JP2010059267A - 重合体エマルションの製造方法および水性塗料 - Google Patents

重合体エマルションの製造方法および水性塗料 Download PDF

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貴寛 椋田
Motomi Tanaka
基巳 田中
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Abstract

【課題】重合安定性及び貯蔵安定性、機械安定性に優れ、水性塗料として用いた場合、高度な耐候性、耐温水性、温冷サイクル性、顔料分散性、耐汚染性、低温時の伸び性を同時有する重合体エマルションを提供する。
【解決手段】オルガノシロキサン(I)とグラフト交叉剤(II)とを重縮合して得られるオルガノシロキサン重合体(III)を含む第一のエマルションに、第一のエチレン性不飽和単量体(IV)と、第二のエチレン性不飽和単量体(V)と、所定の化学式で表されるエチレン性不飽和単量体(a)を含む第三のエチレン性不飽和単量体(VI)と、を所定量順次添加して多段乳化重合を行う。
【選択図】なし

Description

本発明は水性樹脂組成物に関する。
近年、メンテナンスコスト低減や省資源化による環境負荷低減の観点から、屋外等の過酷な環境下で用いられる高分子材料の高耐久化がより強く求められている。
このうち、塗料分野においては、地球環境や塗装作業環境等への配慮から、有機溶剤を媒体とする溶剤系塗料から、水を分散媒とする水性塗料への変換が図られており、水性塗料の用途が急速に拡大している。そのため、水性塗料への要求性能も高度になってきており、高度な耐候性能を有する水性塗料が提案されている。
例えば特許文献1では、分子内に不飽和二重結合を有するヒンダードアミン型光安定剤(以下、反応性HALS)と疎水性の高いシクロヘキシル基含有重合性単量体との共重合体を含む水性塗料が開示されている。
また、特許文献2では、pH6〜10の条件下で、所定の組成で特定の乳化剤を用いて反応性HALSを乳化重合して、エマルションからなる水性塗料を得ている。
また、特許文献3では、多段乳化重合法を用いて、シクロヘキシル基含有シランカップリング材存在下で反応性HALSを最外層にて共重合させたエマルションからなる水性塗料を得ている。
また、特許文献4では、酸成分を非含有とすることで、反応性HALSを多量に含有したエマルションを得ている。
また、特許文献5では、グラフト交差剤とジメチルシロキサンの縮合物に対し低Tgのアクリルをグラフトさせた後、高Tgのアクリルを重合することで汚染性と耐候性に優れたアクリルシリコンエマルションが得られるとの記載がある。
特許第2637574号公報 特開2002−234917号公報 特開2004−10805号公報 国際公開WO2006−126680号パンフレット 特開2004−137374号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、酸性官能基含有不飽和単量体(以下、酸成分)と反応性HALSを同一重合場内で乳化重合することから重合安定性に劣る。そのため、用いる乳化剤としては耐水性に劣るものを用いることで重合安定性を改良しなければならないという制限があった。さらに、樹脂特性の上で必要な量の酸成分と反応性HALSを同一乳化物として系中で重合している為、酸成分によりHALS成分のラジカル捕捉能が低下し、耐候性は不十分である。
また、特許文献2の方法では、酸成分と反応性HALSを同一乳化物として重合するが、塩基性成分添加によりpHを6〜10に調整する点、及び特定の組成物と特定の非反応性のアニオン乳化剤を用いて乳化重合を行う点で重合安定性が確保できる。しかしながら、この様な条件では中和された酸成分とその他成分との間で、水溶性ポリマーが生成する点に課題があり、また乳化剤についても特定の非反応性のアニオン乳化剤を用いる必要があり、耐温水性、耐候性の面で不十分である。
また、特許文献3の方法では、エマルション粒子が、(メタ)アクリレート系重合体からなる2層粒子であり、また、最外層に含まれている重合性紫外線安定剤の量が過少または過多であるため耐候性、耐温水性などの物性が不十分である。
また、特許文献4の方法では、酸成分を非含有としたエマルションをバインダーとして塗膜を形成するため、塗料系や塗色、塗装方法によっては色分かれや貯蔵安定性に劣る場合があり、単体で塗料として用いる場合に改善の余地がある。
また、特許文献5の方法では、コア−シェル構造とした重合体粒子のシェル部位のアクリルの劣化により、非常に高度な耐候性を発現するには十分とは言い難い。
近年では市場の長期耐候性への要求を満たす為、フッ素系の樹脂を成分として含有する水性塗料も開発されている。しかし、顔料分散性や塗装作業性に劣り、塗膜としてもその高い撥水性から汚染性の点で課題がある。また、住宅での改修時におけるリコート性が不十分である。また、前記課題への対処としてアクリル成分とフッ素成分とをハイブリッド化したものについても知られており、フッ素成分の効果により光沢保持性は良好であるものの、アクリル部位の分子量低下により、初期塗膜と比較して経年使用した塗膜の強度や付着性が著しく低下する為、長期耐候性という点では未だ不十分である。
そこで、本発明の目的は、重合安定性及び貯蔵安定性に優れ、塗料用樹脂として用いた場合には、耐候性、耐温水性、顔料分散性等に優れた水性塗料を得ることができる水性樹脂組成物を提供することにある。また、他の水系塗料に添加した場合には、被添加塗料の耐候性を大幅に向上可能な水性樹脂組成物を提供することにある。
発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、エチレン性不飽和単量体を重合して得られる重合体エマルションの存在下、pH6〜11の条件下で分子内にピペリジル基を持つエチレン性不飽和単量体を所定の割合で含む、薄い最外層を重合してなる重合体エマルションとすることで上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、
オルガノシロキサン(I)とグラフト交叉剤(II)を共縮合して得られるオルガノシロキサン重合体(III)0.5〜50質量%(固形分)((III)+(IV)+(V)+(VI)=100質量%)を含む第一のエマルションの存在下に、
計算Tg=−50℃〜20℃のポリマーを与えるエチレン性不飽和単量体成分(IV)19〜68質量%((III)+(IV)+(V)+(VI)=100質量%)を重合し、
さらに計算Tg=30℃〜100℃のポリマーを与えるエチレン性不飽和単量体成分(V)30〜79質量%((III)+(IV)+(V)+(VI))=100質量%)を重合して第二のエマルションを得、
該第二のエマルションをpH6〜11に調整し、
その存在下で下記一般式(I)で表される、分子内にピペリジル基を持つエチレン性不飽和単量体(a)の含有量が6〜60質量%であるエチレン性不飽和単量体成分(VI)1〜10質量%((III)+(IV)+(V)+(VI)=100質量%)を重合する重合体エマルションの製造方法である。
Figure 2010059267
(R1は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基、Xは酸素原子又はイミノ基、Yは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基又はアルコキシル基、Zは水素原子又はシアノ基を示す。)
本発明の製造方法で得られる重合体エマルションは高い重合安定性、貯蔵安定性及び機械安定性を有する。また、そのような重合体エマルションを用いた水性塗料は、高い耐候性、耐温水性、顔料分散安定性、耐汚染性、低温時の伸び性及び温冷サイクル性を有する。
本発明に係る重合体エマルションの製造方法は、
オルガノシロキサン(I)とグラフト交叉剤(II)を共縮合して得られるオルガノシロキサン重合体(III)0.5〜50質量%(固形分)((III)+(IV)+(V)+(VI)=100質量%)を含む第一のエマルションの存在下に、
計算Tg=−50℃〜20℃のポリマーを与えるエチレン性不飽和単量体成分(IV)19〜68質量%((III)+(IV)+(V)+(VI)=100質量%)を重合し、
さらに計算Tg=30℃〜100℃のポリマーを与えるエチレン性不飽和単量体成分(V)30〜79質量%((III)+(IV)+(V)+(VI))=100質量%)を重合して第二のエマルションを得、
該第二のエマルションをpH6〜11に調整し、
その存在下で上記一般式(I)で表される、分子内にピペリジル基を持つエチレン性不飽和単量体(a)の含有量が6〜60質量%であるエチレン性不飽和単量体成分(VI)1〜10質量%((III)+(IV)+(V)+(VI)=100質量%)を重合することを特徴とする。
本発明に係る重合体エマルションは高い重合安定性、貯蔵安定性及び機械安定性を有する。また、本発明に係る重合体エマルションを用いた水性塗料は、耐候性、耐温水性、温冷サイクル性、顔料分散性、耐汚染性及び低温時の伸び性(耐凍害性)を同時に有するものである。
本発明に係る重合体エマルションは、既知の乳化重合を用いて得ることができる。なお、乳化重合にはミニエマルション重合も含まれる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[第一のエマルション(オルガノシロキサンエマルション)の製造]
オルガノシロキサンエマルションは、オルガノシロキサン(I)とグラフト交叉剤(II)とを用いて乳化重合により製造される。したがって、オルガノシロキサンエマルションは、このオルガノシロキサン(I)とグラフト交叉剤(II)との重縮合によるオルガノシロキサン重合体(III)を含有する。
前記オルガノシロキサン(I)としては、例えば、一般式RmSiO(4-m)/2(式中、Rは置換又は非置換の1価の炭化水素基であり、mは1〜3の整数を表す)で表される構造単位を有するものであり、直鎖状、分岐状もしくは環状構造を有するものである。このオルガノシロキサンが有する、R(置換又は非置換の1価の炭化水素基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ビニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基などの非置換の1価の炭化水素基、又はこれら非置換の1価の炭化水素基の水素原子をハロゲン原子又はシアノ基で置換した置換炭化水素基等を挙げることができる。
オルガノシロキサンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、又はトリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン等の環状化合物が挙げられる。その他にも、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンが挙げられる。なお、このオルガノシロキサンは、予め重合されたポリオルガノシロキサンであってもよい。この場合、その分子鎖末端は水酸基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基、メチルジフェニルシリル基等で封鎖されていてもよい。また、この他に、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の加水分解性シランをオルガノシロキサン重合体の架橋成分として用いることができる。これらの成分は必要に応じて単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
グラフト交叉剤(II)としては、例えば、分子内に1個以上の加水分解性シリル基と、グラフト点となる1個以上のエチレン性不飽和基又はメルカプト基を含有するものを挙げることができる。前記加水分解性シリル基としては、重合反応性や取り扱いの容易さ等の点から、アルコキシシリル基が好ましい。
グラフト交叉剤の具体例としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、若しくはビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン類、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、若しくは3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルシラン類、又は3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、若しくは3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプトアルキルシラン類等が挙げられる。これらの成分は必要に応じて単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
上記のグラフト交叉剤の使用割合は、特に限定されるものではないが、例えば、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤の合計量中、0.1〜30質量%であり、好ましくは0.5〜20質量%である。0.1質量%以上のグラフト交叉剤を使用することにより、高分子量のオルガノシロキサン重合体(III)と後述のエチレン性不飽和単量体(IV)とのグラフト重合が効率良く行われ、塗膜外観や耐候性、耐温水性を向上させることができる。また、30質量%以下のグラフト交叉剤を使用することにより、塗膜の耐候性を効果的に向上させることができる。
また、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤の重縮合反応を行う際の水の量は、特に規定されないが、安定性や粘度の観点から、オルガノシロキサン重合体(III)50質量部に対し100〜500質量部の範囲で行うことが好ましい。
また、オルガノシロキサン重合体(III)は、前記オルガノシロキサンと前記グラフト交叉剤とを水中に強制的に乳化分散させたものに、重合開始剤を加えて重縮合させることにより製造することができる。
乳化分散に使用する装置としては、特に限定されるものではないが、例えばホモミキサーや圧力型ホモジナイザー等が挙げられる。
また、重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、重合開始剤として公知のものを用いることができる。重合開始剤としては、例えば酸触媒を用いることができ、酸触媒としては例えばアルキルベンゼンスルホン酸等を挙げることができる。なお、酸触媒としてアルキルベンゼンスルホン酸を用いた場合、重縮合の後で、この酸触媒をアルカリ成分で中和することにより、乳化剤として使用することもできる。
重合開始剤の使用量は、特に制限されるものではなく、目的とするオルガノシロキサン重合体(III)の分子量、固形分量又は重合温度等の重合条件により、任意に設定できるものである。例えば、酸触媒の使用量は、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤の合計量に対して2〜12質量%の範囲が好ましい。2質量%以上とすることにより、オルガノシロキサン重合体(III)の重量平均粒子径を5〜150nmに調整し易くなり、塗膜外観を向上できるためである。また、12質量%以下とすることにより、塗膜の耐温水性低下を抑制することができる。
なお、工程(1)において得られるオルガノシロキサン重合体(III)の平均分子量は、5,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましい。また、オルガノシロキサン重合体(III)は、グラフト交叉剤の使用により三次元架橋を形成するため、分子量が測定困難となるが、これらについても十分な耐温水性向上能を発揮することができる。
オルガノシロキサン重合体(III)としての使用量としては、後述するが、重合体(III)と成分(IV)と成分(V)と成分(VI)との総量に対して、0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、50質量%以下であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。オルガノシロキサン重合体(III)を上記範囲で使用すると、塗膜の耐候性、耐温水性および耐凍害性が良好である。
[多段乳化重合]
次に、前記オルガノシロキサンエマルションを用い、以下の多段乳化重合を行う。なお、本発明にいう多段乳化重合とは、乳化重合の一種であって、二つ以上の異なる乳化重合段階からなるものである。すなわち、使用する単量体等が相違する複数の乳化重合を経る重合方法である。
本発明においては、多段乳化重合としては、前記オルガノシロキサンエマルション(第一のエマルション)に、後述のエチレン性不飽和単量体成分(IV)、エチレン性不飽和単量体成分(V)、エチレン性不飽和単量体成分(VI)を順次添加し、乳化重合を行う。したがって、オルガノシロキサン重合体(III)にさらに3段階からなる重合を行う。また、この3段階の乳化重合に加え、更なる性能付与の為に、さらに多段重合化することも可能である。なお、本明細書において、エマルション存在下で重合を行うとは、エマルション中の重合体に、さらに単量体を重合させていくことをいう。
より具体的には、前記オルガノシロキサンエマルションに、まず、エチレン性不飽和単量体成分(IV)を添加し、乳化重合を行って第一のエマルションを得る。次に、エチレン性不飽和単量体成分(V)を添加し、乳化重合を行って第二のエマルションを得る。次に、pHを6〜11に調整した後、前記一般式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体(a)(以下、単量体(a)と略す)を含むエチレン性不飽和単量体成分(VI)を添加し、乳化重合を行う。単量体(a)を添加する時点で系内のpHがこの範囲にあることにより、重合安定性を確保することが出来る。第二のエマルションのpHがこの範囲にない場合は、重合容器内に後述するアンモニア水等の塩基性化合物を添加してpHを調整すればよい。これらの工程により、本発明に係る重合体エマルションが調製される。
また、本発明に係る重合体エマルションは、前記重合体エマルション中の重合体(III)と成分(IV)と成分(V)と成分(VI)との総量に対する、(III)の割合をA質量%、(IV)の割合をB質量%、(V)の割合をC質量%、(VI)の割合をD質量%とした場合、各割合が以下の範囲になるように調製される必要がある。したがって、(IV)、(V)、(VI)を含む溶液は以下の範囲になるようにそれぞれ調整されて添加される。
A;0.5質量%以上、50質量%以下
B;19質量%以上、68質量%以下
C;30質量%以上、79質量%以下
D;1質量%以上、10質量%以下
(一段目;エチレン性不飽和単量体成分(IV))
まず、エチレン性不飽和単量体成分(IV)を、前記オルガノシロキサンエマルションに添加し、乳化重合を行う。より具体的には、エチレン性不飽和単量体成分(IV)とオルガノシロキサンエマルションとを所定量混合し、前記オルガノシロキサン重合体(III)にエチレン性不飽和単量体成分(IV)を重合反応により付加する。なお、本明細書では、単量体成分をエマルションに添加する、と表現しているが、エマルションを単量体成分に添加する形式であってもよい。
エチレン性不飽和単量体成分(IV)は、上述のように、前記Bが19質量%以上、68質量%以下となるようにオルガノシロキサンエマルションに添加される。前記Bは、好ましくは25質量%以上である。また、前記Bは、好ましくは40質量%以下である。また、このエチレン性不飽和単量体成分(IV)は、計算Tgが−50〜20℃のポリマーを与える単量体成分から構成される。すなわち、エチレン性不飽和単量体成分(IV)により形成される層(該成分から得られるポリマー)の計算Tgが−50〜20℃の範囲であることが必要である。
なお、本発明において、Tgとしては、重合体エマルションを構成する単量体由来の構造単位のTgについて、Foxの計算式により求められる計算ガラス転移温度を使用する。Foxの式とは、以下に示すような、共重合体のガラス転移温度(℃)と、共重合モノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度(℃)との関係式である。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの質量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
なお、ホモポリマーのTgとしては、具体的には、「Polymer Handbook 3rd Edition」(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION、1989年)に記載された値を使用することができる。
エチレン性不飽和単量体成分(IV)は、一種又は二種以上のエチレン性不飽和単量体からなり、エチレン性不飽和単量体とは、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有するものである。
ここで、前記エチレン性不飽和単量体成分(IV)を構成するエチレン性不飽和単量体としては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、p−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや2−(3−)ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ヒドロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレンオキシド基含有(メタ)アクリレート類;p−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシシクロアルキル(メタ)アクリレート類;ラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート類;ジ(メタ)アクリル酸亜鉛等の金属含有(メタ)アクリレート類;γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のシリコン含有(メタ)アクリレート;2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールや、1−(メタ)アクリロイル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−アミノ−4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の耐紫外線基含有(メタ)アクリリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートメチルクロライド塩、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等の他の(メタ)アクリル系単量体;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニトリルアクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルデヒド基またはケト基に基づくカルボニル基含有単量体;スチレン(St)、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル系単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等の共役ジエン系単量体;酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、プロピオン酸ビニル等が挙げられるが、ラジカル重合可能なものであればこれらに限られるものではない。特に高度な耐候性能が必要な場合にはスチレン、(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。耐温水性の点では、t−ブチル(メタ)アクリレートおよび/またはシクロヘキシル(メタ)アクリレートから少なくとも1種を選択して用い、重合体(III)、成分(IV)、成分(V),成分(VI)の合計100質量%に対し、10〜50質量%用いることが好ましく、特に好ましい範囲は15〜35質量%である。この範囲内であればより高度な温冷サイクル性を有するという観点から有利である。
さらに成分(IV)として、必要に応じて、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和リン酸、又はエチレン性不飽和スルホン酸などの酸性基含有エチレン性不飽和単量体を用いることができる。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、又はテトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、エチレン性不飽和リン酸としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、又は2−メタクリロイルオキシエチルフェニルリン酸等が挙げられる。
また、エチレン性不飽和スルホン酸としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸又はスルホエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、これらの酸性基含有エチレン性不飽和単量体は1種または2種以上選択して用いることができる。酸性基含有エチレン性不飽和単量体を使用する場合の含有量としては、重合体エマルション製造に使用する重合体(III)及び成分(IV)〜(VI)の総量に対し0.1〜5質量%が好ましい。また、最外層に共重合されるエチレン性不飽和単量体(a)による耐候性向上効果をより有効に発揮する観点から0.5〜3質量%の範囲であることが特に好ましい。
また、成分(IV)は、乳化物の状態で添加することが好ましい。したがって、エチレン性不飽和単量体と乳化剤とを乳化装置で分散させてエマルションを調製し、このエマルションを前記オルガノシロキサンエマルションに添加することが好ましい。
(二段目;エチレン性不飽和単量体成分(V))
続いて、エチレン性不飽和単量体成分(V)を添加し、乳化重合を行う。
エチレン性不飽和単量体成分(V)は、上述のように、前記Cが30質量%以上79質量%以下となるように添加される。前記Cは、好ましくは40質量%以上である。また、前記Cは、好ましくは70質量%以下である。また、このエチレン性不飽和単量体成分(V)は、計算Tgが30〜100℃のポリマーを与える単量体成分から構成される。すなわち、エチレン性不飽和単量体成分(V)により形成される層(該成分から得られるポリマー)の計算Tgが30〜100℃の範囲にあることが必要である。
成分(V)は、一種又は二種以上のエチレン性不飽和単量体からなるものであるが、前記成分(IV)で例示したエチレン性不飽和単量体の中から、上記Tgを満たす1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、成分(V)においては、前記酸性基含有エチレン性不飽和単量体を選択して使用することが好ましい。この成分(V)中の酸性基含有エチレン性不飽和単量体の含有量としては、重合体エマルション製造に使用する重合体(III)及び成分(IV)〜(VI)の総量に対し0.1〜5質量%が好ましい。また、最外層に共重合されるエチレン性不飽和単量体(a)による耐候性向上効果をより有効に発揮する観点から0.5〜3質量%の範囲であることが特に好ましい。なお、成分(IV)及び(V)中に含まれる酸性基含有エチレン性不飽和単量体の合計量としては、重合体(III)及び成分(IV)〜(VI)の総量に対し、0.3〜10質量%であることが好ましく、1〜6質量%であることがより好ましい。
また、成分(V)は、乳化物の状態で添加することが好ましい。したがって、成分(V)と乳化剤とを乳化装置で分散させてエマルションを調製し、このエマルションを前記一段目重合後のエマルションに添加することが好ましい。
(最終段目;エチレン性不飽和単量体成分(VI))
続いて、エチレン性不飽和単量体成分(VI)を添加し、乳化重合を行う。
成分(VI)は、前記一般式(I)で表される分子内にピペリジル基を持つエチレン性不飽和単量体(a)の少なくとも1種を成分(VI)中6〜60質量%で含むものであり、その他に(a)以外は前記エチレン性不飽和単量体の少なくとも1種を用いて構成される。
また、成分(VI)は、上述のように、前記Dが1質量%以上10質量%以下となるように添加される。
なお、本明細書中において、一般式(I)で表される、分子内にピペリジル基を持つエチレン性不飽和単量体(a)を、反応性HALS(a)とも略す。
エチレン不飽和単量体(VI)の重合はpH6〜11の範囲で行う必要がある。また、高濃度に反応性HALS(a)を共重合する場合にはpHは7.5〜11の範囲であることが好ましい。したがって、エチレン性不飽和単量体成分(VI)を添加する前に、エマルションを所定のpHに調整する。
pHを調整する手法としては、塩基性化合物の添加が挙げられる。この塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−プロピルアミノエタノール、エトキシプロピルアミン、アミノベンジルアルコール、モルホリン、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等が挙げられる。VOC(揮発性有機化合物)を含まないことが望まれる内装用途などの場合は、無機系塩基化合物を用いることが好ましい。さらに僅かな臭気もないことが望まれる場合は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の不揮発性無機系塩基化合物を用いることが好ましい。
成分(VI)に用いる反応性HALS(a)としては、上記一般式(I)の化合物を用いることができるが、紫外線安定化機能(ラジカル捕捉機能)を有するものを好ましく用いることができる。このような反応性HALS(a)として、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、又は4−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。これらは必要に応じて1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。一般式(I)におけるR1がメチル基であるメタクリレート構造の単量体(a)を単独又は2種以上組み合わせて用いることが、本発明の向上材を含む水性塗料の耐候性向上の点から特に好ましい。
成分(VI)の条件として、上述のように、成分(VI)中における反応性HALS(a)の割合が6〜60質量%である必要がある。反応性HALS(a)の割合が上記範囲にあることで耐候性能と重合安定性を高度にバランスよく付与できる。成分(VI)中における反応性HALS(a)の好ましい範囲は20〜60質量%であり、重合安定性、耐候性の面でより好ましい範囲は20〜50質量%である。
また、上述のように、前記Dは、1質量%以上10質量%以下である必要がある。成分(VI)がこの範囲であることで、(III)、(IV)、(V)からなるエマルションに起因する高い温冷サイクル性等の諸物性を阻害することなく、高い耐候性能と顔料分散性を実現できる。成分(VI)の好ましい範囲は、(III),(IV),(V)及び(VI)の総量に対して2〜9質量%であり、より好ましい範囲は3〜9質量%である。
成分(VI)を構成する(a)以外のエチレン不飽和単量体としては、例えば前述したエチレン性不飽和単量体を用いることができる。中でも高度な耐温水性、耐候性を発現する為に、酸性基含有エチレン性不飽和単量体を用いないことが好ましい。また、酸性基含有エチレン性不飽和単量体を用いたとしても、成分(VI)中の割合を(III),(IV),(V)及び(VI)の総量に対して0.5質量%以下とすることが好ましい。
重合体エマルションにおける反応性HALS(a)の量としては、重合体エマルション製造に使用する重合体(III)及び成分(IV)〜(VI)の総量に対し0.5〜5質量%となる量であることが好ましい。重合体エマルションにおける反応性HALS(a)の量が上記範囲であることで高度な耐候性能が発現する。より好ましい範囲は1〜5質量%である。
重合体エマルション中の重合体(以下、重合体(α)と略す)の反応性HALS(a)を除く計算Tgとしては特に規定はしないが、耐候性、耐温水性、耐汚染性の点から20℃以上であることが好ましい。
重合体エマルションの最低造膜温度(以下、MFTと略す)については特に規定はしないが、成膜性の点から60℃以下であることが好ましい。可とう性塗料として用いられる場合は、下地への追従性の点から50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることが特に好ましい。耐汚染性の点からMFTは0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることが特に好ましい。
重合体エマルションを重合する際に用いる乳化剤としては、特に制限されず、公知の乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、例えば、アニオン性またはノニオン性の乳化剤、あるいは高分子乳化剤等が挙げられる。また、分子内にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する反応性乳化剤を用いると、本発明の重合体エマルションを水性塗料として使用した場合に、高度な耐温水性、耐候性を付与できる。更に、高度な耐温水性および耐候性を付与したい場合は、乳化剤として反応性アニオン性乳化剤を使用することが好ましい。
非反応性乳化剤としては、例えば、日本乳化剤社製商品名「ニューコール560SF」、「同562SF」、「同707SF」、「同707SN」、「同714SF」、「同723SF」、「同740SF」、「同2308SF」、「同2320SN」、「同1305SN」、「同271A」、「同271NH」、「同210」、「同220」、「同RA331」、「同RA332」、花王社製商品名「ラテムルB−118E」、「レベノールWZ」、「ネオペレックスG15」、第一工業製薬社製商品名「ハイテノールN08」などのアニオン性乳化剤等が挙げられる。また、例えば三洋化成社製商品名「ノニポール200」、「ニューポールPE−68」などのノニオン性乳化剤等が挙げられる。
高分子乳化剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、又はポリビニルピロリドン等が挙げられる。
反応性乳化剤としては、例えば日本乳化剤社製商品名「Antox MS−60」、「同MS−2N」、三洋化成社製商品名「エレミノールJS−2」、花王社製「ラテムルS−120」、「同S−180」、「同S−180A」、「同PD−104」、旭電化社製商品名「アデカリアソープSR−10」、「同SE−10」、第一工業製薬社製商品名「アクアロンKH−05」、「同KH−10」、「同HS−10」等の反応性アニオン性乳化剤、例えば旭電化社製商品名「アデカリアソープNE−10」、「同ER−10」、「同NE−20」、「同ER−20」、「同NE−30」、「同ER−30」、「同NE−40」、「同ER−40」、第一工業製薬社製商品名「アクアロンRN−10」、「同RN−20」、「同RN−30」、「同RN−50」等の反応性ノニオン性乳化剤などが挙げられる。
これらの乳化剤は必要に応じて1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。特に高度な耐温水性、耐候性が必要な場合は、用いる乳化剤全量を100質量%とした時に反応性乳化剤を50〜100質量%用いることが好ましい。特に好ましくは80〜100質量%である。使用量としては成分(III)と成分(IV)と成分(V)と成分(VI)との総量100質量部に対し0.3〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部が特に好ましい。
本発明に係る重合体エマルションの調製に使用する重合開始剤は、特に制限されるものではなく、公知の重合開始剤を用いることができ、例えば一般的にラジカル重合に使用されるものが使用可能である。その具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物類;2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]及びその塩類等の水溶性アゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物類等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独でも使用できるほか、2種類以上の混合物としても使用できる。また、重合速度の促進、70℃以下での低温の重合が望まれるときには、例えば、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
ラジカル重合開始剤の添加量としては、通常、ラジカル重合性成分の全量100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲である。
また、本発明に係る重合体エマルション中の重合体(α)の分子量を調整する場合は、重合開始剤の量の調整による方法の他、連鎖移動剤を用いるのも有効な手段である。連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー等の公知の連鎖移動剤を用いればよい。連鎖移動剤の使用量は、使用する連鎖移動剤の種類や不飽和単量体の構成比に応じて変化させれば良い。上記連鎖移動剤は、単独、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に係る重合体エマルション中の重合体(α)は、通常粒子状に得られる。その粒子径は特に制限されないが、好ましくは、重量平均粒子径で220nm以下である。重量平均粒子径が220nm以下であれば、水性塗料として用いられた場合に、成膜性、耐温水性、耐候性において有利である。高度な成膜性、耐温水性、耐候性を発現させるためには、重量平均粒子径としては、170nm以下がより好ましく、150nm以下が特に好ましい。また、30nm以上であることが粒子の安定性、重合安定性の点から好ましい。
本発明に係る重合体エマルションを含む水性樹脂組成物は、通常、固形分20〜80質量%の範囲で使用される。また、水性塗料として高度な性能を発現させるために、各種顔料、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤を含んでもよい。
水性塗料として特に高い耐候性能を必要とする場合は、水系に使用可能な、分子量2000以下である低分子量の紫外線吸収剤及び光安定剤を併用することが好ましい。光安定剤としては、光安定化能を持つヒンダードアミンを用いることが好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系UVA、ベンゾトリアゾール系UVA、無機系UVA、ヒドロキシフェニルトリアジン系UVAなどの既知のUVAを使用できる。これらのUVAのうち、水性塗料用途であればベンゾトリアゾール系UVA、ヒドロキシフェニルトリアジン系UVAを用いることが好ましい。また、塗装皮膜の耐候性および下地保護の点で、ヒドロキシフェニルトリアジン系UVAとの併用がより好ましい。ベンゾフェノン系UVAとしては、例えば、住友化学社製商品名「スミソーブ130」、BASFジャパン社製商品名「Uvinul3049」、「同3050」等が挙げられる。また、ベンゾトリアゾール系UVAとしては、例えば、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製商品名「チヌビン PS」、「同99−2」、「同109」、「同384−2」、「同900」、「同928」、「同1130」、住友化学社製商品名「スミソーブ200」、「同250」、「同300」、一方社油脂工業社製商品名「ULS−1935LH」、城北化学工業社製商品名「JF−77」、「同78」、「同79」、「同80」、「同83」等が挙げられる。また、無機系UVAとしては、例えば、多木化学社製商品名「ニードラール W−100」等が挙げられる。また、ヒドロキシフェニルトリアジン系UVAとしては、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製商品名「チヌビン400」、「同405」、「同460」、「同477DW」、「同479」等が挙げられる。これらのUVAは1種を単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明に係る水性塗料に添加されるUVAの量は特に規定されないが、塗料中の固形分およびUVAの和を100質量部とした時、0.1〜2.0質量部の範囲であることが好ましい。UVAの添加量が0.1質量部以上であれば、より有効な耐候性向上効果を発現することができる。また、2.0質量部以下であれば、好ましいクリアー塗膜着色性を有することができる。
光安定化能を持つヒンダードアミンとしては特に規定されないが、「N−Hタイプ」、「N−Rタイプ」、「N−O−Rタイプ」などの既知のヒンダードアミン型光安定剤を用いることができる。これらの中でも、塗装皮膜の耐候性向上の点で、「N−O−Rタイプ」のヒンダードアミン型光安定剤が好ましい。「N−Hタイプ」の光安定剤としては、例えば、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製商品名、「チヌビン770」、ADEKA社製商品名「アデカスタブ LA−57」、「同LA−63P」、「同LA−68P」などが挙げられる。また、「N−Rタイプ」の光安定剤としては、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製商品名、「チヌビン292」、「同144」、「同765」、「キマソーブ119FL」、ADEKA社製商品名「アデカスタブ LA−52」、「同LA−62」、「同LA−67」等が挙げられる。また、「N−O−Rタイプ」の光安定剤としては、チバ・スペシャルティーケミカルズ社製商品名、「チヌビン123」、「同494AR」、「同NOR371FF」、「フレームスタブ NOR116FF」等が挙げられる。これらの光安定剤は1種または、2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明に係る水性塗料中の光安定剤の添加量については特に規定されないが、塗料中の固形分の総量を100質量部とした時、0.05〜1質量部の範囲で添加されることが好ましい。本発明に係る水性塗料中の光安定剤の添加量が0.05質量部以上とすることで、より有効な耐候性向上能を発現することができる。また、添加量が1質量部以下とすることで、塗装皮膜の耐温水性能を低下させない。
本発明に係るエマルションは、他の水性樹脂と混合して塗料化することができる。他の水性樹脂としては特に規定しないが、例えば、(メタ)アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキッド系等の各種高分子を使用することができる。
本発明に係るエマルションをウレタン樹脂と併用した場合はウレタン塗料における黄変を大幅に抑制できる為、好ましい。また、エポキシ樹脂においても、低分子量ヒンダードアミン以上に反応性が低い為、ラジカル補足能を維持できる。
これらの他の水性樹脂と混合して用いる場合の比率については特に規定しないが、本発明に係る重合体エマルションを20〜80質量%用い、水性塗料中の樹脂における反応性HALS(a)の濃度が0.5〜3質量%となるように調製することが耐候性の面から特に好ましい。
本発明に係る重合体エマルションを含む水性塗料を用いて各種材料の表面に塗膜を形成するには、例えば、噴霧コート法、フローコーター法、ローラーコート法、バーコート法、エアナイフコート法、刷毛塗り法、ディッピング法等の各種の塗装法を適宜選択して実施すればよい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」は質量部である。
<実施例>
(合成例1)
<オルガノシロキサンエマルションの作製>
下記材料を下記組成にてホモミキサーで予備混合した後、圧力式ホモジナイザーによる19.6MPa(200kg/cm2)の圧力で強制乳化して、シリコーン原料エマルションを得た。
・オクタメチルシクロテトラシロキサン;95部
・γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;5部
・水;310部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;1部
次いで、
・水;50部
・ドデシルベンゼンスルホン酸;5部
を攪拌機、コンデンサー、加熱ジャケット及び滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコ内の温度を85℃に保ちながら5時間かけて、上記のシリコーン原料エマルションを滴下した。
滴下終了後、さらに1時間重合を進行させた。その後、冷却して25%アンモニア水を加えて中和し、エチレン性不飽和基を有するオルガノシロキサン重合体の水性分散体(第一のエマルション)を得た。固形分は20質量%、重量平均粒子径は110nmであった。なお、固形分は、試料を105℃で2時間加熱した後、残量をはかりとり、下記一般式(I)より算出した。
固形分(%)=残量(g)/試料(g)×100・・・(I)
(実施例1)
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプ及び窒素導入管を備えたフラスコに、
・脱イオン水;50部
・第一のエマルション;5部
・SR−10(乳化剤);0.5部
・表2に示す割合で配合された1段目乳化物;15部
を反応容器内に仕込み、反応容器内部を窒素で置換しながら70℃まで昇温した後、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.1部を1部の水に溶解した開始剤溶液を加え、シード粒子を形成した。
発熱ピークを確認した後、1段目乳化物の残りを内温80℃で1時間かけて滴下し、内温80℃のまま1時間熟成した。
その後、2段目乳化物(表3)を3時間かけて滴下し、1時間熟成した。
続いて25%アンモニア水を投入しpHを8.5に調整した後、最終段乳化物(表4)を一括投入し、1.5時間熟成した。その後、冷却することで重合体エマルションを得た。得られた重合体エマルションの固形分量、pH、粘度、MFT、重合体(α)の平均粒子径は下記表5に示す通りであった。
(実施例2)
1段目乳化物、2段目乳化物、最終段乳化物を表2,3,4に記載の組成に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、重合体エマルションを得た。得られた重合体エマルションの固形分量、pH、粘度、MFT、重合体(α)の平均粒子径は下記表5に示す通りであった。
(実施例3)
シード粒子製造時の仕込み組成を
・脱イオン水;15部
・オルガノシロキサンエマルション;50部
・表2に示す割合で配合された1段目乳化物;15部
に変更した以外は実施例1と同様にして重合体エマルションを得た。
(実施例4〜8、比較例2)
1段目乳化物、2段目乳化物、最終段乳化物を表2,3,4に記載の組成に変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、重合体エマルションを得た。得られた重合体エマルションの固形分量、pH、粘度、MFT、重合体(α)の平均粒子径は下記表5に示す通りであった。
(比較例1)
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプ及び窒素導入管を備えたフラスコに、
・脱イオン水;15部
・オルガノシロキサンエマルション;50部
・表2に示す割合で配合された1段目乳化物;15部
を反応容器内に仕込み、反応容器内部を窒素で置換しながら70℃まで昇温した後、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.1部を1部の水に溶解した開始剤溶液を加え、シード粒子を形成した。
発熱ピークを確認した後、1段目乳化物の残りを内温80℃で1時間かけて滴下し、内温80℃のまま1時間熟成した。
その後、2段目乳化物(表3)を3時間かけて滴下し、2時間熟成した。
その後、冷却し60℃以下で25%アンモニア水を投入し、pHを9に調整することで重合体エマルションを得た。得られた重合体エマルションの固形分量、pH、粘度、MFT、重合体(α)の平均粒子径は下記表5に示す通りであった。
(比較例3)
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプ及び窒素導入管を備えたフラスコに、
・脱イオン水;50部
・オルガノシロキサンエマルション;5部
・SR−10;0.5部
・表2に示す割合で配合された1段目乳化物;15部
を反応容器内に仕込み、反応容器内部を窒素で置換しながら70℃まで昇温した後、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.1部を1部の水に溶解した開始剤溶液を加え、シード粒子を形成した。
発熱ピークを確認した後、1段目乳化物の残りを内温80℃で1時間かけて滴下し、内温80℃のまま1時間熟成した。
その後、2段目乳化物を3時間かけて滴下し、2時間熟成した。
その後、冷却し、60℃以下で25%アンモニア水を投入し、pHを9に調整することで重合体エマルションを得た。得られた重合体エマルションの固形分量、pH、粘度、MFT、重合体(α)の平均粒子径は下記表5に示す通りであった。
Figure 2010059267
Figure 2010059267
Figure 2010059267
Figure 2010059267
表1〜4において、
MMA:メチルメタクリレート
St:スチレン
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
t−BMA:t−ブチルメタクリレート
n−BMA:n−ブチルメタクリレート
n−BA:n−ブチルアクリレート
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
AA:アクリル酸
SZ−6030:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン「SZ−6030」(商品名、東レダウ株式会社製)
SR−10:反応型アニオン性界面活性剤「アデカリアソープSR−10」(商品名、株式会社ADEKA製)
NDM:n−ドデシルメルカプタン
である。
Figure 2010059267
最低造膜温度(MFT)は、各水性樹脂3gを用いて、井本製作所製最低造膜温度測定装置にて、「JIS K 6828 5.11」準拠の方法でMFTを測定した。粘度は、水性樹脂の温度を25℃にし、東機産業(株)社製R−100型粘度計にて測定した値を用いた。平均粒子径としては、濃度1%に調整した試料を大塚電子(株)社製濃厚系アナライザーFPAR−1000を用い、25℃にて測定して得られたキュムラント解析平均粒子径の値を用いた。
(評価)
次に、実施例1〜8、比較例1〜3の水性樹脂について下記試験項目について以下の基準で評価を行った。結果を表6に示す。
<試験方法>
(1)重合安定性
実施例1〜8、比較例1〜3の樹脂について重合時のカレットについて、100メッシュのナイロン紗で濾過捕集し、50℃の乾燥炉で24時間乾燥させその重量を測定し、以下の基準に従って評価した。
「◎」:ドライ状態のカレット量が100ppm未満である。
「○」:ドライ状態のカレット量が100ppm以上1000ppm未満である。
「○△」:ドライ状態のカレット量が1000ppm以上2000ppm未満である。
「△」:ドライ状態のカレット量は2000ppm以上であるが、重合可能である。
「×」:不安定な為、重合不可能である。
(2)機械安定性試験
実施例1〜8、比較例1〜3について、各100gをマローン試験機にて一定のシェアをかけて15分間試験を行い、100メッシュのナイロン紗によってろ過し、その残渣の量を測定し、以下の基準に従って評価した。
「◎」:15Kg荷重における試験にて、残渣の量が0.01g未満であるかほとんど見られない。
「○」:10Kg荷重における試験にて、残渣の量が0.01g未満であるかほとんど見られない。
「△」:10Kg荷重における試験にて、残渣の量が0.01以上0.1g未満である。
「×」:残渣の量が0.1g以上である、又は試験中にゲル化する。
(3)貯蔵安定性
実施例1〜8、比較例1〜3の樹脂について、各200gを密栓可能なガラスビンに入れ50℃の恒温水槽に1週間入れる。その後取り出し、凝固物の有無と粘度を確認し、以下の基準に従って評価した。
「○」:凝固物も無く、粘度の変化率は±20%未満である。
「△」:凝固物も無く、粘度の変化率は±20%以上±35%未満である。
「×」:凝固物があるか、粘度の変化率が±35%以上である。
Figure 2010059267
(実施例9〜17、比較例4〜6)
<エナメル塗料の調製>
実施例1〜8、比較例1〜3で得られた重合体エマルション(以下、水性樹脂組成物とも記載する)を用い、水性塗料を調製した。具体的には、各水性樹脂組成物と各種配合物とを表7記載の割合で配合した。そして、この各混合液をディスパーにて1000rpmで10分間攪拌混合し、1000mPa・Sとなるよう水希釈し、1日間静置後100メッシュのナイロン紗でろ過することで、各エナメル塗料を得た。
<ミルベースの調整>
なお、エナメル塗料の調製に用いるミルベースは、下記材料を十分に混合した後、ガラスビーズを加えて高速分散機で30分間顔料分散を行い、ガラスビーズ等を300メッシュナイロン紗で濾別したものを用いた。
・タイペークCR−97(石原産業株式会社製);196.3g
・OROTAN SG(ローム&ハース株式会社製、顔料分散剤);2.8g
・サーフィノール DF−58(エア・プロダクツ株式会社製、消泡剤);0.08g
・プロピレングリコール;12g
・脱イオン水;60g
・28%アンモニア水溶液;1.8g
(4)耐候性試験
リン酸亜鉛処理鋼鈑に実施例9〜17、比較例4〜6で調製したエナメル塗料を乾燥膜厚が50μmになるようにスプレー塗装し、その後室温で2週間乾燥したものを耐候性試験の試験塗板とした。なお、リン酸亜鉛処理鋼鈑は、ボンデライト#100処理鋼鈑、板厚0.8mm、70mm×150mmである。
サンシャインカーボンウエザオメーター(スガ試験機製、WEL−SUN−HC−B型)耐候試験機(ブラックパネル温度63±3℃、降雨12分間、照射48分間のサイクル)を用いて試験を行い、6000時間及び8000時間後の光沢保持率を測定した。そして、以下の基準に従って評価した。
「5」:8000時間経過時の光沢保持率が80%以上、ΔEが3以下
「4」:8000時間経過時の光沢保持率が70%以上、ΔEが3以下
「3」:6000時間経過時の光沢保持率が70%以上、ΔEが3以下
「2」:6000時間経過時の光沢保持率が40%以上70%未満、ΔEが10以下
「1」:6000時間経過時の光沢保持率が40%未満またはΔEが10以上
(5)耐温水性試験
ガラス板上に6MILアプリケーターを用いて実施例9〜17、比較例4〜6のエナメル塗料を塗布し、その後室温にて1時間乾燥させた後、50℃で12時間強制乾燥したものを、耐温水性の評価用塗板とした。この評価用塗板を40℃の温水に1日間浸漬させた。その後、評価用塗板を取り出し、取り出してから5分後の塗膜白化度ΔLを日本電色工業(株)製スペクトロカラーメーターSE−2000を用いて測定した。そして、以下の基準に従って評価した。
「◎」:塗膜の変化なし。
「○」:引き上げ直後にわずかながらブリスターが見られるが室温乾燥1時間後の塗膜では問題がない。
「△」:引き上げ直後にブリスターが見られる、室温乾燥1時間後の塗膜でもブリスター跡が見られる。
「×」:基材からのはがれが見られる。
(6)温冷サイクル性試験
石膏スラグパーライト板(厚12mm×縦150mm×横70mm)にシーラーとしてダイヤナールLX−1010(三菱レイヨン株式会社製)を使用した白エナメル塗料(顔料重量濃度40%)を塗着量が90〜100g/m2(湿潤質量)となるように室温にてスプレー塗装し、130℃で5分間乾燥した。次いで、シーラーの上に中塗り層としてダイヤナールLX−2011(三菱レイヨン株式会社製)を使用した白エナメル塗料(顔料重量濃度30%)を塗着量が90〜100g/m2(湿潤質量)となるように室温にてスプレー塗装し、130℃で5分間乾燥した。次いで、中塗り層の上に上塗り層として実施例9〜17、比較例4〜6で調製したエナメル塗料を塗着量が50〜60g/m2(湿潤質量)となるように室温にてスプレー塗装し、50℃で12時間乾燥させ、試験板を作製した。
この試験板を1日室温で放置した後、溶剤系の2液硬化型アクリル樹脂を用いて試験板の側面及び背面を、防水機能を有するようにシールした。1日経過後に温冷サイクル試験を行った。温冷サイクル試験条件は、−20℃/16時間(空気中)経過後、50℃/4時間(空気中)、室温没水4時間とし、1サイクル24時間の試験を30サイクル実施した。そして、30倍ルーペを用いて観察し、試験板にクラックが入るまでのサイクル数を測定し、下記の基準に従って評価した。
「◎」:30サイクルでクラックなし。
「○」:20サイクルでクラックなし。
「△」:20サイクルでクラックが見られる。
「×」:5サイクル未満でクラックが見られる。
(7)顔料分散性試験
実施例9〜17、比較例4〜6で調製したエナメル塗料について、ガラス板に6ミルアプリケーターにて塗装(縦80mm×横80mm)し、50℃で12時間強制乾燥させた。初期光沢ならびに塗膜のブツについて確認し、以下の基準に従って評価した。
「○」:塗膜にブツが見られず、初期光沢が75以上である。
「×」:塗膜にブツが見られるまたは初期光沢が75未満である。
(8)耐汚染性試験
実施例9〜17、比較例4〜6のエナメル塗料をガラス板に6ミルアプリケーターにて塗装(縦80mm×横80mm)し、50℃で12時間強制乾燥させた。次いで、室温まで冷却した後、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名「MA100」)を塗膜にふりかけ、40℃の乾燥機1時間加熱した。その後、取り出して室温に放置後、水洗しΔL値を測定し、以下の基準に従って評価した。
「◎」:ΔLが3未満
「○」:ΔLが3以上で6未満
「×」:ΔLが6以上
(9)塗膜伸び試験
実施例9〜17、比較例4〜6で調製したエナメル塗料をアプリケーター(乾燥膜厚=60〜80μm)を用いて離型紙上に塗布し、室温にて2週間乾燥して塗膜を得た。この塗膜からJIS K 6301に規定するダンベル状2号型(幅10mm、標線間距離20mm)に打ち抜き、離型紙を取り除いたものを塗膜伸び試験サンプルとして用いた。
試験サンプルを恒温槽付きテンシロン引張試験機(RTC−1250A オリエンテック(株)製)を用いて、温度−10℃と20℃、チャック間距離50mm、引張速度50mm/min.にて測定した。
実施例9〜17、比較例4〜6で調製したエナメル塗料について各種評価した結果を表7にまとめて示す。
Figure 2010059267
Tinuvin477DW:ヒドロキシルフェニルトリアジン系UVA水分散樹脂(商品名、チバ・スペシャリティケミカルズ・ジャパン株式会社製)
Tinuvin292:HALS(商品名、チバ・スペシャリティケミカルズ・ジャパン株式会社製)
BYK−028:消泡剤(商品名、ビックケミー株式会社製)
キョーワノールM:造膜助剤(商品名、協和発酵株式会社製)
上記の結果から明らかなように、本発明に係る重合体エマルションは重合安定性、機械安定性及び貯蔵安定性に優れると共に、その重合体エマルションを用いた水性塗料も、耐候性、耐温水性、温冷サイクル性、顔料分散性、耐汚染性及び低温時の伸び性に優れる。
これに対して、比較例1〜3の重合体エマルションは、単量体(a)(反応性HALS(a))の濃度や比率、または(III)、(IV)、(V)若しくは(VI)のTg、比率のいずれかが本発明の特定の組成範囲に入っていないものである。この比較例の重合体エマルションを水性塗料として用いた場合、耐候性、耐温水性、温冷サイクル性、顔料分散性、耐汚染性、又は低温時の伸び等が十分ではない。
したがって、本発明によれば、重合安定性、機械的安定性及び貯蔵安定性が良く、高度な耐候性、耐温水性、温冷サイクル性、顔料分散性、耐汚染性、低温時の伸び性を同時に有する水性塗料に用いることのできる重合体エマルションを提供できる。
本発明の重合体エマルションは、セメントモルタル、スレート板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリート、金属、ガラス、磁器タイル、アスファルト、木材、防水ゴム材、プラスチック、珪酸カルシウム基材等の各種素材の表面仕上げ材、中塗り材に使用される水性塗料に用いることができ、工業上極めて有益なものである。

Claims (8)

  1. オルガノシロキサン(I)とグラフト交叉剤(II)を共縮合して得られるオルガノシロキサン重合体(III)0.5〜50質量%(固形分)((III)+(IV)+(V)+(VI)=100質量%)を含む第一のエマルションの存在下に、
    計算Tg=−50℃〜20℃のポリマーを与えるエチレン性不飽和単量体成分(IV)19〜68質量%((III)+(IV)+(V)+(VI)=100質量%)を重合し、
    さらに計算Tg=30℃〜100℃のポリマーを与えるエチレン性不飽和単量体成分(V)30〜79質量%((III)+(IV)+(V)+(VI))=100質量%)を重合して第二のエマルションを得、
    該第二のエマルションをpH6〜11に調整し、
    その存在下で下記一般式(I)で表される、分子内にピペリジル基を持つエチレン性不飽和単量体(a)の含有量が6〜60質量%であるエチレン性不飽和単量体成分(VI)1〜10質量%((III)+(IV)+(V)+(VI)=100質量%)を重合する重合体エマルションの製造方法。
    Figure 2010059267
    (R1は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基、Xは酸素原子又はイミノ基、Yは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基又はアルコキシル基、Zは水素原子又はシアノ基を示す。)
  2. 前記(a)は、前記重合体(III)と前記成分(IV)と前記成分(V)と前記成分(VI)との総量100質量%に対し0.5〜5質量%の比率で使用されたものである請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記成分(IV)、前記成分(V)及び前記成分(VI)の少なくとも一つは、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びt−ブチル(メタ)アクリレートの少なくとも一方を含み、
    前記重合体(III)と前記成分(IV)と前記成分(V)と前記成分(VI)との総量100質量%に対し、前記シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び前記t−ブチル(メタ)アクリレートの合計使用量が10〜50質量%である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記オルガノシロキサン(I)は、RmSiO(4-m)/2(式中、Rは置換又は非置換の1価の炭化水素基であり、mは1〜3の整数を表す)で表される構造単位を有するものである請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
  5. グラフト交叉剤(II)は、分子内に1個以上の加水分解性シリル基と、1個以上のエチレン性不飽和基又はメルカプト基を有するものである請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法で得られる重合体エマルション。
  7. 請求項6に記載の重合体エマルションを含有する水性塗料。
  8. 分子量2000以下のヒンダードアミンおよび/または紫外線吸収剤(UVA)を含有する請求項7に記載の水性塗料。
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