JP4746830B2 - 熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法に関し、特に成膜加工の際に添加した溶剤及び/又は可塑剤の除去に用いた洗浄溶媒を除去する際、その製造工程系内の気相中への拡散を抑制しながら高速に、かつ熱可塑性樹脂の収縮を抑制しつつ除去することが可能な熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法、及びその方法により得られた熱可塑性樹脂微多孔膜に関する。
熱可塑性樹脂成形体は自動車の内装及び外装材料、電池用構成部材等に使用されており、フィルムやシートを始めとする様々な形態がある。中でも熱可塑性樹脂微多孔膜(微多孔膜)は、電池用セパレーター、電解コンデンサー用隔膜、各種フィルター、透湿防水衣料、逆浸透濾過膜、限外濾過膜及び精密濾過膜等の各種用途に幅広く用いられている。
このような熱可塑性樹脂成形体を製造する際、特にフィルム製造時の成膜加工の際に溶剤や可塑剤を添加することが多い。しかしながら微多孔膜のように最終製品に溶剤や可塑剤が残留してはならない製品の場合は、添加した溶剤や可塑剤を除去する必要がある。溶剤や可塑剤を除去する際、通常は揮発性の洗浄溶媒を用いて洗浄した後熱風乾燥して洗浄溶媒を除去する。しかし熱風乾燥の際に熱可塑性樹脂が収縮してしまい、所望の物性が得られず、特に微多孔膜の場合は空孔が収縮してしまうために透過率が低下するという問題があった。
このため、従来は成膜加工後のゲル状の成形体をテンターに固定した上で熱風乾燥するか、小径多段加熱ロールに固定して乾燥する方法がとられてきた(例えば、特開2002-12694号、特開2002-12695号及び特開2002-256099号(特許文献1〜3参照。))。しかし、テンター方式は特に揮発性の高い塩化メチレンのような洗浄溶媒を乾燥する場合に膜の収縮力に抗うことができるほどのグリップ力がなく、膜を十分に保持できないという問題があった。また多段加熱ロールを用いる場合には、膜のグリップ力を確保するためにロールを小径にする必要があり、このためロール上における有効乾燥面積が小さい、ロール剛性低下によるベンディングが起る、ロールギャップにおいて膜が幅方向に収縮する等の問題があった。よってこれらの方法は熱可塑性樹脂の収縮を抑制しつつ高速に乾燥するには、必ずしも適した方法ではなかった。また小径多段加熱ロールと熱風乾燥を組み合せる方法もあるが、特に熱風乾燥を高速で行う場合には多量の熱風を必要とするため揮発した洗浄溶媒の製造工程系内の気相中への拡散が激しくなる。そのため、単純な冷却凝縮では洗浄溶媒の回収が困難になるという問題があり、特に塩化メチレンのような環境汚染の恐れがある洗浄溶媒を用いる場合には未回収洗浄ガスが製造工程系外に放出される可能性が生ずるという問題があった。
特開2003-82151号(特許文献4)は、洗浄成形物に吸引力を作用させることにより、洗浄成形物から洗浄溶媒を吸引除去する方法を開示している。この方法は吸引ロールの外周面で洗浄溶媒を吸引除去しながら膜を移送する。その際、吸引により膜がロールに張り付き、固定された状態で洗浄溶媒が除去されるため、膜の収縮を抑制しつつ高速に洗浄溶媒を除去することが可能となる。しかしながら、洗浄溶媒を除去する際に不織布ロールのように透孔サイズが小さい吸引ロールを用いる場合には、吸引による圧力損失(大気圧とロール内部の空洞部圧力との差)が大きくなるため、ロールを通過して単位時間当たりに除去できる洗浄溶媒量が少なくなる。除去効率を上げるためには吸引力を非常に大きくしなければならず、また直径の大きな吸引ロールを必要とするため不経済である。
透孔サイズが小さい吸引ロールを用いる場合には、長時間の使用により溶剤除去槽内のゴミ(金属粉等)を吸引し目詰まりを生じやすいという問題もある。目詰まりした金属粉等は吸引ロールの表面(微多孔膜との接触面)に蓄積するため、溶剤除去作業中に微多孔膜にピンホールを開ける危険性が高い。また、塩化メチレン等の水と親和性のある洗浄溶媒を使用しこれを温水を用いて除去する場合には膜表面の水痕生成が発生し易いという問題がある。
特開2002-12694号公報 特開2002-12695号公報 特開2002-256099号公報 特開2003-82151号公報
従って、本発明の目的は、成膜加工時に添加した溶剤及び/又は可塑剤を除去するために用いた洗浄溶媒を、その製造工程系内の気相中への拡散を抑制しつつ高速に除去することができ、かつ収縮及びピンホールの発生がなく外観の良好な微多孔膜を得ることが可能な熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、熱可塑性樹脂と溶剤とを溶融混練して得られた溶液をダイより押し出し、冷却して得られたゲル状成形物から残存する溶剤を洗浄溶媒により除去して洗浄成形物とした後(以下洗浄溶媒による溶剤の除去を「洗浄」という。)、洗浄溶媒を除去する工程を有する熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法において、洗浄成形物を温水に接触させながら洗浄溶媒吸引手段により吸引力を作用させるとともに、洗浄溶媒を吸引除去する際の洗浄溶媒と洗浄溶媒吸引手段の透孔サイズを選択することにより、洗浄溶媒を製造工程系内の気相中への拡散を抑制しつつ高速に除去することができ、かつ収縮及びピンホールが発生せず外観の良好な熱可塑性樹脂微多孔膜が得られることを発見し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法は、ポリオレフィンを主体とする熱可塑性樹脂と溶剤を溶融混練して得られた溶液をダイより押し出し、冷却して得られたゲル状成形物から残存する前記溶剤を洗浄溶媒により除去して洗浄成形物とした後、前記洗浄成形物を温水と接触させながら、洗浄溶媒吸引手段により前記洗浄成形物から前記洗浄溶媒を吸引除去する工程を有する熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法であって、(1) 前記洗浄溶媒として大気圧下における沸点が100℃以下、25℃における表面張力が24 mN/m以下及び16℃における水への溶解度が600質量ppm以下である洗浄溶媒(A)を用い、(2) 前記洗浄溶媒吸引手段として、10〜5,000μmの透孔サイズ(前記洗浄溶媒を吸引するための透孔に内接する最大円の直径)を有するワイヤロール、パンチングロール又はスリットロールを用い、かつ(3) 前記洗浄成形物と前記洗浄溶媒吸引手段の吸引面との接触時間を、式:t≦(100−T) 3 /(700×P 0.5 ×logL)[ただしtは前記接触時間(秒)を表し、Tは前記温水の温度(℃)を表し、Pは前記吸引圧力(kPa)を表し、Lは前記洗浄溶媒吸引手段の透孔サイズ(μm)を表す]を満たす範囲にすることを特徴とする。
洗浄溶媒を吸引除去することにより、除去中の洗浄溶媒の製造工程系内の気相中への拡散を防止でき、その回収が容易になるため、塩化メチレンのように環境汚染の恐れがある洗浄溶媒を用いた場合には環境汚染防止効果がある。また、洗浄溶媒として上記洗浄溶媒(A)を用いることにより、温水と接触させて乾燥しても水痕様の模様による外観悪化が起きず、かつ空孔率、透過性及び寸法安定性に優れた微多孔膜を得ることができる。さらに、洗浄溶媒吸引手段の透孔サイズを10〜5000μmとすることにより洗浄溶媒の除去効率を高めるとともに金属粉等による目詰まりを抑制し、蓄積した金属粉等によるピンホールの発生を防止し、かつ吸引痕の発生を抑制することができる
接触時間が上記式を満たす範囲外だと吸引痕が生成し外観が悪化する。温水の温度は、溶媒除去効率を高めるため30〜95℃の範囲において(洗浄溶媒の沸点−10℃洗浄溶媒の沸点+50℃)の範囲が好ましい。洗浄成形物から洗浄溶媒を吸引除去する際の吸引圧力(大気圧と洗浄溶媒吸引手段内部の空洞部圧力との差)は0.5〜60 kPaであるのが好ましい。この吸引圧力が0.5 kPaより小さいと洗浄溶媒除去能が不足し、60 kPaを超えると吸引痕の生成が顕著になる。
熱可塑性樹脂微多孔膜が一層優れた特性を得るために、熱可塑性樹脂は下記条件(1)〜(11)を満たすのが好ましい。
(1) ポリオレフィンがポリエチレン又はポリエチレン組成物である。
(2) 上記(1)に記載のポリエチレンの質量平均分子量が1×104〜5×106である。
(3) 上記(1)に記載のポリエチレンの質量平均分子量が1×105〜4×106である。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエチレンが超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエチレンが質量平均分子量5×105以上の超高分子量ポリエチレンである。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリエチレンの質量平均分子量/数平均分子量(以下、「Mw/Mn」と記載する)が5〜300である。
(7) 上記(1)に記載のポリエチレン組成物が超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも二種からなる。
(8) 上記(1)又は(7)に記載のポリエチレン組成物が質量平均分子量5×105以上の超高分子量ポリエチレンと質量平均分子量1×104以上5×105未満の高密度ポリエチレンを含む。
(9) 上記(1)、(7)、(8)に記載のポリエチレン組成物のMw/Mnが5〜300である。
(10) 上記(1)に記載のポリオレフィンが、上記(2)〜(6)に記載のポリエチレン又は上記(7)〜(9)のいずれかに記載のポリエチレン組成物に、シャットダウン機能(電池内部の温度上昇時に、発火等の事故を防止するため、微多孔膜が溶融して微多孔を目詰りさせて電流を遮断する機能)を付与するポリオレフィンとして分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン-α-オレフィン共重合体、及び分子量1×103〜4×103の低分子量ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加したポリオレフィン組成物である。
(11) 上記ポリオレフィンが、上記(2)〜(6)に記載のポリエチレン又は上記(7)〜(10)のいずれかに記載のポリエチレン組成物に、メルトダウン温度(熱可塑性微多孔膜の破膜温度)を向上させるためのポリプロピレンを添加したポリオレフィン組成物である。

溶融混練物調製時に用いた溶剤を除去するため洗浄溶媒を用いる。その際、大気圧下における沸点が100℃以下、25℃における表面張力が24 mN/m以下及び16℃における水への溶解度が600質量ppm以下である洗浄溶媒(A)を用いる。これにより特に熱可塑性樹脂微多孔膜を製造する場合に、その空孔率、透過性及び寸法安定性が向上する。これは洗浄溶媒(A)を用いることにより、洗浄工程及び/又は洗浄溶媒除去工程において、洗浄溶媒の表面張力によって網状組織が収縮緻密化するのを抑制することができるためと推定している。また、水への溶解度が600質量ppmを超える洗浄溶媒を用い、温水の存在下でこれを吸引除去すると膜表面に水痕様の模様が生成し外観が悪化しやすいが、洗浄溶媒として上記洗浄溶媒(A)を用い、同様の操作で洗浄溶媒を吸引除去することにより外観の良好な熱可塑性樹脂膜を得ることができる。洗浄は二段階以上の工程により行うのが好ましく、このとき少なくとも最終段階の工程で洗浄溶媒(A)を用いる。これにより洗浄効果が向上する。なお洗浄溶媒(A)はその表面張力が24 mN/m以下になる温度範囲内で用いるのが好ましい。
熱可塑性樹脂微多孔膜が一層優れた特性を得るために、洗浄溶媒(A)は下記条件(12)〜(19)を満たすのが好ましい。
(12) 大気圧下における沸点が80℃以下である。
(13) 25℃における表面張力が20 mN/m以下である。
(14) 16℃における水への溶解度が300質量ppm以下である。
(15) ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、炭素数5〜7のノルマルパラフィン、炭素数5〜7のイソパラフィン及び炭素数5〜7のシクロパラフィンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(16) C5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、C4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、C6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びにC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種のフッ素系化合物である。
(17) ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン及びノルマルヘプタンからなる群から選ばれた少なくとも一種のノルマルパラフィンである。
(18) 2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン及び2,2,3-トリメチルブタンからなる群から選ばれた少なくとも一種のイソパラフィンである。
(19) シクロペンタン、メチルシクロペンタン及びシクロヘキサンからなる群から選ばれた少なくとも一種のシクロパラフィンである。
洗浄は二段階以上の工程により行うのが好ましく、その場合は洗浄溶媒(A)以外の洗浄溶媒(洗浄溶媒(B))を用いる段階が入ってもよい。このとき最終段階の工程において洗浄溶媒(A)を用いるのが好ましい。洗浄溶媒(B)としては、易揮発性溶媒及び沸点100℃以上かつ引火点0℃以上の非水系溶媒からなる群から選ばれた少なくとも一種を用いるのが好ましい。
熱可塑性樹脂微多孔膜が一層優れた特性を得るために、洗浄溶媒(B)は、下記条件(20)〜(32)を満たすのが好ましい。
(20) 塩化メチレン、四塩化炭素、三フッ化エタン、メチルエチルケトン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル及びジオキサンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(21) 炭素数8以上のノルマルパラフィン、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のノルマルパラフィン、炭素数8以上のイソパラフィン、炭素数7以上のシクロパラフィン、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のシクロパラフィン、炭素数7以上の芳香族炭化水素、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数6以上の芳香族炭化水素、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5〜10のアルコール、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエステル及びエーテル、並びに炭素数5〜10のケトンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(22) 上記炭素数8以上のノルマルパラフィンは、より好ましくは炭素数が8〜12であり、具体的にはノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカン、ノルマルウンデカン及びノルマルドデカンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(23) 上記水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のノルマルパラフィンは、1-クロロペンタン、1-クロロヘキサン、1-クロロヘプタン、1-クロロオクタン、1-ブロモペンタン、1-ブロモヘキサン、1-ブロモヘプタン、1-ブロモオクタン、1,5-ジクロロペンタン、1,6-ジクロロヘキサン及び1,7-ジクロロヘプタンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(24) 上記炭素数8以上のイソパラフィンは、2,3,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘプタン及び2,5,6-トリメチルオクタンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(25) 上記炭素数7以上のシクロパラフィンは、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,2-ジメチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,3-ジメチルシクロヘキサン、並びにシス-及びトランス-1,4-ジメチルシクロヘキサンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(26) 上記水素原子の一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のシクロパラフィンは、クロロシクロペンタン及びクロロシクロヘキサンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(27) 上記炭素数7以上の芳香族炭化水素は、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン及びパラキシレンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(28) 上記水素原子の一部がハロゲン原子で置換された炭素数6以上の芳香族炭化水素は、クロロベンゼン、2-クロロトルエン、3-クロロトルエン、4-クロロトルエン、3-クロロオルトキシレン、4-クロロオルトキシレン、2-クロロメタキシレン、4-クロロメタキシレン、5-クロロメタキシレン及び2-クロロパラキシレンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(29) 上記水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5〜10のアルコールは、イソペンチルアルコール、ターシャリーペンチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル及び5-クロロ-1-ペンタノールからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(30) 上記水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエステルは、炭酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル、ノルマル酪酸エチル、ノルマル吉草酸エチル及び酢酸2-クロロエチルからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(31) 上記水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエーテルは、ノルマルブチルエーテル、ジイソブチルエーテル及びビスクロロエチルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(32) 上記炭素数5〜10のケトンは、2-ぺンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
洗浄において洗浄溶媒(A)単独又は洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)を用いて三段階以上の多段階処理を行ってもよく、この場合三段〜七段階の工程で行うのが好ましい。
洗浄溶媒(B)に任意成分(C)として、例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、例えばC6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の溶媒を混合したものを使用してもよい。
本発明の製造方法により得られる熱可塑性樹脂微多孔膜の物性は、空孔率が25〜80%、透気度が10〜2000秒/100cc(膜厚30μm換算)であり、表面の外観性状がよく、熱収縮率は機械方向(MD)及び垂直方向(TD)ともに15%以下である。
本発明の製造方法は、溶剤法による熱可塑性樹脂微多孔膜の製造において、所定の洗浄溶媒を用いることにより溶剤を高速に除去できるとともに、使用した洗浄溶媒を温水を用いて除去する工程において、所定の透孔サイズを有する洗浄溶媒吸引手段を用いることにより、ピンホールの発生及び水痕様の模様による外観悪化が起きず、かつ空孔率、透過性及び寸法安定性に優れた微多孔膜を得ることができる。そのため、本発明の製造方法は電池用セパレーター、フィルター等の製造に有用である。
[1] 熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンを主体とする。ポリオレフィンとしては単独のポリオレフィン(混合物でないもの)又は二種以上のポリオレフィンからなるポリオレフィン組成物のどちらでもよい。
ポリオレフィンは、単独のポリオレフィンを使用する場合であっても、混合物を使用する場合であってもよい。ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等の単独重合体又は共重合体のいずれも使用することができ、中でもポリエチレンを使用するのが好ましい。ポリエチレンの質量平均分子量に特に制限はないが、通常は1×104〜1×107であり、好ましくは1×104〜5×106であり、より好ましくは1×105〜4×106である。
ポリエチレンの種類としては、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンが挙げられる。これらのポリエチレンは、エチレン以外の他のα-オレフィンを少量含有する共重合体であってもよく、当該他のα-オレフィンとしてはプロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等を使用できる。ポリエチレンとしては超高分子量ポリエチレンが好ましく、中でも質量平均分子量が5×105以上がより好ましく、1×106〜15×106がさらに好ましく、1×106〜5×106が最も好ましい。
ポリエチレンの分子量分布Mw/Mnは限定的でないが、5〜300が好ましく、10〜100がより好ましい。この分子量分布の調整のため、二段重合以上の多段重合品を使用することもできるが、一段重合品も使用可能である。
ポリオレフィン組成物としては、ポリエチレンを必須とする組成物が好ましい。好ましい例としては、前述の超高分子量ポリエチレンを必須とするものが挙げられ、さらにこれに任意成分として高密度ポリエチレン(質量平均分子量1×104以上5×105未満)、中密度ポリエチレン(質量平均分子量1×104以上5×105未満)、低密度ポリエチレン(質量平均分子量1×104以上5×105未満)を添加したものが挙げられる。中でも高密度ポリエチレンを添加したものが特に好ましい。また、他の任意成分としてポリプロピレン(質量平均分子量1×104〜4×106)、ポリブテン-1(質量平均分子量1×104〜4×106)、ポリエチレンワックス(質量平均分子量1×103〜4×104)、エチレン・α-オレフィン共重合体(質量平均分子量1×104〜4×106)を添加することも可能である。これらの任意成分のポリオレフィンは、ポリオレフィン組成物全体を100質量部として80質量部以下であるのが好ましい。
[2] ポリオレフィン系樹脂微多孔膜の製造方法
熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法は、(a) 上記熱可塑性樹脂に溶剤を添加して溶融混練し、熱可塑性樹脂溶液を調製する工程、(b) 熱可塑性樹脂溶液をダイリップより押し出し、冷却してゲル状成形物を形成する工程、(c) ゲル状成形物から溶剤除去する工程、及び(d) 得られた膜(洗浄成形物)から洗浄溶媒を除去する工程を含む。更に、(a)〜(d)の工程の後、必要に応じて、(e) 電離放射による架橋処理、(f) 熱処理、(g) 親水化処理、(h) 表面被覆処理等を行ってもよい。また(d)工程の前後に、必要に応じて延伸する工程を入れてもよい。
(a) 熱可塑性樹脂溶液の調製工程
まず熱可塑性樹脂に適当な溶剤を添加して溶融混練し、熱可塑性樹脂溶液を調製する。この熱可塑性樹脂溶液には必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、無機充填材等の各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。例えば、孔形成剤として微粉珪酸を添加することができる。
溶剤としては液体溶剤及び固体溶剤のいずれも使用できる。液体溶剤としてはノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、及び沸点がこれらに対応する鉱油留分が挙げられる。溶剤含有量が安定なゲル状成形物を得るためには、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。固体溶剤は融点が80℃以下のものが好ましく、このような固体溶剤としてはパラフィンワックス、セリルアルコール、ステアリルアルコール、ジシクロヘキシルフタレート等が挙げられる。液体溶剤と固体溶剤を適宜混合して使用してもよい。
液体溶剤の粘度は25℃において30〜500 cStであるのが好ましく、50〜200 cStであるのがより好ましい。25℃における粘度が30 cSt未満ではダイリップからの吐出が不均一になり、混練が困難になる。また、500 cStを超えると溶剤除去が困難になる。
溶融混練の方法は特に限定されないが、通常は押出機中で均一に混練することにより行う。この方法は熱可塑性樹脂の高濃度溶液を調製するのに適する。溶融温度は熱可塑性樹脂の融点+10℃〜+100℃が好ましいため、140〜230℃であるのが好ましく、170〜200℃であるのがより好ましい。ここで融点とはJIS K7121に基づいて示差走査熱量測定(DSC)により求められる値をいう。溶剤は混練開始前に添加しても、混練中に押出機の途中から添加してもよいが、混練開始前に添加して予め溶液化するのが好ましい。溶融混練にあたっては熱可塑性樹脂の酸化を防止するために酸化防止剤を添加するのが好ましい。
熱可塑性樹脂溶液中、熱可塑性樹脂と溶剤との配合割合は、両者の合計を100質量%として、熱可塑性樹脂が1〜50質量%、好ましくは20〜40質量%である。熱可塑性樹脂が1質量%未満ではゲル状成形物を形成する際にダイス出口でスウェルやネックインが大きくなり、ゲル状成形物の成形性及び自己支持性が低下する。一方50質量%を超えるとゲル状成形物の成形性が低下する。
(b) ゲル状成形物の形成工程
溶融混練した熱可塑性樹脂溶液を直接に又は別の押出機を介して、或いは一旦冷却してペレット化した後再度押出機を介してダイリップから押し出す。ダイリップとしては、通常は長方形の口金形状をしたシート用ダイリップを用いるが、二重円筒状の中空状ダイリップ、インフレーションダイリップ等も用いることができる。シート用ダイリップの場合、ダイリップのギャップは通常0.1〜5mmであり、押し出し時にダイリップを140〜250℃に加熱する。加熱溶液の押し出し速度は0.2〜15 m/分であるのが好ましい。
ダイリップから押し出した溶液を冷却することによりゲル状成形物を形成する。冷却は少なくともゲル化温度以下までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましく、ゲル状成形物を25℃以下まで冷却するのが好ましい。このようにして相分離構造を固定化することができる。一般に冷却速度が遅いと得られるゲル状成形物の高次構造が粗くなり、それを形成する擬似細胞単位も大きなものとなるが、冷却速度が速いと密な細胞単位となる。冷却速度が50℃/分未満では結晶化度が上昇し、延伸に適したゲル状成形物となりにくい。冷却方法としては冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法等を用いることができる。
(c) ゲル状成形物の延伸・溶剤除去工程
熱可塑性樹脂微多孔膜の使用目的により、必要に応じてゲル状成形物を延伸する。延伸を行う場合は、ゲル状成形物を加熱後、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法又はこれらの方法の組合せによって所定の倍率で行う。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。また二軸延伸の場合は、縦横同時延伸又は逐次延伸のいずれでもよいが、特に同時二軸延伸が好ましい。延伸により機械的強度が向上する。
延伸倍率はゲル状成形物の厚さによって異なるが、一軸延伸では2倍以上が好ましく、3〜30倍がより好ましい。二軸延伸ではいずれの方向においても少なくとも3倍以上とし、面倍率で9倍以上とするのが突刺強度を向上させることができるため好ましい。面倍率が9倍未満では延伸が不十分で高弾性及び高強度の熱可塑性樹脂微多孔膜が得られない。一方面倍率が400倍を超えると、延伸装置、延伸操作等の点で制約が生じる。
延伸温度は熱可塑性樹脂の融点+10℃以下にするのが好ましく、結晶分散温度から結晶融点未満の範囲にするのがより好ましい。延伸温度が融点+10℃を超えると樹脂が溶融し、延伸による分子鎖の配向ができない。また延伸温度が結晶分散温度未満では樹脂の軟化が不十分で、延伸において破膜しやすく、高倍率の延伸ができない。本発明では延伸温度を通常100〜140℃、好ましくは110〜120℃にする。ここで結晶分散温度とは、ASTM D 4065に基づいて動的粘弾性の温度特性測定により求められる値をいう。延伸を行う場合、溶剤の除去は延伸前及び/又は延伸後に行うことができるが、延伸後に行うのが好ましい。
溶剤の除去(洗浄)には、大気圧下における沸点が100℃以下、好ましくは80℃以下であり、25℃における表面張力が24 mN/m以下、好ましくは20 mN/m以下であり、16℃における水への溶解度が600質量ppm以下、好ましくは300質量ppm以下である洗浄溶媒(A)を用いる。洗浄溶媒(A)は熱可塑性樹脂と相溶しないものが好ましい。洗浄溶媒(A)を用いることにより、洗浄後の乾燥時に微多孔内部で生じる気―液界面の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制することができる。その結果、微多孔膜の空孔率及び透過性を向上させることができる。なお洗浄溶媒の表面張力は、その使用温度を上げるに従い低くすることができるが、使用できる温度範囲は沸点以下に限られる。また本明細書において、「表面張力」とは気体と液体との界面に生じる張力をいい、JIS K 3362に基づいて測定した値である。
洗浄溶媒(A)としてはハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロカーボン、パーフルオロエーテル等のフッ素系化合物、炭素数5〜7のノルマルパラフィン、炭素数5〜7のイソパラフィン、炭素数5〜7のシクロパラフィン等が挙げられる。
フッ素系化合物としては、例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC6F14及びC7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。これらのフッ素系化合物は20℃において表面張力が24 mN/m以下であるため、表面張力による網状組織の収縮緻密化を抑制する効果が高い。また沸点が100℃以下であるため洗浄溶媒の除去が容易であり、16℃における水への溶解度が600質量ppm以下であるため洗浄溶媒除去時に膜の外観が悪化することがない。さらに上記のフッ素系化合物はオゾン破壊性が無いため環境への負荷が低減でき、且つ引火点が40℃以上である(一部の化合物は引火点が無い)ため乾燥工程中の引火爆発の危険性が低い。
炭素数5〜7のノルマルパラフィンとしてはノルマルペンタン、ノルマルヘキサン及びノルマルヘプタンが挙げられる。炭素数5〜7のイソパラフィンとしては2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2,2,3-トリメチルブタン等が好ましい。炭素数5〜7のシクロパラフィンとしてはシクロペンタン、メチルシクロヘキサン及びシクロヘキサンが挙げられる。これらは表面張力が20℃において24 mN/m以下であり、16℃における水への溶解度が600質量ppm以下であり、かつ沸点が100℃以下である。
上述の洗浄溶媒(A)は、他の溶媒との混合物として使用することができる。この場合、その混合比率は25℃において表面張力が24 mN/m以下になるようにする。例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、例えばC6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の溶媒とパラフィン等の炭化水素系溶媒との混合物を使用することができる。
洗浄は二段階以上の工程で行ってもよく、洗浄溶媒(A)以外の洗浄溶媒(洗浄溶媒(B))を用いる段階が入ってもよい。この場合は少なくとも最後の段階において洗浄溶媒(A)を用いればよい。洗浄溶媒(B)としては、熱可塑性樹脂とは相溶性を有しないものが好ましく、例えば洗浄溶媒として公知のペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、三フッ化エタン等のフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン等の易揮発性溶媒が使用できる。また沸点100℃以上かつ引火点0℃以上の非水系溶媒を用いることもできる。上述のような洗浄溶媒(B)は、ポリオレフィン組成物の溶解に用いた溶剤に応じて適宜選択し、単独もしくは混合して用いる。
このような二段階以上の洗浄工程により、洗浄溶媒の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制しつつ、十分な洗浄を行うことができる。少なくとも最終段階の工程において洗浄溶媒(A)で処理する。これにより洗浄溶媒(B)を用いた場合に洗浄溶媒(B)を除去でき(以下「リンス処理」という)、洗浄後の洗浄溶媒除去時に起る網状組織の収縮緻密化を防ぐことができる。その結果、熱可塑性樹脂微多孔膜の空孔率及び透過性の向上に効果がある。
最終段階の工程において洗浄溶媒(A)で処理する際、沸点100℃以下の洗浄溶媒(A)で処理することにより洗浄溶媒除去工程の効率が向上する。更に上述の例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、例えばC6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテル等のフッ素系化合物を用いると、前述のように環境への負荷をより低くできる効果もある。特に洗浄溶媒(B)として沸点150℃以上の溶媒を用いる場合はその除去に時間がかかり、その影響で空孔率/透気性が低下する恐れがあるが、沸点100℃以下の洗浄溶媒(A)を用いることによりその問題を解消することができる。
洗浄溶媒(B)として用いることができる沸点100℃以上かつ引火点0℃以上の非水系溶媒は難揮発性であり、環境への負荷が低く、洗浄溶媒除去工程において引火爆発する危険性が低いため使用上安全である。また高沸点であるため凝縮しやすく、回収が容易となり、リサイクル利用し易い。この場合「沸点」は、1.01×105 Paにおける沸点を指し、「引火点」は、JIS K 2265に基づいて測定した温度を指す。
洗浄溶媒(B)に用いる非水系溶媒としては、例えば沸点100℃以上かつ引火点0℃以上のパラフィン系化合物、芳香族、アルコール、エステル、エーテル、ケトン等が挙げられる。またその引火点について、好ましくは5℃以上であり、より好ましくは40℃以上である。しかし非水系溶媒を水溶液化するのは、溶剤の除去を十分に行うことができないため好ましくない。
非水系溶媒としては、炭素数8以上のノルマルパラフィン、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のノルマルパラフィン、炭素数8以上のイソパラフィン、炭素数7以上のシクロパラフィン、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のシクロパラフィン、炭素数7以上の芳香族炭化水素、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数6以上の芳香族炭化水素、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5〜10のアルコール、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエステル及びエーテル、並びに炭素数5〜10のケトンからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。
炭素数8以上のノルマルパラフィンとしては、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカン、ノルマルウンデカン及びノルマルドデカンが好ましく、ノルマルオクタン、ノルマルノナン及びノルマルデカンがより好ましい。
水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のノルマルパラフィンとしては、1-クロロペンタン、1-クロロヘキサン、1-クロロヘプタン、1-クロロオクタン、1-ブロモペンタン、1-ブロモヘキサン、1-ブロモヘプタン、1-ブロモオクタン、1,5-ジクロロペンタン、1,6-ジクロロヘキサン、1,7-ジクロロヘプタンが好ましく、1-クロロペンタン、1-クロロヘキサン、1-ブロモペンタン及び1-ブロモヘキサンがより好ましい。
炭素数8以上のイソパラフィンとしては2,3,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘプタン、2,5,6-トリメチルオクタンが好ましく、2,3,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘプタン及び2,5,6-トリメチルオクタンがより好ましい。
炭素数7以上のシクロパラフィンとしては、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,2-ジメチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,3-ジメチルシクロヘキサン、並びにシス-及びトランス-1,4-ジメチルシクロヘキサンが好ましく、シクロヘキサンがより好ましい。
水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のシクロパラフィンとしては、クロロシクロペンタン及びクロロシクロヘキサンが好ましく、クロロシクロペンタンがより好ましい。
炭素数7以上の芳香族炭化水素としては、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン及びパラキシレンが好ましく、トルエンがより好ましい。
水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数6以上の芳香族炭化水素としてはクロロベンゼン、2-クロロトルエン、3-クロロトルエン、4-クロロトルエン、3-クロロオルトキシレン、4-クロロオルトキシレン、2-クロロメタキシレン、4-クロロメタキシレン、5-クロロメタキシレン及び2-クロロパラキシレンが好ましく、クロロベンゼン、2-クロロトルエン、3-クロロトルエン及び4-クロロトルエンがより好ましい。
水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5〜10のアルコールとしては、イソペンチルアルコール、ターシャリーペンチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル及び5-クロロ-1-ペンタノールが好ましく、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル及び5-クロロ-1-ペンタノールがより好ましい。
水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5〜14のエステルとしては炭酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル、ノルマル酪酸エチル、ノルマル吉草酸エチル、酢酸2-クロロエチルが好ましく、酢酸イソペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル、ノルマル酪酸エチル及び酢酸2-クロロエチルがより好ましい。
水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数4〜14のエーテルとしてはジプロピレングリコールジメチルエーテル、ノルマルブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ビスクロロエチルエーテルが好ましく、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びビスクロロエチルエーテルがより好ましい。
炭素数5〜10のケトンとしては2-ぺンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノンが好ましく、2-ペンタノン及び3-ペンタノンがより好ましい。
上述のような洗浄溶媒(B)は混合物として用いてもよいが、洗浄溶媒(B)に、任意成分(C)として洗浄溶媒(A)として挙げた例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、例えばC6F14又は C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から少なくとも一種選ばれた溶媒を混合したものを使用してもよい。この場合、洗浄溶媒(B)と任意成分(C)は、表面張力が20〜80℃のいずれかの温度において24mN/m以下になる割合で混合するのが好ましく、具体的には、混合溶媒100質量部中において任意成分(C)を2〜98質量部、好ましくは5〜50質量部にする。任意成分(C)を2〜98質量部含むことにより、洗浄溶媒の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制しつつ、十分な洗浄を行うことができる。
洗浄溶媒(B)は、その表面張力が20〜80℃のいずれかの温度において24 mN/m以下になるものを用いるのが好ましい。例えば、ノルマルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、三フッ化エタン、ジエチルエーテル、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、アセトン、メチルエチルケトン等である。
ここで洗浄の第一段階で使用する洗浄溶媒(B)と第二段階で使用する洗浄溶媒(A)との組合せとして好ましいものを示す。但し後述するように洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)を用いる洗浄は三段階以上で行うことも可能であるため、これらは二段階で行うことに限定する趣旨ではない。例えば、洗浄溶媒(B)/洗浄溶媒(A)=塩化メチレン/C4F9OCH3、塩化メチレン/C4F9OC2H5、塩化メチレン/C6F14、塩化メチレン/C7F16、塩化メチレン/ノルマルヘプタン、塩化メチレン/ノルマルヘキサン、塩化メチレン/ジエチルエーテル、エーテル/ハイドロフルオロエーテル、ノルマルパラフィン/ハイドロフルオロエーテル、イソパラフィン/ハイドロフルオロエーテル、シクロパラフィン/ハイドロフルオロエーテル、ケトン/ハイドロフルオロエーテル等が挙げられる。より好ましくは、洗浄溶媒(B)/洗浄溶媒(A)=塩化メチレン/C4F9OCH3、塩化メチレン/C4F9OC2H5、塩化メチレン/C6F14、塩化メチレン/C7F16、塩化メチレン/ノルマルヘプタン、塩化メチレン/ノルマルヘキサン、塩化メチレン/ジエチルエーテル、ノルマルヘプタン/C4F9OCF3、及びノルマルヘプタン/C6F14である。このような組合せの洗浄溶媒を用いることにより、溶剤の除去を効果的に行いつつ、微多孔膜の空孔率及び透過率を向上させることができる。
洗浄溶媒(A)単独又は洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)による洗浄は三段階以上の工程で行ってもよい。一段階又は二段階の処理では溶剤を十分除去することができず、得られる熱可塑性樹脂微多孔膜の物性が低下する場合等に有効である。この場合少なくとも最終工程において洗浄溶媒(A)を用いて処理すればよく、特に洗浄回数は制限されないが、通常三段〜七段階であり、好ましくは三〜五段階である。三段階の処理の場合、第一段階及び第二段階において同一の洗浄溶媒を用い、第三段階で第一及び第二段階とは異なる洗浄溶媒を用いることもできる。
洗浄方法は、洗浄溶媒(A)又は洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)に浸漬し抽出する方法、洗浄溶媒(A)又は洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)をシャワーする方法、これらの組合せによる方法等を用いることができる。また洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)は、ゲル状成形物100質量部に対しそれぞれ300〜30000質量部使用するのが好ましい。また洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)を用いて二段階以上の工程により洗浄を行う場合、洗浄溶媒(A)の使用量は、洗浄溶媒(B)の使用量を100質量部として50〜200質量部になるようにするのが好ましい。洗浄溶媒(A)単独又は洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)による洗浄は、残留する溶剤がその添加量に対して1質量%未満になるまで行うのが好ましい。
洗浄溶媒(B)による洗浄温度は洗浄溶媒(B)の沸点に依存する。洗浄溶媒(B)の沸点が150℃以下の場合は室温での洗浄が可能であり、必要に応じて加熱洗浄すればよく、一般に20〜80℃で洗浄するのが好ましい。また洗浄溶媒(B)の沸点が150℃以上の場合、室温では膜内部への浸透性が悪いので、加熱洗浄するのが好ましい。
洗浄溶媒(A)による洗浄温度及び/又はリンス温度は、洗浄溶媒(A)の表面張力に依存する。具体的には、洗浄溶媒(A)の表面張力が24 mN/m以下になる温度以上で洗浄及び/又はリンス処理を行うのが好ましい。周囲の気温が、洗浄溶媒(A)の表面張力が24 mN/m以下になる温度に満たない場合は、必要に応じてその表面張力が24 mN/m以下になる温度まで加熱する。洗浄溶媒(A)は、高くとも25℃においてその表面張力が24 mN/m 以下になるので、殆どの場合は加熱を必要とせず、通常の室温において洗浄及び/又はリンス処理を行うことができる。
(d) 洗浄溶媒の除去工程
ゲル状成形物の延伸及び溶剤除去により得られた微多孔膜(洗浄成形物)を温水と接触させながら、洗浄溶媒吸引手段により微多孔膜に吸引力を作用させ、洗浄溶媒を吸引除去する。洗浄溶媒(A)は沸点が100℃以下、好ましくは80℃以下であるため、温水と接触させる乾燥方法によっても短時間で容易に除去、乾燥することができる。また25℃における表面張力が24 mN/m 以下、好ましくは20 mN/m 以下であるため、空孔率、透過性及び寸法安定性が良好である。特に洗浄溶媒としてハイドロフルオロエーテルを使用した場合は、塩化メチレンを使用した場合に比べ乾燥時の膜収縮が小さく、吸引ロールの上流側でMD方向のみにテンションが掛かった状態で膜が温水と接触した際のTD方向の膜収縮による物性低下が少ない。さらに16℃における水への溶解度が600質量ppm以下、好ましくは300質量ppm以下であるため、温水と接触させて乾燥しても水痕様の模様が発生せず外観を損なうことがない。
洗浄溶媒吸引手段は透孔サイズが10〜5000μmのものを用いる。透孔サイズが10μmより小さいと洗浄溶媒の吸引速度が低下するだけでなく、溶媒除去槽内のゴミ(金属粉等)を吸引して目詰まりが発生し、さらに目詰まりした金属粉等が吸引ロール表面(微多孔膜との接触面)に蓄積し溶媒除去作業中に微多孔膜にピンホールを開ける危険性が生じる。透孔サイズが5000μmより大きいと吸引痕の発生が顕著になる。透孔サイズを10〜5000μmにすることにより洗浄溶媒の吸引速度を向上させ、かつ連続使用による透孔の閉塞を抑制することができる。洗浄溶媒吸引手段の透孔サイズは20〜2000μmがより好ましく、50〜500μmがさらに好ましい。
洗浄溶媒吸引手段としては吸引ロール、吸引ベルト等が挙げられる。特に吸引ロールを使用するのが好ましい。吸引ロールを使用することにより、熱可塑性樹脂の収縮を抑制しつつ洗浄溶媒を除去することが可能になり、さらに後述する温水中での吸引除去が可能となる。吸引ロールは透孔サイズが10〜5000μmであればよく、特開平9-67053号、特開2002-255423号等に開示されている吸引ロールを適用することができる。本発明に用いる吸引ロールは、例えばロール状(円筒状)の外形を有し、その軸部内部の長手方向に真空負荷可能な空洞部を有し、この軸部周面に空洞部と連通する多数の透孔を有する筒状の軸本体と、軸部本体の両端に設けられ且つ空洞部に連通する貫通孔を少なくともその一方に開設した一対の側板と、側板の貫通孔に連通する貫通孔を開設した一対の軸受け部を備える。空洞部は軸受け部の貫通孔から配管を介して連通する真空ポンプで吸引することにより減圧になり、吸引ロールはモーターにより駆動回転しながらロールの外周面で液体及び気体を吸引することができる。
吸引ロールとしては、透孔がパンチング孔で形成されているパンチングロール、透孔がスリット状に形成されているスリットロール、透孔がワイヤ同士の隙間等で形成されているワイヤロール等が挙げられる。本発明に用いる吸引ロールとしてはワイヤロールが特に好ましい。ここで本明細書において透孔サイズとは、洗浄溶媒吸引手段に設けられた洗浄溶媒を吸引するための透孔に内接する最大円の直径を指し、例えばワイヤロールの場合はワイヤの隙間の間隔を指し、スリットロールの場合はスリットの短手方向の長さを指し、パンチングロールの場合はパンチング孔に内接する最大円の直径を指す。
吸引ロールにより微多孔膜中の洗浄溶媒を吸引する場合、大気圧とロール内部の空洞部圧力との差で表される吸引圧力を0.5〜60 kPaとするのが好ましく、1〜40 kPaとするのがより好ましく、3〜20 kPaとするのが特に好ましい。0.5 kPaより小さいと吸引ロールにより微多孔膜を均一に保持し接触面全面でテンションを付与するのが困難となる、洗浄溶媒を吸引する速度が遅くなる等の問題があり、60 kPaを超えると吸引痕の生成が顕著になる。
ゲル状成形物の延伸及び溶剤除去により得られた微多孔膜(洗浄成形物)を吸引ロールの外周面で洗浄溶媒を吸引除去しながら移送する。このとき膜は吸引によりロールに張り付き、固定された状態で洗浄溶媒が吸引除去されるため、膜の収縮を抑制しつつ、かつ高速に洗浄溶媒を除去することが可能になる。特に微多孔膜の場合は、空孔の収縮が抑制される効果がある。吸引ロールによる移送速度は0.5〜80 m/分であるのが好ましく、2〜60 m/分であるのがより好ましい。その際、吸引ロールを加熱しながら移送してもよい。これにより乾燥効果が向上する。但し加熱温度を熱可塑性樹脂の結晶分散温度以下、好ましくは結晶分散温度より5℃以上低い温度とする。
本発明では微多孔膜の空孔の収縮を一層抑制するため、微多孔膜(洗浄成形物)を温水と接触させながら微多孔膜から洗浄溶媒を吸引除去する。この場合、微多孔膜を温水と接触させる方法は、中空に支持した吸引ロールに微多孔膜を巻き付け、これに温水をシャワーする方式でも、微多孔膜を巻き付けた吸引ロールを温水中に浸漬する方法でもよい。吸引ロールに温水をシャワーする場合の温水量は、洗浄溶媒を効率的に除去するために必要な熱量を供給できる量であるのが好ましい。温水量が少ないと微多孔膜の全体に温水を当てることが困難であり、過剰であると温水循環等の操作性が悪化する。温水量は微多孔膜1m2当たり50〜10000 mlが好ましく、100〜5000 mlがより好ましい。吸引ロールを温水中に浸漬する場合、吸引ロール全体を温水中に配置しても、吸引ロールと微多孔膜の接触面近傍のみを温水中に配置してもよい。また、温水中で吸引ロールと微多孔膜を接触させる場合においては、熱伝導を促進するため微多孔膜表面に温水ジェットを吹き付けるのが好ましい。
洗浄溶媒除去時の温水の温度は30〜95℃が好ましく、35〜90℃がより好ましく、40〜85℃がさらに好ましい。30℃より低いと溶媒除去速度が遅く、95℃を超えると水蒸気の発生が著しく増大し作業効率が悪くなる。
温水の温度は30〜95℃であるとともに、洗浄溶媒の沸点−10℃〜洗浄溶媒の沸点+50℃であるのが好ましく、洗浄溶媒の沸点〜洗浄溶媒の沸点+3℃であるのがより好ましい。温水の温度をこのように設定することにより洗浄溶媒の気化を促進し、洗浄溶媒を効果的に除去することができる。洗浄溶媒の沸点−10℃より低いと溶媒除去速度が遅く、洗浄溶媒の沸点+50℃を超えると突沸するような状態で瞬時に乾燥してしまうため、微多孔膜の外観が悪化するだけでなく、膜に与えるテンションが不均一になり、吸引によりロールを通じて溶媒を除去することができなくなる。ただし、ポリオレフィン系樹脂の結晶分散温度以下、好ましくは結晶分散温度より5℃以上低い温度で行う。
微多孔膜(洗浄成形物)から洗浄溶媒を吸引除去する際の微多孔膜と洗浄溶媒吸引手段の吸引面との接触時間を、下記一般式(1):
t≦(100−T)3/(700×P0.5×logL) ・・・(1)
(一般式(1)中、tは洗浄溶媒吸引手段を洗浄成形物に接触させる時間(秒)を表し、Tは温水の温度(℃)を表し、Pは大気圧と洗浄溶媒吸引手段内部の空洞部圧力との差(kPa)を表し、Lは洗浄溶媒吸引手段の透孔サイズ(μm)を表す。)で表される時間とするのが好ましい。接触時間tが上記範囲を超えると洗浄溶媒吸引手段の吸引力により膜が変形するだけでなく、吸引痕様の模様が膜表面に生成し、外観が悪化する。場合によっては透気度、空孔率等の物性値にも悪影響を与えることがある。一方、接触時間が短すぎると溶媒除去が十分に行われないため、接触時間tは一般式(1)で表される範囲内であって、かつ0.1秒以上が好ましく、0.3秒以上がより好ましい。
吸引ロールによる吸引除去は、通常は一つの吸引ロールを用いれば、洗浄溶媒を十分除去することができるが、二つの吸引ロールを連続させて膜の両面が吸引ロールと接触するようにしてもよい。これにより吸引を一層効果的に行うことができる。このとき少なくとも一方の吸引ロールを温水に浸漬するのが好ましい。また二つの吸引ロールで膜を挟むようにし、その間を膜が通るようにし、両方の吸引ロールで同時に膜の両面を吸引してもよい。
微多孔膜を温水に接触させながら吸引することにより吸引しない場合より乾燥速度を増大させることができる。また吸引することにより吸引ロールと膜の接触面全体で膜にテンションを与えることができ、ロール径を大きくした場合でも膜収縮に対抗するだけのテンションを付与することができる。ロール径を大きくし、乾燥に必要な時間膜をロールに接触させることにより、膜の搬送速度をより高めることができ、単位時間当たりの生産量を増加させることができる。吸引しないで乾燥する場合は、膜の搬送速度をある程度以上に上げようとすると、洗浄溶媒がロールと膜の間で気化し膜がロールから浮いてしまい、ロールによるテンションが膜に掛からなくなり膜が収縮する。吸引することによりロールと膜の間で気化した洗浄溶媒を吸引除去でき、ロールと膜の接触を保持できるため、膜の搬送速度を高めても膜に対するテンションを維持することができる。さらに吸引することにより除去中の洗浄溶媒の拡散を防止できるため、塩化メチレンのように環境汚染のおそれがある洗浄溶媒を用いた場合には環境汚染防止効果がある。
吸引により洗浄溶媒を除去した膜は、加熱乾燥法又は風乾法によりさらに乾燥することができる。膜を加熱乾燥する場合、テンター等に固定した上で熱風乾燥すると、収縮を抑制しつつ乾燥できるので好ましい。温水を用いて吸引除去した後、続けて加熱乾燥又は風乾してもよいが、温水を別の吸引ロールを用いて除去した後、加熱乾燥又は風乾してもよい。加熱乾燥又は風乾する前に吸引ロールで温水を除去することにより、温水の除去に要する時間が短くなる上、温水による空孔の収縮を効果的に抑制できる。その際、温水除去用吸引ロールを加熱してもよい。膜を熱風乾燥する際の温度および温水除去用吸引ロールを加熱する際の温度は、熱可塑性樹脂の結晶分散温度以下の温度で行うのが好ましく、特に結晶分散温度より5℃以上低い温度が好ましい。通常は70℃程度である。
吸引除去により、熱可塑性樹脂微多孔膜中に残存する洗浄溶媒の含有量を、乾燥後の膜重量を100質量%とするとき5質量%以下にするのが好ましく、3質量%以下にするのがより好ましい。吸引除去が不十分で膜中に洗浄溶媒が5質量%より多く残存する場合は、後の熱処理で空孔率が低下し、透気性が悪化するので好ましくない。
(e) 膜の架橋処理工程
延伸・溶剤除去により得られた膜から吸引により洗浄溶媒を除去した後、電離放射により架橋処理を施すのが好ましい。電離放射線としてはα線、β線、γ線、電子線等が用いられ、電子線量0.1〜100 Mrad、加速電圧100〜300 kVにて行うことができる。これによりメルトダウン温度を向上させることができる。
(f) 熱処理工程
洗浄溶媒除去後に熱処理を行ってもよい。熱処理によって結晶が安定化し、ラメラ層が均一化される。熱処理としては、熱延伸処理、熱固定処理、及び熱収縮処理のいずれも用いることができる。これらの処理は、熱可塑性樹脂微多孔膜の融点以下、好ましくは60℃以上融点−10℃以下で行う。
熱延伸処理は、通常用いられるテンター方式、ロール方式、又は圧延方式により行い、少なくとも一方向に延伸倍率1.01〜2.0倍で行うのが好ましく、1.01〜1.5倍で行うのがより好ましい。
熱固定処理は、テンター方式、ロール方式、圧延方式により行う。また熱収縮処理は、テンター方式、ロール方式、若しくは圧延方式により行うか、又はベルトコンベア若しくはフローティング等を用いて行ってもよい。なお、熱収縮処理は、少なくとも一方向に50%以下の範囲が好ましく、より好ましくは30%以下の範囲にする。
なお上述の熱延伸処理、熱固定処理及び熱収縮処理を多数組み合せて行ってもよい。特に、熱延伸処理後に熱収縮処理を行うと、低収縮率で高強度の微多孔膜が得られるため好ましい。
(g) 親水化処理工程
洗浄溶媒除去により得られた微多孔膜は親水化処理して用いることもできる。親水化処理としては、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電処理等を用いる。なお親水化処理は電離放射後に行うのが好ましい。
界面活性剤を使用する場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及び両イオン系界面活性剤のいずれも使用することができるが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。この場合、界面活性剤を水溶液又はメタノール、エタノール又はイソプロピルアルコール等の低級アルコールの溶液にして、ディッピング及びドクターブレード等の方法により親水化する。
得られた親水化微多孔膜を乾燥する。このとき、透過性を向上させるため、熱可塑性樹脂微多孔膜の融点以下の温度で収縮を防止又は延伸しながら熱処理するのが好ましい。
(h) 表面被覆処理工程
洗浄溶媒除去により得られた微多孔膜は、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂多孔質体、又はポリイミド、ポリフェニレンスルフィド等の多孔質体を表面に被覆することによりメルトダウン特性を改良することもできる。また、ラセミダイアド0.12〜0.88のポリプロピレン溶液を被覆して乾燥することにより無孔質のポリプロピレン膜を形成でき、電池セパレーターとして使用したときの高温特性を改良できる。
[3] 熱可塑性樹脂微多孔膜
以上のように製造した微多孔膜の物性は、通常の場合、空孔率が25〜80%、透気度が10〜2000秒/100cc(膜厚30μm換算)である。洗浄溶剤除去後には高空孔率の膜が得られるので、その後の熱処理を従来よりも高い温度で行っても、従来と同等以上の空孔率/透気度を有し、かつ寸法安定性に優れた熱可塑性樹脂微多孔膜が得られる。熱可塑性樹脂微多孔膜の膜厚は、用途に応じて適宜選択しうるが、例えば電池用セパレーターとして使用する場合は5〜200μmにするのが好ましい。このように、本発明の製造方法により得られる熱可塑性樹脂微多孔膜は優れた透過性を示すので、電池用セパレーター、フィルター等として好適に使用できる。
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1
質量平均分子量が2.0×106の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)25質量%と質量平均分子量が3.5×105の高密度ポリエチレン(HDPE)75質量%とからなり、Mw/Mn=16.8であるポリエチレン組成物(融点135℃、結晶分散温度90℃)に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタンをポリエチレン組成物100質量部当たり0.375質量部加えたポリエチレン組成物を得た。得られたポリエチレン組成物25質量部を二軸押出機(内径58 mm、L/D=42、強混練タイプ)に投入し、この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン75質量部を供給し、200℃及び200 rpmで溶融混練し、押出機中でポリエチレン溶液を調製した。
得られたポリエチレン溶液を押出機の先端に設置されたTダイから押し出し、40℃に設定した冷却ロールで引き取りながら、ゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートについて、連続延伸機を用いて116℃で5×5倍になるように二軸延伸を行い、約40μmの厚さの延伸膜を得た。得られた膜を25 cm×65 cmのシート状に切り取り、小型ワイヤロールに巻き付けて固定した。ワイヤロールは直径20 cm、長さ35 cm、吸引部分の長さ20 cmで吸引部分がパンチングプレートになっている円筒に0.8 mm径のワイヤを隙間(透孔サイズ)が200μmになるように巻き付けたものを用いた。微多孔膜を巻き付けたワイヤロールを26℃に設定したn-ペンタン(沸点36℃、表面張力15.5 mN/m(25℃)、水への溶解度225 質量ppm(16℃))を貯留した洗浄槽中で45秒間揺動させる洗浄を3回繰り返した。洗浄処理後の膜を50℃に加温した温水を貯留した洗浄溶媒除去槽に入れるとともに、ロール内部の空洞部圧力が大気圧より−10 kPaになるように吸引しながら14秒間揺動させた。洗浄溶媒除去操作を終了した後、膜を洗浄溶媒除去槽から取り出し、同時に吸引を停止してロール内部の空洞部圧力を大気圧に戻し、膜表面に付着している少量の温水を室温のエアスプレーで吹き飛ばすことによって除去した。膜をワイヤロールから剥ぎ取り、20 cm×20 cmのアルミニウム製の固定枠に固定し、さらに122℃で60秒間熱固定することによりポリエチレン微多孔膜を作製した。微多孔膜の作製条件及び得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
実施例2
実施例1と同様にして延伸膜を作製し、得られた膜を25 cm×65 cmのシート状に切り取り、ワイヤの隙間を100μmとした以外実施例1と同様の小型ワイヤロールに巻き付けて固定した。微多孔膜を巻き付けたワイヤロールを26℃に設定した塩化メチレン(沸点40.0℃、表面張力27.3 mN/m(25℃)、水への溶解度20,000質量ppm(20℃))を貯留した第一洗浄槽中で60秒間揺動させる洗浄を2回繰り返した。さらに26℃に設定したハイドロフルオロエーテル(C4F9OCH3、住友スリーエム(株)製HFE-7100、沸点61℃、表面張力13.6 mN/m(25℃)、水への溶解度12質量ppm(25℃))を貯留した第二洗浄槽中で40秒間揺動させる洗浄を2回繰り返した(以下第二洗浄槽を「リンス槽」と記し、第二洗浄槽中での洗浄処理を「リンス処理」と記す。)。洗浄処理後の膜を80℃に加温した温水を貯留した洗浄溶媒除去槽に入れるとともに、ロール内部の空洞部圧力が大気圧より−5kPaになるように吸引しながら1秒間揺動させた。洗浄溶媒除去操作を終了した後実施例1と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。微多孔膜の作製条件及び得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
実施例3
第一洗浄槽で用いる洗浄溶媒を60℃に設定したノルマルデカン(沸点173℃、表面張力23.4 mN/m(25℃)、水への溶解度50質量ppm(20℃))、リンス槽で用いる洗浄溶媒を26℃に設定したパーフルオロカーボン(C6F14、住友スリーエム(株)製フロリナートFC-72、沸点56℃、表面張力12.0 mN/m(25℃)、水への溶解度100質量ppm以下(25℃))、小型ワイヤロールの吸引部のワイヤの隙間を50μm、吸引圧力を−13kPa、洗浄溶媒除去槽の温水の温度を70℃、洗浄溶媒除去槽中での揺動時間を4秒間とした以外は実施例2と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。微多孔膜の作製条件及び得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
実施例4
実施例1と同様にして二軸延伸を行い、幅0.4 m、長さ約600 mの延伸膜を得た。この延伸膜を第一洗浄槽3槽、リンス槽2槽からなる連続式洗浄装置を用い、膜移送速度6m/分で連続的に洗浄処理を行った。第一洗浄槽には26℃に設定した塩化メチレンを貯留し、各槽における延伸膜の液中滞留時間が30秒になるようにした。リンス槽には26℃に設定したハイドロフルオロエーテル(C4F9OCH3、住友スリーエム(株)製HFE-7100)を貯留し、各槽における延伸膜の液中滞留時間が20秒になるようにした。
洗浄処理後の膜を引き続き65℃に設定した温水を貯留した洗浄溶媒除去槽内に導入し、温水中で洗浄溶媒を吸引除去した。洗浄溶媒除去槽内には0.8 mm径のワイヤを隙間が200μmになるように巻き付けた直径30 cmのワイヤロールを温水液面がロール中心より4cm下になるように配置した。膜を温水液面より高い位置から供給し、ロール下部のほぼ半円周分と接触させることにより、膜がロールに極力接触した状態で膜を温水と接触させながら吸引するようにした。温水の温度を65℃に維持できるように温水を連続的に洗浄溶媒除去槽に供給し、排出した。吸引圧力を−8kPa、延伸膜と吸引ロールの接触時間を5秒とした。洗浄溶媒除去槽を出た膜を一旦ロールに巻き取り、巻き取った膜の一部を切り取り、20 cm×20 cmのアルミニウム製の固定枠に固定し、122℃で60秒間熱固定することにより、ポリエチレン微多孔膜を作製した。微多孔膜の作製条件及び得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
比較例1
洗浄溶媒として塩化メチレンを使用し、延伸膜を20 cm×20 cmのアルミニウム製の枠に固定し、洗浄溶媒除去槽中で揺動させて溶剤を洗浄した以外実施例1と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。微多孔膜の作製条件及び得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
比較例2
吸引ロールとして直径8mmの円を開孔度20%になるように均一に配置したパンチングロールを用い、吸引圧力を−20 kPa、洗浄溶媒除去槽の温水の温度を70℃、洗浄溶媒除去槽中での揺動時間を5秒間とした以外実施例2と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。微多孔膜の作製条件及び得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
比較例3
ワイヤの隙間を5μm、吸引圧力を−5 kPa、温水の温度を80℃及び洗浄溶媒除去槽中での揺動時間を30秒間とした以外実施例3と同様にしてポリエチレン微多孔膜を作製した。微多孔膜の作製条件及び得られた微多孔膜の物性を表1に示す。
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた熱可塑性樹脂微多孔膜の物性を以下の方法で測定した。
(1) 膜厚:(株)ミツトヨ製接触式厚み計により測定した。
(2) 透気度:JIS P8117に準拠して測定した(膜厚30μm換算)。
(3) 空孔率:重量法により測定した。
(4) 熱収縮率:微多孔膜を105℃で8時間暴露したときの機械方向(MD)、垂直方向(TD)の収縮率をそれぞれ測定し、平均値を求めた。
Figure 0004746830
表1に示すように、本発明の方法により作製した実施例1〜4の熱可塑性樹脂微多孔膜はその外観、空孔率及び透気度が優れている。一方、比較例1の微多孔膜は25℃における表面張力が24 mN/mを超え、16℃における水への溶解度が600質量ppmを超える洗浄溶媒を用いて洗浄しているため、膜表面に水痕状の模様が多数発生し外観が悪化するとともに、空孔率及び透気度も劣る。比較例2の微多孔膜は、透孔サイズが5000μmを超える吸引ロールを使用し、一般式(1)で表される接触時間の範囲を超える時間で溶媒を除去しているため、膜表面にロールの吸引孔と同形状の吸引痕が発生し外観が悪化するとともに、空孔率及び透気度も劣る。比較例3の微多孔膜は一般式(1)で表される接触時間の範囲を超える時間で溶媒を除去しているため、膜表面に縞状の吸引痕が発生し外観が悪化するとともに、空孔率及び透気度も劣る。

Claims (3)

  1. ポリオレフィンを主体とする熱可塑性樹脂と溶剤を溶融混練して得られた溶液をダイより押し出し、冷却して得られたゲル状成形物から残存する前記溶剤を洗浄溶媒により除去して洗浄成形物とした後、前記洗浄成形物を温水と接触させながら、洗浄溶媒吸引手段により前記洗浄成形物から前記洗浄溶媒を吸引除去する工程を有する熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法であって、(1) 前記洗浄溶媒として大気圧下における沸点が100℃以下、25℃における表面張力が24 mN/m以下及び16℃における水への溶解度が600質量ppm以下である洗浄溶媒(A)を用い、(2) 前記洗浄溶媒吸引手段として、10〜5,000μmの透孔サイズ(前記洗浄溶媒を吸引するための透孔に内接する最大円の直径)を有するワイヤロール、パンチングロール又はスリットロールを用い、かつ(3) 前記洗浄成形物と前記洗浄溶媒吸引手段の吸引面との接触時間を、式:t≦(100−T) 3 /(700×P 0.5 ×logL)[ただしtは前記接触時間(秒)を表し、Tは前記温水の温度(℃)を表し、Pは吸引圧力(kPa)を表し、Lは前記透孔サイズ(μm)を表す]を満たす範囲にすることを特徴とする熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法。
  2. 請求項1に記載の熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法において、前記吸引圧力を0.5〜60 kPaの範囲とし、前記温水の温度を、30〜95℃の範囲において(前記洗浄溶媒の沸点−10℃)〜(沸点+50℃)の範囲とすることを特徴とする熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法において、(a) 前記ポリオレフィンは、(i) 質量平均分子量が5×10 5 以上の超高分子量ポリエチレンからなるか、(ii) 前記超高分子量ポリエチレンと、質量平均分子量が1×10 4 以上〜5×10 5 未満の高密度ポリエチレンとを含み、さらに質量平均分子量が各々1×10 4 〜4×10 6 の範囲内のポリプロピレン、ポリブテン-1及びエチレン・α-オレフィン共重合体、並びに質量平均分子量が1×10 3 〜4×10 4 の範囲内のポリエチレンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種を含んでもよい組成物からなり、(b) 前記洗浄溶媒(A)の16℃における水への溶解度は300質量ppm以下であり、かつ前記洗浄溶媒(A)は、C 5 H 2 F 10 、C 4 F 9 OCH 3 、C 4 F 9 OC 2 H 5 、C 6 F 14 、C 7 F 16 、C 4 F 9 OCF 3 、C 4 F 9 OC 2 F 5、 炭素数5〜7のノルマルパラフィン、炭素数5〜7のイソパラフィン、及び炭素数5〜7のシクロパラフィンからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、(c) 前記透孔サイズが10〜500μmであり、(d) 前記吸引圧力が3〜20 kPaであることを特徴とする熱可塑性樹脂微多孔膜の製造方法。
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