JP5235295B2 - 耐候性向上材を含む水性塗料 - Google Patents

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本発明は水性塗料用耐候性向上材に関するものであり、より詳しくは各種水性塗料に添加することにより、光沢保持性、耐黄変性、耐水性等の耐候性を向上させることができる水性樹脂に関するものである。
近年、メンテナンスコスト低減や省資源化による環境負荷低減の観点から、屋外等の過酷な環境下で用いられる高分子材料の高耐久化がより強く求められている。
このうち、塗料分野においては、地球環境や塗装作業環境等への配慮から、有機溶剤を媒体とする溶剤系塗料から、水を分散媒とする水性塗料への変換が図られており、水性塗料の用途が急速に拡大している。そのため、水性塗料への要求性能も高度になってきており、高度な耐候性能を有する水性塗料が提案されている。特許文献1では、分子内に不飽和二重結合を有するヒンダードアミン型光安定剤(以下、HALS)を疎水性の高いシクロヘキシル基含有重合性単量体と共重合することにより、HALS成分の塗膜からのブリードアウトがなく長期間に亘り優れた耐候性が得られるとの記載がある。また特許文献2では、多段乳化重合法によりシクロヘキシル基含有シランカップリング材存在下で、反応性HALSを最終段にて共重合させたエマルションからなる塗料では、相溶性、造膜性に優れ、長期間に亘り優れた耐候性が得られるとの記載がある。
また、水性塗料分野においては、従来、汎用的に使用されてきた比較的耐候性の低い水性塗料の塗料物性を変えずに耐候性能のみを向上させるための耐候性向上剤に関する検討もなされている。しかしながら、水性塗料については、主たる媒体が水であるため、これらを添加した場合、経時的に系の上層に浮遊するなど品質安定性に問題があった。また、攪拌直後の水性塗料を用いて成膜した場合でも塗膜中に均一に分散させることが難しく、十分な性能を発現しない問題点があった。このような問題点に対し、特許文献3では、分子内に不飽和二重結合を持たない非反応性紫外線吸収剤(UVA)、非反応性HALSを予め乳化剤で水中に分散させ、水性塗料に添加することにより水性塗料の耐候性を向上させる技術が提案されている。また、上述の特許文献2でも、多段乳化重合法によりシクロヘキシル基含有シランカップリング材存在下で、反応性HALSを最終段にて高濃度に共重合させたエマルションを、他の水性塗料へ添加して耐候性を向上する技術が提案されている。
特許第2637574号公報 特開2004−10805号公報 特公平3−46506号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、酸性官能基含有不飽和単量体(以下、酸成分)と反応性HALSを同一重合場内で乳化重合することから重合安定性に劣り、用いる乳化剤を厳選する必要があった。さらに酸成分を共重合しているため、酸成分によりHALS成分のラジカル捕捉機能が低下し、耐候性が十分とは言い難い。
特許文献2の方法では酸成分を内部に共重合し、中和した後、最終段にて反応性HALSを共重合させているため重合安定性には優れるが、共重合した酸により特許文献1と同様の理由にて耐候性が十分とは言い難い。
また、水性塗料用耐候性向上材について見た場合、特許文献3の方法では、耐候性向上剤が低分子型であるため、経時的に塗装皮膜からのブリードアウトが生じ、長期に亘って耐候性を維持することが困難であった。特許文献2の方法で得られたエマルションを添加材として用いた場合には、粒子内での酸成分とHALS成分の相互作用により、成膜時のHALS成分の拡散性が低位であり、またHALS成分のラジカル捕捉機能が低下することから、耐候性向上能は不十分であり、耐水性向上能も有していなかった。
本発明の目的は、重合安定性及び貯蔵安定性に優れ、水性塗料に添加した場合、塗膜からのブリードアウトがほとんどなく、光沢保持性、耐黄変性、耐水性等の耐候性を飛躍的に向上せしめる水性塗料用耐候性向上材を提供することにある。
発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、特定のポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散体の存在下で、特定の構造を持つ単量体を重合して得られる組成物が高い重合安定性及び貯蔵安定性を有しつつ、極めて幅広い種類の水性塗料に対して適用可能であって、所定量添加した場合、被添加水性塗料の耐候性を飛躍的に向上させることを見出した。
すなわち、本発明は、グラフト点を形成可能な官能基を有するポリオルガノシロキサン重合体(a)1〜50質量%、下記一般式(I)で表される、分子内にピペリジル基を持つエチレン性不飽和単量体(b)20〜50質量%と、前記(b)とは異なり、かつ酸性官能基含有不飽和単量体の量が0.2質量%以下であるエチレン性不飽和単量体(c)3079質量%(ただし、成分(a)、(b)、(c)の合計は100質量%)とを乳化グラフト重合して得られる共重合体(A)を含有する耐候性向上材を被添加水性塗料に添加してなる水性塗料であって、耐候性向上材中の共重合体(A)が、被添加水性塗料中に含まれる共重合体(A)とは異なり、分子内にピペリジル基を持つエチレン性不飽和単量体(b)が共重合されておらず、かつ(メタ)アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系およびアルキッド系高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(B)との固形分合計100質量部に対し、4〜10質量部含有されていることを特徴とする水性塗料に関する
Figure 0005235295
(R1は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基、Xは酸素原子又はイミノ基、Yは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基又はアルコキシル基、Zは水素原子又はシアノ基を示す。)
本発明によれば、水性塗料に添加した場合、塗膜からのブリードアウトがほとんどなく、光沢保持性、耐黄変性、耐水性等の耐候性を飛躍的に向上せしめる水性塗料用耐候性向上材を提供できる。
本発明の水性塗料用耐候性向上材(以下、向上材という)は、グラフト重合可能な官能基を有するポリオルガノシロキサン重合体(a)1〜94質量%、上記一般式(I)で表される、分子内にピペリジル基を持つエチレン性不飽和単量体(b)6〜50質量%と、エチレン性不飽和単量体(c)0〜93質量%(ただし、成分(a)、(b)、(c)の合計は100質量%)からなる共重合体(A)であり、各種水性塗料に添加されることによって、塗膜の耐候性を飛躍的に向上させるものである。
本発明の向上材に用いられる共重合体(A)は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の既知の重合法により得ることができる。中でも異層構造化による構造制御、水性塗料への添加適正等を考慮すると、乳化重合により重合することが好ましい。
本発明に使用されるグラフト点を形成可能な官能基を有するポリオルガノシロキサン重合体(a)とは、主骨格としてオルガノシロキサン骨格を有するシリコーンポリマーであり、その他の共重合体とのグラフト点としてのエチレン性不飽和基などの官能基を有することが必要である。
グラフト点を形成可能な官能基を有するポリオルガノシロキサン重合体(a)は、被添加水性塗料との相溶性を有し、十分な耐候性向上能を付与するため、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤の脱水縮合により製造することが好ましい。オルガノシロキサンとしては例えば、一般式R1 mSiO(4-m)/2(式中、R1は置換又は非置換の1価の炭化水素基であり、mは0〜3の整数を表す)で表される構造単位を有するものであり、直鎖状、分岐状もしくは環状構造を有するものである。このオルガノシロキサンが有する置換又は非置換の1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基及びそれらの水素原子をハロゲン原子又はシアノ基で置換した置換炭化水素基等を挙げることができる。
オルガノシロキサンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン等の環状化合物の他に、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンが挙げられる。なお、このオルガノシロキサンは、予め重合されたポリオルガノシロキサンであってもよい。この場合、その分子鎖末端は水酸基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基、メチルジフェニルシリル基等で封鎖されていてもよい。またこの他に、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の加水分解性シランをポリオルガノシロキサン重合体の架橋成分として用いることができる。これらの成分は必要に応じて単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
グラフト交叉剤としては、例えば、分子内に1個以上の加水分解性シリル基と、グラフト点となる1個以上のエチレン性不飽和基又はメルカプト基を含有するものを挙げることができる。加水分解性シリル基としては、重合反応性、取り扱いの容易さ等の点からアルコキシシリル基が好ましい。グラフト交叉剤の具体例としてはビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン類や3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルシラン類、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプトアルキルシラン類等が挙げられる。これらの成分は必要に応じて単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
上記のグラフト交叉剤の使用割合は、オルガノシロキサン成分とグラフト交叉剤成分の合計量中、0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%であるのがよく、0.1質量%以上のグラフト交叉剤を使用することにより、高分子量のポリオルガノシロキサン重合体(a)とエチレン性不飽和単量体成分(成分(b)及び(c))とのグラフト重合が効率良く行われ、塗膜外観や耐候性、耐水性を向上させることができる。また、30質量%以下のグラフト交叉剤を使用することにより、塗膜の耐候性を効果的に向上させることができる。また脱水縮合反応を行う際の水の量は特に規定されないが、安定性、粘度の点から100質量部〜500質量部の範囲で行うことが好ましい。
ポリオルガノシロキサン重合体(a)は、前記オルガノシロキサンとグラフト交叉剤とをホモミキサーや圧力型ホモジナイザー等で水中に強制的に乳化分散させたものに、重合開始剤としてアルキルベンゼンスルホン酸等の酸触媒を加えて重縮合させることにより製造することができ、この重縮合の後で、この酸触媒をアルカリ成分で中和することにより乳化剤として使用することもできる。
この酸触媒の使用量は、特に規定されるものではなく、目的とするポリオルガノシロキサン重合体(a)の分子量、固形分量及び重合温度等の重合条件により任意に設定できるものである。塗膜外観向上のために、得られるポリオルガノシロキサン重合体(a)の重量平均粒子径を5〜150nmにしうる量に設定することが好ましいが、酸触媒の大量の使用は塗膜の耐水性低下の原因となることから、オルガノシロキサン成分とグラフト交叉剤成分の合計量に対して2〜12質量%の量を使用するのが好ましい。
本発明の向上材は、このようにして得られるポリオルガノシロキサン重合体(a)を1〜94質量%含む必要があり、50質量%以下とすることが好ましい。ポリオルガノシロキサン重合体(a)を1〜94質量%使用することにより得られる向上材は、塗装被膜の耐候性、耐水性、柔軟性向上が可能となる。なお、このようにして得られるポリオルガノシロキサン重合体(a)の平均分子量は5,000以上であり、好ましくは50,000以上であるのがよい。また三次元架橋により分子量が測定困難なものについても十分な耐水性向上能を発揮することができる。
このような比較的高分子量のポリオルガノシロキサン重合体(a)を使用することにより、本発明の向上材は塗装被膜の耐候性、耐水性、柔軟性向上が可能となる。
本発明の向上材に用いられる共重合体(A)は、当該向上材を添加する水性塗料を構成する重合体との相溶性及び塗装皮膜の耐水性、耐候性向上の点から、一般式(I)で表されるエチレン性不飽和単量体(b)を、重合時の全成分量を100質量%としたとき、6〜50質量%用いる必要ある。単量体(b)の含有量が6質量%以上であると、耐候性を十分に向上するために、本発明の向上材を被添加水性塗料に多量に添加する必要がなく、塗料物性や塗膜物性に大きな変化を招くこともない。また、50質量%以下であれば、重合安定性及び貯蔵安定性を両立可能であり、本発明の向上材に被添加水性塗料との十分な相溶性を与えることができる。単量体(b)の含有量は、向上材の被添加水性塗料への添加量削減の点から、好ましくは10〜50質量%であり、更に好ましくは20〜50質量%である。
単量体(b)としては、紫外線安定化機能(ラジカル捕捉機能)を有するものを使用することができ、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。これらは必要に応じて1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。一般式(I)におけるR1がメチル基であるメタクリレート構造の単量体(b)を単独又は2種以上組み合わせて用いることが、本発明の向上材を含む水性塗料の耐候性向上の点から特に好ましい。
単量体(c)としては、本発明の向上材を添加する被添加水性塗料に応じて、かかる水性塗料を構成する主たる単量体を単独又は2種以上組み合わせて用いることが、改質された水性塗料の諸特性維持の点から最も好ましいが、これらに限定されるものではない。
単量体(c)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、p−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(3−)ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールなどの窒素含有重合性単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフロロエチレン等のハロゲン含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等の重合性シアン化合物、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルなどの如きカルボキシル基含有単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸及びスルホエチル(メタ)アクリレート等の如きスルホン酸基含有単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルリン酸等の酸性リン酸エステル系単量体等の酸性官能基含有不飽和単量体等を用いることができる。上記単量体(c)は単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、本発明の向上材を含む水性塗料の耐候性向上の点から、(メタ)アクリル酸エステル系不飽和単量体を用いることが好ましい。また、耐候性以外の性能を本発明の向上材に付与したい場合には、要求性能に応じて、単量体(c)を選択すれば良い。また後述するように、酸性官能基含有不飽和単量体を単量体(b)重合時以外の段階で重合することが好ましい。また酸性官能基含有不飽和単量体を単量体(b)と共に重合する場合は、酸性官能基含有不飽和単量体の量をできる限り少量に抑え、十分な量の乳化剤と共に重合することが重合安定性の点から好ましい。
酸性官能基含有不飽和単量体の量として、0.2質量%以下であることが重合安定性の点から好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
本発明の共重合体(A)のMwは、本発明の向上材を添加する水性塗料の耐候性向上能維持の点から、10,000以上であることが好ましい。高度な耐候性を求められる場合には、50,000以上であることがより好ましい。また(a)成分が三次元架橋しており分子量が測定困難な程大きい場合には、更に高度な耐水性向上能を有する。
Mwを調整する方法は特に規定しないが、開始剤量の調整による方法の他、連鎖移動剤を用いるのも有効な手段である。連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー等の公知の連鎖移動剤を用いればよい。連鎖移動剤の使用量は、使用する連鎖移動剤の種類や不飽和単量体の構成比に応じて変化させれば良い。上記連鎖移動剤は、単独、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。水性塗料用耐候性向上材として用いる場合は、ポリオルガノシロキサン重合体(a)と単量体(b)、(c)の共重合性、多層構造化、生産性、ハンドリング性の点から乳化重合法にて重合することが特に好ましい。乳化重合にて重合を行う際に使用する乳化剤としては、従来より知られる各種のアニオン性、又はノニオン性の非反応性乳化剤、さらには高分子乳化剤が挙げられる。また分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する反応性乳化剤を用いると共重合体(A)を含む水性塗料においてより高度な耐水性、耐候性が得られる。反応性乳化剤としては、例えば、(株)ADEKA製商品名「アデカリアソープSR−10」、「同SE−10」、第一工業製薬社製商品名「アクアロンKH−05」、「同KH−10」、「同HS−10」等の反応性アニオン性乳化剤、例えば、(株)ADEKA製商品名「アデカリアソープNE−10」、「同ER−10」、「同NE−20」、「同ER−20」、「同NE−30」、「同ER−30」、「同NE−40」、「同ER−40」、第一工業製薬社製商品名「アクアロンRN−10」、「同RN−20」、「同RN−30」、「同RN−50」等の反応性ノニオン性乳化剤などが挙げられる。これらは必要に応じて1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。特に高い機械安定性が必要とされる用途では、反応性アニオン性乳化剤と反応性ノニオン性乳化剤を併用することがより好ましい。乳化剤の量については特に規定しないが、本発明の向上材を含む水性塗料の耐候性、耐水性の点から全重合成分を100質量部としたとき、0.5〜10質量部の範囲内で使用することが好ましい。尚、本発明で言う不飽和単量体(c)の中には反応性乳化剤は含まないものとする。
なお共重合体粒子(A)は単層構造であっても多層構造であってもよいが、多層構造の場合、生産効率及び粒子径制御の観点から3層構造以下であることが好ましい。また、多層構造の場合、本発明の向上材を含む水性塗料の耐候性向上の点から、外層ほど単量体(b)の濃度を高くなるようにすることが好ましい。
本発明の向上材に用いられる共重合体(A)を重合するための重合開始剤は、一般的にラジカル重合に使用されるものが使用可能であり、その具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物類;2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]及びその塩類等の水溶性アゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物類等が挙げられる。これらの開始剤は単独でも使用できるほか、2種類以上の混合物としても使用できる。また、重合速度の促進、70℃以下での低温の重合が望まれるときには、例えば、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
ラジカル重合開始剤の添加量としては、通常、ラジカル重合性成分の全量に対して0.01〜10質量%の範囲である。
また、本発明の向上材に用いられる共重合体(A)は、通常粒子状に得られるが、その粒子径は特に規定されない。好ましくは、重量平均粒子径で300nm以下である。重量平均粒子径が300nm以下であれば、本発明の向上材を添加する水性塗料の種類や成膜条件に拘わらず、ラジカル捕捉機能を有する官能基が十分に分散でき、高度な耐候性向上性能を発現させることができる。重量平均粒子径としては、170nm以下がより好ましく、140nm以下が特に好ましい。また乳化剤の増加による耐水性低下を防ぐためには、重量平均粒子径が30nm以上であることが好ましい。
また、本発明の向上材に用いられる共重合体(A)のガラス転移温度(以下Tgとする)は特に規定しないが、100℃以下であることが好ましい。共重合体(A)のTgが100℃を超えると、本発明の向上材を含む水性塗料において、十分な造膜性が得られない場合があり、耐水性や耐候性を低下させる要因となりえる。共重合体(A)のTgとして、好ましくは70℃以下であり、50℃以下がさらに好ましい。なお、上記Tgとしては、共重合体(A)を構成する単量体(c)由来の構造単位のTgについて、Foxの計算式により求められる計算ガラス転移温度を使用する。Foxの式とは、以下に示すような、共重合体のガラス転移温度(℃)と、共重合モノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度(℃)との関係式である
1/(273+Tg)=Σ(W/(273+Tg))
[式中、Wはモノマーiの質量分率、TgはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
なお、ホモポリマーのTgとしては、具体的には、「Polymer Handbook 3rd Edition」(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION、1989年)に記載された値を使用することができる。
乳化重合法により共重合体(A)を合成する場合、重合開始前、重合中及び重合後、塩基性化合物の添加により系のpHを弱アルカリ性、すなわちpH7.5〜10.0程度の範囲に調整することで系の安定性を高めることができる。この塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−プロピルアミノエタノール、エトキシプロピルアミン、アミノベンジルアルコール、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。VOCを含まないことが望まれる内装用途などの場合は、無機系塩基化合物を用いることが好ましい。さらに僅かな臭気もないことが望まれる場合は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の不揮発性無機系塩基化合物を用いることが好ましい。
本発明の向上材が添加される水性塗料は、その主成分として本発明における共重合体(A)とは異なる(共)重合体(B)を含むものである。(共)重合体(B)としては、例えば、(メタ)アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキッド系等の各種高分子を使用することができる。
本発明の向上材は、水性塗料の目標耐候性能に応じて添加量を変えることができる。添加量については特に規定されないが、向上材中の共重合体(A)と被添加水性塗料中の(共)重合体(B)の合計を100質量部とした場合、共重合体(A)の比率が1〜50質量部の範囲で使用することが好ましい。添加量が1質量部以上では、本発明の向上材を含む水性塗料の耐候性能が十分向上する。50質量部以下では、本発明の向上材を含む水性塗料の特性のうち1つ以上を大幅に低下させる虞がない。また、本発明における向上材は、同一組成の共重合体(A)を単独で使用しても、組成の異なる共重合体(A)を2種以上組み合わせて使用しても良い。また、本発明の向上材及び該向上材を含む水性塗料に高度な性能を発現させるために、各種顔料、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤を、向上材及び被添加水性塗料のいずれか一方あるいは両方に添加しても良い。
本発明の向上材の添加方法としては、被添加水性塗料に上記量を添加し、機械攪拌により十分混合することが好ましい。調製された水性塗料に造膜助剤を添加する場合は、本発明の向上材と被添加水性塗料とを混合してから添加しても、各々に添加してから混合しても良い。造膜性、最低造膜温度(Minimum film forming temperature:以下、MFT)等に大きな差異がある場合は、各々に添加してから混合することが好ましい。
本発明の向上材を含む水性塗料を用いて各種材料の表面に塗膜を形成するには、例えば、噴霧コート法、ローラーコート法、バーコート法、エアナイフコート法、刷毛塗り法、ディッピング法等の各種の塗装法を適宜選択して実施すればよい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」は質量基準である。
向上材の水性樹脂としての評価は、下記方法に従って以下の項目について試験を実施した。
<試験方法>
(1)機械安定性試験
実施例1〜5、比較例1〜3の向上材について、各100gをマローン試験機にて15kgのシェアをかけて10分間試験を行い、100メッシュのナイロン紗によってろ過し、その残渣の量を測定し、以下の基準で評価をした。
「◎」 :残渣の量が0.01g未満であるかほとんど見られない。
「○」 :残渣の量が0.01以上0.1g未満である。
「△」 :残渣の量が0.1以上0.5g未満である。
「×」 :残渣の量が0.5g以上である、又は試験中にゲル化する。
(2)貯蔵安定性
実施例1〜5、比較例1〜3の向上材について、各200gを密栓可能なガラスビンに入れ50℃の恒温水槽に1週間入れる。その後取り出し、凝固物の有無と粘度を確認し、以下の基準で評価をした。
「◎」 :凝固物も無く、粘度の変化率は±20%未満である。
「○」 :凝固物も無く、粘度の変化率は±20%以上±35%未満である。
「△」 :凝固物も無く、粘度の変化率は±35%以上±50%未満である。
「×」 :凝固物が見られる。
(3)重合安定性
実施例1〜5、比較例1〜3において重合時のカレットについて、100メッシュのナイロン紗で濾過捕集し、50℃の乾燥炉で24時間乾燥させその重量を測定し、以下の基準で評価した。
「◎」 :ドライ状態のカレット量が100ppm未満である。
「○」 :ドライ状態のカレット量が100ppm以上1000ppm未満である。
「△」 :ドライ状態のカレット量は1000ppm以上であるが、重合可能。
「×」 :不安定な為、重合不可能。
また、本発明の向上材を添加した水性塗料としての試験については、下記方法で成膜用塗料を調製後、下記方法に従って試験を実施した。
<クリアー塗料の調製>
実施例1〜5、比較例1〜3の向上材を参考例1の水性塗料に対し、表2に記載の共重合体(A)と共重合体(B)の比率にて配合する。調製した水性塗料100gに対し、「サーフィノールDF−58」(商品名、エア・プロダクツ(株)製、消泡剤)0.5gを加え、十分に攪拌し100メッシュナイロン紗を用いてろ過を行い、評価用クリアー塗料を得た。リン酸亜鉛処理鋼鈑(ボンデライト#100処理鋼鈑、板厚0.8mm、70mm×150mm)に上記で作成した塗料を乾燥膜厚が50μmになるようにスプレー塗装し、その後室温で1時間放置し、80℃で1時間強制乾燥したものを、耐候性試験、耐候性向上性試験の試験塗板とした。
(4)相溶性試験
ガラス板上に8MILアプリケーターを用いてクリアー塗料を塗布し、その後室温にて1時間乾燥させた後、80℃で1時間強制乾燥したものを、相溶性評価用の塗板とした。塗膜の状態を目視で確認し、以下の基準で判定した。
「○」 :ヘイズが見られないか、見られたとしても極めて僅かである。
「×」 :ヘイズが明確に見られる。
(5)耐水性試験
ガラス板上に8MILアプリケーターを用いてクリアー塗料を塗布し、その後室温にて1時間乾燥させた後、80℃で1時間強制乾燥したものを、耐温水性評価用の塗板とした。評価塗板を室温(約40℃)にて水に1週間浸漬させた。取り出し直後の塗膜白化度ΔLを日本電色工業(株)製スペクトロカラーメーターSE−2000を用いて測定した。
「◎」 :2以下
「○」 :2より大きく5以下
「△」 :5より大きく10以下
「×」 :10より大きい
(6)耐水性向上性
「◎」 :耐水性評価において、被添加塗膜の耐水性を3段階以上向上させる。
「○」 :耐水性評価において、被添加塗膜の耐水性を2段階向上させる。
「△」 :耐水性評価において、被添加塗膜の耐水性を1段階向上させる。
「×」 :耐水性評価において、被添加塗膜の耐水性評価結果が同等又は低下させる。
(7)耐候性試験
サンシャインカーボンウエザオメーター(スガ試験機製、WEL−SUN−HC−B型)耐候試験機(ブラックパネル温度63±3℃、降雨12分間、照射48分間のサイクル)を用いて3000時間試験を行い、光沢保持率を測定し、以下の基準で判定した。
「◎」 :85%以上。
「○」 :70%以上、85%未満。
「△」 :50%以上、70%未満。
「×」 :50%未満。
(8)耐候性向上評価
<クリアー>
「◎」 :耐候性評価において、被添加塗膜の耐候性を3段階向上させる。
「○」 :耐候性評価において、被添加塗膜の耐候性を2段階向上させる。
「△」 :耐候性評価において、被添加塗膜の耐候性を1段階向上させる。
「×」 :耐候性評価における、被添加塗膜の耐候性向上が見られないか、見られたとしても1段階の向上効果もない。
<実施例>
(合成例1)
<ポリオルガノシロキサン重合体(a)の作成>
オクタメチルシクロテトラシロキサン95部と、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5部、水310部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.7部からなる組成物をホモミキサーで予備混合した後、圧力式ホモジナイザーによる19.6MPa(200kg/cm2)の圧力で強制乳化してシリコーン原料エマルジョンを得た。
次いで、水50部及びドデシルベンゼンスルホン酸5部を攪拌機、コンデンサー、加熱ジャケット及び滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコ内の温度を85℃に保ちながら5時間かけて上記のシリコーン原料エマルジョンを滴下した。滴下終了後、さらに1時間重合を進行させた後、冷却してアンモニア水を加えて中和し、エチレン性不飽和基を有するポリオルガノシロキサン重合体(a)の水性分散体を得た。固形分は20質量%、重量平均粒子径は120nmであった。
耐候性向上材
製造例1)
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプ及び窒素導入管を備えたフラスコに、脱イオン水45部、合成例1で得られたエチレン性不飽和基を有するポリオルガノシロキサン重合体(a)の水性分散体5部、表1に示す割合で配合された乳化物(A)のうち10質量%を反応容器内に仕込み、反応容器内部を窒素で置換しながら75℃まで昇温した後、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.1部を1部の水に溶解した開始剤溶液を加えシード粒子を形成した。溶液の温度を温度計にて計測し、発熱ピークを確認した後、乳化物Aの残りを内温75℃で4時間かけて滴下し、さらに内温75℃のまま2時間熟成することで乳化物Aの単量体の重合及び重合体(a)とのグラフト重合を行い、共重合体(A)の水分散体を形成した。
その後冷却を行い、60℃以下の温度で25質量%アンモニア水をpH9になるまで添加し、耐候性向上材を得た。得られた耐候性向上材中の固形分量、pH、粘度、MFT、Tgは下記表1に示す通りであった。
製造例2〜5)
製造例1と同様な方法で、表1に示された組成より耐候性向上材を製造した。得られた耐候性向上材中の固形分量、pH、粘度、MFT、Tgは下記表1に示す通りであった。
製造比較例1)
製造例1と同様のフラスコに、1段目の乳化重合として、イオン交換水60部及び表1に示された1段目プレエマルション液のうちの5質量%を仕込んだ。内温を80℃に昇温し、十分に窒素置換し、過硫酸カリウムの5%水溶液1部を添加して重合を開始した。次いで、反応系内を80℃で5分間保持し、内温を80℃に保ちながら1段目用プレエマルション液の残りを90分かけて滴下し、さらにその温度で0.5時間反応させた。その後、25%アンモニア水0.4部を添加し、pHが4になるように生成エマルションを中和した。
次に、表1に示された2段目用プレエマルション液を90分かけて、上記中和後のエマルションに滴下し、さらに80℃で2時間反応させた。これを冷却後、25%アンモニア水0.3部を系のpHが9になるまで添加して、共重合体を含む耐候性向上材を得た。得られた耐候性向上材中の固形分量、pH、粘度、MFT、Tgは下記表1に示す通りであった。
製造比較例2)
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプ及び窒素導入管を備えたフラスコに、脱イオン水45部、表1に示す割合で配合された乳化物Aのうちの5質量%と28質量%アンモニア水溶液0.2部を反応容器内に仕込み、反応容器内部を窒素で置換しながら75℃まで昇温した後、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.1部を5部の水に溶解した開始剤溶液を加えシード粒子を形成した。溶液の温度を温度計にて計測し、発熱ピークを確認した後、乳化物Aの残りを内温75℃で4時間かけて滴下し、さらに内温75℃のまま2時間熟成することで乳化物Aの単量体の重合を行い、共重合体(A)を形成した。
その後冷却を行い、60℃以下の温度で25質量%アンモニア水をpH9になるまで添加し、固形分(NV)が50%となるように適量の脱イオン水を加え、共重合体(A)を含む向上材を得た。得られた向上材中の固形分、pH、粘度、MFT、Tgは下記表1に示す通りであった。
製造比較例3)
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプ及び窒素導入管を備えたフラスコに、合成例1で得られたエチレン性不飽和基を有するポリオルガノシロキサン重合体(a)の水性分散体100部、表1に示す割合で配合された乳化物Aのうちの10質量%を反応容器内に仕込み、反応容器内部を窒素で置換しながら75℃まで昇温した。その後、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.1部を1部の水に溶解した開始剤溶液を加えシード粒子を形成する段より凝固物が発生し、残りの乳化物Aを滴下中に発生した凝固物により攪拌が困難となった為、重合を中止した。
重合体(B)を含む被添加水性塗料
(参考例1)
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプ及び窒素導入管を備えたフラスコに、脱イオン水45部と乳化剤「アデカリアソープSR−10」(商品名、(株)ADEKA製)0.2部を仕込み反応容器内部を窒素で置換した。スチレン16部、メチルメタクリレート52部、n−ブチルアクリレート30部、脱イオン水50部、乳化剤「SR−10」3部をプレ乳化し乳化物(α)とした。乳化物(α)のうち5質量%を反応容器中に仕込み、75℃まで昇温した後、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.2部を5部の水に溶解した開始剤溶液を加えシード粒子を形成した。溶液の温度を温度計にて計測し、発熱ピークを確認した後、乳化物(α)の残り45質量%を内温75℃で2時間かけて滴下し、乳化物(β)とした。残りの乳化物(α)に対し2部のアクリル酸を加え再度プレ乳化し(乳化物γ)、乳化物(β)調製1時間後より、乳化物(γ)を内温75℃で2時間かけて乳化物(β)に滴下した。その後内温75℃のまま2時間熟成することで共重合体(B)の水分散体を得た。その後冷却を行い、60℃以下の温度で28質量%アンモニア水溶液1部を添加し、被添加水性塗料を調製した。
(実施例
製造例1の共重合体(A)の耐候性向上材20g(固形分10g)と参考例1の被添加水性塗料180g(固形分90g)を密栓可能なガラス瓶に採取し、造膜助剤として「キョーワノールM」(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートの商品名:協和発酵ケミカル(株)製)8gを加え、ガラス棒で10分間十分に攪拌し、密栓して一晩放置し、塗膜評価用水性塗料を調製した。
(実施例2〜4、参考例2,3
実施例と同様な方法で、耐候性向上材中の共重合体(A)と被添加水性塗料中の共重合体(B)が表2に示された比率となるよう混合し、水性塗料を調製した。
(比較例
参考例1にて調製した被添加水性塗料200gを密栓可能なガラス瓶に採取し、造膜助剤として「キョーワノールM」8gを加え、ガラス棒で10分間十分に攪拌し、密栓して一晩放置し、塗膜評価用水性塗料を調製した。
(比較例
実施例と同様な方法で、製造比較例1〜2で得られた耐候性向上材中の共重合体(A)と被添加水性塗料中の共重合体(B)が表2に示された比率となるよう混合し、水性塗料を調製した。
製造例1〜5、製造比較例1〜2で得た耐候性向上材について、固形分(NV)、粘度、共重合粒子(A)の平均粒子径、重合安定性評価結果、機械安定性試験結果、貯蔵安定性試験結果を下記表1にまとめて示す。なお、比較例3については、重合安定性が悪く、共重合体が得られなかったことから、特性値等の測定及び評価は行っていない。粘度は、耐候性向上材の温度を25℃にし、東機産業(株)社製R−100型粘度計にて測定した値を用いた。平均粒子径は、固形分濃度1%に調整した試料を大塚電子(株)社製濃厚系アナライザーFPAR−1000を用い、25℃にて測定して得られた値を用いた。
さらに、実施例1〜4、参考例2,3、比較例1〜3で調製した水性塗料の初期光沢、相溶性、耐水性、耐候性評価試験結果を表2にまとめて示す。
Figure 0005235295
HALS1:4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
HALS2:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン
MMA:メチルメタクリレート
St:スチレン
n−BMA:ノルマルブチルメタクリレート
n−BA:ノルマルブチルアクリレート
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
SR−10:反応型アニオン性界面活性剤「アデカリアソープSR−10」(商品名、(株)ADEKA製)
ER−30:反応型ノニオン性界面活性剤「アデカリアソープER−30」(商品名、(株)ADEKA製)
NDM:ノルマルドデシルメルカプタン
Figure 0005235295
表1及び表2から明らかなように、本発明の向上材は、機械安定性、貯蔵安定性、重合安定性に優れると共に、各種水性塗料に添加した場合、顕著な耐水性、耐候性向上が図れる。
これに対して、製造比較例1〜2の耐候性向上材は、共重合体(A)が本発明の特定の組成範囲に入っていないものであり、重合安定性や貯蔵安定性が劣り、また重合可能であったとしても水性塗料に添加した場合、相溶性、耐水性向上機能、耐候性向上機能が十分ではない。製造比較例3では、単量体(b)の量が多すぎるために重合安定性が著しく損なわれ、共重合体が重合できなかった。
したがって、本発明によれば、重合安定性、機械的安定性、貯蔵安定性が良く、顕著な耐水性向上機能、耐候性向上機能を有する水性塗料用耐候性向上材及び高耐候な水性塗料を提供できることが分かる。
本発明の向上材は、セメントモルタル、スレート板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリート、金属、ガラス、磁器タイル、アスファルト、木材、防水ゴム材、プラスチック、珪酸カルシウム基材等の各種素材の表面仕上げに使用される水性塗料に添加することにより、長期間に渡って耐候性を向上させることができ、工業上極めて有益なものである。

Claims (1)

  1. グラフト点を形成可能な官能基を有するポリオルガノシロキサン重合体(a)1〜50質量%、下記一般式(I)で表される、分子内にピペリジル基を持つエチレン性不飽和単量体(b)20〜50質量%と、前記(b)とは異なり、かつ酸性官能基含有不飽和単量体の量が0.2質量%以下であるエチレン性不飽和単量体(c)30〜79質量%(ただし、成分(a)、(b)、(c)の合計は100質量%)とを乳化グラフト重合して得られる共重合体(A)を含有する耐候性向上材を被添加水性塗料に添加してなる水性塗料であって、耐候性向上材中の共重合体(A)が、被添加水性塗料中に含まれる共重合体(A)とは異なり、分子内にピペリジル基を持つエチレン性不飽和単量体(b)が共重合されておらず、かつ(メタ)アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系およびアルキッド系高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(B)との固形分合計100質量部に対し、4〜10質量部含有されていることを特徴とする水性塗料。
    Figure 0005235295
    (Rは水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基、Xは酸素原子又はイミノ基、Yは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基又はアルコキシル基、Zは水素原子又はシアノ基を示す。)
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