JP5144892B2 - ランプハウジング用成形材料の製造方法 - Google Patents
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Description
振動溶着法によると、接合部周辺において、樹脂粉体、(糸)バリ、倒れたバリ等が発生することがあり、また、熱板溶着法によると、熱型から、ランプハウジングの、構成材料(樹脂成分)が溶融した接合予定部が離れる際に、糸曳き等が発生することがある。これらの不良現象は、ランプとしての外観を低下させることとなる。
また、発光したランプの輝度をより高めるために、通常、ランプハウジングの内表面に、金属層を設ける等の表面処理によって、光の反射面が形成される。表面処理としては反射塗装処理、蒸着処理等が行われるが、昨今の環境問題から、VOCを低減できるアンダーコートレスのメタライジングが表面処理の主流になりつつある。しかし、アンダーコートを行わない場合、成形品の表面に存在する微細な凹凸により、輝度が低下するといった問題があり、アンダーコートを行わないと良好な輝度が得ることができないのが現状である。
上記不良現象が、樹脂成分に大きく依存すると考えられることから、樹脂成分の分子設計、製造方法等を工夫する試みがなされている。例えば、特許文献2には、ゲル含量が70%以上のゴム質重合体を用いてなるゴム強化樹脂と、マレイミド系共重合体等とを含有する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
1.長さ100mm、幅30mm及び厚さ3mmの試験片を、温度23℃及び相対湿度50%で3時間状態調節し、その後、下記試験条件下で、加熱された熱板に接触させ、該熱板から離した際に観察される糸曳き数が3本以下であるランプハウジング用成形材料を製造する方法であって、
アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなるビニル系単量体〔b1〕を重合してアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕を得る工程と、
上記アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の共重合体〔A2〕とを、上記アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の含有量が、ランプハウジング用成形材料全量に対して10〜30質量%となるように用いて、混合する工程と、
を備え、
上記アクリル系ゴム質重合体〔a1〕が、
炭素数1〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(m11)、及び、多官能性ビニル化合物(m31)を、重合転化率85%以上で共重合する第1工程と、
該第1工程で得られた共重合体の存在下、炭素数1〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(m12)、及び、多官能性ビニル化合物(m32)を、重合転化率85%以上で共重合する第2工程と、を備え、
上記第1工程における上記アクリル酸アルキルエステル(m11)の使用量を、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)及び(m12)の合計量を100質量%とした場合、50〜90質量%とし、上記多官能性ビニル化合物(m31)の使用量を、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)の合計量を100質量部とした場合、0.01〜0.3質量部とし、
上記第2工程における上記アクリル酸アルキルエステル(m12)の使用量を、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)及び(m12)の合計量を100質量%とした場合、10〜50質量%とし、上記多官能性ビニル化合物(m32)の使用量を、上記アクリル酸アルキルエステル(m12)の合計量を100質量部とした場合、0.5〜10質量部とした方法により得られた、体積平均粒子径60〜150nmである共重合体であることを特徴とするランプハウジング用成形材料の製造方法。
〔試験条件〕
熱板の温度;280℃
移動速度;200mm/秒
試験片及び熱板の接触時間;15秒
試験片の溶け量;0.5mm
2.上記アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の形成に用いる、上記多官能性ビニル化合物(m31)及び(m32)が、2官能性(メタ)アクリル酸エステルである上記1に記載のランプハウジング用成形材料の製造方法。
3.上記アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の形成に用いる、上記多官能性ビニル化合物(m31)及び(m32)の合計量が、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)及び(m12)の合計量100質量部に対し、1.276〜1.38質量部である上記1又は2に記載のランプハウジング用成形材料の製造方法。
本発明のランプハウジング用成形材料の製造方法は、長さ100mm、幅30mm及び厚さ3mmの試験片を、温度23℃及び相対湿度50%で3時間状態調節し、その後、下記試験条件下で、加熱された熱板に接触させ、該熱板から離した際に観察される糸曳き数が3本以下であるランプハウジング用成形材料を製造する方法であって、アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなるビニル系単量体〔b1〕を重合してアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕を得る工程と、上記アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の共重合体〔A2〕とを、上記アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の含有量が、ランプハウジング用成形材料全量に対して10〜30質量%となるように用いて、混合する工程と、を備える。尚、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
このアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕の形成に用いられるアクリル系ゴム質重合体〔a1〕は、炭素数1〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(m11)、及び、多官能性ビニル化合物(m31)を、重合転化率85%以上で共重合する第1工程と、該第1工程で得られた共重合体の存在下、炭素数1〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(m12)、及び、多官能性ビニル化合物(m32)を、重合転化率85%以上で共重合する第2工程と、を備える方法により得られ、上記第1工程における上記アクリル酸アルキルエステル(m11)の使用量を、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)及び(m12)の合計量を100質量%とした場合、50〜90質量%とし、上記多官能性ビニル化合物(m31)の使用量を、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)の合計量を100質量部とした場合、0.01〜0.3質量部とし、上記第2工程における上記アクリル酸アルキルエステル(m12)の使用量を、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)及び(m12)の合計量を100質量%とした場合、10〜50質量%とし、上記多官能性ビニル化合物(m32)の使用量を、上記アクリル酸アルキルエステル(m12)の合計量を100質量部とした場合、0.5〜10質量部とした方法により得られた、体積平均粒子径60〜150nmである共重合体である。
アクリル酸アルキルエステル(m1)及び化合物(m2)の使用量は、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは60〜100質量%及び0〜40質量%、より好ましくは70〜100質量%及び0〜30質量%、更に好ましくは80〜100質量%及び0〜20質量%である。
また、多官能性ビニル化合物(m3)の使用量は、アクリル酸アルキルエステルの合計を100質量部とした場合、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜8質量部及び、更に好ましくは0.15〜7質量部である。各化合物の使用量を上記範囲とすることで、振動溶着法、熱板溶着法及びレーザー溶着法のいずれの方法にも適したランプハウジング用成形材料に好適なアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕形成用重合体成分とすることができる。
尚、上記のアクリル酸アルキルエステル(m11)及び(m12)、並びに、多官能性ビニル化合物(m31)及び(m32)は、それぞれ、上記のアクリル酸アルキルエステル、及び、多官能性ビニル化合物として例示した化合物を用いることができる。また、これらの各原料について、第1工程における使用化合物と、第2工程における使用化合物とが同一であってよいし、異なってもよい。
上記第1工程におけるアクリル酸アルキルエステル(m11)の使用量は、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)及び(m12)の合計量を100質量%とした場合、50〜90質量%、より好ましくは60〜90質量%、更に好ましくは65〜85質量%であり、上記多官能性ビニル化合物(m31)の使用量は、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)の合計量を100質量部とした場合、0.01〜0.3質量部、より好ましくは0.05〜0.25質量部、更に好ましくは0.08〜0.20質量部であり、且つ、上記第2工程における上記アクリル酸アルキルエステル(m12)の使用量は、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)及び(m12)の合計量を100質量%とした場合、10〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは15〜35質量%であり、上記多官能性ビニル化合物(m32)の使用量は、上記アクリル酸アルキルエステル(m12)の合計量を100質量部とした場合、0.5〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部、更に好ましくは2〜7質量部である。
このように、第1及び第2工程を備える方法により得られる重合体は、いわゆるコア−シェル構造のような多層構造を有するものと思われる。即ち、第1工程によりコア部が形成され、その後、第2工程によりシェル部が形成される。第1及び第2工程において用いられる各多官能性ビニル化合物の使用量を比較すると、第2工程において用いられる使用割合が高いため、第2工程により形成されたシェル部は、第1工程により形成されたコア部よりも硬い構造を有するアクリル系ゴム質重合体が形成されていると思われる。
乳化重合は、通常、単量体と、乳化剤と、重合開始剤と、水とを含む混合物を攪拌及び加熱しながら行う。尚、反応系には、分子量調節剤、連鎖移動剤、電解質等を添加してもよい。
尚、上記ロジン酸塩は、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、これらを不均化反応させた不均化ロジン、精製したロジン等のロジン酸(通常、アビエチン酸を主成分とする。)のアルカリ金属塩であり、通常、ナトリウム塩又はカリウム塩である。
上記乳化剤の使用量は、用いる単量体の全量を100質量部とした場合、通常、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
上記分子量調節剤の使用量は、用いる単量体の全量を100質量部とした場合、通常、0〜5質量部、好ましくは0〜2質量部である。
尚、上記分子量調節剤のうち、メルカプタン類は、連鎖移動剤として用いることもできる。
上記連鎖移動剤の使用量は、用いる単量体の全量を100質量部とした場合、通常、0〜5質量部、好ましくは0〜3質量部である。
尚、上記ゲル含量の測定方法は、下記の通りである。
まず、アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の1グラムをトルエン20mlに投入し、攪拌機を用い、1,000rpmで2時間攪拌する。その後、遠心分離機(回転数;22,000rpm)で1時間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分を秤量(質量をW1グラムとする。)し、更に不溶分を乾燥させた後に秤量(質量をW2グラムとする。)し、下記式により算出する。
ゲル含量(%)=〔W2(g)/1(g)〕×100
また、アクリル系ゴム質重合体〔a1〕のトルエン膨潤度は、好ましくは6〜20であり、より好ましくは7〜20、更に好ましくは9〜18である。このトルエン膨潤度が上記範囲にあると、振動溶着法、熱板溶着法及びレーザー溶着法のいずれの方法にも適したランプハウジング用成形材料に好適なアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕形成用重合体成分とすることができる。尚、このトルエン膨潤度は、上記ゲル含量を算出する際において得られた、不溶分の乾燥前質量(W1グラム)及び乾燥後質量(W2グラム)を用いて、下記式により算出することができる。
トルエン膨潤度=〔W1(g)/W2(g)〕
上記アクリル系ゴム質重合体〔a1〕は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、重合開始剤については、上記のほか、上記有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等による還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤を用いることもできる。
重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体〔b1〕の全量を100質量部とした場合、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。この重合開始剤は、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。
分子量調節剤の使用量は、上記ビニル系単量体〔b1〕の全量を100質量部とした場合、好ましくは0〜3質量部、より好ましくは0〜1質量部である。
連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体〔b1〕の全量を100質量部とした場合、好ましくは0〜5質量部、より好ましくは0.01〜2質量部である。
乳化重合の際の重合温度は、通常、10〜95℃、好ましくは30〜90℃、より好ましくは35〜85℃である。
溶媒としては、公知のラジカル重合で使用される不活性重合溶媒、例えば、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類;ジクロルメチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を用いることができる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン類等が挙げられる。
溶液重合の際の重合温度は、好ましくは、0〜150℃の範囲である。
グラフト率(%)={(S−T)/T}×100
上記式中、Sは、アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕1グラムをアセトニトリル20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tは、アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕1グラムに含まれるアクリル系ゴム質重合体〔a1〕の質量(g)である。
この共重合体〔A2〕の形成に用いられるビニル系単量体〔b2〕は、好ましくは、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物である。尚、上記各化合物は、上記アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕の製造に用いられるビニル系単量体〔b1〕において例示したものを用いることができる。
(1)スチレン・アクリロニトリル共重合体
(2)α−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体
(3)スチレン・α−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体
本発明において、ランプハウジング用成形材料そ製造する場合には、アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、共重合体〔A2〕とを、上記アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の含有量が、ランプハウジング用成形材料全量に対して10〜30質量%となるように用いて、混合する。
アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の含有量が10〜30質量%であれば、振動溶着法、熱板溶着法及びレーザー溶着法のいずれの方法にも適したランプハウジング用成形材料とすることができる。
重合体(樹脂)としては、ABS樹脂、HIPS樹脂、AES樹脂、シリコーンゴム強化樹脂、水添ゴム強化樹脂、ASA樹脂(本発明に係るアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕を除く。)等のゴム強化樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン等のオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアセタール系樹脂;液晶ポリマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、これらのうち、ゴム強化樹脂が好ましい。
上記重合体(樹脂)の配合量は、上記のアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕及び共重合体〔A2〕等を含む重合体成分の全量を100質量部とした場合、好ましくは1〜30質量部である。
金属としては、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等が挙げられる。無機化合物としては、酸化物(アルミナ、ジルコニア等)、窒化物(窒化硅素、窒化硼素等)、炭化物(炭化珪素等)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、硫酸塩(硫酸カルシウム等)、珪酸塩(シリカ、石英、ガラス、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレ−、硅藻土等)、硝酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
充填剤の形状も特に限定されず、粒子状、繊維状、板状、塊状等が挙げられる。繊維状の充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウムウィスカ−等が挙げられる。また、板状の充填剤としては、タルク、マイカ、ガラスフレ−ク、金属箔等が挙げられる。
これらの充填剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、上記充填剤は、補強材として用いることもできる。
上記充填剤の配合量は、上記のアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕及び共重合体〔A2〕等を含む重合体成分の全量を100質量部とした場合、好ましくは0〜300質量部、より好ましくは0〜100質量部である。
上記紫外線吸収剤の配合量は、上記のアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕及び共重合体〔A2〕等を含む重合体成分の全量を100質量部とした場合、好ましくは0〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部である。
上記酸化防止剤の配合量は、上記のアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕及び共重合体〔A2〕等を含む重合体成分の全量を100質量部とした場合、好ましくは0〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部である。
また、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練した後、押出機によりペレット等の所定形状とすることもできる。
〔試験条件〕
熱板の温度;280℃
移動速度;200mm/秒
試験片及び熱板の接触時間;15秒
試験片の溶け量;0.5mm。
一般に、車両用のランプハウジングとしては、上記のように、アルミニウム等の金属等からなる膜が形成された積層品が用いられる。
振動溶着法とは、摩擦熱を利用した溶着方法であり、具体的には、ランプハウジング及び樹脂製レンズの接合面(又は接合部)どうしを、所定の圧力で加圧しながら、振幅0.3〜2.0mm程度、振動数50〜110MHz程度の振動を与え、生じた摩擦熱によって樹脂が溶融して、接合される。この方法による接合は、通常、振動溶着機等により行われる。
熱板溶着法とは、ランプハウジング及び樹脂製レンズの各接合面(又は接合部)の間に、温度220〜300℃の熱板を当てて、各接合面(又は接合部)の樹脂を溶融し、その後、熱板を取り去り、直ちに両者を押圧することにより接合する方法である。
また、レーザー溶着法とは、ランプハウジング及び樹脂製レンズの各接合面(又は接合部)を重ねた後、ランプハウジングの構成材料及び樹脂製レンズの構成材料のうちの、よりレーザー光透過性の高い部材の外側に対してレーザー光を照射することにより、透過性材料を通過したレーザー光が他方の部材の接触面を加熱して該材料を溶融させると同時に、熱伝達によりレーザー光を透過した側の材料も溶融させ、双方を接合する方法である。
本実施例において用いられる各種評価方法は、以下の通りである。
(1)メルトフローレート
ASTM−D1238(240℃、10kg)に準じて測定した。単位はg/10分である。
(2)シャルピー衝撃強さ
ISO179(常温)に準じて測定した。単位はkJ/m2である。
(3)荷重たわみ温度
ISO75(Under Load)に準じて測定した。単位は℃である。
成形材料からなるペレットを、成形機(型名「IS−170FA」、東芝機械社製)に投入して、温度220〜260℃で溶融し、所定形状のランプハウジングを得た。一方、メタクリル樹脂(商品名「アクリペットVH−4」、三菱レイヨン社製)を用い、220〜270℃で溶融し、レンズ部材を成形した。上記ランプハウジングと、上記レンズ部材とを、振動溶着機(型名「BURANSON 2407」、日本エマソン社製)により、下記条件で振動溶着し、樹脂粉体の個数(ランプハウジング内に発生し、且つ、目視で確認できる数十ミクロン〜2mm程度の樹脂粉体の個数)及び糸バリの本数(ランプハウジング内に発生した2mm以上の糸状のバリの本数)を数えた。これら、樹脂粉体の個数及び糸バリの本数により、「振動溶着性」を評価した。
判定基準は、下記の通りである。
○;糸バリ数が5本以下であった。
×;糸バリ数が6本以上であった。
粉量の評価時は下記条件で実施した。
片振幅 0.5mm
初期圧力 2.0bar
初期振動時間 4.0秒
二段目圧力 4.0bar
二段目振動時間 2.0秒。
また、糸バリ量の評価時は下記条件で実施した。
片振幅 0.5mm
初期圧力 5.0bar
初期振動時間 0.5秒
二段目圧力 5.0bar
二段目振動時間 2.0秒。
成形材料からなるペレットを、成形機(型名「IS−25EP」、東芝機械社製)に投入して、温度220〜250℃で溶融し、長さ10cm、幅3cm、厚さ3mmの熱板溶着用試験片を成形した。この試験片を、温度23℃及び相対湿度50%で3時間状態調節し、その後、熱板溶着機(テクノポリマー社製)により、下記条件で熱板に当接させ、熱板から試験片が離れる際の、糸を曳いた本数を数えた。この糸曳きの本数により、「熱板溶着性」を評価した。
判定基準は、下記の通りである。
○;糸曳き数が3本以下であった。
×;糸曳き数が3本を超えた。
熱板の温度 280℃
サーボモータの移動速度 200mm/秒
試験片が熱板に接触する時間 15秒
試験片の溶け量 0.5mm
上記の振動溶着評価の際に得たランプハウジングの表面に、真空成膜装置(型名「VRSP350MD」、新明和工業社製)により、下記条件でスパッタリングを行い、アルミニウムの蒸着膜を形成させた。その後、この蒸着膜の表面に、下記条件でHMDS(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)のプラズマ重合膜を形成させた。
輝度の評価は、上記の積層膜を有するランプハウジングの膜表面に対して、デジタル反射率計(型名「TR−1100AD」、東京電色社製)により光を照射して測定された、拡散反射率をもって評価した。単位はいずれも%である。
粗引き終了後の圧力 5.0Pa
本引き終了後の圧力 5.0×10−3Pa
導入ガス アルゴンガスを100SCCM
成膜時の真空度 0.7Pa
アルミニウム膜厚 120nm
<プラズマ重合条件>
導入ガス HMDSを30SCCM
重合時の真空度 1.5Pa
アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕は、先ず、アクリル系ゴム質重合体を含むラテックスを調製した後、そのラテックスを用い、乳化重合により製造した。
ラテックスは、2段階の重合により調製した。
第1工程は、還流冷却器、撹拌翼、温度計及び温度調節装置を備えた反応器に、アクリル酸n−ブチル10.0部、メタクリル酸アリル0.02部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、クメンハイドロパーオキサイド0.003部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.004部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.05部及びイオン交換水180部を仕込み、攪拌しながら、混合物を昇温した。その後、反応系の温度を60℃とし、80分間重合を行った。次いで、反応系の温度を60℃に維持したまま、アクリル酸n−ブチル25.0部、メタクリル酸アリル0.05部及びクメンハイドロパーオキサイド0.006部からなる混合物を90分間に渡って、連続的に添加し重合した。重合転化率は92%であった。
引き続き、第2工程は、第1工程による反応液をそのまま用い、反応系の温度を60℃に維持したまま、アクリル酸n−ブチル15.0部、メタクリル酸アリル0.62部及びクメンハイドロパーオキサイド0.004部からなる混合物を90分間に渡って、連続的に添加し重合させ、アクリル系ゴム質重合体を含むラテックス(L1)を得た。重合転化率は95%であった。
尚、アクリル系ゴム質重合体のゲル含量は63%、体積平均粒子径は110nm、トルエン膨潤度は13であった。
アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1−1〕の単離は、上記ラテックスに塩化カルシウムを添加して凝固及び濾別により行い、その後、水洗及び乾燥して粉末を得た。グラフト率は66%であった。
ラテックスは、2段階の重合により調製した。
第1工程は、還流冷却器、撹拌翼、温度計及び温度調節装置を備えた反応器に、アクリル酸n−ブチル10.0部、メタクリル酸アリル0.005部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、クメンハイドロパーオキサイド0.003部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.004部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.05部及びイオン交換水180部を仕込み、攪拌しながら、混合物を昇温した。その後、反応系の温度を60℃とし、80分間重合を行った。次いで、反応系の温度を60℃に維持したまま、アクリル酸n−ブチル25.0部、メタクリル酸アリル0.013部及びクメンハイドロパーオキサイド0.006部からなる混合物を90分間に渡って、連続的に添加し重合した。重合転化率は91%であった。
引き続き、第2工程は、第1工程による反応液をそのまま用い、反応系の温度を60℃に維持したまま、アクリル酸n−ブチル15.0部、メタクリル酸アリル0.62部及びクメンハイドロパーオキサイド0.004部からなる混合物を90分間に渡って、連続的に添加し重合させ、アクリル系ゴム質重合体を含むラテックス(L2)を得た。重合転化率は95%であった。
尚、アクリル系ゴム質重合体のゲル含量は58%、体積平均粒子径は105nm、トルエン膨潤度は12であった。
アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1−2〕は、上記製造例1と同様にして回収し、粉末として得た。グラフト率は62%であった。
ラテックスは、2段階の重合により調製した。
第1工程は、還流冷却器、撹拌翼、温度計及び温度調節装置を備えた反応器に、アクリル酸n−ブチル10.0部、メタクリル酸アリル0.5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部、クメンハイドロパーオキサイド0.003部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.004部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート0.05部及びイオン交換水180部を仕込み、攪拌しながら、混合物を昇温した。その後、反応系の温度を60℃とし、80分間重合を行った。次いで、反応系の温度を60℃に維持したまま、アクリル酸n−ブチル25.0部、メタクリル酸アリル0.013部及びクメンハイドロパーオキサイド0.006部からなる混合物を90分間に渡って、連続的に添加し重合した。重合転化率は91%であった。
引き続き、第2工程は、第1工程による反応液をそのまま用い、反応系の温度を60℃に維持したまま、アクリル酸n−ブチル15.0部、メタクリル酸アリル0.62部及びクメンハイドロパーオキサイド0.004部からなる混合物を90分間に渡って、連続的に添加し重合させ、アクリル系ゴム質重合体を含むラテックス(L3)を得た。重合転化率は95%であった。
尚、アクリル系ゴム質重合体のゲル含量は80%、体積平均粒子径は100nm、トルエン膨潤度は5であった。
アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1−3〕は、上記製造例1と同様にして回収し、粉末として得た。グラフト率は85%であった。
共重合体〔A2〕として、下記の2種を用いた。
3−1.共重合体(A2−1)
スチレン単位75%及びアクリロニトリル単位25%からなる共重合体であり、固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、0.6dl/gである。
3−2.共重合体(A2−2)
α−メチルスチレン単位70%及びアクリロニトリル単位30%からなる共重合体であり、固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、0.4dl/gである。
実施例1〜2及び比較例1
上記に記載の成分を、各々、表1に記載の配合割合でヘンシェルミキサーに投入し、3分間混合した。その後、スクリュー型40mm径の一軸押出機(シリンダー設定温度220℃)を用いて溶融混練し、ペレット(ランプハウジング用成形材料)を得た。このペレットを用いて、上記項目について評価し、その結果を表1に併記した。
比較例1は、熱板溶着性に劣っていた。
一方、実施例1及び2は、振動溶着性、熱板溶着性及び輝度のすべてにおいて優れていた。
Claims (3)
- 長さ100mm、幅30mm及び厚さ3mmの試験片を、温度23℃及び相対湿度50%で3時間状態調節し、その後、下記試験条件下で、加熱された熱板に接触させ、該熱板から離した際に観察される糸曳き数が3本以下であるランプハウジング用成形材料を製造する方法であって、
アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなるビニル系単量体〔b1〕を重合してアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕を得る工程と、
上記アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の共重合体〔A2〕とを、上記アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の含有量が、ランプハウジング用成形材料全量に対して10〜30質量%となるように用いて、混合する工程と、
を備え、
上記アクリル系ゴム質重合体〔a1〕が、
炭素数1〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(m11)、及び、多官能性ビニル化合物(m31)を、重合転化率85%以上で共重合する第1工程と、
該第1工程で得られた共重合体の存在下、炭素数1〜12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(m12)、及び、多官能性ビニル化合物(m32)を、重合転化率85%以上で共重合する第2工程と、を備え、
上記第1工程における上記アクリル酸アルキルエステル(m11)の使用量を、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)及び(m12)の合計量を100質量%とした場合、50〜90質量%とし、上記多官能性ビニル化合物(m31)の使用量を、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)の合計量を100質量部とした場合、0.01〜0.3質量部とし、
上記第2工程における上記アクリル酸アルキルエステル(m12)の使用量を、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)及び(m12)の合計量を100質量%とした場合、10〜50質量%とし、上記多官能性ビニル化合物(m32)の使用量を、上記アクリル酸アルキルエステル(m12)の合計量を100質量部とした場合、0.5〜10質量部とした方法により得られた、体積平均粒子径60〜150nmである共重合体であることを特徴とするランプハウジング用成形材料の製造方法。
〔試験条件〕
熱板の温度;280℃
移動速度;200mm/秒
試験片及び熱板の接触時間;15秒
試験片の溶け量;0.5mm - 上記アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の形成に用いる、上記多官能性ビニル化合物(m31)及び(m32)が、2官能性(メタ)アクリル酸エステルである請求項1に記載のランプハウジング用成形材料の製造方法。
- 上記アクリル系ゴム質重合体〔a1〕の形成に用いる、上記多官能性ビニル化合物(m31)及び(m32)の合計量が、上記アクリル酸アルキルエステル(m11)及び(m12)の合計量100質量部に対し、1.276〜1.38質量部である請求項1又は2に記載のランプハウジング用成形材料の製造方法。
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