JP4846911B2 - 熱可塑性樹脂多孔性成形体用抽出剤組成物、及び熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造方法 - Google Patents
熱可塑性樹脂多孔性成形体用抽出剤組成物、及び熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バッテリーセパレーター、フィルターなどに好適な熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造工程で使用される抽出剤組成物及び熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、熱可塑性樹脂の多孔性成形体は、バッテリーセパレーター、電解コンデンサー用隔膜、分離膜、水処理膜、逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜、透湿防水衣類等の各種用途に用いられている。
【0003】
一般に、熱可塑性樹脂の多孔性成形体は、熱可塑性樹脂とパラフィン油等の可塑剤とから成る樹脂組成物からフィルム又はシートを形成し、次いで、このフィルム又はシートに含まれる可塑剤を塩化メチレン、イソプロピルアルコール、エタノール、ヘキサンなどの有機溶媒で処理し、抽出除去することによって製造している。
【0004】
しかしながら、従来の可塑剤除去工程において使用されている有機溶媒は、引火性である点、人体に有害である点、これら溶媒の大気への気散、オゾン破壊などの環境汚染を招く点に課題がある。
従って、取り扱いに関する安全衛生上の対処設備が必要であり、特に、抽出後の溶媒の回収が環境対策上必須であり、このため、多大の生産付帯設備を要するものである。
【0005】
一方、特開平6−256559号公報には、水に溶けにくく、100℃以下の融点を有し、マトリックス樹脂の溶融混練条件下にマトリックス樹脂に相溶性を有するパラフィンワックス、ステアリルアルコールなどの化合物(可塑剤)を、マトリックス樹脂に添加して成形し、得られた成形体を前記化合物の融点以上に加熱された界面活性剤の水溶液で処理することにより、前記化合物を成形体から除去し、多孔性成形体を得ることを特徴とする多孔性樹脂成形体の製造方法が開示されており、上記界面活性剤として、カルボン酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウムなどのアニオンを形成するアニオン系界面活性剤、アミノ基、イミド基、第4級アンモニウム塩基などを形成するカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレングリコール型や多価アルコール型などのノニオン系界面活性剤などが用いることなどが記載され、実施例1及び2では、4%又は2%のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム含有水溶液が用いられている。
【0006】
しかしながら、上記公報に開示の界面活性剤種の水溶液では、パラフィンワックス、ステアリルアルコールなどの化合物(可塑剤)の除去効率が悪く、所望の多孔性樹脂成形体が得られない点に課題があり、実用性に乏しい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、熱可塑性樹脂の多孔性成形体を上記のような有機溶媒等を使用しないで可塑剤を効率よく確実に除去する抽出剤組成物の提供と、それを用いて効率的な熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術の課題等について、鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造工程で使用される抽出剤組成物として、特定の界面活性剤種の使用又は組合わせたものを夫々特定量の範囲とした水溶液ないし水乳化液として用いることにより、経時安定性に優れ、また、可塑剤の除去効率に優れることを見い出し、更に、この抽出剤組成物を用いれば効率的に熱可塑性樹脂多孔性成形体が製造できることを見い出すことにより、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔4〕に存する。
〔1〕 下記の(D)及び(E)を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂多孔性成形体用抽出剤組成物。
(D);下記式(II)で示される非イオン界面活性剤、及びポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(7)トリドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ポリオキシプロピレン(5)第2級アルキル(C12−14)エーテルで示される非イオン界面活性剤から選択される非イオン界面活性剤 65〜95質量%
【化2】
(E);水 5〜35質量%
〔2〕 上記〔1〕に記載の(D)がポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(9)第2級アルキル(C12−14)エーテル、ポリオキシエチレン(15)第2級アルキル(C12−14)エーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(7)トリドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ポリオキシプロピレン(5)第2級アルキル(C12−14)エーテルのいずれか一つから選択された非イオン界面活性剤であることを特徴とする熱可塑性樹脂多孔性成形体用抽出剤組成物。
〔3〕 熱可塑性樹脂と可塑剤を溶融混練して得られたゲル状成形体を、該可塑剤の融点以上に加熱された上記〔1〕又は〔2〕に記載の抽出剤組成物で処理することにより、上記可塑剤を成形体から除去し、多孔性成形体を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造方法。
〔4〕 上記〔3〕に記載の熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造方法において、ゲル状成形体を延伸前及び/又は延伸後に、残存する可塑剤を除去することを特徴とする熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の熱可塑性樹脂多孔性成形体用抽出剤組成物は、バッテリーセパレーター、電解コンデンサー用隔膜、分離膜、水処理膜、逆浸透膜、限外濾過膜、精密濾過膜、透湿防水衣類等の各種用途に用いられる熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造工程等で使用される抽出剤組成物であり、下記(D)成分及び(E)成分を含むことを特徴とするものである。
(D);下記式(II)で示される非イオン界面活性剤、及びポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(7)トリドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ポリオキシプロピレン(5)第2級アルキル(C12−14)エーテルで示される非イオン界面活性剤から選択される非イオン界面活性剤 65〜95質量%(以下、質量を略す)
【化3】
(E);水 5〜35%
また、本発明の熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造方法(以下、「本発明方法」という)は、熱塑性樹脂と可塑剤を溶融混練して得られたゲル状成形体を、該可塑剤の融点以上に加熱された上記の抽出剤組成物で処理することにより、上記可塑剤を成形体から除去し、多孔性成形体を得ることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第2発明の抽出剤組成物に用いる(D)成分となる非イオン界面活性剤は、上記式(II)で示されるものであり、例えば、長鎖アルコールのアルキレンオキシド付加体が挙げられる。
具体的には、ポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(9)第2級アルキル(C12−14)エーテル、ポリオキシエチレン(15)第2級アルキル(C12−14)エーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(7)トリドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ポリオキシプロピレン(5)第2級アルキル(C12−14)エーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0015】
これらの上記式(II)で示される非イオン界面活性剤の含有量は、抽出剤組成物全量に対して、65〜95%、好ましくは、75〜95%とすることが望ましい。
この非イオン界面活性剤の含有量が65%未満では、可塑剤の成形体からの除去性が不良となり好ましくなく、また、95%を越えると、抽出剤組成物の粘性が大となり、好ましくない。
【0016】
本発明の第2発明の抽出剤組成物に用いる(E)成分となる水としては、例えば、精製水、イオン交換水、純水等を挙げることができる。
この(E)成分の水の含有量は、抽出剤組成物全量に対して、5〜35%、好ましくは、5〜25%とすることが望ましい。
この水の含有量が5%未満では、抽出剤組成物の粘性が大となり好ましくなく、また、35%を越えると、可塑剤の成形体からの除去性が不良となり、好ましくない。
【0017】
これらの第1発明又は第2発明の抽出剤組成物は、低粘度で均一透明な液体、または、均一なミクロエマルジョンを形成している。本第1発明及び第2発明における抽出剤組成物の粘度は、好ましくは、25℃において、2000mPa・s以下とすることが望ましい。
なお、本各抽出剤組成物には、上記成分以外に、例えば、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の溶剤を本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜配合することができる。
【0018】
次に、本発明方法で使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。好ましくは、成形加工性、及び得られる多孔性成形体のバッテリーセパレーターとしての性能の点からポリオレフィン樹脂が望ましい。
これらの樹脂は、単独で用いても良いし、または、2種類以上を混合した組成物として用いても良い。
【0019】
本発明方法において用いることができるポリオレフィン組成物としては、例えば、質量平均分子量50万以上のポリオレフィン又は質量平均分子量50万以上のポリオレフィンを含有するポリオレフィン組成物が挙げられる。質量平均分子量50万以上のポリオレフィンを含有していない場合では、延伸時に破断が起こりやすいため、好適な多孔性成形体を得ることは困難となる。
また、質量平均分子量の上限は、特に限定的されないが、1500万以下とすることにより、溶融押出を容易にすることができる。
【0020】
質量平均分子量50万以上のポリオレフィンとしては、超高分子量ポリエチレンが好ましく用いられる。
この質量平均分子量50万以上のポリオレフィンを含有するポリオレフィン組成物としては、例えば、質量平均分子量50万以上のポリオレフィンと、質量平均分子量1万以上50万未満のポリオレフィンとからなる組成物が挙げられる。
質量平均分子量1万以上50万未満のポリオレフィンとしては、特に限定されないが、ポリエチレンが好ましい。
ポリエチレンの種類としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンが挙げられる。これらは、エチレンの単独重合体のみならず、他のα−オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。また、エチレン以外の他のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ペンテン−1、 4−メチルペンテン−1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレンが好適である。
なお、質量平均分子量50万以上のポリオレフィンと質量平均分子量1万以上50万未満のポリオレフィンとからなる組成物として、最も好ましいのは、超高分子量ポリエチレンと高密度ポリエチレンからなる組成物である。
【0021】
また、バッテリーセパレーターに用いる場合、メルトダウン温度を向上させるために、ポリプロピレンを添加することが好ましい。
ポリプロピレンの種類は、単独重合体の他に、ブロック共重合体、ランダム共重合体などを使用することができる。このブロック共重合体、ランダム共重合体には、プロピレン以外の他のα−オレフィンとの共重合成分を含有することができ、当該他のα−オレフィンとして、好適なのは、エチレンである。
【0022】
更に、本発明方法においては、バッテリーセパレーター用途としての特性を向上させるため、シャットダウン機能を付与するポリオレフィンとして、前述の低密度ポリエチレンを用いることができる。
この低密度ポリエチレンとしては、例えば、分岐状の低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、シングルサイト触媒により製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体のうち、少なくとも一種以上選ばれたポリオレフィンを添加することができる。
また、上記と同様に、バッテリーセパレーター用途としての特性を向上させるため、シャットダウン機能を付与するポリオレフィンとして、質量平均分子量1000〜4000の低分子量ポリエチレンを添加してもよい。ただし、添加量が多いと延伸する場合には、破断が起こりやすくなるので、その添加量は、熱可塑性樹脂全体の20質量部以下にすることが好ましい。
【0023】
本発明方法におけるポリオレフィン又はポリオレフィン組成物の分子量分布Mw/Mnは特に限定されるものでないが、5〜300が好ましく、更に好ましくは、10〜100とすることが望ましい。この分子量分布Mw/Mnが5未満では、高分子量成分が多くなりすぎて、溶融押出が困難になり、また、分子量分布Mw/Mnが300を超えると、低分子量成分が多くなりすぎるために、強度の低下を招くこととなる。
【0024】
本発明方法において用いる可塑剤としては、融点が100℃以下のものが好ましいが、常温で固体であるパラフィンワックス、或いは、ステアリルアルコール、セチルアルコールなどの高級アルコール、常温で液体のn−デカンなどのn−アルカン、流動パラフィン、灯油などが好適に使用できる。
好ましくは、溶剤含有量が安定なゲル状成形物を得るためには、流動パラフィンのような不揮発性の溶剤を用いることが望ましい。
また、これに加えて、ポリマー分子中に、−OH基、−COOH基、−CONH2基などを持つ水に可溶な線状の高分子、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンゴリコール、ポリアクリル酸、ポリビニールアルコールなどを用いても良い。
【0025】
本発明方法において、上記熱可塑性樹脂/可塑剤の質量比は、特に限定されないが、1/99〜50/50、好ましくは、20/80〜40/60とすることが望ましい。熱可塑性樹脂の質量分率が1%未満では、ゲル状成形物を成形する際にダイス出口でスウェルやネックインが大きくなり、ゲル状成形物の成形性及び自己支持性が低下することとなる。一方、50%を超えると、ゲル状成形物の成形性が低下することとなる。
【0026】
本発明方法では、上記の熱可塑性樹脂と可塑剤は、公知の一軸または二軸の押出機で均一に混練し、溶融押出してフイルムまたはシート状のゲル状成形体に成形する。
溶融押出温度は、用いる樹脂により異なるが、ポリオレフィン又はポリオレフィンを含む組成物の場合には、160〜230℃、好ましくは、160〜220℃である。
上記で溶融押出成形したフイルムまたはシート状のゲル状成形体は、常法に従い、冷却した後、ゲル状成形体中の可塑剤を本発明の第1発明又は第2発明の抽出剤組成物で抽出処理を行い、目的とする多孔性成形体を得ることができることとなる。
更に、本発明方法では、前記冷却後、可塑剤を抽出処理する工程の間に、延伸工程を設けてもよく、抽出処理後に熱処理等を行ってもよい。また、抽出処理は、ゲル状成形体の延伸前及び/又は延伸後、好ましくは、延伸後に行うことが望ましい。
前記延伸工程においては、好ましくは、融点+10℃以下の範囲、より好ましくは結晶分散温度から融点の範囲で行うことが望ましい。ここで、結晶分散温度とは、ASDM D 4065に基づき、動的粘弾性の温度特性測定により求められる温度をいい、融点とは、JIS K 7121−1987に基づき、差走査熱量測定(DSC)により求められる値をいう。また、前記熱処理においては、加熱収縮、熱固定、加熱延伸のいずれの処理を用いてもよい。
【0027】
本発明方法において、上記抽出処理は、熱可塑性樹脂と可塑剤の混合物の溶融混練後、押出成形したフィルムまたはシート状のゲル状成形体を、上記(D)及び(E)成分からなる抽出剤組成物に、通常、10秒以上、好ましくは、30秒〜30分程度浸漬する。また、その際の浸漬温度は、熱可塑性樹脂の融点以下、可塑剤の融点以上とする必要がある。
具体的には、0〜100℃、好ましくは、30℃〜80℃で行う。その際に、超音波或いは攪拌などの機械的な振動を加えると、除去効率を更に向上させることができる。
次いで、水、ないし水と低級アルコール系溶剤混合物に浸漬液を変更して、同様な浸漬操作を繰り返して可塑剤の残存量を目標とする量まで減少させた後、乾燥を行う。乾燥方法は、常法の温風乾燥或いは減圧乾燥で必要に応じて一定温度で行う。
このようにして得られる熱可塑性樹脂多孔性成形体は、空孔率30〜95%、透気度20〜1500秒/100cc、突刺強度4900mN/25μm以上という、特に、バッテリーセパレーターとして好適なものとなる。
【0028】
このように構成される上記第1発明又は第2発明の抽出剤組成物は、従来用いられていた、気散性の有機溶剤等を用いることなしに、これら有機溶剤等と同等ないし同等以上の可塑剤に対する抽出性を有するものであり、また、引火性も極めて低く、さらに使用性にも優れ、しかも、経時安定性にも優れたものとなる。
また、上述の如く構成される本発明方法では、上記第1発明又は第2発明の抽出剤組成物を用いることにより、効率的に優れた諸物性を有する多孔性成形体を得ることができ、特に、バッテリーセパレーター用の優れた製造法を提供できることとなる。更に、本発明方法により、製造されるバッテリーセパレーターは、該セパレーターとして要求される有効な気体透過性や空孔率、機械強度を有し、電池特性を充分満足できるものとなる。
【0029】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に特に限定されるものではない。
【0030】
〔実施例1〜5及び比較例1〜5〕
(抽出剤組成物の調製)
下記表1に示す配合組成の抽出剤組成物を用いた。この各抽出剤組成物の経時安定性を下記評価方法により評価した。これらの結果を下記表1に示す。
【0031】
(熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造)
(実施例1〜5)
質量平均分子量が2.0×108の超高分子ポリエチレン20%と、3.5×105の高密度ポリエチレン80%とからなり、分子量分布Mw/Mn=16.8であるポリエチレン組成物(融点135℃、結晶分散温度90℃)100質量部当たりに、酸化防止剤としてテトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕メタンを0.37質量部加えたポリエチレン組成物を得た。
得られたポリエチレン組成物30質量部を二軸押出機(58mmφ、L/D=42,強混練タイプ)に投入し、この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン70質量部を供給し、200℃、200rpmで溶融混練して、押出機中でポリエチレン溶液を調製した。次いで、この押出機の先端に設置されたTダイから延伸膜が60μm程度の厚さとなるように押し出し、50℃に温調された冷却ロールで引き取りながらゲル状シートを作製した。
続いて、ゲル状シートを、バッチ延伸機を用いて115℃で5×5に同時二軸延伸を行い、延伸膜を得た。
得られた延伸膜を、30cm×30cmのステンレス製の固定枠に固定し、下記表1及び表2に示す配合組成の抽出剤組成物3Lに、60℃でフィルムの下部より40kHz超音波で攪拌しながら5分間浸漬した。
次いで、浸漬液をイオン交換水に換えて、同様な条件で2回すすぎを行った後、50℃で20分間温風乾燥を行った。その後、120℃で10分間、熱固定処理を行いポリエチレンの多孔性成形体を得た。
【0032】
〔比較例1〜5〕
上記実施例と同様な方法で作製した二軸延伸フィルムを用いて、実施例と同様に処理してポリエチレンの多孔性成形体を得た。
【0033】
このように作製した各ポリエチレンの多孔性成形体の流動パラフィン残存量、空孔率、透気度を下記試験方法により測定した。これらの結果を下記表1に示す。
【0034】
〔抽出剤組成物の経時安定性の評価方法〕
得られた各抽出剤組成物を100mlの透明ビンに入れ、25℃の恒温室に1週間静置して、その経時による液安定性を下記評価基準で目視判定した。
評価基準:
○:均一透明液体
×:粘性が大きい液体、ないし、2層分離が著しい
【0035】
〔流動パラフィン残存量の測定方法〕
得られた各多孔性成形体を約10cm×10cmに裁断して各試験片として、質量を測定した後、四塩化炭素で残存可塑剤を抽出し、この抽出液から四塩化炭素を減圧除去して流動パラフィン抽出量を質量測定し、この質量を四塩化炭素抽出前の試験片の質量で除することにより比率(%)を算出した。
【0036】
〔空孔率の測定方法〕
質量法により測定した。なお、算出に必要な膜厚は、ミツトヨ社製の触針式膜厚計ミツトヨライトマチックを使用して測定した。
【0037】
〔透気度の測定方法〕
JIS P 8117−1980に準拠して測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜5は、本発明の範囲外となる比較例1〜5に較べて、抽出剤組成物は液安定性に優れ、流動パラフィン残存量も少なく、空孔率及び透気度に優れたものであることが判明した。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、従来用いられていた、気散性の有機溶剤等を用いることなしに、これら有機溶剤等と同等ないし同等以上の可塑剤に対する抽出性を有し、また、引火性も極めて低く、さらに使用性にも優れ、経時安定性にも優れる熱可塑性樹脂多孔性成形体用抽出剤組成物が提供される。
また、本発明方法によれば、本発明の抽出剤組成物を用いることにより、優れた諸物性を有する多孔性成形体、特に、バッテリーセパレーター用に好適な熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造方法が提供される。特に、本発明方法により得られる熱可塑性樹脂多孔性成形体をバッテリーセパレーターに用いれば、該セパレーターとして要求される有効な気体透過性や空孔率、機械強度を有し、電池特性を充分満足するものとなる。
Claims (4)
- 請求項1に記載の(D)がポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(9)第2級アルキル(C12−14)エーテル、ポリオキシエチレン(15)第2級アルキル(C12−14)エーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(7)トリドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ポリオキシプロピレン(5)第2級アルキル(C12−14)エーテルのいずれか一つから選択された非イオン界面活性剤であることを特徴とする熱可塑性樹脂多孔性成形体用抽出剤組成物。
- 熱可塑性樹脂と可塑剤を溶融混練して得られたゲル状成形体を、該可塑剤の融点以上に加熱された請求項1又は2に記載の抽出剤組成物で処理することにより、上記可塑剤を成形体から除去し、多孔性成形体を得ることを特徴とする熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造方法。
- 請求項3に記載の熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造方法において、ゲル状成形体を延伸前及び/又は延伸後に、残存する可塑剤を除去することを特徴とする熱可塑性樹脂多孔性成形体の製造方法。
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