JP4318788B2 - アンカーボルトの設置方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築構造物の鉄骨柱をコンクリート基盤上に建てる場合に、基礎構造に対して力を伝達させるためのアンカーボルトの設置方法に関する。より詳しくは、そのアンカーボルトの設置作業における作業性を改善するための改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来のアンカーボルトの設置方法においては、複数本のアンカーボルトと添プレートなどの組立体からなるアンカーセットを地盤上に形成した支持用のフレームに固定することによりアンカーボルトを所定位置に設置するという手法が広く用いられている。この場合、従来の設置方法では、各アンカーボルトの高さに関する微調整に関しては、アンカーセットの支持用フレームに対する取付位置を調整することによって行われていた。また、そのアンカーセットの組付け作業後に各アンカーボルトの設置位置に水平方向のずれがある場合には、アンカーセットが固定された前記支持用フレームを捨てコンクリート等の地盤側に対して移動するなどの手法により微調整が行われるのが一般的であった。
【0003】
他方、地盤に対して立設した鋼材の上部に横方向の鋼材を渡し、その横方向の鋼材上に、各アンカーボルトの上下部をそれぞれ上部添プレートあるいは下部添プレートにより支持するとともに定着板を下部添プレートの上面側に配設して一体的に形成したアンカーセットを載置し、芯出しをした後、溶接等により固定するという手法も開示されている(特許第2555111号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した前者の従来技術においては、前記アンカーセットの高さが高い場合や重量が大きい場合には、そのアンカーセットが一体化された支持用フレームを捨てコンクリート等の地盤側に対して移動する際に伴う、対コンクリートとの摩擦係数が大きいことも相俟って、その移動作業に大きな押動力が必要とされ、作業負担が大きくなり作業性に難点が生じるばかりでなく、同作業に危険が伴う場合もあるといった問題があった。また、後者の従来技術においては、アンカーセットの水平方向の位置調整作業を改善するという観点からは積極的な工夫がなされていない。すなわち、アンカーセットを前記横方向の鋼材上に載置するに際して、その横方向の鋼材上を縦横に摺動して調整するために必要な調整用の間隙部をいずれの方向に対しても形成しておくという工夫に関しては開示されていない。なお、アンカーボルトのサイズが大きくなり、アンカーセットに組んだ場合の重量が大きくなる場合には、柱位置でアンカーセットを手組みして設置位置を所定の高さに調整することは作業に困難が伴うことから、予め組立てに適した場所でアンカーセットに組立てたうえ、クレーン等の重機を用いて柱位置に移動して所定の高さに設置するという施工法が広く採用されている。しかしながら、この施工法は、クレーン等の重機の活用が困難な現場の場合には採用できない。また、重機の使用が可能な場合にも、その重機に関する費用が嵩むことはいうまでもない。
【0005】
本発明は、以上のような従来技術の状況に鑑みて発明したもので、アンカーボルトの設置位置に関する調整作業を改善するという観点から、とりわけアンカーセットの水平方向の微調整作業を改善し、その作業負担を軽減したアンカーボルトの設置方法を提供することを目的とするものである。また、クレーン等の重機を使用しなくとも、柱位置でアンカーセットを手組みしたうえ、その設置位置を所定の高さに簡便に調整可能なアンカーボルトの設置方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために、捨てコンクリート等の地盤に対して支柱を四隅に備えた支持用フレームを設置するとともに、前記支柱の外側に位置調整用の摺動面を有する受け部を設け、それらの各支柱の外側に位置する受け部の摺動面上に複数本のアンカーボルトを含む組立体からなるアンカーセットを載置するとともに、その摺動面上を縦横に摺動し得るようにいずれの方向に対しても調整用の間隙部を形成し、該間隙部を介して前記アンカーセットを所定の設置位置上に摺動して位置調整する際には、前記摺動面より上方へ突出する支柱との係止によってアンカーセットの前記受け部からの離脱が防止される状態において当該位置調整作業を行い、さらに前記支持用フレーム側に固定することによりアンカーボルトを所定位置に設置するという技術手段を採用した。この技術手段の採用により、本発明における水平方向の位置調整は、アンカーセットの重量を前記受け部により支持した状態で、アンカーセットのみを摺動面上を縦横に摺動させることによって行われるので、その調整作業に必要な押動力が大きく軽減される結果、作業性が大幅に改善され作業負担が軽減される。しかも、アンカーセットの位置調整作業においては、前記摺動面より上方へ突出する支柱との係止によってアンカーセットの受け部からの離脱が防止される状態において当該位置調整作業を行うので、アンカーセットの受け部からの離脱が確実に防止され、作業の安全性が大幅に向上される。なお、アンカーボルトの設置高さの調整は、前記受け部の前記支柱に対する取付高さを調整することによって簡単に行うことができる。
【0007】
また、捨てコンクリート等の地盤に対して支柱を備えた支持用フレームを設置するとともに、その支持用フレームの各支柱の下部周囲に複数本のアンカーボルトを含む組立体からなるアンカーセットを、その内側に位置する前記支持用フレームに対して昇降可能にセットし、しかる後、前記支柱に補助支柱を継足して該補助支柱の上部に吊上げ手段を設置した上、その吊上げ手段により前記アンカーセットを吊上げるとともに、前記支柱の所定高さに前記アンカーセット側の部材に係止し得るように外側へ突出した状態に受け部をセットし、さらに前記吊上げ手段を介して前記アンカーセットを下降して前記受け部上に載置した後、前記補助支柱及び吊上げ手段を撤去することにより、アンカーボルトを所定高さに設置するという技術手段を採用した。本発明によれば、支持用フレームの各支柱の下部周囲にセットしたアンカーセットを所定の設置高さに調整する場合には、従来のようにクレーン等の重機を活用しなくとも、前記吊上げ手段を用いることにより簡便に行うことができるので、作業性を改善できるとともに作業コストを削減できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
前記支持用フレームは、前記アンカーセットを支持し得るものであれば、アングル材などの形鋼に限らず種々の素材から構成することが可能である。また、アンカーセットは、複数本のアンカーボルトを所定間隔を保持した状態に組立てたものであればよく、各アンカーボルトの上下を添プレートに挿通支持したうえ、下部添プレートを挿通した部分に定着板を付設したものや、下部添プレートに代えて定着機能を合わせもつ、例えば断面略U字状の定着フレームを採用したものなど、種々の形態が可能である。なお、アンカーセットは、柱位置すなわち各支持用フレームの下部周囲に手組みによりセットし得ることはいうまでもないが、予め他の場所で組立てて支持用フレーム部へ移動してセットする形態にも適用可能である。この場合には、重機の使用を支持用フレームへのセット時のみに限定できる点で、重機の使用時間の短縮が可能である。また、本発明の適用されるアンカーボルトとしては、丸鋼あるいは異形鉄筋等の棒状のアンカー材からなり、それらの相互間に所定の間隔を保持して設置するものであれば広く適用が可能である。さらに、前記支持用フレームの支柱に設けられる前記受け部を構成する受け部材としては、アンカーセットを支持し得る強度を備え、かつ水平方向の位置調整用の摺動面を有するものであれば、それぞれの支柱単位に離間された状態で付設されるものでも、各支柱に対して連結された状態、例えば矩形状に連結された状態に形成するものでもよい。その場合、支柱をアンカーセットの内側に配置し、前記受け部材を外側へ向けて張出してアンカーセットを摺動可能に支持するように構成した形態のものが可能である。また、受け部材の支柱に対する固定や微調整後のアンカーセットの支持用フレームに対する固定手段としては、締付ボルト、C形のシャコ万力などの固着手段や溶接等の種々の形態が可能である。また、支柱の設置数はアンカーセットの形態などに応じて自由に選定することができる。なお、必要に応じて支持用フレーム自体の定着作用をアンカーボルトの定着機能として利用し得ることはいうまでもない。
【0009】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例に関して説明する。図1は前記支持用フレームに関する実施例を示した斜視図である。図示のように、本実施例の支持用フレーム1は、捨てコンクリート等の地盤上に枠状に設置するベース2の各角部に対してアングル材等からなる4本の支柱3を締付ボルトや溶接等により立設し、それらの各支柱3の上方の外側面に図2の部分拡大図に示したように断面略L字状の受け部材4,5を取付けたものから構成される。そして、それらの各支柱3に取付けられた受け部材4,5の水平部により後述のアンカーセットの受け部が構成され、それらの水平部の上面によって水平方向の位置調整用の摺動面が形成されることになる。なお、本実施例においては、受け部材4,5の支柱3に対する固定手段としてシャコ万力6を用い、その取付高さを調整し得るように構成している。
【0010】
図3は受け部材に関する他の実施例の場合を示した斜視図である。本実施例の受け部材7は、支柱3を挿通し得る三角状の筒状部8に摺動面を構成する水平部9,10を折曲げ形成し、さらにそれらの水平部9,10の後方に支柱3に対する固定用の締付手段11を備えたものから構成される。また、図4は支柱の立設の仕方に関する他の実施例を示した斜視図である。本実施例は、前記枠状のベース2に代えてそれぞれの支柱3に対応して平板状のベース12を用いた場合を示したものである。
【0011】
図5は前記支持用フレーム1を使用してアンカーセットを支持した状態を示した正面図であり、図6はそのA−A断面図、図7は水平方向の微調整を行った後の状態を示した正面図である。図中、13はアンカーセットを示したものであり、本実施例では、12本のアンカーボルト14を使用して、それらのアンカーボルト14の上方をそれぞれ上部添プレート15に形成した各挿通孔に挿通するとともに、下方を下部添プレート16の挿通孔及び定着板17に挿通させた状態で、ナット18〜21を用いて締付固定することにより、各アンカーボルト14を所定間隔に一体的に保持している。そして、そのアンカーセット13は下部添プレート16を介して支柱3に設けられた前記受け部材4,5の水平部上に摺動可能に支持されるように構成されている。なお、受け部材4,5の支柱3に対する高さ方向の取付位置を調整することにより、アンカーセット13の設置高さが調整可能に構成されている。
【0012】
図6はそのアンカーセット13の支持状態を示したもので、図示のように、下部添プレート16の内周面と支柱3の外側面との間には全周に調整用の間隙部eが形成されるように各部の寸法が設定されている。すなわち、アンカーセット13は、下部添プレート16を介して支柱3に設けられた受け部材4,5の水平部上に摺動可能に支持されるとともに、間隙部eを設けて水平方向に摺動し得るように構成されている。図7は矢印で示した左方向にアンカーセット13を最大限に摺動した場合を例示したもので、その摺動の結果、下部添プレート16の左側の内周面と支柱3の外側面との間に前記間隙部eの2倍の間隙部が形成されたところを示したものである。すなわち、反対側の下部添プレート16の内周面と支柱3の外側面との係止によって摺動が規制されるアンカーセット13を最大限に摺動した状態を示したものであり、図示のように、この最大限に摺動した状態においても下部添プレート16が受け部4,5上から外れることはなく、アンカーセット13の離脱が防止される。以上のように、本発明においては、下部添プレート16を介してアンカーセット13を支柱3に設けた受け部材4,5等からなる受け部に摺動可能に支持するとともに、そのための調整代を確保してアンカーセット13の水平方向の位置調整を可能にした点に特徴がある。特に、本実施例では、前記受け部4,5を支柱3付近のみに配設したことからアンカーボルト14との干渉を回避しやすいので、調整代としての前記間隙部eの確保がしやすく、また前記定着板17の設置部位に関しても、下部添プレート16の上下のどちら側に配置してもよい。しかして、アンカーセット13の高さ方向及び水平方向の位置調整が終了した場合には、シャコ万力などの固定手段や溶接等により支柱3側に固定してコンクリートの打設作業に備えることになる。
【0013】
図8は支持用フレームに関する他の実施例を示した斜視図である。図示のように、本実施例の支持用フレーム22は、前記ベース2の各角部に立設した支柱3の周囲にアングル材からなる受け部材23を枠状に設けて、それらの水平部により摺動面を形成した点で特徴を有するものであり、その使用の仕方は前述の実施例と同様である。なお、受け部材23の外方へ張出した部分に水準器等を載置すれば、摺動面の水平度が簡便に計測できる。また、図9は更に支持用フレームに関する他の実施例を示した平面図である。本実施例では、受け部材24を矩形のリング状に形成し、その各角部に前記支柱3の挿通可能な間隙部を形成した状態に支持部材25を固着し、その支持部材25に溶接したナット等からなる雌ネジ部26に締付ボルト27を螺合して、その締付ボルト27を介して受け部材24を支柱3に対して固定し得るように構成したものである。なお、これらの実施例の場合には、アンカーセット側の例えば下部添プレート16と摺動可能に当接する受け部材23,24が全周に形成されるので、水平方向の調整時に各アンカーボルト14の固定部との干渉が問題になる。したがって、その干渉を回避するという観点から前記定着板17は下部添プレート16の上面側に配置することが望ましい
【0014】
図10はアンカーセットに関する他の実施例を示した斜視図である。本実施例のアンカーセット28では、8本のアンカーボルト29を使用して、それらのアンカーボルト29の上方を矩形リング状の上部添プレート30に形成した挿通孔に挿通して支持固定するとともに、下方は、断面略U字状に形成された定着機能を有する定着フレーム31の溝部に挿通して支持固定することにより、各アンカーボルト29を所定間隔に一体的に保持する場合を例示したものである。そして、本実施例においても、支持用フレーム1を構成する支柱3に設けた受け部による支持の仕方や水平方向の位置調整の仕方に関しては、前記実施例の場合と基本的に異なるところはない。
【0015】
次に、以上に例示した実施例を具体的に適用する場合における施工方法の概略に関して説明する。なお、以下の施工例では前記アンカーセット13と支持用フレーム1との組合せを採用した場合を中心に説明するが、他の形態のアンカーセット28や支持用フレーム22等との組合せを採用する場合にも同様である。図11は手組方式による場合の施工手順を示した概略説明図である。図示のように、この施工例では、先ず(a)のように、捨てコンクリート32上の所定位置にベース2を同ベース2に形成された長孔等を介して後施工アンカーなどにより仮止めしたうえ、そのベース2の各角部に支柱3を立設することにより支持用フレーム1を形成する。次に、(b)のように支柱3の各外側面の所定高さに受け部材4,5等を仮止めしたうえ、その受け部材4,5上に下部添プレート16あるいは定着フレーム31を載置する。そして、(c)のようにその下部添プレート16の上方に定着板17を添えながら、あるいは定着フレーム31に対して所要数のアンカーボルト14を一本ずつ順次立設するとともに、それらの上方を上部添プレート15の各挿通孔に挿通してナットを用いて固定することによりアンカーセット13を組立てる。しかる後、必要に応じて受け部材4,5の支柱3に対する取付位置を介してアンカーボルト14の設置高さを微調整して支柱3に対して本締めするとともに、アンカーセット13の水平方向の位置を、下げ振り等を用いてアンカーボルト14の頭部の位置を確認しながら、受け部材4,5上を摺動させて所定の設置位置に微調整し、更にシャコ万力等の固定手段や溶接などによって支柱3に対して固定することにより、アンカーボルト14を所定の設置位置に位置決めする。そして、前記ベース2の本締めを行ってアンカーボルト14の設置作業を終了する。
【0016】
図12は他の場所で予め組立てられたアンカーセットをクレーン等の吊上げ手段により吊上げて支持用フレーム上に設置する場合の施工手順を示した概略説明図である。この施工例の場合には、(a)及び(b)に示したように、捨てコンクリート32上の所定位置にベース2を同ベース2に形成した長孔等を介して後施工アンカーなどにより仮止めして各角部に支柱3を立設することにより支持用フレーム1を形成し、前記受け部材4,5を所定の高さに仮止めするとともに、他の場所でアンカーセット13を予め組立てる(なお、図中では、前記アンカーボルト14の下部の支持手段として定着フレーム31を採用した場合を例示した)。そして、(c)で示したように、その予め組立てられたアンカーセット13を図示しないクレーン等により吊上げて支持用フレーム1の受け部材4,5上に載置する。しかる後、(d)において、前述の施工例の場合と同様に、必要に応じて受け部材4,5の取付位置によるアンカーボルト14の設置高さの微調整を行い、さらにアンカーセット13を受け部材4,5上を摺動させて水平方向の微調整をし、シャコ万力等の固定手段や溶接により固定するという、アンカーボルト14の位置決め作業を実施し、ベース2の本締めをして作業が終了することになる。なお、このアンカーボルト14の位置決め作業の間、クレーン等によるアンカーセット13の支持を継続するようにすれば、作業負担が更に軽減され作業性を向上できる。
【0017】
図13はアンカーセットを支持用フレームと同じ場所で手組により組立ててレバーブロックやチェーンブロック等の吊上げ手段により吊上げて所定の位置に設置する場合の施工手順を示した概略説明図である。この施工例の場合には、先ず(a)に示したように、捨てコンクリート32上の所定位置にベース2を長孔等を介して後施工アンカーなどにより仮止めしたうえ、その各角部に支柱3を立設することにより支持用フレーム1を形成するとともに、前記受け部材4,5を支柱3の下方にセットする。そして、(b)に示したように、支柱3の下方にセットされた前記受け部材4,5上あるいは他の載置台上に定着フレーム31あるいは下部添プレート16を載置し、その定着フレーム31に対して、あるいは前述のように添プレート16の上方に定着板17を添えながら、所要数のアンカーボルト14をナットにより締付固定することにより順次立設し、さらにそれらの各アンカーボルト14の上方に上部添プレート15をセットすることによりアンカーセット13を組立てる。次に、(c)に示したように、前記支柱3の上部に吊上げ用の補助支柱33を接続し、該補助支柱33を介してレバーブロック等の吊上げ手段34を配設する。そして、その吊上げ手段34の把持部35を介してアンカーセット13を支持し、(d)に示したように上方に吊上げ、その状態において、前記受け部材4,5を支柱3の上方の設置位置に仮止めした後、アンカーセット13を下降して定着フレーム31あるいは下部添プレート16を介して受け部材4,5上に摺動可能に載置する。しかる後、さらに前述の施工例の場合と同様に、必要に応じて受け部材4,5の取付位置によるアンカーボルト14の設置高さの微調整を行い、アンカーセット13を受け部材4,5上を摺動させて水平方向の微調整をしたうえシャコ万力等の固定手段や溶接などによって固定するという、アンカーボルト14の位置決め作業を実施し、前記補助支柱33及び吊上げ手段34を撤去してベース2の本締めを行うことにより作業が終了することになる。なお、前記アンカーボルト14の位置決め作業の間、前記吊上げ手段34によるアンカーセット13の支持を継続するようにすれば、作業負担が更に軽減され作業性を向上できる点も同様である。
【0018】
図14〜図20は、以上の図13の施工例の細部に関する実施例を示したものである。すなわち、図14〜図17は図13の工程(b)と(c)との間の施工手順を詳細に示したものであり、図18〜図20は図13の工程(d)以降の施工手順を詳細に示したものである。前述のように、図13の(b)において、支柱3の下方にセットされた前記受け部材4,5上あるいは他の載置台上に定着フレーム31あるいは下部添プレート16を載置し、その定着フレーム31に対して、あるいは下部添プレート16の上方に定着板17を添えながら、所要数のアンカーボルト14をナットにより締付固定することにより順次立設し、さらにそれらの各アンカーボルト14の上方に上部添プレート15をセットすることによりアンカーセット13を各支柱3の下部周囲にセットすることができたら、図14の補助支柱33の接続作業に進む。この作業は、図示のようにそれぞれの支柱3の上端部に対して補助支柱33の下端部を順次嵌合することにより行われる。各補助支柱33の継足しが終了した場合には、図15に示したようにそれらの補助支柱33の上端部に対して吊上げ手段34の支持手段36を装着する。しかる後、図16に示したように支持手段36に前記吊上げ手段34を取付け、その吊上げ手段34のフック部37に連結した把持部35を介して図17に示したようにアンカーセット13を支持することにより吊上げ作業の準備が完了することになる。なお、支柱3の高さに関しては、アンカーセット13の最終的な設置状態に応じて上方へ突出しない高さに設定する。図中、38は補強部材で、隣接する補助支柱33相互間を連結することにより補強する補強金具である。
【0019】
次に、図18〜図20により、図13の(d)におけるアンカーセット13の吊上げ以降の作業に関して説明する。前述のように、吊上げ手段34を介して吊上げられたアンカーセット13は、図18において下降され、支柱3の所定の設置高さにセットされた前記受け部材4,5上に摺動可能に載置される。そして、前述のように、必要に応じて受け部材4,5の取付位置によるアンカーボルト14の設置高さの微調整や、アンカーセット13を受け部材4,5上を摺動させて行う水平方向の微調整を実施したうえ、シャコ万力等の固定手段や溶接などによって固定することにより、アンカーボルト14の位置決め作業を実施する。しかる後、図19に示したように吊上げ手段34及び補助支柱33を撤去する。これにより、アンカーセット13は、図20に示したように最終的な設置状態に至り、アンカーボルト14の設置作業が完了することになる。
【0020】
図21〜図26は、吊上げ手段34の支持部に関する実施例を示した斜視図である。図21は最も単純な一体型の実施例を示したものであり、図示のように隣接する補助支柱33の上端部相互間に対向する一対の補助梁部材39,40を溶接等により一体的に架設するとともに、それらの補助梁部材39,40相互間に更に溶接等により主梁部材41を一体的に架設することにより吊上げ手段34の支持部を構成したもので、その主梁部材41の略中央部にレバーブロックやチェーンブロックなどからなる吊上げ手段34を装着する。図22は補助支柱33の上端部に嵌着し得る嵌着型の実施例を示したもので、図示のように補助梁部材42,43の両端部に補助支柱33の上端部に嵌合可能なソケット部44を設けるとともに、それらの補助梁部材42,43相互間に主梁部材45を架設することにより図15に例示した支持手段36を構成したものである。補助支柱33に対する取付けに当っては、図15に示したようにソケット部44を各補助支柱33の上端部に嵌着し、主梁部材45の略中央部に吊上げ手段34を装着することになる。図23の実施例は、図22の嵌着型の変形例を示したものであり、図示のようにX状に交差した状態に梁部材46,47を形成し、それらの梁部材46,47の各端部に補助支柱33の上端部に嵌合可能なソケット部48を設けることにより吊上げ手段34の支持手段を構成したもので、それらの梁部材46,47の交差部に吊上げ手段34を装着するものである。
【0021】
図24〜図26は補助支柱33の配置状態に応じて各寸法を調整可能に構成した吊上げ手段34の支持手段に関する実施例を示したものである。図24に示した実施例では、補助支柱33の上端部相互間に架設される補助梁部材49,50をそれぞれ補助支柱33の上端部に固着されるサイド部材a,bと、それらのサイド部材a,bに対して摺動可能に嵌入支持されたセンタ部材cとから構成するとともに、それらの補助梁部材49,50相互間に架設される主梁部材51を補助梁部材49,50に固着されるサイド部材a,bと、それらのサイド部材a,bに対して摺動可能に嵌入支持されたセンタ部材cとから構成している。そして、それらの梁部材49〜51を構成するサイド部材a,bとセンタ部材cには、それぞれ複数の挿通孔52,53が形成されており、それらの挿通孔52,53に係止ピン54を選択的に挿入することにより、それらの梁部材49〜51の長さを補助支柱33相互間の寸法に応じて調整し得るように構成されている。
【0022】
図25に示した実施例では、各補助支柱33の上端部に係止ピン55を設けるとともに、それらの補助支柱33相互間に架設される補助梁部材56,57に前記係止ピン55が挿入可能な複数の挿通孔58を形成し、補助支柱33相互間の寸法に応じて係止ピン55を挿通孔58に選択的に挿入して架設し得るように構成されている。同様に、それぞれの補助梁部材56,57の中央部にも係止ピン59,60が設けられており、それらの係止ピン59,60を主梁部材61に形成された複数の挿通孔62に選択的に挿入することにより、補助梁部材56,57相互間の寸法に応じて主梁部材61を架設し得るように構成されている。
【0023】
図26に示した実施例は、図25の実施例の変形例であり、上述の係止ピンと挿通孔による固定手段に代えて、各補助支柱33の上端部にそれぞれ対をなす支持片63を設け、それらの支持片63に挿通孔64を形成するとともに、補助支柱33相互間に架設される補助梁部材65,66に複数の挿通孔67を形成し、それらの補助梁部材65,66を前記支持片63間に挿入した状態で、補助支柱33相互間の寸法に応じて係止ピン68を挿通孔67に選択的に挿入することにより架設し得るように構成されている。同様に、それぞれの補助梁部材65,66の中央部にも対をなす支持片69,70が設けられ、それぞれ挿通孔71,72が形成されており、主梁部材73を支持片69間及び支持片70間に挿入した状態で架設し、それらの支持片69,70の挿通孔71,72を介して主梁部材73に形成した複数の挿通孔74に対して係止ピン75を選択的に挿入することにより、補助梁部材65,66相互間の寸法に応じて主梁部材73を架設し得るように構成されている。なお、以上の各支持片に形成した挿通孔と各梁部材に形成した多数の挿通孔に対して係止ピンを選択的に挿入する固定手段に代えて、図27に示したように止めネジ76を用いて各梁部材を締付け固定するものや、図28に示したようにバネ材から形成した略U字状の支持部材77の中央部に各梁部材を圧入してバネ力により固定する固定手段を採用することも可能である。また、以上の図24〜図26の実施例を図22のように嵌着型に構成することも可能である。
【0024】
図29〜図31は、補助支柱33の支柱3に対する接続部に関する実施例を示したもので、それぞれ(A)は接続前、(B)は接続後の状態を示したものである。図29に示した実施例では、前記補助支柱33の下端部にソケット部78を設け、そのソケット部78を支柱3の上端部に嵌合することにより、補助支柱33を支柱3に対して着脱自在に接続し得るように構成されている。なお、図中、79は挿入止め板である。図30及び図31の実施例は、アングル材からなる支柱3を用いた場合に関するもので、図30に示した実施例では、補助支柱33の下端部に角筒状のソケット部80を設け、そのソケット部80を支柱3の上端部に嵌合することにより、補助支柱33を支柱3に対して着脱自在に接続し得るように構成されている。なお、図中、81は挿入止め板である。また、図31に示した実施例では、補助支柱33をアングル材にて構成し、適宜位置に係止凸条部82及び雌ネジ孔83を形成するとともに、支柱3の上部に前記雌ネジ孔83に対応した挿通孔84を形成し、補助支柱33の係止凸条部82を支柱3の上端部に係止しながら重合した状態において、止めネジ85を用いて支柱3に形成した挿通孔84を介して補助支柱33に形成した雌ネジ孔83に螺合して締付けることにより、補助支柱33を支柱3に対して着脱自在に接続し得るように構成されている。
【0025】
なお、図32はアンカーセット13の上部添プレート15と補助支柱33との配置関係を示した平面図である。図示のように、補助支柱33の外面とアンカーボルト14の上部を支持した上部添プレート15の内側との間には適宜のクリアランスeが形成される。これにより、アンカーセット13のスムーズな昇降動作が得られるとともに揺れが低減され、安全性な作業が可能である。
【0026】
図33及び図34は、以上の施工例の変形例を示したものである。図33の施工例は、上述の補助支柱33に代えて移動式のやぐら86を組んでレバーブロックやチェーンブロック等からなる吊上げ手段87を設置するという手法を採用したもので、現場の道路や敷地状況によりクレーンなどの大型の装置が設置できない場合などに有効である。なお、本例では、やぐら86の下部に移動用の車輪88を付設しているが、場合により設けなくてもよい。また、図34の施工例は、現場の根切り高さが高く、土止めのために切り梁89等を設置している場合に好適な施工例で、その切り梁89等を利用して吊上げ手段90を支持した例を示したものである。なお、これらの図33あるいは図34の施工例においても、前述の施工例と同様のアンカーボルトの設置作業が行われることになる。また、他の施工例において、溶接による最終的な固定の前にアンカーボルト14の設置高さに関する再調整を行う場合などに、以上の吊上げ手段を使用することも可能である
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、所要本数のアンカーボルトを含むアンカーセットを支持用フレームの支柱に設けた受け部の摺動面によって支持するとともに、いずれの方向にも形成した調整用の間隙部を介してアンカーセットのみを縦横に摺動させることにより、アンカーボルトの水平方向の設置位置に関する微調整を行うように構成したので、その微調整作業に必要な押動力が従来に比べて縮小されることから作業負担が軽減され、アンカーボルトの設置位置に関する微調整作業の作業性を改善することができる。しかも、請求項1、2の発明では、アンカーセットの位置調整作業において前記受け部の摺動面より上方へ突出する支柱との係止によってアンカーセットの受け部からの離脱が防止されるので、作業の安全性が大幅に向上される。また、請求項3の発明によれば、支持用フレームの各支柱に補助支柱を継足して該補助支柱の上部に設置した吊上げ手段によりアンカーセットを吊上げられるように構成したので、従来のようにクレーン等の重機を活用しなくとも、柱位置においてアンカーボルトを所定の高さに設置することができ、その作業性を改善できるとともに作業コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 支持用フレームに関する実施例を示した斜視図である。
【図2】 図1の部分拡大図である。
【図3】 受け部材に関する他の実施例の場合を示した斜視図である。
【図4】 支柱の立設の仕方に関する他の実施例を示した斜視図である。
【図5】 アンカーセットの支持状態を示した正面図である。
【図6】 図5のA−A断面図である。
【図7】 水平方向の微調整後の状態を示した正面図である。
【図8】 支持用フレームに関する他の実施例を示した斜視図である。
【図9】 支持用フレームに関する他の実施例を示した平面図である。
【図10】 アンカーセットに関する他の実施例を示した斜視図である。
【図11】 手組方式による場合の施工手順を示した概略説明図である。
【図12】 クレーン等により吊上げて支持用フレーム上に設置する場合の施工手順を示した概略説明図である。
【図13】 他の吊上げ方式による施工手順を示した概略説明図である。
【図14】 同施工手順を示した概略説明図である。
【図15】 同施工手順を示した概略説明図である。
【図16】 同施工手順を示した概略説明図である。
【図17】 同施工手順を示した概略説明図である。
【図18】 同施工手順を示した概略説明図である。
【図19】 同施工手順を示した概略説明図である。
【図20】 同施工手順を示した概略説明図である。
【図21】 吊上げ手段の支持部に関する実施例を示した斜視図である。
【図22】 同支持部に関する実施例を示した斜視図である。
【図23】 同支持部に関する実施例を示した斜視図である。
【図24】 同支持部に関する実施例を示した斜視図である。
【図25】 同支持部に関する実施例を示した斜視図である。
【図26】 同支持部に関する実施例を示した斜視図である。
【図27】 同支持部に関する実施例を示した部分拡大図である。
【図28】 同支持部に関する実施例を示した部分拡大図である。
【図29】 支柱と補助支柱の接続部に関する実施例を示した部分拡大図である。
【図30】 同接続部に関する実施例を示した部分拡大図である。
【図31】 同接続部に関する実施例を示した部分拡大図である。
【図32】 アンカーセットの上部添プレートと補助支柱との配置関係を示した平面図である。
【図33】 図13の変形例を示した正面図である。
【図34】 図13の他の変形例を示した正面図である。
【符号の説明】
1…支持用フレーム、2…ベース、3…支柱、4,5…受け部材、6…シャコ万力、7…受け部材、8…筒状部、9,10…水平部、11…締付手段、12…ベース、13…アンカーセット、14…アンカーボルト、15…上部添プレート、16…下部添プレート、17…定着板、18〜21…ナット、22…支持用フレーム、23,24…受け部材、25…支持部材、26…雌ネジ部、27…締付ボルト、28…アンカーセット、29…アンカーボルト、30…上部添プレート、31…定着フレーム、32…捨てコンクリート、33…補助支柱、34…吊上げ手段、35…把持部、36…支持手段、37…フック部、38…補強部材、39,40…補助梁部材、41…主梁部材、42,43…補助梁部材、44…ソケット部、45…主梁部材、46,47…梁部材、48…ソケット部、49,50…補助梁部材、51…主梁部材、52,53…挿通孔、54,55…係止ピン、56,57…補助梁部材、58…挿通孔、59,60…係止ピン、61…主梁部材、62…挿通孔、63…支持片、64…挿通孔、65,66…補助梁部材、67…挿通孔、68…係止ピン、69,70…支持片、71,72…挿通孔、73…主梁部材、74…挿通孔、75…係止ピン、76…止めネジ、77…支持部材、78…ソケット部、79…挿入止め板、80…ソケット部、81…挿入止め板、82…係止凸条部、83…雌ネジ孔、84…挿通孔、85…止めネジ、86…やぐら、87…吊上げ手段、88…車輪、89…切り梁、90…吊上げ手段

Claims (3)

  1. 捨てコンクリート等の地盤に対して支柱を四隅に備えた支持用フレームを設置するとともに、前記支柱の外側に位置調整用の摺動面を有する受け部を設け、それらの各支柱の外側に位置する受け部の摺動面上に複数本のアンカーボルトを含む組立体からなるアンカーセットを載置するとともに、その摺動面上を縦横に摺動し得るようにいずれの方向に対しても調整用の間隙部を形成し、該間隙部を介して前記アンカーセットを所定の設置位置上に摺動して位置調整する際には、前記摺動面より上方へ突出する支柱との係止によってアンカーセットの前記受け部からの離脱が防止される状態において当該位置調整作業を行い、さらに前記支持用フレーム側に固定することによりアンカーボルトを所定位置に設置することを特徴とするアンカーボルトの設置方法。
  2. 前記受け部の前記支柱に対する取付高さを介してアンカーボルトの設置高さを調整することを特徴とする請求項1記載のアンカーボルトの設置方法。
  3. 捨てコンクリート等の地盤に対して支柱を備えた支持用フレームを設置するとともに、その支持用フレームの各支柱の下部周囲に複数本のアンカーボルトを含む組立体からなるアンカーセットを、その内側に位置する前記支持用フレームに対して昇降可能にセットし、しかる後、前記支柱に補助支柱を継足して該補助支柱の上部に吊上げ手段を設置した上、その吊上げ手段により前記アンカーセットを吊上げるとともに、前記支柱の所定高さに前記アンカーセット側の部材に係止し得るように外側へ突出した状態に受け部をセットし、さらに前記吊上げ手段を介して前記アンカーセットを下降して前記受け部上に載置した後、前記補助支柱及び吊上げ手段を撤去することにより、アンカーボルトを所定高さに設置することを特徴とするアンカーボルトの設置方法。
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