株)製ATー807/Sカラム1本を使用し、1、2、4ートリクロロベンゼンを溶媒として140℃で測定した。
【0029】
【実施例1】
Mv30万、Mw/Mn7のホモのポリエチレン50重量部とMv100万、Mw/Mn7のホモのポリエチレン50重量部に、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3重量部添加し、それらをタンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた混合物45重量部を、二軸押出し機にフィーダーを介して投入した。さらに、流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cSt)55重量部を、押出し機シリンダーに注入した。溶融混練は、温度250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hの条件で行った。
【0030】
続いて、溶融混練されたポリマー組成物を、T−ダイを経て表面温度30℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み1600μmのゲルシートを得た。
次に、同時二軸テンター延伸機に導き、シートを延伸機の把持チャックの台座から15mmはみ出るように挿入してシートを把持させた後(図1の本発明の位置相当)、抽出前延伸を行った。延伸条件は、倍率7×7倍、温度119℃である。
【0031】
次に、塩化メチレン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後塩化メチレンを乾燥除去した。
さらに、一軸テンター延伸機を用いて幅方向に抽出後延伸及び緩和操作を行った。延伸部の条件は、温度は125℃で、倍率は一軸延伸機導入時の膜幅に対し1.8倍で行った。緩和部の条件は、温度は130℃で、倍率は一軸延伸機による延伸後の膜幅に対し0.83倍で行った。
得られた微多孔膜の物性を表1に記載した。
【0032】
【実施例2】
Mv30万、Mw/Mn7のホモのポリエチレン100重量部に酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3重量部添加し、それらをタンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。得られた混合物45重量部を、二軸押出し機にフィーダーを介して投入した。さらに、流動パラフィン(37.78℃における動粘度75.9cST)55重量部を、押出し機シリンダーに注入した。溶融混練は、温度250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hの条件で行った。
【0033】
続いて、溶融混練されたポリマー組成物を、T−ダイを経て表面温度30℃に制御された冷却ロール上に押出しキャストすることにより、厚み1850μmのゲルシートを得た。
次に、同時二軸テンター延伸機に導き、シートを延伸機の把持チャックの台座から15mmはみ出るように挿入してシートを把持させた後(図1の本発明の位置相当)、抽出前延伸を行った。延伸条件は、倍率7×7倍、温度は115℃である。
【0034】
次に、塩化メチレン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後塩化メチレンを乾燥除去した。
さらに、一軸テンター延伸機を用いて幅方向に抽出後延伸及び緩和操作を行った。延伸部の条件は、温度は127℃で、倍率は一軸延伸機導入時の膜幅に対し1.5倍で行った。緩和部の条件は、温度は132℃で、倍率は一軸延伸機による延伸後の膜幅に対し0.87倍で行った。
得られた微多孔膜の物性を表1に記載した。
【0035】
【実施例3】
一軸テンター延伸機による幅方向の抽出後延伸及び緩和操作において、延伸部の条件を、温度は127℃、倍率は一軸延伸機導入時の膜幅に対し2.1倍にしたこと、及び、緩和部の条件を、温度は132℃、倍率は一軸延伸機による延伸後の膜幅に対し0.86倍にしたこと以外は、実施例2と同様にして微多孔膜を得た。
得られた微多孔膜の物性を表1に記載した。
【0036】
【比較例1】
実施例1と同様の条件で厚み1600μmのゲルシートを得た。次に、同時二軸テンター延伸機に導き、シートを延伸機の把持チャックの台座から1mmはみ出るように挿入してシートを把持させた後(図1の従来位置相当)、倍率7×7倍、温度119℃で延伸しようとしたが、力を加えたとたんシートが滑ってチャックより外れ、延伸することはできなかった。
【0037】
【比較例2】
一軸テンター延伸機による幅方向の抽出後延伸条件を、設定温度115℃、延伸倍率1.8倍としたこと、及びその後の緩和操作を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして微多孔膜を得た。
得られた微多孔膜の物性を表1に記載した。
【0038】
【比較例3】
原料のポリオレフィンとしてMv12万、Mw/Mn7のホモのポリエチレンを使用したこと、同時二軸テンター延伸機による抽出前延伸条件を、倍率7×7倍、温度110℃としたこと、一軸テンター延伸機において、抽出後延伸温度を115℃、倍率を一軸延伸機導入時の膜幅に対し1.6倍としたこと、及び緩和条件を、温度は120℃、倍率は一軸延伸機による延伸後の膜幅に対し0.88倍としたこと以外は、実施例2と同様にして微多孔膜を得た。
得られた微多孔膜の物性を表1に記載した。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】
本発明のポリオレフィン製微多孔膜は、従来のポリオレフィン製微多孔膜と比較して、リチウムイオン二次電池用セパレータとしての基本的性能を保持しつつ、突刺強度が非常に高く、引張破断強度が非常に高く、TD収縮力が小さい点で優れている。その結果、従来のポリオレフィン製微多孔膜よりも、二次電池生産時の歩留まりを向上でき、また従来よりも高性能な二次電池を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可塑剤抽出前延伸工程における、同時二軸テンター延伸機チャックの膜把持状況を示す概略図(側面図)である。
Claims (3)
- (a)粘度平均分子量15万〜100万のポリオレフィン及び可塑剤からなる混合物を溶融混練し、(b)シート状に成形して冷却固化させ、(c)得られたシートを延伸機の把持チャックにシートの端から10〜100mm内側まで挿入し把持させて、二軸方向へ延伸を行い、(d)可塑剤を抽出し、(e)少なくとも一軸の方向に延伸を行い、その後TDに収縮力緩和させることを特徴とするポリオレフィン製微多孔膜の製造方法。
- 前記把持チャックが、押さえ部と台座とを有すると共に、
前記(c)が、チャックの押さえ部と台座の間にシートを挿入して把持させる時に、シートの端がチャックの台座からはみ出る長さを10〜100mmとする工程である請求項1に記載の製造方法。 - 前記(c)において、延伸倍率(面倍率)が20倍以上であり、延伸温度がポリオレフィンの結晶分散温度〜結晶融点の範囲である請求項1又は2に記載の製造方法。
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