JP4504654B2 - 配合脱蛋白天然ゴムラテックスとそれを用いた浸漬ゴム製品 - Google Patents
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Description
ところが近年、手術用手袋やカテーテル等の医療用具として天然ゴム製のものを使用すると、呼吸困難やアナフィラキシー様症状(血管性浮腫、じんましん、チアノーゼ等)等の即時型(I型)アレルギーを引き起こす場合があるとの報告がなされている。また、天然ゴムはゴム分のほか、水、蛋白質、無機塩類等を含むラテックスとして得られるものであって、手袋等の浸漬製品はこのラテックスから直接に成形されているところ、天然ゴムに含まれる蛋白質が、かかるアレルギーを引き起こす原因物質(抗原)となっているとの報告もなされている。
配合脱蛋白天然ゴムラテックスに天然油脂のエマルションを配合することによって、配合ラテックス中での加硫系薬剤(加硫剤、加硫促進剤等)のゴム粒子への吸着を促進することができ、加硫系薬剤の作用を効果的に、効率よく発揮させることができると考えられる。それゆえ、本発明に係る配合脱蛋白天然ゴムラテックスによれば、前加硫の速度を早めることができ、しかも前加硫の度合い(前加硫度)を向上させることができる。
天然油脂の具体例としては、パーム油、パーム核油、ショウ脳油、オリーブ油、ホホバ油、ツバキ油、グレープシード油、ヤシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、落花生油、綿実油、キリ油、ひまし油、牛脂等が挙げられる。
かかる天然油脂のSP値と、天然ゴム(脱蛋白天然ゴム)のゴム粒子のSP値とは近似している(例えば、パーム油のSP値が7〜10、ショウ脳油のSP値が7.5、ゴム粒子のSP値が8)ことから、両者の相溶性が高く、しかも天然油脂は加硫系薬剤との相溶性も高いことから、加硫系薬剤のゴム粒子への吸着を促進する効果に優れている。従って、天然油脂(とりわけ、上記例示のもの)を配合することによって、配合脱蛋白天然ゴムラテックスの前加硫の速度や前加硫度を改善し、かつかかるラテックスを用いて得られる浸漬製品の機械的強度を改善するという効果を発揮することができる。
本発明に係る配合脱蛋白天然ゴムラテックスは、前述のように、前加硫の速度が早く、前加硫度が高く、かかる前加硫性については、天然ゴムラテックスについての前加硫性と同等である。従って、本発明によれば、機械的強度に優れた浸漬製品を得ることができる。
〔配合脱蛋白天然ゴムラテックス〕
(天然ゴムラテックス)
本発明に係る配合脱蛋白天然ゴムラテックスの製造原料である天然ゴムラテックスは、ゴム樹液として得られるフィールドラテックスまたはアンモニア保存濃縮ラテックスのいずれであってもよい。
天然ゴムラテックスに対する脱蛋白処理を、蛋白分解酵素を用いた処理によって行う場合において、かかる処理に用いられる蛋白分解酵素は特に限定されるものではなく、従来公知の種々のものが使用可能であるが、なかでもアルカリプロテアーゼ等を用いるのが好適である。蛋白分解酵素の由来としては、細菌由来のもの、糸状菌由来のもの、酵母由来のもの等いずれのものであってもよいが、これらの中では細菌由来のもので、特にBacillus属のものが好ましい。また、リパーゼ、エステラーゼ、アミラーゼ、ラッカーゼ、セルラーゼ等の酵素を併用することも可能である。
蛋白分解酵素の使用量は、当該酵素の活性に応じて変動するものであって、特に限定されるものではない。しかし、一般的には、蛋白分解酵素の含有量が天然ゴムラテックス中のゴム分100重量部に対して0.0001〜20重量部となるように調整するのが好ましく、0.001〜10重量部となるように調整するのがより好ましい。蛋白分解酵素の含有量が上記範囲内であると、その活性を保持しつつラテックス中の蛋白質を十分に分解することができ、あるいは蛋白分解酵素の使用量に見合った効果を有効に発現でき、コスト的に有利になる。
蛋白分解酵素を用いた脱蛋白処理においては、処理後のゴム粒子を安定して分散させることなどを目的として、あらかじめラテックス中に界面活性剤を添加するのが好ましい。
界面活性剤としては、例えばカルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系等の陰イオン性界面活性剤;ポリオキシアルキレンエーテル系、ポリオキシアルキレンエステル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、糖脂肪酸エステル系、アルキルポリグリコシド系等の非イオン性界面活性剤;例えばアミノ酸型、ベタイン型、アミンオキサイド型等の両性イオン界面活性剤が使用可能である。界面活性剤の添加量は、天然ゴムラテックスのゴム固形分100重量部に対して0.001〜20重量部の範囲で設定するのが好ましい。
脱蛋白処理時における、天然ゴムラテックス中での蛋白分解酵素と界面活性剤との添加割合は特に限定されるものではないが、蛋白質の分解処理を効率よく進行させるには、両者の比を重量比で1:1〜1:200、好ましくは1:10〜1:50の範囲に設定するのが好ましい。
天然ゴムラテックスに対する蛋白質の分解処理は、原料となる天然ゴムラテックスに前述の蛋白分解酵素を添加し、必要に応じて界面活性剤とを所定量添加した後、数十分から1週間程度、好ましくは1〜3日程度熟成させることによって行われる。この熟成処理は、ラテックスを撹拌しながら行ってもよく、静置した状態で行ってもよい。また、必要に応じて温度調整を行ってもよい。酵素の活性を十分なものとするには、5〜90℃にするのが好ましく、20〜60℃に調整するのがより好ましい。5℃を下回ると酵素反応が進まないおそれがあり、逆に90℃を超えると酵素の失活を招くおそれがある。
本発明に用いられる脱蛋白天然ゴムラテックスにおける脱蛋白の程度は特に限定されるものではないが、最終のゴム製品に対して低アレルギー性を付与するには、脱蛋白処理後におけるケルダール法による窒素含有量(N%)が0.1%以下、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.02%以下となるように調整されていることが求められる。窒素含有量が上記範囲を超えると脱蛋白の程度が不十分になり、最終ゴム製品の使用によりアレルギーが発生してしまうのを十分に抑制することができなくなるおそれがある。
本発明に係る配合脱蛋白天然ゴムラテックスには、前述のように、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等の加硫系薬剤が添加される。
加硫剤には、例えば硫黄;トリメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素等の有機含硫黄化合物が挙げられる。これらの加硫剤は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。加硫剤の配合量は、所望の前加硫度や加硫促進剤等の配合量と兼ね合いによって決定されるものであるが、通常、ゴムラテックス中のゴム固形分100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部の範囲で設定される。
(天然油脂)
本発明に係る配合脱蛋白天然ゴムラテックスには、前述のように、天然油脂がエマルションの状態で添加される。使用可能な天然油脂の種類と、その配合量とについては、前述のとおりである。
天然油脂のエマルションについての調製方法、物性等については特に限定されるものではなく、脱蛋白天然ゴムラテックスとの分散性を良好なものにするという観点から適宜設定すればよい。一般に、天然油脂のエマルションは、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤および両性界面活性剤のいずれかを1〜5phr程度含有する水を用いて調製すればよい。
本発明に係る配合脱蛋白天然ゴムラテックスを用いた浸漬ゴム製品は、あらかじめ表面に凝固剤等を付着させた浸漬型を使用し、この浸漬型を本発明に係る配合脱蛋白天然ゴムラテックスに浸漬して、その表面にゴム皮膜を形成し、次いで当該ゴム皮膜を加硫して、脱型することにより得られるものである。
浸漬ゴム製品の製造に用いられる浸漬型は、目的とするゴム製品の形状に応じたものであればよい。例えば、浸漬ゴム製品がゴム手袋である場合には、浸漬型として従来公知の手型を用いればよい。また、成膜条件は、目的とするゴム製品の種類、ゴム皮膜の厚み等に応じて、常法に従って設定すればよい。
〔脱蛋白天然ゴムラテックスの調製〕
(参考例1)
ハイアンモニアタイプの天然ゴムラテックスをゴム分が30重量%になるように希釈した後、プロテアーゼと界面活性剤とからなる脱蛋白処理剤(2重量部、98重量部)をゴム分に対して1重量%の割合で添加して、30℃で24時間静置した。13000rpmで30分間遠心分離した後、分離した上層のクリーム分を取り出して、水に再分散させることにより、脱蛋白天然ゴムラテックスを得た。
(実施例1)
上記参考例1で得られた脱蛋白天然ゴムラテックスのゴム分100重量部に対して、水に分散させたコロイド硫黄1重量部、亜鉛華0.5重量部、加硫促進剤〔ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(BZ);「ノクセラーBz」〕1重量部およびパーム油〔マレーシア国産の工業用精製パーム油〕5重量部を添加した。
次いで、かかる配合脱蛋白天然ゴムラテックスを室温(25℃)で熟成させた。熟成期間は、2日間(48時間)と3日間(72時間)の2種に設定した。
(実施例2および3)
ゴム分100重量部に対するパーム油の添加量を、実施例2で10重量部、実施例3で15重量部としたほかは、実施例1と同様にして、配合脱蛋白天然ゴムラテックスの調製、その熟成、ゴム皮膜の製造および機械的強度の測定を行った。
パーム油に代えて、ショウ脳油の一種であるホワイトオイル〔三栄化工(株)製〕を使用し、その添加量をゴム分100重量部に対して5重量部としたほかは、実施例1と同様にして、配合脱蛋白天然ゴムラテックスの調製、その熟成、ゴム皮膜の製造および機械的強度の測定を行った。
(実施例5)
ゴム分100重量部に対するホワイトオイルの添加量を10重量部としたほかは、実施例4と同様にして、配合脱蛋白天然ゴムラテックスの調製、その熟成、ゴム皮膜の製造および機械的強度の測定を行った。
パーム油を添加しなかったほかは、実施例1と同様にして、配合脱蛋白天然ゴムラテックスの調製、その熟成、ゴム皮膜の製造および機械的強度の測定を行った。
(対照)
参考例1で得られた脱蛋白天然ゴムラテックスに代えて、脱蛋白処理を施していない天然ゴムラテックス〔フィールドラテックス;マレーシア国産〕を用いたほかは、比較例1と同様にして、配合ラテックスの調製、その熟成、ゴム皮膜の製造および機械的強度の測定を行った。
(前加硫度の測定)
実施例1〜5および比較例1で得られた配合脱蛋白天然ゴムラテックスと、対照の配合ラテックスとを、それぞれガラスプレート上に流延し、その後風乾して、厚さ約0.1mmのゴムフィルムを得た。このゴムフィルムを長さ25mm、幅5mmにカットし、こうして得られた試験片をキシレン中に浸漬した。試験片の膨潤が平衡に達した後、当該試験片の長さを測定して、式:
前加硫度=〔(LA −LB )/LB 〕×100
(式中、LA は膨潤後の長さを示し、LB は膨潤前の長さを示す。)
により前加硫度を算出した。
前加硫度は、その上限が110であることが求められる。前加硫度は、好ましくは105以下、より好ましくは100以下である。一方、前加硫度は、その下限が90であることが求められる。前加硫度がかかる範囲を下回ると、前加硫が進みすぎてゴム皮膜にわれを生じるおそれがある。
実施例1〜5、比較例1および対照で得られた厚さ0.3mmのゴム皮膜を、JISダンベル状1号形にカットして、試料片を得た。次いで、この試験片の引張強さTB (MPa)と、300%伸び時の引張応力M300 (MPa)とを、JIS K 6251(加硫ゴムの引張試験方法)に準拠して測定した。測定には、2日間熟成したラテックスから得られたものと、3日間熟成したラテックスから得られたものとの、両方を使用した。
以上の結果を表1に示す。
表1に示した実施例1〜5と比較例との対比により明らかなように、配合脱蛋白天然ゴムラテックスに天然油脂を添加することによって、当該ラテックスの前加硫特性を良好なものとすることができ、かかるラテックスを用いて得られる浸漬ゴム製品の機械的強度を良好なものとすることができた。
Claims (5)
- 脱蛋白処理が施された天然ゴムラテックスに、前記天然ゴムラテックスのゴム分を加硫させるための加硫系薬剤と、前記加硫系薬剤のゴム粒子への吸着を促進する天然油脂のエマルションとを配合してなり、浸漬ゴム製品を製造するために用いる配合脱蛋白天然ゴムラテックス。
- 上記天然油脂の配合量の総量が、脱蛋白処理が施された天然ゴムラテックスのゴム分100重量部に対して1〜30重量部である請求項1記載の配合脱蛋白天然ゴムラテックス。
- 上記天然油脂が、パーム油、ショウ脳油、オリーブ油、ホホバ油、ツバキ油、グレープシード油、ヤシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油および落花生油からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の配合脱蛋白天然ゴムラテックス。
- 上記の脱蛋白処理が施された天然ゴムが、天然ゴムラテックスに蛋白分解酵素を加えて熟成させたものである請求項1〜3のいずれかに記載の配合脱蛋白天然ゴムラテックス。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の配合脱蛋白天然ゴムラテックスを用いて成形してなる浸漬ゴム製品。
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