JP4587503B2 - 半導体レーザ素子搭載用基板および半導体レーザモジュール - Google Patents

半導体レーザ素子搭載用基板および半導体レーザモジュール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザ素子を搭載するとともに温度調節機能を有する半導体レーザ素子搭載用基板、およびこれを使用した光通信用の半導体レーザモジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光通信用の半導体レーザ(Laser Diode で、以下、LDと略す)モジュールに使用されるLD素子は、その発振波長や光出力等がLD素子の温度により変化することが判っている。従って、LD素子を安定して作動させるためには、LD素子の温度を所定の温度に制御することが必要となる。従来より、LD素子の温度制御は、LD素子の温度を測定するための測温素子と、この測温素子が測定した温度情報を基にLD素子の冷却または加熱を行なうためのペルチェ素子とにより行なわれている。そして、このような測温素子およびペルチェ素子は、LD素子とともに気密封止が可能なパッケージ内に収められてLDモジュールを構成する。
【0003】
ここで、従来のLDモジュールを図6に断面図で示す。従来のLDモジュールは、基体21と蓋体22とから成るパッケージ20の内部に、ペルチェ素子23,LD素子24および測温素子25を気密に収容して成る。なお、LD素子24および測温素子25は、これらを搭載するためのLD素子搭載用基板(サブキャリア)26の上に配置されている。パッケージ20を構成する基体21は、酸化アルミニウム(Al2 3 )質焼結体等のセラミックスや銅(Cu)−タングステン(W)合金,鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金等の金属から成り、主として平板状の底板部21aと枠状の側壁部21bとから構成され、上面が開口された箱状となっている。基体21の底板部21aの上面にはペルチェ素子23が搭載固定されており、このペルチェ素子23の上面には、LD素子24および測温素子25がLD素子搭載用基板26の上に配置された状態で搭載されている。
【0004】
また、基体21の側壁部21bには、鉄−ニッケル合金や鉄−ニッケル−コバルト合金等の金属から成る光ファイバ固定部材としてのパイプ27が取着されており、このパイプ27の内部には光ファイバ28が挿通されLD素子24と光学的に結合した状態で固定されている。光ファイバ28は、その先端の光入出射端がLD素子24と対向して配置されており、LD素子24からのレーザ光を光ファイバ28を介して外部に伝送できるようになっている。
【0005】
さらに、基体21の底板部21aまたは側壁部21bには、リード端子29が固定されており、このリード端子29は、ペルチェ素子23やLD素子24,測温素子25と電気的に接続されている。
【0006】
また、蓋体22は、鉄−ニッケル−コバルト合金や鉄−ニッケル合金等の金属から成る平板状のものであり、基体21の側壁部21bの上面に例えばシーム溶接法により接合されることにより、基体21と蓋体22とから成るパッケージを構成し、その内部にペルチェ素子23およびLD素子24ならびに測温素子25を収納し、気密に封止している。
【0007】
この従来のLDモジュールにおいて使用されるLD素子搭載用基板(以下LD基板と略す)26について、図7を用いてより詳細に説明する。図7は、図6のLD基板26とその上に配置されたLD素子24および測温素子25とを示す斜視図である。LD基板26は、例えば酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料から成る基板30の上面の一端側に、LD素子24を搭載するための金属薄膜から成る搭載部31を有している。搭載部31を構成する金属薄膜は、例えばチタン(Ti)膜,白金(Pt)膜,金(Au)膜からなる3層構造の金属薄膜である。この搭載部31の上に、LD素子24が例えば金(Au)−錫(Sn)合金から成るろう材を介して固定されている。LD基板26はまた、その裏面にも例えばチタン膜,白金膜,金膜からなる3層構造の金属薄膜(不図示)が略全面に被着されており、この裏面の金属薄膜とペルチェ素子23とをろう付けすることによりLD基板26がペルチェ素子23上に接合固定されている。
【0008】
なお、測温素子25は、例えばサーミスタから成り、基板30の上面の光ファイバと反対側にLD素子24に隣接して搭載されている。この測温素子25は、温度によってその電気抵抗値が変化し、その電気抵抗値の変化をリード端子29を介して外部の制御回路に伝え、この制御回路からの指示でペルチェ素子23を駆動することによりLD素子24を所定の温度に制御する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のLDモジュールにおいては、LD素子24は作動時には発熱して高温となり、作動停止時にはその温度が下がる。そこで、LD素子24の作動時にはLD素子24を冷却し、逆に作動停止時には加熱しなければならない。しかしながら、ペルチェ素子23はある程度の熱容量を有することおよびLD素子24との間にLD基板26を介していることから、ペルチェ素子23による冷却状態と加熱状態とがすぐには切り替わらずに、例えばLD素子24の作動開始時等にLD素子24が定温状態となるまでに時間がかかり、迅速、かつ高精度なLD素子24の作動および温度制御を行なうことが困難であるという問題点を有していた。また、LD基板26上面の光ファイバと反対側に例えばサーミスタ等から成る測温素子25がLD素子24に隣接して搭載されており、このため、LD基板6上に搭載される部品点数が多く、モジュールの組み立てが煩雑であるという問題点を有していた。
【0010】
本発明はかかる従来の問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、迅速でかつ高精度な作動および温度制御を行なうことが可能なLD素子搭載用基板およびLDモジュールを提供することにある。また本発明の別の目的は、LD基板に搭載される部品点数を少なくし、組み立てが簡単なLDモジュールを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体レーザ素子搭載用基板は、絶縁基板上に半導体レーザ素子を搭載する搭載部を有するとともに、該搭載部直下の絶縁基板内部に発熱抵抗体が埋設されており、かつ前記絶縁基板の内部または上面に測温抵抗体が形成されており、該測温抵抗体は、平面視で前記発熱抵抗体と重ならないように、前記搭載部を取り囲むように設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のLDモジュールは、上記の半導体レーザ素子搭載用基板上に半導体レーザ素子を搭載するとともに、これらを気密封止されたパッケージの内部にペルチェ素子を介して収容して成ることを特徴とする。
【0013】
本発明のLD基板およびLDモジュールによれば、LD素子が搭載されるLD基板の搭載部の直下に発熱抵抗体が埋設されていることから、この発熱抵抗体により加熱することによって、作動停止時のLD素子を常に作動時と同様の高温となしておくことができ、これによりLD素子の作動開始時等に迅速かつ高精度な作動開始および温度制御を行なうことができる。また、LD基板の絶縁基板の内部または上面に測温抵抗体が形成されており、この測温抵抗体は、平面視で発熱抵抗体と重ならないように、搭載部を取り囲むように設けられていることから、この測温抵抗体を測温素子として利用することにより、LD基板上にサーミスタ等の測温素子を搭載する必要がなく、LD基板に搭載される部品点数を少なくしてモジュールの組み立てを容易とすることができる。また、測温抵抗体は、平面視で発熱抵抗体と重ならないように、搭載部を取り囲むように設けられていることから、LD素子からの熱を略均一に受けることができ、迅速かつ精度の高い測温が可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を添付の図面を基に詳細に説明する。図1は、本発明のLD基板およびこれを使用したLDモジュールの実施形態の一例を示す断面図であり、本発明のLDモジュールは、基本的に、基体1と蓋体2とから成るパッケージの内部にペルチェ素子3,LD素子4,測温抵抗体5ならびにLD基板6を気密に収容して成る。
【0015】
パッケージを構成する基体1は、酸化アルミニウム(Al2 3 )質焼結体や窒化アルミニウム(AlN)質焼結体,ムライト(3Al2 3 ,2SiO2 )質焼結体,炭化珪素(SiC)質焼結体,窒化珪素(Si3 4 )質焼結体,ガラスセラミックス等のセラミックス材料、あるいは銅を含浸させたタングステン多孔質体や鉄−ニッケル合金,鉄−ニッケル−コバルト合金等の金属から成り、基体1の主要部は略平板状の底板部1aと枠状の側壁部1bとから構成されている。なお、底板部1aと側壁部1bとは同じ材料から形成されていてもよいし、互いに異なる材料から形成されていてもよい。ただし、底板部1aと側壁部1bとを互いに異なる材料で形成する場合には、両者の熱膨張係数の差ができるだけ小さいものとなる組み合わせを選択することが好ましい。
【0016】
基体1の底板部1aの上面には、ペルチェ素子3が搭載固定される。ペルチェ素子3は、LD素子4を所定の温度に冷却するための熱ポンプとして機能し、測温抵抗体5により測定したLD素子4の温度情報を基にLD素子4が所定の温度となるように冷却する。そして、このペルチェ素子3の上面には、LD基板6が搭載固定されており、このLD基板6上にはLD素子4および測温抵抗体5が配置されている。なお、この例では測温抵抗体5は基板6の上面に被着形成されている。
【0017】
LD基板6は、本発明の参考例を示す図2に斜視図で示すように、酸化アルミニウム質焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,炭化珪素質焼結体,窒化珪素質焼結体,ガラスセラミックス等の電気絶縁性の材料から成る、長方形等の四角平板状の2層の絶縁層7a,7bを、積層一体化した絶縁基板7の上面にLD素子4を搭載するための搭載部8および測温抵抗体5を有するとともに、搭載部直下で絶縁層7aと7bとの間にLD素子4を加熱するための発熱抵抗体9が埋設されて成る。この基板6は、下層の絶縁層7bの測温抵抗体5側の一端部が上層の絶縁層7aから突出しており、この突出部の上面に発熱抵抗体9の両端部が導出している。また、絶縁基板7の下面には、LD基板6をペルチェ素子3に接合するための接合用金属層(不図示)が被着されている。なお、図2では絶縁基板7が絶縁層7a,7bを積層させた構造であるが、3層以上の絶縁層を積層させた構造としても構わない。
【0018】
絶縁基板7は、例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合、酸化アルミニウム,酸化珪素,酸化マグネシウム,酸化カルシウム等のセラミック粉末に適当な有機バインダ,溶剤を添加混合して得た泥漿状のペーストを、公知のドクタブレード法によりシート状に成形することにより、絶縁層7a,7b用の2枚のセラミックグリーンシートを準備し、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工や切断加工を施した後、上下に積層し、この成形体を約1600℃の温度で焼成することによって製作される。
【0019】
なお、絶縁基板7は、窒化アルミニウム質焼結体や炭化珪素質焼結体,窒化珪素質焼結体で形成すると、これらの材料はその熱伝導率が40W/m・K以上と高いため、LD基板6上に搭載されるLD素子4とペルチェ素子3との間の熱伝達を良好に行なうことができ、LD素子4の温度制御を迅速に行なうことが可能となる。
【0020】
絶縁基板7の上面に配設された搭載部8は、絶縁基板7にLD素子4を接合するための下地金属として機能し、その上面にはLD素子4が金−錫合金等の低融点ろう材を介して取着される。
【0021】
この搭載部8は、例えば絶縁基板7の側からチタン膜,白金膜,金膜の順で積層された3層構造の金属薄膜から形成されている。チタン膜は、絶縁基板7に対する密着金属であり、その厚みが好ましくは100〜2000オングストローム(Å)程度である。チタン膜の厚みが100オングストローム未満では、絶縁基体7に強固に密着することが困難となる傾向にあり、2000オングストロームを超えると、成膜時に発生する内部応力によって剥離が発生しやすくなる。また、白金膜はチタン膜中のチタンが金膜に拡散するのを防止するバリア層であり、その厚みが好ましくは500〜10000オングストローム程度である。白金膜の厚みが500オングストローム未満では、チタン膜中のチタンが金膜に拡散するのを十分に防止することが困難となる傾向にあり、10000オングストロームを超えると、成膜時に発生する内部応力によって剥離が発生しやすくなる。さらに、金膜は、搭載部8にLD素子4を取着する際のろう材との濡れ性を向上させるためのものであり、その厚みが好ましくは1000〜50000オングストローム程度である。金膜の厚みが1000オングストローム未満では、ろう材に対する十分な濡れ性が得られなくなる傾向にあり、50000オングストロームを超えると、成膜時に発生する内部応力によって剥離が発生しやすくなる。
【0022】
なお、このような搭載部8用のチタン膜,白金膜,金膜は、スパッタリング法やイオンプレーティング法,蒸着法等の公知の薄膜成形技術を採用することによって、これらの金属膜を絶縁基板7の上面に被着させるとともに、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて所定のパターンにエッチングすることによって形成される。
【0023】
また、絶縁基板7の上面に形成された測温抵抗体5は、搭載部8に搭載されたLD素子4の温度を測定するための測温素子として機能し、例えばチタン膜と白金膜とが積層された2層構造の金属薄膜からなる。チタン膜は、絶縁基板7に対する密着金属であり、その厚みが好ましくは100〜2000オングストローム程度である。チタン膜の厚みが100オングストローム未満では、絶縁基体7に強固に密着することが困難となる傾向にあり、2000オングストロームを超えると、成膜時に発生する内部応力によって剥離が発生しやすくなる。また、白金膜は主要抵抗体として機能し、その厚みが好ましくは500〜10000オングストローム程度である。白金膜の厚みが500オングストローム未満では、白金膜にピンホール等の欠陥が発生しやすく、均質な測温抵抗体5を得ることが困難となる傾向にあり、10000オングストロームを超えると、成膜時に発生する内部応力によって剥離が発生しやすくなる。この金属薄膜から成る測温抵抗体5は、その電気抵抗値が温度によって変化するので、電気抵抗値を測定することによってLD素子4の温度を知ることができる。
【0024】
そして、この本発明の参考例のLD基板6においては、測温抵抗体5は線状または帯状であり、絶縁基板7の上面の搭載部8に隣接してつづら折り状のパターンに被着形成されている。このように、測温抵抗体5が絶縁基板7の上面に被着形成されているので、LD基板6の上にサーミスタ等の測温素子を搭載する必要がない。したがって、LDモジュールの組み立てが極めて簡単になる。測温抵抗体5の幅は、0.01〜1mm程度が好ましい。測温抵抗体5の幅が0.01mm未満では、測温抵抗体5に断線が発生するおそれが高くなる。他方1mmを超えると、測温抵抗体5の電気抵抗値が小さくなり過ぎて測温の精度が低下する。そして、測温抵抗体の長さは、0.5〜50mm程度が好ましい。測温抵抗体5の長さが0.5mm未満では、測温抵抗体としての十分な電気抵抗値を得るのが困難となる傾向にあり、他方50mmを超えると、そのような長い測温抵抗体を絶縁基板7の上面に設けるために基板6が大型化してしまう。また、測温抵抗体5はその入出力用の両端部に外部の制御回路等に電気的に接続される端子電極5aが形成されている。この端子電極5aは、測温抵抗体5の両端部に例えば金の薄膜を被着させて成る。そして、測温抵抗体5は、例えばチタン膜と白金膜とが積層された2層構造の金属薄膜から成る場合、絶縁基板7の上面にチタン膜,白金膜,金膜をスパッタリング法やイオンプレーティング法、蒸着法等の薄膜形成技術により順次被着させるとともに、これらをフォトリソグラフィ技術により所定のパターンにエッチングすることによって搭載部8と同時に絶縁基板7の上面に形成される。
【0025】
また、絶縁基板7の搭載部8直下に埋設された発熱抵抗体9は、LD素子4を加熱するための発熱抵抗体であり、例えばタングステン(W),モリブデン(Mo),タングステン(W)−モリブデン(Mo)合金,タングステン(W)−レニウム合金(Re),白金(Pt)等の抵抗体材料から成る。このように、LD基板6には、搭載部8の直下に発熱抵抗体9が配置されていることから、LD素子4の作動停止時に発熱抵抗体9を発熱させてLD素子4を作動時と同様の高温としておくことができ、その結果LD素子4の作動開始時に迅速かつ高精度の作動開始および温度制御を行なうことができ、半導体レーザ素子4を常に安定、かつ確実に作動させることが可能となる。
【0026】
発熱抵抗体9は、例えばタングステン−モリブデン合金から成る場合であれば、10〜90重量%のタングステン粉末および10〜90重量%のモリブデン粉末に適当な有機バインダ,溶剤を添加混合して得た抵抗体ペーストを絶縁基板7用のセラミックグリーンシートに公知のスクリーン印刷法により所定のパターンに印刷塗布するとともに、これを前記セラミックグリーンシートと同時焼成することによって絶縁基板7の搭載部8直下に埋設されるように形成される。なお、発熱抵抗体9の電気抵抗を高いものとするとともにその熱膨張係数を調整するために、前記抵抗体ペースト中に絶縁基板7用のセラミックグリーンシートに含有されるセラミック粉末を5〜30重量%程度含有させてもよい。そして、本発明のLD基板6においては、発熱抵抗体9が絶縁基板7内部で搭載部8直下に埋設されていることが重要である。
【0027】
また、本発明の発熱抵抗体9は、本発明の参考例を示す図2に示すように線状または帯状とされ、LD素子4の裏面全体に対応するように、綴ら折り状または螺旋状に形成するのが好ましい。なお、発熱抵抗体9の発熱量は、0.1〜1000mW程度が好ましい。0.1mW未満ではLD素子4を十分に加熱することが困難となり、他方1000mWを超えると、LD素子4が高温となりすぎる危険がある。また一般に、LD素子4が駆動される温度は約20〜80℃であり、前記温度範囲内で温度を変化させることにより発振波長を制御することもできる。
【0028】
発熱抵抗体9は、その入出力用の両端部を絶縁基板7の表面に導出させるようにして、搭載部8との間に好ましくは0.01〜1mmの間隔をあけて搭載部8の直下に埋設されており、これによりLD素子4を短い距離で短時間に加熱することができ、迅速かつ精度の高い温度制御が可能となる。このように発熱抵抗体9は、搭載部8の直下に埋設させただけなので絶縁基板7上に大きな領域を占有することがない。その結果、LD基板6が大型化することはない。そして、発熱抵抗体9と搭載部8との間隔が0.01mm未満の場合、発熱抵抗体9と搭載部8との間に電気的な短絡を引き起こす危険性があり、他方1mmを超えると、搭載部8に搭載されるLD素子4から発熱抵抗体9までの距離が大きなものとなり過ぎて、LD素子4のを迅速に加熱することが困難となる傾向にある。
【0029】
なお、発熱抵抗体9は、その厚みが5〜50μm程度が良い。発熱抵抗体9の厚みが5μm未満であると、発熱抵抗体9に断線が発生するおそれが高くなる。他方50μmを超えると、発熱抵抗体9の電気抵抗値が小さくなり過ぎて、発熱の効率が低下する。また、発熱抵抗体9の幅は、0.05〜0.5mm程度が好ましい。発熱抵抗体9の幅が0.05mm未満では、発熱抵抗体9に断線が発生するおそれが高くなる。他方0.5mmを超えると、発熱抵抗体9の電気抵抗値が小さくなり過ぎて、発熱の効率が低下する。そして、発熱抵抗体9の長さは、0.5〜50mm程度が好ましい。発熱抵抗体9の長さが0.5mm未満では、発熱抵抗体としての十分な電気抵抗値を得るのが困難となる傾向にあり、他方50mmを超えると、そのような長い発熱抵抗体9を絶縁基板7に設けるためにLD基板6を大型化する必要ある。
【0030】
さらに、絶縁基板7の表面に導出した発熱抵抗体9の両端部には、外部の制御回路に電気的に接続される端子電極9aが形成されている。この端子電極9aは、絶縁基板7の絶縁層7bの上面において線状の発熱抵抗体9の両端部を金属薄膜で覆うようにして形成され、例えば搭載部8を構成する金属薄膜と同じ構成の金属薄膜を被着させて成る。このような端子電極9aは、例えば予め絶縁基板7の内部に発熱抵抗体9となる抵抗体材料を、その両端部が絶縁基板7の絶縁層7bの上面に露出するようにして形成するとともに、その上を覆うようにして搭載部8および端子電極9aとなる金属薄膜を被着させ、この金属薄膜を搭載部8および端子電極9aの部分が残るようにエッチングすることにより搭載部8と同時に形成することができる。
【0031】
また、絶縁基板7の下面(裏面)に被着させた接合用金属層は、搭載部8を構成する金属薄膜と同じ構成の金属薄膜から形成すればよい。
【0032】
そして、図1に示すように、基体1の側壁1bにはこれを貫通するようにして鉄−ニッケル合金や鉄−ニッケル−コバルト合金等の金属から成るパイプ10が取着固定されている。パイプ10は、パッケージに光ファイバ11を固定するためのものであり、その内部に光ファイバ11が挿通固定される。光ファイバ11は、その先端がLD素子4と対向するようにして配置されており、これによりLD素子4から発生するレーザ光を光ファイバ11を介して外部に伝送することができる。
【0033】
さらに、基体1の底板部1aまたは側壁部1bには、鉄−ニッケル合金や鉄−ニッケル−コバルト合金等の金属から成るリード端子12がパッケージの外部に突出するようにして設けられる。このリード端子12は、基体1の底板部1aまたは側壁部1bを貫通するようにして設けられる、または基体1の内部から外部に導出する配線導体に接合されることにより、パッケージの内部と外部とを電気的に接続することを可能とする。そして、リード端子12には、パッケージ内部のペルチェ素子3,LD素子4,測温抵抗体5,発熱抵抗体9が電気的に接続されている。
【0034】
他方、蓋体2は、鉄−ニッケル合金や鉄−ニッケル−コバルト合金等の金属から成る略平板であり、基体1の側壁部1bの上面に例えばシーム溶接により接合される。そして、これにより基体1と蓋体2とから成る箱状のパッケージの内部にペルチェ素子3,LD素子4および測温抵抗体5等が気密に封止されている。なお、蓋体2をシーム溶接により側壁部1bに接合する場合であって、側壁部1bがセラミックス材料や銅を含浸させたタングステン多孔質体から成る場合、側壁部1bの上面に鉄−ニッケル合金や鉄−ニッケル−コバルト合金から成る金属枠体をシーム溶接のための下地金属部材として予め取着させておく必要がある。
【0035】
かくして、本発明のLD基板およびLDモジュールによれば、LD素子の作動停止時にLD素子を作動時と同様の高温に加熱することにより、迅速かつ高精度の温度制御が可能となるとともにモジュールの組み立てが容易となる。
【0036】
なお、本発明のLD基板およびLDモジュールは上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上述の実施形態の一例では、LD基板6の搭載部8および測温抵抗体5は、密着金属としてチタンを、バリア層および主要抵抗体として白金を使用したが、密着金属としては、クロム(Cr),タンタル(Ta),ニオブ(Nb),ニクロム(Ni−Cr),窒化タンタル(Ta2 N)等を使用してもよく、またバリア層および主要抵抗体としては、パラジウム(Pd),ロジウム(Rh),ルテニウム(Ru),ニッケル(Ni),チタン(Ti)−タングステン(W)等を用いてもよい。
【0037】
また、LD基板6の搭載部8の上面にLD素子4を取着するための、例えば金−錫合金から成るろう材を、スパッタリング法等を採用して所定の厚みに被着させてもよい。この場合には、搭載部8にLD素子4を搭載する際にろう材を配置する手間を省くことができる。
【0038】
さらに、上述の参考例では、例えば測温抵抗体5を絶縁基板7の上面に搭載部8に隣接してつづら折り状に設けたが、測温抵抗体5は、本発明の実施の形態の一例を示す図3にLD基板6の斜視図で示すように、絶縁基板7の上面に搭載部8との間に0.01〜5mm程度の間隔をあけて搭載部8を取り囲むように設けられる。このことから、測温抵抗体5が絶縁基板7上に占有する領域を小さいものとして、LD基板6およびこれを収容するLDモジュールを小型化することができる。また、LD素子4からの熱を短い距離で略均一に受けることができ、迅速かつ精度の高い測温が可能である。このLD基板6では測温抵抗体5と搭載部8との間隔が0.01mm以下となると、測温抵抗体5と搭載部8との間に電気的な短絡を引き起こす危険性があり、他方5mmを超えると、搭載部8に搭載されるLD素子4から測温抵抗体5までの距離が長いものとなり、LD素子4の温度の変化に対する追従性が鈍いものとなるとともに、測温抵抗体5を設けるために大きな領域が必要となりLD基板6が大型化してしまう。
【0039】
またさらに、上述の実施形態の例および参考例では、測温抵抗体5を絶縁基板7の上面に設けたが、測温抵抗体5は、本発明の参考例を示す図4や本発明の実施の形態の他の例を示す図5にLD基板6の斜視図で示すように、絶縁基板7の搭載部8直下またはその周辺の内部に設けられても良い。この場合、測温抵抗体5は、発熱抵抗体9と同じ材料から形成され、絶縁基板7の絶縁層7aと7bとの間に発熱抵抗体9と同時に設けられる。このような測温抵抗体5は、絶縁基板7上面を占有することがないので、LD基板6およびこれを収容するLDモジュールを小型化することができる。また、LD素子4からの熱を短い距離で略均一に受けることができ、迅速かつ精度の高い測温が可能である。このような測温抵抗体5は、発熱抵抗体9と同様にその入出力用の両端部が絶縁基板7の表面に露出しており、この両端部に端子電極5aが形成されている。この端子電極5aは、絶縁基板7の絶縁層7bの上面において測温抵抗体5の両端部を金属薄膜で覆うようにして形成され、例えば搭載部8を構成する金属薄膜と同じ構成の金属薄膜を被着させて成る。なお、このような測温抵抗体5の厚みや幅,長さ等は発熱抵抗体9に準じたものとしておけばよい。
【0040】
【発明の効果】
本発明のLD基板およびLDモジュールは、LD素子が搭載されるLD基板の搭載部の直下に発熱抵抗体が埋設されていることから、この発熱抵抗体により加熱することによって作動停止時のLD素子を作動時と同様の高温としておくことができ、これによってLD素子の作動開始時等に、迅速にLD素子の作動開始が行なえ、かつ即時に高精度な温度制御を行なうことができる。また、LD基板の絶縁基板の内部または上面に測温抵抗体が形成されており、この測温抵抗体は、平面視で発熱抵抗体と重ならないように、搭載部を取り囲むように設けられていることから、この測温抵抗体を測温素子として利用することにより、LD基板上にサーミスタ等の測温素子を搭載する必要がなく、LD基板に搭載される部品点数を少なくしてモジュールの組み立てが容易となる。また、測温抵抗体は、平面視で発熱抵抗体と重ならないように、搭載部を取り囲むように設けられていることから、LD素子からの熱を略均一に受けることができ、迅速かつ精度の高い測温が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のLDモジュールの一実施形態の断面図である。
【図2】図1のLDモジュールに使用される本発明のLD基板の参考例を示す斜視図である。
【図3】本発明のLD基板の実施形態の斜視図である。
【図4】本発明のLD基板の参考例を示す斜視図である。
【図5】本発明のLD基板の他の実施形態の斜視図である。
【図6】従来のLDモジュールの断面図である。
【図7】図6のLDモジュールに使用されるLD基板の斜視図である。
【符号の説明】
1:基体
2:蓋体
3:ペルチェ素子
4:LD素子
5:測温抵抗体
6:LD基板
7:絶縁基板
8:搭載部
9:発熱抵抗体

Claims (2)

  1. 絶縁基板上に半導体レーザ素子を搭載する搭載部を有するとともに、該搭載部直下の絶縁基板内部に発熱抵抗体が埋設されており、かつ前記絶縁基板の内部または上面に測温抵抗体が形成されており、該測温抵抗体は、平面視で前記発熱抵抗体と重ならないように、前記搭載部を取り囲むように設けられていることを特徴とする半導体レーザ素子搭載用基板。
  2. 請求項1記載の半導体レーザ素子搭載用基板上に半導体レーザ素子を搭載するとともに、これらを気密封止されたパッケージの内部にペルチェ素子を介して収容して成ることを特徴とする半導体レーザモジュール。
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