JP4597138B2 - 無段変速機の前後進切替装置 - Google Patents
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Description
前後進切替装置を構成する遊星歯車機構100のサンギヤ101は入力軸102に結合され、サンギヤ101とかみ合うピニオンギヤ103はピニオン軸104を介してキャリア105によって支持されている。キャリア105の前側には円板状のキャリアプレート106が固定され、その内径側を入力軸102に回転自在に支持するとともに、その外径側を逆転ブレーキ107のブレーキハブ106aとして使用し、さらに中間部に直結クラッチ108のクラッチバブ106bを固着している。直結クラッチ108のクラッチディスクを締結する油圧ピストン109はクラッチドラム110の中に配置され、クラッチドラム110の内周端部が入力軸102に連結されている。逆転ブレーキ107のブレーキディスクを締結する油圧ピストン111は変速機ケース112に内壁に形成された凹部113に収容されている。ピニオンギヤ103とかみ合うリングギヤ114の内径部は駆動プーリ115のプーリ軸116の内側にスプライン嵌合している。
さらに、クラッチドラム110を入力軸102に連結するため、クラッチドラム110を多段階に屈曲した形状に加工しなければならず、構造が複雑で、加工コストがかかるとともに、トルク伝達上も好ましくないという問題がある。
この無段変速機は、4軸構成とされたものであり、入力軸と駆動プーリとの間に前後進切替装置が設けられ、従動プーリからリダクションギヤを介してデファレンシャル装置へと動力が伝達される。
前進時には、直結クラッチを締結することにより、入力軸と駆動プーリとが直結され、入力軸の回転がそのまま駆動プーリへ伝達され、従動プーリ、リダクションギヤを介してデファレンシャル装置へと伝達される。後進時には、逆転ブレーキを締結することにより、入力軸の回転が逆転されて駆動プーリへと伝達され、従動プーリ、リダクションギヤを介してデファレンシャル装置へと伝達される。
また、本発明の第2実施形態は、遊星歯車機構と逆転ブレーキと直結クラッチとを備え、上記遊星歯車機構のサンギヤが入力部材に結合され、キャリアが出力部材に結合され、上記逆転ブレーキは上記リングギヤと変速機ケースとの間に設けられ、上記直結クラッチは上記キャリアと上記入力部材との間に設けられ、上記逆転ブレーキと直結クラッチとを選択的に締結させることにより前後進切替えを行う無段変速機の前後進切替装置において、上記キャリアには、内周に直結クラッチのクラッチディスクの外周部と係合する内スプラインを有する円筒部が設けられ、上記サンギヤには、外周に直結クラッチのクラッチディスクの内周部と係合する外スプラインを有する円筒部が設けられ、上記直結クラッチを締結する油圧アクチュエータは、変速機ケースあるいは変速機ケースに固定された静止部材に設けられ、上記油圧アクチュエータのピストンと直結クラッチのクラッチディスクとの間に、両者の相対回転を許容し軸方向圧力を伝達するスラストベアリングが配置されていることを特徴とする無段変速機の前後進切替装置を提供する。
この場合には、逆転ブレーキを締結し直結クラッチを解放することにより、入力側(例えばトルクコンバータ)から入力される駆動力が逆転されかつ減速されて出力側(例えば駆動プーリ)へ伝達され、前進駆動状態となる。逆に、直結クラッチを締結し逆転ブレーキを解放することにより、入力側と出力側とが直結され、後進駆動状態となる。そのため、3軸構成でコンパクトな無段変速機を実現できる。
静止部材に油圧アクチュエータを設ける関係で、油圧ピストンも回転しない。したがって、油圧ピストンを直結クラッチのクラッチディスクに圧接させる際、両者の間に相対回転が生じる。そこで、クラッチディスクと油圧ピストンとの間にスラストベアリングを配置している。これにより、ピストンの軸方向圧力はクラッチディスクに効果的に伝達され、かつピストンがクラッチディスクと連れ回りするのが防止される。
本発明でクラッチディスクとは、摩擦ディスクとプレート部材の両方を含むものである。
なお、スラストベアリングは、ピストンとクラッチディスクとの相対回転を許容し、かつ軸方向力を伝達するものであればよく、ローラベアリングやボールベアリングなど、任意のベアリングを使用することができる。
直結クラッチをキャリアより前側(エンジン側)に配置した場合、直結クラッチの前側に隣接して変速機ケースに固定されたオイルポンプカバーが位置していることがある。このオイルポンプカバーの背面側に油圧アクチュエータのシリンダ部を形成すれば、シリンダ部をオイルポンプカバー内に埋没させることができ、軸方向寸法を短縮できる。
また、油圧アクチュエータのシリンダ部をオイルポンプカバーの背面部に形成することで、油圧アクチュエータの油圧反力がオイルポンプカバーをオイルポンボデー側へ押す働きを持ち、オイルポンプのシール性が向上するという利点がある。
特許文献1では、キャリアの前側に円板状のキャリアプレートを固定し、その内径側を入力軸に回転自在に支持するとともに、その外径側を逆転ブレーキのブレーキハブとして使用し、さらに中間部に直結クラッチのクラッチバブを固着している。このようにキャリアに2つのハブを設ける必要があり、構造が複雑になるとともに、ハブの強度を確保するのが難しかった。
これに対し、キャリアにブレーキハブとクラッチドラムとを兼ねる円筒部を設ければ、円筒部は1個で済み、構造が簡素になるだけでなく、円筒部の機械的強度も容易に確保でき、トルク伝達性能が向上する。特に、外スプラインと内スプラインとを軸方向にオーバーラップする位置に形成すれば、キャリア、直結クラッチおよび逆転ブレーキを含む前後進切替装置の軸方向寸法をさらに短縮できる。
この場合には、ピニオン穴を円筒部の内周面に近い位置に形成することができるので、前後進切替装置の半径方向の寸法を短縮することができる。
特許文献1では、直結クラッチは入力軸に連結されたクラッチドラムとキャリアとの間に設けられている。そのため、複雑な形状のクラッチドラムが必要になり、直結クラッチの構造が複雑で大きなスペースを占めるという欠点がある。
これに対し、直結クラッチのクラッチハブとなる円筒部をサンギヤの軸方向端部に設け、直結クラッチをサンギヤとキャリアとの間に設ければ、キャリアの円筒部との相乗効果により、クラッチドラムのような複雑な構造の部品が不要となり、前後進切替装置を簡素化できると同時に、装置自体を小型化できる。
ブレーキディスクは油圧ピストンによって押されるので、その軸方向端部を支えるために、変速機ケースにスナップリングを装着するのが一般的である。しかし、スナップリングを嵌合させる溝と圧力がかかる部分とが半径方向にオフセットしているため、スナップリングに捩れなどの変形が発生しやすい。そのため、スナップリングの内側に厚肉なフランジ部品を配置する必要があり、スペース効率が悪いという問題がある。
これに対し、ブレーキディスクの軸方向端部を変速機ケースに固定された静止部材で支えるようにすれば、スナップリングが不要になるとともに、油圧ピストンの圧力を軸方向に対向して支えることができるので、ブレーキディスクの変形が少なく、耐久性が向上するという利点がある。
ストッパ部を設ける静止部材としては、逆転ブレーキのブレーキディスクを間にして油圧ピストンと対向する位置に配置された静止部材を用いることになる。油圧ピストンを遊星歯車機構より後側(反エンジン側)に配置した場合、静止部材は遊星歯車機構より前側(エンジン側)に配置される。このような静止部材としては、例えばオイルポンプカバーを使用することができる。
本発明でブレーキディスクとは、摩擦ディスクとプレート部材の両方を含むものである。
直結クラッチの油圧アクチュエータが静止部材に設けられているので、油圧アクチュエータからの押圧力を受けてクラッチディスクが押される。その軸方向端部を、従来のようなスナップリングで支持すると、上記と同様の問題が発生する。
これに対し、キャリアにストッパ部を設けることで、スナップリングが不要になるとともに、油圧ピストンの圧力を軸方向に対向して支えることができるので、クラッチディスクの変形が少なく、耐久性が向上するという利点がある。
この実施例の無段変速機はFF横置き式の自動車用変速機であり、大略、エンジン出力軸1によりトルクコンバータ2を介して駆動される入力軸3、入力軸3の回転を正逆切り替えて駆動軸10に伝達する前後進切替装置4、駆動プーリ11と従動プーリ21と両プーリ間に巻き掛けられたVベルト15とからなる無段変速装置A、従動軸20の動力を出力軸32に伝達するデファレンシャル装置30などで構成されている。入力軸3と駆動軸10とは同一軸線上に配置され、従動軸20とデファレンシャル装置30の出力軸32とが入力軸3に対して平行でかつ非同軸に配置されている。したがって、この無段変速機は全体として3軸構成とされている。
この実施例で用いられるVベルト15は、一対の無端状張力帯と、これら張力帯に支持された多数のブロックとで構成された公知の金属ベルトである。
なお、前後進切替装置4の具体的構造については後述する。
キャリア44は円盤状のキャリアフランジ45と円環状のキャリアリム46とで構成されており、キャリアフランジ45の内径部はサンギヤ41とリングギヤ42との間を内径方向に延び、入力軸3に回転自在に支持されている。キャリアフランジ45にはキャリアリム46に向かって軸方向に突出する複数(ここでは6個)の柱状部45aが一体に形成され、これら柱状部45aの間の空間に上記ピニオンギヤ43が配置されている。上記柱状部45aの先端面とキャリアリム46とは焼結にて金属結合され、キャリアフランジ45とキャリアリム46とは一体的に固定されている。なお、溶接、ロー付、ネジ止めなどによって固定してもよい。
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そのため、ピニオン穴46aを円筒部46bの内周面に近い位置に形成することができ、前後進切替装置4の半径方向の寸法を短縮することができる。
一方、直結クラッチ51を締結し逆転ブレーキ50を解放すれば、遊星歯車機構40の入力側(サンギヤ41)と出力側(リングギヤ42)とが直結されるため、トルクコンバータ2から入力された駆動力がそのまま駆動プーリ11へ伝達され、従動プーリ21およびデファレンシャル装置30を介して出力軸32がエンジン回転方向と逆方向に駆動され、後進駆動状態となる。
このように、3軸構成でコンパクトな無段変速機を実現できる。
また、キャリア44に逆転ブレーキ50のブレーキハブと直結クラッチ51のクラッチドラムとを兼ねる円筒部46bが設けられているため、キャリアに1個の円筒部46bを設けるだけで済み、構造が簡素になるだけでなく、円筒部46bの機械的強度も容易に確保できる。さらに、半径方向の無駄なスペースを生じさせない。
さらに、サンギヤ41に直結クラッチ51のクラッチハブとなる円筒部41aが設けられているので、直結クラッチ51の構造がさらに簡素化され、構成部品を少なくでき、前後進切替装置のさらなるコンパクト化が可能になる。
この遊星歯車機構40’はダブルピニオン方式とされ、キャリア44に2種類のピニオン43A,43Bが支持されている。一方のピニオン43Aはリングギヤ42とピニオン43Bとに噛み合い、他方のピニオン43Bはピニオン43Aとサンギヤ41とに噛み合っている。サンギヤ41は入力軸3と結合され、キャリア44は駆動軸10と結合されている。逆転ブレーキ50はリングギヤ42と変速機ケース5との間に設けられ、逆転ブレーキ50を作動させる油圧ピストン50bは変速機ケース5内に配置されている。直結クラッチ51はキャリア44とサンギヤ41との間に設けられ、直結クラッチ51を作動させる油圧ピストン51cはオイルポンプカバー8に収容されている。油圧ピストン51cと直結クラッチ51のクラッチディスクとの間には、スラストベアリング52が配置されている。
また、直結クラッチ51がキャリア44と入力軸3との間ではなく、キャリア44とサンギヤ41との間に設けられるので、複雑な形状のクラッチドラムを省略でき、構造を簡素化でき、小型の直結クラッチ51を構成できる。
上記実施例では、遊星歯車機構40のキャリアフランジ45に柱状部45aを一体に形成し、柱状部45aの端部に円環状のキャリアリム46を固定した例を示したが、柱状部をキャリアリム46側に設け、柱状部の端部にキャリアフランジ45を固定してもよい。
上記実施例では、直結クラッチ51を締結する油圧アクチュエータのシリンダ部をオイルポンプカバー8に形成したが、変速機ケース5に直接設けることも可能であるし、オイルポンプカバー8以外の静止部材に設けることもできる。
Claims (8)
- 遊星歯車機構と逆転ブレーキと直結クラッチとを備え、
上記遊星歯車機構のサンギヤが入力部材に結合され、リングギヤが出力部材に結合され、
上記逆転ブレーキは上記キャリアと変速機ケースとの間に設けられ、上記直結クラッチは上記キャリアと上記入力部材との間に設けられ、
上記逆転ブレーキと直結クラッチとを選択的に締結させることにより前後進切替えを行う無段変速機の前後進切替装置において、
上記キャリアには、内周に直結クラッチのクラッチディスクの外周部と係合する内スプラインを有する円筒部が設けられ、
上記サンギヤには、外周に直結クラッチのクラッチディスクの内周部と係合する外スプラインを有する円筒部が設けられ、
上記直結クラッチを締結する油圧アクチュエータは、変速機ケースあるいは変速機ケースに固定された静止部材に設けられ、
上記油圧アクチュエータのピストンと直結クラッチのクラッチディスクとの間に、両者の相対回転を許容し軸方向圧力を伝達するスラストベアリングが配置されていることを特徴とする無段変速機の前後進切替装置。 - 遊星歯車機構と逆転ブレーキと直結クラッチとを備え、
上記遊星歯車機構のサンギヤが入力部材に結合され、キャリアが出力部材に結合され、
上記逆転ブレーキは上記リングギヤと変速機ケースとの間に設けられ、上記直結クラッチは上記キャリアと上記入力部材との間に設けられ、
上記逆転ブレーキと直結クラッチとを選択的に締結させることにより前後進切替えを行う無段変速機の前後進切替装置において、
上記キャリアには、内周に直結クラッチのクラッチディスクの外周部と係合する内スプラインを有する円筒部が設けられ、
上記サンギヤには、外周に直結クラッチのクラッチディスクの内周部と係合する外スプラインを有する円筒部が設けられ、
上記直結クラッチを締結する油圧アクチュエータは、変速機ケースあるいは変速機ケースに固定された静止部材に設けられ、
上記油圧アクチュエータのピストンと直結クラッチのクラッチディスクとの間に、両者の相対回転を許容し軸方向圧力を伝達するスラストベアリングが配置されていることを特徴とする無段変速機の前後進切替装置。 - 上記直結クラッチを締結する油圧アクチュエータのシリンダ部は、変速機ケースに固定され、かつ直結クラッチと軸方向に隣接して配置されたオイルポンプカバーの背面部に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の無段変速機の前後進切替装置。
- 上記キャリアの円筒部の外周には、逆転ブレーキのブレーキディスクの内周部と係合する外スプラインが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の前後進切替装置。
- 上記キャリアの円筒部の外スプラインと内スプラインとが軸方向にオーバーラップする位置に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の無段変速機の前後進切替装置。
- 上記キャリアの円筒部の内周には、上記内スプラインが欠如した欠歯部が設けられ、ピニオン軸を支持するピニオン穴は上記欠歯部と周方向に対応する位置に形成され、ピニオン穴と欠歯部の底面との半径方向の間隔Rは、内スプラインの高さTより小さいことを特徴とする請求項5または6に記載の無段変速機の前後進切替装置。
- 上記逆転ブレーキのブレーキディスクの軸方向端部を支えるストッパ部は、上記変速機ケースに固定された静止部材に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の無段変速機の前後進切替装置。
- 上記直結クラッチのクラッチディスクの軸方向端部を支えるストッパ部は、上記遊星歯車機構のキャリアに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の無段変速機の前後進切替装置。
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