JP3953840B2 - ポリオレフィン微多孔膜の製造方法及びその製造方法によるポリオレフィン微多孔膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法及びその製造方法により得られるポリオレフィン微多孔膜に関し、特に空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜の製造方法及びその製造方法により得られるポリオレフィン微多孔膜に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ポリオレフィン微多孔膜は、リチウム二次電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池、ポリマー電池等に用いる電池用セパレーターをはじめ、電解コンデンサー用セパレーター、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、医療用材料等に幅広く使用されている。ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレーター、特にリチウムイオン電池用セパレーターとして用いる場合、その性能は電池特性、電池生産性及び電池安全性に深く関わっている。そのため優れた透気度、機械的特性、寸法安定性、シャットダウン特性、メルトダウン特性等が要求される。
【0003】
例えば微多孔膜の高強度化を図る方法として、特開昭60-242035号、特開昭60-255107号及び特開昭63-273651号は、超高分子量ポリオレフィンを用いた微多孔膜の製造方法を提案している。これらの方法は超高分子量ポリオレフィンと各種可塑剤又は溶剤を溶融混練し、得られた溶融混練物を押出してゲル状シートを成形し、次いで延伸する方法である。しかし、これらの方法では超高分子量ポリオレフィンを用いるため、溶融混練物を押出成形するためには可塑剤又は溶剤を大量に使用しなければならず、そのため可塑剤又は溶剤の除去に時間がかかり、生産性に問題がある上、得られる微多孔膜の強度も十分なものとは言えなかった。
【0004】
これに対して特開平3-064334号は、超高分子量ポリオレフィンを含有し、(重量平均分子量/数平均分子量)の値が特定の範囲内にあるポリオレフィン組成物を用いる方法を提案している。この方法によれば、溶融混練物の高濃度化すなわち溶媒の使用量を少なくすることが可能であり、しかも得られる微多孔膜は優れた強度と透水性を兼ね備えている。
【0005】
しかし原料に超高分子量ポリエチレンを含む場合、可塑剤を使用した上で延伸すると、得られる微多孔膜の孔径が比較的小さくなる上、孔径の制御が容易でなかった。このため最近のリチウム電池用セパレーターについて求められているような、負極面における孔径が大きい微多孔膜が得られないという問題があった。これに対し、WO00/20493号は、延伸膜を加熱した溶剤に潰漬することにより、片面又は両面の孔径が大きく、内部の孔径が小さい微多孔膜を製造する方法を提案している。しかしながら、この方法では突刺強度を十分なものとすることはできなかった。
【0006】
また孔径の大きい微多孔膜と孔径の小さい微多孔膜とを積層する方法もあるが、この方法では工程の煩雑化が避けられない。さらに特開2001-002813号、特開2001-002826号、特開2001-019791号及び特開2001-164018号には、ポリエチレンとパラフィンワックスの溶融混合物を押出し、冷却することにより得られたゲル状成形物を逐次延伸し、パラフィンワックスを除去した後、熱処理する方法が記載されており、これによれば空孔率の高い微多孔膜が得られる。しかしこれらの方法では、比較的融点の高いパラフィンワックスが固化しているため、低温で高倍率の延伸を行うのが困難であり、仮に高倍率で延伸できたとしても、熱収縮率と透気度をバランス良く向上させることは困難であった。
【0007】
従って、本発明の目的は、上記従来技術の欠点を解消し、空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れるポリオレフィン微多孔膜の製造方法及びその製造方法によるポリオレフィン微多孔膜を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、ポリオレフィンと液体溶剤とを溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押出し、冷却することにより得られたゲル状成形物を一軸方向に3倍を超えるように延伸し、続いて得られた延伸物を、前記3倍を超える延伸の延伸温度よりも高い温度で、少なくとも前記3倍を超える延伸の方向に対して垂直な方向に再び延伸し、しかる後前記溶剤を除去することにより上記問題を解決できることを見出し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち、本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、ゲル状成形物を延伸する工程において、一軸方向に3倍を超えるように延伸し、続いて得られた延伸物を、前記3倍を超える延伸の延伸温度よりも高い温度で、少なくとも前記3倍を超える延伸の方向に対して垂直な方向に再び延伸することを特徴とする。
【0010】
またこのような製造方法により得られる本発明のポリオレフィン微多孔膜は、全光透過率偏差が5%以内であり、空孔率が35 〜95%であり、かつ25℃における膜厚25μm換算の透気度が10 〜300秒/100 ccであることを特徴とする。
【0011】
溶融混練物を調製する際に液体溶剤を用いることにより、一次延伸において高倍率の延伸が可能となり、さらに得られる微多孔膜の全光透過率が比較的低くなるとともに全光透過率偏差が小さくなる。また溶融混練物をダイより押出し、冷却することにより得られたゲル状成形物を、一軸方向に3倍を超えるように延伸(一次延伸)することにより孔径が拡大し、その結果空孔率及び透過性が向上する(良好な透気度が得られる)。また一次延伸により得られた延伸物を、一次延伸の延伸温度よりも高い温度で、少なくとも一次延伸の方向に対して垂直な方向に再び延伸(二次延伸)することにより、突刺強度及び熱収縮率のバランスが向上する。その結果、空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜が得られる。
【0012】
一次延伸の温度は、一般的に原料ポリオレフィンの結晶分散温度+20℃以下であるのが好ましく、結晶分散温度以下であるのがより好ましい。特に原料ポリオレフィンがポリエチレン又はポリエチレンを含む組成物からなる場合、一次延伸の温度は40 〜105℃であるのが好ましく、70 〜90℃であるのがより好ましい。一次延伸を結晶分散温度+20℃以下で行うことにより空孔率及び透過性が一層向上する。一次延伸と二次延伸との温度差は、5 〜80℃であるのが好ましく、5 〜40℃であるのがより好ましい。二次延伸の温度は、一般的に原料ポリオレフィンの結晶分散温度 〜(融点+10 ℃)が好ましく、原料ポリオレフィンの結晶分散温度 〜 融点がより好ましい。特に原料ポリオレフィンがポリエチレン又はポリエチレンを含む組成物からなる場合、二次延伸の温度は80 〜130℃であるのが好ましく、90 〜120℃であるのがより好ましい。一次延伸と二次延伸のトータルは面倍率で5倍以上とするのが好ましく、10倍以上とするのがより好ましく、20倍以上とするのがさらに好ましい。
【0013】
ポリオレフィン微多孔膜が一層優れた特性を得るために、ポリオレフィンは下記条件(1)〜(11)を満たすのが好ましい。
(1) 上記ポリオレフィンはポリエチレン又はポリプロピレンを含む。
(2) 上記(1)に記載のポリオレフィンは重量平均分子量5×105 以上のポリエチレンを含む。
(3) 上記(2)に記載の重量平均分子量5×105 以上のポリエチレンは超高分子量ポリエチレンである。
(4) 上記(3)に記載の超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量は1×106 〜15×106 である。
(5) 上記(3)に記載の超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量は1×106 〜5×106 である。
(6) 上記(2)に記載のポリオレフィンは任意成分として他のポリオレフィンを含む組成物である。
(7) 上記(6)に記載の他のポリオレフィンは、重量平均分子量1×104 以上 〜5×105 未満のポリエチレン、1×104 〜4×106 のポリプロピレン、重量平均分子量1×104 〜4×106 のポリブテン-1、重量平均分子量1×103 以上 〜1×104 未満のポリエチレンワックス、及び重量平均分子量1×104 〜4×106 のエチレン・α-オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(8) 上記(2)に記載のポリオレフィンは、重量平均分子量5×105 以上の超高分子量ポリエチレンと重量平均分子量1×104 以上 〜5×105 未満のポリエチレンとの組成物である。
(9) 上記(8)に記載のポリエチレン組成物中の重量平均分子量1×104 以上 〜5×105 未満のポリエチレンは高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(10) 上記(8)又は(9)に記載のポリオレフィン組成物は重量平均分子量5×105 以上の超高分子量ポリエチレンと重量平均分子量1×104 以上 〜5×105 未満の高密度ポリエチレンからなる。
(11) 上記(6)〜(10)のいずれかに記載のポリエチレン組成物のMw/Mnは5 〜300である。
【0014】
本発明の製造方法によるポリオレフィン微多孔膜の物性は、通常の場合、突刺強度は3920 mN/25μm以上であり、好ましくは4900 mN/25μm以上であり、熱収縮率(105 ℃/8hr)はMD及びTDの両方向共に8%以下であり、好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下である特性を満たす。
【0015】
【発明の実施の形態】
[1] ポリオレフィン
本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造に使用されるポリオレフィンは、ポリエチレン又はポリプロピレンを含むのが好ましく、特に重量平均分子量が5×105 以上のポリエチレンを含むのが好ましい。重量平均分子量が5×105 以上のポリエチレンを含むポリエチレンとしては超高分子量ポリエチレンが挙げられ、その重量平均分子量は1×106 〜15×106 であるのが好ましく、1×106 〜5×106 であるのがより好ましい。
【0016】
使用されるポリエチレンとしては、重量平均分子量が5×105 以上のポリエチレンを含むものであれば、任意成分として他のポリオレフィンを含む組成物でも構わない。このような他のポリオレフィンとしては、重量平均分子量1×104 以上 〜5×105 未満のポリエチレン、1×104 〜4×106 のポリプロピレン、重量平均分子量1×104 〜4×106 のポリブテン-1、重量平均分子量1×103 以上 〜1×104 未満のポリエチレンワックス、及び重量平均分子量1×104 〜4×106 のエチレン・α-オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種を用いることができる。他のポリオレフィンの添加量はポリオレフィン組成物全体を100重量部として80重量部以下にする。
【0017】
ポリオレフィン組成物としては、超高分子量ポリエチレンと重量平均分子量1×104 以上 〜5×105 未満のポリエチレンとからなる組成物が好ましい。この組成物は、用途に応じて分子量分布(Mw/Mn)を容易に制御することができる。ポリオレフィン組成物のMw/Mnは限定的ではないが5 〜300が好ましく、5 〜100がより好ましい。重量平均分子量が1×104 以上 〜5×105 未満のポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンのいずれも使用することができ、エチレンの単独重合体のみならず、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1等の他のα-オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。ポリオレフィン組成物としては、限定的ではないが、重量平均分子量5×105 以上の超高分子量ポリエチレンと重量平均分子量1×104 以上 〜5×105 未満の高密度ポリエチレンとからなる組成物が好適である。
【0018】
[2] ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、(a) 上記ポリオレフィンに液体溶剤を添加して溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製する工程、(b) ポリオレフィン溶液をダイより押し出し、冷却してゲル状成形物を形成する工程、(c) 一次延伸工程及び二次延伸工程、(d) 液体溶剤除去工程、(e) 得られた膜を乾燥する工程を含む。更に(a)〜(e)の工程の後、必要に応じて(f) 熱処理、(g) 電離放射による架橋処理 、(h) 親水化処理等を行ってもよい。
【0019】
(a) ポリオレフィン溶液の調製工程
まずポリオレフィンに常温で液状である溶剤を添加して溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製する。ポリオレフィン溶液には必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、無機充填材等の各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。例えば孔形成剤として微粉珪酸を添加することができる。
【0020】
ポリオレフィン溶液を調製するための溶剤としては室温で液状の液体溶剤を用いることを必須とする。液体溶剤を用いることにより、一次延伸において高倍率の延伸が可能となり、さらに得られる微多孔膜の全光透過率が比較的低くなるとともに全光透過率偏差が小さくなる。ここで全光透過率とはJIS K7105に準拠して測定した値であり、全光透過率偏差とは、20個のサンプルについて測定した全光透過率から算出した標準偏差である。一般的に孔径が大きいと透過性は良く、全光透過率が低い傾向にある。全光透過率偏差が小さいほどポリオレフィン微多孔膜のむらが少なく、機械的強度が良い。液体溶剤としてはノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、及び沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の常温では液状のフタル酸エステルを用いることができる。液体溶剤含有量が安定なゲル状成形物を得るためには、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。なお加熱溶融混練状態においてはポリオレフィンと混和状態になるが、室温では固体状の固体溶剤を液体溶剤に混合してもよい。このような固体溶剤として、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等を使用することができる。なお固体溶剤のみを使用すると、後述する一次延伸において3倍を超える一軸延伸をすることができなくなるか、又は3倍を超える一軸延伸ができても延伸むらが発生し、全光透過率偏差が悪化する。
【0021】
液体溶剤の粘度は25 ℃において30 〜500 cStであるのが好ましく、50 〜200 cStであるのがより好ましい。25 ℃における粘度が30 cSt未満では発泡し易く、混練が困難になる。一方500 cStを超えると液体溶剤の除去が困難になる。
【0022】
溶融混練の方法は特に限定されないが、通常は押出機中で均一に混練することにより行う。この方法はポリオレフィンの高濃度溶液を調製するのに適する。溶融温度はポリオレフィンの融点+10 ℃ 〜+100 ℃が好ましい。よって一般的に溶融温度は160 〜230 ℃であるのが好ましく、170 〜200 ℃であるのがより好ましい。ここで融点とはJIS K7121に基づいて示差走査熱量測定(DSC)により求められる値を言う。液体溶剤は混練開始前に添加しても、混練中に押出機の途中から添加してもよいが、混練開始前に添加して予め溶液化するのが好ましい。溶融混練にあたってはポリオレフィンの酸化を防止するために酸化防止剤を添加するのが好ましい。
【0023】
ポリオレフィン溶液中、ポリオレフィンと液体溶剤との配合割合は、両者の合計を100重量%として、ポリオレフィンが1 〜50重量%、好ましくは20 〜40重量%である。ポリオレフィンが1重量%未満ではゲル状成形物を形成する際にダイス出口でスウェルやネックインが大きくなり、ゲル状成形物の成形性及び自己支持性が低下する。一方50重量%を超えるとゲル状成形物の成形性が低下する。
【0024】
(b) ゲル状成形物の形成工程
溶融混練したポリオレフィン溶液を直接に又は別の押出機を介して、或いは一旦冷却してペレット化した後再度押出機を介してダイから押し出す。ダイとしては、通常は長方形の口金形状をしたシート用ダイを用いるが、二重円筒状の中空状ダイ、インフレーションダイ等も用いることができる。シート用ダイの場合、ダイのギャップは通常0.1 〜5mmであり、押し出し時にはこれを140 〜250 ℃に加熱する。加熱溶液の押し出し速度は0.2 〜15 m/分であるのが好ましい。
【0025】
このようにしてダイから押し出した溶液を冷却することによりゲル状成形物を形成する。冷却は少なくともゲル化温度以下までは50 ℃/分以上の速度で行うのが好ましい。また25 ℃以下まで冷却するのが好ましい。このようにしてポリオレフィン相が溶剤によってミクロ相分離された相分離構造を固定化することができる。一般に冷却速度が遅いと得られるゲル状成形物の高次構造が粗くなり、それを形成する擬似細胞単位も大きなものとなるが、冷却速度が速いと密な細胞単位となる。冷却速度が50 ℃/分未満では結晶化度が上昇し、延伸に適したゲル状成形物となりにくい。冷却方法としては冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法等を用いることができる。
【0026】
(c) 一次延伸工程及び二次延伸工程
押し出した溶液を冷却することにより得られたゲル状成形物を延伸する。本発明において、延伸はまず一軸方向に3倍を超えるように延伸(一次延伸)し、次いで一次延伸の延伸温度よりも高い温度で、かつ少なくとも一次延伸の方向に対して垂直な方向に再び延伸(二次延伸)する。一次延伸により、ゲル状シートのセル構造が崩れるとともに微小のクラックが生じることによって孔径が拡大する。そして二次延伸により、突刺強度及び熱収縮率のバランスが向上する。その結果、空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜が得られる。一次延伸及び二次延伸においては、膜厚方向に温度分布を設けて延伸するのが好ましい。これにより一般的に機械的強度に優れた微多孔膜が得られる。膜厚方向に温度分布を設けて延伸する方法としては、例えば特開平7-188440号に開示の方法を適用することができる。
【0027】
一次延伸は一軸方向に3倍を超えるように行う必要がある。一次延伸は4倍以上の倍率で行うのが好ましい。一軸延伸を3倍以下の倍率で行うと空孔率及び透過性が十分に向上しない。但し50倍を超えるように行うと破膜が起こり易くなるため好ましくない。一次延伸は、テンター法、ロール法又は圧延法により行うことができる。
【0028】
一次延伸は、一般的に原料ポリオレフィンの結晶分散温度+20℃以下の温度で行うのが好ましく、原料ポリオレフィンの結晶分散温度以下の温度で行うのがより好ましい。例えばポリエチレンの結晶分散温度は一般的に90 ℃である。一次延伸温度の下限に特に制限はないが、容易性から−20 ℃以上で行うのが好ましい。特に原料ポリオレフィンがポリエチレン又はポリエチレンを含む組成物からなる場合、一次延伸の温度は40 〜105℃であるのが好ましく、70 〜90℃であるのがより好ましい。結晶分散温度+20℃を超える温度で延伸すると孔径の拡大が期待できない。ここで結晶分散温度とは、ASTM D 4065に基づいて動的粘弾性の温度特性測定により求められる値をいう。
【0029】
二次延伸では、一次延伸の延伸温度よりも高い温度で、かつ少なくとも一次延伸の方向に対して垂直な方向に延伸する必要がある。二次延伸と一次延伸との温度差に限定はないが、5 〜80℃であるのが好ましく、5 〜40℃であるのがより好ましい。ただし二次延伸は原料ポリオレフィンの融点+10℃以下で行うのが好ましい。二次延伸温度が(融点+10 ℃)を超えると樹脂が溶融し、延伸による分子鎖の配向ができない。二次延伸は、一般的に原料ポリオレフィンの結晶分散温度 〜(融点+10 ℃)の温度で行うのが好ましく、原料ポリオレフィンの結晶分散温度 〜 融点の温度で行うのがより好ましい。特に原料ポリオレフィンがポリエチレン又はポリエチレンを含む組成物からなる場合、二次延伸の温度は80 〜130℃であるのが好ましく、90 〜120℃であるのがより好ましい。
【0030】
二次延伸は一軸延伸でも逐次二軸延伸でもよい。例えば一次延伸の方向に対して垂直な方向に延伸した後、一次延伸と同一方向に延伸してもよい。このような逐次二軸延伸を行うことにより突刺強度の向上効果が高くなる。二次延伸は、テンター法、ロール法、圧延法又はこれらの組合せにより行うことができる。
【0031】
一次延伸と二次延伸のトータルは面倍率で5倍以上とするのが好ましく、10 倍以上とするのがより好ましく、20倍以上とするのがさらに好ましい。トータル面倍率を5倍以上とすることにより突刺強度が一層向上する。一方トータル面倍率が400倍を超えると、延伸装置、延伸操作等の点で制約が生じる。また一次延伸の面倍率は二次延伸の面倍率と同じか、二次延伸の面倍率よりも高くするのが好ましい。二次延伸の面倍率を一次延伸の面倍率よりも高くすると、微多孔膜の孔径が小さくなり、空孔率及び透過性の向上が十分でなくなる恐れがある。
【0032】
(d) 液体溶剤除去工程
一次延伸及び引き続く二次延伸により得られた膜から液体溶剤を除去(洗浄)する。ポリオレフィン相は溶剤によりミクロ相分離されているので、液体溶剤を除去すると多孔質の膜が得られる。液体溶剤の除去(洗浄)は、公知の洗浄溶媒を用いて行うことができる。公知の洗浄溶媒としては、例えば塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、三フッ化エタン等のフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン等の易揮発性溶媒が挙げられる。
【0033】
液体溶剤を除去するための洗浄溶媒としては、上記公知の溶媒の他に、25℃における表面張力が24mN/m以下、好ましくは20mN/m以下になる洗浄溶媒(A)を用いることができる。このような洗浄溶媒(A)を用いることにより、洗浄後の乾燥時に微多孔内部で生じる気-液界面の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制することができ、その結果微多孔膜の空孔率及び透過性が一層向上する上、空孔率/透過性と熱収縮率のバランスも向上するので好ましい。洗浄溶媒(A)は熱可塑性樹脂とは相溶しないものが好ましい。なお洗浄溶媒の表面張力は、その使用温度が上がるに従い低くなるが、使用できる温度範囲は沸点以下に限られる。ここで「表面張力」とは気体と液体との界面に生じる張力を言い、JIS K 3362に基づいて測定したものである。
【0034】
洗浄溶媒(A)としてはハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、環状ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、パーフルオロエーテル等のフッ素系化合物、炭素数5 〜10のノルマルパラフィン、炭素数6 〜10のイソパラフィン、炭素数6以下の脂肪族エーテル、シクロペンタン等のシクロパラフィン、2-ペンタノン等の脂肪族ケトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ターシャリーブタノール、イソブタノール、2-ペンタノール等の脂肪族アルコール、酢酸プロピル、酢酸ターシャリーブチル、酢酸セカンダリーブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸イソプロピル、ギ酸イソブチル、プロピオン酸エチルの脂肪族エステル等を挙げることができる。
【0035】
フッ素系化合物としては、例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、例えばC6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。これらフッ素系化合物は20℃において表面張力が24mN/m以下であるため、表面張力による網状組織の収縮緻密化を抑制する効果が高い。また沸点が100℃以下であるため洗浄溶媒を除去する際に容易である。更にオゾン破壊性が無いため環境への負荷が低減でき、且つ引火点が40℃以上である(一部の化合物は引火点が無い)ため乾燥工程中の引火爆発の危険性が低い。
【0036】
炭素数5 〜10のノルマルパラフィンとしてはノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナン及びノルマルデカンが好ましい。これらは表面張力が20℃において24mN/m以下である。この中では、沸点が100℃以下であり、乾燥が容易であるノルマルペンタン、ノルマルヘキサン及びノルマルヘプタンがより好ましい。
【0037】
炭素数6 〜10のイソパラフィンとしては2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジブチルブタン、2,3-ジブチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2,2,3-トリメチルブタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,3,3-トリメチルペンタン、2,3,4-トリメチルペンタン、2-メチルオクタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘキサン、2-メチルノナン及び2,3,5-トリメチルヘプタンが好ましい。この中では表面張力が20℃において24mN/m以下であり、かつ沸点が100℃以下である2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジブチルブタン、2,3-ジブチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン及び3,3-ジメチルペンタンがより好ましい。
【0038】
炭素数6以下のエーテルとしてはジエチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル及びジイソプロピルエーテルが好ましい。これらはその表面張力が20℃において24mN/m以下であり、かつ沸点が100℃以下である。
【0039】
シクロペンタン、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノールは、その表面張力が20℃において24mN/m以下であり、かつ沸点が100℃以下であるため好ましい。
【0040】
上記脂肪族エステルの中では、表面張力が20℃において24mN/m以下である酢酸ターシャリーブチル、酢酸セカンダリーブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソプロピル、ギ酸イソブチルが好ましい。更に沸点が100℃以下であるが酢酸ターシャリーブチル、ギ酸エチル及びギ酸イソプロピルがより好ましい。
【0041】
洗浄溶媒(A)としては、25℃において表面張力が24mN/m以下になるように配合した炭素数3以下の脂肪族アルコールと水との混合物を用いることもできる。
【0042】
上述の洗浄溶媒(A)は他の溶媒と混合して使用することができる。この場合、その混合比率は25℃における表面張力が24mN/m以下になるようにする。例えば、例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、例えばC6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の溶媒とパラフィン等の炭化水素系溶媒とを混合したものを使用することができる。
【0043】
洗浄溶媒(A)を用いる洗浄は二段階以上の工程で行うのが好ましく、洗浄溶媒(A)以外の洗浄溶媒(洗浄溶媒(B))を用いる段階が入ってもよい。この場合は少なくとも一つの段階において洗浄溶媒(A)を用いればよい。洗浄溶媒(B)としては、熱可塑性樹脂とは相溶性を有しないものが好ましく、例えば上述の塩化メチレンを始めとする公知の洗浄溶媒を用いることができる他、沸点100℃以上かつ引火点0℃以上の非水系溶媒も用いることができる。このような洗浄溶媒(B)は、ポリオレフィン組成物の溶解に用いた溶剤に応じて適宜選択し、単独もしくは混合して用いる。
【0044】
このような二段階以上の洗浄工程により、洗浄溶媒の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制しながら十分な洗浄を行うことができる。好ましくは、少なくとも最終段階の工程において洗浄溶媒(A)で処理する。これにより洗浄に用いた洗浄溶媒(B)を除去でき(以下「リンス処理」という)、洗浄溶媒除去時に起る網状組織の収縮緻密化を防ぐことができる。その結果、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率及び透過性の向上に効果がある。
【0045】
最終段階の工程において洗浄溶媒(A)で処理する際、特に沸点100℃以下の洗浄溶媒(A)で処理すれば洗浄溶媒除去工程の効率が向上する。更に上述の例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、例えばC6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテル等のフッ素系化合物を用いると、前述のように製造工程における環境への負荷をより低くできる。特に洗浄溶媒(B)として沸点150℃以上の溶媒を用いる場合はその除去に時間がかかり、その影響で空孔率及び透過性が低下する恐れがあるが、沸点100℃以下の洗浄溶媒(A)を用いることによりその問題を解消することができる。
【0046】
洗浄溶媒(B)として用いることができる沸点100℃以上かつ引火点0℃以上の非水系溶媒は難揮発性であり、環境への負荷が低く、洗浄溶媒除去工程において引火爆発する危険性が低いため使用上安全である。また高沸点であるため凝縮しやすく、回収が容易となり、リサイクル利用し易い。なお本願明細書において「沸点」とは、1.01×105Paにおける沸点を言い、「引火点」とは、JIS K 2265に基づいて測定したものを言う。
【0047】
上記非水系溶媒として、例えば沸点100℃以上かつ引火点0℃以上のパラフィン系化合物、芳香族、アルコール、エステル、エーテル、ケトン等が挙げられる。またその引火点は、5℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましい。しかし非水系溶媒を水溶液化するのは、溶剤の除去を十分に行うことができないため好ましくない。
【0048】
非水系溶媒としては、炭素数8以上のノルマルパラフィン、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のノルマルパラフィン、炭素数8以上のイソパラフィン、炭素数7以上のシクロパラフィン、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のシクロパラフィン、炭素数7以上の芳香族炭化水素、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数6以上の芳香族炭化水素、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5 〜1Oのアルコール、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7 〜14のエステル及びエーテル、並びに炭素数5 〜10のケトンからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。
【0049】
炭素数8以上のノルマルパラフィンとしては、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカン、ノルマルウンデカン及びノルマルドデカンが好ましく、ノルマルオクタン、ノルマルノナン及びノルマルデカンがより好ましい。
【0050】
水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のノルマルパラフィンとしては、1-クロロペンタン、1-クロロヘキサン、1-クロロヘプタン、1-クロロオクタン、1-ブロモペンタン、1-ブロモヘキサン、1-ブロモヘプタン、1-ブロモオクタン、1,5-ジクロロペンタン、1,6-ジクロロヘキサン、1,7-ジクロロヘプタンが好ましく、1-クロロペンタン、1-クロロヘキサン、1-ブロモペンタン及び1-ブロモヘキサンがより好ましい。
【0051】
炭素数8以上のイソパラフィンとしては2,3,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘプタン、2,5,6-トリメチルオクタンが好ましく、2,3,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,5-トリメチルヘキサン及び2,3,5-トリメチルヘキサンがより好ましい。
【0052】
炭素数7以上のシクロパラフィンとしては、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,2-ジメチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,3-ジメチルシクロヘキサン、並びにシス-及びトランス-1,4-ジメチルシクロヘキサンが好ましく、シクロヘキサンがより好ましい。
【0053】
水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のシクロパラフィンとしては、クロロシクロペンタン及びクロロシクロヘキサンが好ましく、クロロシクロペンタンがより好ましい。
【0054】
炭素数7以上の芳香族炭化水素としては、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン及びパラキシレンが好ましく、トルエンがより好ましい。
【0055】
水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数6以上の芳香族炭化水素としてはクロロベンゼン、2-クロロトルエン、3-クロロトルエン、4-クロロトルエン、3-クロロオルトキシレン、4-クロロオルトキシレン、2-クロロメタキシレン、4-クロロメタキシレン、5-クロロメタキシレン及び2-クロロパラキシレンが好ましく、クロロベンゼン、2-クロロトルエン、3-クロロトルエン及び4-クロロトルエンがより好ましい。
【0056】
水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5 〜10のアルコールとしては、イソペンチルアルコール、ターシャリーペンチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル及び5-クロロ-1-ペンタノールが好ましく、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル及び5-クロロ-1-ペンタノールがより好ましい。
【0057】
水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7 〜14のエステルとしては炭酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル、ノルマル酪酸エチル、ノルマル吉草酸エチル、酢酸2-クロロエチルが好ましく、酢酸イソペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル、ノルマル酪酸エチル及び酢酸2-クロロエチルがより好ましい。
【0058】
水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7 〜14のエーテルとしてはジプロピレングリコールジメチルエーテル、ノルマルブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ビスクロロエチルエーテルが好ましく、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びビスクロロエチルエーテルがより好ましい。
【0059】
炭素数5 〜10のケトンとしては2-ぺンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノンが好ましく、2-ペンタノン及び3-ペンタノンがより好ましい。
【0060】
上述のような洗浄溶媒(B)は混合物として用いてもよいが、洗浄溶媒(B)に、任意成分(C)として、洗浄溶媒(A)として挙げた例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、例えばC6F14又は C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から少なくとも一種選ばれた溶媒を混合したものを使用してもよい。この場合、洗浄溶媒(B)と任意成分(C)は、表面張力が20 〜80℃のいずれかの温度において24mN/m以下になる割合で混合するのが好ましい。一般的には、混合溶媒100重量部中において任意成分(C)を2 〜98重量部、好ましくは5 〜50重量部にする。任意成分(C)を2 〜98重量部含むことにより、洗浄溶媒の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制しつつ、十分な洗浄を行うことができる。
【0061】
洗浄溶媒(B)は、その表面張力が20 〜80℃のいずれかの温度において24mN/m以下になるものを用いるのが好ましい。このような洗浄溶媒(B)として例えば、ノルマルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、三フッ化エタン、ジエチルエーテル、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0062】
以下洗浄の第一段階で使用する洗浄溶媒(B)と第二段階で使用する洗浄溶媒(A)との組合せとして好ましいものを示す。但し後述するように洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)を用いる洗浄は三段階以上で行うことも可能であるため、これらは二段階で行うことに限定する趣旨ではない。例えば、洗浄溶媒(B)/洗浄溶媒(A)=塩化メチレン/C4F9OCH3、塩化メチレン/C6F14、塩化メチレン/C7F16、塩化メチレン/ノルマルヘプタン、塩化メチレン/ノルマルヘキサン、塩化メチレン/ジエチルエーテル、エーテル/ハイドロフルオロエーテル、エーテル/環状ハイドロフルオロカーボン、エーテル/アルコール、エーテル/アルコールと水との混合物、ノルマルパラフィン/ハイドロフルオロエーテル、ノルマルパラフィン/環状ハイドロフルオロカーボン、ノルマルパラフィン/アルコール、ノルマルパラフィン/アルコールと水との混合物、イソパラフィン/ハイドロフルオロエーテル、イソパラフィン/環状ハイドロフルオロカーボン、イソパラフィン/アルコール、イソパラフィン/アルコールと水との混合物、シクロパラフィン/ハイドロフルオロエーテル、シクロパラフィン/環状ハイドロフルオロカーボン、シクロパラフィン/アルコール、シクロパラフィン/アルコールと水との混合物、ケトン/ハイドロフルオロエーテル、ケトン/環状ハイドロフルオロカーボン、ケトン/アルコール、及びケトン/アルコールと水との混合物が挙げられる。好ましくは、洗浄溶媒(B)/洗浄溶媒(A)=塩化メチレン/C4F9OCH3、塩化メチレン/C6F14、塩化メチレン/C7F16、塩化メチレン/ノルマルヘプタン、塩化メチレン/ノルマルヘキサン、塩化メチレン/ジエチルエーテル、ノルマルヘプタン/C4F9OCF3、及びノルマルヘプタン/C6F14である。このような組合せのものを用いることにより、溶剤を効果的に除去できるとともに、微多孔膜の空孔率及び透過性を向上させることができる。
【0063】
洗浄溶媒(A)単独又は洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)による洗浄は三段階以上の工程で行ってもよい。一段階又は二段階の処理では溶剤を十分除去することができずに、得られるポリオレフィン微多孔膜の物性が低下する場合等に有効である。この場合少なくとも最終工程において洗浄溶媒(A)を用いて処理すればよく、特に洗浄回数は制限されないが、通常三段 〜五段階であり、好ましくは三 〜四段階である。また各々の段階において同じ洗浄溶媒で処理しても単に製造工程が長くなるため、ポリオレフィン微多孔膜製造設備のスペースが拡大し、また溶剤除去の効率性が低下するため、各段階では互いに異なる洗浄溶媒を用いるのが好ましい。但し、互いに異なる洗浄溶媒を用いることには限定されるものではない。従って、例えば三段階の処理の場合、第一段階及び第二段階において同一の洗浄溶媒を用い、第三段階で第一及び第二段階とは異なる洗浄溶媒を用いることもできる。
【0064】
洗浄方法は、洗浄溶媒(A)及び/又は洗浄溶媒(B)に浸漬し抽出する方法、洗浄溶媒(A) 及び/又は洗浄溶媒(B)をシャワーする方法、又はこれらの組合せによる方法等により行うことができる。また洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)は、ゲル状成形物100重量部に対しそれぞれ300 〜30000重量部使用するのが好ましい。また洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)を用いて二段階以上の工程により洗浄を行う場合は、洗浄溶媒(A)の使用量を、洗浄溶媒(B)の使用量を100重量部として50 〜200重量部となるようにするのが好ましい。洗浄溶媒(A)単独又は洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)による洗浄は、残留した溶剤がその添加量に対して1重量%未満になるまで行うのが好ましい。
【0065】
洗浄溶媒(B)による洗浄温度は洗浄溶媒(B)の沸点に依存する。洗浄溶媒(B)の沸点が150℃以下の場合は室温での洗浄が可能であり、必要に応じて加熱洗浄すればよく、一般に20 〜80℃で洗浄するのが好ましい。また洗浄溶媒(B)の沸点が150℃以上の場合、室温では膜内部への浸透性が悪いので、加熱洗浄するのが好ましい。
【0066】
洗浄溶媒(A)による洗浄温度及び/又はリンス温度は、洗浄溶媒(A)の表面張力に依存する。具体的には、洗浄溶媒(A)の表面張力が24mN/m 以下になる温度以上で洗浄及び/又はリンス処理を行うのが好ましい。洗浄溶媒(A)は、高くとも25℃においてその表面張力が24mN/m 以下になるので、殆どの場合は加熱を必要とせず、通常の室温において洗浄及び/又はリンス処理を行うことができる。周囲の気温が、洗浄溶媒(A)の表面張力が24mN/m以下になる温度に満たない場合は、必要に応じてその表面張力が24mN/m以下になる温度まで洗浄溶媒(A)を加熱する。
【0067】
(e) 膜の乾燥工程
延伸及び液体溶剤除去により得られた膜を、加熱乾燥法又は風乾法等により乾燥することができる。乾燥温度は、ポリオレフィンの結晶分散温度以下の温度であるのが好ましく、特に結晶分散温度より5℃以上低い温度であるのが好ましい。
【0068】
乾燥処理により、ポリオレフィン微多孔膜中に残存する洗浄溶媒の含有量を5重量%以下にするのが好ましく(乾燥後の膜重量を100重量%とする)、3重量%以下にするのがより好ましい。乾燥が不十分で膜中に洗浄溶媒が多量に残存していると、後の熱処理で空孔率が低下し、透過性が悪化するので好ましくない。
【0069】
(f) 熱処理工程
洗浄溶媒除去後に熱処理を行うのが好ましい。熱処理によって結晶が安定化し、ラメラ層が均一化される。熱処理方法としては、熱延伸処理、熱固定処理、及び熱収縮処理のいずれの方法も用いることができ、これらは微多孔膜に要求される物性に応じて適宜選択される。これらの処理は、ポリオレフィン微多孔膜の融点以下、好ましくは60℃以上融点−10℃以下で行う。
【0070】
熱延伸処理は、通常用いられるテンター方式、ロール方式、又は圧延方式により行い、少なくとも一方向に延伸倍率1.01 〜2.0倍で行うのが好ましく、1.01 〜1.5倍で行うのがより好ましい。
【0071】
熱固定処理は、テンター方式、ロール方式、圧延方式により行う。また熱収縮処理は、テンター方式、ロール方式、若しくは圧延方式により行うか、又はベルトコンベア若しくはフローティング等を用いて行ってもよい。なお熱収縮処理は、少なくとも一方向に50%以下の範囲で行うのが好ましく、30%以下の範囲で行うのがより好ましい。
【0072】
なお上述の熱延伸処理、熱固定処理及び熱収縮処理を多数組み合せて行ってもよい。特に熱延伸処理後に熱収縮処理を行うと、低収縮率で高強度の微多孔膜が得られるため好ましい。
【0073】
(g) 膜の架橋処理工程
延伸・溶剤除去により得られた膜を加熱乾燥法、風乾法等により乾燥した微多孔膜に対して電離放射により架橋処理を施すのが好ましい。電離放射線としてはα線、β線、γ線、電子線等が用いられ、電子線量0.1 〜100 Mrad、加速電圧100 〜300 kVにて行うことができる。これによりメルトダウン温度を向上させることができる。
【0074】
(h) 親水化処理工程
得られた微多孔膜は親水化処理して用いることもできる。親水化処理としては、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電処理等を用いる。なおモノマーグラフト処理は電離放射後に行うのが好ましい。
【0075】
界面活性剤を使用する場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及び両イオン系界面活性剤のいずれも使用することができるが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。この場合、界面活性剤を水溶液又はメタノール、エタノール又はイソプロピルアルコール等の低級アルコールの溶液にして、ディッピング及びドクターブレード等の方法により親水化される。
【0076】
得られた親水化微多孔膜を乾燥する。この時、透過性を向上させるため、ポリオレフィン微多孔膜の融点以下の温度で収縮を防止又は延伸しながら熱処理するのが好ましい。
【0077】
[3] ポリオレフィン微多孔膜
本発明の好ましい実施態様によるポリオレフィン微多孔膜は、次の物性を有する。
(1) 全光透過率は33%以下であり、好ましくは30%以下である。全光透過率か゛33%を超えると透過性が悪化する。
(2) 全光透過率偏差は5%以内であり、好ましくは4%以内である。全光透過率偏差が5%を超えると、機械的強度が低下する。
(3) 透気度は10 〜300秒/100ccである(膜厚25μm換算)。これにより電池容量が大きくなり、電池のサイクル特性も良好となる。透気度が300秒/100ccを超えると、ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレーターとして用いた場合に、電池容量が小さくなる。一方10秒/100cc未満では電池内部の温度上昇時にシャットダウンが十分に行われない。本発明の微多孔膜を80℃/1.96MPaで5分間熱処理しても透気度は大きく変化せず、1000秒/100cc以下である。このため本発明のポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレーターとして用いた時に、容量特性の低下が少ない電池が得られる。
(4) 突刺強度は3920 mN/25μm以上であり、好ましくは4900 mN/25μm以上である。突刺強度が3920 mN/25μm未満では、ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレーターとして電池に組み込んだ場合に短絡が発生する恐れがある。
(5) 105 ℃・8時間暴露後の熱収縮率は機械方向(MD)及び横方向(TD)ともに8%以下であり、5%以下であるのが好ましく、3%以下であるのがより好ましい。熱収縮率が8%を超えるとポリオレフィン微多孔膜をリチウム電池用セパレーターとして用いた場合、発熱するとセパレーター端部が収縮し、短絡が発生する可能性が高くなる。
(6) 空孔率は35 〜95%であり、40 〜90%であるのが好ましく、40 〜85%であるのがより好ましい。空孔率が35%未満では良好な透気度が得られない。95%を超えると電池安全性とインピーダンスのバランスがとれなくなる。
【0078】
このように、本発明の製造方法により得られるポリオレフィン微多孔膜は、空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れているので、電池用セパレーター、フィルター等として好適に使用できる。なおポリオレフィン微多孔膜の膜厚は用途に応じて適宜選択しうるが、例えば電池用セパレーターとして使用する場合は5 〜200μmにするのが好ましい。
【0079】
【実施例】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0080】
実施例1
重量平均分子量が2.0×106 の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)20重量%と重量平均分子量が3.5×105 の高密度ポリエチレン(HDPE)80重量%とからなり、Mw/Mn=16であるポリエチレン組成物(融点135 ℃、結晶分散温度90 ℃)に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタンをポリエチレン組成物100重量部当たり0.25重量部ドライブレンドしたポリエチレン組成物を得た。得られたポリエチレン組成物30重量部を二軸押出機(内径58 mm、L/D=42、強混練タイプ)に投入し、この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン(50 cst(40℃))70重量部を供給し、200 ℃及び200 rpmの条件で溶融混練して、押出機中にてポリエチレン溶液を調製した。続いてこのポリエチレン溶液を押出機の先端に設置されたTダイから押し出し、0℃に温調された冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートについて、テンター延伸機を用いて90℃で縦方向(MD)に5倍になるように一軸延伸(一次延伸)を行い、次いで同じくテンター延伸機を用いて120 ℃で横方向(TD)に5倍になるように一軸延伸(二次延伸)を行い(逐次二軸延伸)、延伸膜を得た。得られた延伸膜を20 cm×20 cmのアルミニウム製の枠に固定し、25 ℃に温調された塩化メチレン(表面張力27.3 mN/m(25 ℃)、沸点40.0 ℃)を含有する洗浄槽中に浸漬し、100 rpmで3分間揺動させながら洗浄した。得られた膜を室温で風乾した後、テンターに膜を保持しながら125 ℃で10分間熱固定処理することによりポリエチレンの微多孔膜を作製した。
【0081】
実施例2
熱固定処理を128℃で行った以外は実施例1と同様にポリエチレンの微多孔膜を作製した。
【0082】
実施例3
熱固定処理を130℃で行った以外は実施例1と同様にポリエチレンの微多孔膜を作製した。
【0083】
実施例4
延伸膜を、25℃に温調されたエチルパーフルオロブチルエーテル[C4F9OC2H5、住友スリーエム(株)製HFE-7200、表面張力13.6 mN/m(25 ℃)、沸点76 ℃、引火点なし(以下同様)]/n-デカン[表面張力23.4 mN/m(25 ℃)、沸点174 ℃]=90/10(wt/wt)を含有する第一洗浄槽中で洗浄した後、25 ℃に温調されたHFE-7200を含有する第2洗浄槽(リンス槽)中に1分間浸漬することによりリンス処理し、熱固定処理を130℃で行った以外は実施例1と同様にポリエチレンの微多孔膜を作製した。
【0084】
実施例5
一次延伸を40℃で行った以外は、実施例4と同様にポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0085】
比較例1
流動パラフィンの代わりにパラフィンワックス(融点:61 ℃)を用いた以外は、実施例1と同様にゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートについて40℃でMDに5倍に延伸しようとしたが、延伸機の応力対応限界を超えてしまった。
【0086】
比較例2
延伸を120℃でMDに5倍及びTDに5倍の同時二軸延伸により行った以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0087】
比較例3
流動パラフィンの代わりにパラフィンワックス(融点:61 ℃)を用い、一次延伸を70℃で行い、洗浄を2-プロパノール[表面張力20.9 mN/m(25 ℃)、沸点82.4 ℃]により行い、熱固定処理を120℃で行った以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0088】
比較例4
一次延伸を2.5倍、二軸延伸を10倍で行った以外は、実施例1と同様にポリエチレンの微多孔膜を作製した。
【0089】
比較例5
一次延伸と二軸延伸を同じ方向に2倍で行った以外は、実施例1と同様にポリエチレンの微多孔膜を作製した。
【0090】
実施例1〜5及び比較例1〜5で得られたポリオレフィン微多孔膜の物性を以下の方法で測定した。
・膜厚:接触厚み計により測定した。
・空孔率:重量法により測定した。
・突刺強度:25μm厚の微多孔膜を直径1mm(0.5 mm R)の針を用いて速度2mm/秒で突刺したときの最大荷重を測定した。
・熱収縮率:微多孔膜を105 ℃で8時間暴露したときのMD及びTDの収縮率をそれぞれ測定した。
・平均全光透過率: JIS K7105に準拠して測定し、20個のサンプルについて平均値を算出した。
・全光透過率偏差:20個のサンプルについて測定した全光透過率値から標準偏差を算出した。
・透気度:JIS P8117に準拠して測定した(膜厚25μm換算)。
・熱処理特性:80℃/1.96MPa/5分間の熱処理試験を行い、試験後の透気度を調べた。
・一次延伸張力比:120℃で5倍延伸するのに要する張力を100%とし、一次延伸に要する張力を測定した。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示すように、本発明の方法により製造した実施例1〜5のポリエチレン微多孔膜は空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れ、かつ使用に耐えうる熱処理特性を有することが分かる。一方比較例1及び3では固体溶剤を用いて溶融混練物を調製しており、比較例2では同時二軸延伸をしており、比較例4では一次延伸を3倍以下で行っており、比較例5では一次延伸と二軸延伸を同じ方向に行った上に一次延伸を3倍以下で行っているため、比較例1では延伸が不可能であり、実施例1〜5と比較して、比較例2では透気度及び熱処理後の透気度が劣っており、比較例3では熱収縮率、平均全光透過率、全光透過率偏差、透気度及び熱処理後の透気度が劣っており、比較例4ではTD方向の熱収縮率、平均全光透過率及び透気度が劣っており、比較例5ではMD方向の熱収縮率、平均全光透過率、透気度及び熱処理試験後の透気度が劣っていた。さらに比較例3では一次延伸張力比が高く、高倍率延伸が機械上の制約により困難であることが予測される。
【0093】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィンと液体溶剤とを溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押出し、冷却することにより得られたゲル状成形物を一軸方向に3倍を超えるように一次延伸し、続いて得られた延伸物を、一次延伸の延伸温度よりも高い温度で、少なくとも一次延伸の方向に対して垂直な方向に二次延伸し、しかる後前記溶剤を除去することにより製造するので、空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れ、かつ熱処理特性に優れたポリオレフィン微多孔膜を製造することができる。得られたポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレーターとして用いることにより、容量特性、サイクル特性、低温域での放電特性等の電池特性だけでなく、電池生産性及び電池安全性をも含めた全ての向上が可能になる。
Claims (2)
- ポリオレフィンと液体溶剤とを溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押出し、冷却することにより得られたゲル状成形物を延伸し、得られた延伸物から前記溶剤を除去する工程を含むポリオレフィン微多孔膜の製造方法において、前記ゲル状成形物を一軸方向に3倍を超えるように延伸し、続いて得られた延伸物を、前記3倍を超える延伸の延伸温度よりも高い温度で、少なくとも前記3倍を超える延伸の方向に対して垂直な方向に再び延伸することを特徴とするポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法により得られるポリオレフィン微多孔膜であって、全光透過率偏差が5%以内であり、空孔率が35 〜95%であり、かつ25℃における膜厚25μm換算の透気度が10 〜300秒/100 ccであることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。
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