JP4734520B2 - 熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法に関し、特に空孔率、透過性及び寸法安定性に優れた熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
熱可塑性樹脂微多孔膜は、電池用セパレーター、電解コンデンサー用隔膜、各種フィルター、透湿防水衣料、逆浸透濾過膜、限外濾過膜及び精密濾過膜等の各種用途に用いられている。ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレーター、特にリチウムイオン電池用セパレーターとして用いる場合、低温域での放電特性改善、高出力化等の電池特性の向上と共にサイクル特性、高温保存性等電池の寿命に関する特性向上も望まれている。そのためセパレーターには透過性及び寸法安定性の向上が求められている。
【0003】
一般に微多孔膜に対する熱処理を高温で行うほど得られる微多孔膜の寸法安定性は向上する。よって高空孔率の膜が得られれば、その後の熱処理を従来よりも高い温度で行っても従来と同等以上の空孔率/透過性を有し、かつ寸法安定性に優れたポリオレフィン微多孔膜が得られる。従って寸法安定性向上のためにも空孔率/透過性を向上させるのが有利である。
【0004】
熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法には、溶剤法、乾式法及び開孔延伸法等があるが、この中で溶剤法が一般に用いられている。溶剤法は、熱可塑性樹脂に不揮発性溶剤(溶剤)を添加し、溶融混練した後に溶剤を揮発性溶媒(洗浄溶媒)で洗浄処理後、洗浄溶媒を揮発させるための乾燥工程を含む方法であるが、洗浄処理工程及び乾燥工程において網状組織が収縮緻密化し、そのため空孔率/透過性が低下する。
【0005】
これに対し、溶剤法で製造される熱可塑性樹脂微多孔膜の透過性を改善する方法として、従来は原料の変更や延伸/圧延方法の改善等が提案されてきた。例えば高透過性を有するポリオレフィン微多孔膜として、超高分子量成分を含有し、(重量平均分子量/数平均分子量)の値が特定の範囲内にあるポリオレフィンに造核剤を配合してなる組成物を用いて製造する方法が提案されている(特開平5-222236号、特開平5-222237号及び特開平8-12799号)。しかしながら、溶剤の除去に用いる洗浄溶媒を最適化することにより網状組織の収縮緻密化を改善し、空孔率/透過性を向上させる検討は行われていない。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記従来技術の欠点を解消し、空孔率、透過性、及び寸法安定性に優れたポリオレフィン微多孔膜の製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、熱可塑性樹脂と溶剤とを溶融混練して得られた溶液を押し出し、冷却して得られたゲル状成形物から残存する溶剤を洗浄溶媒により除去する(以下「洗浄」という)工程を含む熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法において、洗浄溶媒として25℃における表面張力が24mN/m以下である洗浄溶媒(A)を用いることにより上記問題を解決できることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法は、溶剤を除去する工程において25℃における表面張力が24mN/m以下である洗浄溶媒(A)を用いることを特徴とする。
【0009】
溶剤の除去は、洗浄溶媒を用いて二段階以上の工程により行うのが好ましく、この時少なくとも最終段階の工程で洗浄溶媒(A)を用いるのが好ましい。これにより洗浄効果が向上するとともに、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率、透過性及び寸法安定性が向上する。なお洗浄溶媒(A)はその表面張力が24mN/m以下になる温度範囲内で用いるのが好ましい。
【0010】
ポリオレフィン微多孔膜が一層優れた特性を得るために、熱可塑性樹脂は下記条件(1)〜(5)を満たすのが好ましい。
(1) ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリレンスルフィドからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、これらの熱可塑性樹脂を単独で用いても良いし、二種以上を混合して用いても良い。これらの中でより好ましいのはポリオレフィンである。
(2) 上記(1)に記載のポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ボリブテン-1からなる群から選ばれた少なくとも一種であり、より好ましくはポリエチレン及び/又はポリプロピレンである。
(3) 上記(1)又は(2)に記載のポリオレフィンは、重量平均分子量5×105以上のポリオレフィンであり、より好ましくは重量平均分子量1×106〜15×106のポリオレフィンである。また熱可塑性樹脂は、係る重量平均分子量を有するポリオレフィンを含む組成物であり、重量平均分子量5×105以上の超高分子量ポリエチレンと重量平均分子量1×104以上5×105未満の高密度ポリエチレンとからなる組成物であるのがより好ましい。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリオレフィン又は上記(3)に記載のポリオレフィン組成物の重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が、5〜300である。
(5) 上記(3)又は(4)に記載のポリオレフィン組成物が、重量平均分子量5×105以上の超高分子量ポリエチレンと重量平均分子量1×104以上5×105未満の高密度ポリエチレンとシャットダウン機能(電池内部の温度上昇時に、発火等の事故を防止するため、微多孔膜が溶融して微多孔を目詰りさせて電流を遮断する機能)を付与するポリオレフィンとからなり、上記シャットダウン機能を付与するポリオレフィンが、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、分子量1×103〜4×103の低分子量ポリエチレン、及びシングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン/α-オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種である。
【0011】
ポリオレフィン微多孔膜が一層優れた特性を得るために、洗浄溶媒(A)は、下記条件(6)〜(12)を満たすのが好ましい。
(6) 表面張力が、25℃において20mN/m以下になる。
(7) ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、環状ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、炭素数5〜10のノルマルパラフィン、炭素数6〜10のイソパラフィン、炭素数6以下の脂肪族エーテル、シクロペンタン等のシクロパラフィン、2-ペンタノン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ターシャリーブタノール、イソブタノール、2-ペンタノール、酢酸プロピル、酢酸ターシャリーブチル、酢酸セカンダリーブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸イソプロピル、ギ酸イソブチル、プロピオン酸エチルからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(8) C5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、C4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、C5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、C6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びにC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種のフッ素系化合物である。
(9) ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカンからなる群から選ばれた少なくとも一種のノルマルパラフィンである。
(10) 2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジブチルブタン、2,3-ジブチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2,2,3-トリメチルブタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,3,3-トリメチルペンタン、2,3,4-トリメチルペンタン、2-メチルオクタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘキサン、2-メチルノナン、2,3,5-トリメチルヘプタンからなる群から選ばれた少なくとも一種のイソパラフィンである。
(11) ジエチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種のエーテルである。
(12) 25℃において表面張力が24mN/m以下になるように配合した炭素数3以下の脂肪族アルコールと水との混合物からなる群から選ばれた少なくとも一種である。
【0012】
洗浄は二段階以上の工程により行うのが好ましく、その場合は洗浄溶媒(A)以外の洗浄溶媒(洗浄溶媒(B))を用いる段階が入ってもよい。この時最終段階の工程において洗浄溶媒(A)を用いるのが好ましい。洗浄溶媒(B)としては、易揮発性溶媒及び沸点100℃以上かつ引火点0℃以上の非水系溶媒からなる群から選ばれた少なくとも一種を用いるのが好ましい。
【0013】
ポリオレフィン微多孔膜が一層優れた特性を得るために、洗浄溶媒(B)は、下記条件(13)〜(25)を満たすのが好ましい。
(13) 塩化メチレン、四塩化炭素、三フッ化エタン、メチルエチルケトン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、ジオキサンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(14) 炭素数8以上のノルマルパラフィン、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のノルマルパラフィン、炭素数8以上のイソパラフィン、炭素数7以上のシクロパラフィン、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のシクロパラフィン、炭素数7以上の芳香族炭化水素、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数6以上の芳香族炭化水素、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5〜1Oのアルコール、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエステル及びエーテル、炭素数5〜10のケトンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(15) 上記炭素数8以上のノルマルパラフィンは、その炭素数が8〜12であり、より好ましくはノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカン、ノルマルウンデカン、ノルマルドデカンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(16) 上記水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のノルマルパラフィンは、1-クロロペンタン、1-クロロヘキサン、1-クロロヘプタン、1-クロロオクタン、1-ブロモペンタン、1-ブロモヘキサン、1-ブロモヘプタン、1-ブロモオクタン、1,5-ジクロロペンタン、1,6-ジクロロヘキサン、1,7-ジクロロヘプタンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(17) 上記炭素数8以上のイソパラフィンは、2,3,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘプタン、2,5,6-トリメチルオクタンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(18) 上記炭素数7以上のシクロパラフィンは、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,2-ジメチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,3-ジメチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,4-ジメチルシクロヘキサンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(19) 上記水素原子の一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のシクロパラフィンは、クロロシクロペンタン、クロロシクロヘキサンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(20) 上記炭素数7以上の芳香族炭化水素は、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(21) 上記水素原子の一部がハロゲン原子で置換された炭素数6以上の芳香族炭化水素は、クロロベンゼン、2-クロロトルエン、3-クロロトルエン、4-クロロトルエン、3-クロロオルトキシレン、4-クロロオルトキシレン、2-クロロメタキシレン、4-クロロメタキシレン、5-クロロメタキシレン、2-クロロパラキシレンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(22) 上記水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5〜10のアルコールは、イソペンチルアルコール、ターシャリーペンチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル、5-クロロ-1-ペンタノールからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(23) 上記水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエステルは、炭酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル、ノルマル酪酸エチル、ノルマル吉草酸エチル、酢酸2-クロロエチルからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(24) 上記水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエーテルは、ノルマルブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ビスクロロエチルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(25) 上記炭素数5〜10のケトンは、2-ぺンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
【0014】
洗浄において洗浄溶媒(A)単独又は洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)を用いて三段階以上の多段階処理を行ってもよく、この場合三段〜五段階の工程で行うのが好ましい。
【0015】
洗浄溶媒(B)に任意成分(C)としてC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、C4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、C5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、C6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びにC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の溶媒を混合したものを使用してもよい。
【0016】
本発明の製造方法による微多孔膜の物性は、通常の場合、空孔率が30〜95%、透気度が10〜2000秒/100cc、熱収縮率が0.1〜20%(105℃、8時間)である。
【0017】
25℃における表面張力が24mN/m以下である洗浄溶媒(A)を用いることにより、洗浄工程及び/又は乾燥工程において洗浄溶媒の表面張力によって網状組織が収縮緻密化するのを抑制することができると考えられる。
【0018】
【発明の実施の形態】
[1] 熱可塑性樹脂
本発明の熱可塑性樹脂微多孔膜の製造に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、及びポリアリレンスルフィドが好ましい。より好ましくはポリオレフィンである。
【0019】
ポリオレフィンは、重量平均分子量5×105以上のものが好ましく、1×106〜15×106のものがより好ましい。重量平均分子量が5×105未満では延伸時に破断が起こりやすいため、好適な微多孔膜を得るのは困難である。
【0020】
ポリオレフィンとしては、重量平均分子量が5×105以上の超高分子量ポリエチレンが好ましい。当該超高分子量ポリエチレンは、エチレンの単独重合体のみならず、他のα-オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。エチレン以外の他のα-オレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、ペンテン-1,4-メチルペンテン-1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、及びスチレンが好ましい。
【0021】
熱可塑性樹脂として重量平均分子量5×105以上のポリオレフィンを含有するポリオレフィン組成物を用いることも可能である。ポリオレフィン組成物は重量平均分子量5×105以上のポリオレフィンと重量平均分子量1×104以上5×105未満のポリオレフィンとからなる組成物が好ましい。重量平均分子量が5×105未満のポリオレフィンを含有していない組成物では、延伸時に破断が起こりやすいため、好適な微多孔膜を得ることは困難である。またポリオレフィン及びポリオレフィン組成物の重量平均分子量の上限は、15×106以下にすることにより溶融押出を容易にすることができる。
【0022】
ポリオレフィン組成物において、重量平均分子量5×105以上のポリオレフィンとしては超高分子量ポリエチレンが好ましいが、当該超高分子量ポリエチレンは他のα-オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。
【0023】
またポリオレフィン組成物において、重量平均分子量1×104以上5×105未満のポリオレフィンとしてはポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。これらはエチレンの単独重合体のみならず、他のα-オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。エチレン以外の他のα-オレフィンとしてはプロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、ペンテン-1,4-メチルぺンテン-1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、及びスチレンが好ましい。
【0024】
電池用セパレーターに用いる場合、メルトダウン温度(熱可塑性微多孔膜の破膜温度)を向上させるためにポリプロピレンを添加するのが好ましい。ポリプロピレンとしては、単独重合体の他にブロック共重合体及び/又はランダム共重合体も使用することができる。ブロック共重合体及びランダム共重合体は、プロピレン以外の他のα-オレフィンとの共重合成分を含有することができ、他のα-オレフィンとしてはエチレンが好ましい。
【0025】
電池用セパレーター用途としての特性を向上させるため、シャットダウン機能を付与するポリオレフィンとして前述の低密度ポリエチレンを用いることができる。低密度ポリエチレンは、分岐状の低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、シングルサイト触媒により製造されたエチレン/α-オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。またシャットダウン機能を付与するポリオレフィンとして、重量平均分子量1×103〜4×103の低分子量ポリエチレンを添加してもよい。但しその添加量が多いと延伸する場合に破断が起こり易くなるので、その添加量は熱可塑性樹脂全体を100重量部としてその20重量部以下にするのが好ましい。
【0026】
上述のポリオレフィン又はポリオレフィン組成物のMw/Mnは、5〜300が好ましく、10〜100がより好ましい。Mw/Mnが5未満では高分子量成分が多くなり過ぎて溶融押出が困難になり、Mw/Mnが300を超えると低分子量成分が多くなり過ぎるために強度の低下を招く。
【0027】
[2] 熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法は、(a) 上記熱可塑性樹脂に溶剤を添加して溶融混練し、熱可塑性樹脂溶液を調製する工程、(b) 熱可塑性樹脂溶液をダイリップより押し出し、冷却してゲル状成形物を形成する工程、(c) ゲル状成形物から溶剤除去する工程、及び(d) 得られた膜を乾燥する工程を含む。更に、(a)〜(d)の工程の後、必要に応じて、(e) 電離放射による架橋処理、(f) 熱処理、及び(g) 親水化処理等を行ってもよい。
【0028】
(a)熱可塑性樹脂溶液の調製工程
まず熱可塑性樹脂に適当な溶剤を添加して溶融混練し、熱可塑性樹脂溶液を調製する。該熱可塑性樹脂溶液には必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、無機充填材等の各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。例えば、孔形成剤として微粉珪酸を添加することができる。
【0029】
溶剤としてはノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、又は沸点がこれらに対応する鉱油留分等を用いることができる。溶剤含有量が安定なゲル状成形物を得るためには、流動パラフィンのような不揮発性の溶剤を用いるのが好ましい。
【0030】
溶剤の粘度は25℃において30〜500cStであるのが好ましく、50〜200cStであるのがより好ましい。25℃における粘度が30cSt未満では不均一なダイリップからの吐出を生じ、混練が困難であり、また500cStを超えると溶剤除去が困難になる。
【0031】
溶融混練の方法は特に限定されないが、通常は押出機中で均一に混練することにより行う。この方法は熱可塑性樹脂の高濃度溶液を調製するのに適する。溶融温度は熱可塑性樹脂の融点+30℃〜+100℃が好ましいため、160〜230℃であるのが好ましく、170〜200℃であるのがより好ましい。ここで融点とはJIS K7121に基づいて示差走査熱量測定(DSC)により求められる値を言う。溶剤は混練開始前に添加しても、混練中に押出機の途中から添加してもよいが、混練開始前に添加して予め溶液化するのが好ましい。溶融混練にあたっては熱可塑性樹脂の酸化を防止するために酸化防止剤を添加するのが好ましい。
【0032】
熱可塑性樹脂溶液中、熱可塑性樹脂と溶剤との配合割合は、両者の合計を100重量%として、熱可塑性樹脂が1〜50重量%、好ましくは20〜40重量%である。熱可塑性樹脂が1重量%未満ではゲル状成形物を形成する際にダイス出口でスウェルやネックインが大きくなり、ゲル状成形物の成形性及び自己支持性が低下する。一方50重量%を超えるとゲル状成形物の成形性が低下する。
【0033】
(b)ゲル状成形物の形成工程
溶融混練した熱可塑性樹脂溶液を直接に又は別の押出機を介して、或いは一旦冷却してペレット化した後再度押出機を介してダイリップから押し出す。ダイリップとしては、通常は長方形の口金形状をしたシート用ダイリップを用いるが、二重円筒状の中空状ダイリップ、インフレーションダイリップ等も用いることができる。シート用ダイリップの場合、ダイリップのギャップは通常0.1〜5mmであり、押し出し時には140〜250℃に加熱する。加熱溶液の押し出し速度は0.2〜15m/分であるのが好ましい。
【0034】
このようにしてダイリップから押し出した加熱溶液を冷却することによりゲル状成形物を形成する。冷却は少なくともゲル化温度以下までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。一般に冷却速度が遅いと得られるゲル状成形物の高次構造が粗くなり、それを形成する擬似細胞単位も大きなものとなるが、冷却速度が速いと密な細胞単位となる。冷却速度が50℃/分未満では結晶化度が上昇し、延伸に適したゲル状成形物となりにくい。冷却方法としては冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法等を用いることができる
【0035】
(c) ゲル状成形物の延伸・溶剤除去工程
ポリオレフィン微多孔膜が使用される目的によっては、必要に応じてゲル状成形物を延伸する。延伸を行う場合は、ゲル状成形物を加熱後、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法又はこれらの方法の組合せによって所定の倍率で行う。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。また二軸延伸の場合は、縦横同時延伸又は逐次延伸のいずれでもよいが、特に同時二軸延伸が好ましい。延伸により機械的強度が向上する。
【0036】
延伸倍率はゲル状成形物の厚みによって異なるが、一軸延伸では2倍以上が好ましく、3〜30倍がより好ましい。二軸延伸ではいずれの方向でも少なくとも2倍以上とし、面倍率で10倍以上が好ましく、15〜400倍がより好ましい。面倍率が10倍未満では延伸が不十分で高弾性及び高強度の熱可塑性樹脂微多孔膜が得られない。一方面倍率が400倍を超えると、延伸装置、延伸操作等の点で制約が生じる。
【0037】
延伸温度は熱可塑性樹脂の融点+10℃以下にするのが好ましく、結晶分散温度から結晶融点未満の範囲にするのがより好ましい。延伸温度が融点+10℃を超えると樹脂が溶融し、延伸による分子鎖の配向ができない。また延伸温度が結晶分散温度未満では樹脂の軟化が不十分で、延伸において破膜しやすく、高倍率の延伸ができない。本発明では延伸温度を通常100〜140℃、好ましくは110〜120℃にする。ここで結晶分散温度とは、ASTM D 4065に基づいて動的粘弾性の温度特性測定により求められる値を言う。延伸を行う場合、溶剤の除去は延伸前及び/又は延伸後に行うことができるが、延伸後に行うのが好ましい。
【0038】
溶剤の除去(洗浄)は、25℃における表面張力が24mN/m以下、好ましくは20mN/m以下になる洗浄溶媒(A)を用いる。洗浄溶媒(A)は熱可塑性樹脂とは相溶しないものが好ましい。このような洗浄溶媒(A)を用いることにより、洗浄後の乾燥時に微多孔内部で生じる気―液界面の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制することができる。その結果、微多孔膜の空孔率/透過性を向上させることができる。なお洗浄溶媒の表面張力は、その使用温度を上げるに従い低くすることができるが、使用できる温度範囲は沸点以下に限られる。また本願明細書において、「表面張力」とは気体と液体との界面に生じる張力を言い、JIS K 3362に基づいて測定したものである。
【0039】
洗浄溶媒(A)としてはハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、環状ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、パーフルオロエーテル等のフッ素系化合物、炭素数5〜10のノルマルパラフィン、炭素数6〜10のイソパラフィン、炭素数6以下の脂肪族エーテル、シクロペンタン等のシクロパラフィン、2-ペンタノン等の脂肪族ケトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ターシャリーブタノール、イソブタノール、2-ペンタノール等の脂肪族アルコール、酢酸プロピル、酢酸ターシャリーブチル、酢酸セカンダリーブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸イソプロピル、ギ酸イソブチル、プロピオン酸エチルの脂肪族エステル等を挙げることができる。
【0040】
フッ素系化合物としては、C5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、C4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、C5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、C6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びにC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。これらフッ素系化合物は20℃において表面張力が24mN/m以下であるため、表面張力による網状組織の収縮緻密化を抑制する効果が高い。また沸点が100℃以下であるため乾燥が容易である。更にオゾン破壊性が無いため環境への負荷が低減でき、且つ引火点が40℃以上である(一部の化合物は引火点が無い)ため乾燥工程中の引火爆発の危険性が低い。
【0041】
炭素数5〜10のノルマルパラフィンとしてはノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカンが好ましい。これらは表面張力が20℃において24mN/m以下である。この中では、沸点が100℃以下であり、乾燥が容易であるノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタンがより好ましい。
【0042】
炭素数6〜10のイソパラフィンとしては2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジブチルブタン、2,3-ジブチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2,2,3-トリメチルブタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,3,3-トリメチルペンタン、2,3,4-トリメチルペンタン、2-メチルオクタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘキサン、2-メチルノナン、2,3,5-トリメチルヘプタンが好ましい。この中では表面張力が20℃において24mN/m以下であり、かつ沸点が100℃以下である2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジブチルブタン、2,3-ジブチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタンがより好ましい。
【0043】
炭素数6以下のエーテルとしてはジエチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテルが好ましい。これらはその表面張力が20℃において24mN/m以下であり、かつ沸点が100℃以下である。
【0044】
シクロペンタン、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノールは、その表面張力が20℃において24mN/m以下であり、かつ沸点が100℃以下であるため好ましい。
【0045】
上記脂肪族エステルの中では、表面張力が20℃において24mN/m以下である酢酸ターシャリーブチル、酢酸セカンダリーブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソプロピル、ギ酸イソブチルが好ましい。更に沸点が100℃以下であるが酢酸ターシャリーブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソプロピルがより好ましい。
【0046】
洗浄溶媒(A)としては、25℃において表面張力が24mN/m以下になるように配合した炭素数3以下の脂肪族アルコールと水との混合物を用いることもできる。
【0047】
上述の洗浄溶媒(A)は、他の溶媒との混合物として使用することができる。この場合、その混合比率は25℃において表面張力が24mN/m以下になるようにする。例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、C4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、C5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、C6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びにC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の溶媒とパラフィン等の炭化水素系溶媒との混合物を使用することができる。
【0048】
洗浄は二段階以上の工程で行うのが好ましく、洗浄溶媒(A)以外の洗浄溶媒(洗浄溶媒(B))を用いる段階が入ってもよい。この場合は少なくとも一つの段階において洗浄溶媒(A)を用いればよい。洗浄溶媒(B)としては、熱可塑性樹脂とは相溶性を有しないものが好ましく、例えば洗浄溶媒として公知のペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、三フッ化エタン等のフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン等の易揮発性溶媒が使用できる。また沸点100℃以上かつ引火点0℃以上の非水系溶媒を用いることもできる。上述のような洗浄溶媒(B)は、ポリオレフィン組成物の溶解に用いた溶剤に応じて適宜選択し、単独もしくは混合して用いる。
【0049】
このような二段階以上の洗浄工程により、洗浄溶媒の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制しつつ、十分な洗浄を行うことができる。好ましくは、少なくとも最終段階の工程において洗浄溶媒(A)で処理する。これにより洗浄溶媒(B)を用いた場合に該洗浄溶媒(B)を除去でき(以下「リンス処理」という)、洗浄後の乾燥時に起る網状組織の収縮緻密化を防ぐことができる。その結果、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率/透過性の向上に効果がある。
【0050】
最終段階の工程において洗浄溶媒(A)で処理する際、特に沸点100℃以下の洗浄溶媒(A)で処理すれば乾燥工程の効率が向上する。更に上述のC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、C4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、C5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、C6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びにC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテル等のフッ素系化合物を用いると、前述のように製造工程における環境への負荷をより低くできる効果もある。特に洗浄溶媒(B)として沸点150℃以上の溶媒を用いる場合は単に熱風で乾燥するだけでは乾燥に時間が掛かり、その影響で後の熱処理において空孔率/透気性が低下する恐れがあるが、沸点100℃以下の洗浄溶媒(A)を用いることによりその問題を解消することができる。
【0051】
洗浄溶媒(B)として用いることができる沸点100℃以上かつ引火点0℃以上の非水系溶媒は難揮発性であり、環境への負荷が低く、乾燥工程において引火爆発する危険性が低いため使用上安全である。また高沸点であるため凝縮しやすく、回収が容易となり、リサイクル利用し易い。なお本願明細書において「沸点」とは、1.01×105Paにおける沸点を言い、「引火点」とは、JIS K 2265に基づいて測定したものを言う。
【0052】
上記非水系溶媒として、例えば沸点100℃以上かつ引火点0℃以上のパラフィン系化合物、芳香族、アルコール、エステル、エーテル、ケトン等が挙げられる。またその引火点について、好ましくは5℃以上であり、より好ましくは40℃以上である。しかし非水系溶媒を水溶液化するのは、溶剤の除去を十分に行うことができないため好ましくない。
【0053】
非水系溶媒としては、炭素数8以上のノルマルパラフィン、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のノルマルパラフィン、炭素数8以上のイソパラフィン、炭素数7以上のシクロパラフィン、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のシクロパラフィン、炭素数7以上の芳香族炭化水素、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数6以上の芳香族炭化水素、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5〜1Oのアルコール、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエステル及びエーテル、炭素数5〜10のケトンからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。
【0054】
炭素数8以上のノルマルパラフィンとしては、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカン、ノルマルウンデカン、ノルマルドデカンが好ましく、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカンがより好ましい。
【0055】
水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のノルマルパラフィンとしては、1-クロロペンタン、1-クロロヘキサン、1-クロロヘプタン、1-クロロオクタン、1-ブロモペンタン、1-ブロモヘキサン、1-ブロモヘプタン、1-ブロモオクタン、1,5-ジクロロペンタン、1,6-ジクロロヘキサン、1,7-ジクロロヘプタンが好ましく、1-クロロペンタン、1-クロロヘキサン、1-ブロモペンタン、1-ブロモヘキサンがより好ましい。
【0056】
炭素数8以上のイソパラフィンとしては2,3,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘプタン、2,5,6-トリメチルオクタンが好ましく、2,3,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘキサンがより好ましい。
【0057】
炭素数7以上のシクロパラフィンとしては、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,2-ジメチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,3-ジメチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,4-ジメチルシクロヘキサンが好ましく、シクロヘキサンがより好ましい。
【0058】
水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のシクロパラフィンとしては、クロロシクロペンタン、クロロシクロヘキサンが好ましく、クロロシクロペンタンがより好ましい。
【0059】
炭素数7以上の芳香族炭化水素としては、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレンが好ましく、トルエンがより好ましい。
【0060】
水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数6以上の芳香族炭化水素としてはクロロベンゼン、2-クロロトルエン、3-クロロトルエン、4-クロロトルエン、3-クロロオルトキシレン、4-クロロオルトキシレン、2-クロロメタキシレン、4-クロロメタキシレン、5-クロロメタキシレン、2-クロロパラキシレンが好ましく、クロロベンゼン、2-クロロトルエン、3-クロロトルエン、4-クロロトルエンがより好ましい。
【0061】
水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5〜10のアルコールとしては、イソペンチルアルコール、ターシャリーペンチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル、5-クロロ-1-ペンタノールが好ましく、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル、5-クロロ-1-ペンタノールがより好ましい。
【0062】
水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエステルとしては炭酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル、ノルマル酪酸エチル、ノルマル吉草酸エチル、酢酸2-クロロエチルが好ましく、酢酸イソペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル、ノルマル酪酸エチル、酢酸2-クロロエチルがより好ましい。
【0063】
水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエーテルとしてはジプロピレングリコールジメチルエーテル、ノルマルブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ビスクロロエチルエーテルが好ましく、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ビスクロロエチルエーテルがより好ましい。
【0064】
炭素数5〜10のケトンとしては2-ぺンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが好ましく、2-ペンタノン、3-ペンタノンがより好ましい。
【0065】
上述のような洗浄溶媒(B)は混合物として用いてもよいが、洗浄溶媒(B)に、任意成分(C)として、洗浄溶媒(A)として挙げたC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、C4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、C5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、C6F14又は C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、C4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテル等のフッ素系化合物からなる群から少なくとも一種選ばれた溶媒を混合したものを使用してもよい。この場合、洗浄溶媒(B)と任意成分(C)は、表面張力が20〜80℃のいずれかの温度において24mN/m以下になる割合で混合するのが好ましく、具体的には、混合溶媒100重量部中において任意成分(C)を2〜98重量部、好ましくは5〜50重量部にする。任意成分(C)を2〜98重量部含むことにより、洗浄溶媒の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制しつつ、十分な洗浄を行うことができる。
【0066】
洗浄溶媒(B)は、その表面張力が20〜80℃のいずれかの温度において24mN/m以下になるものを用いるのが好ましい。例えば、ノルマルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、三フッ化エタン、ジエチルエーテル、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、アセトン、メチルエチルケトン等である。
【0067】
ここで洗浄の第一段階で使用する洗浄溶媒(B)と第二段階で使用する洗浄溶媒(A)との組合せとして好ましいものを示す。但し後述するように洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)を用いる洗浄は三段階以上で行うことも可能であるため、これらは二段階で行うことに限定する趣旨ではない。例えば、洗浄溶媒(B)/洗浄溶媒(A)=塩化メチレン/C4F9OCH3、塩化メチレン/C6F14、塩化メチレン/C7F16、塩化メチレン/ノルマルペンタン、塩化メチレン/ノルマルヘキサン、塩化メチレン/ジエチルエーテル、エーテル/ハイドロフルオロエーテル、エーテル/環状ハイドロフルオロカーボン、エーテル/アルコール、エーテル/アルコールと水との混合物、ノルマルパラフィン/ハイドロフルオロエーテル、ノルマルパラフィン/環状ハイドロフルオロカーボン、ノルマルパラフィン/アルコール、ノルマルパラフィン/アルコールと水との混合物、イソパラフィン/ハイドロフルオロエーテル、イソパラフィン/環状ハイドロフルオロカーボン、イソパラフィン/アルコール、イソパラフィン/アルコールと水との混合物、シクロパラフィン/ハイドロフルオロエーテル、シクロパラフィン/環状ハイドロフルオロカーボン、シクロパラフィン/アルコール、シクロパラフィン/アルコールと水との混合物、ケトン/ハイドロフルオロエーテル、ケトン/環状ハイドロフルオロカーボン、ケトン/アルコール、ケトン/アルコールと水との混合物が挙げられる。より好ましくは、洗浄溶媒(B)/洗浄溶媒(A)=塩化メチレン/C4F9OCH3、塩化メチレン/C6F14、塩化メチレン/C7F16、塩化メチレン/ノルマルペンタン、塩化メチレン/ノルマルヘキサン、塩化メチレン/ジエチルエーテル、ノルマルヘプタン/C4F9OCF3、ノルマルヘプタン/C6F14である。このような組合せのものを用いることにより、溶剤の除去を効果的に行いつつ、微多孔膜の空孔率/透過率の向上させることができる。
【0068】
洗浄溶媒(A)単独又は洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)による洗浄は三段階以上の工程で行ってもよい。一段階又は二段階の処理では溶剤を十分除去することができずに、得られる熱可塑性樹脂微多孔膜の物性が低下する場合等に有効である。この場合少なくとも最終工程において洗浄溶媒(A)を用いて処理すればよく、特に洗浄回数は制限されないが、通常三段〜五段階であり、好ましくは三〜四段階である。また各々の段階において同じ洗浄溶媒で処理しても単に製造工程が長くなるため、熱可塑性樹脂微多孔膜製造設備のスペースが拡大し、また溶剤除去の効率性が低下するため、各段階では互いに異なる洗浄溶媒を用いるのが好ましい。但し、互いに異なる洗浄溶媒を用いることには限定されるものではない。従って、例えば三段階の処理の場合、第一段階及び第二段階において同一の洗浄溶媒を用い、第三段階で第一及び第二段階とは異なる洗浄溶媒を用いることもできる。
【0069】
洗浄方法は、洗浄溶媒(A)及び/又は洗浄溶媒(B)に浸漬し抽出する方法、洗浄溶媒(A) 及び/又は洗浄溶媒(B)をシャワーする方法、又はこれらの組合せによる方法等により行うことができる。また洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)は、ゲル状成形物100重量部に対しそれぞれ300〜30000重量部使用するのが好ましい。また洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)を用いて二段階以上の工程により洗浄を行う場合は、洗浄溶媒(A)の使用量は、洗浄溶媒(B)の使用量を100重量部として50〜200重量部になるようにするのが好ましい。洗浄溶媒(A)単独又は洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)による洗浄は、残留した溶剤がその添加量に対して1重量%未満になるまで行うのが好ましい。
【0070】
洗浄溶媒(B)による洗浄温度は洗浄溶媒(B)の沸点に依存する。洗浄溶媒(B)の沸点が150℃以下の場合は室温での洗浄が可能であり、必要に応じて加熱洗浄すればよく、一般に20〜80℃で洗浄するのが好ましい。また洗浄溶媒(B)の沸点が150℃以上の場合、室温では膜内部への浸透性が悪いので、加熱洗浄するのが好ましい。
【0071】
洗浄溶媒(A)による洗浄温度及び/又はリンス温度は、洗浄溶媒(A)の表面張力に依存する。具体的には、洗浄溶媒(A)の表面張力が24mN/m 以下になる温度以上で洗浄及び/又はリンス処理を行うのが好ましい。周囲の気温が、洗浄溶媒(A)の表面張力が24mN/m以下になる温度に満たない場合は、必要に応じてその表面張力が24mN/m以下になる温度まで加熱する。洗浄溶媒(A)は、高くとも25℃においてその表面張力が24mN/m 以下になるので、殆どの場合は加熱を必要とせず、通常の室温において洗浄及び/又はリンス処理を行うことができる。
【0072】
(d)膜の乾燥工程
延伸及び溶剤除去により得られた膜を、加熱乾燥法又は風乾法等により乾燥することができる。乾燥温度は、熱可塑性樹脂の結晶分散温度以下の温度で行うのが好ましく、特に結晶分散温度より5℃以上低い温度が好ましい。
【0073】
乾燥処理により、熱可塑性樹脂微多孔膜中に残存する洗浄溶媒(B)の含有量を、5重量%以下にするのが好ましく(乾燥後の膜重量を100重量%とする)、3重量%以下にするのがより好ましい。乾燥が不十分で膜中に洗浄溶媒(B)が多量に残存する場合、後の熱処理で空孔率が低下し、透気性が悪化するので好ましくない。
【0074】
(e) 膜の架橋処理工程
延伸・溶剤除去により得られた膜を加熱乾燥法、風乾法等により乾燥した後、電離放射により架橋処理を施すのが好ましい。電離放射線としてはα線、β線、γ線、電子線が用いられ、電子線量0.1〜100Mrad、加速電圧100〜300kVにて行うことができる。これによりメルトダウン温度を向上させることができる。
【0075】
(f) 熱処理工程
乾燥後に熱処理を行ってもよい。熱処理によって結晶が安定化し、ラメラ層が均一化される。熱処理としては、熱延伸処理、熱固定処理、及び熱収縮処理のいずれも用いることができる。これらの処理は、熱可塑性樹脂微多孔膜の融点以下、好ましくは60℃以上融点−10℃以下で行う。
【0076】
熱延伸処理は、通常用いられるテンター方式、ロール方式、又は圧延方式により行い、少なくとも一方向に延伸倍率1.01〜2.0倍で行うのが好ましく、1.01〜1.5倍で行うのがより好ましい。
【0077】
熱固定処理は、テンター方式、ロール方式、圧延方式により行う。また熱収縮処理は、テンター方式、ロール方式、若しくは圧延方式により行うか、又はベルトコンベア若しくはフローティング等を用いて行ってもよい。なお、熱収縮処理は、少なくとも一方向に50%以下の範囲が好ましく、より好ましくは30%以下の範囲にする。
【0078】
なお上述の熱延伸処理、熱固定処理及び熱収縮処理を多数組み合せて行ってもよい。特に、熱延伸処理後に熱収縮処理を行うと、低収縮率で高強度の微多孔膜が得られるため好ましい。
【0079】
(g) 親水化処理工程
得られた微多孔膜は親水化処理して用いることもできる。親水化処理としては、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電処理等を用いる。なお親水化処理は電離放射後に行うのが好ましい。
【0080】
界面活性剤を使用する場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及び両イオン系界面活性剤のいずれも使用することができるが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。この場合、界面活性剤を水溶液又はメタノール、エタノール又はイソプロピルアルコール等の低級アルコールの溶液にして、ディッピング及びドクターブレード等の方法により親水化される。
【0081】
得られた親水化微多孔膜を乾燥する。この時、透過性を向上させるため、熱可塑性樹脂微多孔膜の融点以下の温度で収縮を防止又は延伸しながら熱処理するのが好ましい。
【0082】
[3] 熱可塑性樹脂微多孔膜
以上のように製造した微多孔膜の物性は、通常の場合、空孔率が30〜95%、透気度が10〜2000秒/100cc、熱収縮率が0.1〜20%である。高空孔率の膜が得られるので、その後の熱固定処理を従来より高い温度で行っても、従来と同等以上の空孔率/透気度を有し、かつ寸法安定性に優れたポリオレフィン微多孔膜が得られる。熱可塑性樹脂微多孔膜の膜厚は、用途に応じて適宜選択しうるが、例えば電池用セパレーターとして使用する場合は5〜200μmにするのが好ましい。このように、本発明の製造方法により得られるポリエチレン微多孔膜は優れた透過性を示すので、電池用セパレーター、フィルター等として好適に使用できる。
【0083】
【実施例】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0084】
実施例1
重量平均分子量が2.0×106の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)20重量%と重量平均分子量が3.5×105の高密度ポリエチレン(HDPE)80重量%とからなり、Mw/Mn=16.8であるポリエチレン組成物(融点135℃、結晶分散温度90℃)に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタンをポリエチレン組成物100重量部当たり0.375重量部加えたポリエチレン組成物を得た。得られたポリエチレン組成物30重量部を二軸押出機(58mmφ、L/D=42、強混練タイプ)に投入し、この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン70重量部を供給し、200℃・200rpmで溶融混練して、押出機中にてポリエチレン溶液を調製した。
【0085】
得られたポリエチレン溶液を押出機の先端に設置されたTダイから二軸延伸膜が50μm程度になるように押し出し、50℃に温調された冷却ロールで引き取りながら、ゲル状シートを成形した。得られたゲル状シートについて、バッチ延伸機を用いて118℃で5×5倍になるように二軸延伸を行い、延伸膜を得た。得られた膜を20cm×20cmのアルミニウム製の固定枠に固定し、25℃に温調された塩化メチレン(表面張力27.3mN/m(25℃)、沸点40.0℃)の第1洗浄槽において100rpmで揺動させながら行う20秒間の含浸洗浄を3回繰り返し、更に25℃に温調されたハイドロフルオロエーテル((C4F9OCH3)、住友スリーエム(株)製HFE-7100、表面張力13.6mN/m(25℃)、沸点61℃、引火点なし(以下同様))の第2洗浄槽で60秒間含浸させて洗浄処理した(以下、第2洗浄槽のことを「リンス槽」といい、第2洗浄槽における洗浄処理のことを「リンス処理」という)。リンス処理後に膜を自然乾燥(風乾)し、更に120℃で600秒間熱固定してポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0086】
実施例2
25℃に温調されたパーフルオロカーボン((C6F14)、住友スリーエム(株)製フロリナートFC-72、表面張力12.0mN/m(25℃)、沸点56.0℃、引火点なし)のリンス槽で120秒間含浸させてリンス処理した以外は実施例1と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0087】
実施例3
25℃に温調されたパーフルオロカーボン((C7F16)、住友スリーエム(株)製フロリナートFC-84、表面張力13.0mN/m(25℃)、沸点80.0℃、引火点なし)のリンス槽で120秒間含浸させてリンス処理した以外は実施例1と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0088】
実施例4
25℃に温調されたノルマルペンタン(表面張力15.5mN/m(25℃)、沸点36.1℃)のリンス槽でリンス処理した以外は実施例1と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0089】
実施例5
25℃に温調されたノルマルヘキサン(表面張力17.9mN/m(25℃)、沸点68.7℃)のリンス槽でリンス処理した以外は実施例1と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0090】
実施例6
25℃に温調されたジエチルエーテル(表面張力16.4mN/m(25℃)、沸点34.5℃)のリンス槽でリンス処理した以外は実施例1と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0091】
実施例7
122℃で熱固定した以外は実施例1と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0092】
実施例8
延伸膜が40μmになるように押し出し、バッチ延伸機を用いて120℃で二軸延伸を行った以外は実施例1と同様にポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0093】
実施例9
25℃に温調されたノルマルデカン(表面張力23.4mN/m(25℃))/HFE-7100=90/10(wt/wt)の第1洗浄槽での含浸洗浄を三回繰り返し、熱固定温度を122℃とした以外は実施例1と同様に同様にポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0094】
実施例 10
25℃に温調された3-メトキシ-3-メチルブチルエステル(表面張力28.3mN/m (25℃))/HFE-7100=90/10(wt/wt)の第1洗浄槽での含浸洗浄を三回繰り返し、熱固定温度を122℃とした以外は実施例1と同様に同様にポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0095】
比較例1
25℃に温調された塩化メチレンのリンス槽でリンス処理した以外は実施例1と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0096】
比較例2
25℃に温調された塩化メチレンのリンス槽でリンス処理し、更に116℃で熱固定した以外は実施例8と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0097】
比較例3
25℃に温調されたテトラヒドロフラン(表面張力25.8mN/m(25℃))のリンス槽で60秒間含浸させてリンス処理した以外は実施例1と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。
【0098】
実施例1〜10及び比較例1〜3で得られた熱可塑性樹脂微多孔膜の物性を以下の方法で測定した。
・膜厚:走査型電子顕微鏡により測定した。
・透気度:JIS P8117に準拠して測定した(膜厚30μm換算)。
・空孔率:重量法により測定した。
・熱収縮率:微多孔膜を105℃で8時間暴露したときの機械方向(MD)、垂直方向(TD)の収縮率をそれぞれ測定し、平均値をとった。
【0099】
表1に示すように、本発明の方法により製造した実施例1〜10の熱可塑性樹脂微多孔膜はその空孔率及び透気度が優れている。また実施例7〜10の熱可塑性樹脂微多孔膜はその熱収縮率が優れていることが分かる。一方、比較例1〜3の微多孔膜は、25℃において表面張力が24mN/mを超える洗浄溶媒を用いてリンス処理及び乾燥されているために、実施例1〜10と比較して物性が劣っている。
【0100】
【表1】
Figure 0004734520
Figure 0004734520
Figure 0004734520
Figure 0004734520
【0101】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の溶剤法による熱可塑性樹脂微多孔膜の製造において、熱可塑性樹脂と溶剤との溶融混練後の溶剤除去工程で、25℃における表面張力が24mN/m以下である洗浄溶媒(A)で処理することにより、空孔率、透過性、及び寸法安定性に優れた熱可塑性樹脂微多孔膜を製造することができる。特に洗浄溶媒(A)としてフッ素系化合物を用いた場合は、オゾン破壊性がないため環境問題上有用である。得られた熱可塑性樹脂微多孔膜は電池用セパレーター、フィルター等に有用である。

Claims (4)

  1. 熱可塑性樹脂と溶剤とを溶融混練して得られた溶液を押し出し、冷却して得られたゲル状成形物から残存する前記溶剤を洗浄溶媒により除去する工程を含む熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法において、前記溶剤の除去工程が、二段階以上の工程からなり、かつ少なくとも最終段階の工程で25℃における表面張力が20 mN/m以下である洗浄溶媒(A)を用いることを特徴とする熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法。
  2. 請求項1に記載の熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法において、前記最終段階以外の洗浄工程のうち少なくとも一段の工程で塩化メチレンを用いることを特徴とする熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法において、前記洗浄溶媒(A)がフッ素系化合物であることを特徴とする熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法。
  4. 請求項2に記載の熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法において、前記洗浄溶媒(A)がC 4 F 9 OCH 3 、C 6 F 14 、C 7 F 16 、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン又はジエチルエーテルであることを特徴とする熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法。
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