JP4518359B2 - 製織方法 - Google Patents
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Description
本発明はウォータジェット織機にて密度の高い織物を製造する方法並びに該方法で製造可能な織物に関する。
【0002】
この形式の方法は例えばEP−A−0747267号により公知であり、以下のステップ:
(イ)一方の縁に3本までのレノ糸を有する経糸を供給すること、
(ロ)経糸に緯糸を挿入すること、
(ハ)緯糸を織布を形成するためにレノ糸の方向でおさ打ちすること、
(ニ)緯糸を緊張させるためにレノ糸を一緒に撚ること、
(ホ)緯糸端部を切離すこと、
(へ)緯糸端部をレノ糸と一緒に除去すること、
を有している。
【0003】
ウォータジェット織機にて密度の高い織物が製造されると、製造された織物の縁が織物の他の部分におけるよりも緩くなることが認められる。緩い織物縁によってこのような織物の後続加工は困難を伴う。何故ならば縁は残った織物部分と同じ張力下に保つことができないからである。織物製造者は織物のはためき(slobby selvedges)を問題とする。このはためきは特に織物の繰出し又は巻返しに際して発生する。織物縁のはためきは織物が広幅に製造されるほど顕著である。このはためきに対処するためには通常は最高1.6mまでの幅でしか、高い密度を有する織物は製造されない。しかしながら、エアバッグを製造するためには少なくとも1.7m、特に2mの織物幅が望まれる。何故ならばこの場合にはエアバッグの製造に必要な織物区分を製造するための裁断が少ない切屑で行うことができるからである。
【0004】
多くの場合には高い密度を有する織物はその製造後、例えばシリコンで被覆される。被覆を実施する場合にもはためき縁は不都合に作用する。緩い織物縁によって織物の均一な被覆はほとんど可能ではない。
【0005】
本発明の課題は上記欠点が少なくとも軽減されるように、冒頭に述べた形式の方法を改良することである。特に製織法は、製造された織物が、後続加工に際しての取扱いが容易であるように構成したい。さらに本発明の課題は、取扱いが容易である、密度の高い織物を提供することである。
【0006】
本発明による課題は、ウォータジェット織機にて密度の高い織布を製造する方法であって、以下のステップ:
(イ)一方の縁に3本までのレノ糸を有する経糸を供給すること、
(ロ)経糸に緯糸を挿入すること、
(ハ)緯糸を織布を形成するためにレノ糸の方向でおさ打ちすること、
(ニ)緯糸を緊張させるためにレノ糸を一緒に撚ること、
(ホ)緯糸端部を切離すこと、
(へ)緯糸端部をレノ糸と一緒に除去すること、
を有している形式のものにおいて、
両方の経糸縁から見て経糸のそれぞれ5〜60本の糸がレノ糸を有する経糸縁にレノ糸に続いた保持糸であって、該保持糸が残った経糸を形成する糸の張力よりも2〜20cN/tex高い張力に保たれ、織物を製造したあとで残った経糸の縁と保持糸との間で緯糸を分離溶融で分離しかつ残った経糸の縁における糸と結合し、緯糸の切離された端部を保持糸とレノ糸と一緒に除去することで解決された。すなわち、本発明によれば使用された経糸は、レノ糸、保持糸及び残った経糸から構成されている。したがって経糸は全部で4つの糸グループを有している。これらの糸グループは一方の経糸縁から他方の経糸縁に向かって緯糸挿入方向で以下の配置順序:
(イ)保持糸
(ロ)残った又は本来の経糸
(ハ)保持糸
(ニ)レノ糸
で位置している。
【0007】
この場合、レノ糸、保持糸及び残った経糸は製織過程で異なった機能を引受ける。
【0008】
驚くべきことに前記条件を維持すると、織物縁は残った織物部分と少なくともほぼ同じ特性を有するようになった。本発明によって製造された織物の取扱い性は著しく改善された。経糸縁のはためきは多くの場合にはもはや確認されなくなる。
【0009】
本発明で言うところの密度の高い織物とは、各織機ではこれまでまだ達成されていない糸密度に達する特に高い糸密度を有する織物である。密度の高い織物は、例えば糸番手235dtexの糸をcmあたり26〜30本、糸番手350dtexの糸をcmあたり18から28本もしくは糸番手470dtexの糸をcmあたり17〜25本使用して製造される。ここで述べた糸数は特に帆布組織(plain weave)に当嵌まり、他の織組織のためには適当に調整される。この調整のための通常のファクタはカバーファクタ(Cover Faktor)である。
【0010】
本発明の方法は経糸の全幅に亘って隣り合った糸の間の間隔が保持糸とレノ糸を含めて同じ大きさであると特に良好な結果をもたらす。この限りにおいては2つの異なる糸グループの間の間隔も同じ糸グループの隣り合った糸と同じである。
【0011】
本発明による方法では、保持糸が糸群として巻付けられている個別の部分経糸ビームから、保持糸が経糸の縁に供給されるようになっていると有利である。
【0012】
通常は経糸の両方の縁が10〜40本の保持糸を有する糸グループであると十分である。
【0013】
特に有利であることは、190℃で測った加熱空気収縮が1%〜4%、有利には1%から3%を示す保持糸が選ばれることである。驚くべきことにこのような糸を用いることで、本発明の方法のために必要とされる保持糸のための糸張力は特に良好にかつすべての糸に一様に得られた。
【0014】
本発明の方法は特に、保持糸として、撚られた糸が選択されていると特に効果的である。この場合に特に有利であることは、メートルあたり200〜700の撚りを有する保持糸が選択されていることである。又は、保持糸として2重に撚られた糸が選択されることもできる。2重に撚られた糸は、まずマルチフィラメント糸が撚られ、次いでこのように撚られたマルチフィラメント糸の2本又は複数本が再び撚り合わされた糸を意味する。2度目の撚りでも、撚られたマルチフィラメント糸はメートルあたり200から700の撚り数で互いに撚り合わされることが有利である。このためには、撚り合わされたマルチフィラメント糸の撚り合わせがマルチフィラメントの撚りとは反対方向で行われることが有利である。
【0015】
本発明の方法は、保持糸として緯糸と保持糸との間に20〜70cNの糸−糸−摩擦を有する保持糸が選択されていると特に成功率が高い。
【0016】
糸−糸−摩擦は以下の形式で測定される。
【0017】
測定を行うためにはF-MeterR-1188をとZuerichのFa.Rothschild社のF-Meter-Winder R-1083が使用される。
【0018】
F-Meterの使用指示には章5.5と5.10に、糸の自分自身に対する静的な摩擦の測定原理が記載されている。
【0019】
2本の異なる糸相互間の静的な摩擦の測定のためには測定装置はわずかに変更させられる。図において符号1、2、4、5と6で示されたローラと糸張力測定器7はF-Meter-Winderの構成部分である。ローラ3は付加的に設けられている。ローラ6は調整可能に駆動されかつ測定された糸を10mm/minの速度で巻き解く。
【0020】
糸の案内は図面から明らかである。一方の糸F1(実線)は10cNの重量G1で自由に懸垂負荷させられかつ右側からローラ4に当て付けられ、左側からローラ5に巻掛けられかつ糸張力測定器を通過してローラ6の周囲に一度巻付けられかつローラ6の軸に固定される。第2の糸F2(破線で図示)は同様に10cNの重量G2で(自由に懸垂させられて)左側から導かれてローラ1を介して案内される。次いで糸F2は4度糸F1の後ろへ右へ引渡されかつ糸F1の前で再び左へ導かれ、これによって3.5の巻掛けが与えられる。糸F2はローラ2の下とローラ3とを介して巻取りローラ6に導かれかつそこで糸F1のように固定される。糸F1とF2のためには重量G1とG2がほぼ1m測定装置の下へ懸垂するような長さが選ばれている。
【0021】
いまやモータ(図示せず)がローラ6に接続される。糸を方向付けるための2〜3minの走行時間のあとで糸F1は糸張力測定器へ挿入される。測定値はF-MeterR-1188で表示されかつ記録計TypSE120(Fa.ABB Goerz AG)に記録される。この場合に検出された力は糸−糸−摩擦の尺度として表示される。重要であることは緯糸の切離しを分離溶融を介して行うことである。分離溶融自体は一般的に公知である。この場合には糸の1個所が糸の溶融温度と少なくとも同じであるが、通常はそれよりも高い温度に加熱される。もっとも簡単な場合にはこのためには高温に加熱可能なワイヤを使用することができる。このワイヤの上に緯糸が移動させられ、溶融されかつ引続き移動させられることによって分離される。通常はワイヤは赤く焼けるまで加熱される。しかしながらEP−A−0747267号にキャッチ糸にて緯糸を切離すために使用されているような加熱されたナイフを使用することもできる。
【0022】
この場合には、緯糸の端部が溶融された状態で、経糸の縁に配置された糸に付着するように分離溶融が行われると有利である。緯糸の溶融した端部は緯糸を経糸の少なくとも1つの縁糸に付着するために利用される。このような形式で、製造された織物の取扱い性を著しく改善する特に安定した経糸縁が達成される。
【0023】
この場合に特に好ましくは、緯糸の端部が溶融状態で経糸の縁に配置された複数の糸と溶着されるように分離溶融は行われる。この分離溶融は、残った経糸の分離機構に隣り合った縁糸も溶融状態に変える。完成した織物の縁に沿っては連続した溶着縁が生じ、この溶着縁が上記はためきの回避にポジティブな影響を及ぼす。
【0024】
本発明の課題は本発明による方法で製造可能な織物によっても解決された。本発明による織物は、通常の製織法でウォータジェット織機を用いて製造された織物とは、緯糸が織物の両縁部にて切離されるのに対し、従来の形式でウォータジェット織機で製造された織物は一方の織物縁にだけ切断された緯糸を有し、反対側の織物縁では緯糸がいくらか織物から突出することで異なっている。特に織物縁を分離溶融する場合には、本発明で製造された織物と、従来のウォータジェット織機にて製造された織物とは、両方の縁にて長手方向に延在する溶着縁によって識別可能である。さらに本発明による織物では縁領域における手触りが縁の間の手触り、特に織物の中央における手触りと少なくともほぼ同じである。
【0025】
本発明の織物はエアバッグ、落下傘及び帆布の製造のため及びきわめて密度の高い織物が必要であるすべての使用分野のために適している。例えば総番手470dtexの糸を経糸及び緯糸方向でcmあたり25本までの密度で織成することができる。
【0026】
次に以下の例に基づき本発明を詳細に説明する。
【0027】
例
PA6.6から成る糸から成る207cm幅の経糸がウォータジェット織機に供給される。経糸の各糸は総番手470dtexと72フィラメントを有している。5minの加熱時間のあとで190℃で測定した糸の加熱空気収縮は8.2%であった。
【0028】
さらに、それぞれ部分経糸ビームに巻かれていたPA6.6から成る40本の糸から成る2つの糸群が同様にウォータジェット織機に供給される。この供給は糸群がウォータジェット織機のリードにおいてそれぞれ経糸の縁糸に続くように行われる。これらの糸は保持糸として働き、総番手234dtexと68フィラメントを有している。保持糸は構成Z476S637の2重に撚られた糸である。この構成は34フィラメントを有する糸を、まずS−方向にメートルあたり637撚り数で撚り、そのあとでこのように撚られた2本の糸をZ−方向にメートルあたり476撚り数で撚り合わせることで達成される。保持糸は経糸の糸の加熱空気収縮と同条件下で測定して1.8%の加熱空気収縮度を有する。
【0029】
さらにレノ糸としてウォータジェット織機にて一般的である4本のレノ糸がウォータジェット織機の緯糸挿入ノズルに向き合っていた保持糸の糸群の外側に供給される。
【0030】
緯糸としては総番手470dtexで72フィラメントを有するPA6.6から成るマルチフィラメント糸が使用される。この緯糸は8.2%の加熱空気収縮を示した。緯糸と保持糸との間の糸−糸−摩擦は47.5cNである。
【0031】
経糸、保持糸群及びキャッチ糸は並べてウォータジェット織機のリードへ通される。この場合、リードは10cmあたり100リード間隔を有し、それぞれ2本の糸が1つのリード間隔に引込まれる。経糸においては糸は120cN/texの張力、保持糸の糸は123cN/texの張力に保たれる。
【0032】
この記述した糸で織物が製造された。レノ糸は緯糸を張るために撚られ、緯糸を保持糸の外側で切離したあとで、切離された緯糸と一緒に吸い出される。このあとで製造された織物は、それぞれ1つの赤色加熱されたワイヤが保持糸と経糸の一番外側の糸との間を案内されるように送られる。ワイヤは緯糸を切離し、経糸の一番外側の糸に溶着する。これによって各経糸縁に沿って触知可能な溶着縁が形成された。
【0033】
このようにして製造された織物は経糸方向にはcmあたり21.5本の糸を有し、緯糸方向にはcmあたり21.5本の糸を有する。織物の両縁は織物の内部と同じ手触りを有している。織物を1つのビームから他のビームに巻返す場合には織物は縁まで張られた状態に保たれ、当業者にとって周知の縁のはためきは認められなかった。この織物は全織物幅に亘ってきわめて一様に水性のシリコン分散液で被覆することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 2つの異なる糸の間の静的摩擦を測定する測定装置の概略図。
Claims (12)
- ウォータジェット織機にて密度の高い織布を製造する方法であって、以下のステップ:
(イ)一方の縁に3本までのレノ糸を有する経糸を供給すること、
(ロ)経糸に緯糸を挿入すること、
(ハ)緯糸を織布を形成するためにレノ糸の方向でおさ打ちすること、
(ニ)緯糸を緊張させるためにレノ糸を一緒に撚ること、
(ホ)緯糸端部を切離すこと、
(へ)緯糸端部をレノ糸と一緒に除去すること、
を有している形式のものにおいて、
両方の経糸縁から見て経糸のそれぞれ5〜60本の糸がレノ糸を有する経糸縁にレノ糸に続いた保持糸であって、該保持糸が残った経糸を形成する糸の張力よりも2〜20cN/tex高い張力に保たれ、織物を製造したあとで残った経糸の縁と保持糸との間で緯糸を分離溶融で分離しかつ残った経糸の縁における糸と結合し、緯糸の切離された端部を保持糸とレノ糸と一緒に除去することを特徴とする、ウォータジェット織機にて密度の高い織布を製造する方法。 - 経糸の全幅に亘って、隣り合った糸の間の間隔が保持及びレノ糸を含めて同じ大きさである、請求項1記載の方法。
- 保持糸が糸群として巻かれている別個の部分経糸ビームから、保持糸が経糸の縁に供給される、請求項1又は2記載の方法。
- 経糸の両方の縁がそれぞれ10〜40本の保持糸である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
- 保持糸として使用される糸が190℃で測って、1%〜4%の加熱空気収縮を示す、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
- 保持糸として使用される糸が190℃で測って1%〜3%の加熱空気収縮を示す、請求項5記載の方法。
- 保持糸として撚られた糸を使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
- 保持糸として使用された糸がメートルあたり200から700の撚りを有している、請求項7記載の方法。
- 保持糸として2重に撚られた糸が使用される、請求項6又は7記載の方法。
- 保持糸として、緯糸と保持糸との間の糸−糸摩擦が20〜70cNである糸が使用される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
- 緯糸の端部が溶融状態で、残った経糸の縁に配置された糸に付着結合するように分離溶融を行う請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
- 緯糸の端部が溶融状態で、残った経糸の縁に配置された糸と溶融結合されるように分離溶融を行う、請求項11記載の方法。
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