JP3624236B2 - 水性樹脂分散体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコーン系高分子乳化剤の分子中および/または分散樹脂成分の分子中にピペリジン骨格を有する単量体由来の構造単位を有する水性樹脂分散体並びに該水性樹脂分散体よりなる塗料用組成物に関するものであり、本発明の水性樹脂分散体および塗料用組成物は、貯蔵安定性、塗膜形成性に優れ、しかも透明性、耐水性、長期耐候性に優れる被膜を形成することができる。
【0002】
【従来の技術】
水性樹脂分散液は水を分散媒としていることから、環境汚染の問題が無く、安全性、取り扱い性、作業性、省資源などの点で優れており、それらの特性を活かして塗料などの被覆用材料をはじめとして多くの分野で広く用いられている。
水性樹脂分散液の多くは、通常、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、その他の低分子量または比較的低分子量の乳化剤の存在下にラジカル重合性単量体を重合して製造されている。しかしながら、前記乳化剤を含む水性樹脂分散液は、それから形成した塗膜中に残存した乳化剤が塗膜の耐水性や耐候性に悪影響を及ぼすことが多い。
【0003】
また、水性樹脂分散液からなる塗料では、塗膜の耐候性や耐光性などを向上させる目的で、紫外線吸収剤や光劣化防止剤を分散液中に添加することが広く行われている。しかしながら、紫外線吸収剤および光劣化防止剤の多くは非水溶性であって水中に安定に分散させることが難しく、貯蔵時に分離や沈殿を生じ、貯蔵安定性に劣っており、添加した紫外線吸収剤や光劣化防止剤の効果を十分に発揮させ得ない場合が多い。
【0004】
そこで、水性樹脂分散液の製造時にラジカル重合性単量体の一部として光劣化防止作用を有するピペリジン骨格を持つ単量体を用いて重合を行い、樹脂中にピペリジン骨格を有する単量体に由来する構造単位を導入することが提案されている(特開昭54−71185号公報など)。しかしながら、この水性樹脂分散液から形成された塗膜は、短期的には耐候性の向上効果を示すが、長期耐候性の点では未だ不十分である。
【0005】
また、シクロアルキル(メタ)アクリレートと共に、ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収性単量体、またはベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収性単量体とピペリジン骨格を有する紫外線安定性単量体を用いて乳化重合を行って塗料用組成物を製造する方法が知られている(特開平9−3396号公報)。また、この発明では、前記塗料用組成物の製造時に、炭素数6〜18のアルキルメルカプタンの存在下に不飽和カルボン酸含有単量体成分を重合して得られる重合体またはその塩からなる乳化剤を用いて乳化重合すると、塗膜の長期耐候性、耐水性、光沢などが一層向上するとしている。しかしながら、前記特定の重合体またはその塩からなる乳化剤を用いて得られる塗料用組成物であっても、該塗料用組成物を用いて形成された塗膜の長期耐候性が十分であるとは言えず、改良の余地がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、貯蔵安定性、塗膜形成性、取り扱い性などの特性に優れ、しかも長期耐候性、透明性、耐水性などに優れる被膜を形成することのできる水性樹脂分散体および塗料用組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者が検討を重ねた結果、シリコーン系高分子乳化剤の存在下にラジカル重合性単量体を乳化重合して水性樹脂分散体を製造し且つその際にシリコーン系高分子乳化剤の分子中および/または分散樹脂の分子中に、ピペリジン骨格を有する単量体に由来する構造単位を特定の割合で導入すると、貯蔵安定性、塗膜形成性、取り扱い性に優れる水性樹脂分散体が得られること、しかも該水性樹脂分散体を用いて形成した塗膜などの被膜は、長期耐候性、透明性、耐水性などの点に優れ、特に長期耐候性の点で顕著な効果を示すことを見出して本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) シリコーン系高分子乳化剤の存在下にラジカル重合性単量体を乳化重合してなる水性樹脂分散体であって、シリコーン系高分子乳化剤および/または樹脂の分子中に、ピペリジン骨格を有する単量体(以下「ピペリジン骨格含有単量体」という)に由来する構造単位を、シリコーン系高分子乳化剤および樹脂の合計重量に基づいて、0.5〜25重量%の割合で有することを特徴とする水性樹脂分散体である。
【0009】
そして、本発明は、
(2) シリコーン系高分子乳化剤が、シリコーン分子の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーおよびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸と共に、ピペリジン骨格を持たない他のラジカル重合性単量体および/またはピペリジン骨格を有するラジカル重合性単量体を共重合してなる共重合体であって且つ該共重合体中のカルボキシル基の一部または全部を塩基で中和してなる共重合体である前記(1)の水性樹脂分散体を好ましい態様として包含する。
【0010】
さらに、本発明は、前記(1)または(2)の水性樹脂分散体よりなる塗料用組成物である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
シリコーン系高分子乳化剤の存在下にラジカル重合性単量体を乳化重合して得られたものである本発明の水性樹脂分散体は、シリコーン系高分子乳化剤およびラジカル重合性単量体のラジカル重合により生成した樹脂分を固形分として水性媒体中に含有している。
【0012】
本発明の水性樹脂分散体では、ピペリジン骨格含有単量体に由来する構造単位(以下「ピペリジン骨格含有単量体単位」という)は、シリコーン系高分子乳化剤の分子中のみに含まれていても、乳化重合により生成する樹脂の分子中のみに含まれていても、またはシリコーン系高分子乳化剤の分子中および乳化重合により生成する樹脂の分子中の両方に含まれていてもよく、要するに、水性樹脂分散体全体からみて、ピペリジン骨格含有単量体単位の含有割合が、シリコーン系高分子乳化剤および樹脂の合計重量に基づいて0.5〜25重量%の範囲内であればよい。ピペリジン骨格含有単量体単位の含有量が前記0.5重量%よりも少ないと、長期耐候性に優れる塗膜を形成し得る水性樹脂分散体および塗料用組成物が得られなくなる。一方、ピペリジン骨格含有単量体単位の含有量が前記25重量%を超えると、塗料用組成物から得られる塗膜の外観が劣ると共に、耐溶剤性の性能が低下するので好ましくない。本発明の水性樹脂分散体では、ピペリジン骨格含有単量体単位の含有量が、シリコーン系高分子乳化剤および樹脂の合計重量に基づいて1.0〜15重量%の範囲内であることが、長期耐候性、外観、耐溶剤性、耐薬品性などの点からより好ましい。
【0013】
ピペリジン骨格単量体単位を分子中に有するシリコーン系高分子乳化剤は、シリコーン系高分子乳化剤の製造時に、シリコーン単位を有する単量体および他の重合性単量体と共にピペリジン骨格含有単量体を併用して重合を行うことによって製造することができる。
また、乳化重合により生成する樹脂の分子中にピペリジン骨格含有単量体単位を含有させるには、シリコーン系高分子乳化剤の存在下にラジカル重合性単量体を乳化重合して水性樹脂分散体を製造する際に、ラジカル重合性単量体の一部としてピペリジン骨格含有単量体を用いればよい。
【0014】
シリコーン系高分子乳化剤分子中および/または乳化重合により生成する樹脂の分子中にピペリジン骨格を導入するために用いる単量体としては、乳化重合が可能で且つピペリジン骨格を有するラジカル重合性の単量体であればいずれでもよく、具体例としては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジンなどを挙げることができる。本発明では、前記したピペリジン骨格含有単量体の1種のみを用いてもまたは2種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明の水性樹脂分散体の製造に用いるシリコーン系高分子乳化剤としては、分子中にシリコーン単位を有し、且つラジカル重合性単量体の重合時および重合後にラジカル重合性単量体および該単量体の乳化重合により生成した樹脂分を水性媒体中に安定に乳化分散させ得るシリコーン系高分子であればいずれも使用できる。
そのうちでも、本発明で好ましく用いられるシリコーン系高分子乳化剤としては、(a)シリコーン分子の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー、(b)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、並びに(c)ピペリジン骨格を持たない他のラジカル重合性単量体および/またはピペリジン骨格含有単量体を共重合させてシリコーンを枝成分とするグラフト共重合体を製造し、該グラフト共重合体中のカルボキシル基の一部または全部を塩基で中和して得た共重合体よりなるシリコーン系高分子乳化剤を挙げることができる。
【0016】
前記したシリコーン系高分子乳化剤の製造に用いるマクロモノマー(a)としては、シリコーン分子の末端に(メタ)アクリロイル基を有する数平均分子量が1,000〜50,000であるマクロモノマーが、耐水性、乳化力、シリコーン系高分子乳化剤を製造する際の重合性などの点から好ましい。
また、シリコーン系高分子乳化剤における該マクロモノマー(a)に由来する構造単位の含有量は、シリコーン系高分子乳化剤の重量に基づいて0.5〜60重量%、特に2〜50重量%であることが、シリコーン系高分子乳化剤の乳化力、貯蔵安定性、シリコーン系高分子乳化剤を含む本発明の水性樹脂分散体を用いて形成した塗膜の耐水性などの点から好ましい。
該マクロモノマー(a)の製法は何ら制限されないが、例えば、(i)リチウムトリアルキルシラノレートなどの重合開始剤を使用して環状トリシロキサンまたは環状テトラシロキサンなどを重合してシリコーンリビングポリマーをつくり、これにγ−メタクリロイルオキシプロピルモノクロロジメチルシランなどを反応させるアニオン重合法(例えば特開昭59−78236号公報)、(ii)末端にシラノール基を有するシリコーンとγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどとを縮合反応させる縮合法(特開昭58−16760号公報、特開昭60−123518号公報など)などを挙げることができる。
【0017】
また、シリコーン系高分子乳化剤の製造に用いる前記したα,β−エチレン性不飽和カルボン酸(b)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸(b)の使用量は、シリコーン系高分子乳化剤の酸価が30〜260mgKOH/g樹脂になるような量であることが好ましい。前記酸価を与えるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸(b)の使用量は、該カルボン酸の種類によって異なるが、一般にはシリコーン系高分子乳化剤の製造に用いる全単量体[マクロモノマー(a)も含む]の重量に対して通常3〜40重量%程度である。シリコーン系高分子乳化剤の酸価が前記した30mgKOH/g樹脂未満であると、塩基で中和しても該シリコーン系高分子乳化剤を水溶化できにくくなる。一方、シリコーン系高分子乳化剤の酸価が前記した260mgKOH/g樹脂を超えると、シリコーン系高分子乳化剤を含む水性樹脂分散体から得られる塗膜などの耐水性が低下し易い。
【0018】
シリコーン系高分子乳化剤の製造に用いる前記した単量体(c)において、ピペリジン骨格を持たない他のラジカル重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルなどの、(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、トリクロルエチレンなどを挙げることができる。これらの単量体のうちの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ピペリジン骨格を持たない他のラジカル重合性単量体(c)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とするラジカル重合性単量体が好ましく用いられる。
ピペリジン骨格を持たない他のラジカル重合性単量体の好ましい使用量は、一般に、シリコーン系高分子乳化剤の製造に用いる全単量体(マクロモノマーも含む)の重量に基づいて、10〜90重量%である。
【0019】
また、シリコーン系高分子乳化剤としてピペリジン骨格含有単量体を分子中に有するものを用いる場合は、前記の単量体(c)の一部および/または全部として、上述したピペリジン骨格含有単量体の1種または2種以上を用いてシリコーン系高分子乳化剤を製造すればよい。その場合のピペリジン骨格含有単量体の使用量は、最終的に得られる水性樹脂分散体におけるピペリジン骨格含有単量体単位の含有割合が、前述のように、シリコーン系高分子乳化剤およびラジカル重合性単量体の乳化重合により生成する樹脂の合計重量に基づいて0.5〜25重量%の範囲内の量になるようにする。
【0020】
シリコーン系高分子乳化剤の前駆体であるシリコーンを枝成分とする前記したグラフト共重合体の製造に当たっては、ラジカル重合開始剤を用いる方法または放射線照射法のいずれでも採用できるが、ラジカル重合開始剤を用いて行うのが好ましい。その際のラジカル重合開始剤としては、一般にラジカル重合に用いられている重合開始剤のいずれもが使用でき、例えば過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの無機系ラジカル重合開始剤;クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどの有機系ラジカル重合開始剤などを挙げることができる。また、重合時に、分子量の調整のために、必要に応じて連鎖移動剤、例えばメルカプト酢酸、メルカプトピロピオン酸、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオ−ル、2−メルカプトエタノール、エチルメルカプトアセテート、チオフェノール、2−ナフタレンチオール、ドデシルメルカプタンまたはチオグリセロールなどを用いてもよい。
【0021】
前記グラフト共重合体を製造するための重合反応は、適当な有機溶媒中で、50〜150℃、特に60〜100℃の温度で、3〜100時間、特に5〜10時間の重合時間で行うのが好ましい。前記有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、メタノール、エタノール、イソプパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ノルマルブチルセロソルブ、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチールプロパン、グリセリンなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミドなどを挙げることができる。
【0022】
上記により得られるグラフト共重合体の有機溶媒溶液に塩基を添加して、そのカルボキシル基の一部または全部を中和して水溶性グラフト共重合体とすることにより、本発明の水性樹脂分散体で好ましく用いられるシリコーン系高分子乳化剤が得られる。水性化のための塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機のアルカリ金属塩、アンモニア、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンなどの1級、2級または3級アミン化合物、ピリジン、ピペリジンなどの複素環式アミン化合物を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。カルボキシル基の中和量は、グラフト共重合体中の全カルボキシル基の50モル%以上であることが好ましい。
【0023】
本発明の水性樹脂分散体において、樹脂分(分散樹脂粒子)の製造に用いるラジカル重合性単量体としては、乳化重合が可能なラジカル重合性単量体であればいずれでもよく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルなどの、(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、トリクロルエチレン、エチレン、プロピレンなどの単量体を挙げることができる。
そのうちでも、得られる水性樹脂分散体の貯蔵安定性、分散安定性、塗膜形成性、水性樹脂分散体から得られる塗膜の長期耐候性、耐水性、外観、耐溶剤性、耐薬品性などの点から、樹脂分を製造するためのラジカル重合性単量体として、アルキルメタクリレートを主体とするラジカル重合性単量体が好ましく用いられる。特に、ラジカル重合性単量体の全量に基づいて、アルキルメタクリレートを約50重量%以上の割合で含む単量体混合物を用いることが、得られる水性樹脂分散体の貯蔵安定性、分散安定性、塗膜形成性、水性樹脂分散体から形成される塗膜の長期耐候性、耐水性、外観、耐溶剤性、耐薬品性などの点からより好ましい。
【0024】
また、乳化重合により生成する樹脂の分子中にピペリジン骨格含有単量体単位を含有させる場合は、前記したラジカル重合性単量体と共に、上述したピペリジン骨格含有単量体の1種または2種以上を用いて、シリコーン系高分子乳化剤の存在下に、乳化重合を行う。その際のピペリジン骨格含有単量体の使用量は、最終的に得られる水性樹脂分散体におけるピペリジン骨格含有単量体単位の含有割合が、前述のように、シリコーン系高分子乳化剤およびラジカル重合性単量体の乳化重合により生成する樹脂の合計重量に基づいて0.5〜25重量%の範囲内の量になるようにして用いる。
【0025】
本発明の水性樹脂分散体の製造に当たっては、(i)ピペリジン骨格含有単量体単位を分子中に有するシリコーン系高分子乳化剤の存在下に、水性媒体中で、ピペリジン骨格を持たないラジカル重合性単量体を乳化重合するか、またはピペリジン骨格を持たないラジカル重合性単量体とピペリジン骨格含有単量体を乳化重合する方法、或いは(ii)ピペリジン骨格含有単量体単位を分子中に持たないシリコーン系高分子乳化剤の存在下に、ピペリジン骨格を持たないラジカル重合性単量体とピペリジン骨格含有単量体を乳化重合する方法のいずれかの方法、が一般に採用される。
その場合のシリコーン系高分子乳化剤の添加量は、樹脂分の製造に用いる全ラジカル重合性単量体の重量に基づいて1重量%以上であることが好ましく、通常5〜50重量%程度であることがより好ましく、10〜40重量%であることが更に好ましい。
【0026】
また、水性樹脂分散体の製造に用いるラジカル重合開始剤としては、ラジカル重合に一般に用いられている重合開始剤のいずれもが使用でき、具体例としては、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの無機系ラジカル重合開始剤;クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどの有機系ラジカル重合開始剤などを挙げることができる。また、乳化重合時に、必要に応じて分子量の調整のためにシリコーン系高分子乳化剤の場合について上記で挙げた連鎖移動剤の1種または2種以上を使用してもよい。
【0027】
水性樹脂分散体の製造に用いる水性媒体としては、水単独、または水と水溶性有機溶媒(アルコール、エーテル、ケトン、DMSO、DMFなど)との混合溶媒を挙げることができ、そのうちでも水を単独で用いることが分子量増加および安全性の点から好ましい。
【0028】
水性樹脂分散体を製造するための乳化重合は、水性媒体中で、シリコーン系高分子乳化剤の存在下に、30〜150℃、特に40〜100℃の温度で、20〜100時間、特に3〜10時間に亙って重合を行うのが好ましく、それにより目的とする水性樹脂分散体を円滑に得ることができる。
【0029】
本発明の水性樹脂分散体では、水性樹脂分散体の全重量に基づいて、乳化重合により得られる樹脂分の含有量が10〜80重量%、特に20〜60重量%であることが、水性樹脂分散体の貯蔵安定性、取り扱い性、塗工性、成膜性、乾燥性が良好になり、且つ水性樹脂分散体から形成される塗膜などの物性が良好になる点から好ましい。
【0030】
本発明の水性樹脂分散体は、塗料用組成物、接着剤組成物、塗料以外の被覆用組成物、含浸補強用組成物などとして、金属、木材、紙、布帛、プラスチック、コンクリートなどの水硬性材料に施すことができ、そのうちでも、長期耐候性、耐水性、外観、耐溶剤性、耐薬品性などに優れていることから、塗料用組成物として特に適している。
本発明の水性樹脂分散体を塗料組成物として用いる場合は、通常の水性塗料と同様にして取り扱うことができ、基体上に塗布した後、室温または加熱下に乾燥して塗膜を形成することができる。
【0031】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、重合前のエマルジヨン(プレエマルジヨン)または水性樹脂分散体中の分散粒子の平均粒径の測定、水性樹脂分散体から形成した塗膜の透明性(ヘイズ値)、水性樹脂分散体から形成した塗膜の耐候性試験は以下の方法により行った。また以下の例中、「部」は重量部を示す。
【0032】
[プレエマルジヨンまたは水性樹脂分散体中の分散粒子の平均粒径]
レーザー回折式粒度分布測定装置[(株)堀場製作所製「LA−910」]を用いてプレエマルジヨンまたは水性樹脂分散体中の分散粒子の平均粒径を測定した。
【0033】
[水性樹脂分散体を用いて形成した塗膜の透明性(ヘイズ値)]
水性樹脂分散体をガラス板に塗布し、温度23℃、湿度65%の条件下に7日間乾燥して厚さ20μmの塗膜を形成し、その透明性(ヘイズ値)をJIS K−6714に準拠してヘイズメーターを用いて測定した。
【0034】
[水性樹脂分散体から形成した塗膜の耐候性試験]
表面をクロメート処理したアルミ板に、水性樹脂分散体を20μm厚で塗布した後、温度23℃、湿度65%の条件下で7日間乾燥して、耐候性試験用の試験片を作製した。次いで、前記試験片を用いてJIS K5400−1979に準拠して耐候性試験を行い、60度光沢の光沢保持率を測定した。
すなわち、測定装置として、ダイプラウインテス製「メタルウエザーKU−R4型」を使用し、光源としてメタルハライドランプを用い、光強度80mW/cmの条件下に、[照射12時間(63℃/50%RH)+休止4時間(63℃/90%RH)+結露8時間(30℃/90%RH)]を1セットとするサイクルを繰り返して行い、500時間後の60度光沢保持率を測定した。
【0035】
《参考例1》[シリコーン系高分子乳化剤(A1)の製造]
(1) 2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート16部、ブチルメタクリレート40部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、メタクリル酸14部およびイソプロピルアルコール100部の混合液に、末端メタクリル基型シリコーンマクロモノマー[チッソ(株)製「FM0721」;数平均分子量約5,000]20部、メルカプトプロピオン酸(連鎖移動剤)1.0部および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)1.0部を溶解し、撹拌機、コンデンサー、温度計および窒素導入管を備えたフラスコに仕込み、窒素雰囲気下で80℃で4時間加熱重合した後、更にAIBNを0.5部投入し、同温度で更に4時間加熱重合して、酸価98mgKOH/g樹脂のグラフト共重合体を含有する不揮発分50.2%の反応液を得た。
(2) 上記(1)で得られた反応液の全量(約200部)に、1.6%アンモニア水溶液100部を徐々に攪拌しながら加えた後、減圧下に温度60℃でイソプロピルアルコールを留去して、分子中にピペリジン骨格含有単量体単位を有するシリコーン系高分子乳化剤(A1)(pH7.9)を得た。
【0036】
《参考例2》[シリコーン系高分子乳化剤(A2)の製造]
(1) シリコーン系マクロモノマーとして分子末端の重合性基がメタクリロイル基であるシリコーン系マクロモノマー[東亞合成(株)製「AK−32」;数平均分子量20,000]30部を用い、共重合させる単量体として1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート16部、2−エチルヘキシルメタクリレート35部およびメタクリル酸19部を用い、連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸1.0部を用いた以外は、参考例1と同様にして重合反応を行って、酸価130mgKOH/g樹脂のグラフト共重合体を含有する不揮発分50.4%の反応液を得た。
(2) 上記(1)で得られた反応液の全量に、2.5%トリエチルアミン水溶液100部を徐々に攪拌しながら加えた後、減圧下に温度60℃でイソプロピルアルコールを留去して、分子中にピペリジン骨格含有単量体単位を有するシリコーン系高分子乳化剤(A2)(pH8.0)を得た。
【0037】
《参考例3》[シリコーン系高分子乳化剤(B1)の製造]
(1) メチルメタクリレート16部、ブチルメタクリレート40部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、メタクリル酸14部およびイソプロピルアルコール100部の混合液に、末端メタクリル基型シリコーンマクロモノマー[チッソ(株)製「FM0721」;数平均分子量約5,000]20部、メルカプトプロピオン酸1.0部、AIBNの1.0部を溶解し、撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えたフラスコに仕込み、窒素雰囲気下80℃で4時間加熱重合した後、更にAIBNの0.5部を投入して同温度で4時間加熱重合して、酸価98mgKOH/g樹脂のグラフト共重合体を含有する不揮発分49.8%の反応液を得た。
(2) 上記(1)で得られた反応液の全量に、1.6%アンモニア水溶液100部を徐々に攪拌しながら加えた後、減圧下に温度60℃でイソプロピルアルコールを留去して、ピペリジン骨格含有単量体単位を持たないシリコーン系高分子乳化剤(B1)(pH7.8)を得た。
【0038】
《参考例4》[シリコーン系高分子乳化剤(B2)の製造]
(1) シリコーン系マクロモノマーとして分子末端の重合性基がメタクリロイル基であるシリコーン系マクロモノマー[東亞合成(株)製「AK−32」;数平均分子量20,000]30部、また共重合させる単量体としてメチルメタクリレート16部、2−エチルヘキシルメタクリレート35部およびメタクリル酸19部を用い、連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸1.0部を用いた以外は、参考例1と同様にして重合を行って、酸価130mgKOH/g樹脂のグラフト共重合体を含有する不揮発分50.3%の反応液を得た。
(2) 上記(1)で得られた反応液の全量に、2.5%トリエチルアミン水溶液100部を徐々に攪拌しながら加えた後、減圧下に温度60℃でイソプロピルアルコールを留去して、ピペリジン骨格含有単量体単位を持たないシリコーン系高分子乳化剤(B2)(pH7.9)を得た。
【0039】
《参考例5》[高分子乳化剤(C1)の製造]
(1) メチルメタクリレート26部、ブチルメタクリレート50部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、メタクリル酸14部およびイソプロピアルコール100部の混合液に、メルカプトプロピオン酸1.0部およびAIBNの1.0部を溶解し、撹拌機、コンデンサー、温度計および窒素導入管を備えたフラスコに仕込み、窒素雰囲気下に80℃で4時間加熱重合した後、さらにAIBNの0.5部を投入して同温度で4時間加熱重合して、酸価98mgKOH/g樹脂の共重合体を含有する不揮発分49.6%の反応液を得た。
(2) 上記(1)で得られた反応液の全量(約200部)に、1.6%アンモニア水溶液100部を徐々に攪拌しながら加えた後、減圧下に温度60℃でイソプロピルアルコールを留去して、シリコーンおよびピペリジン骨格含有単量体単位を持たないシリコーン系高分子乳化剤(C1)を得た。
【0040】
《実施例1》[水性樹脂分散体の製造]
(1) メチルメタクリレート55部、ブチルアクリレート35部および2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部からなるモノマー混合物を準備した。
(2) 撹拌機、コンデンサー、温度計および窒素導入管を備えたフラスコに、脱イオン水100部および参考例1で得られたシリコーン系高分子乳化剤(A1)(分子中にピペリジン骨格含有単量体単位を含有)60部を添加し、窒素雰囲気下に60℃に昇温した後、tert−ブチルハイドロパーオキシドの10重量%水溶液5部、ロンガリットの10重量%水溶液5部および上記(1)で準備したモノマー混合物100部を4時間かけて滴下した。滴下後、同温度で更に2時間反応を継続させ重合を行って水性樹脂分散体を製造した。重合中、フラスコ壁に凝集物がわずかに付着した他は、分離やブロッキング等が起こらず、水性樹脂分散体は安定であった。
【0041】
(3) 上記(2)で得られた水性樹脂分散体を200メッシュのネットで濾過した結果、グリッド量は100ppm以下であり、また該樹脂分散体を室温で1週間貯蔵した後も凝集および分離が生じておらず貯蔵安定性に優れていた。
また、上記(2)で得られた水性樹脂分散体中に含まれる樹脂粒子の平均粒径を上記した方法で測定したところ0.11μmであり、その分布は狭いものであった。さらに、該水性樹脂分散体をガラス板に塗布して得られた塗膜の透明性(ヘイズ値)を上記した方法で測定したところ、ヘイズ値は0.8であり、透明性に優れていた。また、該水性樹脂分散体をアルミ板に塗布して得られた塗膜の耐候性を上記した方法で測定したところ、初期の60度光沢は138.1であり、500時間後の60度光沢は120.5であり、光沢保持率は87.3%であった。
【0042】
《実施例2》[水性樹脂分散体の製造]
(1) シクロヘキシルメタクリレート50部、ブチルメタクリレート20部、2−エチルヘキシルアクリレート20部および2−ヒドロキシメチルメタクリレート10部からなるモノマー混合物を、脱イオン水40部中に、参考例2で得られたシリコーン系高分子乳化剤(A2)(分子中にピペリジン骨格含有単量体単位を含有)60部を乳化剤として用いて乳化させて、重合前のエマルジヨン(プレエマルジヨン)を調製した。このプレエマルジョンは、1日経過しても分離せず安定であった。プレエマルジヨン中の分散粒子の平均粒径を上記した方法で測定したところ1.52μmであり、その分布は狭いものであった。
(2) 攪拌機、温度計、冷却器付きフラスコに脱イオン水60部を入れ、窒素をバブルさせながら、内温を70℃に保ち、攪拌下に、過硫酸アンモニウム/脱イオン水/25%アンモニア水=0.7部/9.3部/2部からなる液12部と、上記(1)で調製したプレエマルジョン200部を4時間かけて滴下した後、更に2時間反応を継続させ重合を行って水性樹脂分散体を調製した。重合中フラスコの壁に凝集物がわずかに付着した他は、分離やブロッキング等が起こらず、水性樹脂分散体は安定であった。
【0043】
(3) 上記(2)で得られた水性樹脂分散体を200メッシュのネットで濾過した結果、グリッド量は100ppm以下であった。また、該水性樹脂分散体を室温で1週間貯蔵した後にも凝集や分離が生じておらず貯蔵安定性に優れていた。水性樹脂分散体中の分散粒子の平均粒径を上記した方法で測定したところ0.18μmであり、その分布は狭いものであった。また、該水性樹脂分散体をガラス板に塗布して得られた塗膜の透明性(ヘイズ値)を上記した方法で測定したところ、ヘイズ値は0.8であり、透明性に優れていた。さらに、該水性樹脂分散体をアルミ板に塗布して得られた塗膜の耐候性を上記した方法で測定したところ、初期の60度光沢は138.5であり、500時間後の60度光沢は128.5であり、光沢保持率は92.8%であった。
【0044】
《実施例3》[水性樹脂分散体の製造]
(1) 2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート3部、メチルメタクリレート52部、ブチルアクリレート35部および2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部からなるモノマー混合物を準備した。
(2) 撹拌機、コンデンサー、温度計および窒素導入管を備えたフラスコに、脱イオン水100部および上記の参考例3で得られたシリコーン系高分子乳化剤(B1)(分子中にピペリジン骨格含有単量体単位を非含有)60部を添加し、窒素雰囲気下に60℃に昇温した後、tert−ブチルハイドロパーオキシドの10重量%水溶液5部、ロンガリットの10重量%水溶液5部および上記(1)で準備したモノマー混合物100部を4時間かけて滴下した。滴下後、同温度で更に2時間反応を継続させ重合を行って水性樹脂分散体を製造した。重合中フラスコの壁に凝集物がわずかに付着した他は、分離およびブロッキング等が起こらず、得られた水性樹脂分散体は安定であった。
【0045】
(3) 上記(2)で得られた水性樹脂分散体を200メッシュのネットで濾過した結果、グリッド量は100ppm以下であった。また、該水性樹脂分散体を室温下に1週間貯蔵後も凝集や分離や生じておらず、貯蔵安定性に優れていた。該水性樹脂分散体中の分散樹脂粒子の平均粒径を上記した方法で測定したところ0.10μmであり、その分布は狭いものであった。また、該水性樹脂分散体をガラス板に塗布して得られた塗膜の透明性(ヘイズ値)を上記した方法で測定したところ、ヘイズ値は0.8であり、透明性に優れていた。さらに、該水性樹脂分散体をアルミ板に塗布して得られた塗膜の耐候性を上記した方法で測定したところ、初期の60度光沢は110.8であり、500時間後の60度光沢は90.8であり、光沢保持率は81.9%であった。
【0046】
《実施例4》[水性樹脂分散体の製造]
(1) 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート3部、シクロヘキシルメタクリレート47部、ブチルメタクリレート20部、2−エチルヘキシルアクリレート20部および2−ヒドロキシメチルメタクリレート10部からなるモノマー混合物を、脱イオン水40部中に、参考例4で得られたシリコーン系高分子乳化剤(B2)(分子中にピペリジン骨格含有単量体単位を非含有)60部を乳化剤として用いて乳化させて重合前のエマルジヨン(プレエマルション)を調製した。このプレエマルジョンは、1日経過しても分離せず安定であった。また該プレエマルジヨン中の分散粒子の平均粒径を上記した方法で測定したところ1.52μmであり、その分布は狭いものであった。
(2) 攪拌機、温度計および冷却器付きフラスコに、脱イオン水60部を入れ、窒素をバブルさせながら、内温を70℃に保ち、攪拌しながら、過硫酸アンモニウム/脱イオン水/25%アンモニア水=0.7部/9.3部/2部よりなる液12部、および上記(1)で調製したプレエマルジョン200部を4時間かけて滴下し、更に2時間反応を継続させ重合を行って水性樹脂分散体を製造した。重合中にフラスコ壁に凝集物がわずかに付着した他は、分離やブロッキング等が起こらず、得られた水性樹脂分散体は安定性に優れていた。
【0047】
(3) 上記(2)で得られた水性樹脂分散体を200メッシュのネットで濾過した結果、グリッド量は100ppm以下であった。また、該水性樹脂分散体は室温下に1週間貯蔵した後でも凝集および分離が生じておらず、貯蔵安定性に優れていた。該水性樹脂分散体中の分散樹脂粒子の平均粒径を上記した方法で測定したところ0.21μmであり、その分布は狭いものであった。また、該水性樹脂分散体をガラス板に塗布して得られた塗膜の透明性(ヘイズ値)を上記した方法で測定したところ、ヘイズ値は0.7であり、透明性に優れていた。さらに、該水性樹脂分散体をアルミ板に塗布して得られた塗膜の耐候性を上記した方法で測定したところ、初期の60度光沢は115.5であり、500時間後の60度光沢は102.9であり、光沢保持率は89.0%であった。
【0048】
《比較例1》[水性樹脂分散体の製造]
(1) 実施例2において、シリコーン系高分子乳化剤(A2)に代えて、上記の参考例4で得られたシリコーン系高分子乳化剤(B2)(分子中にラジカル重合性単量体単位を非含有)を用いた以外は、実施例2と同様の操作を行って、水性樹脂分散体を製造した。重合中にフラスコ壁に凝集物がわずかに付着した他は、分離やブロッキング等が起こらず、得られた水性樹脂分散体は安定であった。(2) 上記(1)で得られた水性樹脂分散体を200メッシュのネットで濾過した結果、グリッド量は100ppm以下であった。また、該水性樹脂分散体を室温で1週間貯蔵した後も凝集や分離が生じておらず、貯蔵安定性であった。該水性樹脂分散体中の分散樹脂粒子の平均粒径を上記した方法で測定したところ、0.14μmであり、その分布は狭いものであった。また、該水性樹脂分散体をガラス板に塗布して得られた塗膜の透明性(ヘイズ値)を上記した方法で測定したところ、ヘイズ値は0.5であり、透明性に優れていた。さらに、該水性樹脂分散体をアルミ板に塗布して得られた塗膜の耐候性を上記した方法で測定したところ、初期の60度光沢は138.8であったが、500時間後の60度光沢は58.2まで低下し、光沢保持率は41.9%であった。
【0049】
《比較例2》[水性樹脂分散体の製造]
(1) 実施例2において、シリコーン系高分子乳化剤(A2)の代わりに、参考例4で調製したシリコーン系高分子乳化剤(B2)(分子中にピペリジン骨格含有単量体単位を非含有)を用い、モノマー混合物としてシクロヘキシルメタクリレート50部、ブチルメタクリレート20部、2−エチルヘキシルアクリレート20部および2−ヒドロキシメチルメタクリレート10部からなるモノマー混合物を用い、そして前記モノマー混合物にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバガイギー社製「チヌビン384」)1部およびヒンダードアミン系光劣化安定剤(チバガイギー社製「チヌビン123」)0.5部を添加して、実施例2と同様の操作を行って水性樹脂分散体を製造した。重合中にフラスコ壁に凝集物がわずかに付着した他は、分離やブロッキング等が起こらず、得られた水性樹脂分散体は安定であった。
【0050】
(2) 上記(1)で得られた水性樹脂分散体を200メッシュのネットで濾過した結果、グリッド量は100ppm以下であった。該水性樹脂分散体中の分散樹脂粒子の平均粒径を上記した方法で測定したところ、0.14μmと2.2μmの2つの位置にピークを有しており(二峰性)、粒径が不揃いであった。また、該水性樹脂分散体を室温で1週間貯蔵したところ沈殿が発生し、貯蔵安定性に劣っていた。また、該水性樹脂分散体をガラス板に塗布して得られた塗膜の透明性(ヘイズ値)を上記した方法で測定したところ、ヘイズ値は3.2であり、塗膜に曇りを生じており、透明性に欠けていた。さらに、該水性樹脂分散体をアルミ板に塗布して得られた塗膜の耐候性を上記した方法で測定したところ、初期の60度光沢は90.8であり、500時間後の60度光沢は52.2まで低下していてその光沢保持率は57.5%であった。また、500時間後の塗膜状態を観察すると、初期には見られなかった直径約0.1mmほどの斑点が塗膜全体に発生していた。
【0051】
《比較例3》[水性樹脂分散体の製造]
(1) 実施例3において、シリコーン系高分子乳化剤(B1)の代わりに、参考例5で調製した高分子乳化剤(C1)(分子中にシリコーンおよびピペリジン骨格含有単量体単位を非含有)を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行って水性樹脂分散体を製造した。重合中にフラスコ壁に凝集物がわずかに付着した他は、分離やブロッキング等が起こらず、得られた水性樹脂分散体は安定であった。
(2) 上記(1)で得られた水性樹脂分散体を200メッシュのネットで濾過した結果、グリッド量は100ppm以下であった。また、該水性樹脂分散体を室温で1週間貯蔵した後も凝集や分離が生じておらず、貯蔵安定性に優れていた。該水性樹脂分散体中の分散樹脂粒子の平均粒径を上記した方法で測定したところ、0.19μmであり、透明性に優れていた。また、該水性樹脂分散体をガラス板に塗布して得られた塗膜の透明性(ヘイズ値)を上記した方法で測定したところ、ヘイズ値は0.7であり、透明性に優れていた。さらに、該水性樹脂分散体をアルミ板に塗布して得られた塗膜の耐候性を上記した方法で測定したところ、初期の60度光沢は111.2であったが、500時間後の60度光沢は70.5まで低下し、光沢保持率は63.4であった。
【0052】
上記した実施例1〜4および比較例1〜3の結果をまとめると、以下の表1に示すとおりである。
【0053】
【表1】
Figure 0003624236
【0054】
上記の表1における実施例1〜4の結果から、シリコーン系高分子乳化剤の存在下にラジカル重合性単量体を乳化重合してなる水性樹脂分散体であって且つシリコーン系高分子乳化剤および/または樹脂中にピペリジン骨格含有単量体単位を、シリコーン系高分子乳化剤および樹脂の合計重量に基づいて、0.5〜25重量%の範囲内の量で有する実施例1〜4の水性樹脂分散体は、分散粒子の凝集や分離が生じず、貯蔵安定性に優れており、しかも該水性樹脂分散体から得られる被膜は透明性、耐水性、耐候性に優れていて、長期耐候性試験後も高い光沢保持率を有し、且つ斑点などの発生がなく、良好な特性を保持し得ることがわかる。
【0055】
一方、比較例1の結果から、シリコーン系高分子乳化剤の分子中および分散樹脂の分子中のいずれにもピペリジン骨格含有単量体単位を有しておらず、また紫外線吸収剤および光劣化防止剤のいずれをも含有してない比較例1の水性樹脂分散体は、貯蔵安定性、分散性、得られる塗膜の透明性などの点では良好であるが、長期耐候性が低く、長期耐候性試験における500時間後に塗膜の光沢保持率が低いことがわかる。
【0056】
さらに、比較例2の結果から、ピペリジン骨格含有単量体単位をシリコーン系高分子乳化剤および/または樹脂の分子中に有していない水性樹脂分散体中に紫外線吸収剤および光劣化防止剤を添加してなる比較例2の水性樹脂分散体は、分散体中の樹脂粒子の粒径が揃っておらず、粒子の凝集や分離を生じ易くて分散安定性および貯蔵安定性に劣っており、しかも該水性樹脂分散体から形成された塗膜は長期耐候性に劣り、長期耐候性試験における500時間後に塗膜の光沢保持率が低く、且つ塗膜に斑点を生じ外観が不良になることがわかる。
【0057】
そして、比較例3の結果から、シリコーン部分を分子中に持たない高分子乳化剤の存在下にピペリジン骨格含有単量体を他のラジカル重合性単量体と共に用いて乳化重合しても、それにより得られるピペリジン骨格含有単量体単位を樹脂分子中に有する比較例3の水性樹脂分散体は、貯蔵安定性、分散性、得られる塗膜の透明性などの点では良好であるものの、長期耐候性が低く、長期耐候性試験における500時間後に塗膜の光沢保持率が低いことがわかる。
【0058】
【発明の効果】
本発明の水性樹脂分散体は、分散安定性、貯蔵安定性、塗膜形成性、取り扱い性などの点に優れ、しかも本発明の水性樹脂分散体および塗料用組成物から形成される塗膜や被膜は、長期耐候性、耐水性、透明性、光沢性、外観に優れている。特に、本発明の水性樹脂分散体および塗料用組成物から形成される塗膜および被膜は長期間耐水性に極めて優れており、苛酷な気象条件下に長期間曝されても、光沢、透明性が失われず、斑点などが生じず、良好な外観および物性を保持している。

Claims (3)

  1. シリコーン系高分子乳化剤の存在下にラジカル重合性単量体を乳化重合してなる水性樹脂分散体であって、シリコーン系高分子乳化剤および/または樹脂の分子中に、ピペリジン骨格を有する単量体に由来する構造単位を、シリコーン系高分子乳化剤および樹脂の合計重量に基づいて、0.5〜25重量%の割合で有することを特徴とする水性樹脂分散体。
  2. シリコーン系高分子乳化剤が、シリコーン分子の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマーおよびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸と共に、ピペリジン骨格を持たない他のラジカル重合性単量体および/またはピペリジン骨格を有するラジカル重合性単量体を共重合してなる共重合体であって且つ該共重合体中のカルボキシル基の一部または全部を塩基で中和してなる共重合体である請求項1に記載の水性樹脂分散体。
  3. 請求項1または2に記載の水性樹脂分散体よりなる塗料用組成物。
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