JP4580493B2 - 車両灯具成形用樹脂組成物及びそれを用いた車両用灯具 - Google Patents

車両灯具成形用樹脂組成物及びそれを用いた車両用灯具 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両灯具成型用樹脂組成物、それからなるランプボディ、リフレクター、ランプボディとメタクリル酸メチル樹脂のランプレンズとを熱板融着又は振動融着法により接合してなるランプケース等の車両用灯具及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂からなるランプボディとランプレンズとを接合する方法としては、接着剤で両者を固着する方法もあるが、熱可塑性樹脂からなるランプボディに熱板を押し当てて溶融した後、溶融部分をメタクリル酸メチル樹脂等からなるランプレンズに圧着する、いわゆる熱板融着法が、溶剤をまったく使用しないことよるコスト低減と作業環境改善の観点から採用されることが増えてきた。しかしながら、このような熱板融着法では、ランプボディを構成する熱可塑性樹脂を熱板により溶融した後、熱板を引き離す際に、溶融した樹脂が糸状に引き伸ばされ(以下、この現象を「糸ひき」という。)、これがランプレンズやランプポディの成形品表面に付着することにより外観不良となる不具合が生じることがあった。この熱板融着法における糸引きを改善する方法として、例えば、特開平9−12902号公報には、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂をポリカーボネート樹脂やABS樹脂等の熱可塑性樹脂に対して添加し、ランプボディなどの灯具に成形する方法が提案されている。
【0003】
また、車両灯具のランプボディ成形品内面やレフレクター反射面には蒸着あるいはスパッタリング等の加工が施される。この加工された成形品表面は、ランプの照度を外部の人に信号として反射するためのもので高光沢が求められる。一般的に上記性能を得るために、まず、成形品にアンダーコートとよばれる下塗りを施した後、蒸着あるいはスパッタリング等の加工が施される。
【0004】
一般に、蒸着あるいはスパッタリングの加工の前に加工性を助けるためにアンダーコート加工が施される。最近、製品のコストダウンを目的として、このアンダーコート工程を省略し、いわゆるアンダーコートレスにしたいという要求がある。現在のところ、100%のポリカーボネート樹脂等で成形された車両灯具ランプボディでは、上記光沢規格をクリアーしているが、製品コストダウン、衝撃、成形性向上のため、ゴム強化スチレン系樹脂を導入すると、その蒸着表面の光沢が低下し、満足の得られるものではなかった。特開平10−287802号公報に芳香族ポリカーボネートとアクリル酸エステル系ゴム重合体を含むビニル共重合体からなる樹脂組成物が、蒸着やスパッタリングの加工性に良好と記載されているが、アンダーコートレスを満足するまでの特性は得られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記の問題点に鑑み、熱板融着法によりランプボディをランプレンズに接合して車両用灯具を製造する際のランプボディを構成する樹脂の糸ひき並びに車両灯具ランプボディ成形品内面には蒸着あるいはスパッタリング等の加工を施す際、アンダーコート工程を省略しても、100%ポリカーボネート樹脂を成形して得られた車両灯具ランプボディと同等の表面光沢を発現し、蒸着あるいはスパッタリングの加工性の低下を伴うことない成形材料と成型方法を見出したものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく鋭意検討した結果、特定のα−メチルスチレン系共重合体(A)と小粒子径ゴム含有グラフト共重合体(B)を特定比率で存在させた樹脂組成物が、熱板融着法によりランプボディとランプレンズとを接合して車両用灯具を製造する際の糸ひきを大幅に改善し、かつ、ランプボディ成形品表面を蒸着あるいはスパッタリングする際、アンダーコート工程を省略しても、高い表面光沢を満足する蒸着面が得られることを見出し本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明は、(A)α−メチルスチレン40〜90重量%、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、スチレン0〜50重量%及びメタクリル酸エステル0〜30重量%の合計100重量%からなる単量体混合物を重合してなり、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)が0.3〜1.2dl/gであるα−メチルスチレン系共重合体20〜98重量部、
(B)ジエン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体の中から選択される少なくとも1種のゴム重合体であって体積平均粒径が60〜250nmであるゴム重合体(Ra)15〜90重量部の存在下に芳香族ビニル化合物10〜90重量%、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物の少なくとも1種の化合物10〜90重量%の合計100重量%からなる単量体混合物10〜85重量部を重合してなるグラフト共重合体80〜2重量部、
(C)ジエン系ゴム重合体であって体積平均粒径が260〜1000nmであるゴム重合体(Rb)15〜90重量部の存在下に芳香族ビニル化合物10〜90重量%,(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物の少なくとも1種の化合物10〜90重量%の合計100重量%からなる単量体混合物10〜85重量部を重合してなるグラフト共重合体0〜30重量部及び
(D)シアン化ビニル化合物10〜40重量%、スチレン90〜60重量%、これらと共重合可能なマレイミド化合物0〜30重量%の合計100重量%からなる単量体混合物を重合してなり、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)が0.3〜1.2dl/gであるスチレン系共重合体0〜50重量部(A、B、CおよびDの合計100重量部)からなり、ゴム重合体含有量が5〜30重量%である車両灯具成形用樹脂組成物(ただし、(A)α−メチルスチレン単量体残基10〜100重量%、α−メチルスチレン単量体以外の芳香族ビニル単量体残基0〜90重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜45重量%からなるα−メチルスチレン系共重合体40〜90重量%、(B)ゴム状重合体5〜80重量%、α−メチルスチレン単量体以外の芳香族ビニル単量体残基20〜95重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜40重量%からなるスチレン系グラフト共重合体10〜60重量%、(C)α−メチルスチレン単量体以外の芳香族ビニル単量体残基55〜100重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜45重量%からなるスチレン系共重合体0〜50重量%、並びに(D)α−メチルスチレン単量体以外の芳香族ビニル単量体残基25〜65重量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体残基35〜75重量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体残基0〜25重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜40重量%からなるイミド化共重合体0〜50重量%を有効成分とすることを特徴とする熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物、及び、熱可塑性樹脂からなるランプボディに加熱した熱板を押し当てて溶融した後、溶融部分をランプレンズに圧着してランプボディとランプレンズとを接合して車両用灯具を製造するためのランプボディであって、下記グラフト共重合体(A)80〜5重量部と下記ビニル系共重合体(B)20〜95重量部との合計100重量部を主成分とする樹脂組成物(C)により成形された車両灯具用ランプボディ。
(A)ゴム状重合体20〜95重量部に単量体混合物80〜5重量部をグラフト重合させてなり、前記単量体混合物が、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート化合物から選ばれた一種又は二種以上のビニル系化合物99.9〜60重量%、他の共重合可能なビニル化合物0〜30重量%、及びα,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物0.1〜40重量%からなるグラフト共重合体。
(B)シアン化ビニル化合物10〜40重量%、芳香族ビニル化合物60〜90重量%、他の共重合可能なビニル化合物0〜30重量%を反応させてなるビニル系共重合体、を除く。)(請求項1)、
グラフト共重合体(B)の体積平均粒径が60〜150nmである請求項1記載の車両灯具成形用樹脂組成物(請求項2)、
車両灯具がランプボディである請求項1記載の車両灯具成形用樹脂組成物(請求項3)、
請求項1記載の樹脂組成物を成形してなる車両灯具(請求項4)、
請求項1記載の樹脂組成物を成形してなるランプボディ(請求項5)、
請求項1記載の樹脂組成物を成形してなるリフレクター(請求項6)、
請求項5記載のランプボディを用いた自動車用ランプケース(請求項7)、
請求項1記載の樹脂組成物を成形してなるランプボディに、加熱した熱板を押し当てて溶融した後、溶融部分をランプレンズに圧着してランプボディとランプレンズとを接合することを特徴とする車両用灯具の製造方法(請求項8)、
熱板を250〜500℃に加熱して行う請求項8記載の車両用灯具の製造法(請求項9)、
ランプレンズとしてメタクリル酸メチル樹脂からなるレンズを用いる請求項8又は9記載の車両用灯具の製造方法(請求項10)、
請求項1記載の樹脂組成物を成形してなるランプボディに、加熱した熱板を押し当てて溶融した後、溶融部分をランプレンズに圧着してランプボディとランプレンズとを接合してなる車両用灯具(請求項11)及び
ランプレンズとしてメタクリル酸メチル樹脂からなるレンズを用いてなる請求項11記載の車両用灯具(請求項12)に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で特に重要なのは、ランプボディの成形に用いる樹脂組成物中に、特定のα−メチルスチレン系共重合体(A)と小粒子径ゴム含有グラフト共重合体(B)とを特定比率で存在させることが特徴であり、共重合(B)だけでは、熱板融着法によりランプボディをランプレンズに接合して車両用灯具を製造する際のランプボディを構成する樹脂の糸ひき性並びに車両灯具ランプボディ成形品内面には蒸着あるいはスパッタリング等の加工を施す際の表面光沢性の点から好ましくない。
【0009】
前記α−メチルスチレン系共重合体(A)は、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、α−メチルスチレン40〜90重量%、スチレン0〜50重量%及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%の合計100重量%からなる単量体を重合してなるが、より好ましくはシアン化ビニル化合物15〜37重量%、α−メチルスチレン50〜80重量%、スチレン0〜30重量%及びこれらと共重合可能な単量体が0〜15重量%である。尚、α−メチルスチレンの含有量が40重量%未満の場合、熱板融着時の糸ひき現象の改良効果が小さい。
【0010】
前記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独または2種以上の併用でもちいることもできる。又、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)は0.3〜1.2dl/g、更に好ましくは0.4〜0.9dl/gである。
【0011】
共重合可能な単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド等のマレイミド化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等の炭素数1−18のアルキル基を有する少なくとも1種のメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート等の炭素数1−18のアルキル基を有する少なくとも1種のアクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体およびp−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられる。これらは、1種または2種以上をもちいてもよい。
【0012】
前記小粒子径ゴム含有グラフト共重合体(B)におけるゴム重合体(Ra)の体積平均粒径は60〜250nmであるが、蒸着面の光沢性から、好ましくは60〜150nmである。体積平均粒径が、60nm未満では衝撃強度の低下が大きく、又250nmを越えると蒸着面の光沢が悪化する。
【0013】
前記中粒子径ゴム含有グラフト共重合体(C)におけるゴム重合体(Rb)の体積平均粒径は260〜1000nmであるり、グラフト共重合体(C)は蒸着面の光沢性からは、使用しない方が好ましい。しかし、衝撃向上のために、0〜30重量部まで使用することができ、蒸着面の光沢性から好ましくは0〜15重量部である。
【0014】
前記のゴム重合体(Ra)、(Rb)としては、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等のジエン系ゴム重合体、アクリル酸ブチルゴム、ブタジエン−アクリル酸ブチルゴム、アクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸ブチルゴム、メタクリル酸2−エチルヘキシル−アクリル酸ブチルゴム、アクリル酸ステアリル−アクリル酸ブチルゴム、ジメチルシロキサン−アクリル酸ブチルゴム,シリコン系/アクリル酸ブチル複合ゴム等のアクリル系ゴム重合体、エチレン−プロピレンゴム,エチレン−プロピレン−ジエンゴム等のオレフィン系ゴム重合体、ポリジメチルシロキサンゴム等のシリコン系ゴム重合体が挙げられ、これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0015】
前記グラフト共重合体(B)及び(C)における単量体混合物は、芳香族ビニル化合物10〜90重量%,(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物の少なくとも1種の化合物10〜90重量%及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%の合計100重量%からなる。
【0016】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、αーメチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられる。
【0017】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等の炭素数1−18のアルキル基を有するメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート等の炭素数1−18のアルキル基を有するアクリル酸エステルが挙げられる。
【0018】
共重合可能なその他の単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物等が挙げられる。これらは、1種または2種以上あっても良い。
【0019】
前記スチレン系共重合体(D)は、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、スチレン90〜60重量%、これらと共重合可能な単量体0〜30重量%の合計100重量%からなる単量体混合物を重合してなるが、より好ましくはシアン化ビニル化合物20〜40重量%、スチレン80〜60重量%及びこれらと共重合可能な単量体が0〜25重量%である。前記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0020】
共重合可能な単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド等のマレイミド化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等等の炭素数1−18のアルキル基を有する少なくとも1種のメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート等の炭素数1−18のアルキル基を有する少なくとも1種のアクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体およびα−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられる。これらは、1種または2種以上あっても良い。
【0021】
又、スチレン系共重合体(D)のメチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)は0.3〜1.2dl/g、更に好ましくは0.4〜0.9dl/gである。
【0022】
スチレン系共重合体(D)は、0〜50重量部まで使用することができるが、熱板融着時の糸引き性から、使用量は少ない方が好ましい。
【0023】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム重合体(Ra)又は(Ra)と(Rb)合計の含有量が樹脂組成物中5〜30重量%、好ましくは5〜20重量%である。
【0024】
本発明に係る、車両灯具成形用樹脂組成物は上記のようなα−メチルスチレン系共重合体(A)98〜20重量部、より好ましくは80〜60重量部、小粒子径ゴム含有グラフト共重合体(B)2〜80重量部、より好ましくは15〜40重量部、中粒子径ゴム含有グラフト共重合体(C)0〜30重量部、より好ましくは0〜15重量部、更に好ましくは0重量部、スチレン系共重合体(D)0〜50重量部、より好ましくは0〜25重量部の合計100重量部からなる熱可塑性樹脂組成物である。前記各共重合体の配合割合が上記の範囲外では熱板融着時の糸引き改良効果が小さく、成形品にアンダーコートレスで蒸着あるいはスパッタリングした際の表面光沢が低下する。
【0025】
本発明の範囲の組成が得られれば、α−メチルスチレン系共重合体(A)、小粒子径ゴム含有グラフト共重合体(B)、中粒子径ゴム含有グラフト共重合体(C)、スチレン系共重合体(D)はいかなる重合法を用いて製造したものでもかまわない。例えば、公知の塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化−懸濁重合法、乳化−塊状重合法等、本発明の範囲内の組成に制御できれば、どの重合法よって製造したものでもよい。又、本発明の範囲であれば、α−メチルスチレン系共重合体(A)、小粒子径ゴム含有グラフト共重合体(B)、中粒子径ゴム含有グラフト共重合体(C)、スチレン系共重合体(D)はいかなる開始剤、連鎖移動剤、乳化剤を用いて製造したものでもかまわない。開始剤としては、過硫酸カリウム等の熱分解開始剤、Fe−還元剤−有機パーオキサイド等のレドックス系開始剤等、公知の開始剤が使用できる。t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、αーメチルスチレンダイマー、テルピノレン等公知の連鎖移動剤が使用できる。乳化剤としてはオレイン酸ソーダ、パルミチン酸ソーダ、ロジン酸ソーダ等の脂肪酸金属塩系乳化剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、炭素数12〜20のアルキルスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホコハク酸ソーダ等のスルホン酸金属塩系乳化剤等の公知の乳化剤が使用できる。小粒子ゴム含有グラフト共重合体(B)、中粒子ゴム含有グラフト共重合体(C)の場合、前記単量体混合物をゴム状重合体の存在下に、水性媒体中、ラジカル開始剤で重合させればよい。その際、前記グラフト重合させる単量体混合物は、混合物として使用しても、又必要に応じ、分割して使用しても良い。さらに前記単量体混合物の添加方法としては、一度に全量を仕込んでも、また逐次添加しても良く、特に制限されるものではない。
【0026】
本発明の車両灯具成形用樹脂組成物はα−メチルスチレン系共重合体(A)、小粒子径ゴム含有グラフト共重合体(B)、中粒子径ゴム含有グラフト共重合体(C)、スチレン系共重合体(D)の製造方法によって異なるが、例えば、これらを重合体ラテックス、スラリー、溶液、粉末、ペレットの状態、あるいはこれらの組み合わせにて混合して製造できる。α−メチルスチレン系共重合体(A)、小粒子径ゴム含有グラフト共重合体(B)、中粒子径ゴム含有グラフト共重合体(C)、スチレン系共重合体(D)のラテックスからポリマー粉末を回収する場合は、通常の方法、例えばラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムのようなアルカリ土類金属の塩、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムのようなアルカリ金属の塩、塩酸、硫酸、酢酸、リン酸のような無機酸及び有機酸を添加することでラテックスを凝固した後、脱水乾燥する方法で実施できる。又、スプレー乾燥法も使用できる。更に、安定剤の使用する量の一部を分散液の状態でこれら樹脂のラテックスあるいはスラリーに添加することもできる。
【0027】
本発明の車両灯具用樹脂組成物の各成分をブレンドする方法は、例えばへンシェルミキサーやリボンブレンダー等のブレンダーを用い、目的とする安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、無機充頃剤を必要に応じて適宜使用することもできる。特に、フェノール系、イオウ系、リン系又はヒンダードアミン系の安定剤、ベンゾフェノン系又はベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、及びオルガノポリシロキサン、エチレンビスステアリン酸アマイド、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸と高級アルコールのエステル等の滑剤等は成形用樹脂として、より高性能なものとするために用いることができる。これらの安定剤、滑剤は、単独でも、また2種以上混合して使用することもできる。
【0028】
また、本発明に係る、車両灯具成形用樹脂組成物は通常のポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、とブレンドして使用する事も可能である。
【0029】
本発明では、上記のような熱可塑性樹脂組成物から成形されたランプボディに加熱した熱板を押し当てて溶融した後、溶融部分をランプレンズに圧着してランプボディとランプレンズとを接合して車両用灯具を製造する。前記の場合の熱板の温度は、250〜500℃に加熱して行うことが好ましい。250℃未満では接着強度が不足し、500℃を越えると溶融が進みすぎて作業性がわるくなる。また、前記ランプボディに接合されるランプレンズとしては、レンズの透明性と強い接着強度が得られる点で、メタクリル酸メチル樹脂からなるレンズを用いることが好ましい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これら実施例は本発明を何ら限定するものではない。尚、実施例の記載中で、特に断らない限り、『部』は重量部を、『%』は重量%を表す。また、実施中の各略称は、次の意味を有する。
【0031】
AN:アクリロニトリル
St:スチレン
MMA:メチルメタアクリレート
PMI:フェニルマレイミド
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
tDM:t−ドテシルメルカプタン
αMSt:α―メチルスチレン
(1)α―メチルスチレン系共重合体(A)及びスチレン系共重合体(D)の製造
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口及び温度計の設置された反応器に下記の物質を仕込んだ。
純水 250部
ラウリン酸ソーダ 3部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.4部
硫酸第一鉄 0.0025部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.01部
反応器を攪拌しながら窒素気流下に60℃まで昇温させた。60℃に到達した後、表1に示すモノマー(I)を仕込んだ。十分乳化させた後、表1に示すモノマー(II) を連続的に6時間で滴下添加し、添加終了後、60℃で1時間攪拌を続けて重合を終了し、A1、A2、D1、D2を得た。
【0032】
【表1】
Figure 0004580493
(2)小粒子径ゴム含有グラフト共重合体(B)及び中粒子径ゴム含有グラフト共重合体(C)の製造
公知の方法にて、下記ゴム状ラテックスを得た。尚、ラテックスの体積平均粒径は、四酸化オスミウム染色法等による透過型電子顕微鏡写真を撮影し、ゴム状分散粒子500〜1000個の粒子径を測定して平均粒子径を求めた。又、粒子が楕円形をしている場合には、長径aと短径bとの平均値、即ち(a+b)/2をもって、粒子径とした。
【0033】
PBd−1:ポリブタジエン 平均粒子径:100nm
PBd−2:ポリブタジエン 平均粒子径:470nm
SBR:(スチレン/ブタジエンゴム=25/75)共重合体
平均粒子径:100nm
PBA:(ブチルアクリレート/アリルメタクリレート=99/1)共重合体
平均粒子径:150nm
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口及び温度計の設置された反応器に下記の物質を仕込んだ。
純水 250部
ゴム状重合体 表2に記載した種類、量
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.3部
硫酸第一鉄 0.0025部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.01部
反応器を攪拌しながら窒素気流下に60℃まで昇温させた。60℃に到達した後、表2に示す単量体混合物を連続的に5時間で滴下し、添加終了後、さらに60℃で1時間攪拌を続けて重合を終了し、B1、B2,B3、C1を得た。
【0034】
【表2】
Figure 0004580493
(3)車両灯具成形用樹脂組成物の製造前記(1)、(2)で製造した共重合体を、それぞれラテックス状態で表3に記載した比率(固形分)で混合し、この混合ラテックスに酸化防止剤を添加し、塩化カルシウムで凝固させた後、加熱、脱水、水洗、乾燥後、樹脂組成物(パウダー)を得た。表3に示す、樹脂組成物100部に対して、フェノール系の抗酸化剤0.3部(AO−20:旭電化工業株式会社製)、リン系の安定剤0.3部(PEP−24G:旭電化工業株式会社製)を共通の添加剤としてブレンドし、250℃の温度で押出機(大阪精機株式会社製、40mmφ単軸押出機)にてペレットを得た。得られたペレットを150ton射出成形機(FANUC製)を使用し、250℃の温度でASTMの1号ダンベルと図1に示すランプボディ製品を成形し、それを用いて糸引き性並びに真空蒸着の評価を実施した。
(a)ダンベル試験片を用いての糸ひき性評価
350℃に加熱したアルミニウム製の平板に、射出成形にて得られたASTM1号ダンベルを10kgf/cm2 の圧力で10秒間押しつけた後、このダンベルを500mm/minの速度で引き上げた時に溶融面に発生した糸の長さ[cm]を測定した。
(b)ランプボディ製品を用いての糸引き性評価
射出成形にて得られた図1に示すランプボディ製品を熱板融着機を用いて、融着温度350℃、10kg/cm2 の圧力でアルミニウム製の熱板に10秒間押しつけた後、50mm/minの速度で引き上げた時に融着面に糸引きが発生するかどうかを判定した。
結果を表3に示す。なお、ランプボディー製品による糸引き性評価は、次の基準に従った。 ○:糸引きなし(0.5cm以下
△:少し糸引きあり(0.5〜1.0cm)
×:糸引きあり(1.0cm以上
(c)ランプボディ製品を用いての真空蒸着評価
射出成形にて得られた図1に示すランプボディ製品を真空蒸着機を装着し、蒸着装置のルツボにアルミニウムを所定量投入後、蒸着機を密閉し、真空ポンプを作動させてアルミニウムの厚さが0.1μm となるように蒸着させた。蒸着性の比較として、芳香族ポリカーボネート(PC)樹脂(タフロンA2200:出光石油化学株式会社製)を用いてランプボディ製品を作成し、同様に真空蒸着した。評価は次の基準に従った。
【0035】
◎:光沢が非常に優れている
○:光沢が優れている
△:光沢がよい
×:光沢が悪い
【0036】
【表3】
Figure 0004580493
表3の結果から明らかなように、本発明によれば、従来から使用されている比較例の樹脂組成物からなるランプボディを用いた場合に比べて、熱板融着法における糸引き並びに真空蒸着表面光沢が大幅に改善されている。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の成分を含有したα―メチルスチレン系共重合体と小粒子ゴム含有グラフト共重合体とを配合してなる熱可塑性樹脂組成物を用いる事で、従来からランプボディの材料として使用されている一般的な熱可塑性樹脂を用いる場合に比べて、ランプボディに加熱した熱板を押し当てて溶融した後、溶融部分をランプレンズに圧着してランプボディとランプレンズとを接合して車両用灯具を製造する際の、ランプボディを構成する樹脂の糸引き性を大幅に改善し、かつ真空蒸着面の光沢も大幅に改善しうるものであり、特にヘッドランプケース、ウィンカーケースバックランプケース、ストップランプケースなどの車両用灯具の製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1 】 糸引き性並びに真空蒸着評価に用いたランプボディ製品の断面図。
【符号の説明】
1ランプボディ
2ランプ
3融着面
4ランプレンズ
5蒸着面

Claims (12)

  1. (A)α−メチルスチレン40〜90重量%、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、スチレン0〜50重量%及びメタクリル酸エステル0〜30重量%の合計100重量%からなる単量体混合物を重合してなり、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)が0.3〜1.2dl/gであるα−メチルスチレン系共重合体20〜98重量部、
    (B)ジエン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体の中から選択される少なくとも1種のゴム重合体であって体積平均粒径が60〜250nmであるゴム重合体(Ra)15〜90重量部の存在下に芳香族ビニル化合物10〜90重量%、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物の少なくとも1種の化合物10〜90重量%の合計100重量%からなる単量体混合物10〜85重量部を重合してなるグラフト共重合体80〜2重量部、
    (C)ジエン系ゴム重合体であって体積平均粒径が260〜1000nmであるゴム重合体(Rb)15〜90重量部の存在下に芳香族ビニル化合物10〜90重量%,(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物の少なくとも1種の化合物10〜90重量%の合計100重量%からなる単量体混合物10〜85重量部を重合してなるグラフト共重合体0〜30重量部及び
    (D)シアン化ビニル化合物10〜40重量%、スチレン90〜60重量%、これらと共重合可能なマレイミド化合物0〜30重量%の合計100重量%からなる単量体混合物を重合してなり、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)が0.3〜1.2dl/gであるスチレン系共重合体0〜50重量部(A、B、CおよびDの合計100重量部)からなり、ゴム重合体含有量が5〜30重量%である車両灯具成形用樹脂組成物(ただし、(A)α−メチルスチレン単量体残基10〜100重量%、α−メチルスチレン単量体以外の芳香族ビニル単量体残基0〜90重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜45重量%からなるα−メチルスチレン系共重合体40〜90重量%、(B)ゴム状重合体5〜80重量%、α−メチルスチレン単量体以外の芳香族ビニル単量体残基20〜95重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜40重量%からなるスチレン系グラフト共重合体10〜60重量%、(C)α−メチルスチレン単量体以外の芳香族ビニル単量体残基55〜100重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜45重量%からなるスチレン系共重合体0〜50重量%、並びに(D)α−メチルスチレン単量体以外の芳香族ビニル単量体残基25〜65重量%、不飽和ジカルボン酸イミド誘導体残基35〜75重量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体残基0〜25重量%、およびこれら単量体と共重合可能なビニル単量体残基0〜40重量%からなるイミド化共重合体0〜50重量%を有効成分とすることを特徴とする熱板溶着用熱可塑性樹脂組成物、及び、熱可塑性樹脂からなるランプボディに加熱した熱板を押し当てて溶融した後、溶融部分をランプレンズに圧着してランプボディとランプレンズとを接合して車両用灯具を製造するためのランプボディであって、下記グラフト共重合体(A)80〜5重量部と下記ビニル系共重合体(B)20〜95重量部との合計100重量部を主成分とする樹脂組成物(C)により成形された車両灯具用ランプボディ。
    (A)ゴム状重合体20〜95重量部に単量体混合物80〜5重量部をグラフト重合させてなり、前記単量体混合物が、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート化合物から選ばれた一種又は二種以上のビニル系化合物99.9〜60重量%、他の共重合可能なビニル化合物0〜30重量%、及びα,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物0.1〜40重量%からなるグラフト共重合体。
    (B)シアン化ビニル化合物10〜40重量%、芳香族ビニル化合物60〜90重量%、他の共重合可能なビニル化合物0〜30重量%を反応させてなるビニル系共重合体、を除く。
  2. グラフト共重合体(B)の体積平均粒径が60〜150nmである請求項1記載の車両灯具成形用樹脂組成物。
  3. 車両灯具がランプボディである請求項1記載の車両灯具成形用樹脂組成物。
  4. 請求項1記載の樹脂組成物を成形してなる車両灯具。
  5. 請求項1記載の樹脂組成物を成形してなるランプボディ。
  6. 請求項1記載の樹脂組成物を成形してなるリフレクター。
  7. 請求項5記載のランプボディを用いた自動車用ランプケース。
  8. 請求項1記載の樹脂組成物を成形してなるランプボディに、加熱した熱板を押し当てて溶融した後、溶融部分をランプレンズに圧着してランプボディとランプレンズとを接合することを特徴とする車両用灯具の製造方法。
  9. 熱板を250〜500℃に加熱して行う請求項8記載の車両用灯具の製造法。
  10. ランプレンズとしてメタクリル酸メチル樹脂からなるレンズを用いる請求項8又は9記載の車両用灯具の製造方法。
  11. 請求項1記載の樹脂組成物を成形してなるランプボディに、加熱した熱板を押し当てて溶融した後、溶融部分をランプレンズに圧着してランプボディとランプレンズとを接合してなる車両用灯具。
  12. ランプレンズとしてメタクリル酸メチル樹脂からなるレンズを用いてなる請求項11記載の車両用灯具。
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