JP4507221B2 - 免震装置の設置方法及びその設置用装置 - Google Patents

免震装置の設置方法及びその設置用装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物に免震装置を設置する際の作業性の向上を図るためのものであり、特に免震装置を設置位置まで移送するための移送技術の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、既設建物に対する従来の免震化工法においては、先ず免震装置の設置空間の下方に位置する基礎コンクリートなどからなる下部側構造物の所定位置に下部ベースプレートをセットしたうえ、その周囲に下部型枠を形成してコンクリート等を打設するとともに、その下部ベースプレート上に免震装置の下部フランジ部を載置してボルトにより固着するという下部側構造物に対する定着作業を行い、しかる後に前記免震装置の上部フランジ部上に上部ベースプレートを設置したうえ、その周囲に上部型枠を形成してコンクリート等を打設するという躯体等の上部側構造物に対する定着作業を行うという施工法が広く採用されていた。すなわち、従来の免震化工法においては、下部ベースプレートを介した下部側構造物に対する定着作業と、上部ベースプレートを介した上部側構造物に対する定着作業との二段階に分割した設置方法が採用されていた。なお、それぞれのベースプレートに対しては、多数のスタッドジベルやアンカー材が定着用部材として固着され、コンクリートに対して確実に定着されるように構成されていた。また、それぞれのベースプレートと免震装置との結合に関しては、免震装置の各フランジ部を対応するベースプレートに接合し、固定用のボルトを用いて、そのベースプレート自体に形成した雌ネジや、ベースプレートの下面に溶接した袋ナットあるいはアンカー材自体に形成された雌ネジなどに螺合して締付け固定することにより行うという手法が広く採用されていた。
【0003】
また、免震装置の設置に使用される部材を設置位置まで移送するには、現場までトラック等により搬送した後、ホークリフトやクレーンなどを使用してできるだけ設置位置の近くまで移送し、さらにチェーンブロック等により所定の設置位置に移送して、そのチェーンブロックや油圧ジャッキ等を用いて設置状態を調整しながら所定位置に設置するという手法が一般的に行われている。ところで、免震装置はアイソレータ及びダンパ等からなり、そのアイソレータの設置に使用される前記ベースプレートも含めてそれぞれ重量が大きいため、作業上の負担が大きくなるだけでなく、作業スペースも限られた状況下にあることから、それらの重量を支えるためのチェーンブロックの設置場所の選定も容易ではなく、無理のある状態での作業が強いられることも少なくなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来工法の現状に鑑みてなされたものであり、特に現場に搬送された免震装置を所定の設置位置まで移送する移送作業を改善し得る免震装置の移送技術を提供し、設置作業に関する作業性の向上を図り、既設建物を含めて建物に対する免震化を促進することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、請求項1の発明では、免震装置を昇降範囲の大きい昇降支持機構により支持しながら設置位置の近傍まで移送するとともに、その近傍位置において前記昇降支持機構を構成する昇降プレートの高さを設置側の下部側構造物上移動面の高さに応じて調整したうえ、前記免震装置を車輪を備えた昇降範囲の小さい可動支持機構によって支持した状態で前記昇降プレート上を移動させ、その昇降プレート上から前記設置側の移動面上へ移して同移動面上を移動させることにより、前記免震装置を設置位置まで移送し、前記可動支持機構の昇降手段を用いて、必要に応じて設置状態を調整しながら免震装置を所定位置に設置するという技術手段を採用した。また、請求項2の発明では、前記免震装置を車輪を備えた昇降範囲の小さい可動支持機構により支持して前記昇降プレート上を移動させ、前記設置側に設定された移動面上へ移す際に、前記車輪を昇降プレート上に設置した案内部材上を走行させるという技術手段を採用した。
【0006】
以上のように、本発明においては、現場において免震装置を設置位置まで移送する移送作業を、設置位置の近傍までの第1移送工程と、その近傍位置から設置位置までの第2移送工程との二段階に分け、前者の第1移送工程においては、作業スペースに余裕のある場所で免震装置を昇降範囲の大きい前記昇降支持機構に支持し、さらに場合に応じてベースプレート等の所要部材を組付けたうえ、設置位置の近傍位置まで移送するという移送作業を行い、後者の第2移送工程においては、その設置位置の近傍に移動した前記昇降支持機構の昇降プレートを設置側の移動面に応じて高さ調整を行うとともに、前記免震装置を昇降範囲の小さい前記可動支持機構により支持した状態で、前記昇降プレート上を移動して設置側の下部側構造物上に設定した移動面上に移し、さらにその移動面上を設置位置まで移送したうえ、必要に応じて設置状態を調整しながら所定の状態に設置するという移送設置作業を行うように構成したことから、その移送作業の途中、特に設置位置の近傍の作業スペースの限られた狭い空間において、従来のようにチェーンブロックなどを設置する等の面倒な作業をしないで済むので、作業性を大幅に改善できる。なお、前記昇降プレート上に例えばチャンネル材やアングル材等からなる案内部材を他端部が設置側の移動面にとどくように設置し、第2移送工程において、前記免震装置を支持した可動支持機構を昇降プレート上を移動して設置側の移動面上に移す際に、その案内部材上を前記車輪が走行するようにすれば、よりスムーズな渡り動作が得られる。
【0007】
また、請求項3の発明では、前記免震装置の移送手段に使用する設置用装置として、免震装置を昇降可能に支持する昇降範囲の大きい昇降支持機構と、その昇降支持機構に支持されながら設置位置の近傍まで移送された免震装置を支持して同昇降支持機構を構成する昇降プレート上を移動するとともに、設置側の下部側構造物上に設定された移動面上に移って設置位置まで前記免震装置を移送する昇降範囲の小さい可動支持機構とから設置用装置を構成し、前記可動支持機構を、免震装置側に対して固定可能な支持部と、該支持部に対して相対的に昇降調整可能に構成され、かつ下部に車輪を有する車輪付昇降手段とから構成するという技術手段を採用した。なお、請求項4のように、前記車輪付昇降手段を下部に車輪を有するネジ軸体から構成し、そのネジ軸体と該ネジ軸体に螺合する雌ネジ部材とにより前記支持部に対して相対的に昇降し得るように構成することも可能である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係る免震装置の設置技術は、既設、新設の建物を問わず広く適用することができる。特に、既設の建物に対する免震化工事に好適であり、作業性を向上することが可能である。移送する対象としては、免震装置を構成するアイソレータが好適であるが、同様に免震装置を構成するダンパなどの移送に関しても適用が可能である。なお、前記昇降支持機構に免震装置を支持した状態で設置位置の近傍まで移送する移送手段に関しては、昇降支持機構自体に車輪等の移動手段を設けて移動するように構成してもよいし、昇降支持機構自体には移動手段を設けずに動力式ないし手動式の台車等の運搬手段に乗せて移動するようにしてもよい。また、前記昇降支持機構により移送する際の免震装置側の形態に関しては、アイソレータ単体を設置位置まで移送して、そこでベースプレートに組付けるようにしてもよいし、予めアイソレータにベースプレートを組付けた状態で設置位置まで移送するようにしてもよい。アイソレータ単体で移送する場合には、アイソレータとは別にベースプレートなどを設置位置へ移送することになるが、そのベースプレートの移送にも前記昇降支持機構及び可動支持機構の使用が有効である。また、以上の本発明に係る設置用装置は、免震装置の設置作業ばかりでなく、免震装置の交換工事等における旧免震装置の撤去作業に対しても有効に使用することができる
【0009】
なお、前記昇降支持機構により免震装置を支持しながら設置位置の近傍まで移送する際には、昇降プレート上に適宜の支持台を介して免震装置を支持した状態で移送するようにしてもよいし、予め免震装置を前記可動支持機構に支持し、その可動支持機構を介して昇降プレート上に搭載して移送するようにしてもよい。さらに、前者のように、昇降プレート上に適宜の支持台を介して免震装置を支持して移送する場合には、その免震装置に対して予め前記可動支持機構を取付けた状態で設置位置の近傍まで移送するようにしてもよいし、設置位置の近傍まで移送した後、免震装置に対して前記可動支持機構を取付けるようにしてもよい。なお、後者の可動支持機構を介して免震装置を支持した状態で昇降プレート上に搭載する際には、適宜の係止手段等により可動支持機構が昇降プレート上で動かないようにしておくことはいうまでもない。
【0010】
また、設置位置において免震装置を設置する際に用いられる支持用の架台等に関しては、設置対象である下部側構造物上に設置してもよいし、前記昇降支持機構により免震装置を移送する際に、予めそれらの架台等を免震装置側に脚部として固定した状態で移送するようにしてもよい。その場合、架台等の支持手段を構成する脚部に高さ調整手段を付設しておくと、設置状態の調整等において便利である。また、設置位置の近傍に移送された後、免震装置を可動支持機構により支持して前記昇降プレート上を移動する際には、その可動支持機構の車輪を昇降プレート自体の上面を直に走行させるようにしてもよいし、例えばチャンネル材やアングル材等からなる案内部材を他端部が設置側の移動面にとどくように昇降プレート上に単に置いた状態あるいは固着した状態に設置して、その案内部材上を誘導しながら、あるいは誘導せずに車輪を走行させるようにしてもよい。さらに、アイソレータを固定するためのベースプレートとしては、アイソレータをフランジ部を介してベースプレートに固着し、そのベースプレートに設置したアンカー材の下部側構造物あるいは上部側構造物に対する定着力を前記ベースプレート自体を介してアイソレータ側に伝達するようにした形態のものでも、ベースプレートは一種の添プレートとして用い、ベースプレートに設置されたアンカー材の雌ネジに対して固定用ボルトを用いてアイソレータのフランジ部を直接的に固着することにより、アンカー材自体を介して下部側構造物あるいは上部側構造物に対する定着力をアイソレータ側に直接的に伝達するように構成したものでもよい。また、免震装置の設置部位に関しては特段の制約はなく、前記昇降支持機構を構成する昇降プレートの昇降動作により適宜の高さに対応することが可能である。
【0011】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明に係る実施例に関して説明する。図1〜図9は本発明を既設建物の免震化工事に適用した場合の施工手順の概略を示した施工説明図であり、それぞれ上部に施工部分を上方から見た概略平面図、下部に正面から見た概略正面図を示したものである。先ず、図1の施工では、既設建物の外周部壁1の周囲に矢板2等を打込んで土留め施工を実施し、外周部壁1と矢板2との間を掘削して擁壁3を形成する。なお、必要に応じて地盤改良や増杭等を行う。次に、図2に示したように、柱部4などの免震装置の設置部の周囲や梁部5の部分にだぼ筋6,7やケミカルアンカー8,9を設置し、さらに必要な補強筋を配筋した後、型枠を形成して高流動コンクリートを圧入することにより、図3のように下部側補強部10及び上部側補強部11を形成する。なお、以上の下部側補強部10及び上部側補強部11の形成作業は、免震装置の全ての設置個所に対して順次行う。また、擁壁3との間などの適宜の場所に水平力拘束用の仮設切り梁を設置しておく。
【0012】
次に、図4に示したように、前記下部側補強部10と上部側補強部11との間にジャッキ12,13を設置し、既設建物の自重をそれらのジャッキ12,13により支持したうえ、図示のように柱部4及びその周囲の壁を切断し、免震装置の設置空間14を形成する。しかる後、図5に示したように、前記設置空間14の下部に位置する下部側構造物を構成する柱部4の切断部上面15の所定位置に免震装置を支持するための据付け用の架台16を形成する。なお、本実施例においては、以上の下部側補強部10及び柱部4の切断部上面15が下部側構造物上の移動面として設定されることになる。そして、前記設置空間14以外の作業スペースの余裕のある適宜の場所において、例えば、本実施例のように、アイソレータとしての免震装置17に上下のベースプレート18,19やアンカー材20等の所要部材を組付けて免震装置組立体21を形成し、その免震装置組立体21を昇降プレートを備えた前記昇降支持機構及び支持部が昇降可能に構成され車輪を備えた前記可動支持機構により移送し、設置位置である架台16の上方へ移動して前記支持部を下降することにより、図6のように免震装置組立体21を架台16上の所定の設置位置にセットする。その後、下部側アンカー材の取付けを行い、しかる後、前記免震装置17の周囲に例えば3つに分割した水平力拘束用の鋼製リング状カバー22を取付け、さらに前記ベースプレート18,19の周囲にそれぞれ上部型枠及び下部型枠を形成して高流動コンクリートを圧入して固化させる。なお、以上の図4〜図7の作業は、全ての免震装置17の設置個所に対して繰返し行われることになる。
【0013】
次に、図7の作業に進み、前記外周部壁1を適宜部分から切断して上部側構造物と下部側構造物とに分離するとともに、前記鋼製リング状カバー22を免震装置17の周囲から取外す。しかる後、前記ジャッキ12,13を下降して撤去することにより図8の状態に至り、免震装置17の設置作業を終了する。そして、さらに図9に示したように上部側構造物としての前記上部側補強部11に取付部23を一体的に形成し、その取付部23と例えば前記擁壁3との間に免震装置を構成するオイルダンパ24を設置し、適宜の場所に設置した前記水平力拘束用の仮設切り梁を撤去して免震化作業を完了する。なお、前述のように、オイルダンパ24を設置位置まで移送する手段として、前記昇降支持機構及び可動支持機構を使用することも可能である。
【0014】
次に、本発明に係る設置用装置に関して詳細に説明する。図10及び図11は昇降支持機構を示したもので、前記設置空間14以外の適宜の場所において、例えば前記実施例のように、免震装置17に上下のベースプレート18,19やアンカー材20等の所要部材を組付けて免震装置組立体21を組立てる場合に使用される。図示のように、本実施例の昇降支持機構25は、上板としての昇降プレート26と下板27との間にパンタグラフ式の伸縮機構28を配設することにより、適宜の部位に組込んだ図示しない油圧シリンダ等の駆動機構を介して昇降プレート26が水平状態を保ちながら昇降し得るように構成されている。昇降プレート26上にはアングル材等から形成した支持台29が設置されている。また、下板27には脚体30が付設されている。なお、本実施例に係る昇降支持機構25の場合には、動力式ないし手動式の台車や移動式ジャッキ等の運搬手段に乗せて設置位置の近傍まで移動することになるが、脚体30自体あるいは脚体30のほか、昇降支持機構移動用の車輪を設けて移動するように構成することも可能である。
【0015】
前述の図5の作業において前記設置空間14に免震装置17を設置する場合には、先ず、設置空間14以外の作業スペースに余裕のある場所で、図11に示したように昇降支持機構25の昇降プレート26上に形成した支持台29の上に下部ベースプレート19を載置し、その下部ベースプレート19上に免震装置17を載置する。本実施例の場合には、免震装置17は、板状のゴムと鋼板とを交互に積層した積層体等からなるアイソレータから構成され、その上下には固定用のフランジ部31,32を備えている。本実施例では、上部フランジ部31上に上部ベースプレート18を載置して、固定用のボルト33を前記アンカー材20に形成した雌ネジに螺合して締付けることにより、上部ベースプレート18を免震装置17に固定すると同時にアンカー材20を固着し得るように構成されている。しかして、以上のように、昇降支持機構25上において免震装置17に上下のベースプレート18,19やアンカー材20等の所要部材を組付けた免震装置組立体21が形成される。なお、免震装置組立体21が形成された場合には、前述のように、昇降支持機構25を図示しない台車や移動式ジャッキ等の運搬手段により前記設置空間14の近傍まで移動することにより、その後の作業を効率的に行うことができる。
【0016】
図12及び図13は前記昇降支持機構25の支持台29上に形成された免震装置組立体21を設置空間14の所定位置に設置するための可動支持機構を示したもので、それぞれ一部を省略して示した正面図及び平面図である。図示のように、本実施例の可動支持機構34は、免震装置側に対して固定可能な支持部を構成するコ字状の形鋼等からなる支持用ブラケット35の両側部の裏面側に対してナット等からなる雌ネジ部材36,37を溶接等により固着し、その雌ネジ部材36,37に対して下部に移動手段として本実施例ではキャスタ車からなる車輪38,39を備えたネジ軸体40,41によって構成される車輪付昇降手段を昇降可能に螺合してなる組立体を一対揃えることにより構成される。それらの一対の組立体は、それぞれ一体的に連結された状態で免震装置側に取付けられる形態のものでも、分離した状態で免震装置側に取付けられる形態のものでもよい。なお、支持用ブラケット35の裏面側には図13のように更に座金部42,43が突出形成され、それぞれ仮止め用ボルトの挿通孔44,45が免震装置17への取付け時に下部フランジ部32や下部ベースプレート19のボルト挿通孔に合致するように形成されている。しかして、本可動支持機構34を使用する場合には、図14に示したように、昇降支持機構25の支持台29上に支持された免震装置17の下部フランジ部32の上面に対して前記可動支持機構34を構成する一対の支持用ブラケット35を平行にセットして、それらの支持用ブラケット35の裏面側に突出形成した座金部42,43のボルト挿通孔44,45、下部フランジ部32及び下部ベースプレート19に形成したボルト挿通孔を介して仮止め用ボルトナット46,47によりそれぞれ締付固定する。しかる後、それぞれの支持用ブラケット35の雌ネジ部材36,37に螺合したネジ軸体40,41を回転して4個の車輪38,39を下降して昇降支持機構25の昇降プレート26に当接させ、さらにネジ軸体40,41を回転することにより、前記免震装置組立体21を支持台29から浮かせる。その結果、適宜部分を押動することにより4個の車輪38,39を介して免震装置組立体21を簡単に移動すること可能になる。
【0017】
しかして、前述のように4個の車輪38,39を下降して免震装置組立体21を前記支持台29から浮かせて移動可能な状態にセットされたら、適宜部分を押動して図15に示したように設置空間14に設置した架台16の上方に移動し、前記ネジ軸体40,41を逆に回転することにより、前記免震装置組立体21を下降させ、必要に応じて設置状態を調整しながら、架台16上の所定位置に載置する。なお、この場合に、車輪38,39の走行部にチャンネル材やアングル材等からなる案内部材を敷くと有効である。しかる後、可動支持機構34を撤去し、下部フランジ部32及び下部ベースプレート19に形成されたボルト挿通孔を介して固定用ボルトにより免震装置17を架台16に固定し、必要に応じて下部ベースプレート19と架台16とを溶接するとともに、下部ベースプレート19の下面に所要数のアンカー材20を設置し、さらに必要に応じて補強筋を配筋した後、前述のように上下のベースプレート18,19の周囲に型枠を形成して高流動コンクリート等を打設することになる。なお、その後の作業としては、前述の図7以降の作業が継続されることになる。
【0018】
なお、以上の実施例においては、下部ベースプレート19に対するアンカー材20の設置は、免震装置組立体21の移動の邪魔にならないように、設置空間14の架台16上に移動してから行うようにしたが、前記昇降支持機構25の支持台29上において上部ベースプレート18に対するアンカー材20の設置と同時に行うようにしてもよいし、逆に上下のベースプレート18,19に対するアンカー材20の設置を共に設置空間14で行うようにしてもよい。また、同実施例では、可動支持機構34を構成する支持用ブラケット35の裏面側に座金部42,43を突出形成することにより、免震装置17への取付け時に仮止め用ボルトの挿通孔44,45をその免震装置17の側端部から引込んだ位置にある下部フランジ部32や下部ベースプレート19のボルト挿通孔に合致し得るように形成したが、支持用ブラケット35自体を免震装置17の外周面に沿って湾曲形成して接触を回避することも有効である。
【0019】
図16は他の実施例を示した正面図である。図示のように、本実施例は、前記昇降支持機構25の下板27に配設された脚部30に移動用のキャスタ車48,49を備え、このキャスタ車48,49によって前記免震装置組立体21を設置位置の近傍まで移送する場合を例示したものである。また、免震装置組立体21の支持に関しては、前記支持台29に替えて、前記アンカー材20を逆にした同様の構成からなる支持用部材50を使用した場合を例示したものである。この支持用部材50は下部に螺合した調整ボルト51を備えており、その調整ボルトによる高さ調整によって、設置位置に移送された後の免震装置組立体21の取付状態を調整し得るように構成されている。支持用部材50の免震装置組立体21に対する取付けに関しては、図示のように、本実施例では、前記免震装置17の下部フランジ部32に形成されたボルト挿通孔のうち、前記仮止め用ボルトナット46,47により可動支持機構34を構成する一対の支持用ブラケット35を固定するために使用した余りのボルト挿通孔を使用してそれぞれ締付固定する場合に関して示した。そして、本実施例によれば、使用されていない下部フランジ部32のボルト挿通孔を3個所以上使用して前記支持用部材50を取付けることにより、前記免震装置組立体21の昇降プレート26上での支持及び設置位置における設置状態の調整が可能になるとともに、それらの支持用部材50をアンカー材として兼用することも可能である。さらに、前記免震装置17の下部フランジ部32のボルト挿通孔を利用せずに、下部ベースプレート19に専用のボルト挿通孔を形成して支持用部材50を固定するようにしたり、本実施例の支持用部材50に替えてフレーム状の脚体等からなる他の構成の支持用部材に変更したりすることも可能である。
【0020】
図17及び図18は可動支持機構に関する他の実施例を示したもので、それぞれ一部を省略して示した正面図及び平面図である。図示のように、本実施例の可動支持機構52は、その免震装置側に対して固定可能な支持部を構成するコ字状の形鋼等からなる支持用ブラケット53を構成する下方フランジ部54の下面両側部にナット等からなる雌ネジ部材55,56を溶接等により固着し、その雌ネジ部材55,56に対して下部に移動手段としてキャスタ車からなる車輪57,58を備えたネジ軸体59,60を昇降可能に螺合して形成した一対の組立体により構成される。それらの一対の組立体は、それぞれ一体的に連結された状態で免震装置側に取付けられる形態のものでも、分離した状態で免震装置側に取付けられる形態のものでもよい。さらに、支持用ブラケット53の裏面側上部には、図18に示したように座金部61,62が突出形成され、それぞれ仮止め用ボルトの挿通孔63,64が、前記免震装置17への取付け時に下部フランジ部32や下部ベースプレート19のボルト挿通孔に合致する位置に形成されている。また、前記支持用ブラケット53を構成する上方フランジ部65の両端部には、前記ネジ軸体59,60の上端部に形成したスパナ等の係合可能な回転用係合部66,67に対応して開口部68,69が形成され、前記前記支持用ブラケット53を下げた場合に、回転用係合部66,67が開口部68,69を介して突出し得るように構成している。
【0021】
本可動支持機構52は、前述の可動支持機構34と同様に、免震装置17の下部フランジ部32の上面に対して、その可動支持機構52を構成する一対の支持用ブラケット53を平行にセットして、それらの支持用ブラケット53の裏面側上部に突出形成した座金部61,62のボルト挿通孔63,64を介して仮止め用ボルトナット46,47により締付固定したうえ、ネジ軸体59,60を回転して免震装置組立体21を支持台29から浮かせて押動することにより、免震装置組立体21を設置空間14の架台16上に移動する免震装置を設置する場合の移動手段として使用することができる。また、本実施例の可動支持機構52の場合には、その支持用ブラケット53を構成する下方フランジ部54と上方フランジ部65との間隔をある程度大きくとり、ネジ軸体59,60の回転用係合部66,67が上方フランジ部65より突出して邪魔にならないようにすれば、耐用年数の到来した設置状態の免震装置17の上部フランジ部31の下面を支持することにより、後述のように交換作業時の撤去用移送手段として有効に使用することができる。さらに、新設工事においても、免震装置17の上部フランジ部31あるいは下部フランジ部32の下面を支持した形態で設置位置へ移送することが可能になる。
【0022】
図19はその免震装置17の交換時の作業状態を示した作業説明図である。この交換作業は次の手順で行うことができる。先ずそれぞれの既設の免震装置17の下部フランジ部32に対する固定用のボルト33を外して下部側構造物との結合関係を切断したうえ、適宜の部位にセットした図示しないジャッキ等を用いて上部側構造物を上昇させる。その結果、免震装置17は上部側構造物と共に上昇して、下部フランジ部32と下部側構造物との間が浮いて離間する。しかる後、図19に示したように、免震装置17の上部フランジ部31に対して下から前記可動支持機構52を取付ける。この場合、前述のように、ネジ軸体59,60の回転用係合部66,67が上方フランジ部65より突出して邪魔にならないようにして上部フランジ部31の下面に対して取付ける。また、その場合、免震装置17の上部フランジ部31には予め可動支持機構取付け用の雌ネジ部を設けておき、その雌ネジ部に対して可動支持機構52の座金部61,62に形成したボルト挿通孔63,64を介して仮止め用のボルトを螺入し締付けるようにすれば簡単に取付けることができる。しかして、その可動支持機構52の取付け後には、上部フランジ部31に対する固定用のボルト33を徐々に緩めて自重を可動支持機構52側に移しながら外し、しかる後、前記可動支持機構52を押動することにより免震装置17を他の適所へ移動する。その場合、車輪57,58の通路にチャンネル状のレール等からなる案内部材70を敷いて近傍にセットした図示しない可動形の昇降支持機構25の昇降プレート26上へ誘導するようにすればきわめて有効である。しかして、次に交換用の新しい免震装置17を昇降支持機構25から可動支持機構52を用いて元の設置位置へ移動して設置する設置作業に移行する。その場合には、以上の古い免震装置17を取外す場合と同様に、可動支持機構52の支持用ブラケット53よって上部フランジ部31の下面から支持した状態で設置位置に移動して上部側構造物側に固定するようにしてもよいし、下部フランジ部32の上面から支持した状態で設置位置に移動して下部側構造物側に固定するようにしてもよい。そして、新しい免震装置17を元の設置位置に固定して前記可動支持機構52の撤去作業が済んだら、前記ジャッキを下げて上部側構造物を降下させ、新しい免震装置17を下部側構造物と上部側構造物との間に正確に位置決めするとともに、締付作業の済んでいない他方のフランジ部に対して固定用ボルトによる締付を行うことにより免震装置17の交換作業が完了することになる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、作業スペースに余裕のある場所で免震装置を昇降範囲の大きい昇降支持機構に支持して設置位置の近傍まで移送するとともに、その設置位置の近傍位置において、前記昇降支持機構の昇降プレートを設置側の移動面に応じて高さ調整をしたうえ、昇降範囲の小さい可動支持機構により前記免震装置を支持した状態で、昇降プレート上を移動して設置側の下部側構造物上に設定した移動面上に移し、その移動面上を設置位置まで移送するように構成したので、設置位置までの免震装置の移送作業の途中、特に設置位置の近傍の作業スペースの限られた狭い空間において、従来のようにチェーンブロック等の免震装置の吊上げ機具などを使用する面倒な作業をしないで済むことから、その移送作業に関する作業性を大幅に改善することができる。したがって、延いては免震装置の設置作業に関する作業性も大幅に向上されるので、工期の短縮やコストの削減にも有効であり、建物の免震化の促進にも資することもできる
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る免震化工法の施工手順の概略を示した施工説明図である。
【図2】 同施工手順の概略を示した施工説明図である。
【図3】 同施工手順の概略を示した施工説明図である。
【図4】 同施工手順の概略を示した施工説明図である。
【図5】 同施工手順の概略を示した施工説明図である。
【図6】 同施工手順の概略を示した施工説明図である。
【図7】 同施工手順の概略を示した施工説明図である。
【図8】 同施工手順の概略を示した施工説明図である。
【図9】 同施工手順の概略を示した施工説明図である。
【図10】 昇降支持機構を示した側面図である。
【図11】 昇降支持機構を示した側面図である。
【図12】 可動支持機構に関する実施例を一部を省略して示した正面図である。
【図13】 同実施例を一部を省略して示した平面図である。
【図14】 昇降支持機構上での作業状態を示した作業説明図である。
【図15】 設置空間での作業状態を示した作業説明図である。
【図16】 本発明の他の実施例を示した正面図である。
【図17】 可動支持機構に関する他の実施例を一部を省略して示した正面図である。
【図18】 同実施例を一部を省略して示した平面図である。
【図19】 免震装置の取替え作業を示した作業説明図である。
【符号の説明】
1…外周部壁、2…矢板、3…擁壁、4…柱部、5…1G梁部、6,7…だぼ筋、8,9…ケミカルアンカー、10…下部側補強部、11…上部側補強部、12,13…ジャッキ、14…免震装置の設置空間、15…切断部上面、16…据付け用の架台、17…免震装置、18…上部ベースプレート、19…下部ベースプレート、20…アンカー材、21…免震装置組立体、22…鋼製リング状カバー、23…取付部、24…オイルダンパ、25…昇降支持機構、26…昇降プレート、27…下板、28…伸縮機構、29…支持台、30…脚体、31…上部フランジ部、32…下部フランジ部、33…ボルト、34…可動支持機構、35…支持用ブラケット、36,37…雌ネジ部材、38,39…車輪、40,41…ネジ軸体、42,43…座金部、44,45…仮止め用ボルトの挿通孔、46,47…仮止め用ボルトナット、48,49…キャスタ車、50…支持用部材、51…調整ボルト、52…可動支持機構、53…支持用ブラケット、54…下方フランジ部、55,56…雌ネジ部材、57,58…車輪、59,60…ネジ軸体、61,62…座金部、63,64…ボルト挿通孔、65…上方フランジ部、66,67…回転用係合部、68,69…開口部、70…案内部材

Claims (4)

  1. 免震装置を昇降範囲の大きい昇降支持機構により支持しながら設置位置の近傍まで移送するとともに、その近傍位置において前記昇降支持機構を構成する昇降プレートの高さを設置側の下部側構造物上移動面の高さに応じて調整したうえ、前記免震装置を車輪を備えた昇降範囲の小さい可動支持機構によって支持した状態で前記昇降プレート上を移動させ、その昇降プレート上から前記設置側の移動面上へ移して同移動面上を移動させることにより、前記免震装置を設置位置まで移送し、前記可動支持機構の昇降手段を用いて免震装置を所定位置に設置することを特徴とする免震装置の設置方法。
  2. 前記免震装置を車輪を備えた昇降範囲の小さい可動支持機構により支持して前記昇降プレート上を移動させ、前記設置側移動面上へ移す際に、前記車輪を昇降プレート上に設置した案内部材上を走行させるようにした請求項1に記載された免震装置の設置方法。
  3. 免震装置を昇降可能に支持する昇降範囲の大きい昇降支持機構と、その昇降支持機構に支持されながら設置位置の近傍まで移送された免震装置を支持して同昇降支持機構を構成する昇降プレート上を移動するとともに、設置側の下部側構造物上移動面上に移って設置位置まで前記免震装置を移送する昇降範囲の小さい可動支持機構とからなり、前記可動支持機構は、免震装置側に対して固定可能な支持部と、該支持部に対して相対的に昇降調整可能に構成され、かつ下部に車輪を有する車輪付昇降手段とから構成されることを特徴とする免震装置の設置用装置。
  4. 前記車輪付昇降手段は、下部に車輪を有するネジ軸体から構成され、そのネジ軸体と該ネジ軸体に螺合する雌ネジ部材とにより前記支持部に対して相対的に昇降し得るように構成した請求項3に記載された免震装置の設置用装置。
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