JP2004067749A - 水性コーティング剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中で、エチレン性不飽和単量体(B)及び加水分解性シリル基含有単量体(C)を重合してなる水性エマルジョン[I]及びコロイダルシリカ[II]を含有してなる水性コーティング剤組成物。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エマルジョンの放置安定性、塗膜の硬度、耐汚染性、耐候性、耐水性、耐アルカリ性、耐凍害性(温冷条件の繰り返しにおいてもクラック発生がない)に優れ、とりわけ、塗膜の硬度、耐アルカリ性、耐汚染性に非常に優れた水性コーティング剤組成物に関するもので、建材塗料、接着剤、紙コーティング剤として有用な水性コーティング剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題への配慮から、塗料や接着剤、紙コーティング剤等の分野において、水系樹脂が広く使用されている。
例えば、ポリアルコキシポリシロキサンあるいはテトラアルコキシシランや、アルコキシシリル基(加水分解性シリル基)含有単量体等を含有する水系樹脂、特にアクリル−シリコン系樹脂は常温硬化性を有し、高硬度の塗膜を形成し、耐候性、耐汚染性等の性能に優れるので従来より接着剤や塗料用バインダー、紙コーティング剤として使用されている。
【0003】
かかる水系樹脂として、例えば、▲1▼特開平11−80651号公報では、耐候性、耐汚染性、初期乾燥性を低下させることなく防水性を得る目的で、(a)(メタ)アクリル酸エステル、(b)カルボキシル基含有モノマー、(c)1分子中に少なくとも2個以上の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物、及び(d)その他の重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を乳化重合してなる共重合体(I)をコア成分とし、これを含む水分散液中に(e)(メタ)アクリル酸エステル、(f)カルボニル基含有モノマー、及び(g)その他の重合性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を加えて乳化重合してなる共重合体(II)をシェル成分とする共重合体分散液(A)、及び1分子中に少なくとも2個以上のヒドラジド基又はセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体(B)を主成分とする水性塗料組成物で、かつ共重合体(I)及び/又は(II)を製造するためのモノマー混合物に特定のポリシロキサン基含有モノマーを含有させる樹脂が開示されている。
【0004】
又、本出願人も▲2▼特開2000−53919号公報において、乳化液の放置安定性、塗膜の耐候性、耐汚染性、耐水性、耐溶剤性を改善する目的で、ポリアルコキシポリシロキサン(A)、不飽和単量体(B)、乳化剤(C)を含む水媒体中において油滴の径が1000nm以下になるように予め乳化させた水性乳化液を重合開始剤(D)の存在下に重合するシリコン含有水性コーティング剤を提案した。
【0005】
更に、▲3▼特願2001−34819号においては、乳化液の放置安定性、塗膜の耐候性、耐汚染性、耐水性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐凍害性に優れた水系コーティング剤組成物を得る目的で、架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中で、エチレン性不飽和単量体(B)及び加水分解性シリル基含有単量体(C)を重合してなる水性コーティング剤組成物を提案している。
【0006】
一方、塗膜の耐候性、耐汚染性、耐溶剤性に優れた水系コーティング剤組成物を得るための方法として、水系樹脂にコロイダルシリカを含有させる方法も提案されている。
【0007】
かかるコロイダルシリカを含有してなる樹脂としては、例えば▲4▼特開昭59−152972号公報において、ビニルシランとアクリル系単量体を、重合性乳化剤を用いて乳化重合して得たガラス転移温度70度以下の共重合体を含有する水性エマルジョンに、その固形分100重量部に対し、コロイダルシリカ20〜400重量部を配合してなる耐水性コーティング組成物が提案されており、水性エマルジョンとコロイダルシリカを配合することで、強固な塗膜を形成することが可能で耐水性に優れた皮膜を得ることが記載されている。
【0008】
又、▲5▼特開昭59−71316号公報では、有機−無機ハイブリッド型被覆用組成物として、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルおよびアルケニルベンゼンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(a)と、分子内に重合性不飽和二重結合とアルコキシシリル基とを含有する単量体(b)と、コロイダルシリカ(c)とを、それぞれ固形分換算で、(a)100重量部に対して(b)0.1〜10重量部と、(c)1〜200重量部となる割合で用い、陰イオン界面活性剤および/または非イオン界面活性剤の存在下に、水系媒体中で乳化共重合せしめて得られる有機−無機ハイブリッド型重合体の水性分散体を含んで成る水分散性被覆組成物が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲1▼特開平11−80651号公報開示技術では、貯蔵安定性や耐候性、耐水性等の点で改善されているものの、耐アルカリ性については満足のいくものではなく、例えば、外装塗料用樹脂として用いた場合、基材により溶出したアルカリ成分が塗膜を浸食し、塗膜に膨れ、白化、光沢低下、クラック等が発生するという問題があり、又、耐汚染性の点でも充分ではなかった。
【0010】
又、▲2▼特開2000−53919号公報開示技術については、乳化液の放置安定性、塗膜の耐候性、耐汚染性、耐水性、耐溶剤性は改善されるものの、上記と同様、耐アルカリ性の点で改良の余地が残るものであった。
【0011】
一方、▲4▼特開昭59−152972号或いは▲5▼特開昭59−71316号公報開示技術においては、無機物を配合することにより耐汚染性が向上すると考えられるが、更なる耐汚染性を向上させるために無機物を増量する、或いは塗膜の硬度を上げるといった方法を採ると、耐凍害性、耐クラック性が低下するといった問題点が生じるものであった。
【0012】
近年では特に、水系樹脂が建材用途に用いられる場合においては、長期間の使用においてもメンテナンスを施す必要がないといったことが、環境面及び経済面からも有効であり、より一層の耐汚染性の向上が求められており、上記▲1▼、▲2▼、▲4▼、▲5▼開示技術では、それらの要求性能を十分に満足するものは未だ得られていないものである。
尚、▲3▼特願2001−34819号技術においては、充分な耐アルカリ性、耐汚染性は得られているものの、塗膜の硬度についてはまだまだ不充分であることに加え、上記の如き耐汚染性についても更なる改良が求められるものであった。
【0013】
そこで、本発明ではこのような背景下において、エマルジョンの放置安定性、塗膜の硬度、耐汚染性、耐候性、耐水性、耐アルカリ性、耐凍害性に優れ、とりわけ塗膜の硬度、耐アルカリ性、耐汚染性に非常に優れた水性コーティング剤組成物を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
しかるに、本発明者等はかかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中で、エチレン性不飽和単量体(B)及び加水分解性シリル基含有単量体(C)を重合して得られる水性エマルジョン[I]及びコロイダルシリカ[II]を含有してなる水性コーティング剤組成物が、上記目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
【0015】
即ち、耐侯性、耐水性、耐溶剤性、耐汚染性、耐凍害性、耐アルカリ性に優れた水性エマルジョン[I]にコロイダルシリカを配合することで樹脂とコロイダルシリカ間に強固な結合を形成し、耐凍害性や耐アルカリ性を維持しつつ、塗膜の硬度、耐汚染性に極めて優れた塗膜を得ることが可能となる。
本発明においては、特に加水分解性シリル基含有単量体(C)が、トリアルコキシシリル基含有単量体であることが耐候性、耐水性、耐アルカリ性の点で好ましい。
【0016】
又、本発明では、架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)が、アクリル系単量体(a1)及び架橋性単量体(a2)を重合して得られること、更にはアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンのゲル分率が30%以上であることが耐アルカリ性と耐凍害性を両立させる点で好ましく、特にはアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンに、更にテトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)を含有させてなることが耐汚染性や耐候性の点で好ましい。
【0017】
更に、本発明において、架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンが、アクリル系単量体(a1)と架橋性単量体(a2)とを、又はアクリル系単量体(a1)と架橋性単量体(a2)とテトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)とを、水媒体中において、乳化剤(D)の存在下に、油滴の径が1000nm以下になるように予め乳化させた水性乳化液を、重合開始剤(E)の存在下に重合してなるとき本発明の効果を顕著に発揮する。
又、かかる重合の際に、更に加水分解抑制剤(F)を添加してなることが水性エマルジョンの安定性の点で好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明で用いられる架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンとしては、架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)を含有していれば特に限定されないが、該アクリル系樹脂(A)としては、例えばアクリル系単量体(a1)及び架橋性単量体(a2)を重合したものが挙げられる。
【0019】
かかるアクリル系単量体(a1)としては、特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アクリルクロライド等が挙げられ、中でもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0020】
架橋性単量体(a2)としては、特に限定されないが、例えばエチレン性不飽和基を1分子中に2個以上含む多官能性モノマーや、加水分解性シリル基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、水酸基含有単量体、エポキシ基含有単量体、アミド基やメチロール基、カルボニル基、アセトアセチル基を含有する単量体等の官能基を有する単量体が挙げられる。
【0021】
多官能性モノマーとしては、具体例として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシフォスフェート、ジアリルテレフタレート、テトラアリルオキシエタン、ジビニルベンゼン、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられる。
【0022】
加水分解性シリル基含有単量体としては、シリル基に少なくとも1つ以上のアルコキシ基を有したものであれば特に限定されず、例えば、γ−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロピオキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロピオキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシデシルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシドデシルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシオクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられ、1種又は2種以上が用いられる。中でも、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン等が好適である。
【0023】
カルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸又はそのモノエステル、フマル酸又はそのモノエステル、(無水)マレイン酸又はそのモノエステル、シトラコン酸、リシノール酸、又はそれらの塩(アミン塩、ナトリウム塩、カリウム塩)等が挙げられる。
【0024】
水酸基含有単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチルカルビトールアクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート、4−ブチルヒドロキシアクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、アリルアルコール等が挙げられる。
【0025】
エポキシ基含有単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、N−(4(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル)アクリルアミド、ビスフェノールAジグリシジルエーテルモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
アミド基やメチロール基、カルボニル基、アセトアセチル基を含有する単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ブトキシN−メチロールアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0027】
又、本発明では必要に応じて、その他の単量体としてスチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、アルキルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等を併用することもできる。
これらは単独もしくは2種以上併用することができる。
【0028】
本発明の架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンは、上記アクリル系単量体(a1)及び架橋性単量体(a2)を重合して得られるが、更にテトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)を含有させてなることが耐汚染性や耐候性が向上する点で好ましい。
【0029】
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロピオキシシラン、テトラブトキシシラン等が好ましく挙げられ、中でも重合後の加水分解率を高くしやすい点で、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0030】
テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物としては、上記テトラアルコキシシランを加水分解縮合することにより得られ、縮合度は加水分解率を制御することにより調整できる。かかる縮合度については縮合物が液状を保持していれば特に限定されない。又、分岐構造やミクロなゲル構造を有していてもよい。
【0031】
又、加水分解縮合は、公知の方法によることができ、例えば、上記テトラアルコキシシランに所定量の水を加えて酸又はアルカリ触媒の存在下に副生するアルコールを留去しながら通常、室温程度〜100℃で反応させる。この反応によりアルコキシシランは加水分解し、更に縮合した部分加水分解縮合物が得られる。かかるテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物については、平均縮合度が4以上の部分加水分解縮合物を用いることがエマルジョンでの臭気が少なく、塗膜とした場合の塗膜物性の経時変化が小さい点で好ましい。
【0032】
本発明の架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンを製造するに当たっては、特に制限されないが、重合を安定に進行させるために、以下の方法が好ましい。
【0033】
即ち、アクリル系単量体(a1)と架橋性単量体(a2)とを、又はアクリル系単量体(a1)と架橋性単量体(a2)とテトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)とを、水媒体中において、乳化剤(D)の存在下に、油滴の径が1000nm以下になるように予め乳化させた水性乳化液を、重合開始剤(E)の存在下に重合してなる方法である。
【0034】
上記で用いられる乳化剤(D)としては、アクリル系単量体(a1)、架橋性単量体(a2)、テトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)の各成分の混合液を水媒体中に乳化させ得る機能を持つものであれば特には限定されず、反応性(イオン性、非イオン性)界面活性剤、非反応性(イオン性、非イオン性)界面活性剤等が挙げられるが、塗膜の耐水性が向上する点で反応性界面活性剤が好ましい。
【0035】
反応性界面活性剤とは、アクリル系単量体(a1)、架橋性単量体(a2)とラジカル反応性を有するイオン性、非イオン性の界面活性剤であればよく、該反応性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(1)〜(9)のような構造をもつものが挙げられる。
【0036】
【化1】
【0037】
【化2】
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
〔ここで、一般式(1)〜(9)において、R1はアルキル基、R2は水素又はメチル基、R3はアルキレン基、nは1以上の整数、m、lは1以上の整数(m+l=3)、Xは水素、SO3NH4、SO3Naのいずれかである。〕
【0046】
上記界面活性剤として具体的には、「アデカリアソープSE−20N」(アニオン性)、「アデカリアソープSE−10N」(アニオン性)、「アデカリアソープNE−10」(ノニオン性)、「アデカリアソープNE−20」(ノニオン性)、「アデカリアソープNE−30」(ノニオン性)、「アデカリアソープNE−40」(ノニオン性)、「アデカリアソープPP−70」(アニオン性)、「アデカリアソープPP−710」(アニオン性)、「アデカリアソープER−10」(ノニオン性)、「アデカリアソープER−20」(ノニオン性)、「アデカリアソープER−30」(ノニオン性)、「アデカリアソープER−40」(ノニオン性)、「アデカリアソープSR−10N」(アニオン性)、「アデカリアソープSR−20N」(アニオン性)〔以上、旭電化工業(株)製〕、「エレミノールJS−2」(アニオン性)、「エレミノールRS−30」(アニオン性)〔以上、三洋化成工業(株)製〕、「ラテムルS−180A」(アニオン性)、「ラテムルS−180」(アニオン性)〔以上、花王(株)製〕、「アクアロンBC−05」(アニオン性)、「アクアロンBC−10」(アニオン性)、「アクアロンBC−20」(アニオン性)、「アクアロンHS−05」(アニオン性)、「アクアロンHS−10」(アニオン性)、「アクアロンHS−20」(アニオン性)、「アクアロンRN−10」(ノニオン性)、「アクアロンRN−20」(ノニオン性)、「アクアロンRN−30」(ノニオン性)、「アクアロンRN−50」(ノニオン性)、「ニューフロンティアS−510」(アニオン)、「アクアロンKH−05」(アニオン性)、「アクアロンKH−10」(アニオン性)〔以上、第一工業製薬(株)製〕、「フォスフィノ−ルTX」(アニオン性)〔東邦化学工業(株)製〕)等の市販品が挙げられる。
【0047】
重合開始剤(E)としては、特に制限されず、水溶性、油溶性のいずれのものも用いることが可能で、具体的には、アルキルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2’−アゾビス(2−メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕−プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド}、各種レドックス系触媒(この場合酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等が、還元剤としては亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が用いられる。)等が挙げられ、これらの中でも2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
【0048】
尚、該重合開始剤(E)は重合缶内に予め加えておいてもよいし、重合開始直前に加えてもよいし、必要に応じて重合途中に追加添加してもよいし、又、乳化の前の(a1)、(a2)の混合液、あるいは(a1)、(a2)、(a3)の混合液に予め添加したり、該乳化後の乳化液に添加してもよい。添加に当たっては重合開始剤(E)を別途溶媒に溶解して添加したり、溶解した重合開始剤(E)を更に乳化状にして添加してもよい。
【0049】
更に上記アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンの製造において、重合を安定に行うために重合の際に、加水分解抑制剤(F)を添加して予備乳化させた乳化液として用いることが好ましく、該加水分解抑制剤(F)は特に限定されないが、塩基で中和してなる酸官能基及び/又はアミンイミド基を含有する化合物であることが好ましい。
該化合物としては分散機能を有する高分子化合物、pH緩衝機能を有する化合物、不飽和基を含有する化合物、重合開始剤等が挙げられるが、分散機能を有する高分子化合物が特に好ましい。
【0050】
まず、分散機能を有する高分子化合物について述べる。該高分子化合物はスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基等の酸官能基をもち、該官能基を塩基で中和した高分子化合物等が挙げられるが、カルボキシル基含有重合体を塩基で中和してなる高分子化合物が特に好ましい。
【0051】
該カルボキシル基含有重合体とは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、リシノール酸(好ましくは(メタ)アクリル酸、フマル酸)等のカルボキシル基含有単量体を単独重合又は他の不飽和単量体と共重合させて得られる。
【0052】
又、上記高分子化合物は、アミンイミド基を含有するものも好ましく、該高分子化合物はアミンイミド基含有単量体を単独重合、又は他の不飽和単量体と共重合させて得られる。
【0053】
該アミンイミド基含有単量体としては、1,1,1−トリメチルアミンメタクリルイミド、1,1−ジメチル−1−エチルアミンメタクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミンメタクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミンメタクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−ヒドロキシ−3’−フェノキシプロピル)アミンメタクリルイミド、1,1,1−トリメチルアミンアクリルイミド、あるいは下記一般式(10)、一般式(11)で示される単量体が挙げられる。
【0054】
【化10】
【0055】
【化11】
【0056】
共重合の際に用いる他の不飽和単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アクリルクロライド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、アルキルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられ、単独もしくは2種以上併用して用いられる。
【0057】
上記の高分子化合物の分子量については、特には限定されないが、数平均分子量として、500〜500,000が好ましく、更に好ましくは700〜30,000で、該分子量が500未満では高分子化合物の製造時の効率が悪くなり、500,000を越えると高粘度化し、該高分子化合物の重合時の希釈剤が多くなり不経済であるとともに、樹脂組成物においても粗粒子が多く生成する問題があり好ましくない。
【0058】
上記カルボキシル基含有共重合体を更に塩基性化合物で中和するに当たり、該塩基性化合物としては、例えばアンモニア、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モルフォリン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノイソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノール、ジイソプロパノールアミン、N−エチル−ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、好ましくはアンモニア、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジエチルアミンが用いられる。
【0059】
加水分解抑制剤(F)がpH緩衝機能を有する化合物である場合については、該化合物としては、反応系をpH6〜10に保持できるものであれば特に制限されないが、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム等が挙げられる。
又、上記加水分解抑制剤(F)は、同種異種の化合物を2種以上組合せて使用することもできる。
【0060】
上記の各成分の仕込み方法としては、特に限定されないが、水に乳化剤(D)を溶解した後その他の成分を仕込む方法、又は、アクリル系単量体(a1)及び架橋性単量体(a2)、あるいはアクリル系単量体(a1)、架橋性単量体(a2)及びテトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)の混合液に乳化剤(D)を溶解した後その他の成分を仕込む方法が好ましい。
【0061】
アクリル系単量体(a1)、架橋性単量体(a2)の配合量については、アクリル系単量体(a1)と架橋性単量体(a2)の合計量に対して、架橋性単量体(a2)が0.01〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%である。架橋性単量体(a2)の配合量が0.01重量%未満では塗膜の耐アルカリ性と耐凍害性の両立が困難で、10重量%を越えると耐凍害性が低下し好ましくない。
【0062】
又、テトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)を併用する場合は、その配合量は、アクリル系単量体(a1)と架橋性単量体(a2)の合計量100重量部に対して、1〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜100重量部、特に好ましくは10〜80重量部である。かかる配合量が1重量部未満では塗膜の耐汚染性や耐候性の向上が期待できず、200重量部を越えると重合安定性が低下し好ましくない。
【0063】
又、乳化剤(D)の配合量は、アクリル系単量体(a1)と架橋性単量体(a2)の合計量、又はアクリル系単量体(a1)、架橋性単量体(a2)及びテトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)の合計量100重量部に対して、0.5〜7重量部とすることが好ましく、更に好ましくは1〜5重量部である。乳化剤(D)が0.5重量部未満では、充分な乳化性能を保持できず乳化液を1μm以下とすることが難しく、重合を安定に行うことが難しくなり、7重量部を越えると塗膜の耐水性が低下し好ましくない。
【0064】
加水分解抑制剤(F)を配合する場合、その配合量は、アクリル系単量体(a1)と架橋性単量体(a2)の合計量、又はアクリル系単量体(a1)、架橋性単量体(a2)及びテトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)の合計量100重量部に対して、0.05〜5重量部とすることが好ましく、更に好ましくは0.1〜3重量部である。かかる配合量が0.05重量部未満では重合が安定に行うことができず、5重量部を越えても重合安定性が低下し、又塗膜の耐水性も低下し好ましくない。
【0065】
水の使用量は、アクリル系単量体(a1)と架橋性単量体(a2)の合計量、又はアクリル系単量体(a1)、架橋性単量体(a2)及びテトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)の合計量100重量部に対して、50〜400重量部が好ましく、更には70〜200重量部とすることが好ましく、50重量部未満では乳化液が高粘度となり、又、重合安定性も低下することとなり、400重量部を越えると得られるコーティング剤組成物の濃度が低くなり塗膜とする際の乾燥性が低下し好ましくない。
【0066】
乳化するに当たっては、高圧ホモジナイザー、超音波処理装置等(例えば、GAULIN Homogenizer(GAULIN社製)、ナノマイザー(ナノマイザー(株)製)、Niro Soavi Homogenizer(Niro Soavi社製)、超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所製)、CLEAMIX(エム・テクニック(株)製)、ハイドロシャー(同栄商事(株)製)等)の乳化装置を用いることが重要で、高圧ホモジナイザーを用いる際の圧力は10〜1500kg/cm2にすることが好ましく、更に好ましくは30〜1000kg/cm2である。
【0067】
乳化時の温度は、乳化中にアクリル系単量体(a1)及び架橋性単量体(a2)が反応しない程度の温度であれば問題なく、通常5〜60℃程度が適当で、乳化時に発熱する場合は必要に応じて冷却する。又、高圧ホモジナイザーを用いる場合、乳化液の処理(Pass)回数は1〜5回程度が好ましい。
尚、上記の乳化する前に、撹拌、震動等により予備乳化しておくのが好ましい。
【0068】
上記の乳化装置により、アクリル系単量体(a1)及び架橋性単量体(a2)、又はアクリル系単量体(a1)、架橋性単量体(a2)及びテトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)を乳化剤(D)の存在下に水媒体中で乳化させる。
【0069】
水性乳化液中の油滴成分の粒子径については、1000nm以下にすることが好ましく、より好ましくは50〜700nm、更に好ましくは100〜500nmである。該油滴成分の粒子径が1000nmを越えると樹脂組成物の重合安定性が低下するので好ましくない。
【0070】
上記の予備乳化終了後、水性乳化液を昇温して重合を開始するのであるが、その方法としては、例えば、
(ア)水性乳化液全量をそのまま昇温して重合する、
(イ)水性乳化液の一部を昇温して重合を開始し、残りの水性乳化液を滴下又は分割添加して重合を継続する、
(ウ)反応缶に水(必要に応じて一部の乳化剤及び一部又は全部の加水分解抑制剤、重合開始剤を仕込んでおいてもよい)を仕込んで昇温した後、水性乳化液を全量滴下又は分割添加して重合する、
等が挙げられる。
中でも、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンの量にもよるが、重合温度の制御が容易であり、重合安定性も良い点で(イ)又は(ウ)の方法が最も好ましい。
【0071】
重合開始剤(E)は、アクリル系単量体(a1)、架橋性単量体(a2)の合計量100重量部に対して、0.05〜5重量部使用することが好ましく、更に好ましくは0.1〜3重量部である。かかる使用量が上記範囲より少ない場合は重合速度が遅くなるとともに重合が不安定となりやすく、上記範囲を越えると架橋性重合体が生成されにくくなり好ましくない。
【0072】
上記(ア)〜(ウ)の方法については以下の通りである。
(ア)の重合条件としては、通常40〜90℃程度の範囲が適当であり、昇温開始後1〜8時間程度で反応が終了する。
(イ)の重合条件としては、反応液の1〜50重量%を40〜90℃で0.1〜4時間重合した後、残りの反応液を0.5〜5時間程度かけて滴下又は分割添加して、必要によりその後同温度で0.5〜3時間程度熟成する。
(ウ)の重合条件としては、水を反応液の5〜100重量%となるように仕込み、40〜90℃に昇温し、反応液を0.5〜5時間程度かけて滴下又は分割添加し、必要によりその後同温度で0.5〜3時間程度熟成する。
【0073】
得られたアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンの樹脂成分の粒子径については50〜500nmの微粒子であることが好ましい。
又、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンの樹脂分濃度は10〜65重量%とすることが好ましく、特には20〜55重量%が好ましい。
【0074】
かくして、本発明で用いられる架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンが得られるわけであるが、本発明では特に、かかるアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンのゲル分率が30%以上であることが好ましく、より好ましくは40〜90%、特に好ましくは50〜80%である。かかるゲル分率が30%未満では塗膜の耐アルカリ性と耐凍害性の両立ができず好ましくない。
【0075】
該アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンのゲル分率を30%以上に調整する方法としては、特に限定されないが、多官能モノマーや自己架橋性官能基を有するモノマー(加水分解性シリル基含有単量体やメチロール基含有単量体等)を共重合する方法や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、カルボニル基、アセトアセチル基等の官能基を有するモノマーを共重合し、その重合中及び/又は重合後に該官能基と反応しうる架橋剤を添加する方法等が挙げられる。
【0076】
尚、ゲル分率は、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンに造膜助剤を添加したものの、60℃で1時間乾燥した30μmの塗膜において、酢酸エチルに20℃で24時間浸漬し乾燥したときの、浸漬前の塗膜重量に対する浸漬後の残存塗膜重量の割合(%)として求められる。
【0077】
又、上記アクリル系単量体(a1)、架橋性単量体(a2)、テトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)、乳化剤(D)、重合開始剤(E)、加水分解抑制剤(F)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で公知の連鎖移動剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、造膜助剤等を添加してもよい。
【0078】
次に、本発明で用いられる水性エマルジョン[I]を得る方法について説明する。
本発明では、上記で得られた架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中で、エチレン性不飽和単量体(B)及び加水分解性シリル基含有単量体(C)を重合して水性エマルジョン[I]が得られるわけであるが、かかるエチレン性不飽和単量体(B)としては、特に限定されず、上記アクリル系単量体(a1)と同様の単量体、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アクリルクロライド等のアクリル系単量体や、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、アルキルビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等、更には、カルボキシル基含有単量体、水酸基含有単量体、エポキシ基含有単量体、アミド基やメチロール基、カルボニル基、アセトアセチル基を含有する単量体等の官能基を有する単量体等が挙げられる。これらは単独もしくは2種以上併用することができる。
【0079】
カルボキシル基含有単量体、水酸基含有単量体、エポキシ基含有単量体、アミド基やメチロール基、カルボニル基、アセトアセチル基を含有する単量体等の官能基を有する単量体としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0080】
上記の中でも、エチレン性不飽和単量体(B)として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0081】
又、加水分解性シリル基含有単量体(C)としては、シリル基に少なくとも1つ以上のアルコキシ基を有したものであれば特に限定されず、例えば上記と同様の、γ−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロピオキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロピオキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシデシルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシドデシルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシオクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられ、1種又は2種以上が用いられる。
【0082】
中でも好ましいものとしては、γ−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シランが挙げられるが、特に好ましいものとしては、γ−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシリル基に3つのアルコキシ基を有したトリアルコキシシリル基含有単量体が挙げられる。
【0083】
アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中でのエチレン性不飽和単量体(B)と加水分解性シリル基含有単量体(C)の重合に当たっては、特に限定されないが、エチレン性不飽和単量体(B)及び加水分解性シリル基含有単量体(C)を予備乳化させた水性乳化液をアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中で重合することが、重合安定性の点から好ましい。
【0084】
予備乳化させた水性乳化液を得る際には乳化剤(D’)を用いることが好ましく、かかる乳化剤(D’)としては、上記の乳化剤(D)と同様のものが挙げられ、1種又は2種以上併用して用いられる。
【0085】
更に、エチレン性不飽和単量体(B)と加水分解性シリル基含有単量体(C)を予備乳化させた水性乳化液を重合するに際しては上記と同様、重合開始剤(E)が用いられる。
尚、該重合開始剤(E)は重合缶内に予め加えておいてもよいし、重合開始直前に加えてもよいし、必要に応じて重合途中に追加添加してもよいし、又、乳化の前の(B)、(C)の混合液に予め添加したり、該乳化後の乳化液に添加してもよい。添加に当たっては重合開始剤(E)を別途溶媒に溶解して添加したり、溶解した重合開始剤(E)を更に乳化状にして添加してもよい。
【0086】
上記の各成分の仕込み方法としては、特に限定されないが、水に乳化剤(D’)を溶解した後その他の成分を仕込む方法、又は、エチレン性不飽和単量体(B)と加水分解性シリル基含有単量体(C)の混合液に乳化剤(D’)を溶解した後その他の成分を仕込む方法が好ましい。
【0087】
エチレン性不飽和単量体(B)、加水分解性シリル基含有単量体(C)の配合量については、エチレン性不飽和単量体(B)と加水分解性シリル基含有単量体(C)合計量に対して、加水分解性シリル基含有単量体(C)が0.05〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜15重量%、特に好ましくは0.2〜10重量%である。加水分解性シリル基含有単量体(C)が0.05重量%未満では塗膜の耐水性、耐アルカリ性、耐候性が不充分となり、20重量%を越えると重合安定性が低下するとともに耐凍害性が低下することとなり好ましくない。
【0088】
又、乳化剤(D’)の配合量は、エチレン性不飽和単量体(B)と加水分解性シリル基含有単量体(C)の合計量100重量部に対して0.3〜7重量部とすることが好ましく、更に好ましくは0.5〜5重量部である。0.3重量部未満では、充分な乳化性能を保持できず重合安定性が低下することとなり、7重量部を越えるとコーティング剤組成物を塗膜にした時、耐水性が悪くなり好ましくない。
【0089】
水の使用量は、エチレン性不飽和単量体(B)と加水分解性シリル基含有単量体(C)の合計量100重量部に対して30〜400重量部が好ましく、更には70〜200重量部とすることが好ましく、30重量部未満では水性乳化液が高粘度となり、又、重合安定性も低下することとなり、400重量部を越えると生成する水性コーティング剤組成物の濃度が低くなり、塗膜化する際の乾燥性が低下し好ましくない。
【0090】
次に、水性乳化液を前記のアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中で昇温して重合を開始するのであるが、重合開始剤(E)の使用量は、エチレン性不飽和単量体(B)と加水分解性シリル基含有単量体(C)の合計量100重量部に対して0.03〜5重量部、特には0.05〜3重量部であることが好ましい。かかる使用量が上記範囲より少ない場合は重合速度が遅くなり、上記範囲を越えるとコーティング剤組成物を塗膜にしたとき、耐溶剤性、耐候性が低下する場合があり好ましくない。
【0091】
重合に当たっては、例えばアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンと水性乳化液を混合した後、そのまま昇温して重合する方法、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中に水性乳化液の一部を混合し昇温して重合を開始し、残りの水性乳化液を全量滴下又は、分割、連続滴下して重合を継続する方法、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンの存在下に水性乳化液を滴下又は分割、連続滴下して重合する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
重合条件としては、特に制限されないが、通常40〜90℃程度の範囲で行うことが好ましい。
【0092】
重合終了後は、アンモニア水等のアルカリ液を添加し、pH6〜8、好ましくは7〜8に調整することにより、水性コーティング剤組成物として有用な水性エマルジョン[I]が得られる。
かかる水性エマルジョン[I]の粒子径は50〜1000nm、特には100〜500nmの微粒子であることが好ましい。
【0093】
又、上記で得られた水性エマルジョン[I]においては、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンの含有量が、全固形分に対して固形分換算で10〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜75重量%、特に好ましくは30〜70重量%である。該含有量が10重量%未満では塗膜の耐汚染性が不充分となり、80重量%を越えると耐アルカリ性、耐凍害性が低下し好ましくない。
【0094】
更に、上記で得られた水性エマルジョン[I]においては、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg1)が−50〜70℃の範囲であることが好ましく、特に好ましくは−30〜60℃である。かかるガラス転移温度(Tg1)が−50℃未満では塗膜の硬度や耐候性が低下する傾向にあり、70℃を越えると耐凍害性が低下する傾向にあり好ましくない。
又、水性エマルジョン[I]は、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中で、エチレン性不飽和単量体(B)及び加水分解性シリル基含有単量体(C)を重合して得られるが、エチレン性不飽和単量体(B)と加水分解性シリル基含有単量体(C)との共重合体のガラス転移温度(Tg2)は、−30〜100℃の範囲であることが好ましく、特に好ましくは−10〜80℃である。かかるガラス転移温度(Tg2)が−30℃未満では塗膜の硬度や耐候性が低下する傾向にあり、80℃を越えると耐凍害性が低下する傾向にあり好ましくない。
更に、上記Tg1とTg2との差が5〜100℃、特には10〜90℃であることが好ましく、かかる差が上記範囲以外では耐候性と耐凍害性の両立が難しくなり好ましくない。
【0095】
又、本発明において、上記水性エマルジョン[I]と混合して用いられるコロイダルシリカ[II]としては、その平均粒径が5〜100nmであることが好ましく、更に好ましくは10〜80nmである。コロイダルシリカの粒子径が5nmより小さいとエマルジョンの安定性が低下し、また不揮発分が低くなり、経済的な観点からも好ましくない。又、100nmを越えると緻密な塗膜が得られず、耐侯性、耐水性が低下し好ましくない。
【0096】
コロイダルシリカ[II]の配合量は、水性エマルジョン[I]の固形分100重量部に対して、固形分換算で1〜300重量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜200重量部である。コロイダルシリカ[II]の配合量が1重量部未満では塗膜の耐侯性、耐水性、耐汚染性に充分な効果を発揮せず、300重量部を越えて含有すると塗膜の柔軟性が失われ、耐凍害性が低下し、又、エマルジョンの放置安定性も低下し好ましくない。
【0097】
かかるコロイダルシリカ[II]としては、上記の平均粒径の範囲のものであれば特に限定されず、酸性及び塩基性のいずれの分散液でも用いることができ、用途に応じて適宜選択することができる。これらのコロイダルシリカとしては、各社より市販されており、例えば、酸性分散液のものとしては日産化学工業(株)製、「スノーテックスO、OL」が代表的なものとして挙げられ、塩基性分散液のものとしては日産化学工業(株)製「スノーテックス20、30、40、C、CM及びN」等が挙げられる。
【0098】
水性エマルジョン[I]とコロイダルシリカ[II]とを含有させる方法としては、特に制限されることなく、例えば、10〜60重量%、好ましくは20〜55重量%の水性エマルジョン[I]に5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%のコロイダルシリカ[II]の分散液を配合する方法が挙げられる。
【0099】
本発明の水性コーティング剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で公知の連鎖移動剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、造膜助剤等を添加してもよい。又、塗膜の硬化を促進するため、有機スズ化合物、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物等の硬化剤を添加してもよく、該硬化剤はエマルジョンの形で添加してもよい。
【0100】
かくして、架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中で、アクリル系単量体(B)及び加水分解性シリル基含有単量体(C)を重合してなる水性エマルジョン[I]及びコロイダルシリカ[II]を含有することにより、本発明の水性コーティング剤組成物が得られ、該水性コーティング剤組成物は、エマルジョンの放置安定性、塗膜の硬度、耐汚染性、耐候性、耐水性、耐アルカリ性、耐凍害性に優れ、とりわけ、塗膜の硬度、耐アルカリ性、耐汚染性に非常に優れた効果を示すものであり、特に建材塗料、接着剤、紙コーティング剤等の用途に有用である。
【0101】
【実施例】
以下、本発明について具体的に説明する。
尚、実施例中、「%」、「部」とあるのは特に断りのない限り、重量基準を意味する。
【0102】
実施例1
[加水分解抑制剤(F)の製造]
コンデンサー、温度計、撹拌翼を備えたフラスコに、イソプロピルアルコール100部を仕込み、80℃に昇温した。次いでアクリル酸20部、メチルメタクリレート33部、2−エチルヘキシルアクリレート47部、1−ドデカンチオール3部にアゾビスイソブチロニトリル1部を溶解した混合液を80℃で4時間かけて滴下重合し、更に、80℃で3時間重合させた。次いで、撹拌しながらアンモニア水を添加し、pH=7.5に調整して、加水分解抑制剤(F)の27%水−イソプロピルアルコール溶液を得た。
【0103】
[1段目重合(アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンの製造)]
水74.5部、乳化剤(D)(旭電化(株)製、「アデカリアソープSE−10N」)1.8部及び上記加水分解抑制剤(F)(樹脂分27%)2.6部を混合し、次いでメチルメタクリレート(a1)20.5部、n−ブチルアクリレート(a1)19.0部、シクロヘキシルメタクリレート(a1)10.0部、トリプロピレングリコールジアクリレート(a2)0.5部、エチルシリケート(a3)(コルコート(株)製、「ES−48」)24.2部の混合物を添加し、撹拌混合して予備乳化を行った。該予備乳化液を高圧ホモジナイザー〔GAULIN Homogenizer(GAULIN社製)〕で圧力300kg/cm2、常温で2Pass処理し、170nmの径の油滴をもつ乳化液153.4部を調製した。
【0104】
一方、水2部に乳化剤(D)(旭電化(株)製、「アデカリアソープSE−10N」)0.15部を溶解した。別途、2,2’−アゾビス2,4−ジメチルバレロニトリル0.5部を造膜助剤(ダウケミカル社製、「ダワノールDPNB」)3.0部に溶解し、両液を混合撹拌して重合開始剤の乳化液5.7部を調製した。
【0105】
そして、重合缶に水24.3部と、上記モノマー乳化液36.8部と重合開始剤乳化液0.68部の混合液61.78部を仕込み、撹拌しながら重合缶内を窒素置換した。次に60℃まで昇温してから0.5時間重合を行い、残りの乳化液(モノマー乳化液116.6部と重合開始剤乳化液2.15部の混合液)を1.5時間かけて滴下し重合を行った。滴下終了後、60℃で1時間重合続け、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン183.4部を得た(樹脂分40%)。
得られたアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンに、造膜助剤(ダウケミカル社製、「ダワノールDPNB」)を5%添加し、ゲル分率を測定したところ、70%であった。
【0106】
[2段目重合(水性エマルジョン[I]の製造)]
次に、水24.2部に乳化剤(D’)として旭電化(株)製、「アデカリアソープSE−10N」及び「アデカリアソープNE−10」をそれぞれ0.2部溶解し、次いで、メチルメタクリレート(B)25.6部、n−ブチルアクリレート(B)12.9部、シクロヘキシルメタクリレート(B)10.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(C)1.5部、1−ドデカンチオール0.03部の混合物を添加し、撹拌混合し予備乳化を行った後、上記と同様に調製した重合開始剤乳化液2.83部と混合した。該混合液を上記のアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン183.4部中に滴下しながら、60℃で1.5時間かけて滴下し重合を行った。滴下終了後、更に2時間重合を続け、冷却後5%アンモニア水でpHを8.0に調整し、水性エマルジョン[I](樹脂分45%)を得た。
【0107】
[コロイダルシリカ[II]の配合(水性コーティング剤組成物の製造)]
上記で得られた水性エマルジョン[I]100部に対して、固形分換算で20部のスノーテックスC(日産化学(株)製)(平均粒径20nm)を30%の分散液として配合し、水性コーティング剤組成物(樹脂分40%)を得た。
得られた水性コーティング剤組成物に対して以下の評価を行った。
【0108】
(放置安定性)
得られた水性コーティング剤組成物を室温で3ヶ月放置して、状態を目視で観察し、以下の通り評価した。
○・・・変化なし
△・・・やや粘度上昇あり
×・・・粘度上昇又はゲル化あり
【0109】
(硬度)
JIS K 5400に準拠する鉛筆硬度を測定した。
【0110】
(耐候性)
得られた水性コーティング剤組成物に造膜助剤(ダウケミカル社製、「ダワノールDPNB」)を組成物全体に対して7%添加し、1日放置した後、該液を予めシーラー塗装したスレート板に乾燥膜厚30μmとなるようにアプリケーターで塗工し、120℃で10分間乾燥後、屋外暴露を2年間行い、塗膜の様子を目視で観察し、以下の通り評価した。
◎・・・光沢のある透明被膜であった。
○・・・やや光沢の低下が見られる程度で、被膜状態は良好であった。
△・・・光沢の低下と被膜の破壊が見られた。
×・・・光沢の著しい低下と著しい被膜の破壊(白化、クラック)が見ら
れた。
【0111】
(耐汚染性)
得られた水性コーティング剤組成物に造膜助剤(ダウケミカル社製、「ダワノールDPNB」)を組成物全体に対して7%添加し、1日放置した後、該液を予めシーラー塗装したスレート板に乾燥膜厚30μmとなるようにアプリケーターで塗工し、120℃で10分間乾燥後、屋外暴露を2年間行い、塗膜の雨筋を目視で観察し、以下の通り評価した。
◎・・・ほとんど雨筋は認められなかった。
○・・・一部にうっすら雨筋が認められた。
△・・・ところどころに雨筋が認められた。
×・・・全面にはっきり雨筋が認められた。
【0112】
(耐水性)
得られた水性コーティング剤組成物に造膜助剤(ダウケミカル社製、「ダワノールDPNB」)を組成物全体に対して7%添加し、1日放置した後、該液を予めシーラー塗装したスレート板に乾燥膜厚30μmとなるようにアプリケーターで塗工し、120℃で10分間乾燥後、蒸留水に24時間浸漬後の表面状態を目視で観察し、以下の通り評価した。
◎・・・全く白化、膨れは認められなかった。
○・・・わずかに白化が認められたが、膨れは認められなかった。
△・・・白化や膨れが認められた。
×・・・白化や膨れが進行し、ところどころで溶出していた。
【0113】
(耐アルカリ性)
得られた水性コーティング剤組成物に造膜助剤(ダウケミカル社製、「ダワノールDPNB」)を組成物全体に対して7%添加し、1日放置した後、該液を予めシーラー塗装したスレート板に乾燥膜厚30μmとなるようにアプリケーターで塗工し、120℃で10分間乾燥後、pH12のアルカリ温水(50℃)に7日間浸漬後の表面状態を目視で観察し、以下の通り評価した。
◎・・・全く白化、膨れは認められなかった。
○・・・わずかに白化が認められたが、膨れは認められなかった。
△・・・白化や膨れが認められた。
×・・・白化や膨れが進行し、乾燥後にクラック発生が認められた。
【0114】
(耐凍害性)
得られた水性コーティング剤組成物に造膜助剤(ダウケミカル社製、「ダワノールDPNB」)を組成物全体に対して7%添加し、1日放置した後、該液を予めシーラー塗装したスレート板に乾燥膜厚30μmとなるようにアプリケーターで塗工し、120℃で10分間乾燥後、▲1▼水中(20℃)で1時間浸漬した後、▲2▼大気中(−20℃)で2時間放置した。その後再び▲1▼及び▲2▼を繰り返し合計200サイクル行った。200サイクル後の塗膜の表面状態を20倍拡大鏡で観察し、以下の通り評価した。
◎・・・全くクラックの発生はなく、試験前と塗膜の変化は認められなかった。
○・・・わずかに微少クラックが発生した。
△・・・ところどころにクラックが発生した。
×・・・塗膜全面にクラックが発生した。
【0115】
実施例2
実施例1において、2段目重合のメチルメタクリレート(B)25.6部、n−ブチルアクリレート(B)12.9部、シクロヘキシルメタクリレート(B)10.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(C)1.5部を、メチルメタクリレート(B)24.5部、n−ブチルアクリレート(B)12.5部、シクロヘキシルメタクリレート(B)10.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(C)3.0部に変更した以外は同様に行い、水性コーティング剤組成物(樹脂分40%)を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0116】
実施例3
実施例1において、1段目重合のメチルメタクリレート(a1)20.5部、n−ブチルアクリレート(a1)19.0部、シクロヘキシルメタクリレート(a1)10.0部、トリプロピレングリコールジアクリレート(a2)0.5部を、メチルメタクリレート(a1)20.8部、n−ブチルアクリレート(a1)19.2部、シクロヘキシルメタクリレート(a1)10.0部、トリプロピレングリコールジアクリレート(a2)0.25部に変更した以外は同様に行い、水性コーティング剤組成物(樹脂分40%)を得、実施例1と同様の評価を行った。
尚、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンのゲル分率は60%であった。
【0117】
実施例4
実施例1において、1段目重合のメチルメタクリレート(a1)20.5部、n−ブチルアクリレート(a1)19.0部、シクロヘキシルメタクリレート(a1)10.0部、トリプロピレングリコールジアクリレート(a2)0.5部を、メチルメタクリレート(a1)20.0部、n−ブチルアクリレート(a1)18.5部、シクロヘキシルメタクリレート(a1)10.0部、トリプロピレングリコールジアクリレート(a2)1.5部に変更した以外は同様に行い、水性コーティング剤組成物(樹脂分40%)を得、実施例1と同様の評価を行った。
尚、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンのゲル分率は80%であった。
【0118】
実施例5
実施例1において、1段目重合のメチルメタクリレート(a1)20.5部、n−ブチルアクリレート(a1)19.0部、シクロヘキシルメタクリレート(a1)10.0部、トリプロピレングリコールジアクリレート(a2)0.5部を、メチルメタクリレート(a1)20.0部、n−ブチルアクリレート(a1)18.5部、シクロヘキシルメタクリレート(a1)10.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(a2)1.5部に変更した以外は同様に行い、水性コーティング剤組成物(樹脂分40%)を得、実施例1と同様の評価を行った。
尚、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンのゲル分率は75%であった。
【0119】
実施例6
実施例1において、1段目重合時に使用されるエチルシリケート(a3)(コルコート(株)製、「ES−48」)を、メチルシリケート(a3)(三菱化学社製、「MS−56」)に変更した以外は同様に行い、水性コーティング剤組成物(樹脂分40%)を得、実施例1と同様の評価を行った。
尚、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンのゲル分率は70%であった。
【0120】
実施例7
実施例1において、以下で得られる水性エマルジョン[I]を用いた以外は同様に行い、水性コーティング剤組成物(樹脂分40%)を得、実施例1と同様の評価を行った。
[1段目重合(アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンの製造)]
実施例1において、水44.06部、乳化剤(D)(旭電化(株)製、「アデカリアソープSE−10N」)1.06部、上記加水分解抑制剤(F)(樹脂分27%)2.6部、メチルメタクリレート(a1)8.3部、n−ブチルアクリレート(a1)7.5部、シクロヘキシルメタクリレート(a1)4.0部、トリプロピレングリコールジアクリレート(a2)0.2部、エチルシリケート(a3)(コルコート(株)製、「ES−48」)24.19部とした以外は同様に行い、乳化液を調製した。
そして重合缶に、水42.0部、上記モノマー乳化液91.91部を仕込み、重合開始剤乳化液1.14部の存在下に1時間重合し、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン135.05部を得た(樹脂分40%)。
尚、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンのゲル分率は70%であった。
【0121】
[2段目重合(水性エマルジョン[I]の製造)]
次に、実施例1において、水37.9部、乳化剤(D’)として旭電化(株)製、「アデカリアソープSE−10N」及び「アデカリアソープNE−10」をそれぞれ0.25部、メチルメタクリレート(B)40.9部、n−ブチルアクリレート(B)20.7部、シクロヘキシルメタクリレート(B)16.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(C)2.4部、1−ドデカンチオール0.04部に変更した以外は同様に滴下重合し、滴下終了後、更に2.5時間重合を続け、冷却後5%アンモニア水でpHを8.0に調整し、水性エマルジョン[I](樹脂分45%)を得た。
【0122】
実施例8
実施例1において、以下で得られる水性エマルジョン[I]を用いた以外は同様に行い、水性コーティング剤組成物(樹脂分40%)を得、実施例1と同様の評価を行った。
[1段目重合(アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンの製造)]
実施例1において、水94.68部、乳化剤(D)(旭電化(株)製、「アデカリアソープSE−10N」)1.68部、上記加水分解抑制剤(F)(樹脂分27%)2.6部、メチルメタクリレート(a1)29.06部、n−ブチルアクリレート(a1)26.59部、シクロヘキシルメタクリレート(a1)14.0部、トリプロピレングリコールジアクリレート(a2)0.35部、エチルシリケート(a3)(コルコート(株)製、「ES−48」)24.19部とした以外は同様に行い、乳化液を調製した。
そして重合缶に、水13.8部、上記モノマー乳化液33.1部を仕込み、重合開始剤乳化液3.9部の存在下に30分間重合し、その後残りのモノマー乳化液を2時間かけて滴下重合し、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン190.6部を得た(樹脂分40%)。
尚、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンのゲル分率は70%であった。
【0123】
[2段目重合(水性エマルジョン[I]の製造)]
次に、実施例1において、水14.24部、乳化剤(D’)として旭電化(株)製、「アデカリアソープSE−10N」及び「アデカリアソープNE−10」をそれぞれ0.12部、メチルメタクリレート(B)15.3部、n−ブチルアクリレート(B)7.8部、シクロヘキシルメタクリレート(B)6.0部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(C)0.9部、1−ドデカンチオール0.02部に変更した以外は同様に1時間かけて滴下重合し、滴下終了後更に2時間重合を続け、冷却後5%アンモニア水でpHを8.0に調整し、水性エマルジョン[I](樹脂分45%)を得た。
【0124】
実施例9
実施例1において、1段目重合時に使用されるエチルシリケート(a3)(コルコート(株)製、「ES−48」)を用いなかった以外は同様に行い、水性コーティング剤組成物(樹脂分45%)を得、実施例1と同様の評価を行った。
尚、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンのゲル分率は50%であった。
【0125】
実施例10
実施例1において、配合するコロイダルシリカをスノーテックスCからスノーテックスO(日産化学(株)製)(平均粒径0.15μm)に変更した以外は同様に行い、水性コーティング剤組成物(樹脂分40%)を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0126】
比較例1
実施例1において、コロイダルシリカを配合しなかった以外は同様に行い、水性コーティング剤組成物(樹脂分45%)を得、実施例1と同様の評価を行った。
【0127】
比較例2
実施例1において、1段目重合のメチルメタクリレート(a1)20.5部、n−ブチルアクリレート(a1)19.0部、シクロヘキシルメタクリレート(a1)10.0部、トリプロピレングリコールジアクリレート(a2)0.5部を、トリプロピレングリコールジアクリレート(a2)を使用せず、メチルメタクリレート(a1)20.9部、n−ブチルアクリレート(a1)19.1部、シクロヘキシルメタクリレート(a1)10.0部に変更した以外は同様に行い、水性コーティング剤組成物(樹脂分40%)を得、実施例1と同様の評価を行った。
尚、アクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンのゲル分率は25%であった。
【0128】
比較例3
実施例1において、2段目重合のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(C)を用いなかった以外は同様に行い、水性コーティング剤組成物(樹脂分40%)を得、実施例1と同様の評価を行った。
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
【発明の効果】
本発明の水性コーティング剤組成物は、架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中で、エチレン性不飽和単量体(B)及び加水分解性シリル基含有単量体(C)を重合して得られる水性エマルジョン[I]及びコロイダルシリカ[II]を含有してなるため、エマルジョンの放置安定性、硬度、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、耐アルカリ性、耐凍害性に優れ、とりわけ、塗膜の硬度、耐アルカリ性、耐汚染性に非常に優れた効果を示すものであり、特に建材塗料、接着剤、紙コーティング剤等の用途に有用である。
Claims (8)
- 架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中で、エチレン性不飽和単量体(B)及び加水分解性シリル基含有単量体(C)を重合して得られる水性エマルジョン[I]及びコロイダルシリカ[II]を含有してなることを特徴とする水性コーティング剤組成物。
- 加水分解性シリル基含有単量体(C)が、トリアルコキシシリル基含有単量体であることを特徴とする請求項1記載の水性コーティング剤組成物。
- 架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)が、アクリル系単量体(a1)及び架橋性単量体(a2)を重合して得られることを特徴とする請求項1又は2記載の水性コーティング剤組成物。
- 架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョン中に、更にテトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)を含有させてなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の水性コーティング剤組成物。
- 架橋構造を有するアクリル系樹脂(A)の水性エマルジョンが、アクリル系単量体(a1)と架橋性単量体(a2)とを、又はアクリル系単量体(a1)と架橋性単量体(a2)とテトラアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物(a3)とを、水媒体中において、乳化剤(D)の存在下に、油滴の径が1000nm以下になるように予め乳化させた水性乳化液を、重合開始剤(E)の存在下に重合してなることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の水性コーティング剤組成物。
- 重合の際に、更に加水分解抑制剤(F)を添加してなることを特徴とする請求項5記載の水性コーティング剤組成物。
- コロイダルシリカ[II]の平均粒径が5〜100nmであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載のコーティング剤組成物。
- 水性エマルジョン[I]の固形分100重量部に対して、コロイダルシリカ[II]を固形分換算で1〜300重量部含有してなることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の水性コーティング剤組成物。
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