JP4344550B2 - ポリオレフィン微多孔膜の製造方法及びポリオレフィン微多孔膜 - Google Patents

ポリオレフィン微多孔膜の製造方法及びポリオレフィン微多孔膜 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法及びポリオレフィン微多孔膜に関し、特に空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜の製造方法及びポリオレフィン微多孔膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン微多孔膜は、リチウム二次電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池、ポリマー電池等に用いる電池用セパレーターをはじめ、電解コンデンサー用セパレーター、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、医療用材料等に幅広く使用されている。ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレーター、特にリチウムイオン電池用セパレーターとして用いる場合、その性能は電池特性、電池生産性及び電池安全性に深く関わっている。そのためポリオレフィン微多孔膜には、優れた透気度、機械的特性、寸法安定性、シャットダウン特性、メルトダウン特性等が要求される。
【0003】
例えば微多孔膜の高強度化を図る方法として、特開昭60-242035号、特開昭60-255107号及び特開昭63-273651号は、超高分子量ポリオレフィンを用いた微多孔膜の製造方法を提案している。これらは超高分子量ポリオレフィンと各種可塑剤又は溶剤を溶融混練し、得られた溶融混練物を押出してゲル状シートを成形し、次いで延伸する方法である。しかし、これらの方法では超高分子量ポリオレフィンを用いるため、溶融混練物を押出成形するためには可塑剤又は溶剤を大量に使用しなければならない。そのため可塑剤又は溶剤の除去に時間がかかり、生産性に問題がある上、得られる微多孔膜の強度も十分なものとは言えなかった。
【0004】
これに対して特開平3-064334号は、超高分子量ポリオレフィンを含有し、(重量平均分子量/数平均分子量)の値が特定の範囲内にあるポリオレフィン組成物を用いる方法を提案している。この方法によれば、溶融混練物の高濃度化すなわち溶剤の使用量を少なくすることが可能であり、しかも得られる微多孔膜は優れた強度と透水性を兼ね備えている。
【0005】
しかし原料に超高分子量ポリエチレンを含む場合、可塑剤又は溶剤を含んだ状態で延伸すると、得られる微多孔膜の孔径が比較的小さくなる上、孔径の制御が容易でなくなるという問題があった。このため最近要求されているような負極面における孔径が大きいリチウム電池用セパレーターが得られなかった。これに対し、WO00/20493号は、延伸膜を熱溶剤処理することにより、片面又は両面の孔径が大きく、内部の孔径が小さい微多孔膜を製造する方法を提案している。しかしながら、この方法により得られる微多孔膜は突刺強度が十分でなかった。
【0006】
微多孔膜の孔径制御方法として、孔径の大きい微多孔膜と孔径の小さい微多孔膜とを積層化する方法もあるが、この方法では工程の煩雑化が避けられない。また特開2001-002813号(特許文献1)、特開2001-002826号(特許文献2)、特開2001-019791号(特許文献3)及び特開2001-164018号(特許文献4)は、それぞれの実施例において、ポリエチレンとパラフィンワックスの溶融混合物を押出し、冷却することにより得られたゲル状成形物を逐次延伸し、パラフィンワックスを除去した後、熱処理することにより空孔率の高い微多孔膜を得る方法を記載している。
【0007】
【特許文献1】
特開2001-002813号公報
【特許文献2】
特開2001-002826号公報
【特許文献3】
特開2001-019791号公報
【特許文献4】
特開2001-164018号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしこれらの方法では、ゲル状成形物中で比較的融点の高いパラフィンワックスが固化しているため、低温で高倍率の延伸を行うのが困難であり、仮に高倍率で延伸できたとしても、熱収縮率と透気度をバランス良く向上させることは困難であった。
【0009】
従って、本発明の目的は、空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れポリオレフィン微多孔膜の製造方法及びポリオレフィン微多孔膜を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、ポリオレフィンと液体溶剤とを溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押出し、冷却することにより得られたゲル状成形物を機械方向及び垂直方向に同時二軸延伸(一次延伸)し、続いて前記同時二軸延伸の温度よりも高温で一次延伸との異方性が大きくなるように再び延伸(二次延伸)することにより、空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れるポリオレフィン微多孔膜が得られることを見出し、本発明に想到した。
【0011】
すなわち、本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、重量平均分子量が5×10 5 以上の超高分子量ポリエチレンを含むポリオレフィンと液体溶剤との溶融混練物をダイより押出し、冷却することにより得られたゲル状成形物を、前記ポリオレフィンの結晶分散温度以下の温度で機械方向及び垂直方向に同時二軸延伸し、その温度より高温であって前記ポリオレフィンの結晶分散温度以上〜(融点+10℃)以下の温度で再び延伸した後、前記液体溶剤を除去する工程を含み、(a) 前記同時二軸延伸の垂直方向への延伸倍率λ 1t と、前記再延伸の機械方向への延伸倍率λ 2m の比λ1t/λ2m、及び(b) 前記同時二軸延伸の機械方向への延伸倍率λ 1m と、前記再延伸の垂直方向への延伸倍率λ 2t の比λ1m/λ2t をともに(9/5)〜3の範囲内とし、かつ前記同時二軸延伸及び前記再延伸のトータルの面倍率を10倍以上にすることを特徴とする。
【0012】
比較的低温で行う一次延伸において、一軸延伸により比較的高倍率の延伸(例えばMDへの5倍以上の延伸)を行うと、膜が収縮して延伸むらが発生する等の困難を伴うが、本発明のように機械方向(MD)及び垂直方向(TD)に同時二軸延伸することにより比較的高倍率の延伸が可能となる。また液体溶剤を含むゲル状成形物を延伸することにより、高倍率の延伸が一層容易となる。
【0013】
同時二軸延伸による一次延伸によって得られた延伸物を、一次延伸の温度よりも高温で一次延伸との異方性が大きくなるように再び延伸(二次延伸)することにより、一次延伸で生じた細孔の孔径が一層拡大するので、その結果空孔率及び透過性が向上する(良好な透気度が得られる)。さらに突刺強度及び熱収縮率も向上する。その結果、空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜が得られる。ここで一次延伸と二次延伸との異方性が大きくなるようにするためには、二次延伸の機械方向への延伸倍率λ2mに対する一次延伸の垂直方向への延伸倍率λ1tの比λ1t/λ2m、及び二次延伸の垂直方向への延伸倍率λ2tに対する一次延伸の機械方向への延伸倍率λ1mの比λ1m/λ2tがともに(9/5)〜3の範囲内となるように二次延伸を行う必要がある。前記同時二軸延伸及び前記再延伸のトータルの面倍率を20倍以上とするのが好ましい。
【0014】
一次延伸の温度は、原料ポリオレフィンの結晶分散温度以下である。特に原料ポリオレフィンがポリエチレン又はポリエチレンを含む組成物からなる場合、一次延伸の温度は70〜90℃の範囲内であるのが好ましい。一次延伸を結晶分散温度以下の温度で行うことにより空孔率及び透過性が向上する。一次延伸と二次延伸との温度差は、5〜80℃の範囲内であるのが好ましく、5〜40℃の範囲内であるのがより好ましい。
【0015】
二次延伸の温度は、原料ポリオレフィンの結晶分散温度〜(融点+10℃)の範囲内であるのが好ましく、原料ポリオレフィンの結晶分散温度〜融点の範囲内であるのがより好ましい。特に原料ポリオレフィンがポリエチレン又はポリエチレンを含む組成物からなる場合、二次延伸の温度は80〜130℃の範囲内であるのが好ましく、90〜120℃の範囲内であるのがより好ましい。一次延伸と二次延伸の延伸倍率のトータルは面倍率で5倍以上とするのが好ましく、10倍以上とするのがより好ましく、20倍以上とするのが特に好ましい。
【0016】
ポリオレフィン微多孔膜が一層優れた特性を得るために、ポリオレフィンは下記条件(1)〜(11)を満たすのが好ましい。
(1) 上記ポリオレフィンはポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む。
(2) 上記(1)に記載のポリオレフィン又はポリオレフィン組成物は重量平均分子量5×105 以上のポリエチレンを含む。
(3) 上記(2)に記載の重量平均分子量5×105 以上のポリエチレンは超高分子量ポリエチレンである。
(4) 上記(3)に記載の超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量は1×106 〜15×106 である。
(5) 上記(3)又は(4)に記載の超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量は1×106 〜5×106 である。
(6) 上記(2)に記載のポリオレフィン又はポリオレフィン組成物は任意成分として他のポリオレフィンを含む。
(7) 上記(6)に記載の他のポリオレフィンは、重量平均分子量が1×104 以上〜5×105 未満のポリエチレン、重量平均分子量が1×104 〜4×106 のポリプロピレン、重量平均分子量が1×104 〜4×106 のポリブテン-1、重量平均分子量が1×103 以上〜1×104 未満のポリエチレンワックス、及び重量平均分子量が1×104 〜4×106 のエチレン・α-オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(8) 上記(2)に記載のポリオレフィン組成物は、重量平均分子量が5×105 以上の超高分子量ポリエチレンと重量平均分子量が1×104 以上〜5×105 未満のポリエチレンとからなる。
(9) 上記(8)に記載のポリオレフィン組成物中の重量平均分子量が1×104 以上〜5×105 未満のポリエチレンは高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種である。
(10) 上記(8)又は(9)に記載のポリオレフィン組成物は重量平均分子量が5×105 以上の超高分子量ポリエチレンと重量平均分子量が1×104 以上〜5×105 未満の高密度ポリエチレンとからなる。
(11) 上記(6)〜(10)のいずれかに記載のポリオレフィン組成物の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mn(分子量分布)は5〜300である。
【0017】
本発明の製造方法により得られるポリオレフィン微多孔膜の物性は、通常の場合、平均孔径が0.1〜2.0μmであり、空孔率が35〜95%であり、好ましくは40〜90%であり、より好ましくは40〜85%であり、膜厚25μm換算の透気度が10〜300秒/100 ccであり、好ましくは20〜300秒/100ccであり、より好ましくは20〜200秒/100 ccであり、突刺強度が3920 mN/25μm以上であり、好ましくは4900 mN/25μm以上であり、熱収縮率(105℃/8hr)がMD及びTDの両方向共に8%以下であり、好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下である特性を満たす。
【0018】
【発明の実施の形態】
[1] ポリオレフィン
本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造に使用するポリオレフィンは、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含むのが好ましく、特に重量平均分子量が5×105 以上のポリエチレンを含むのが好ましい。重量平均分子量が5×105 以上のポリエチレンとしては超高分子量ポリエチレンが挙げられ、その重量平均分子量は1×106 〜15×106 であるのが好ましく、1×106 〜5×106 であるのがより好ましい。
【0019】
重量平均分子量が5×105 以上のポリエチレンを含むポリオレフィン又はポリオレフィン組成物には、任意成分として他のポリオレフィンを添加することができる。他のポリオレフィンとしては、重量平均分子量が1×104 以上 〜5×105 未満のポリエチレン、重量平均分子量が1×104 〜4×106 のポリプロピレン、重量平均分子量が1×104 〜4×106 のポリブテン-1、重量平均分子量が1×103 以上〜1×104 未満のポリエチレンワックス、及び重量平均分子量が1×104 〜4×106 のエチレン・α-オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種を挙げることができる。他のポリオレフィンの添加量はポリオレフィン組成物全体を100重量部として80重量部以下にする。
【0020】
ポリオレフィン組成物としては、超高分子量ポリエチレンと重量平均分子量が1×104 以上〜5×105 未満のポリエチレンとからなる組成物が好ましい。この組成物は、用途に応じて重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mn(分子量分布)を容易に制御することができる。ポリオレフィン組成物のMw/Mnは限定的ではないが5〜300の範囲内であるのが好ましく、5〜100の範囲内であるのがより好ましい。重量平均分子量が1×104 以上〜5×105 未満のポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンのいずれも使用することができる。これらはエチレンの単独重合体のみならず、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1等の他のα-オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。中でも重量平均分子量が1×104 以上〜5×105 未満のポリエチレンとしては、高密度ポリエチレンが好適である。
【0021】
[2] ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、(a) 上記ポリオレフィンに液体溶剤を添加した後、溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製する工程、(b) ポリオレフィン溶液をダイより押し出し、冷却してゲル状成形物を形成する工程、(c) 一次延伸工程及び二次延伸工程、(d) 液体溶剤除去工程、(e) 得られた膜を乾燥する工程を含む。更に(a)〜(e)の工程の後、必要に応じて(f) 熱処理工程、(g) 電離放射による架橋処理工程、(h) 親水化処理工程等を設けてもよい。
【0022】
(a) ポリオレフィン溶液の調製工程
まずポリオレフィンに、室温で液状である溶剤を添加した後、溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製する。ポリオレフィン溶液には必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、無機充填材等の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。例えば孔形成剤として微粉珪酸を添加することができる。
【0023】
ポリオレフィン溶液を調製するための溶剤としては室温で液状の液体溶剤を用いることを必須とする。後段において液体溶剤を含むゲル状成形物を形成することにより、一次延伸において比較的高倍率の延伸が可能となる。液体溶剤としてはノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、及び沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温で液状のフタル酸エステルを用いることができる。液体溶剤含有量が安定したゲル状成形物を得るためには、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。なお加熱溶融混練状態においてはポリオレフィンと混和状態になるが、室温では固体状の固体溶剤を液体溶剤と併用してもよい。このような固体溶剤として、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等を使用することができる。なお固体溶剤のみを使用すると、延伸むらが発生する等の原因により、後述する一次延伸において比較的高倍率の延伸をすることができない。
【0024】
液体溶剤の粘度は25℃において30〜500 cStの範囲内であるのが好ましく、50〜200 cStの範囲内であるのがより好ましい。液体溶剤の25℃における粘度が30 cSt未満では発泡し易く、混練が困難である。一方500 cSt超では、液体溶剤の除去が困難である。
【0025】
溶融混練の方法は特に限定されないが、通常は押出機中で均一に混練することにより行う。この方法はポリオレフィンの高濃度溶液を調製するのに適する。溶融温度はポリオレフィンの融点+10℃〜+100℃の範囲内であるのが好ましい。よって一般的に溶融温度は160〜230℃の範囲内であるのが好ましく、170〜200℃の範囲内であるのがより好ましい。ここで融点とはJIS K7121に基づいて示差走査熱量測定(DSC)により求められる値を言う。液体溶剤は混練開始前に添加しても、混練中に押出機の途中から添加してもよいが、混練開始前に添加して予め溶液化するのが好ましい。溶融混練にあたってはポリオレフィンの酸化を防止するために酸化防止剤を添加するのが好ましい。
【0026】
ポリオレフィン溶液中のポリオレフィンと液体溶剤との配合割合は、両者の合計を100重量%として、ポリオレフィンが1〜50重量%、好ましくは20〜40重量%である。ポリオレフィンの割合が1重量%未満ではポリオレフィン溶液を押し出す際にダイス出口でスウェルやネックインが大きくなり、ゲル状成形物の成形性及び自己支持性が低下する。一方ポリオレフィンの割合が50重量%を超えるとゲル状成形物の成形性が低下する。
【0027】
(b) ゲル状成形物の形成工程
溶融混練したポリオレフィン溶液を押出機から直接に又は別の押出機を介してダイから押し出すか、或いは一旦冷却してペレット化した後再度押出機を介してダイから押し出す。ダイとしては、通常は長方形の口金形状をしたシート用ダイを用いるが、二重円筒状の中空状ダイ、インフレーションダイ等も用いることができる。シート用ダイの場合、ダイのギャップは通常0.1〜5 mmであり、押し出し時にはこれを140〜250℃の温度に加熱する。加熱溶液の押し出し速度は0.2〜15 m/分であるのが好ましい。
【0028】
このようにしてダイから押し出した溶液を冷却することによりゲル状成形物を形成する。冷却は少なくともゲル化温度以下までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。冷却は25℃以下まで行うのが好ましい。このような冷却を行うことによりポリオレフィン相が溶剤によりミクロ相分離された相分離構造を固定化することができる。一般に冷却速度が遅いと得られるゲル状成形物の高次構造が粗くなり、それを形成する擬似細胞単位も大きなものとなるが、冷却速度が速いと密な細胞単位となる。冷却速度が50℃/分未満では結晶化度が上昇し、延伸に適したゲル状成形物となりにくい。冷却方法としては冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法等を用いることができる。
【0029】
(c) 一次延伸工程及び二次延伸工程
押し出した溶液を冷却して得られたゲル状成形物を延伸する。本発明ではゲル状成形物を機械方向及び垂直方向に同時二軸延伸(一次延伸)し、続いて一次延伸の温度よりも高温で一次延伸との異方性が大きくなるように再び延伸(二次延伸)する。一次延伸では同時二軸延伸を行う必要がある。一般的にゲル状成形物を延伸することにより、ゲル状成形物のセル構造が崩れるとともに微小のクラックが生じることによって細孔が形成されるが、同時二軸延伸することにより、延伸むら等の発生を伴わずに比較的高倍率の延伸ができる。そのため一次延伸において比較的大きな孔径を有する細孔が形成される。同時二軸延伸は、テンター法又は圧延法により行うことができる。
【0030】
一次延伸は、原料ポリオレフィンの結晶分散温度+20℃以下の温度で行うのが好ましく、原料ポリオレフィンの結晶分散温度以下の温度で行うのがより好ましい。例えばポリエチレンの結晶分散温度は一般的に90℃である。一次延伸温度の下限に特に制限はないが、容易性の観点から−20℃以上であるのが好ましい。特に原料ポリオレフィンがポリエチレン又はポリエチレンを含む組成物からなる場合、一次延伸の温度は40〜105℃の範囲内であるのが好ましく、70〜90℃の範囲内であるのがより好ましい。結晶分散温度+20℃を超える温度で延伸すると、形成される細孔の孔径が不十分となる恐れがある。ここで結晶分散温度とは、ASTM D 4065に基づいて動的粘弾性の温度特性測定により求められる値をいう。
【0031】
二次延伸は、一次延伸の温度よりも高温で一次延伸との異方性が大きくなるように行う。具体的には、二次延伸の機械方向への延伸倍率λ2mに対する一次延伸の垂直方向への延伸倍率λ1tの比λ1t/λ2m、及び二次延伸の垂直方向への延伸倍率λ2tに対する一次延伸の機械方向への延伸倍率λ1mの比λ1m/λ2tがともに1を超え10以下の範囲内となるように二次延伸を行う必要がある。
【0032】
上記比λ1t/λ2m及びλ1m/λ2tは、一次延伸と二次延伸との異方性を示す尺度である。二次延伸が一軸延伸の場合には比λ1t/λ2m=1又は比λ1m/λ2t=1とした時に異方性が最大となり、二次延伸が二軸延伸の場合には比λ1t/λ2m=1かつ比λ1m/λ2t=1とした時に異方性が最大となる。しかし上記比λ1t/λ2m及び/又はλ1m/λ2tを1とすると、異方性が大きくなり過ぎるため、孔径拡大効果は大きいものの、一次延伸の倍率が比較的高い場合(例えばλ1t及び/又はλ1mが5倍を超える場合)に二次延伸において要する張力が高くなり過ぎる。また二次延伸が一軸延伸で上記比λ1t/λ2m又はλ1m/λ2tを1未満とした時、並びに二次延伸が二軸延伸で上記比λ1t/λ2m及びλ1m/λ2tを1未満とした時にも、一次延伸の倍率が比較的高い場合(例えばλ1t及び/又はλ1mが5倍を超える場合)に二次延伸において要する張力が高くなり過ぎる。特に二次延伸が二軸延伸で上記比λ1t/λ2m及びλ1m/λ2tを1未満とした時には、高温で行う二次延伸での面倍率の方が一次延伸での面倍率よりも高くなるので、孔径が充分に拡大しない恐れもある。従って上記比λ1t/λ2m及びλ1m/λ2tの下限はいずれも1を超える必要がある。一方上記比λ1t/λ2m及び/又はλ1m/λ2tを10超とした時は、異方性が小さ過ぎるため、孔径が十分に拡大しない。従って、上記比λ1t/λ2m及びλ1m/λ2tの上限はいずれも10以下である必要があり、7以下であるのが好ましく、5以下であるのがより好ましい。
【0033】
このような二次延伸を行うことにより、孔径が一層拡大し、その結果空孔率及び透過性が向上する。さらに突刺強度及び熱収縮率のバランスが向上する。二次延伸は一次延伸よりも高温である限り、両者の温度差に限定はないが、その温度差は5〜80℃であるのが好ましく、5〜40℃であるのがより好ましい。ただし二次延伸の温度は原料ポリオレフィンの融点+10℃以下であるのが好ましい。二次延伸温度が(融点+10℃)を超えると樹脂が溶融し、延伸による分子鎖の配向ができない。二次延伸の温度は、原料ポリオレフィンの結晶分散温度〜(融点+10℃)の範囲内であるのがより好ましく、原料ポリオレフィンの結晶分散温度〜融点の範囲内であるのが特に好ましい。特に原料ポリオレフィンがポリエチレン又はポリエチレンを含む組成物からなる場合、二次延伸の温度は80〜130℃の範囲内であるのが好ましく、90〜120℃の範囲内であるのがより好ましい。
【0034】
二次延伸において二軸延伸を行う場合は、逐次二軸延伸又は同時二軸延伸のいずれでもよい。二次延伸は、テンター法、ロール法、圧延法又はこれらの組合せにより行うことができる。
【0035】
以上述べたように、一次延伸において同時二軸延伸を行うので、比較的大きな孔径を有する細孔が形成される。さらに一次延伸の温度よりも高温で一次延伸との異方性が大きくなるように二次延伸を施すことによって孔径が一層拡大し、空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜が得られる。一次延伸と二次延伸の延伸倍率のトータルは面倍率で5倍以上であるのが好ましく、10倍以上であるのがより好ましく、20倍以上であるのが特に好ましい。トータル面倍率を5倍以上とすることにより突刺強度が一層向上する。一方トータル面倍率が400倍を超えると、延伸装置、延伸操作等の点で制約が生じる。また一次延伸の面倍率は二次延伸の面倍率と同じか、二次延伸の面倍率よりも高くするのが好ましい。二次延伸の面倍率を一次延伸の面倍率よりも高くすると、孔径拡大効果が低下し、空孔率及び透過性が不十分となる恐れがある。
【0036】
一次延伸及び二次延伸は、膜厚方向に温度分布を設けて行うこともできる。これにより一般的に機械的強度に優れた微多孔膜が得られる。膜厚方向に温度分布を設けて延伸する方法としては、例えば特開平7-188440号に開示の方法を適用することができる。
【0037】
(d) 液体溶剤除去工程
一次延伸及び引き続く二次延伸により得られた膜から液体溶剤を除去する。ポリオレフィン相は液体溶剤によりミクロ相分離されているので、液体溶剤を除去すると多孔質の膜が得られる。液体溶剤の除去(洗浄)は、公知の洗浄溶媒を用いて行うことができる。公知の洗浄溶媒としては、例えば塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素;三フッ化エタン等のフッ化炭化水素;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;メチルエチルケトン等の易揮発性溶媒等が挙げられる。
【0038】
液体溶剤を除去するための洗浄溶媒としては、上記公知の溶媒の他に、25℃における表面張力が24 mN/m以下、好ましくは20 mN/m以下である洗浄溶媒(A)を用いることができる。このような洗浄溶媒(A)を用いることにより、洗浄後の乾燥時に微多孔内部で生じる気-液界面の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制することができ、その結果微多孔膜の空孔率及び透過性が一層向上する上、空孔率/透過性と熱収縮率のバランスも向上する。洗浄溶媒(A)としては、ポリオレフィンと相溶しないものを使用する。なお洗浄溶媒の表面張力は、その使用温度の上昇に従い低くなるが、使用できる温度範囲は沸点以下に限られる。ここで「表面張力」とは気体と液体との界面に生じる張力を言い、JIS K 3362に基づいて求められる値を言う。
【0039】
洗浄溶媒(A)としては例えばハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、環状ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、パーフルオロエーテル等のフッ素系化合物;炭素数5〜10のノルマルパラフィン;炭素数6〜10のイソパラフィン;炭素数6以下の脂肪族エーテル;シクロペンタン等のシクロパラフィン;2-ペンタノン等の脂肪族ケトン;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ターシャリーブタノール、イソブタノール、2-ペンタノール等の脂肪族アルコール;酢酸プロピル、酢酸ターシャリーブチル、酢酸セカンダリーブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸イソプロピル、ギ酸イソブチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族エステル等を挙げることができる。
【0040】
フッ素系化合物としては、例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、例えばC6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。これらフッ素系化合物は20℃において表面張力が24 mN/m以下であるため、表面張力による網状組織の収縮緻密化を抑制する効果が高い。これらフッ素系化合物は沸点が100℃以下であるため洗浄後の乾燥除去が容易である。更にこれらフッ素系化合物はオゾン破壊性が無いため環境への負荷が低減でき、且つ引火点が40℃以上である(一部の化合物は引火点が無い)ため乾燥工程中の引火爆発の危険性が低い。
【0041】
炭素数5〜10のノルマルパラフィンとしてはノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナン及びノルマルデカンが好ましい。これらは表面張力が20℃において24 mN/m以下である。これらの中では、沸点が100℃以下であり、乾燥が容易であるノルマルペンタン、ノルマルヘキサン及びノルマルヘプタンがより好ましい。
【0042】
炭素数6〜10のイソパラフィンとしては2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジブチルブタン、2,3-ジブチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2,2,3-トリメチルブタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,3,3-トリメチルペンタン、2,3,4-トリメチルペンタン、2-メチルオクタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘキサン、2-メチルノナン及び2,3,5-トリメチルヘプタンが好ましい。これらの中では表面張力が20℃において24 mN/m以下であり、かつ沸点が100℃以下である2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジブチルブタン、2,3-ジブチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン及び3,3-ジメチルペンタンがより好ましい。
【0043】
炭素数6以下の脂肪族エーテルとしてはジエチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル及びジイソプロピルエーテルが好ましい。これらはその表面張力が20℃において24 mN/m以下であり、かつ沸点が100℃以下である。
【0044】
シクロペンタン、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノールは、それらの表面張力が20℃において24 mN/m以下であり、かつ沸点が100℃以下であるため好ましい。
【0045】
上記脂肪族エステルの中では、表面張力が20℃において24 mN/m以下である酢酸ターシャリーブチル、酢酸セカンダリーブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソプロピル及びギ酸イソブチルが好ましい。これらの中でも沸点が100℃以下である酢酸ターシャリーブチル、ギ酸エチル及びギ酸イソプロピルがより好ましい。
【0046】
洗浄溶媒(A)としては、25℃において表面張力が24 mN/m以下になるように配合した炭素数3以下の脂肪族アルコールと水との混合物を用いることもできる。
【0047】
上述の洗浄溶媒(A)は他の溶媒と混合した上で使用することもできる。その混合比率は25℃における表面張力が24 mN/m以下になるようにする。そのような混合物の例として、例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、例えばC6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の溶媒と、パラフィン等の炭化水素系溶媒との混合物を挙げることができる。
【0048】
洗浄溶媒(A)を用いる洗浄は二段階以上の工程により行うのが好ましく、洗浄溶媒(A)以外の洗浄溶媒(洗浄溶媒(B))を用いる段階が入ってもよい。洗浄溶媒(B)を用いる段階が入る場合は、少なくとも一つの段階において洗浄溶媒(A)を用いればよい。洗浄溶媒(B)としては、ポリオレフィンとは相溶性を有しないものを用いるが、例えば上述の塩化メチレンを始めとする公知の洗浄溶媒を用いることができる他、沸点100℃以上かつ引火点0℃以上の非水系溶媒も用いることができる。このような洗浄溶媒(B)は、ポリオレフィン組成物の溶解に用いた液体溶剤に応じて適宜選択し、単独物もしくは洗浄溶媒(B)同士の混合物とした上で用いる。
【0049】
洗浄溶媒(A)及び(B)を用いる二段階以上の洗浄工程により、洗浄溶媒の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制しながら十分な洗浄を行うことができる。好ましくは、少なくとも洗浄工程の最終段階において洗浄溶媒(A)で処理する。これにより先の段階で用いた洗浄溶媒(B)を除去でき(以下「リンス処理」という)、洗浄溶媒除去時に起る網状組織の収縮緻密化を防ぐことができる。その結果、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率及び透過性の向上に効果がある。
【0050】
洗浄工程の最終段階において洗浄溶媒(A)で処理する際、特に100℃以下の沸点を有する洗浄溶媒(A)で処理すれば乾燥が容易であるので、洗浄溶媒除去工程の効率が向上する。更に洗浄溶媒(A)として上述の例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、例えばC6F14及び C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテル等のフッ素系化合物を用いると、前述のように製造工程における環境への負荷をより低くできる。特に洗浄溶媒(B)として沸点150℃以上の溶媒を用いる場合はその除去に時間がかかり、その影響で空孔率及び透過性が低下する恐れがあるが、沸点100℃以下の洗浄溶媒(A)を用いることによりその問題を解消することができる。
【0051】
洗浄溶媒(B)として用いることができる沸点100℃以上かつ引火点0℃以上の非水系溶媒は難揮発性であり、環境への負荷が低く、洗浄溶媒除去工程において引火爆発する危険性が低いため使用上安全である。また係る非水系溶媒は高沸点であるため凝縮しやすく、回収が容易であり、リサイクル利用し易い。なお本願明細書において「沸点」とは、1.01×105 Paにおける沸点を言い、「引火点」とは、JIS K 2265に基づいて求められる値を言う。
【0052】
上記非水系溶媒として、例えば沸点100℃以上かつ引火点0℃以上のパラフィン系化合物、芳香族、アルコール、エステル、エーテル、ケトン等が挙げられる。上記非水系溶媒の引火点は、5℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましい。しかし引火点を上げるために非水系溶媒を水溶液化することは、溶剤の除去を十分に行うことができなくなるため好ましくない。
【0053】
上記非水系溶媒としては、炭素数8以上のノルマルパラフィン、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のノルマルパラフィン、炭素数8以上のイソパラフィン、炭素数7以上のシクロパラフィン、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のシクロパラフィン、炭素数7以上の芳香族炭化水素、水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数6以上の芳香族炭化水素、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5〜10のアルコール、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエステル及びエーテル、並びに炭素数5〜10のケトンからなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。
【0054】
炭素数8以上のノルマルパラフィンとしては、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカン、ノルマルウンデカン及びノルマルドデカンが好ましく、ノルマルオクタン、ノルマルノナン及びノルマルデカンがより好ましい。
【0055】
水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のノルマルパラフィンとしては、1-クロロペンタン、1-クロロヘキサン、1-クロロヘプタン、1-クロロオクタン、1-ブロモペンタン、1-ブロモヘキサン、1-ブロモヘプタン、1-ブロモオクタン、1,5-ジクロロペンタン、1,6-ジクロロヘキサン及び1,7-ジクロロヘプタンが好ましく、1-クロロペンタン、1-クロロヘキサン、1-ブロモペンタン及び1-ブロモヘキサンがより好ましい。
【0056】
炭素数8以上のイソパラフィンとしては2,3,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘキサン、2,3,5-トリメチルヘプタン及び2,5,6-トリメチルオクタンが好ましく、2,3,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,5-トリメチルヘキサン及び2,3,5-トリメチルヘキサンがより好ましい。
【0057】
炭素数7以上のシクロパラフィンとしては、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,2-ジメチルシクロヘキサン、シス-及びトランス-1,3-ジメチルシクロヘキサン、並びにシス-及びトランス-1,4-ジメチルシクロヘキサンが好ましく、シクロヘキサンがより好ましい。
【0058】
水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数5以上のシクロパラフィンとしては、クロロシクロペンタン及びクロロシクロヘキサンが好ましく、クロロシクロペンタンがより好ましい。
【0059】
炭素数7以上の芳香族炭化水素としては、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン及びパラキシレンが好ましく、トルエンがより好ましい。
【0060】
水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子で置換された炭素数6以上の芳香族炭化水素としてはクロロベンゼン、2-クロロトルエン、3-クロロトルエン、4-クロロトルエン、3-クロロオルトキシレン、4-クロロオルトキシレン、2-クロロメタキシレン、4-クロロメタキシレン、5-クロロメタキシレン及び2-クロロパラキシレンが好ましく、クロロベンゼン、2-クロロトルエン、3-クロロトルエン及び4-クロロトルエンがより好ましい。
【0061】
水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数5〜10のアルコールとしては、イソペンチルアルコール、ターシャリーペンチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル及び5-クロロ-1-ペンタノールが好ましく、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル及び5-クロロ-1-ペンタノールがより好ましい。
【0062】
水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエステルとしては炭酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル、ノルマル酪酸エチル、ノルマル吉草酸エチル及び酢酸2-クロロエチルが好ましく、酢酸イソペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル、ノルマル酪酸エチル及び酢酸2-クロロエチルがより好ましい。
【0063】
水素原子の一部がハロゲン原子で置換されることのある炭素数7〜14のエーテルとしてはジプロピレングリコールジメチルエーテル、ノルマルブチルエーテル、ジイソブチルエーテル及びビスクロロエチルエーテルが好ましく、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びビスクロロエチルエーテルがより好ましい。
【0064】
炭素数5〜10のケトンとしては2-ぺンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノンが好ましく、2-ペンタノン及び3-ペンタノンがより好ましい。
【0065】
上述のような洗浄溶媒(B)は洗浄溶媒(B)同士の混合物として用いてもよい。また洗浄溶媒(B)に、任意成分(C)として、洗浄溶媒(A)として挙げた例えばC5H2F10の組成式で示される鎖状ハイドロフルオロカーボン、例えばC4F9OCH3及びC4F9OC2H5の組成式で示されるハイドロフルオロエーテル、例えばC5H3F7の組成式で示される環状ハイドロフルオロカーボン、例えばC6F14又は C7F16の組成式で示されるパーフルオロカーボン、並びに例えばC4F9OCF3及びC4F9OC2F5の組成式で示されるパーフルオロエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種の溶媒を混合したものを使用してもよい。洗浄溶媒(B)と任意成分(C)は、表面張力が20〜80℃のいずれかの温度において24 mN/m以下になる割合で混合するのが好ましい。一般的には、混合溶媒100重量部中において任意成分(C)を2〜98重量部、好ましくは5〜50重量部にする。任意成分(C)を2〜98重量部含むことにより、洗浄溶媒の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制しつつ、十分な洗浄を行うことができる。
【0066】
洗浄溶媒(B)としては、その表面張力が20〜80℃のいずれかの温度において24 mN/m以下になるものを用いるのが好ましい。このような洗浄溶媒(B)として例えば、ノルマルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、三フッ化エタン、ジエチルエーテル、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0067】
以下洗浄工程の第一段階で使用する洗浄溶媒(B)と第二段階で使用する洗浄溶媒(A)との組合せとして好ましいものを示す。但し後述するように洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)を用いる洗浄は三段階以上で行うことも可能であるため、これらは二段階で行うことに限定する趣旨ではない。例えば、洗浄溶媒(B)/洗浄溶媒(A)=塩化メチレン/C4F9OCH3、塩化メチレン/C6F14、塩化メチレン/C7F16、塩化メチレン/ノルマルヘプタン、塩化メチレン/ノルマルヘキサン、塩化メチレン/ジエチルエーテル、エーテル/ハイドロフルオロエーテル、エーテル/環状ハイドロフルオロカーボン、エーテル/アルコール、エーテル/アルコールと水との混合物、ノルマルパラフィン/ハイドロフルオロエーテル、ノルマルパラフィン/環状ハイドロフルオロカーボン、ノルマルパラフィン/アルコール、ノルマルパラフィン/アルコールと水との混合物、イソパラフィン/ハイドロフルオロエーテル、イソパラフィン/環状ハイドロフルオロカーボン、イソパラフィン/アルコール、イソパラフィン/アルコールと水との混合物、シクロパラフィン/ハイドロフルオロエーテル、シクロパラフィン/環状ハイドロフルオロカーボン、シクロパラフィン/アルコール、シクロパラフィン/アルコールと水との混合物、ケトン/ハイドロフルオロエーテル、ケトン/環状ハイドロフルオロカーボン、ケトン/アルコール、及びケトン/アルコールと水との混合物が挙げられる。このような組合せのものを用いることにより、溶剤を効果的に除去できるとともに、微多孔膜の空孔率及び透過性を向上させることができる。上記組合せの中でも好ましいものは、洗浄溶媒(B)/洗浄溶媒(A)=塩化メチレン/C4F9OCH3、塩化メチレン/C6F14、塩化メチレン/C7F16、塩化メチレン/ノルマルヘプタン、塩化メチレン/ノルマルヘキサン、塩化メチレン/ジエチルエーテル、ノルマルヘプタン/C4F9OCF3、及びノルマルヘプタン/C6F14である。
【0068】
洗浄溶媒(A)単独又は洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)による洗浄は三段階以上の工程で行ってもよい。三段階以上の工程による洗浄は、一段階又は二段階の工程による処理では溶剤を十分除去することができずに、得られるポリオレフィン微多孔膜の物性が低下する場合等に有効である。洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)を用いて三段階以上の工程により洗浄する場合は、少なくとも最終段階において洗浄溶媒(A)を用いて処理すればよく、特に洗浄回数は制限されないが、通常三段〜五段階であり、好ましくは三段〜四段階である。また各々の段階において同じ洗浄溶媒で処理すると製造工程が長くなり、ポリオレフィン微多孔膜製造設備のスペースが拡大し、また溶剤除去の効率性が低下する。そのため各段階では互いに異なる洗浄溶媒を用いるのが好ましい。但し、互いに異なる洗浄溶媒を用いることに限定する趣旨ではない。従って、例えば三段階の処理の場合、第一段階及び第二段階において同一の洗浄溶媒を用い、第三段階で第一及び第二段階とは異なる洗浄溶媒を用いることもできる。
【0069】
洗浄は、延伸後の膜を洗浄溶媒に浸漬することにより抽出する方法、延伸後の膜に洗浄溶媒をシャワーする方法、又はこれらの組合せによる方法等により行うことができる。洗浄溶媒は、ゲル状成形物100重量部に対して300〜30000重量部使用するのが好ましい。洗浄溶媒(A)及び洗浄溶媒(B)を用いて二段階以上の工程により洗浄を行う場合は、洗浄溶媒(B)の使用量を100重量部として、洗浄溶媒(A)の使用量を50〜200重量部となるようにするのが好ましい。洗浄は、残留した液体溶剤がその添加量に対して1重量%未満になるまで行うのが好ましい。
【0070】
洗浄溶媒(B)を使用する場合の洗浄温度は洗浄溶媒(B)の沸点に依存する。洗浄溶媒(B)の沸点が150℃以下の場合は室温での洗浄が可能であり、必要に応じて加熱洗浄すればよく、一般に20〜80℃の温度で洗浄するのが好ましい。また洗浄溶媒(B)の沸点が150℃を超える場合、室温では膜内部への洗浄溶媒(B)の浸透性が悪いので、加熱洗浄するのが好ましい。
【0071】
洗浄溶媒(A)を使用する場合の洗浄温度及び/又はリンス温度は、洗浄溶媒(A)の表面張力に依存する。具体的には、洗浄溶媒(A)の表面張力が24 mN/m以下になる温度以上で洗浄及び/又はリンス処理を行うのが好ましい。洗浄溶媒(A)は、高くとも25℃においてその表面張力が24 mN/m以下になるので、殆どの場合は加熱を必要とせず、室温において洗浄及び/又はリンス処理を行うことができる。洗浄溶媒(A)の温度が、その表面張力が24 mN/m以下になる温度に満たない場合は、必要に応じてその表面張力が24 mN/m以下になる温度まで洗浄溶媒(A)を加熱する。
【0072】
(e) 膜の乾燥工程
延伸及び液体溶剤除去により得られた膜を、加熱乾燥法、風乾法等により乾燥することができる。乾燥温度は、ポリオレフィンの結晶分散温度以下の温度であるのが好ましく、特に結晶分散温度より5℃以上低い温度であるのが好ましい。
【0073】
乾燥処理により、ポリオレフィン微多孔膜中に残存する洗浄溶媒の含有量を5重量%以下にするのが好ましく(乾燥後の膜重量を100重量%とする)、3重量%以下にするのがより好ましい。乾燥が不十分で膜中に洗浄溶媒が多量に残存していると、後段の熱処理で空孔率が低下し、透過性が悪化するので好ましくない。
【0074】
(f) 熱処理工程
洗浄溶媒を除去した膜を熱処理するのが好ましい。熱処理によって微多孔膜の結晶が安定化し、ラメラ層が均一化される。熱処理方法としては、熱延伸処理、熱固定処理又は熱収縮処理のいずれの方法を用いてもよく、これらは微多孔膜に要求される物性に応じて適宜選択すればよい。これらの熱処理は、ポリオレフィン微多孔膜の融点以下の温度、好ましくは60℃以上〜融点−10℃以下の温度範囲内で行う。
【0075】
熱延伸処理は、通常用いられるテンター方式、ロール方式又は圧延方式により行い、少なくとも一方向に1.01〜2.0倍の延伸倍率で行うのが好ましく、1.01〜1.5倍の延伸倍率で行うのがより好ましい。
【0076】
熱固定処理は、テンター方式、ロール方式又は圧延方式により行う。熱収縮処理は、テンター方式、ロール方式若しくは圧延方式により行うか、又はベルトコンベア若しくはフローティングを用いて行ってもよい。熱収縮処理は、少なくとも一方向に50%以下の範囲で行うのが好ましく、30%以下の範囲で行うのがより好ましい。
【0077】
上述の熱延伸処理、熱固定処理及び熱収縮処理を多数組み合せて行ってもよい。特に熱延伸処理後に熱収縮処理を行うと、低収縮率で高強度の微多孔膜が得られるため好ましい。
【0078】
(g) 膜の架橋処理工程
延伸後、加熱乾燥法、風乾法等により溶剤を除去し、乾燥した微多孔膜に対して、電離放射により架橋処理を施すのが好ましい。電離放射線としてはα線、β線、γ線、電子線等を用いることができる。電離放射による架橋処理は、0.1〜100 Mradの電子線量及び100〜300 kVの加速電圧により行うことができる。架橋処理によりメルトダウン温度を向上させることができる。
【0079】
(h) 親水化処理工程
延伸後、溶剤を除去することにより得られた微多孔膜に親水化処理を施してもよい。親水化処理としては、モノマーグラフト処理、界面活性剤処理、コロナ放電処理等を用いる。モノマーグラフト処理は電離放射後に行うのが好ましい。
【0080】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又は両イオン系界面活性剤のいずれも使用することができるが、ノニオン系界面活性剤を使用するのが好ましい。界面活性剤を使用する場合、界面活性剤を水溶液にするか又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールの溶液にして、ディッピングするか、又はドクターブレードを用いる方法により微多孔膜を親水化する。
【0081】
得られた親水化微多孔膜を乾燥する。乾燥に際しては透過性を向上させるため、ポリオレフィン微多孔膜の融点以下の温度で収縮を防止しながら熱処理するのが好ましい。収縮を防止しながら熱処理する方法としては、例えば延伸しながら熱処理する方法が挙げられる。
【0082】
[3] ポリオレフィン微多孔膜
本発明の好ましい実施態様によるポリオレフィン微多孔膜は、次の物性を有する。
(1) 平均孔径は0.1〜2.0μmである。平均孔径が0.1μm未満になると透過性が著しく低下する上に電解液の浸透性が低下し、2.0μmを超えるとデンドライト成長を抑えられなくなり、短絡が起こり易くなる。
(2) 空孔率は35〜95%であり、40〜90%であるのが好ましく、40〜85%であるのがより好ましい。空孔率が35%未満では良好な透気度が得られない。一方95%を超えると電池安全性とインピーダンスのバランスがとれなくなる。
(3) 透気度は10〜300秒/100ccであり(膜厚25μm換算)、20〜300秒/100ccであるのが好ましく、20〜200秒/100ccであるのがより好ましい。透気度が10〜300秒/100ccであることにより電池容量が大きく、電池のサイクル特性も良好である。透気度が300秒/100ccを超えると、ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレーターとして用いた場合に、電池容量が小さくなる。一方10秒/100cc未満では電池内部の温度上昇時にシャットダウンが十分に行われない。本発明の製造方法により得られる微多孔膜を80℃/1.96 MPaの条件で5分間加熱加圧処理しても透気度は大きく変化せず、1000秒/100cc以下である。このため本発明の製造方法により得られるポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレーターとして用いた時に、容量特性の低下が少ない電池が得られる。
(4) 突刺強度は3920 mN/25μm以上であり、好ましくは4900 mN/25μm以上である。突刺強度が3920 mN/25μm未満では、ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレーターとして電池に組み込んだ場合に短絡が発生する恐れがある。
(5) 105℃の温度条件下に8時間暴露した後の熱収縮率は機械方向(MD)及び垂直方向(TD)ともに8%以下であり、5%以下であるのが好ましく、3%以下であるのがより好ましい。熱収縮率が8%を超えるとポリオレフィン微多孔膜をリチウム電池用セパレーターとして用いた場合に、発熱するとセパレーター端部が収縮し、短絡が発生する可能性が高くなる。
【0083】
このように、本発明の製造方法により得られるポリオレフィン微多孔膜は、空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れているので、電池用セパレーター、フィルター等として好適に使用できる。なおポリオレフィン微多孔膜の厚さは用途に応じて適宜選択しうるが、例えば電池用セパレーターとして使用する場合は5〜200μmにするのが好ましい。
【0084】
【実施例】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0085】
実施例1
重量平均分子量が2.0×106 の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)20重量%と重量平均分子量が3.5×105 の高密度ポリエチレン(HDPE)80重量%とからなり、Mw/Mn=16である組成物(融点135℃、結晶分散温度90℃)に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタンを組成物100重量部当たり0.25重量部ドライブレンドし、ポリエチレン組成物を調製した。得られたポリエチレン組成物20重量部を二軸押出機(内径58 mm、L/D=42、強混練タイプ)に投入し、この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35 cst(40℃)]80重量部を供給し、200℃及び200 rpmの条件で溶融混練して、押出機中でポリエチレン溶液を調製した。続いてこのポリエチレン溶液を押出機の先端に設置されたTダイから押し出し、0℃に温調された冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状成形物を形成した。このゲル状成形物を、テンター延伸機により90℃で機械方向(MD)に5倍及び垂直方向(TD)に2倍の倍率で同時二軸延伸し(一次延伸)、次いで同じくテンター延伸機により120℃で垂直方向(TD)に2.5倍の倍率で一軸延伸し(二次延伸)、延伸膜を得た。得られた延伸膜を20 cm×20 cmのアルミニウム製の枠に固定し、25℃に温調した塩化メチレン[表面張力27.3 mN/m(25℃)、沸点40.0℃]を含有する洗浄槽中に浸漬し、100 rpmで3分間揺動させながら洗浄した。洗浄した膜を室温で風乾した後、テンターに保持しながら125℃で10分間熱固定処理することによりポリエチレンの微多孔膜を作製した。
【0086】
実施例2
一次延伸においてMDに5倍及びTDに3倍の倍率で同時二軸延伸し、二次延伸においてTDに5/3倍の倍率で一軸延伸した以外は実施例1と同様にポリエチレンの微多孔膜を作製した。
【0087】
実施例3
一次延伸においてMDに3倍及びTDに3倍の倍率で同時二軸延伸し、二次延伸においてMDに5/3倍の倍率で、次いでTDに5/3倍の倍率で逐次二軸延伸した以外は実施例1と同様にポリエチレンの微多孔膜を作製した。
【0088】
実施例4
一次延伸を40℃の温度で行った以外は実施例1と同様にポリエチレンの微多孔膜を作製した。
【0089】
比較例1
一次延伸において115℃でMDに5倍及びTDに5倍の倍率で同時二軸延伸し、二次延伸を行わなかった以外は実施例1と同様にポリエチレンの微多孔膜を作製した。
【0090】
比較例2
一次延伸において90℃でMDに5倍の倍率で一軸延伸し、次いで二次延伸において120℃でTDに5倍の倍率で一軸延伸した以外は実施例1と同様にポリエチレンの微多孔膜を作製した。
【0091】
比較例3
流動パラフィンの代わりにパラフィンワックス(融点:61℃)を用いた以外は実施例4と同様にポリエチレン微多孔膜を作製したが、延伸に要する張力が大きくなり過ぎて延伸が不可能であった。
【0092】
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたポリオレフィン微多孔膜の物性を以下の方法で測定した。
・膜厚:接触厚み計により測定した。
・平均孔径:水銀ポロシメーター(機種名:PORESIZER-9320、Micromeritics Instrument Corporation製)により測定した。
・空孔率:重量法により測定した。
・突刺強度:25μm厚の微多孔膜を直径1mm(0.5 mm R)の針を用いて速度2mm/秒で突刺したときの最大荷重を測定した。
・熱収縮率:微多孔膜を105℃で8時間暴露したときのMD及びTDの収縮率をそれぞれ測定した。
・透気度:JIS P8117に準拠して測定した(膜厚25μm換算)。
・熱処理特性:80℃/1.96MPa/5分間の熱処理試験を行い、試験後の透気度を調べた。
・延伸張力比:比較例1における一次延伸に要した張力を1とした。
【0093】
【表1】
Figure 0004344550
表1続き
Figure 0004344550
表1続き
Figure 0004344550
【0094】
表1に示すように、本発明の方法により製造した実施例1〜4のポリエチレン微多孔膜は空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れ、かつ使用に耐えうる熱処理特性を有する。実施例1〜4のいずれにおいても、MDに5倍の一軸延伸を行った場合(比較例2)に比べて延伸に要する張力が低く、延伸時に膜の収縮が発生しなかった。一方比較例1では二次延伸を行っておらず、比較例2では比λ1m/λ21tが1となるように延伸しており、比較例3では固体溶剤を用いて溶融混練物を調製している。そのため、実施例1〜4と比較して、比較例1では孔径が小さくそのため空孔率、透気度及び熱処理試験後の透気度が劣っており、比較例2では一次及び二次延伸時において張力が高くなりそのため延伸時に膜の収縮が起り、比較例3では延伸に要する張力が高く、一次延伸が不可能であった。
【0095】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法によれば、ポリオレフィンと液体溶剤とを溶融混練し、得られた溶融混練物をダイより押出し、冷却することにより得られたゲル状成形物を、機械方向及び垂直方向に同時二軸延伸(一次延伸)し、続いて前記同時二軸延伸の温度よりも高温で一次延伸との異方性が大きくなるように再び延伸(二次延伸)し、しかる後前記溶剤を除去するので、空孔率、透気度、突刺強度及び熱収縮率のバランスに優れ、かつ熱処理特性に優れたポリオレフィン微多孔膜が得られる。得られたポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレーターとして用いることにより、容量特性、サイクル特性、低温域での放電特性等の電池特性だけでなく、電池生産性及び電池安全性も向上する。

Claims (4)

  1. 重量平均分子量が5×10 5 以上の超高分子量ポリエチレンを含むポリオレフィンと液体溶剤との溶融混練物をダイより押出し、冷却することにより得られたゲル状成形物を、前記ポリオレフィンの結晶分散温度以下の温度で機械方向及び垂直方向に同時二軸延伸し、その温度より高温であって前記ポリオレフィンの結晶分散温度以上〜(融点+10℃)以下の温度で再び延伸した後、前記液体溶剤を除去するポリオレフィン微多孔膜の製造方法であって、(a) 前記同時二軸延伸の垂直方向への延伸倍率λ 1t と、前記再延伸の機械方向への延伸倍率λ 2m の比λ1t/λ2m、及び(b) 前記同時二軸延伸の機械方向への延伸倍率λ 1m と、前記再延伸の垂直方向への延伸倍率λ 2t の比λ1m/λ2t をともに(9/5)〜3の範囲内とし、かつ前記同時二軸延伸及び前記再延伸のトータルの面倍率を10倍以上にすることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
  2. 請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法において、前記同時二軸延伸及び前記再延伸のトータルの面倍率を20倍以上とすることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法において、前記ポリオレフィンとして、前記超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量が1×10 4 以上〜5×10 5 未満の高密度ポリエチレンとからなる組成物を用いることを特徴とする方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られたポリオレフィン微多孔膜であって、平均孔径が0.1〜2.0μmであり、空孔率が35〜95%であり、膜厚25μm換算の透気度(JIS P8117)が10〜300秒/100 ccであり、80℃、1.96 MPa及び5分間の条件で加熱加圧した後の透気度(JIS P8117)が1,000秒/100 cc以下であり、突刺強度が3,920 mN/25μm以上であり、105℃に8時間暴露したときの熱収縮率が機械方向及び垂直方向ともに8%以下であることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。
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