JP5909880B2 - 水性エマルションの製造方法 - Google Patents
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水性エマルションの急激な用途拡大に伴い、塗膜性能に優れ、かつ重合安定性が良好で生産性の高い水性エマルションの製造方法が求められている。
高い塗膜性能の水性エマルションを製造する方法としては、例えば、レドックス反応による多段重合において、一段目の重合で、還元剤として硫酸第一鉄、キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用い、多層構造の重合体を水に分散させたエマルションを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
そこで、本発明は、重合安定性に優れ、耐水性に優れた塗膜を形成できる水性エマルションの製造方法を目的とする。
本発明の水性エマルションの製造方法(以下、単に製造方法ということがある)は、ラジカル重合性単量体(A)をレドックス反応により乳化重合する工程(1)と、前記工程(1)で得られたエマルション(以下、一次エマルションということがある)中で新たなラジカル重合性単量体(E)をレドックス反応により乳化重合する工程(2)とを有するものである。即ち、工程(1)で、(A)成分を一段目の重合反応単量体として重合させ、工程(2)で、(E)成分を二段目の重合反応単量体として重合させる多段重合法により、多層構造を有する水性エマルションを製造するものである。
工程(1)は、ラジカル重合性単量体(A)(以下、(A)成分ということがある)と、ラジカル重合開始剤(B)(以下、(B)成分ということがある)と、硫酸第一鉄(C)(以下、(C)成分ということがある)と、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩(EDTA−2Na)(D)(以下、(D)成分ということがある)とを反応容器に仕込み、レドックス反応により(A)成分を乳化重合して、一次エマルションを得る工程である。
(A)成分としてエチルアクリレートを用いると、塗膜としたときに、その耐水性をより向上できる。
ラジカル重合性基を2つ以上有する単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルにヒドロキシ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジオールと(メタ)アクリル酸のジエステル化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1分子当たり3個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸のポリエステル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリル(イソ)シアヌレート、イソ(テレ)フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、マレイン酸ジアリルトリス(2−アクリロイルオキシエチレン)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート。中でも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、イソ(テレ)フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が挙げられる。
自己架橋性官能基を含有するラジカル重合性単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のオキシラン基含有ラジカル重合性単量体、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のラジカル重合性アミドのアルキロール又はアルコキシアルキル化合物等が挙げられる。
これらの(A)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本発明において、(A)成分の中から炭素原子数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを必須成分として選択する。
(C)成分の添加量は、全ラジカル重合性単量体量100質量部に対して0.0001〜0.01質量部が好ましく、0.00015〜0.006質量部がより好ましい。上記下限値以上であれば、還元効率が良好で、重合安定性をより高められる。上記上限値以下であれば、水性エマルションが鉄によって着色するのを防止でき、外観に優れる水性エマルションを得られる。
(D)成分の添加量は、全ラジカル重合性単量体量100質量部に対して、0.00002〜0.0022質量部が好ましく、0.00003〜0.0013質量部がより好ましい。上記下限値以上であれば、(C)成分の溶解性、安定性をより高められ、上記上限値以下であれば、(C)成分の安定性を阻害せずに、重合安定性をより高められる。
界面活性剤としては、従来、乳化重合に用いられている界面活性剤を用いることができ、例えば、各種のアニオン性、カチオン性もしくはノニオン性の界面活性剤、又は高分子乳化剤等が挙げられる。また、界面活性剤成分中にラジカル重合性結合を持つ、反応性界面活性剤を用いてもよい。
リン酸エステル型反応性界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフマーシリーズのFP−80、FP−100、FP−120、FP−160、FP−200、FP−125(東邦化学工業株式会社社製)、アデカリアソープシリーズのPP−70、PPE−710(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
これらの界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤としてリン酸エステル型反応性界面活性剤を用いる場合、リン酸エステル型反応性界面活性剤の添加量は、全ラジカル重合性単量体量100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。リン酸エステル型反応性界面活性剤の添加量が上記上限値以下であれば、塗膜としたときの耐水性及び耐候性の低下を抑制できる。
さらにジメチルシロキサン環状オリゴマー類と、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体からなるグラフト交叉剤とを重合したポリオルガノシロキサン重合体を用いることがより好ましい。ポリオルガノシロキサン重合体と(A)成分とがグラフト重合することで、塗膜としたときに、優れた耐汚染性、耐候性、高耐水性、耐凍害性を発現できるためである。
第二還元剤の添加量は、特に限定されないが、全ラジカル重合性単量体量100質量部に対して、0.05〜0.5質量部が好ましい。上記範囲内であれば、(C)成分を効率的に還元し、重合安定性をより高められる。
工程(1)における重合時間は、得られる一次エマルション中の重合体(以下、一次重合体ということがある)の分子量等を勘案して決定でき、例えば、一次重合体の重量平均分子量が、20万〜500万となる時間が好ましい。
工程(2)は、工程(1)で得られた一次エマルションに、新たなラジカル重合性単量体(E)(以下、(E)成分ということがある)の水分散液(以下、プレエマルションということがある)と、新たなラジカル重合開始剤(F)(以下、(F)成分ということがある)の水分散液(以下、開始剤液ということがある)とを添加し、レドックス反応により(E)成分を乳化重合して水性エマルションを得る工程である。
工程(2)では、例えば、任意の温度に維持した一次エマルションに、プレエマルションと、開始剤液とをそれぞれ滴下してもよいし、プレエマルションと開始剤液とをそれぞれ一度に投入してもよい。中でも、プレエマルションと開始剤液とをそれぞれ滴下するのが好ましい。プレエマルションと開始剤液とをそれぞれ滴下することで、重合安定性をより高められ、より耐水性に優れる水性エマルションを得られる。
(E)成分としては、カルボニル基及び/又はアルデヒド基を含有するラジカル重合性単量体を使用してもよい。
カルボニル基及び/又はアルデヒド基を含有するラジカル重合性単量体としては、例えば、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルアルキルケトン等が挙げられる。
また、プレエマルション中の(E)成分の含有量は、例えば、20〜80質量%が好ましい。
(F)成分の添加量は、(B)成分の添加量を勘案して決定でき、例えば、(B)成分と(F)成分との合計が、全ラジカル重合性単量体量100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.01〜0.5質量部がより好ましく、0.01〜0.15質量部がさらに好ましく、0.01〜0.1質量部が特に好ましい。
また、開始剤液中の(F)成分の含有量は、例えば、0.1〜50質量%が好ましい。
ヒドラジン化合物としては、例えば、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の炭素数が2〜15のジカルボン酸のジヒドラジドや、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン、1−ヒドラジノカルボエチル−3−ヒドラジノカルボイソプロピル−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン等のヒダントイン骨格を有する化合物が挙げられる。
加えて、工程(2)において、(E)成分を添加する際及び(F)成分を添加する際には、重合温度を好ましくは±5℃以下、より好ましくは±0.5℃以下に保持する。重合温度を上記範囲内に保持することで、水性エマルション中の重合体を安定的に形成でき、得られる水性エマルションの成膜性及び耐水性をより向上できる。
MMA:メチルメタクリレート
2−EHA:2−エチルへキシルアクリレート
AA:アクリル酸
SiEm:ポリオルガノシロキサン重合体分散液
下記原料組成物をホモミキサーで予備混合し、圧力式ホモジナイザーを用いて200kg/cm2の圧力で強制乳化して、原料プレエマルションを得た。
次いで、攪拌装置、還流冷却管、温度制御装置及び滴下ポンプを備えたフラスコに、水(90部)及びドデシルベンゼンスルホン酸(10部)を仕込み、攪拌下に、フラスコの内温を85℃に保ちながら、前記原料プレエマルションを4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間重合を進行させ、冷却して、下記水酸化ナトリウム水溶液を加えてSiEmを調製した。固形分は18質量%であった。
原料組成物:
環状ジメチルシロキサンオリゴマーの3〜7量体混合物・・・・・98部
γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン・・・・2部
脱イオン水・・・・・310部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム・・・・・0.7部
水酸化ナトリウム水溶液・・・・・水酸化ナトリウム1.5部/脱イオン水30部
攪拌装置、還流冷却管、温度制御装置及び滴下ポンプを備えたフラスコに下記第1原料混合物を仕込み、フラスコの内温を40℃に昇温した。
第1原料混合物:
SiEm・・・・・5部(固形分0.9部)
(A)成分(MMA)・・・・・30部
界面活性剤(SR−1025(商品名)、株式会社ADEKA製、固形分25%)・・・・・5部(固形分1.25部)
脱イオン水・・・・・99部
(B)成分(パーブチルH69(商品名)、t−ブチルハイドロパーオキサイド、日油株式会社製)・・・・・0.02部
還元剤液:
(C)成分(硫酸第一鉄(II))・・・・・0.0002部
(D)成分(EDTA−2Na)・・・・・0.000054部
アスコルビン酸ナトリウム・・・・・0.12部
脱イオン水・・・・・6部
(E)成分(MMA)・・・・・37.7部
(E)成分(2−EHA)・・・・・30.8部
(E)成分(AA)・・・・・1.5部
界面活性剤(SR−1025)・・・・・3部(固形分0.75部)
28%アンモニア液・・・・・0.05部
脱イオン水・・・・・25部
開始剤液:
(F)成分(パーブチルH69)・・・・・0.03部
脱イオン水・・・・・5部
EDTA−2Naの量を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様にして水性エマルションを得た。重合安定性及び耐水性について、実施例1と同様にして評価した。
<重合安定性>
2Lの重合スケールにおいて、サーモレコーダーRT−11(ESPEC社製)を用いて、一次エマルションにプレエマルション及び開始剤液を滴下した際の温度(重合温度)を1分間隔で測定した。測定した重合温度の振れ幅を指標とし、下記の基準に従って評価した。振れ幅が小さいほど重合発熱が安定しており、重合安定性に優れていることを示す。
○:振れ幅が0.5℃未満。
△:振れ幅が0.5℃以上、2℃未満。
×:振れ幅が2℃以上。
各例の水性エマルションをガラス板に6mil(150μm)のアプリケーターにて塗装し、80℃で120分間強制乾燥した。次いで、室温まで放冷し評価用塗板とした。この評価用塗板を50℃の水に100時間浸漬し、浸漬前後における色差を色差計にて測定した。浸漬後のL値から浸漬前のL値を減じた値(ΔL値)を耐水性の指標とし、下記の基準に従って評価した。ΔL値が小さいほど白化度が低く、耐水性に優れていることを示す。
○:ΔL値が0.5未満。
△:ΔL値が0.5以上、4未満。
×:ΔL値が4以上。
一方、(D)/(C)比を0.15未満とした比較例1、及び(D)/(C)比を1.65超とした比較例2は、いずれも重合安定性が「×」であり、耐水性の評価が「×」であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、重合安定性が良好で、耐水性に優れた塗膜を形成できる水性エマルションを得られることが判った。
Claims (2)
- 炭素原子数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むラジカル重合性単量体(A)とラジカル重合開始剤(B)と硫酸第一鉄(C)とエチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩(D)とを反応容器に一括して仕込み、レドックス反応により前記ラジカル重合性単量体(A)を乳化重合する工程(1)と、前記工程(1)で得られたエマルションに、新たなラジカル重合性単量体(E)の水分散液と、新たなラジカル重合開始剤(F)の水分散液とを添加し、レドックス反応により前記ラジカル重合性単量体(E)を乳化重合する工程(2)とを有し、
(D)成分/(C)成分で表されるモル比が0.15〜1.65である水性エマルションの製造方法。 - 前記(A)成分100質量部に対して前記(B)成分0.01〜0.15質量部である請求項1に記載の水性エマルションの製造方法。
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