JP4530440B2 - ヘミング成形金型 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス成形ワークの端部を折り返して縁取りするヘミング成形金型に関し、特に自動車ボディのセンタピラーに取り合う部分であるドアフレームの端部をヘミング成形するヘミング成形金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
図11(a)、(b)は、ヘミング成形ワーク例として、自動車ドアのセンタピラーに取り合う部分のドアフレーム1の一部を示す側面図とX1−X1線からの横断面図である。このドアフレーム1は、アウタパネル2とインナパネル3からなり、アウタパネル2の全長方向の両端に設けたヘミング部フランジ2a,2bを内側に折り返し、インナパネル3の全長方向両端に設けたヘミング部フランジ3a,3bの上に重ねて加圧接合する。また、ドアフレーム1は車両のボディラインに沿って緩やかに湾曲しており、ヘミング部も曲率Rでもって湾曲成形される。
【0003】
図12は、ドアフレーム1をヘミング成形する金型の従来例を示し、この場合はアウタパネル2とインナパネル3の一方側のヘミング部フランジ2a,3a同士をヘミング成形する左側部分だけが示されている。その概略は、高さ寸法H1,H2を有する上型10と下型20からなり、下型20に対して上型10が上下動する。上型10の図中太い実線10Aで示されている内側下面には、ドライバ11やワークスタンプ15などの各部材がねじ締結などして取り付けられている。ドライバ11は、カム12とこれを担持するカムホルダ13などで構成されている。ワークスタンプ15は、スタンプパンチ16とこれを担持するパンチホルダ17などで構成されている。
【0004】
一方、下型20においては、その内側上面にワークセット位置決め台21が設けられ、上下に重ね合わせたアウタパネル2とインナパネル3が位置決めしてセットされるようになっている。一方側のヘミング部フランジ2a,3aに臨んで対応する位置には端部予備曲げ機構22が配置されている。他方側のヘミング部フランジ2b,3bに臨んで対応する図の右側図外にも同様な端部予備曲げ機構が配置され、一式の成形ワークに左側図示の端部予備曲げ機構22と対で対応するようになっている。
【0005】
端部予備曲げ機構22は、ワーク長さ方向の両端部に臨む位置にそれぞれ揺動アーム23が設けられている。揺動アーム23は下部の支軸ピン24を介して揺動可能に支持され、上部に回転自由なカムローラ25を保持している。また、揺動アーム23はリターンスプリング26によって図示の原位置に復帰する方向へ弾性付勢されている。このような揺動アーム23に、ワーク長さにほぼ対応する断面L形の長尺ブロックであるパンチホルダ27がねじ締結などして結合されている。さらに、このパンチホルダ27にほぼ同等長さを有する断面矩形の長尺ブロックであるヘミングパンチ28が取り付けられている。ヘミングパンチ28の前端面は予備曲げ刃先面28aとしてその長手方向へ曲率Rで湾曲しており、成形ワークであるこの場合ドアフレーム1の形状仕様に対応するものに取り替え可能な部材である。
【0006】
以上の構成により、上型10が降下すると、はじめにドライバ11のカム12が下型20の端部予備曲げ機構22のカムローラ25に接触し始める。カム曲面に倣ったカム駆動によって、揺動アーム23が支軸ピン24を介して図でいう時計廻り方向に回動して前倒しされる。
【0007】
揺動アーム23の前倒し動作によって、図11(b)に示すように、ヘミングパンチ28の前端の予備曲げ刃先面28aがアウタパネル2の垂直に立ち上がっているヘミング部フランジ2aの上端に斜め方向から当接して押圧する。他方側のヘミング部フランジ2bにおいても同様な動作が進行している。それにより、図中仮想線の符号2aで示す所定の傾斜角度まで、一般的には45゜の傾斜角にヘミング部フランジ2aを内側へ折り返して傾倒させる。
【0008】
ヘミング部フランジ2aが45゜に折り返された段階で、端部予備曲げ機構22としての仕事は終了する。すなわち、45゜までヘミング部フランジ2aが折り返されると、カム12に対してカムローラ25の動作が上死点から下死点に向かって移行する。ヘミングパンチ28はリターンスプリング26によって原位置に向かって復帰し始め、45゜に折り返されたヘミング部フランジ2aから離脱して後退する。
【0009】
ヘミングパンチ28のそうした後退に追随するようにして、ほぼ同期的なタイミングで上型10のワークスタンプ15のスタンプパンチ16が45゜の傾倒姿勢となっているヘミング部フランジ2aを上から押し、それを完全に折り曲げる。
【0010】
このように、アウタパネル2のヘミング部フランジ2a,2bをインナパネル3のヘミング部フランジ3a,3bに上から重ね合わせて加圧接合することで、中空断面のドアフレーム1がヘミング成形される。ヘミング成形して得られるドアフレーム1としては外観の見栄えが良好である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記図12で示された従来のヘミング成形金型にあっては、解決すべき次の数々の問題点がある。
【0012】
1つは、上型10と下型20の各高さ寸法H1,H2による金型全高の寸法Hが大きく、金型の体積(嵩)や重量が総体に大型化して、製作コストが非常に高騰する点である。
【0013】
すなわち、上下型における各部材が互いに相関性をもって加工されておらず総体に大型で複雑な形状となっていることに原因がある。たとえば、特に上型10側のドライバ11におけるカム12やカムホルダ13、そして下型20側のヘミング成形機構22における揺動アーム23といった部材は、鋼板などの材料から複雑な形状に溶断などして削り出している。そのため、上型10についていえば、相互に脈絡をもたない各部材を取り付けるために、内側下面10Aの形状が起伏の大きい凹凸部が連続した面にならざるを得ない。それだけ上型10の高さ寸法H1が増大し、内側下面10Aを形成するのに複雑なエンドミル加工などが含まれ、製作工数を増大させている。
【0014】
また1つは、アウタパネル2のヘミング部フランジ2aを予備曲げする好適な折り返し角度を決定するために、設計とこれに基づいて実際に加工されたドライバ側カム12とカムローラ25との間で試行錯誤を繰り返している。それがこの種ヘミング成形金型の製作上の大きなネックとなっていることである。
【0015】
さらに1つは、上記カム12およびカムローラ25間の精度上の問題に関連して、ヘミング成形後のワークの寸法精度にばらつきが生じ易いことである。
【0016】
本発明の目的は、上下型に取り付けられる各部材の形状を相互に関連させて簡素化とユニット化を図ることで、型全体の小型化とコスト低減を実現したヘミング成形金型を提供することにある。
【0018】
本発明による請求項1に記載のヘミング成形金型は、アウタパネル(2)とインナパネル(3)のそれらのヘミング部フランジ(2a,3a)とヘミング部フランジ(2b、3b)同士をそれぞれ抱き合わせ、前記アウタパネル(2)の端部を前記インナパネル(3)の端部の外側に垂直方向に立ち上げた状態にある中空断面の成形ワーク(1)をワークセット位置決め台(201)の上にセットする下型(200)と,
前記アウタパネル(2)の上にインナパネル(3)を重ね合わせてなる成形ワーク(1)を位置決め固定するワークセット位置決め台(201)を挟んで前記下型(200)に支軸ピン(205,212)を介して揺動可能に支持されるパンチホルダ(206,213)を有し、該パンチホルダ(206,213)に前記アウタパネル(2)の垂直方向に立ち上げた両側端部のヘミング部フランジ(2a,2b)を所定角度に折り返すためのヘミングパンチ(207,214)を担持すると共に回転可能に軸支されたカムローラ(209,216)を備えた一対の端部予備曲げ機構(202,203)と,
前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)のそれぞに設けられ、該一対の端部予備曲げ機構(202,203)のそれぞれが前記支軸ピン(205,212)を軸に揺動したときに前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)のそれぞれの全体をそれぞれ原位置に復帰させる方向へ付勢する復帰手段(208,215)と,
前記下型(200)に臨む内側下面(101)が平坦に形成された上型(100)と,
前記上型(100)と一体に上下動作して前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)のそれぞれに設けられるそれぞれのカムローラ(209,216)が表面を転動することによって該カムローラ(209,216)と係脱するカム部材(113,116)を備え、前記それぞれのカムローラ(209,216)への当接によって前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)のそれぞれの前記パンチホルダ(206,213)を介してヘミングパンチ(207,214)のそれぞれを前記成形ワーク(1)のヘミング部フランジ(2a,2b)に押し当て、前記それぞれのカムローラ(209,216)が前記カム部材(113,116)の表面を転動することにより前記成形ワーク(1)のヘミング部フランジ(2a,2b)を押し曲げ、該成形ワーク(1)のヘミング部フランジ(2a,2b)が所定角度に折り返された段階で前記復帰手段(208,215)によって前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)を原位置に復帰させる後退動作を可能にし、前記上型(100)の内側下面(101)に基端が固定支持されて垂下されるドライバ(110,111)と,
前記上型(100)の内側下面(101)に基端が固定支持されて垂下され、先端の下端部までの長さが前記ドライバ(110,111)と同一となるように寸法的に揃えて設けられるものであって、前記上型(100)の下降動作に伴って前記上型(100)と一体に上下動作して前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)のそれぞれに設けられるカムローラ(209,216)のそれぞれを前記ドライバ(110,111)によって復帰手段(208,215)に抗して押圧して前記成形ワーク(1)のヘミング部フランジ(2a,2b)を前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)によって所定角度折り曲げた後、前記上型(100)のさらなる下降動作によって前記ドライバ(110,111)のカム部材(113,116)によってカムローラ(209,216)へのそれぞれの押圧が解除され前記成形ワーク(1)のヘミング部フランジ(2a,2b)を所定角度折り曲げて前記ヘミングパンチ(207,214)が定位置に復帰した後に、垂直方向の上方から降下して前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)によって所定角度折り曲げられた前記成形ワーク(1)のヘミング部フランジ(2a,2b)を加圧するスタンプパンチ(108,109)と,
を備えて構成されている。
【0019】
以上の構成により、上型においてその内側下面が平坦に形成され、そこから垂下するドライバやスタンプパンチの先端までの距離寸法をほぼ揃うように設定しているから、特に部材取付後の上型の高さ寸法が低く抑えられ、下型の高さ寸法を含む金型全高が小さく小型化する。
【0020】
請求項2に記載のヘミング成形金型は、請求項1に記載のヘミング成形金型において,前記カム(113,116)を,垂直線または水平線に対して、45゜の傾斜角θ1を有する上死点までの上り勾配による第1のカム面C1設け、水平線に対して、30゜の傾斜角θ2を有する下死点までの下り勾配による第2のカム面C2を設け、前記第1のカム面C1と前記第2のカム面C2のなす対角度θ3を、75゜に形成し、前記第1のカム面C1,前記第2のカム面C2間には半径rによる真円部C3が設けられ、この中心点がカム駆動の上死点と下死点の切り替わりポイントとしたことを特徴としている。
【0021】
このように構成することにより、カム116の断面形状は、下型(200)上の端部予備曲げ機構203におけるカムローラ216との共働で好適なカム機能が得られるようになっている。
【0022】
また、請求項3に記載のヘミング成形金型は、請求項1又は2に記載のヘミング成形金型において,前記ドライバ(110,111)を,基端を前記上型(100)の内側下面(101)に固定されたカムホルダ(112,115)を有し、該カムホルダ(112,115)に前記カム部材(113,116)が着脱可能に取り付けられ、前記カムホルダ(112,115)と前記カム部材(113,116)との取付面に隙間調整板117,117を介在させることにより、カム部材(113,116)と前記端部予備曲げ機構(202,203)のカムローラ(209,216)との当たりを微調整可能としたものであることを特徴としている
【0023】
以上の構成から、ドライバ(110,111)を構成するカムホルダ(112,115)にカム部材(113,116)を取り付ける構造としたことでユニット化が可能となり、またカム部材(113,116)のカム面などに多少の加工精度誤差がある場合でも、種々の板厚による隙間調整板を介在させることで迅速かつ的確に対応できる。
【0025】
それにより、設計工数や製作工数の大幅な低減が可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるヘミング成形金型および成形方法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、成形ワーク例として従来例と同じく自動車ドアフレーム1を示し、図11(a),(b)および図12で示された各部、各部材と同一符号を付している。
【0028】
図1および図2は、上型100と下型200からなるヘミング成形金型において、中心線C−Cから左半分の上型上死点位置と上型下死点位置を示すそれぞれ部分断面による組立正面図である。
【0029】
図12の従来金型と対比して明らかなように、本実施の形態の上型100は、その下型200に臨む内側下面101の形状が非常に簡素な平坦面となっている。
【0030】
その平坦な内側下面101にワークスタンプガイド102が基端を固定支持されて垂下している。ワークスタンプガイド102の先端である図の下端面103の断面形状は、中空断面のドアフレーム1を構成するこの場合上側のインナパネル3の横断面形状に倣って形成され、それがほぼパネル全長にわたって延びている。
【0031】
ワークスタンプガイド102の両側には、側面に接合して背合わせ一対のスタンプ104,105が設けられている。これらスタンプ104,105は、ホルダ106,107とこれにねじ締結などして保持されたスタンプパンチ108,109とからなっている。この一対のスタンプパンチ108、109の各下端はパンチ刃108a,109aとなっており、図7(a),(b)および図8に明示するアウタパネル2とインナパネル3の全長にわたってそれらの両端に延びるヘミングフランジ2a,3aと2b,3bに上方から臨んでいる。
【0032】
図3(a),(b)は、代表的に一方側のスタンプ105を示している。この場合、ホルダ107に保持されたスタンプパンチ109の下端のパンチ刃109aは、アウタパネル2とインナパネル3の他方側のフランジ2b,3b同士を上から圧接できるだけの刃先幅寸法を有している。パンチ刃109a(108a)は上記ヘミング部曲率Rに対応する曲率で湾曲形成されている。
【0033】
また、ワークスタンプガイド102を挟んでその両側に、一式の成形ワークに対して両側から対応するドライバ110,111が向かい合って配置されている。右側のドライバ111は中心線C−Cから半分だけが示され、その半分部分で左側のドライバ110と機能的に対をなし、一組のドアフレーム1に対応する。
【0034】
図4(a),(b)に単品で示すように、ドライバ111は、上型100の平坦な内側下面101に基端を固定支持されて垂下するカムホルダ115を有し、カムホルダ115の一面側にカム116がねじ締結などして結合されている。カム116と同形のものがカムホルダ115の中心線C−Cから右側図外にも設けられている。
【0035】
また、カム116の背面とホルダ115との間に隙間調整板(シム)117を介在させ、たとえばホルダ115の中心線C−Cを基準にしてカム116の出入り寸法L(図4参照)を微調整できるようにしている。隙間調整板117には板厚の異なる種類のものが準備されている。
【0036】
本実施の形態によるカム116の断面形状は、後述する下型200上の端部予備曲げ機構203におけるカムローラ216との共働で好適なカム機能が得られるようになっている。すなわち、カム116は、垂直線または水平線に対してたとえばθ1=45゜の傾斜角を有する上死点までの上り勾配による第1のカム面C1が設けられ、また水平線に対してたとえばθ2=30゜の傾斜角を有する下死点までの下り勾配による第2のカム面C2が設けられている。それら第1、第2のカム面C1とカム面C2のなす対角度はたとえばθ3=75゜に形成されている。また、両カム面C1,C2間には半径rによる真円部C3が設けられ、この中心点がカム駆動の上死点と下死点の切り替わりポイントとなっている。
【0037】
再び図1において、図の左側のもう一方のドライバ110においても、ホルダ112の一面側にカム113がネジ締結などして結合されている。この場合、ホルダ112の一面片側だけにカム113を有するから、ホルダ112の反対側背面にはホルダ剛性を高めるための補強背板114がボルト結合などして取り付けられていて、それを受ける下型200に剛接されている受け台222に当接させ、カム113がカムローラ209と接触して押されることにより、ホルダ112が撓もうとするのを防止している。
【0038】
したがって、隙間調整板117によってドライバ110,111側の各カム113,116の出入り寸法Lを微調整できるようにすることで、それだけ各カム113,116の仕上げ精度ひいては金型全体の仕上げ精度に対する負担を軽減できる。
【0039】
また、ドライバ110,111は以下の点に形状的な留意がなされている。ホルダ112,115は上型100の平坦な内側下面101を基端にして垂下する長さの統一化が図られている。また、上型100の内側下面101からカム113,116おける第1のカム面C1と第2のカム面C2との切り替わりポイント、つまりカム駆動が上死点から下死点に移行するポイントまでの距離は、上記スタンプパンチ108,109の各下端のパンチ刃108a,109aまでの距離とほぼ同一に設定されている。正確には、カム113,116の切り替わりポイントまでの距離寸法がスタンプパンチ刃108a,109aまでの距離寸法よりも若干短く、垂直方向でいう上位に位置している。それだけの寸法差による時間的遅延をもって、順にワークのドアフレーム1に対応するようになっている。
【0040】
したがって、上型100の内側下面101からのスタンプパンチ108,109とカム113,116の取付長さがほぼ揃えられ、それら各部材を取り付けた図12に示す上型100の高さ寸法H1を最小限に抑えることができる。
【0041】
一方、下型200にあっては、上型100に設けた上記ワークスタンプガイド102の直下にワークセット位置決め台201が配置されている。このワークセット位置決め台201の上面はアウタパネル2の横断面形状に倣って形成され、それがほぼパネル長さ全長にわたって延びている。
【0042】
このワークセット位置決め台201を挟む両側に、一式の成形ワークに両側から対応する二組の端部予備曲げ機構202,203が対向して配置されている。図の左側の端部予備曲げ機構202は上記ドライバ110のカム113と共働して、アウタパネル2の一方側のヘミング部フランジ2aの折り返し成形に対応する。また、右側の端部予備曲げ機構203は上記ドライバ111のカム116と共働して、アウタパネル2の他方側のヘミング部フランジ2bの折り返し成形に対応するようになっている。
【0043】
これら端部予備曲げ機構202,203は、それぞれブラケット204,211に支軸ピン205,212を介して断面L形のパンチホルダ206,213が揺動可能に支持されている。各パンチホルダ206,213には向かい合う形でヘミングパンチ207,214がネジ締結などして結合されている。また、各パンチホルダ206,213はリターンスプリング(復帰手段)208,215によって図1に示す原位置に復帰する方向へ付勢されている。右側のリターンスプリング215の場合、その他端が中心線C−Cから右側図外の別の端部予備曲げ機構に係止され、端部予備曲げ機構203とともに原位置に復帰する方向へ付勢している。
【0044】
図5は、端部予備曲げ機構203を構成するパンチホルダ213の全長全形を示し、図6(a),(b)はそのパンチホルダ213に担持されたヘミングパンチ214の全長全形を示す平面図とA−A線からの部分側面断面図である。パンチホルダ213の背部の両端部にカムローラ216が軸受217を介して回転自由な状態で保持されている。また、ヘミングパンチ214の前端面はパンチ刃214aとして曲率Rによる凸形に湾曲形成されている。
【0045】
以上から、端部予備曲げ機構202,203は非常にコンパクトな構造となっており、図12の従来構造で示された揺動アーム23といった複雑な部材は削減され、下型200の高さ寸法H2を低く抑えている。カムローラ209,216としても特殊部品を使用することなく、市販品で十分に間に合う。ヘミングパンチ207,214を除くホルダ206,213などの部材も標準化が可能な部材である。
【0046】
なお、本実施の形態のワーク例として示したドアフレーム1の場合、自動車両サイドに備わるから、左右対称勝手の異なるアウタパネル2とインナパネル3による二組が隣り合わせで同時にヘミング成形される。
【0047】
次に、以上の構成による本実施の形態のヘミング成形金型を用いたヘミング成形方法について説明する。
【0048】
まず、図1、図7(a),(b)、図8および図9の各図に示すように、ワークのアウタパネル2とインナパネル3がそれらのヘミング部フランジ2a,3aと2b、3b同士をそれぞれ抱き合わせて、下型200のワークセット位置決め台201上にセットされる。
【0049】
予めドライバ110,111側の各カム113,116は、それらのホルダ112,115との間に隙間調整板117が介装されて出入り寸法Lが微調整される(図4参照)。それにより、端部予備曲げ機構202,203のカムローラ209、216との係脱のタイミングが好適に設定され、ヘミングパンチ207,214によるワークのアウタパネル2のヘミング部フランジ2a,2bに対する当たりの前進タイミングと後退タイミングが調整される。
【0050】
ワークセット後およびカム駆動の調整後、図1の上死点位置から上型100が降下する。ドライバ110,111の各カム113,116が降下し、はじめにそれらの第1のカム面C1が端部予備曲げ機構202,203のカムローラ209,216に当接する。
【0051】
図4(b)で示されたように、第1のカム面C1にカムローラ209,216が当接開始してリターンスプリング208,215に抗して押し出す。この動作に連動してヘミングパンチ207,214が前側に傾動し、図7(b)および図8に示すように、アウタパネル2のヘミング部フランジ2a,2bの各上端に当接する。これら両端のヘミング部フランジ2a,2bはたとえば45゜だけ内側に折り曲げられて傾倒する。
【0052】
ヘミング部フランジ2a,2bがたとえば45゜だけ内側に折り曲げられて傾倒した段階で、カムローラ209,216は降下中のカム113,116に第3のカム面C3における頂点すなわち上死点を過ぎる。ここからカムローラ209,216がカム113,116に第2のカム面C2に入った瞬間、カムローラ209,216は復帰手段であるリターンスプリング208,215によって引っ張られ、原位置の方向に戻り始める。すなわち、端部予備曲げ機構202,203が原位置の方向へ後退する。
【0053】
それら端部予備曲げ機構202,203上のヘミングパンチ207,214の後退にほぼ同期的なタイミングで追随するように、上型100と一体にスタンプ104,105が降下してくる。ワークスタンプガイド102は降下してインナパネル3を上方から押さえ、同時に両側のスタンプパンチ108,109が45゜傾倒しているアウタパネル2の両側のヘミング部フランジ2a,2bをさらに上方から加圧する。図10に示すように、アウタパネル2の両側のヘミング部フランジ2a,2bをインナパネル3の両側のヘミング部フランジ3a,3bに上から重ね合わせ、加圧接合して縁取り加工がつまりヘミング成形が終了する。
【0054】
以上から明らかなように、端部予備曲げ機構202,203上のヘミングパンチ207,214によるワーク予備曲げ後の後退タイミングと、それに続くスタンプパンチ108,109による加圧接合とがわずかな時間的遅延によるタイミングで行われる。それを可能にするヘミングパンチ207,214の後退動作が、リターンスプリング208,215の弾性付勢力でもって行われる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によるヘミング成形金型は、上型においてその内側下面が平坦に形成され、そこから垂下するドライバやスタンプパンチの先端までの距離寸法をほぼ揃うように設定しており、また端部予備曲げ機構におけるカムローラなどの各部材も市販製品やユニット化が可能であるから、特に部材取付後の上型の高さ寸法が低く抑えられ、下型の高さ寸法を含む金型全高がコンパクトになり、設計工数や製作工数の大幅な低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるヘミング成形金型の実施の形態を示す上型上死点位置における組立断面図である。
【図2】本実施の形態のヘミング成形金型における上型下死点位置を示す組立断面図である。
【図3】同図(a),(b)は、実施の形態のスタンプパンチを示す正面図と側面図である。
【図4】同図(a),(b)は、実施の形態のカムドライバを示す正面図と側面図である。
【図5】ヘミングパンチを担持したパンチホルダを示す正面図である。
【図6】同図(a),(b)は、ヘミングパンチを担持したパンチホルダを含む端部予備曲げ機構を示す平面図とA−A線からの側面断面図である。
【図7】同図(a),(b)は、成形ワークのドアフレームの一部を示す正面図と両端のヘミング部フランジ同士をヘミング成形する態様を模式的に示す側面断面図である。
【図8】端部予備曲げ機構によって成形ワークである自動車ボディのドアフレームをヘミング成形する態様を示す斜視図である。
【図9】端部予備曲げ機構による成形ワークのヘミング成形初期の動作を図中仮想線で経時時に示す部分断面による拡大側面図である。
【図10】端部予備曲げ機構による成形ワークのヘミング成形終了動作を示す部分断面による拡大側面図である。
【図11】同図(a),(b)は、従来例として成形ワークのドアフレームの一部を示す正面図と両端のヘミング部フランジ同士をヘミング成形する態様を模式的に示す側面断面図である。
【図12】従来例のヘミング成形金型における上型下死点位置を示す装置一部の組立断面図である。
【符号の説明】
100 ヘミング成形金型の上型
101 上型の内側下面
102 ワークスタンプガイド
104,105 ホルダ
108,109 スタンプパンチ
110,111 ドライバ
112,115 カムホルダ
113,116 カム部材
114 補強背板
117 隙間調整板
200 ヘミング成形金型の下型
201 ワークセット位置決め台
202,203 端部予備曲げ機構
206,213 パンチホルダ
207,214 ヘミングパンチ
208,215 リターンスプリング
209,216 カムローラ

Claims (3)

  1. アウタパネル(2)とインナパネル(3)のそれらのヘミング部フランジ(2a,3a)とヘミング部フランジ(2b、3b)同士をそれぞれ抱き合わせ、前記アウタパネル(2)の端部を前記インナパネル(3)の端部の外側に垂直方向に立ち上げた状態にある中空断面の成形ワーク(1)をワークセット位置決め台(201)の上にセットする下型(200)と,
    前記アウタパネル(2)の上にインナパネル(3)を重ね合わせてなる成形ワーク(1)を位置決め固定するワークセット位置決め台(201)を挟んで前記下型(200)に支軸ピン(205,212)を介して揺動可能に支持されるパンチホルダ(206,213)を有し、該パンチホルダ(206,213)に前記アウタパネル(2)の垂直方向に立ち上げた両側端部のヘミング部フランジ(2a,2b)を所定角度に折り返すためのヘミングパンチ(207,214)を担持すると共に回転可能に軸支されたカムローラ(209,216)を備えた一対の端部予備曲げ機構(202,203)と,
    前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)のそれぞに設けられ、該一対の端部予備曲げ機構(202,203)のそれぞれが前記支軸ピン(205,212)を軸に揺動したときに前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)のそれぞれの全体をそれぞれ原位置に復帰させる方向へ付勢する復帰手段(208,215)と,
    前記下型(200)に臨む内側下面(101)が平坦に形成された上型(100)と,
    前記上型(100)と一体に上下動作して前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)のそれぞれに設けられるそれぞれのカムローラ(209,216)が表面を転動することによって該カムローラ(209,216)と係脱するカム部材(113,116)を備え、前記それぞれのカムローラ(209,216)への当接によって前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)のそれぞれの前記パンチホルダ(206,213)を介してヘミングパンチ(207,214)のそれぞれを前記成形ワーク(1)のヘミング部フランジ(2a,2b)に押し当て、前記それぞれのカムローラ(209,216)が前記カム部材(113,116)の表面を転動することにより前記成形ワーク(1)のヘミング部フランジ(2a,2b)を押し曲げ、該成形ワーク(1)のヘミング部フランジ(2a,2b)が所定角度に折り返された段階で前記復帰手段(208,215)によって前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)を原位置に復帰させる後退動作を可能にし、前記上型(100)の内側下面(101)に基端が固定支持されて垂下されるドライバ(110,111)と,
    前記上型(100)の内側下面(101)に基端が固定支持されて垂下され、先端の下端部までの長さが前記ドライバ(110,111)と同一となるように寸法的に揃えて設けられるものであって、前記上型(100)の下降動作に伴って前記上型(100)と一体に上下動作して前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)のそれぞれに設けられるカムローラ(209,216)のそれぞれを前記ドライバ(110,111)によって復帰手段(208,215)に抗して押圧して前記成形ワーク(1)のヘミング部フランジ(2a,2b)を前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)によって所定角度折り曲げた後、前記上型(100)のさらなる下降動作によって前記ドライバ(110,111)のカム部材(113,116)によってカムローラ(209,216)へのそれぞれの押圧が解除され前記成形ワーク(1)のヘミング部フランジ(2a,2b)を所定角度折り曲げて前記ヘミングパンチ(207,214)が定位置に復帰した後に、垂直方向の上方から降下して前記一対の端部予備曲げ機構(202,203)によって所定角度折り曲げられた前記成形ワーク(1)のヘミング部フランジ(2a,2b)を加圧するスタンプパンチ(108,109)と,
    を備えたことを特徴とするヘミング成形金型。
  2. 請求項1に記載のヘミング成形金型において,
    前記カム(113,116)は,
    垂直線または水平線に対して、45゜の傾斜角θ1を有する上死点までの上り勾配による第1のカム面C1を設け、
    水平線に対して、30゜の傾斜角θ2を有する下死点までの下り勾配による第2のカム面C2を設け、
    前記第1のカム面C1と前記第2のカム面C2のなす対角度θ3を、75゜に形成し、
    前記第1のカム面C1,前記第2のカム面C2間には半径rによる真円部C3が設けられ、この中心点がカム駆動の上死点と下死点の切り替わりポイントとした
    ことを特徴とするヘミング成形金型。
  3. 請求項1又は2に記載のヘミング成形金型において,
    前記ドライバ(110,111)は,
    基端を前記上型(100)の内側下面(101)に固定されたカムホルダ(112,115)を有し、該カムホルダ(112,115)に前記カム部材(113,116)が着脱可能に取り付けられ、前記カムホルダ(112,115)と前記カム部材(113,116)との取付面に隙間調整板117,117を介在させることにより、カム部材(113,116)と前記端部予備曲げ機構(202,203)のカムローラ(209,216)との当たりを微調整可能としたものである
    ことを特徴とするヘミング成形金型。
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