JP4558733B2 - 二輪自動車用タイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、二輪自動車用タイヤ、特に高速耐久性および操縦安定性に優れる二輪自動車用タイヤに関するものである。
近年、高速道路網の整備および二輪自動車の高性能化が進むなか、二輪自動車用に供するタイヤについても、その高速耐久性を向上することが求められている。この高速耐久性の向上を目指した技術として、特許文献1〜3には、カーカスのクラウン部をその周方向に沿ってコードを螺旋状に巻回したベルトによって強化することが提案されている。この螺旋巻きコードのベルトによって、高速転動時のクラウン部中央付近のせり出しを抑制できるため、高速耐久性を向上することが可能である。
しかし、螺旋巻きコードによるベルト補強では、ショルダー部の剛性を十分に高くすることが難しいために、特にコーナリング時の剛性およびグリップ力が不足する結果、操縦安定性が阻害される。
このショルダー部の剛性不足の問題に対して、特許文献4では、図1に示すように、1対のビードコア1間に跨って延びるカーカス2のクラウン部の半径方向外側に、その周方向に沿ってコードを螺旋状に巻回して成る周方向ベルト層3を設けたタイヤにおいて、この周方向ベルト層3の外周側に、タイヤの赤道面Oに対して傾斜して延びるコードの複数本を互いに平行に配列したコード層を、タイヤの赤道面Oを境とする両側に分割配置して成る傾斜ベルト層4aおよび4bを配置して、周方向ベルト層3のショルダー部の剛性不足を補うことが提案されている。

特開平9−118109号公報 特開平10−81111号公報 特開平6−40210号公報 特開2001−206009号公報
しかしながら、上記傾斜ベルト層を追加すると、中央域に対してショルダー部側の曲げ剛性が高くなり過ぎることから、例えば大キャンバー角を付与した場合などのグリップ抜け時の滑り挙動が唐突になることが新たに問題となる。
そこで、本発明は、螺旋巻きコードによるベルトを配置したタイヤにおいて、特に旋回時の諸性能を向上することによって、高速耐久性と運動性能とを両立した二輪自動車用タイヤを提供しようとするものである。
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)1対のビードコア間に跨って延びるカーカスを骨格として、このカーカスのクラウン部の半径方向外側に、カーカスの周方向に沿ってコードを螺旋状に巻回して成る少なくとも1層の周方向ベルト層と、タイヤの赤道面に対して傾斜して延びるコードの複数本を互いに平行に配列したコード層をタイヤの赤道面を境とする両側に分割配置して成る少なくとも1層の傾斜ベルト層とを有する二輪自動車用タイヤであって、
該周方向ベルト層を、タイヤの赤道面を中心としたトレッド全幅の1/2に相当する中央域およびその両側域に区画したとき、周方向ベルト層の幅方向におけるコードの打ち込み密度を中央域に対して両側域で80%以下に低減したことを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
(2)上記(1)において、傾斜ベルト層を構成するコードのタイヤの赤道面に対する傾斜角度が20〜80°であることを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
(3)上記(1)又は(2)において、周方向ベルト層および傾斜ベルト層を構成するコードが、初期引張り抵抗度:50cN/本以上のものであることを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかにおいて、周方向ベルト層を構成するコードは、スチール、芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ガラス繊維、レーヨンまたは脂肪族ポリアミドから成ることを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
(5)上記(1)ないし(4)のいずれかにおいて、傾斜ベルト層を構成するコードは、芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ガラス繊維、レーヨンまたは脂肪族ポリアミドから成ることを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
(6)上記(1)ないし(5)のいずれかにおいて、傾斜ベルト層はタイヤの赤道面を境とする分割間隔が1〜50mmであり、総幅がトレッド全幅の70〜150%であることを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかにおいて、トレッドゴムのモジュラスを、タイヤの赤道面を中心としたトレッド全幅の1/2に相当する中央域とその両側域との間で変化させたことを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
本発明によれば、螺旋巻きコードによる周方向ベルト層に分割型の傾斜ベルト層を組み合わせて配置したタイヤにおいて、周方向ベルト層におけるコードの打ち込み密度を中央部に比して側域で小さくすることによって、特に旋回時の諸性能をも向上することができる。従って、高速耐久性および運動性能を両立した二輪自動車用タイヤの提供が可能となる。
従来タイヤのベルト構造を示す図である。 本発明に従うベルト構造を示す図である。 本発明に従う別のベルト構造を示す図である。
次に、本発明の二輪自動車用タイヤについて、図2を参照して詳しく説明する。
この図2に示すタイヤは、1対のビードコア1間に跨って延びるカーカス2のクラウン部の半径方向外側に、周方向ベルト層3と傾斜ベルト層4aおよび4bとの積層になるベルトを配置して成る。周方向ベルト層3は、カーカス2の周方向に沿ってコードを螺旋状に巻回して成り、この周方向ベルト層3の外周側に配置した傾斜ベルト層4aおよび4bは、タイヤの赤道面Oに対して傾斜して延びるコードの複数本を互いに平行に配列したコード層を、タイヤの赤道面Oを境とする両側に分割して成るものである。
なお、図1の例では、周方向ベルト層3の半径方向外側に傾斜ベルト層4aおよび4bを積層配置したが、このベルト構造は、図3に示すように、周方向ベルト層3の半径方向内側に傾斜ベルト層4aおよび4bを積層配置してもよい。
周方向ベルト層および傾斜ベルト層はいずれも少なくとも1層からなり、特に傾斜ベルト層は断面方向の引張り、圧縮および曲げの各剛性の向上の観点から2〜3層の積層構造とすることもできる。一方、周方向ベルト層は、周方向の引張り、圧縮および曲げの各剛性の向上の観点から、2〜3層の積層構造とする事もできる。
なお、傾斜ベルト層において、これを構成するコードのタイヤの赤道面に対する傾斜角度を20〜80°とすることが好ましい。なぜなら、傾斜角度が20°未満では、周方向ベルト層と同等に近い効果しか得られず、本来の目的である断面方向の強度上昇効果は小さい。一方80°を超えると、カーカスプライと同等近くになり、単なる曲げ剛性の向上にとどまり、傾斜させる事によって得られる、トラス構造的強度上昇ははかれない。
さらに、傾斜ベルト層4aおよび4bは、タイヤの赤道面を境とする分割間隔tが1〜50mmであり、総幅つまり分割したベルト層4aおよび4bの合計幅がトレッド全幅の70〜150%であることが好ましい。
まず、分割間隔tが1mm未満では、非分割ベルト層に近い曲げ剛性となり、曲げ剛性が高くなりすぎ、充分な接地性が保たれない。
一方tが50mmを超えると、曲げ剛性が低くなりすぎて充分な剛性感が保たれず、旋回グリップ等の向上に寄与しない。
次に、傾斜ベルト層の総幅がトレッド全幅の70%未満では、曲げ剛性が低くなりすぎて、充分な剛性が保たれず、旋回グリップ等の向上に寄与しない。
一方総幅がトレッド全幅の150%を超えると、サイド領域を越えて、ビード域に達するために、ベルト層としての基本性能に劣るものとなる。
また、周方向ベルト層および傾斜ベルト層を構成するコードには、初期引張り抵抗度:50cN/本以上のものを用いるとよい。ここで、初期引張り抵抗度とは、コードが疲労する前の初期状態におけるコード1本当りの強度である。この初期引張り抵抗度を50cN/本以上としたのは、一般的に骨格材や補強材として外力に耐える為には、最低50cN/本の強度を有するコードを使用する必要があるからである。
上記の条件を満足する周方向ベルト層を構成するコードとしては、スチール、芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ガラス繊維、レーヨンまたは脂肪族ポリアミドから成る各種コードが適合する。一方、傾斜ベルト層を構成するコードとしては、芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ガラス繊維、レーヨンまたは脂肪族ポリアミドから成る各種コードが適合する。
以上のベルト構造は、コードを螺旋状に巻回して成る周方向ベルト層3を設けることによって高速耐久性並びに高速走行安定性を確保した上で、さらにタイヤの赤道面Oで分割した傾斜ベルト層4aおよび4bを設けることによって、螺旋巻回したコード層の問題である周方向ベルト層3のショルダー部の剛性不足を補うことが可能になる。かようなベルト構造によって、トレッド中央域の剛性を低くして直進での安定性および乗り心地性特に振動吸収性を確保しつつ、コーナーでのコーナーリングフォースに対する剛性を高く保つ事によって、コーナーリング時のグリップ力並びに旋回力を高めることができる。
ここで、上記したように、分割した傾斜ベルト層を追加すると、中央域に対してショルダー部側の曲げ剛性が高くなり過ぎることから、例えば大キャンバー角を付与した場合などのグリップ抜け時の滑り挙動が唐突になることが問題となるが、この問題は、周方向ベルト層の幅方向におけるコードの打ち込み密度に分布を持たせること、すなわちタイヤの赤道面からショルダー部側に向かって減少する、コードの打ち込み密度分布を持たせることにより解決した。具体的には、図2に示すように、周方向ベルト層3を、タイヤの赤道面Oを中心としたトレッド全幅の1/2に相当する中央域Cおよびその両側の側域Sに区画したとき、側域Sにおけるコードの打ち込み密度を中央域Cでのそれの80%以下に低減することが肝要である。
かようなコードの打ち込み密度分布によって、傾斜ベルト層による補強効果を維持しつつショルダー部の曲げ剛性を下げて接地性を高めることができ、上記の唐突な滑り挙動を抑制するのに有効である。すなわち、側域Sにおけるコードの打ち込み密度が中央域Cでのそれの80%以下まで低減されていないと、側域Sにおける曲げ剛性が高くなり、コーナーリング時に必要な接地面積が充分に確保できず、充分な旋回力を得られない。又、中央域打込み密度を下げると、トラクションに対する抗力が充分に保持できない。より好ましくは、側域Sにおけるコードの打ち込み密度を中央域Cのそれの70〜40%とする。
なお、中央域Cおよび側域Sにおけるコードの打ち込み密度は、各域での単位長さ当りのコードの打ち込み数を平均したものを意味し、側域Sにおける該平均値が中央域Cでのそれの80%以下であればよい。具体的には、中央域Cにおけるコードの打ち込み密度をアラミド繊維コード(1000d/2)の場合25〜30本/25mm、およびスチールコード(1×5×0.21)の場合10〜22本/25mm、そして側域Sにおけるコードの打ち込み密度をアラミド繊維コード(1000d/2)の場合5〜24本/25mm、およびスチールコード(1×5×0.21)の場合3〜17本/25mmとする。
また、コードの打ち込み密度は、中央域Cおよび側域Sのそれぞれで一定にして両域間で差を設けるか、あるいはタイヤの赤道面Oからショルダー部側に向かって漸減させてもよい。この漸減させる場合、コードの打ち込み密度を変化させる領域をタイヤの赤道面Oを中心としたトレッド全幅20〜70%とすることが好ましい。なぜなら、この漸減領域がトレッド全幅の20%未満ではトレッド中央部の剛性が落ち過ぎて安定性が損なわれ、一方70%を超えると大キャンバー角での滑り挙動の解消が難しくなる。
上記構造に加えて、トレッドゴムのモジュラスを上記した中央域Cとその両側域Sとの領域に区別して変化させることにより、さらに二輪自動車用タイヤに求められる直進領域と旋回領域との要求性能を高次元にバランスさせることが可能である。
例えば、高速耐久性と、いわゆるストップ・アンド・ゴーを繰り返す激しい走行条件に対する耐久性と、コーナーリングでのグリップ力とをともに成立させる場合は、中央域Cにおけるトレッドゴムのモジュラスを両側域Sに比較して大きくするとよい。具体的には、中央域Cのトレッドゴムの300%Mod.を両側域Sのトレッドゴムに対し、20%以上高くする。
一方、直進での乗り心地性および高速安定性(シミーの抑制を含む)と、コーナリングでのグリップ力を両立させる場合は、中央域Cにおけるトレッドゴムのモジュラスを両側域Sに比較して小さくするとよい。具体的には、中央域Cのトレッドゴムの300%Mod.を両側域Sのトレッドゴムに対し、20%以上低くする。
図1〜3に示したベルト構造を、表1および2に示す仕様の下に有する、サイズ:120/70ZR17(フロントタイヤ)および190/50ZR17(リアタイヤ)の二輪自動車用ラジアルタイヤを試作した。なお、表1に示す以外の基本仕様は、下記の通りである。

・周方向ベルト層コード:アラミド繊維コード 1670dtex/2
・傾斜ベルト層コード:アラミド繊維コード 1670dtex/2
・傾斜ベルト層コード傾斜角度:45°
かくして得られたタイヤについて、フロントタイヤはMT3.50×17のリムに組み込み250kPaの内圧に調整し、リアタイヤはMT6.00×17のリムに組み込み290kPaの内圧に調整してから、排気量1000ccの二輪自動車に装着し、以下の各試験に供した。その試験結果を、表1(フロントタイヤ)および表2(リアタイヤ)に併記する。なお、表中の各試験結果を示す数値は、いずれの場合も、比較例1のタイヤの結果を100としたときの指数であり、数値が大きいほど優れていることを表わしている。
[高速安定性]
250km/h以上の高速直進走行中に、ハンドル端に、ハンドル軸回りに入力を入れた時の振れの発散・収れん性を官能評価したもの。
[耐シミー性]
100km/hで手放し惰行した時のハンドル回りの振れの発生有無と大きさ及び、ハンドル端にハンドル軸回りに入力を入れた時の振れの収れん性を官能評価したもの。
[ハンドリング性]
30〜200km/hの速度域でスラロームやレーンチェンジ、種々の曲率半径のコーナーを走り抜けた場合の操作の軽快性、ロール方向のリニアー性、旋回時のキープのし易さなどを官能評価したもの。
[コーナーグリップ性]
50〜280km/h速度域で、種々Rのコーナーを走り抜けた場合の、フロントタイヤのコーナートレース性とグリップ維持性及び、リアタイヤのコーナートレース性とグリップ維持性。特にリアタイヤには、コーナー出口をアクセルを開けていった時のグリップ維持性を官能評価したもの。
Figure 0004558733
Figure 0004558733

Claims (7)

  1. 1対のビードコア間に跨って延びるカーカスを骨格として、このカーカスのクラウン部の半径方向外側に、カーカスの周方向に沿ってコードを螺旋状に巻回して成る少なくとも1層の周方向ベルト層と、タイヤの赤道面に対して傾斜して延びるコードの複数本を互いに平行に配列したコード層をタイヤの赤道面を境とする両側に分割配置して成る少なくとも1層の傾斜ベルト層とを有する二輪自動車用タイヤであって、
    該周方向ベルト層を、タイヤの赤道面を中心としたトレッド全幅の1/2に相当する中央域およびその両側域に区画したとき、周方向ベルト層の幅方向におけるコードの打ち込み密度を中央域に対して両側域で80%以下に低減したことを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
  2. 請求項1において、傾斜ベルト層を構成するコードのタイヤの赤道面に対する傾斜角度が20〜80°であることを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
  3. 請求項1又は2において、周方向ベルト層および傾斜ベルト層を構成するコードが、初期引張り抵抗度:50cN/本以上のものであることを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、周方向ベルト層を構成するコードは、スチール、芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ガラス繊維、レーヨンまたは脂肪族ポリアミドから成ることを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
  5. 請求項1ないし4のいずれかにおいて、傾斜ベルト層を構成するコードは、芳香族ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ガラス繊維、レーヨンまたは脂肪族ポリアミドから成ることを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
  6. 請求項1ないし5のいずれかにおいて、傾斜ベルト層はタイヤの赤道面を境とする分割間隔が1〜50mmであり、総幅がトレッド全幅の70〜150%であることを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
  7. 請求項1ないし6のいずれかにおいて、トレッドゴムのモジュラスを、タイヤの赤道面を中心としたトレッド全幅の1/2に相当する中央域とその両側域との間で変化させたことを特徴とする二輪自動車用タイヤ。
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