しかし、スリットの形成されていない無垢の絶縁基板にレーザーによってスリットを形成し、その後、電極、抵抗体、保護膜等を形成して、その後に形成されたスリットに沿って分割する方法では、電極、抵抗体、保護膜等スリットを跨いで形成された場合には、分割時にバリが発生しやすくなるという問題がある。このバリの発生は、チップ抵抗器が小型になるほど、チップ抵抗器の大きさに対するバリの占める割合が大きくなり、チップ抵抗器全体の寸法のばらつきとなる。
また、上記特許文献1に記載の方法では、266nmの波長のレーザーを使用することから、絶縁基板に対してスリットを形成するにはレーザーの強度が弱いという問題があった。そのため、特許文献1の方法では、レーザーによるスクライブを2回行っているが、それでも絶縁基板にスリットを形成するには必ずしも十分であるとはいえない。絶縁基板にスリットを十分に形成できない場合には、分割不良となる。また、特許文献1の方法においては、電極や抵抗体等を形成する際には、絶縁基板にスリットが形成されていないので、電極や抵抗体等を形成する際の目印とすることができず、電極や抵抗体等の形成を良好に行うことができないおそれもある。
また、特許文献2に記載の方法では、予め表裏面に一次方向及び二次方向に分割スリットが入った絶縁基板を用意し、これに裏面電極や、表電極膜下層、抵抗体膜、アンダーコート膜、オーバーコート膜を形成するが、このように、スリットが予め入ったいわゆるスリット基板を用いる場合には、同じ規格の基板であっても焼成条件の微妙な違い等によりスリット間の幅が微妙に異なる等の個体差があるため、電極のペーストや抵抗体のペーストを印刷する際のスクリーンを複数用意しなければならないという問題がある。つまり、スリット基板を個体差に応じて複数種類に分類し、分類された基板ごとにスクリーンを用意するのである。つまり、ペーストの印刷における作業が煩雑となる。
そこで、本発明は、分割時のバリの発生を防止するとともに、スリットに沿った分割を良好に行うことができ、さらに、電極や抵抗体等の形成に際して、ペーストの印刷作業が繁雑とならない等、電極や抵抗体等の形成を良好に行なうことができるチップ抵抗器の製造方法と、該製造方法により製造されたチップ抵抗器を提供することを目的とするものである。
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、チップ抵抗器の製造方法であって、チップ抵抗器における絶縁基板の素体となる基板素体で、該絶縁基板の複数個分の大きさを少なくとも有する基板素体の上面に、一次分割用のスリットである一次スリットと二次分割用のスリットである二次スリットを形成するスリット形成工程で、少なくとも、該スリット形成工程後に基板素体の上面側に形成される部材である形成部材で該一次スリット又は二次スリットを跨いで形成される形成部材が形成されていない状態の基板素体に対して、一次スリットと二次スリットとをYAGレーザーを照射することにより形成するスリット形成工程と、該スリット形成工程の後に行われる、形成部材としての抵抗体と上面電極と保護膜とを形成する形成部材形成工程で、一次スリットを跨いだ状態に帯状に抵抗体ペーストを印刷することによりチップ抵抗器複数個分の抵抗体ペーストを一度に印刷し、該抵抗体ペーストを焼成することにより抵抗体を形成する抵抗体形成工程と、該抵抗体の上面に上面電極を形成する上面電極形成工程で、抵抗体形成方向において隣接する2つの上面電極の形成領域に一次スリットを跨いだ状態に一度に銀系ペーストを印刷し、該銀系ペーストを焼成することにより上面電極を形成する上面電極形成工程と、二次スリットを跨いだ状態に帯状に樹脂ペーストからなる保護膜ペーストを印刷することによりチップ抵抗器複数個分の保護膜ペーストを一度に印刷し、該保護膜ペーストを硬化することにより保護膜を形成する保護膜形成工程と、を有する形成部材形成工程と、該形成部材形成工程の後で絶縁基板を一次スリットに沿って分割する一次分割の直前に行われる形成部材切断工程で、基板素体の上面に一次スリットと二次スリットに沿ってUVレーザーを照射することにより、一次スリットを跨いで形成された抵抗体と上面電極とを切断するとともに、二次スリットを跨いで形成された保護膜を切断する形成部材切断工程と、を有することを特徴とする。
上記第1の構成のチップ抵抗器の製造方法においては、形成部材切断工程において形成部材を一次スリットと二次スリットとに沿って切断するので、分割時にバリが発生することがない。また、スリット形成工程において、基板素体にスリットを形成しておくので、一次分割や二次分割で基板素体を分割する場合に分割不良となることがない。また、予めスリットが設けられたスリット基板を用いるのではなく、スリット形成工程において、基板素体に一次スリットと二次スリットとを形成するので、電極のペーストや抵抗体のペーストを印刷する際のスクリーンを複数用意する必要がなく、ペーストの印刷作業が繁雑にはならない。また、形成部材を形成する前にスリット形成工程においてスリットを形成しておくので、電極のペーストや抵抗体のペーストを印刷する際の目印とすることが可能である。また、基板素体へのスリットの形成に際して、YAGレーザーを用いるので、基板素体に分割のために十分な深さにスリットを形成することができる。さらに、形成部材の切断に際して、UVレーザーを用いるので、形成部材、特に、保護膜が燃焼して炭化してしまうおそれを防止することが可能となる。
また、第2には、チップ抵抗器の製造方法であって、チップ抵抗器における絶縁基板の素体となる基板素体で、該絶縁基板の複数個分の大きさを少なくとも有する基板素体の上面に、一次分割用のスリットである一次スリットと二次分割用のスリットである二次スリットを形成するスリット形成工程で、少なくとも、該スリット形成工程後に基板素体の上面側に形成される部材である形成部材で該一次スリット又は二次スリットを跨いで形成される形成部材が形成されていない状態の基板素体に対して、一次スリットと二次スリットとをYAGレーザーを照射することにより形成するスリット形成工程と、該スリット形成工程の後に行われる、形成部材としての抵抗体と上面電極と保護膜と第2上面電極とを形成する形成部材形成工程で、一次スリットを跨いだ状態に帯状に抵抗体ペーストを印刷することによりチップ抵抗器複数個分の抵抗体ペーストを一度に印刷し、該抵抗体ペーストを焼成することにより抵抗体を形成する抵抗体形成工程と、該抵抗体の上面に第1上面電極を形成する第1上面電極形成工程で、抵抗体形成方向において隣接する2つの第1上面電極の形成領域に一次スリットを跨いだ状態に一度に銀系ペーストを印刷し、該銀系ペーストを焼成することにより第1上面電極を形成する第1上面電極形成工程と、二次スリットを跨いだ状態に帯状に樹脂ペーストからなる保護膜ペーストを印刷することによりチップ抵抗器複数個分の保護膜ペーストを一度に印刷し、該保護膜ペーストを硬化することにより保護膜を形成する保護膜形成工程と、該第1上面電極の上面に第2上面電極を形成する第2上面電極形成工程で、抵抗体形成方向において一次スリットを跨いで隣接する2つの第2上面電極の領域を含む形成領域であって、抵抗体形成方向と直角の方向にチップ抵抗器複数個分の二次スリットを跨いだ形成領域に、抵抗体形成方向と直角の方向に帯状に一度に樹脂銀系ペーストを印刷し、該樹脂銀系ペーストを硬化させることにより第2上面電極を形成する第2上面電極形成工程と、を有する形成部材形成工程と、該形成部材形成工程の後で絶縁基板を一次スリットに沿って分割する一次分割の直前に行われる形成部材切断工程で、基板素体の上面に一次スリットと二次スリットに沿ってUVレーザーを照射することにより、一次スリットを跨いで形成された抵抗体と第1上面電極と第2上面電極とを切断するとともに、二次スリットを跨いで形成された保護膜と第2上面電極とを切断する形成部材切断工程と、
を有することを特徴とする。
上記第2の構成のチップ抵抗器の製造方法においては、形成部材切断工程において形成部材を一次スリットと二次スリットとに沿って切断するので、分割時にバリが発生することがない。また、スリット形成工程において、基板素体にスリットを形成しておくので、一次分割や二次分割で基板素体を分割する場合に分割不良となることがない。また、予めスリットが設けられたスリット基板を用いるのではなく、スリット形成工程において、基板素体に一次スリットと二次スリットとを形成するので、電極のペーストや抵抗体のペーストを印刷する際のスクリーンを複数用意する必要がなく、ペーストの印刷作業が繁雑にはならない。また、形成部材を形成する前にスリット形成工程においてスリットを形成しておくので、電極のペーストや抵抗体のペーストを印刷する際の目印とすることが可能である。また、基板素体へのスリットの形成に際して、YAGレーザーを用いるので、基板素体に分割のために十分な深さにスリットを形成することができる。さらに、形成部材の切断に際して、UVレーザーを用いるので、形成部材、特に、保護膜や第2上面電極が燃焼して炭化してしまうおそれを防止することが可能となる。
なお、上記第1又は第2の構成において、形成部材切断工程の後に、該基板素体を該一次スリットに沿って分割する分割工程を設けるものとしてもよい。
また、第3には、上記第1又は第2の構成において、YAGレーザーが1064nmの波長を有し、UVレーザーが266nmよりも大きく355nm以下の波長を有することを特徴とする。
なお、チップ抵抗器であって、上記第1から第3までのいずれかの製造方法によって製造されたチップ抵抗器としてもよい。
また、以下の構成としてもよい。すなわち、第4には、チップ抵抗器であって、略方形状を呈する絶縁基板で、その側面の上端部分に、製造時にYAGレーザーにより形成したスリットを分割してなる切欠部が形成された絶縁基板と、該絶縁基板の上面側に形成された形成部材で、製造時にスリットを跨いで形成された部材をUVレーザーにより切断することにより、その端面にUVレーザーによる切断面が形成されている形成部材と、を有することを特徴とする。
上記第4の構成のチップ抵抗器においては、形成部材が製造時にスリットを跨いで形成された部材をUVレーザーにより切断することにより形成されているので、分割時にバリが発生することがない。また、絶縁基板は、予めYAGレーザーでスリットを形成した後に分割したものであるので、一次分割や二次分割で基板素体を分割する場合に分割不良となることがなく、製品の歩留まりを向上させることができる。また、予めスリットが設けられたスリット基板を用いるのではなく、基板素体にYAGレーザーにより一次スリットと二次スリットとを形成するので、電極のペーストや抵抗体のペーストを印刷する際のスクリーンを複数用意する必要がなく、ペーストの印刷作業が繁雑にはならない。さらに、形成部材の切断に際して、UVレーザーを用いるので、形成部材が燃焼して炭化してしまうおそれを防止することが可能となる。
また、第5には、チップ抵抗器であって、略方形状を呈する絶縁基板で、その側面の上端部分に、製造時にレーザーにより形成したスリットを分割してなる切欠部が形成された絶縁基板と、該絶縁基板の上面側に形成され、製造時にスリットを跨いで形成された部材をレーザーにより切断することにより形成された形成部材で、その切断した端面が、上記絶縁基板に形成された切欠部の側面とは横方向にずれて形成されている形成部材と、を有することを特徴とする。
上記第5の構成のチップ抵抗器においては、形成部材が製造時にスリットを跨いで形成された部材をレーザーにより切断することにより形成されているので、分割時にバリが発生することがない。また、予めスリットが設けられたスリット基板を用いるのではなく、基板素体にレーザーにより一次スリットと二次スリットとを形成するので、電極のペーストや抵抗体のペーストを印刷する際のスクリーンを複数用意する必要がなく、ペーストの印刷作業が繁雑にはならない。
また、第6には、上記第5の構成において、絶縁基板のスリットの形成に用いられたレーザーがYAGレーザーであり、また、上記形成部材を形成する際のレーザーがUVレーザーであることを特徴とする。よって、絶縁基板は、予めYAGレーザーでスリットを形成した後に分割したものであるので、一次分割や二次分割で基板素体を分割する場合に分割不良となることがなく、製品の歩留まりを向上させることができる。さらに、形成部材の切断に際して、UVレーザーを用いるので、形成部材が燃焼して炭化してしまうおそれを防止することが可能となる。
また、第7には、上記第4又は第5又は第6の構成において、上記形成部材が、抵抗体と、上面電極(第1上面電極、第2上面電極)と、保護膜における少なくともいずれかであることを特徴とする。なお、UVレーザーにより切断された形成部材が、樹脂を含む部材、例えば、第2上面電極や保護膜であるものとしてもよい。
本発明に基づくチップ抵抗器の製造方法によれば、形成部材切断工程において形成部材を一次スリットと二次スリットとに沿って切断するので、分割時にバリが発生することがない。つまり、形成部材の切断においては、一次スリットや二次スリットを跨いだ状態の形成部材を全て切断するが、スリットを跨いだ状態の複数の形成部材においては、その一部のみを切断してもよく、例えば、少なくともバリの出やすい形成部材を一次スリットや二次スリットの最上層に形成する場合には、該最上層の形成部材を切断することにより一次分割や二次分割をした場合にバリの発生を少なくすることができる。また、スリット形成工程において、基板素体にスリットを形成しておくので、一次分割や二次分割で基板素体を分割する場合に分割不良となることがない。また、予めスリットが設けられたスリット基板を用いるのではなく、スリット形成工程において、基板素体に一次スリットと二次スリットとを形成するので、電極のペーストや抵抗体のペーストを印刷する際のスクリーンを複数用意する必要がなく、ペーストの印刷作業が繁雑にはならない。また、形成部材を形成する前にスリット形成工程においてスリットを形成しておくので、電極のペーストや抵抗体のペーストを印刷する際の目印とすることが可能である。特に、スリット形成工程において、YAGレーザーによりレーザースクライブすることにより、基板素体へのスリットの形成に際して、YAGレーザーを用いるので、基板素体に分割のために十分な深さにスリットを形成することができる。また、特に、形成部材切断工程において、UVレーザーによりレーザースクライブすることにより、形成部材を切断する際に、形成部材が燃焼して炭化してしまうおそれを防止することが可能となる。
本発明においては、分割時のバリの発生を防止するとともに、スリットに沿った分割を良好に行うことができ、さらに、電極や抵抗体等の形成に際して、ペーストの印刷作業が繁雑とならない等、電極や抵抗体等の形成を良好に行なうことができるチップ抵抗器の製造方法とチップ抵抗器を提供するという目的を以下のようにして実現した。
すなわち、本発明に基づく実施例におけるチップ抵抗器Aは、図1に示されるように、絶縁基板10と、抵抗体(「抵抗体層」としてもよい)(機能素子)12と、第1上面電極(「第1上面電極層」としてもよい)14と、第2上面電極(「第2上面電極層」としてもよい)16と、カバーコート18と、保護膜(「保護層」としてもよい)20と、下面電極22と、側面電極24と、メッキ26と、を有している。
ここで、チップ抵抗器Aについてさらに詳しく説明すると、上記絶縁基板10は、含有率96%程度のアルミナにて形成された絶縁体である。この絶縁基板10は、直方体形状を呈しており、平面視すると、略長方形形状を呈している。この絶縁基板10は、上記チップ抵抗器Aの基礎部材、すなわち、基体として用いられている。
なお、この絶縁基板10にはレーザースクライブにより一次スリットと二次スリットとが形成されるので、レーザースクライブして形成したスリットを分割することにより形成された切欠部K1、K2(図2参照)が形成されている。なお、この切欠部K1、K2は一次スリット側、つまり、図3で言えば、X1側の側面とX2側の側面についてのものであるが、当然二次スリット側、つまり、図3におけるY1側の側面とY2側の側面においても、上面側と下面側に同じような切欠部が形成されている。
また、抵抗体12は、図1に示すように、上記絶縁基板10上面に設けられている。つまり、抵抗体12は、長手方向(電極間方向、通電方向としてもよい))(X1−X2方向(図1参照))に帯状に形成され、具体的には、絶縁基板10のX1側の端部からX2側の端部にまで帯状に形成されている。この抵抗体12は、具体的には、酸化ルテニウム系厚膜(例えば、酸化ルテニウム系メタルグレーズ厚膜)である。この抵抗体12は、上記チップ抵抗器Aとして電気的特性を担う機能素子である。
また、第1上面電極14は、図1に示すように、主に、上記抵抗体12の上面の長手方向(X1−X2方向(図1参照))の両端部領域に一対形成されている。つまり、第1上面電極14は、抵抗体12の上面のX1側の端部から所定の長さに形成されているとともに、第1上面電極14は、抵抗体12の上面のX2側の端部から所定長さに形成されている。この第1上面電極14は、具体的には、銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。また、第1上面電極14のY1−Y2方向(このY1−Y2方向は、X1−X2方向及びZ1−Z2方向に直角な方向である)の幅は、抵抗体12のY1−Y2方向の幅よりも若干大きく形成されていて、絶縁基板10のY1−Y2方向の幅よりも小さく形成されている。これにより、第1上面電極14は基本的には抵抗体12の上面に積層して形成されているが、第1上面電極14の一部は絶縁基板10の上面に積層している。なお、この第1上面電極14のY1−Y2方向の幅を抵抗体12のY1−Y2方向の幅と同一としてもよい。
また、第2上面電極16は、図1に示すように、主に、第1上面電極14の上面に形成されている。つまり、第2上面電極16は、絶縁基板10の上面のX1側の端部から所定の長さに形成されているとともに、第2上面電極16は、絶縁基板10の上面のX2側の端部から所定長さに形成されている。この第2上面電極16は、樹脂銀、具体的には、樹脂銀系厚膜により形成されている。また、第2上面電極16のY1−Y2方向(このY1−Y2方向は、X1−X2方向及びZ1−Z2方向に直角な方向である)の幅は、絶縁基板10のY1−Y2方向の幅と略同一となっている。これにより、第2上面電極16は基本的には第1上面電極14の上面に積層して形成されているが、第2上面電極16の一部は絶縁基板10の上面に積層している。なお、この第2上面電極16のY1−Y2方向の幅を第1上面電極14のY1−Y2方向の幅と同一としてもよい。
また、カバーコート18は、主に、抵抗体12の上面に形成されていて、抵抗体12の露出部分を被覆するように形成されている。つまり、このカバーコート18のX1−X2方向の幅は、第1上面電極14間の距離よりも若干大きく形成され、また、カバーコート18のY1−Y2方向の幅は、絶縁基板10のY1−Y2方向の幅と略同一となっている。このカバーコート18は、抵抗体へのトリミング時の熱衝撃を和らげてトリミング溝先端のマイクロクラックを防止するために形成されていて、ガラス、具体的には、ホウ珪酸鉛ガラス系厚膜により形成されている。
また、保護膜20は、図1に示すように、主に、カバーコート18の上面を被覆するように配設されている。すなわち、この保護膜20の配設位置をさらに詳しく説明すると、図3に示すように、Y1−Y2方向には、該絶縁基板10の幅と略同一(同一としてもよい)に形成され、さらに、X1−X2方向には、カバーコート18の露出部分と、両端に形成されている上記一対の第1上面電極14の一部を被覆するように設けられている。つまり、保護膜20は、図3のハッチング(つまり、左上から右下方向へのハッチング)に示す領域に設けられている。この保護膜20は、樹脂(エポキシ、フェノール、シリコン等)により形成されている。なお、ほう珪酸鉛ガラスにより形成してもよい。
また、下面電極22は、図1に示すように、上記絶縁基板10の下面の長手方向(X1−X2方向(図1参照))の両端部領域に一対形成されている。つまり、下面電極22は、絶縁基板10の下面のX1側の端部から所定の長さに形成されているとともに、下面電極22は、絶縁基板10の下面のX2側の端部から所定の長さに形成されている。なお、下面電極22のY1−Y2方向の幅は、絶縁基板10のY1−Y2方向の幅と略同一(同一としてもよい)に形成されている。すなわち、下面電極22は、図4のハッチング(つまり、左上から右下方向へのハッチング)に示す領域に設けられている。この下面電極22は、銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。
また、側面電極24は、第2上面電極14の一部と、下面電極22の一部と、絶縁基板10の側面(つまり、X1側の側面と、X2側の側面と、Y1側の側面の一部と、Y2側の側面の一部)を被覆するように断面略コ字状に層状に形成されている。この側面電極24は、X1側の端部とX2側の端部にそれぞれ設けられている。この側面電極24の上面部分は、図3のハッチング(つまり、右上から左下方向へのハッチング)に示す領域に設けられており、また、側面電極24の下面部分は、図4のハッチング(つまり、右上から左下方向へのハッチング)に示す領域に設けられている。
また、メッキ26は、ニッケルメッキ28と、錫メッキ30とから構成されていて、X1側の端部とX2側の端部にそれぞれ設けられている。ニッケルメッキ28は、保護膜20の一部と、第2上面電極16の一部と、側面電極24と、下面電極22の一部とを被覆するように形成されている。つまり、第2上面電極16と側面電極24と下面電極22の露出部分を被覆するように形成されている。このニッケルメッキ28は、電気メッキにより略均一の膜厚で配設されている。このニッケルメッキ28は、ニッケルにて形成されており、第2上面電極16等の内部電極のはんだ食われを防止するために形成されている。このニッケルメッキ28は、ニッケル以外にも銅メッキが用いられる場合もある。
また、錫メッキ30は、ニッケルメッキ28の上面を被覆するように略均一の膜厚で配設されている。この錫メッキ30は、上記チップ抵抗器Aの配線基板へのはんだ付けを良好に行うために形成されている。なお、この錫メッキ30は、錫メッキ以外に、はんだが用いられる場合もある。
なお、上記第1上面電極14と、第2上面電極16と、下面電極22と、側面電極24と、メッキ26とで電極部40が形成されるが、この電極部40において絶縁基板10の下面側に位置する部分が下面側電極部42となる。
なお、図3は、チップ抵抗器Aを上面側から視認した場合の各部の配置を示す図であり、抵抗体12、第1上面電極14、第2上面電極16、保護膜20、側面電極24について平面視した際に、最外郭の輪郭を図示したものである。なお、実際には隠れて見えない部分を含めて、各部とも同様に表現している。同様に、図4は、チップ抵抗器Aを下面側から視認した場合の各部の配置を示す図であり、下面電極22、側面電極24について平面視した際に、最外郭の輪郭を図示したものである。なお、実際には隠れて見えない部分を含めて、各部とも同様に表現している。
上記構成のチップ抵抗器Aの製造方法について、図5〜図9等を使用して説明する。まず、一次スリットや二次スリットが設けられていない無垢のアルミナ基板(このアルミナ基板は、複数のチップ抵抗器の絶縁基板の大きさを少なくとも有する大判のものである)5を用意し、このアルミナ基板5の裏面(すなわち、底面)に下面電極G22を形成する(図5のS11、図6のW1参照、下面電極形成工程)。つまり、下面電極用のペースト(例えば、銀系メタルグレーズ等の銀系ペースト)を印刷し、乾燥・焼成(840〜860℃(好適には850℃)による焼成)する。なお、図6に示すように、この下面電極の形成に際しては、隣接するチップ抵抗器について同時に下面電極G22を形成する。つまり、X方向に隣接する2つのチップ抵抗器に対応するアルミナ基板の領域について、境界位置(つまり、一次スリット)となる位置を跨ぐように1つの印刷領域で下面電極を形成する。さらには、Y方向には、帯状に連続して下面電極を形成する。つまり、Y方向には複数のチップ抵抗器分まとめて一連の帯状に下面電極を形成し、さらに、X方向に隣接する2つの下面電極については、その2つの下面電極をまとめて形成する。この下面電極G22は、複数分の下面電極22であるといえる。なお、図6のW1は、アルミナ基板を下面側から見た状態を示す図である。
次に、アルミナ基板5の裏面にレーザースクライブによって一次スリットと二次スリットとを形成する(図5のS12、図6のW2参照)。つまり、一次スリットをY方向に溝状に形成するとともに、二次スリットをX方向に溝状に形成する。一次スリットは、下面電極G22のX方向の中心位置に沿って形成されることになる。この場合、アルミナ基板5の裏面に溝状のスリットを形成するので、一次スリットを形成する際には、当然下面電極G22も切断されることになる(図10参照)。なお、このレーザースクライブに際しては、YAGレーザーを用いる。つまり、YAGレーザーによって、アルミナ基板5の裏面に一次スリットと二次スリットとを形成する。このYAGレーザーの波長は1064nmであるので、高い熱量によりスリットを形成でき、アルミナ基板5に対しても十分な深さにスリットを形成することができる。なお、下面電極G22は、銀系メタルグレーズ等の銀系ペーストにより形成するので、YAGレーザーで切断しても燃焼してしまうことがない。
次に、アルミナ基板5の表側の面(すなわち、上面)にレーザースクライブによって一次スリットJ1と二次スリットJ2とを形成する(図5のS13、図7のW3、図10参照、スリット形成工程)。つまり、一次スリットJ1をY方向に溝状に形成するとともに、二次スリットJ2をX方向に溝状に形成する。一次スリットJ1と二次スリットJ2とは、当然裏面に形成された一次スリットJ1と二次スリットJ2に対応する位置に形成されることになる(図10参照)。なお、このレーザースクライブに際しては、YAGレーザーを用いる。つまり、YAGレーザーによって、アルミナ基板5の表面に一次スリットと二次スリットとを形成する。このYAGレーザーの波長は1064nmであるので、高い熱量によりスリットを形成でき、アルミナ基板5に対しても分割のために十分な深さにスリットを形成することができる。
次に、該アルミナ基板の表側の面(すなわち、上面)に抵抗体を形成する(図5のS14、図7のW4参照、抵抗体形成工程)。つまり、抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成(840〜860℃(好適には850℃)による焼成)して抵抗体G12を形成する。なお、この抵抗体ペーストは、酸化ルテニウム系ペースト(例えば、酸化ルテニウム系メタルグレーズ)である。この抵抗体G12は、X方向の複数の抵抗体12分の抵抗体であり、抵抗体ペーストの印刷の際、アルミナ基板においてX方向(上面電極間方向)に抵抗体ペーストを帯状に連続して印刷する。つまり、アルミナ基板において、最終的に個々のチップ抵抗器となった場合のX方向に連なる一連の絶縁基板10の領域(これを「集合領域」とする。この集合領域は、基板素体における個々のチップ抵抗器形成領域が直線状に複数連なる領域であるともいえる)において、該集合領域の一方の端部から他方の端部にまで1本の帯状に抵抗体ペーストを印刷する。つまり、X方向に複数のチップ抵抗器分まとめて一連の帯状に抵抗体ペーストを印刷する。なお、Y方向には、抵抗体ペーストは、絶縁基板10のY方向の幅よりも小さい幅に形成する。なお、図7においては、抵抗体G12については見やすくするためにハッチングを付して示してある。また、図7、図8、図9は、アルミナ基板を上面側から見た状態を示す図である。
次に、抵抗体G12の上に第1上面電極(電極)G14を形成する(図5のS15、図7のW4参照、第1上面電極形成工程(上面電極形成工程))。すなわち、個々のチップ抵抗器となった場合に抵抗体12となる領域の端部領域に第1上面電極を形成する。つまり、上面電極ペーストを印刷し、乾燥・焼成(840〜860℃(好適には850℃)による焼成)する。この場合の上面電極ペーストは、銀系ペースト(例えば、銀系メタルグレーズ)である。なお、図7において、第1上面電極G14は、チップ抵抗器Aにおける第1上面電極14の2つ分の上面電極である。つまり、チップ抵抗器となった場合に隣接するチップ抵抗器の上面電極で互いに隣接し合う上面電極については1つの印刷領域で形成する。また、第1上面電極G14は、Y方向には、抵抗体G12の幅よりも若干大きく形成する。
次に、抵抗体G12の露出部分を覆うようにカバーコートG18を形成する(図5のS16、図8のW6参照、カバーコート形成工程)。つまり、Y方向に帯状にホウ珪酸鉛ガラス系のガラスペーストを印刷し、乾燥・焼成(840〜860℃(好適には850℃)による焼成)する。つまり、Y方向には複数のチップ抵抗器分まとめて一連の帯状にカバーコートを形成する。なお、X方向には、抵抗体G12の露出部分の幅よりも若干大きくする。このカバーコートG18は、カバーコート18の複数分であるといえる。
次に、抵抗体G12にトリミング溝Tを形成して抵抗値を調整する(図5のS17、図8のW7参照、抵抗値調整工程)。つまり、レーザートリミングにより、カバーコートの上から抵抗体G12にトリミング溝を形成する。
次に、カバーコートG18の露出部分を覆うように保護膜G20を形成する(図5のS18、図8のW8参照、保護膜形成工程)。つまり、Y方向に帯状に樹脂ペーストを印刷し、乾燥・硬化(190〜210℃(好適には200℃)による硬化)させる。つまり、Y方向には複数のチップ抵抗器分まとめて一連の帯状に保護膜を形成する。なお、保護膜G20は、X方向には、カバーコートG18の幅よりも若干大きくする。この保護膜G20は、保護膜20の複数分であるといえる。
次に、第2上面電極(電極)G16を形成する(図5のS19、図9のW9参照、第2上面電極形成工程(上面電極形成工程))。すなわち、第1上面電極G14の露出した部分を被覆するように、上面電極ペーストをY方向に帯状に印刷し、乾燥・硬化(190〜210℃(好適には200℃)による硬化)させる。この場合の第2上面電極ペーストは、樹脂銀系ペーストである。なお、図9において、第2上面電極G16は、Y方向には、複数個分に亘って帯状に形成されるとともに、X方向には、チップ抵抗器となった場合に隣接するチップ抵抗器の第2上面電極で互いに隣接し合う第2上面電極について1つの印刷領域で形成される。つまり、第2上面電極G16において、X方向においては2つ分の第2上面電極16となる。
なお、上記ステップS14〜S19までが、上記形成部材形成工程に当たる。つまり、抵抗体G12や第1上面電極G14やカバーコートG18や保護膜G20や第2上面電極G16が上記「基板素体の上面側に形成される形成部材」に当たる。また、一次スリットを跨ぐ部材としては、抵抗体G12や、第1上面電極G14や、第2上面電極G16が挙げられ、また、二次スリットを跨ぐ部材としては、カバーコートG18や、保護膜G20が挙げられる。
次に、アルミナ基板5の表側の面において、レーザースクライブによって一次スリットと二次スリットとを形成する(図5のS20、図9のW10、図11参照、形成部材切断工程)。つまり、一次スリットをY方向に溝状に形成するとともに、二次スリットをX方向に溝状に形成する。なお、一次スリットについては、すでに上記ステップS13において形成されている一次スリットと同じ位置(つまり、平面視における同じ位置)に形成し、二次スリットについては、すでに上記ステップS13において形成されている二次スリットと同じ位置(つまり、平面視における同じ位置)に形成する。この場合のスリットの形成のためのレーザースクライブにおいては、UVレーザーを用いる。そして、UVレーザーを用いることから、スリットの形成に際しては、アルミナ基板5の上面側に形成されている各部で一次スリットと二次スリットとを跨いでいるものを切断することになる。つまり、一次スリット側においては、抵抗体G12と、第1上面電極G14と、第2上面電極G16とを切断し、二次スリット側においては、カバーコートG18と保護膜G20と第2上面電極G16を切断する。なお、アルミナ基板5にはすでにスリットが形成されているので、アルミナ基板5をさらに切断してスリットを形成する必要はなく、また、UVレーザーを用いることから、アルミナ基板5はほとんど切断されないことになる。
このステップS20においては、UVレーザーを用いてスリットを形成するが、UVレーザーは355nmの波長を有しその熱量は小さいため、アルミナ基板5の上面側に形成された各部が燃焼して炭化してしまうことがない。つまり、355nmという波長の短いレーザーを用いることにより、非熱加工が可能となる。よって、特に、第2上面電極G16や保護膜G20は、樹脂系の部材により形成されているが、これらが燃焼して炭化してしまうことがない。
このUVレーザーは、図12に示すように、1064nmのYAGレーザーに基づき生成されたもので、1064nmのYAGレーザーを分光結晶に透過させて得た532nmのレーザーと1064nmのレーザーとをさらに分光結晶に透過させて355nmのレーザーとして得たものである。その意味で、このUVレーザーは第3高調波であるといえる。なお、上記の説明では、UVレーザーとして、355nmの波長を有するレーザーであるとしたが、355nm以下の波長を有するレーザーとしてもよい。また、波長が266nmよりも長く355nm以下のレーザーとしてもよい。
その後は、一次スリットJ1に沿って一次分割する(図5のS21参照、分割工程)。この分割に際しては、例えば、下面側を基点として、アルミナ基板を折り曲げるようにして分割する。つまり、1つのチップ抵抗器分のアルミナ基板の部分を直線状に配列してなる短冊状基板を隣接する短冊状基板に対して折り曲げるように上面側から下方に折曲させて分割する。
その後、該短冊状基板に対して、側面電極を形成する(図5のS22参照、側面電極形成工程)。つまり、側面電極用ペーストを印刷し、乾燥・硬化する。なお、側面電極用ペーストを印刷し、乾燥・焼成する方法としてもよい。また、スパッタ法により側面電極を金属薄膜で形成してもよい。
その後、二次スリットJ2に沿って二次分割する(図5のS23参照)。そして、メッキを形成してチップ抵抗器とする(図5のS24参照)。
なお、上記の製造方法に示すように、アルミナ基板5の表面側においては、YAGレーザーによるスリットの形成と、UVレーザーによるスリットの形成を行なうので、完成状態のチップ抵抗器Aにおいても、その痕跡が残ることになる。
つまり、上記のように2回のレーザースクライブを行うので、実際にはレーザーの照射位置が微妙にずれるため、スリットに段差が残る等して2回レーザースクライブした痕跡が残る。つまり、絶縁基板10の側面の上端に設けられた切欠部K2の側面の位置P1と、抵抗体12や第1上面電極14や第2上面電極16の端面の位置P2は、横方向に微妙にずれることになる。つまり、図2においては、切欠部K2の側面の位置P1と、抵抗体12や第1上面電極14や第2上面電極16の端面の位置P2とが横方向に一致しているものとして表現しているが、実際には、若干ずれることになる。二次スリット側においても、同じように、絶縁基板10の側面の上端に設けられた切欠部の側面の位置と、カバーコート18や保護膜20の端面の位置は、横方向に微妙にずれることになる。
また、アルミナ基板5にスリットを形成する場合には、YAGレーザーを用いるので、絶縁基板10の切欠部K1の側面は、YAGレーザーによる照射の痕跡が残り、また、第2上面電極や第1上面電極や抵抗体やカバーコートや保護膜にスリットを形成する場合には、UVレーザーを用いるので、第2上面電極16や第1上面電極14や抵抗体12やカバーコート18や保護膜20の横端面には、UVレーザーによる照射の痕跡が残る。
上記構成のチップ抵抗器Aの配線基板への実装においては、図13に示すように行われる。つまり、チップ抵抗器Aは、配線基板54上に形成されたランド52にハンダフィレット50を介して実装される。
なお、上記の説明においては、ステップS16により、チップ抵抗器Aにカバーコート18を設けるものとしたが、ステップS16の工程を省略してカバーコート18の構成を省略してもよい。また、上記の説明においては、ステップS19により、第2上面電極16を設けるものとしたが、ステップS19の工程を省略して、第2上面電極16の構成を省略してもよい。
以上のように本実施例のチップ抵抗器の製造方法及び該製造方法により製造されたチップ抵抗器によれば、一次分割の直前にレーザースクライブによりスリットを形成して、抵抗体や第1上面電極や第2上面電極やカバーコートや保護膜を切断しておく(ステップS20参照)ので、一次分割や二次分割によるバリの発生を防止することができる。特に、第2上面電極16や保護膜20は樹脂系の素材により形成されているので、上記ステップS20において一次スリットと二次スリットを形成して第2上面電極16や保護膜20を切断しておかないとバリが発生するおそれがあるが、上記ステップS20において、第2上面電極16や保護膜20を切断するので、一次分割の際に第2上面電極16においてバリの発生を防ぐことができ、また、二次分割の際に保護膜20においてバリの発生を防ぐことができる。また、特に、この一次分割の直前のレーザースクライブにおけるスリット形成においては、UVレーザーを用いるので、切断される部材が燃焼して炭化してしまうことがない。特に、第2上面電極や保護膜は樹脂により形成されているが、燃焼して炭化することなく切断することができる。
また、上記の実施例においては、抵抗体や第1上面電極等を形成する前に予めYAGレーザーによりアルミナ基板にスリットを形成しておく(ステップS13参照)ので、アルミナ基板に分割を行うために十分な深さのスリットを形成しておくことができ、また、YAGレーザーを用いても、アルミナ基板の表面には、抵抗体や第1上面電極や第2上面電極やカバーコートや保護膜は形成されていないので、これらが燃焼して炭化する等の支障を来すことがない。
また、上記の実施例においては、予めスリットが形成されたアルミナ基板、すなわち、スリット基板を用いるのではなく、アルミナ基板にレーザースクライブによりスリットを形成するので、電極のペーストや抵抗体のペースト等を印刷する際のスクリーンを複数用意する必要がない。
また、アルミナ基板の表面には、抵抗体や電極を形成する前にスリットを形成しておく(ステップS13参照)ので、電極のペーストや抵抗体のペースト等を印刷する際の目印とすることができ、例えば、画像認識等によりスリットの位置を把握した上で印刷を行うことにより、印刷のずれを防止することができる。
また、YAGレーザーによりレーザースクライブすることにより形成されたスリットは、スリットの開口部分が、図14に示すように、狭くなった状態となる。これはYAGレーザーの熱により基板の一部が溶解してこのような形状になり、全体に略楕円弧状の断面形状となる。すると、スリットの内部には、印刷されるペーストが入り込みにくくなり、これにより、バリを少なくすることができる。また、特に、二次スリット側においては、カバーコートのペースト(カバーコートを形成しない場合には、保護膜のペースト)がこの二次スリット内に入り込もうとするが、上記のように、スリットの開口部分が狭くなることにより、該ペーストが入り込みにくくなり、完成状態のチップ抵抗器Aにおける二次スリット側の側面の見栄えを良好にすることができる。つまり、カバーコートや保護膜は黒色等の濃い色が多く、また、絶縁基板は白色系であることから、該ペーストがスリットに入り込んだ場合には、カバーコートや保護膜が染みこんだような状態となり見栄えが悪いが、本実施例の場合には、そのようなおそれを小さくすることができる。
なお、上記の説明においては、上記ステップS20において、アルミナ基板5の上面側に形成されている各部で一次スリットと二次スリットとを跨いでいるもの、すなわち、抵抗体G12と、第1上面電極G14と、第2上面電極G16と、カバーコートG18と、保護膜G20とをレーザースクライブにより切断するものとして説明したが、上記の各部において、バリが出やすい部材が第2上面電極G16と、保護膜G20であることからすると、少なくとも、第2上面電極16と保護膜G20とを切断するようにすれば、バリの発生を極力少なくすることができる。つまり、最上層としての第2上面電極G16と保護膜G20のみを切断できるように、スリットを形成するのである。このように、第2上面電極と保護膜のみを切断するようにすれば、少ないパワーのレーザー光で済ますことができ、作業効率を向上させることができる。
なお、上記第1上面電極G14は、Y方向には個々に形成するものとしたが、Y方向に帯状に形成してもよい。また、第2上面電極G16は、Y方向に帯状に形成するものとして説明したが、帯状に形成するのではなく、Y方向に個別に形成するものとしてもよい。また、抵抗体についても、X方向に帯状に抵抗体G12を形成するものとして説明したが、各チップ抵抗器ごとに個別に形成してもよい。その場合には、ステップS20において、抵抗体はUVレーザーにより切断されないことになる。