ここで、抵抗体112は、TCRが低いものが種々開発されているので、低抵抗値の抵抗体においてTCRを低くすることができる。よって、図8において、抵抗体112における上面電極116との接続部分を除いた部分(つまり、抵抗体112の有効長部分)R1については、TCRを低くすることができる。
一方、上面電極116は、抵抗値は低いがTCRは高いのが一般的であり、例えば、銀(Ag)の場合にはTCRは、約4000×10-6/℃程度である。ここで、上面電極116の上方には銅メッキ126が設けられているので、これにより、上面電極116と側面電極122とメッキ124とからなる電極部140における上面側部分において、銅メッキ126が形成された領域R3については、銅メッキ126の存在により、抵抗値を低く抑えることができ、また、抵抗値を低くすることにより、領域R3のチップ抵抗器全体のTCRに与える影響を小さくできるので、チップ抵抗器全体のTCRを低くすることができる。また、メッキに銅メッキを用いない場合でも、メッキ厚を厚くすることによりメッキの抵抗値を低くできるので、これにより、結果として、領域R3のチップ抵抗器全体のTCRに与える影響を小さくすることができる。つまり、上面電極116における保護膜118から露出した領域については、メッキを形成できるので、このメッキの抵抗値を低くすることにより、チップ抵抗器全体のTCRを低くする対策を取ることができる。
しかし、上面電極116において保護膜118にカバーされている領域R2(この領域R2は、保護膜118にカバーされた上面電極116で、抵抗体112と接続した部分と、抵抗体112と接続されていない部分とからなる)は、上記のような対策を取ることができないことから、チップ抵抗器全体のTCRを高くしてしまうという問題がある。特に、抵抗体112に銀パラジウム系の材料を用い、上面電極116に銀系の材料を用いた場合には、パラジウムが上面電極116に拡散するので、抵抗体112と上面電極116の接続部分の抵抗値が上面電極116自体の抵抗値よりも高くなり、結果として、該接続部分のチップ抵抗器全体のTCRに与える影響が大きくなり、TCRを十分低くすることができないという問題がある。
そのような問題に対する方法として、図9のチップ抵抗器B2に示すように、抵抗体112と上面電極116の接続部分では、上面電極116を抵抗体112の上面に積層させ、また、保護膜118が上面電極116をカバーしないように形成することにより、上面電極116が保護膜118にカバーされないようにできるので、TCRを低くする対策を取ることができない領域が形成されてしまうのを防止できるが、保護膜118が上面電極116に乗り上げないように精度よく形成するのは困難であり、保護膜118が上面電極116に乗り上げてしまうと保護膜118でカバーされた領域はTCRを低く抑える対策を取ることができない。一方、保護膜118が上面電極116に乗り上げないように形成するために、保護膜118と上面電極116との間に隙間ができてしまうと、抵抗体112が露出してしまい、抵抗体112を保護することができず問題となる。
また、上記特許文献1においても、第1表電極層下層膜や第1表電極層上層膜の上方には銅により形成された第2表電極層が設けられているので、上方に第2表電極層が設けられた領域は、抵抗値を低くできるが、上方に第2表電極層が設けられていない領域は、そのような対策を取ることができないので、チップ抵抗器全体のTCRを十分低くすることができないという問題がある。
また、上記特許文献2においても、端子電極にはコートにカバーされた領域が存在するため、その領域ではTCRを低く抑えるための対策を取ることができない。
そこで、本発明は、抵抗体を保護しつつ、チップ抵抗器全体のTCRを十分低く抑えることができるチップ抵抗器を提供することを目的とするものである。
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、チップ抵抗器であって、絶縁基板と、絶縁基板の上面に設けられた抵抗体と、抵抗体における両端領域を除く領域を被覆する第1保護膜と、抵抗体の両端領域に接続して設けられた一対の電極部で、抵抗体における第1保護膜に被覆されていない両端領域を被覆するように形成され、一部が第1保護膜に乗り上げる状態で形成され、銀系厚膜又は銀パラジウム系厚膜により形成された一対の上面電極と、絶縁基板の側面に形成され、上面電極の上面の一部に積層して形成された断面略コ字状の側面電極と、電極部の外側を構成し、上面電極における側面電極から露出した領域で第1保護膜に乗り上げた領域を被覆するメッキで、複数のメッキ層を有し、複数のメッキ層における1つのメッキ層が銅メッキであるメッキと、を有する電極部と、第1保護膜の上面に設けられ、第1保護膜の上面領域の一部を被覆し、上面電極には接しない第2保護膜と、を有することを特徴とする。
この第1の構成のチップ抵抗器においては、第1保護膜が抵抗体の上面に形成され、さらに、上面電極が抵抗体の第1保護膜から露出した部分を被覆するとともに、第1保護膜に乗り上げる状態に形成されているので、上面電極は第1保護膜にカバーされておらず、また、電極部にはメッキが形成されているので、メッキの一部に抵抗値の低い銅メッキを設けることにより、電極部の抵抗値を低く抑えることができ、よって、電極部の全ての領域について、チップ抵抗器全体のTCRに与える影響を小さくすることができ、結果として、チップ抵抗器全体のTCRを十分小さくすることができる。つまり、上面電極は第1保護膜にカバーされていないので、TCRを低く抑えるための対策を取ることができない領域が存在せず、上面電極の全ての領域に対して、チップ抵抗器全体のTCRを低く抑えるための対策を取ることができ、チップ抵抗器全体のTCRを低く抑えることが可能となる。また、抵抗体は、第1保護膜や上面電極にカバーされているので、抵抗体を十分保護することが可能となる。よって、抵抗体を保護しつつ、チップ抵抗器全体のTCRを十分低く抑えることができるチップ抵抗器を提供することができる。また、複数のメッキ層における1つのメッキ層が銅メッキであるので、銅はNiメッキやSnメッキに比べて抵抗値が低く、メッキに銅を用いることにより、効率よく電極部の抵抗値を低くすることができる。また、第2保護膜が設けられているので、第1保護膜と抵抗体にトリミング溝を形成した場合に、トリミング溝を第2保護膜により被覆することが可能となる。
また、第2には、上記第1の構成において、抵抗体を被覆する上記第1保護膜が、ガラス系厚膜により形成されていることを特徴とする。
また、第3には、上記第1又は第2の構成において、抵抗体が、銀パラジウム系厚膜により形成されていることを特徴とする。つまり、銀パラジウム(AgPd)のTCRは、約0〜50×10-6/℃程度と低いので、抵抗体を銀パラジウム系材料により構成することにより、チップ抵抗器全体のTCRを低く抑えることができる。
また、第4の構成として以下の構成としてもよい。すなわち、「チップ抵抗器であって、絶縁基板と、絶縁基板の上面に設けられた抵抗体で、銀パラジウム系厚膜により形成された抵抗体と、抵抗体における両端領域を除く領域を被覆する第1保護膜で、ガラス系厚膜により形成された第1保護膜と、第1保護膜の上面領域の一部を被覆する第2保護膜と、抵抗体の両端領域に接続して設けられた一対の電極部で、抵抗体における第1保護膜に被覆されていない両端領域を被覆するように形成され、一部が第1保護膜に乗り上げる状態で形成された一対の上面電極で、銀系厚膜又は銀パラジウム系厚膜により形成された上面電極と、絶縁基板の下面の両側に形成された一対の下面電極と、上面電極と下面電極とに接続されるとともに断面略コ字状の側面電極と、上面電極と下面電極と側面電極とからなる構成の外面を被覆するように形成されたメッキで、複数のメッキ層からなり、最も内側のメッキ層が銅メッキであるメッキと、を有する電極部と、を有することを特徴とするチップ抵抗器。」としてもよい。
また、第5の構成として、以下の構成としてもよい。すなわち、「チップ抵抗器の製造方法であって、チップ抵抗器における絶縁基板の素体となる基板素体で、絶縁基板の複数個分の大きさを少なくとも有する基板素体の上面に抵抗体を形成する抵抗体形成工程と、各チップ抵抗器ごとの抵抗体の両端領域を除く領域を被覆するように第1保護膜を形成する第1保護膜形成工程と、抵抗体の両端領域を被覆するとともに、第1保護膜に乗り上げる状態に一対の上面電極を形成する上面電極形成工程と、抵抗体と第1保護膜とをトリミングしてトリミング溝を形成することにより抵抗体の抵抗値を調整する抵抗値調整工程と、第1保護膜の上面に第2保護膜を形成する第2保護膜形成工程で、トリミング溝を被覆するように第2保護膜を形成する第2保護膜形成工程と、基板素体を一次分割して、短冊状基板を形成する一次分割工程と、短冊状基板に対して側面電極を形成する側面電極形成工程と、側面電極が形成された短冊状基板を二次分割して、チップ片を形成する二次分割工程と、形成されたチップ片に対して、複数のメッキ層で、そのうちの1つが銅メッキであるメッキ層からなるメッキを形成するメッキ工程と、を有することを特徴とするチップ抵抗器の製造方法。」としてもよい。
上記第5の構成のチップ抵抗器の製造方法により製造されたチップ抵抗器によれば、第1保護膜が抵抗体の上面に形成され、さらに、上面電極が抵抗体の第1保護膜から露出した部分を被覆するとともに、第1保護膜に乗り上げる状態に形成されているので、上面電極は保護膜にカバーされておらず、また、電極部にはメッキが形成されているので、メッキの一部に抵抗値の低いメッキを設ける(例えば、銅メッキ)ことにより、電極部の抵抗値を低く抑えることができ、よって、電極部の全ての領域について、チップ抵抗器全体のTCRに与える影響を小さくすることができ、結果として、チップ抵抗器全体のTCRを十分小さくすることができる。つまり、上面電極は保護膜にカバーされていないので、TCRを低く抑えるための対策を取ることができない領域が存在せず、上面電極の全ての領域に対して、チップ抵抗器全体のTCRを低く抑えるための対策を取ることができ、チップ抵抗器全体のTCRを低く抑えることが可能となる。
本発明に基づくチップ抵抗器によれば、保護膜が抵抗体の上面に形成され、さらに、上面電極が抵抗体の保護膜から露出した部分を被覆するとともに、保護膜に乗り上げる状態に形成されているので、上面電極は保護膜にカバーされておらず、また、電極部にはメッキが形成されているので、メッキの一部に抵抗値の低いメッキを設ける(例えば、銅メッキ)ことにより、電極部の抵抗値を低く抑えることができ、よって、電極部の全ての領域について、チップ抵抗器全体のTCRに与える影響を小さくすることができ、結果として、チップ抵抗器全体のTCRを十分小さくすることができる。また、抵抗体は、保護膜や上面電極にカバーされているので、抵抗体を十分保護することが可能となる。よって、抵抗体を保護しつつ、チップ抵抗器全体のTCRを十分低く抑えることができるチップ抵抗器を提供することができる。また、複数のメッキ層における1つのメッキ層が銅メッキであるので、銅はNiメッキやSnメッキに比べて抵抗値が低く、メッキに銅を用いることにより、効率よく電極部の抵抗値を低くすることができる。また、第2保護膜が設けられているので、保護膜と抵抗体にトリミング溝を形成した場合に、トリミング溝を第2保護膜により被覆することが可能となる。
本発明においては、抵抗体を保護しつつ、チップ抵抗器全体のTCRを十分低く抑えることができるチップ抵抗器を提供するという目的を以下のようにして実現した。なお、図面において、Y1−Y2方向は、X1−X2方向に直角な方向であり、Z1−Z2方向は、X1−X2方向及びY1−Y2方向に直角な方向である。
本発明に基づくチップ抵抗器Aは、図1〜図3に示すように構成され、絶縁基板10と、抵抗体12と、第1保護膜14と、上面電極16と、第2保護膜18と、下面電極20と、側面電極22と、メッキ24とを有している。
ここで、チップ抵抗器Aについてさらに詳しく説明すると、絶縁基板10は、含有率96%程度のアルミナにて形成された絶縁体である。この絶縁基板10は、直方体形状を呈しており、平面視すると、略長方形形状を呈している。この絶縁基板10は、上記チップ抵抗器Aの基礎部材、すなわち、基体として用いられている。
また、抵抗体12は、図1に示すように、上記絶縁基板10の上面に設けられている。つまり、抵抗体12は、長手方向(電極間方向、通電方向としてもよい))(X1−X2方向)に矩形状の帯状に形成され、具体的には、絶縁基板10のX1側の端部からX2側の端部にまで帯状に形成されている(図1、図2参照)。また、抵抗体12は、Y1−Y2方向には、絶縁基板10の幅よりも小さく形成されていて、絶縁基板10の端部とは間隔が形成されている(図2参照)。この抵抗体12は、具体的には、銀パラジウム(AgPd)系厚膜(例えば、銀とパラジウムの相対比率が、重量%において、Ag:Pd=40:60〜50:50(好適には、45:55重量%)の銀パラジウム系厚膜)である。この抵抗体12は、上記チップ抵抗器Aとして電気的特性を担う機能素子である。なお、この抵抗体12には、トリミング溝T1が形成されている。
なお、抵抗体12の材料としては、他の材料でもよく、例えば、酸化ルテニウム系厚膜(例えば、酸化ルテニウム系メタルグレーズ厚膜)又は銅ニッケル系厚膜としてもよい。
また、第1保護膜(保護膜)14は、抵抗体12の一部と絶縁基板10の一部を被覆するように形成されている。すなわち、図1、図2に示すように、第1保護膜14は、平面視においては矩形状に形成され、Y1−Y2方向には、該絶縁基板10の幅と略同一(同一としてもよい)に形成され、さらに、X1−X2方向には、抵抗体12の長さよりも短く形成され、抵抗体12の両側は、第1保護膜14から露出している。つまり、第1保護膜14は、平面視において、図2のハッチング(つまり、右上から左下方向へのハッチング)に示す領域に設けられている。つまり、第1保護膜14は、抵抗体12の両端領域を除く領域を被覆している。すなわち、抵抗体12において第1保護膜14から露出した両側の端部領域が両端領域である。この第1保護膜14は、高温焼成(例えば、840℃〜860℃(好適には850℃))のガラス(ガラス系厚膜)により形成されている。例えば、第1保護膜14は、結晶化ガラス系厚膜により形成されている。なお、この第1保護膜14には、トリミング溝T2が形成されていて、この第1保護膜14は、トリミング可能な材料により形成されている。
また、上面電極16は、図1に示すように、主に、上記抵抗体12の上面の長手方向(X1−X2方向(図1参照))の両端部領域に一対形成されている。つまり、上面電極16は、抵抗体12の上面のX1側の端部から所定の長さに形成されているとともに、上面電極16は、抵抗体12の上面のX2側の端部から所定長さに形成されている。この上面電極16は、主として抵抗体12の上面に積層して形成されているが、内側の領域は、第1保護膜14に乗り上げる(つまり、積層する)状態で形成されている。また、上面電極16のY1−Y2方向の端部の領域の一部は、抵抗体12からはみ出ている関係で絶縁基板10の上面に形成されている。すなわち、上面電極16のY1−Y2方向の幅は、抵抗体12のY1−Y2方向の幅よりも若干大きく形成されていて、絶縁基板10のY1−Y2方向の幅よりも小さく形成されている。この上面電極16は、銀(Ag)系厚膜(具体的には、銀系メタルグレーズ厚膜)又は銀パラジウム系厚膜(具体的には、パラジウムの上面電極全体に対する含有率が、抵抗体よりは低い(例えば、パラジウムの含有率が0.5〜25重量%の銀パラジウム系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。
以上のように、第1保護膜14が抵抗体12の両側(つまり、両端領域)を除く領域をカバーし、さらに、上面電極16が、第1保護膜14から露出した抵抗体12の領域、つまり、両端領域をカバーしているので、抵抗体12を十分保護している。
また、第2保護膜18は、第1保護膜14の上面の領域の一部を被覆するように形成されている。すなわち、図1、図2に示すように、第2保護膜18は、平面視においては矩形状に形成され、Y1−Y2方向には、該絶縁基板10の幅よりも小さく、抵抗体12の幅よりも大きく形成されている。また、X1−X2方向には、一対の上面電極16間の長さよりも短く形成されている。つまり、第2保護膜18は、図2のハッチング(つまり、左上から右下方向へのハッチング)に示す領域に設けられている。すなわち、この第2保護膜18は、第1保護膜14のトリミング溝T2を被覆するために形成されるので、第1保護膜14のトリミング溝T2をカバーできる領域に形成すればよい。また、第2保護膜18は、ガラス(例えば、ホウ珪酸鉛ガラス系厚膜)又は樹脂(例えば、エポキシ、フェノール、シリコン等)により形成されている。なお、第2保護膜18は、電極部40を構成する各部(つまり、電極部40は、上面電極16と、下面電極20と、側面電極22と、メッキ24とにより構成される)には接していないが、第2保護膜18が第1保護膜14よりも小さく形成されていれば、電極部40を構成する各部と接していてもよい。
また、下面電極20は、図1に示すように、上記絶縁基板10の下面の長手方向(X1−X2方向(図1参照))の両端部領域に一対形成されている。つまり、下面電極20は、絶縁基板10の下面のX1側の端部から所定の長さに形成されているとともに、下面電極20は、絶縁基板10の下面のX2側の端部から所定の長さに形成されている。なお、下面電極20のY1−Y2方向の幅は、絶縁基板10のY1−Y2方向の幅と略同一(同一としてもよい)に形成されている。すなわち、下面電極20は、図3のハッチング(つまり、左上から右下方向へのハッチング)に示す領域に設けられている。この下面電極20は、銀系厚膜(具体的には、銀系メタルグレーズ厚膜)又は銀パラジウム系厚膜(具体的には、パラジウムの含有率が、抵抗体よりは低い銀パラジウム系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。
また、側面電極22は、上面電極16の一部と、下面電極20の一部と、絶縁基板10の上面の一部と、絶縁基板10の側面と、絶縁基板10の下面の一部を被覆するように断面略コ字状に層状に形成されている。この側面電極22は、X1側の端部とX2側の端部にそれぞれ設けられている。この側面電極22の上面部分は、X1−X2方向には上面電極16の長さよりも短く形成され、Y1−Y2方向には、絶縁基板10の幅と略同一(同一としてもよい)に形成されている。また、側面電極20の側面部分は、絶縁基板10の1つの側面(つまり、一方の側面電極20においてはX1側の側面であり、他方の側面電極20においてはX2側の側面)の全面と、Y1側とY2側の側面の一部に形成されている。また、側面電極22の下面部分は、X1−X2方向には下面電極20の長さよりも短く形成され、Y1−Y2方向には、絶縁基板10の幅と略同一(同一としてもよい)に形成されている。つまり、側面電極22の下面部分は、図3のハッチング(つまり、右上から左下方向へのハッチング)に示す領域に設けられている。なお、側面電極22は、銀系厚膜(具体的には、銀系メタルグレーズ厚膜)又は導電性樹脂(例えば、銀含有エポキシ樹脂)により形成されている。すなわち、焼成温度の関係で、第2保護膜18をガラスにより形成する場合には、側面電極22は銀系厚膜により形成されるが、第2保護膜18を樹脂により形成する場合には、側面電極22は該導電性樹脂により形成されることになる。
また、メッキ24は、銅メッキ26と、ニッケルメッキ28と、錫メッキ30とから構成されていて、X1側の端部とX2側の端部にそれぞれ設けられている。
銅メッキ26は、上面電極16の一部と、側面電極22と、下面電極20の一部とを被覆するように形成されている。つまり、上面電極16と側面電極22と下面電極20の露出部分を被覆するように形成されている。この銅メッキ26は、電気メッキにより略均一の膜厚で配設されている。この銅メッキ26は、電極部40の抵抗値を低く抑えて、チップ抵抗器全体のTCRを低く抑えるために形成されている。
また、ニッケルメッキ28は、銅メッキ26の表面を被覆するように形成され、電気メッキにより略均一の膜厚で配設されている。このニッケルメッキ28は、ニッケルにて形成されており、上面電極16等の内部電極のはんだ食われを防止するために形成されている。
また、錫メッキ30は、ニッケルメッキ28の表面を被覆するように形成され、電気メッキにより略均一の膜厚で配設されている。この錫メッキ30は、上記チップ抵抗器Aの配線基板へのはんだ付けを良好に行うために形成されている。なお、この錫メッキ30は、錫メッキ以外に、はんだが用いられる場合もある。
なお、図1に示すように、電極部40の上面の高さが、第2保護膜18の上面の高さ以上の高さに形成する(又は、電極部40の上面の高さを第2保護膜18の上面の高さよりも高く形成する)のが好ましい。つまり、チップ抵抗器Aを第2保護膜18側を下向きにして配線基板に実装できるようにすることにより、チップ抵抗器Aの抵抗体12と配線基板間の電流経路を短くでき、結果として、はんだを含めた抵抗値やTCRを低く抑えることが可能となる。
なお、図2は、チップ抵抗器Aを上面側から視認した場合の各部の配置を示す図であり、抵抗体12、第1保護膜14、上面電極16、第2保護膜18について平面視した際に、最外郭の輪郭を図示したものである。なお、実際には隠れて見えない部分を含めて、各部とも同様に表現している。同様に、図3は、チップ抵抗器Aを下面側から視認した場合の各部の配置を示す図であり、下面電極20、側面電極22について平面視した際に、最外郭の輪郭を図示したものである。なお、実際には隠れて見えない部分を含めて、各部とも同様に表現している。
上記構成のチップ抵抗器Aの製造方法について、図4〜図6等を使用して説明する。まず、予め一次スリットと二次スリットとが表裏両面に設けられた無垢のアルミナ基板(このアルミナ基板は、複数のチップ抵抗器の絶縁基板の大きさを少なくとも有する大判のものである)(基板素体)を用意し、このアルミナ基板の下面(裏面、底面としてもよい)に下面電極を形成する(図4のS11、下面電極形成工程)。つまり、下面電極用ペーストを印刷し、乾燥・焼成(840℃〜860℃(好適には850℃)による焼成)する。この場合の下面電極用ペーストは、銀系メタルグレーズペースト又は銀パラジウム系メタルグレーズペーストである。なお、この下面電極の形成に際しては、隣接するチップ抵抗器について同時に下面電極を形成する。つまり、X方向(このX方向は二次スリットの方向である)に隣接する2つのチップ抵抗器に対応するアルミナ基板の領域について、境界位置(つまり、一次スリット)となる位置を跨ぐように1つの印刷領域で下面電極を形成する。さらには、Y方向(このY方向は一次スリットの方向であり、X方向とは直角の方向である)には、帯状に連続して下面電極を形成する。
次に、該アルミナ基板の表側の面(すなわち、上面)(図5のW1参照)に抵抗体を形成する(図4のS12、図5のW2参照、抵抗体形成工程)。つまり、抵抗体ペーストを印刷した後に乾燥・焼成(840℃〜860℃(好適には850℃)による焼成)して抵抗体G12を形成する。なお、この抵抗体ペーストは、銀パラジウム系ペースト(具体的には、銀パラジウム系メタルグレーズペースト)である。なお、他の材料により抵抗体を形成してもよい。この抵抗体G12は、X方向の複数の抵抗体12分の抵抗体であり、抵抗体ペーストの印刷の際、アルミナ基板においてX方向(上面電極間方向)に抵抗体ペーストを帯状に連続して印刷する。つまり、アルミナ基板において、最終的に個々のチップ抵抗器となった場合のX方向に連なる一連の絶縁基板10の領域(これを「集合領域」とする。この集合領域は、基板素体における個々のチップ抵抗器形成領域が直線状に複数連なる領域であるともいえる)において、該集合領域の一方の端部から他方の端部にまで1本の帯状に抵抗体ペーストを印刷する。つまり、X方向に複数のチップ抵抗器分まとめて一連の帯状に抵抗体ペーストを印刷する。また、Y方向には、抵抗体ペーストは、絶縁基板10のY方向の幅よりも小さい幅に形成する。なお、図5においては、抵抗体G12については見やすくするためにハッチングを付して示してある。また、図5、図6は、アルミナ基板を上面側から見た状態を示す図である。
次に、第1保護膜G14を形成する(図4のS13、図5のW3参照、第1保護膜形成工程)。つまり、一対の一次スリットJ1間の所定領域にY方向に帯状に第1保護膜用ペーストを印刷した後に乾燥・焼成(840℃〜860℃(好適には850℃)による焼成)させる。なお、第1保護膜G14の焼成温度は、抵抗体G12の焼成温度と同じとするのが好ましい。この場合の第1保護膜用ペーストは、ガラスペーストである。以上のように、Y方向には複数のチップ抵抗器分まとめて一連の帯状に第1保護膜を形成する。なお、第1保護膜G14は、X方向には、1つのチップ抵抗器における抵抗体の両側が露出するように形成する。この第1保護膜G14は、第1保護膜14の複数分であるといえる。
次に、上面電極G16を形成する(図4のS14、図6のW4参照、上面電極形成工程)。すなわち、第1保護膜G14から露出している抵抗体G12をカバーし、一部が第1保護膜G14に乗り上げる状態に上面電極G16を矩形状に形成する。つまり、上面電極ペーストを印刷し、乾燥・焼成(840℃〜860℃(好適には850℃)による焼成)する。なお、上面電極G16の焼成温度は、抵抗体G12や第1保護膜G14の焼成温度と同じとするのが好ましい。この場合の上面電極ペーストは、銀系メタルグレーズペースト又は銀パラジウム系メタルグレーズペーストである。なお、図6において、上面電極G16は、チップ抵抗器Aにおける上面電極16の2つ分の上面電極である。つまり、チップ抵抗器となった場合に隣接するチップ抵抗器の上面電極で互いに隣接し合う上面電極については1つの印刷領域で形成する。また、上面電極G16は、Y方向には、抵抗体G12の幅よりも若干大きく形成する。
次に、抵抗体G12をトリミングして抵抗値を調整する(図4のS15、図6のW5参照、抵抗値調整工程)。つまり、レーザートリミングにより、第1保護膜G14と抵抗体G12とを同時にトリミングしてトリミング溝を形成する。
次に、第1保護膜G14の上面の領域の一部を被覆するように第2保護膜18を形成する(図4のS16、図6のW6参照、第2保護膜形成工程)。つまり、個々のチップ抵抗器の領域ごとに1つの第2保護膜18を矩形状に形成し、トリミング溝を被覆するようにする。つまり、個々のチップ抵抗器の領域ごとに第2保護膜用ペーストを印刷した後に乾燥・焼成(590℃〜610℃(好適には600℃)による焼成)させる。この場合の第2保護膜用ペーストは、ガラスペーストである。なお、第2保護膜18を樹脂により形成する場合には、樹脂ペーストを印刷し、乾燥・硬化(190℃〜210℃(好適には200℃)による硬化)させる。
その後は、一次スリットJ1に沿って一次分割する(図4のS17参照、一次分割工程)。つまり、抵抗体G12と第1保護膜G14と上面電極G16と第2保護膜18とが形成されたアルミナ基板5を一次スリットJ1に沿って分割して、1つの抵抗器分のアルミナ基板の部分を直線状に配列してなる短冊状基板を形成する。
次に、該短冊状基板に対して、側面電極を形成する(図4のS18参照、側面電極形成工程)。つまり、側面電極用ペーストを印刷し、乾燥・焼成(590℃〜610℃(好適には600℃)する。この場合の側面電極用ペーストは、銀系メタルグレーズペーストである。なお、第2保護膜18を樹脂により形成する場合には、この側面電極も樹脂、つまり、導電性樹脂(例えば、銀含有エポキシ樹脂)により形成するので、側面電極用ペーストとしての導電性樹脂ペーストを印刷し、乾燥・硬化する。また、スパッタ法により側面電極を金属薄膜で形成してもよい。その後、二次スリットに沿って二次分割して、チップ片を形成する(図4のS19参照、二次分割工程)。
次に、形成されたチップ片に対して、メッキを形成して、チップ抵抗器Aとする(図4のS20参照、メッキ工程)。つまり、銅メッキを形成し、その後、ニッケルメッキを形成し、その後、錫メッキを形成して、チップ抵抗器Aとする。
上記のように構成されるチップ抵抗器Aは、配線基板に実装して使用する。すなわち、通常のチップ抵抗器と同様に、チップ抵抗器Aと配線基板との間にはんだを介在させてチップ抵抗器Aを配線基板に接続させる。
なお、チップ抵抗器Aを配線基板に実装するに当たっては、チップ抵抗器Aを第2保護膜18を配線基板側として実装するのが好ましい。すなわち、第2保護膜18を配線基板側とすることにより、電極部40と配線基板間の電流経路を短くすることができ、よって、はんだの部分の温度変化による抵抗値変化の影響をなるべく小さくすることができ、結果として、チップ抵抗器Aとはんだとからなる構成におけるTCRを低く抑えることが可能となる。
本実施例のチップ抵抗器Aによれば、第1保護膜14が抵抗体12の上面に形成され、さらに、上面電極16が抵抗体12と第1保護膜14の上面に形成されているので、上面電極16は保護膜にカバーされておらず、また、上面電極16の上方にメッキ24が形成されているので、メッキの一部に抵抗値の低いメッキを設ける(つまり、銅メッキ26がこれに当たる)ことにより、電極部40の抵抗値を低く抑えることができ、よって、電極部40の全ての領域について、チップ抵抗器A全体のTCRに与える影響を小さくすることができ、結果として、チップ抵抗器全体のTCRを十分小さくすることができる。
つまり、上面電極16は、保護膜にカバーされていないので、TCRを低く抑えるための対策を取ることができない領域が存在せず、上面電極16の全ての領域に対して、チップ抵抗器全体のTCRを低く抑えるための対策(例えば、メッキの抵抗値を低くしたり、メッキ厚を厚くする)を取ることができ、チップ抵抗器全体のTCRを低く抑えることが可能となる。
ここで、銅メッキ26を設けた場合でも、上面電極16自体の抵抗値やTCRが低くなるわけではなく、また、電極部40全体のTCRが低くなるわけではないが、電極部40の抵抗値を低くできるので、電極部40自体のTCRが低くならなくても、電極部40のチップ抵抗器全体のTCRに与える影響を小さくできるので、チップ抵抗器全体としてTCRを低く抑えることができるのである。
特に、上面電極16を銀系厚膜により形成した場合でも、銀自体のTCRは高いものの、銅メッキ26が設けられていることにより、電極部40の抵抗値を低くでき、よって、電極部40のチップ抵抗器全体のTCRに与える影響を小さくできるので、チップ抵抗器全体としてTCRを低く抑えることができるのである。
また、抵抗体12は、保護膜(つまり、第1保護膜14と第2保護膜18)と、電極部40によりカバーされているので、抵抗体12を十分保護することができる。
なお、上記の構成においては、抵抗体12は、絶縁基板10の上面の端部から端部まで形成されているとして説明したが、図7のチップ抵抗器A’に示すように、抵抗体12のX1の端部とX2側の端部が絶縁基板10の上面の端部にまで形成されていない構成としてもよい。
この場合には、チップ抵抗器の製造に際しては、当然、抵抗体を各チップ抵抗器ごとに長方形状に独立して形成して、抵抗体が一次スリットに至らないようにすることになる。
また、上記の説明において、基本的に、抵抗体12をAgPd系厚膜、上面電極16をAg系厚膜として説明したが、これに限らず、抵抗体12をCuNi系厚膜、上面電極16をCu系厚膜としてもよい。
また、上記の説明において、第1保護膜14を高温焼成のガラスにより形成するものとしたが、低温焼成(具体的には、590℃〜610℃(好適には600℃))のホウ珪酸鉛ガラスにより形成してもよい。なお、第1保護膜14に低温焼成ガラスを使用する場合には、上面電極16は、第1保護膜14と同様の焼成温度の銀系厚膜若しくは銀パラジウム系厚膜とする。