JP4112681B2 - ゴム手袋 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脱蛋白天然ゴムからなるゴム手袋に関し、より詳しくは、蛋白質に起因する即時性アレルギーが発現するおそれが低く、かつ引裂強さが優れたゴム手袋に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然ゴムは伸びが大きい、弾性が高い、皮膜の強さが良好である等の特徴を有しており、従来よりタイヤ、ベルト等の工業用品から手袋などの家庭用品に至る幅広い分野で利用されている。とりわけ、天然ゴム製の手袋は作業性やフィット感に優れており、さらにはエイズ等の感染症を予防する手段として有効であることから、医療用の手袋として好適に用いられている。
【0003】
天然ゴム製の手袋は、天然ゴムラテックスに各種配合剤を配合し、手袋の型の表面に塗布したり、あるいは型をラテックスに浸漬した後、乾燥、加硫等の操作を施すことによって製造される。その際、得られる手袋は、天然ゴムラテックスに含まれる蛋白質等の非ゴム成分を不純物として含有している。
【0004】
しかし近年、かかるゴム手袋を使用することによって、天然ゴム中の蛋白質が原因とみられる呼吸困難やアナフィラキシー様症状(血管性浮腫、じんましん、虚脱、チアノーゼ等)などの即時性アレルギーが引き起こされるという事例が報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、上記の問題を解決するため、(a) 手袋の型の表面にラテックスの皮膜を形成した後、洗浄するゲルリーチング法、(b) 前記皮膜を加硫成形した後、洗浄するポストリーチング法、(c) ゴム手袋の表面に塩素処理を施す方法、(d) 上記(a) 〜(c) を組み合わせる方法等によって、ゴム手袋中の蛋白質を除去することが試みられている。
【0006】
しかしながら、いずれの方法も、ゴム手袋の表面層の蛋白質のみが一時的に洗浄除去されるのであって、ゴム手袋全体の含有蛋白質量はほとんど変わらない。このため、ゴム手袋内部に残存する水溶性の蛋白質がしだいに溶出して、アレルギーを引き起こすおそれがある。また、上記の操作を繰り返し行うことによって残存する蛋白質の量を少なくすることができるものの、製造工程が複雑になったり、生産コストが高くなるといった問題が生じる。
【0007】
一方、蛋白質分解処理を施して、あらかじめ蛋白質の濃度を低減した脱蛋白天然ゴムラテックスを用いてゴム手袋を製造する方法も用いられているが、かかる脱蛋白天然ゴムラテックスからなるゴム手袋にも、水溶性の蛋白質がわずかに残存している。
【0008】
この水溶性蛋白質の大部分は、遠心分離処理を繰り返し行うことにより取り除くことができるものの、ラテックスの製造工程が増えるため、生産コストが高くなるという問題が生じる。
【0009】
そこで、遠心分離処理回数の少ない脱蛋白天然ゴムラテックスを用いることで生産コストの低減を図りつつ、かつ蛋白質に起因する即時性アレルギーの発現を抑制することが求められている。
【0010】
本発明の目的は、低コストで、かつ蛋白質に起因する即時性アレルギーの発現を抑制した天然ゴム製のゴム手袋を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、引裂強さに優れた天然ゴム製のゴム手袋を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、脱蛋白天然ゴムラテックス中に蛋白質がわずかに残存していても、当該蛋白質がゴム手袋から溶出しないようにすることで上記課題を解決できるのではないかと考え、さらに研究を重ねた結果、脱蛋白天然ゴムラテックスに、蛋白質を吸着する微粒子を配合し、かかるラテックスを用いてゴム手袋を作製すれば、蛋白質の溶出を低減して即時性アレルギーの発現を抑制した天然ゴム製のゴム手袋が得られるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明のゴム手袋は、基:−OHを有する微粒子をゴム固形分100重量部に対して0.5重量部以上の割合で含有する脱蛋白天然ゴムラテックスを用いて、浸漬法によって製造されることを特徴とする。
【0014】
本発明において、脱蛋白天然ゴム中にわずかに残存する蛋白質は、表面活性基としての基:−OHを有する微粒子によって物理的に吸着され、さらに両者の電気的性質によって強固に結合すると推測される。
【0015】
従って、本発明によれば、蛋白質が前記微粒子に吸着されたうえで加硫成形されるため、ゴム手袋の内部に蛋白質が残存するものの、ゴム手袋の外部へは溶出しにくくなる。その結果、水溶性蛋白質の量が低減して、即時性アレルギーの発現が抑制される。
【0016】
また、本発明において脱蛋白天然ゴム中に配合された微粒子は、蛋白質を吸着するだけでなく、ゴム手袋の補強にも作用することから、ゴム手袋の引裂強さがより優れたものとなる。
【0017】
前記微粒子の含有量は、脱蛋白天然ゴムのゴム分100重量部に対して0.5重量部以上であって、とりわけ0.5〜5重量部の範囲であるのがゴム手袋の装着感の観点から好適である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のゴム手袋について詳細に説明する。
【0020】
本発明に用いられる脱蛋白天然ゴムラテックスは、天然ゴムラテックス中の蛋白質を分解処理した後、これを水で希釈し、さらに遠心分離、限外ろ過等による洗浄処理にて分解された蛋白質を除去したものである。上記洗浄処理には、蛋白質の除去効果に優れている遠心分離がより好適に採用される。なお、ゴム手袋の生産コストを低減させるという観点から、遠心分離処理の回数は少ない方が好ましく、特に処理回数が1回であるのがより好ましい。
【0021】
なお、後述する方法に従って、脱蛋白処理を施した天然ゴムラテックスに対して遠心分離処理を1回行った場合、当該ラテックス中に残存する蛋白質の量は、ケルダール(Kjeldahl)法により求められるゴムの窒素含有量(N%)で、通常0.04〜0.05%程度である。
【0022】
上記天然ゴムラテックスとしては、市販のアンモニア処理ラテックスでも、新鮮なフィールドラテックスのいずれであってもよい。
【0023】
蛋白質分解処理は、例えば天然ゴムラテックス中に蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)と1種または2種以上の界面活性剤とを添加して、酵素反応を進行させることによって行われる。この酵素反応により、ゴム粒子に結合または吸着していた蛋白質は分解または低分子化されて水層に移行する。界面活性剤は、前記蛋白質の水層への移行を助けるとともに、蛋白質が分解されたことによって水中で不安定になったゴム粒子を安定に分散させ、さらには遠心分離による洗浄工程で蛋白質等の不純物の洗浄除去を助けるために用いられる。
【0024】
蛋白質分解酵素としては従来公知のものが使用可能であり、特に限定されないが、例えばアルカリプロテアーゼ等が好適に用いられる。プロテアーゼの由来としては、細菌由来のもの、糸状菌由来のもの、酵母由来のもの等いずれでも構わないが、これらの中では細菌由来のものを使用するのが好ましい。また、リパーゼ、エステラーゼ、アミラーゼ、ラッカーゼ、セルラーゼ等の酵素を併用してもよい。
【0025】
上記蛋白質分解酵素の添加量は、天然ゴムラテックスの固形分100重量部に対して0.0001〜20重量部、好ましくは0.001〜10重量部である。蛋白質分解酵素の添加量が前記範囲を下回ると、ラテックス中の蛋白質を充分に分解することができなくなるおそれがある。一方、蛋白質分解酵素の添加量が前記範囲を越えると、酵素の活性が低下し、かつコストアップにつながるおそれがある。また、酵素を添加する際にpH調整剤などの他の添加剤を添加してもよい。
【0026】
界面活性剤としては、(a) 陰イオン性界面活性剤、(b) 非イオン性界面活性剤および(c) 両性イオン界面活性剤が使用可能である。
【0027】
上記(a) の陰イオン性界面活性剤としては、例えばカルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系等が挙げられる。
【0028】
カルボン酸系の陰イオン性界面活性剤としては、例えば炭素数が6〜30である脂肪酸塩、多価カルボン酸塩、ロジン酸塩、ダイマー酸塩、ポリマー酸塩、トール油脂肪酸塩等が挙げられ、これらの中では炭素数10〜20のカルボン酸塩が好ましい。炭素数が6以下では蛋白質や不純物の分散・乳化が不十分で、30以上では水に分散しにくくなる。
【0029】
スルホン酸系の陰イオン性界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ジフェニルエーテルスルホン酸塩等が挙げられる。
【0030】
硫酸エステル系の陰イオン性界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、ジスチレン化フェノール硫酸エステル塩、トリスチレン化フェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェノール硫酸エステル塩、、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェノール硫酸エステル塩、α−オレフィン硫酸エステル塩、アルキルコハク酸硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0031】
リン酸エステル系の陰イオン性界面活性剤としては、例えばアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0032】
これらの化合物の塩としては、例えば金属塩(Na、K、Ca、Mg、Zn等)、アンモニア塩、アミン塩(トリエタノールアミン塩等)などが挙げられる。
【0033】
上記(b) の非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンエーテル系、ポリオキシアルキレンエステル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、糖脂肪酸エステル系、アルキルポリグリコシド系等が挙げられる。
【0034】
ポリオキシアルキレンエーテル系の非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリオールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェノールエーテル、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェノールエーテル、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェノールエーテル等が挙げられる。上記ポリオールとしては、炭素数2〜12の多価アルコールが挙げられ、具体的にはプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、グルコース、シュクロース、ペンタエリスリトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0035】
ポリオキシアルキレンエステル系の非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0036】
多価アルコール脂肪酸エステル系の非イオン性界面活性剤としては、炭素数2〜12の多価アルコールの脂肪酸エステルまたはポリオキシアルキレン多価アルコールの脂肪酸エステルが挙げられる。より具体的には、例えばソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。また、これらのポリアルキレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル等)も使用可能である。
【0037】
糖脂肪酸エステル系の非イオン性界面活性剤としては、例えばショ糖、グルコール、マルトース、フラクトース、多糖類の脂肪酸エステル等が挙げられ、これらのポリアルキレンオキサイド付加物も使用可能である。
【0038】
アルキルポリグリコシド系の非イオン性界面活性剤としては、例えばアルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルポリグルコシド等が挙げられ、これらの脂肪酸エステル類やポリアルキレンオキサイド付加物も使用可能である。
【0039】
上記陰イオン性および非イオン性の界面活性剤におけるアルキル基としては、炭素数4〜30のアルキル基が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン基としては、炭素数2〜4のアルキレン基を有するものが挙げられ、例えば酸化エチレンの付加モル数が1〜50モル程度のものが例示される。脂肪酸としては、例えば炭素数4〜30の直鎖または分岐した飽和または不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0040】
上記(c) の両性イオン界面活性剤としては、例えばアミノ酸型、ベタイン型、アミンオキサイド型等が挙げられる。
【0041】
上記蛋白質分解処理において、界面活性剤の添加量は、ラテックスのゴム固形分100重量部に対して0.001〜20重量部である。
【0042】
pH調整剤としては、例えばリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等のリン酸塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の酢酸塩、硫酸、酢酸、塩酸、硝酸、クエン酸、コハク酸などの酸類またはその塩、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等があげられる。pH調整剤の添加量は、ラテックスのゴム固形分100重量部に対して、通常、0.01〜0.5重量部である。
【0043】
蛋白質分解処理においては、上記成分の他に、さらにスチレンスルホン酸共重合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸、多環型芳香族スルホン酸共重合物、アクリル酸および無水マレイン酸のホモポリマーおよび共重合物、イソブチレン−アクリル酸およびイソブチレン−無水マレイン酸共重合物等の分散剤を併用してもよい。
【0044】
蛋白質分解処理の処理時間は特に限定されないが、数分から1週間程度行うことが好ましい。蛋白質分解処理中、ラテックスは攪拌していてもよく、静置していてもよい。温度調節は必要に応じてすればよいが、処理に適当な温度としては5〜90℃、より好ましくは20〜60℃である。処理温度が90℃を超えると酵素の失活が早く、5℃未満であれば酵素の反応が進行しにくくなる。
【0045】
蛋白質の分解処理を行った後、蛋白質を洗浄除去し、ゴム分を分離する方法としては、例えば遠心分離による方法や、限外ろ過膜を用いて分解蛋白質を除去する限外ろ過法等があげられるが、なかでも遠心分離による方法が好適に用いられる。この遠心分離は、まず、蛋白質分解処理を施した天然ゴムラテックスのゴム分が5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%となるように水で希釈する。次いで、5000〜10000rpmで1〜60分間遠心分離すればよい。
【0046】
遠心分離処理後、上層に分離されたクリーム状のゴム分を取り出す。かかる操作は、ディスク式の遠心分離器で連続的に行ってもよい。取り出されたクリーム状のゴム分を水で希釈することにより、脱蛋白天然ゴムラテックスが得られる。
【0047】
次に、本発明のゴム手袋の製造方法について詳細に説明する。
【0048】
脱蛋白天然ゴムラテックスに配合される微粒子は、前述のように、表面活性基として基:−OHを有するものである。
【0049】
かかる微粒子としては、天然ゴムラテックス中に分散されやすいものが好ましく、例えばシリカゲル、コロイダルシリカ等のシリカ微粒子、シリカマグネシア微粒子、活性アルミナ等の酸化アルミニウム微粒子、アルミノ−シリカゲル微粒子、ゼオライト、クレー(ケイ酸アルミニウム)等があげられる。
【0050】
上記微粒子の比表面積は、50〜900m2 /gであるのが適当である。表面積が上記範囲を下回ると、天然ゴムラテックス中への分散性が低下したり、分解された蛋白質を吸着する量が低下するおそれがある。一方、比表面積が上記範囲を超えるものは、一般に入手が困難である。
【0051】
上記微粒子の配合量は、脱蛋白天然ゴムラテックスのゴム固形分100重量部に対して0.5重量部以上、好ましくは0.5〜5重量部である。微粒子の配合量が上記範囲を下回ると、脱蛋白天然ゴムラテックスに残存する水溶性蛋白質を充分に吸着できなくなるおそれがあり、その結果、ゴム手袋を成形した後に当該蛋白質が溶出するのを抑制できなくなるため好ましくない。なお、上記微粒子を、ゴム固形分100重量部に対して5重量部以上配合しても、蛋白質の吸着量を増加させる効果は少ない。また、ゴムのモジュラスが大きくなるため、手袋の強度が強くなる一方で、装着感がソフトであるという天然ゴム製手袋の利点が損なわれるおそれもある。
【0052】
脱蛋白天然ゴムラテックスに配合される添加剤としては、前記微粒子のほか、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤(活性化剤)、老化防止剤、充填剤、分散剤等の従来公知の種々の添加剤があげられる。
【0053】
上記のうち加硫剤としては、例えば硫黄や有機含硫黄化合物等があげられ、その配合量(脱蛋白質天然ゴムラテックスのゴム成分100重量部に対する重量部、以下同様)は、0.5〜1.5重量部程度であるのが好ましい。
【0054】
加硫促進剤としては、例えばPX(N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛)、PZ(ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛)、EZ(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)、BZ(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛)、MZ(2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩)、TT(テトラメチルチウラムジスルフィド)等があげられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。その配合量は0.5〜2.0重量部程度であるのが好ましい。
加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華等があげられる。その配合量は0.5〜3.0重量部であるのが好ましい。
【0055】
老化防止剤としては、一般に、非汚染性のフェノール類が好適に用いられるが、アミン類を使用してもよい。老化防止剤の配合量は1〜2重量部程度であるのが好ましい。
【0056】
充填剤としては、例えばカオリンクレー、ハードクレー、炭酸カルシウム等があげられる。その配合量は20重量部以下であるのが好ましい。
分散剤は、主として上記各添加剤のラテックス中への分散を良好にするためのものである。かかる分散剤としては、例えば前記例示の陰イオン系界面活性剤等があげられる。分散剤の配合量は、分散対象である成分における重量の2〜5重量%程度であるのが好ましい。
【0057】
本発明のゴム手袋は、まず、脱蛋白天然ゴムラテックスに上記微粒子と加硫剤等の各種添加剤とを所定の割合で配合し、このラテックスに、あらかじめ凝固剤を浸漬塗布しておいた手袋の型を浸漬し、型を引き上げ、乾燥させて型の表面にゴム膜を形成する。次いで、ゲルリーチングによる洗浄を施した後、このゴム膜を加硫し、さらにポストリーチングによる洗浄を施すことによってゴム手袋が得られる。
【0058】
ゴム手袋の型は、ガラス製のものなど従来公知の種々のものが使用可能であって、その表面に織布、不織布等からなる手袋体を装着したものであってもよい。前記手袋体を装着した型を用いた場合には、かかる手袋体の表面にゴム層が成膜されたゴム手袋が得られる。
【0059】
上記成膜処理時や乾燥時、あるいは加硫時の温度や時間等の条件は、従来公知の条件にて適宜設定される。また、成膜処理は、ゴム手袋の厚さ等に応じて1回または2回以上行われる。
【0060】
上記ゲルリーチングは従来と同様にして行えばよく、例えば室温から80℃程度の(温)水浴中に、ゴム膜(未加硫)を形成した手袋の型を30秒〜5分間程度浸漬すればよい。
【0061】
ポストリーチングも従来と同様にして行えばよく、例えば室温から80℃程度の(温)水浴中に、加硫成形されたゴム手袋を30秒〜5分間程度浸漬すればよい。
【0062】
本発明においては、単にラテックス中に型を浸漬する成膜法のほかに、静電気力を利用してゴム粒子を凝集させり凝固液法や、感熱凝固剤を含有したゴムラテックスを用いる感熱法によって、成膜処理を行うこともできる。
【0063】
【実施例】
以下、参考例、実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明する。
【0064】
参考例
(脱蛋白天然ゴムラテックスの作製)
天然ゴムのハイアンモニアラテックス(ゴム固形分60重量%、アンモニア含有量0.7%、ケルダール法による窒素含有率0.3%)約167重量部(ゴム固形分100重量部)に対し、プロテアーゼ(蛋白質分解酵素)0.067重量部と、10%ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(界面活性剤、花王(株)製のKP4401)15重量部とを添加し、水で希釈して、ゴム固形分が30重量%の天然ゴムラテックスを調製した。
【0065】
次いで、上記ラテックスを室温にて16時間攪拌して、蛋白質の分解操作を行った。
【0066】
上記ラテックス約333重量部(ゴム固形分100重量部)を水で希釈して全量を1000重量部に調整した(ゴム固形分約10重量%)後、10000rpmで30分間遠心分離を行った。
【0067】
遠心分離処理後、上層に分離したクリーム状のゴム分を取り出し、さらに水で希釈することにより、ゴム固形分60重量%の脱蛋白天然ゴムラテックスを得た。
【0068】
実施例1
上記脱蛋白天然ゴムラテックス約167重量部(ゴム固形分100重量部)に対し、20%コロイダルシリカ(日産化学社製のスノーテックスN、シリカ微粒子の比表面積210m2 /g)2.5重量部(SiO2 分0.5重量部)、酸化亜鉛(ZnO)0.5重量部、硫黄1重量部およびジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(加硫促進剤BZ)1重量部を配合した。
【0069】
次に、70℃に加熱した手袋の型を15%硝酸カルシウム水溶液(凝固剤)に浸漬し、乾燥させた。この手袋の型をラテックスに浸漬した後、型を引き上げ、室温で数分間乾燥して、前記型の表面に厚さ約0.2mmのゴム膜を成形した。ゴム膜を成形後、50℃の温水に2分間浸漬してゲルリーチングを行った。
【0070】
次いで、上記ゴム膜を、オーブンにて100℃で30分間加熱して加硫し、さらに50℃の温水に30秒間浸漬してポストリーチングを行い、ゴム手袋を得た。
【0071】
実施例2〜4
コロイダルシリカの配合量を代えたほかは、実施例1と同様にしてゴム手袋を製造した。
【0072】
実施例5
20%コロイダルシリカに代えて10%シリカマグネシア(水澤化学社製の「シリカライフP−1」の分散体、シリカ微粒子の比表面積675m2 /g)を50重量部(SiO2 分5.0重量部)使用したほかは、実施例1と同様にしてゴム手袋を製造した。
【0073】
比較例1
コロイダルシリカを配合しなかったほかは、実施例1と同様にしてゴム手袋を製造した。
【0074】
(蛋白質の含有量)
上記実施例および比較例で得られたゴム手袋に残存する蛋白質の量を評価するため、各手袋についてケルダール法による窒素含有量(N%)を求めた。また、ゴム手袋中の水溶性蛋白質の量(mg/g)をASTM D5712に記載の方法に準じて測定した。
【0075】
(引裂試験)
各実施例、比較例のゴム手袋を打ち抜いて、JIS K 6252に規定された引裂試験用の試験片(厚み0.2mm)を作製した。この試験片を用いて、JIS K 6252に所載の試験方法に従って、引裂強さ(N/mm)を求めた。
【0076】
(手袋の装着感)
各実施例、比較例で得られたゴム手袋を実際に装着したときの装着感を評価した。評価の基準は以下のとおりである。
◎:装着感が極めてソフトで、指の曲げ伸ばしが自然に行え、あたかも手袋を装着していないように感じられた。
【0077】
〇:装着感がソフトで、指の曲げ伸ばしが自然に行えた。
【0078】
△:手袋が多少硬く感じられたものの、実用上問題はなかった。
【0079】
×:装着感が極めて低く、長時間の装着により手に疲労感が生じた。
【0080】
上記実施例および比較例での脱蛋白天然ゴムラテックス(DPNR)の組成比、ゴム手袋の窒素含有量(N%)、水溶性蛋白質の含有量(mg/g)、引裂強さ(N/mm)および装着感の評価結果を、それぞれ表1に示す。
【0081】
【表1】
Figure 0004112681
比較例2〜4
脱蛋白天然ゴムラテックスに代えて、蛋白質分解処理をしていないハイアンモニアラテックス(NR、前出)を用いたほかは、実施例2〜4と同様にしてゴム手袋を製造した。
【0082】
比較例5
脱蛋白天然ゴムラテックスに代えて、蛋白質分解処理をしていないハイアンモニアラテックス(NR、前出)を用いたほかは、比較例1と同様にしてゴム手袋を製造した。
【0083】
上記比較例2〜5での天然ゴムラテックス(NR)の組成比、ゴム手袋の窒素含有量(N%)、水溶性蛋白質の含有量(mg/g)、引裂強さ(N/mm)および装着感の評価結果を、それぞれ表2に示す。
【0084】
【表2】
Figure 0004112681
表1から明らかなように、実施例1〜5のゴム手袋は、水溶性蛋白質の量が1回の遠心分離処理では除去できないレベルにまで低減されている。
【0085】
これに対し、比較例1では、基:−OHを有する微粒子を配合されていないため、水溶性蛋白質の量が多い。
【0086】
一方、表2から明らかなように、脱蛋白処理を施していない天然ゴムラテックス(NR)を用いてゴム手袋を製造した場合には、上記微粒子を添加することによって水溶性蛋白質の量を低減できるものの、当該蛋白質の総量が多過ぎるために、水溶性蛋白質の残存量のレベルに限界があった。
【0087】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、水溶性蛋白質の量が低減されているとともに、引裂強さにも優れている。
【0088】
従って、本発明のゴム手袋は、蛋白質に起因する即時性アレルギーのおそれが少ない天然ゴム製手袋として、医療用手袋等の用途に好適に用いられる。

Claims (2)

  1. 基:−OHを有する微粒子をゴム固形分100重量部に対して0.5重量部以上の割合で含有する脱蛋白天然ゴムラテックスを用いて、浸漬法により製造されたことを特徴とするゴム手袋。
  2. 前記微粒子の含有量が、前記ゴム固形分100重量部に対して0.5〜5重量部である請求項1記載のゴム手袋。
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